説明

鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置

【課題】慢性C型肝炎のようなウイルス性疾患(所望により抗ウイルス剤と組み合わせて)、および非アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪肝疾患のような非ウイルス性疾患を含む、鉄が病因に関与するヒトにおける肝臓疾患の処置用医薬組成物の提供。
【解決手段】下記式で表される4−[3,5−ビス−(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]−トリアゾル−1−イル]安息香酸の使用及びインターフェロンやリバビリンとの併用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デフェリプロン(L1)、デフェリトリン(deferitrin)、および4−[3,5−ビス−(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]−トリアゾル−1−イル]安息香酸(以後“化合物I”と呼ぶ)または薬学的に許容されるそれらの塩のような鉄キレーターの、例えばヒトにおける、B型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、HIV感染のようなウイルス性疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪肝疾患のような非ウイルス性疾患、および肝臓腺癌、例えば肝細胞癌腫(別名肝臓癌)のような肝臓癌を含む、鉄が病因に関与する肝臓疾患の予防および/または処置用医薬組成物の製造のための、および、該疾患の進行を予防するための、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肝臓疾患は米国における死亡原因の上位10位にあり、毎年30,000例を超える死亡の原因である(例えばVong S, et al. Hepatology; 2004, 39:476-483参照)。
【0003】
C型肝炎の慢性感染症は肝臓疾患の一位の原因であり、肝臓線維症および硬変の主要な原因である。それはまた、感染個体の一定割合の肝細胞癌腫の発症にも関連する。現在の標準処置であるインターフェロンおよびリバビリンでの処置は、処置患者の約半数しかウイルス学的寛解をもたらさない。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝炎は、肝臓の線維症と関連するメタボリック症候群であり、症例の約20%が硬変に進行する(例えばOng et al. Am. J Gastroenterol 2003, 98:1915-1917参照)。現在の標準的治療である代謝パラメータの制御および体重減少は、少数の患者にしか有効ではない。非アルコール性脂肪性肝炎またはNASHは一般的な、しばしば“沈黙”肝臓疾患である。それはアルコール性肝臓疾患に似ているが、アルコールを少ししか飲まないまたは全く飲まないヒトでも起こる。NASHの主要な特性は、炎症および損傷と共に、肝臓における脂肪である。NASHを有するヒトのほとんどは体調が良く、肝臓の問題を抱えていることに気づかない。それにも係わらず、NASHは重篤であり得、硬変に至り得、そこで肝臓は永久に損傷され、瘢痕化し、もはや正しく働くことができない。NASHはアメリカ人の2から5%を襲う。
【0005】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は上昇した肝臓試験値の一般的な原因であり、肝細胞における、主に大滴性の脂肪の沈着により組織学的に特徴付けられる。症例の大多数が良性障害であるが、NAFLDを有する患者の20%までが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有し、そして硬変、肝不全および肝細胞癌腫に至り得る。NAFLDのいくつかの危険因子が同定されており、上昇した肥満度指数(BMI)、2型糖尿病、老人および高トリグリセリド血症を含む。NAFLDの病態生理学的基礎はインスリン抵抗性であると考えられる。ほとんどの専門家が、NAFLDが、インスリン抵抗性、肥満、高血圧および異脂肪血症のいくつかの組み合わせを有するヒトを含む、メタボリック症候群の肝臓の徴候であると見なしている。NAFLDの患者はインスリンに対する抵抗性を発生する。
【0006】
化合物Iは、下記式
【化1】

を有する4−[3,5−ビス−(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]−トリアゾル−1−イル]安息香酸である。
遊離酸形の化合物I、その塩およびその結晶形は米国特許6,465,504B1に開示されている。化合物Iは活性部分に対応する。
【0007】
化合物Iは、モデル系およびヒトにおける鉄の選択的除去に有効であることが示されている鉄キレーターである(例えばHershko C, et al. Blood. 2001, 97:1115-1122; Nisbet Brown E et al. Lancet. 2003, 361:1597-1602参照)。
【0008】
しかしながら、化合物Iは上記の肝臓疾患の処置に有効であることは知られていなかった。特に、肝臓疾患、例えば鉄が一因である肝臓疾患、例えばウイルス感染による肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎のための代替治療を発見する必要性があった。加えて、標準治療、例えばインターフェロンおよびリバビリン処置に難治性の、不応性のもしくは適切に処置されないまたは持続して制御されない肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎の処置を発見する必要性があった。
【0009】
特記されない限り、以後“化合物I”は、化合物I遊離酸形、薬学的に許容されるその塩、およびその結晶形を意味する。
【0010】
下記式
【化2】

の(4S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロ−1,製造法は、2000年3月9日公開のWO00/12493に開示されている。
【0011】
下記式3−ヒドロキシ−1,2−ジメチル−4−(1,4)ピリジノンのデフェリプロンおよびその薬学的に許容される製剤はEP093498B1に開示されている。
【0012】
本発明者らは、化合物Iが身体から鉄を除去するために使用できることを証明し、そして鉄の除去、例えば半欠乏(near-deficiency)または欠乏状態までの鉄の除去が、ある種の肝臓疾患、例えばB型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、HIV感染のようなウイルス性肝臓疾患、非アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪肝疾患において有益であることを提案し、その利点が、限定をしないが、肝線維症および/または硬変の予防または減少で証明される。
【0013】
本発明者らは、化合物Iが身体から、例えば肝臓から鉄を除去するために使用できることを証明し、そして鉄の除去、例えば半欠乏または欠乏状態までの鉄の除去が、生物反応修飾物質、例えばサイトカイン、例えばインターフェロン、例えばα−インターフェロンおよび/またはヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンを含むがこれらに限定されない抗ウイルス剤のその後のまたは同時の投与と併用して、ある種の肝臓疾患、例えばB型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、HIV感染のようなウイルス性肝臓疾患、非アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪肝疾患において有益であることを提案し、その利点が、限定をしないが、肝線維症および/または硬変の予防または減少で証明される。
【0014】
半欠乏または欠乏状態の鉄は、正常値より低い、とりわけ肝臓乾燥重量1gあたり0.5mgの鉄より低い肝臓鉄含量を意味する。正常値は、肝臓乾燥重量1gあたり0.5から1.5mgの鉄の鉄含量を意味する。例えば0.4mg/肝臓乾燥重量gの肝臓鉄含量は、本発明の半欠乏または欠乏の鉄状態に対応する。半欠乏または欠乏の鉄状態はまた、フェリチンの測定によりモニターできる。約10から30ng/血液mlの血中フェリチン濃度が正常フェリチンレベルに対応する。例えば5ng/血液mlの血中フェリチン濃度は、半欠乏または欠乏の鉄状態に対応すると見なす。
【0015】
サイトカインとも呼ぶ生物反応修飾物質は、疾患と戦うための身体の能力を高める、管理するまたは回復させるために、免疫防御を変える産物の群を含む。生物反応修飾物質は例えば:
・コロニー刺激因子(顆粒球−コロニー刺激因子) −− G−CSF、
・顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子 −− GM−CSF、
・幹細胞増殖因子(SCGF)、
・エリスロポエチン、インターフェロン、インターロイキン(IL)、
・腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、および
・ペプチドチモシンα1(別名チマルファシン、ZADAXIN(登録商標))
を含む。
【0016】
本発明によると、本生物反応修飾物質は好ましくはインターフェロンである。
【0017】
“ヌクレオシド代謝拮抗物質”は、ウイルス遺伝子材料の複製を妨害するヌクレオシド代謝拮抗剤を意味する。本発明の“ヌクレオシド代謝拮抗物質”は、例えば下記式1−(β−D−リボフラノシル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミドのリバビリンまたはビラミジン(viramidine)、すなわち下記式1−[(2R,3R,4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシイミドアミド(また通称1−(β−D−リボフラノシル)−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシイミド)のValeant Pharmaceuticals InternationalのICN3142、またはバロピシタビン(valopicitabine)、すなわちNM283(Indenix Pharmaceutical, Inc.)に限定されない。
【発明の開示】
【0018】
発明の要約
本発明は、鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置のための、例えば線維症および/または硬変および/または肝臓腺癌、例えば肝細胞癌腫のような肝臓癌の発症に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置のための、化合物Iまたはデフェリトリン(deferitrin)またはデフェリプロンの使用に関する。
【0019】
本発明はさらに、線維症および/または硬変および/または肝炎に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患、例えばB型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、例えば遺伝子型1、2、3、4または5の慢性肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス感染、HIV感染のようなウイルス性肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンの使用に関する。
【0020】
本発明は、さらに、線維症および/または硬変および/または肝炎に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪肝疾患のような非ウイルス性肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンの使用に関する。
【0021】
本発明は、さらに、線維症および/または硬変および/または肝炎に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患、例えばB型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、HIV感染のようなウイルス性肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための、抗ウイルス剤、例えばインターフェロンのような生物反応修飾物質、例えばIFNα、ペグ化インターフェロン、および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンのその後のまたは同時の投与と併用した、化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンの使用に関する。
【0022】
本発明の医薬組成物はそれ自体既知の方法で製造でき、有効量の少なくとも1個の薬理学的活性成分を、単独でまたは、とりわけ経腸または非経腸投与に適する1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、ヒトを含む温血動物への経口のような経腸および非経腸投与に適するものである。本発明の投与形態の好ましい投与経路は経口である。化合物Iの経口製剤は、下記国際特許出願公報WO97/49395およびWO2004/035026に開示されている。
【0023】
本発明は、鉄が病因に関与する肝臓疾患を有する温血動物、例えばヒトの処置方法であって、そのような処置を必要とする該動物に、化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンを、C型肝炎、例えば慢性C型肝炎の場合、抗ウイルス剤の続くまたは同時の投与により、または非アルコール性脂肪性肝炎の場合同時の他の治療と併用してまたは併用せずに、鉄を除去するのに治療的に有効な量で投与することを含む、方法に関する。
【0024】
本発明は、鉄が病因に関与する肝臓疾患を有するヒト対象に、化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンを投与する方法に関する。
本発明の一つの態様において、化合物Iは分散可能な錠剤(dispersible tablet)として製剤する。
本発明の一つの態様において、化合物Iは多形体Aである。
本発明の一つの態様において、化合物Iは多形体Aであり、かつ分散可能な錠剤に製剤されている。
【0025】
本発明は、生物反応修飾物質処置、例えばIFN処置、例えばIFNα処置または生物反応修飾物質、例えばIFNとヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンの組み合わせに難治性の、不応性のもしくは適切に制御されない、または持続して制御されないウイルス性肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎のような肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための化合物Iまたはデフェリトリンまたはデフェリプロンの使用に関する。
【0026】
本発明は、化合物Iを、該化合物の肝臓疾患、例えばウイルス性肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎を有する患者への投与のための指示書と共に含む、商品包装物に関する。
【0027】
本発明はまた(a)鉄キレーター、および(b)生物反応修飾物質および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ製剤または医薬組成物のような組み合わせ物にも関する。
【0028】
本発明はまた(a)化合物I、デフェリトリンおよびデフェリプロンから成る群から選択される鉄キレーターおよび(b)生物反応修飾物質および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ製剤または医薬組成物のような組み合わせ物にも関する。
【0029】
本発明はまた(a)化合物Iまたはデフェリトリンであるキレーターおよび(b)生物反応修飾物質および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ製剤または医薬組成物のような組み合わせ物にも関する。
【0030】
一つの態様において、本発明は(a)化合物Iおよび(b)生物反応修飾物質および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物に関する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、(a)化合物Iおよび(b)インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリン、ビラミジンまたはバロピシタビンから成る群から選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物に関する。
【0032】
ここで使用する用語“組み合わせ製剤”は、上記定義の組み合わせパートナー(a)および(b)を個々に投与でき、または、組み合わせパートナー(a)および(b)の区別される量で異なって固定された組み合わせの使用により、すなわち同時にまたは異なる時点で投与できる点で、とりわけ“複数パーツのキット”に関する。複数パーツのキットのパーツを、次いで、例えば、同時にまたは時間的にずらして、すなわち、異なる時点で、そして複数パーツのキットの任意のパーツについて等しいまたは異なる間隔で投与できる。組み合わせ製剤において投与すべき組み合わせパートナー(a)の総量の組み合わせパートナー(b)に対する比率は、例えば処置すべき患者亜集団の要求または個人の要求に合わせるために、変化し得る。
【0033】
本発明は、さらに、線維症および/または硬変および/または肝炎に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患、例えばB型、C型、D型、G型、E型肝炎、慢性C型肝炎ウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、HIV感染、好ましくは慢性C型肝炎のようなウイルス性肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための、該組み合わせ物の使用に関する。
【0034】
本発明は、化合物Iを生物反応修飾物質、例えばインターフェロン、例えばインターフェロンαおよびヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンから成る群から選択される抗ウイルス剤と共に含む、商品包装物に関する。
【0035】
本発明は、化合物Iを、化合物Iを生物反応修飾物質、例えばインターフェロン、例えばインターフェロンαおよびヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンから成る群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と共に投与するための指示書と共に含む、商品包装物に関する。
【0036】
本発明は、鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置、例えば線維症および/または硬変および/または肝臓腺癌、例えば肝細胞癌腫のような肝臓癌の発症に至る鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置のためのデフェリトリンの使用に関する。
【0037】
本発明は、ウイルス性肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎の処置のためのデフェリトリンの使用に関する。
【0038】
発明の詳細な記載
当業者は、肝臓疾患におけるここに記載の過剰な鉄の除去の有利な効果を確認するための適切な試験モデルの選択が十分に可能である。このような化合物の薬理学的活性は、例えば、以下の実施例に記載の手段により、インビトロ試験およびインビボ試験により、または適当な臨床試験において証明できる。適当な臨床試験は、例えば、肝臓疾患を有する患者における鉄除去のオープンラベル、非無作為化、用量漸増試験、ならびに、肝臓疾患の患者における鉄除去の、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である。
【0039】
化合物Iの有効量は、用いる医薬組成物、投与形態、個体に存在する鉄過剰の程度、処置する肝臓疾患のタイプ、または肝臓疾患の重症度に依存して変化し得る。投与レジメンは、個体の腎臓および肝臓機能を含む、種々のさらなる因子に従い選択する。通常の能力の医師、臨床医または獣医師は、鉄欠乏またはほぼ鉄欠乏をもたらし、それにより治療的利益を達成するために必要な有効量の化合物を容易に決定し、処方できる。
【0040】
年齢、個々の状態、投与形態および問題の臨床上に依存して、有効量、例えば化合物Iの100から3000mgの活性部分を、体重約70kgの温血動物、例えばヒトに、例えば5から40mg/体重kg/日で投与する。好ましくは、本温血動物はヒトである。化合物Iを、下記投与量5から40mg/kg/日で投与できる。子供には、用量は好ましくは5から40mg/体重kg/日である。化合物Iの1日量は、例えば1日あたり、100から3000mgの活性部分を温血動物、例えばヒトに投与する。一日量に適切に応答しない患者のために、用量漸増を安全に考察でき、患者を、それらが処置から利益を得る限り、そして限定する毒性がない限り、処置できる。
【0041】
例えば商品名、例えばCopegus(登録商標);Rebetol(登録商標);Ribasphere(登録商標);Vilona(登録商標)、Virazole(登録商標)の下に販売されているリバビリンを、製造者の支持に従い、または、例えば1日あたり約200mgから約1200mgまでの用量で投与できる。リバビリンは経口薬である。リバビリンは、体重に基づく総1日量のために、1日2回200mgカプセルで投与できる。リバビリンの標準用量は、75kg(165ポンド)より軽い患者には例えば1,000mgであり、そして75kgより重い患者には例えば1,200mgである。ある状況下では、800mg用量(1日2回400mg)が推奨され得る。
【0042】
インターフェロンは、例えば、インターフェロンα−2a(Roferon-A;Hoffmann-La Roche)、インターフェロンα−2b(Intron-A;Schering-Plough)およびインターフェロンαcon−1(Infergen;Intermune)、およびペグ化インターフェロンと呼ばれることもある、例えばペグインターフェロンα−2b(Peg-Intron;Schering-Plough)、およびペグインターフェロンα−2a(Pegasys;Hoffmann-La Roche)のようなペグインターフェロンα、オメガインターフェロン(Intarcia)、Multiferon(Viragen)、Medusaインターフェロン(Flamel Tehcnologies)およびAlbuferon(Human genome Sciences)である。ペグインターフェロンα−2aは、例えば皮下に、例えば1週間に180マイクログラム(mcg)の、例えば固定された用量で、投与できる。ペグインターフェロンα−2bは、例えば皮下に、例えば1.5mcg/kg/週の、体重に基づく用量で、例えば75から150mcg/週の範囲で投与できる。
【0043】
インターフェロンは、例えば体重に依存して、1000000から10000000単位/日の投与量で投与できる。インターフェロンは、例えば1日1回、2週間、その後1週間3回、または例えば1週間3回投与できる。ペグインターフェロンαは、例えば1週間1回投与できる。
【0044】
本発明は、慢性C型肝炎感染または非アルコール性脂肪性肝炎のような原因に関連する肝臓疾患を有するヒト対象に、薬学的に有効量の化合物Iを1日1回投与する方法に関する。
【0045】
本発明は、慢性C型肝炎感染または非アルコール性脂肪性肝炎のような原因に関連する肝臓疾患を有するヒト対象に、薬学的に有効量の化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えば、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリン、ビラミジンまたはバロピシタビンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を投与する方法に関する。
【0046】
本発明は、とりわけ50から4000mgの化合物Iを成体または子供に投与するこのような方法に関する。C型肝炎感染の場合、化合物Iの投与は、生物反応修飾物質、例えばインターフェロン、例えばα−インターフェロンおよび/またはヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばビラミジン、バロピシタビンまたはリバビリンのような抗ウイルス剤と同時、または前であり得る。
【0047】
本発明は、特に、合併する貧血または他の禁忌症のために、瀉血で処置できない、鉄の除去が有益である肝臓疾患を有する個体からの鉄の除去に関する。加えて、本発明は、標準抗ウイルス治療に応答しないC型肝炎を有する患者の処置に非常に関連し得る。
【0048】
本発明はまた、肝臓疾患を有するヒト対象に、薬学的に有効量の化合物Iを1日1回、間欠的に、好ましくは2ヶ月または3ヶ月のうち14日間または2週間、または1ヶ月のうち7日間投与する方法にも関する。本発明は、とりわけ1日量50から4000mg、好ましくは1000mgの化合物Iを成体または子供に投与するこのような方法に関する。
【0049】
本発明は以下に掲げる態様に関する:
− 鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための、下記式
【化3】

の化合物Iの使用、
− 鉄が病因に関与する肝臓疾患(ここで、本肝臓疾患が慢性C型肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎である)の処置用薬剤の製造のための、化合物Iの使用、
− 鉄が病因に関与する肝臓疾患、例えば慢性C型肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎の処置用薬剤の製造のための、式Iの化合物の使用(ここで、本処置により達成される鉄状態が欠乏または半欠乏の状態である)、
− 過剰の鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための、化合物Iの使用、
− 化合物Iを50mgから4000mgの化合物Iに対応する量で投与する、上記に記載の使用。
【0050】
− 鉄が病因に関与する肝臓疾患を有する哺乳動物の処置方法であって、このような処置を必要とする該哺乳動物に、過剰な鉄の除去に有効な量の化合物Iを投与することを含む、方法。
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物。
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロン、および/またはリバビリン、ビラミジンまたはバロピシタビンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物。
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bおよびペグインターフェロンα−2aからなる群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリン、ビラミジンおよびバロピシタビンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物。
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物。
【0051】
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリン、ビラミジンまたはバロピシタビンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む組み合わせ物の、標準的治療に応答しない慢性C型肝炎患者の処置用薬剤の製造のための、使用。
− 化合物Iおよび生物反応修飾物質、例えばインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bおよびペグインターフェロンα−2aから成る群から例えば選択されるインターフェロンおよび/またはリバビリン、ビラミジンおよびバロピシタビンから成る群から例えば選択されるヌクレオシド代謝拮抗物質を含む組み合わせ物の、標準的治療に応答しない慢性C型肝炎患者の処置用薬剤の製造のための、使用。
【0052】
下記実施例は、本発明を説明するために提供する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に記載の具体的な条件または細部に限定すべきでないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0053】
実施例1:化合物Iの鉄キレート化の効果を証明する臨床試験
12日間の化合物I(10mg/kg(n=5)、20mg/kg(n=6)、40mg/kg(n=7)、およびプラセボ(n=6)の安全性、耐容性、PKおよび累積鉄バランスを評価する24名の成人β−サラセミア患者での化合物Iの無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増治験。
【0054】
化合物Iは、投与したとき、急速に吸収され、全期間にわたり血中に残る。化合物Iに対する暴露(CmaxおよびAUC)は、1回投与後に化合物I用量にわずかに比例を超えて増加するが、定常状態の間は、ほぼ比例であるように見える。薬物動態学的定常状態で、全ての投与量レベルで1回投与後よりもCmaxは約25%から40%高く化合物Iへの暴露は1.8から2.2倍高い。化合物Iおよびその鉄錯体両方の平均排出半減期t1/2は、1回投与後よりも定常状態の方が高い傾向にある。全体として、定常状態で、化合物Iのt1/2は約12から13時間であり、鉄錯体のt1/2は一般により長い(12から21時間)。化合物Iおよび鉄錯体の尿排泄は全ての回収間隔で非常に低い(化合物I用量の0.04%から0.15%の間)。
【0055】
本治験における鉄バランス試験は、ほとんど全て便への、鉄排泄の用量依存的増加を証明する。キレート化の効率は平均の毎日の正味の鉄排泄に基づき、理論的にキレート化できる鉄の量と、実際に排泄された鉄量の比として、体重に対して計算する。鉄の理論的量は、2分子の化合物Iが1個の鉄原子のキレート化に必要であるとの考察から得る。化合物Iの分子量は373.4であり、鉄は55.85である。故に、その効率は:
効率=(Fe排泄*2*373.4)/(用量化合物×55.85)×100%)
(用量化合物およびFe排泄はmg/体重kgで示す)として計算される。
【0056】
負の鉄バランスが、活性剤の3投与量全てで達成され、平均、10mg/kg用量で0.127mg/kg/日、20mg/kg用量で0.343mg/kg/日、および40mg/kg用量で0.564mg/kg/日である。著しい変動が40mg/kg用量コホートで見られる。キレート化の観察される効率は、16%(10mg/kg用量グループ)、22%(20mg/kg)、および15%(40mg/kg)である(例えばNisbet-Brown et al., Lancet. 361:1597-1602参照)。
【0057】
実施例2:化合物Iでの鉄低下治療の安全性および有効性を証明する臨床試験
本臨床試験は、体内鉄貯蔵のマーカーである血清フェリチンレベルを、100mcg/Lより低くするための、5から40mg/kgで投与する化合物Iの毎日投与の能力を試験する2部の治験である。治験の第1部で、最適安全および有効濃度を選択し、治験の第2部でこの投与量の化合物Iをmg/kg用量で毎日投与し、ほぼ同じmg用量での投与を比較して、鉄低下治療のための安全性および効果と比較する。
【0058】
実施例3:化合物IはLECラットにおける自然発生肝炎を軽減する
Long-Evans cinnamon(LEC)ラットは、遺伝性肝炎および自然発生肝臓癌を示す変異種である。化合物Iを、LECラットモデルにおける急性肝炎に対する効果について試験した。
【0059】
方法:化合物Iを、雄LECラットに0、14および28mg/kg/日の用量で強制喫食により経口で投与し、6週齢で開始し、18週齢まで続けた。各4匹のラットを9、12、14、16および18週齢で化合物I処置群およびコントロール群で殺した。
殺したら、末梢血を血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)を含む生化学的マーカーのモニタリングのために回収した。肝臓組織を組織学的に試験した。
【0060】
結果:未処置群ラット(コントロール群)において、血清ALTは16週齢から上昇し始め、18週齢で250UI/Lに達した。化合物I処置群での、18週齢の平均±SD(標準偏差)血清ALTレベルは、コントロール群より顕著に低かった。プルシアンブルー染色により評価した肝臓鉄蓄積は、コントロール群と比較して化合物I処置群で著しく低かった。化合物IはLECラットにおける急性肝炎の軽減に有効である。
【0061】
実施例4:肝炎のラットモデルでの試験
Long-Evans cinnamon(LEC)ラットは、遺伝性肝炎および自然発生肝臓癌を示す変異種である。化合物IがLECラットモデルにおける肝炎の発症に好ましい効果を有するか否かを試験した。
方法および材料:
1)動物の種および数:
Long-Evans Cinnamon(LEC)ラット(n=45/群)。各6匹の動物を12、13、14、16、20、24週目に殺す。
2)投与方法:経口
3)投与量および投与期間:14および28mg/kgを最大24週
【0062】
実施例5:化合物Iはヒト肝臓ALT値を改善する
ALT − (アラニンアミノトランスフェラーゼはまたSGPT、すなわち血清グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼとも呼ばれる) − は肝臓損傷の特異的マーカーである。ALTは肝臓細胞、すなわち肝細胞で産生される酵素である;ALTは、他のいくつかの酵素よりも肝臓疾患に特異的である。肝臓に損傷がある(例えば肝炎)、例えば細胞膜の損傷がある状況で、一般に上昇する。肝臓損傷がない正常患者では、ALTはほぼ0である。
【0063】
鉄過負荷した患者は、肝臓損傷を起こし、ALT値の上昇に至る。記載の結果は、化合物Iが上昇したALTレベルを有する患者において、ALTレベルをベースラインに戻すのに有用であることを示す。
患者は鉄過負荷患者であり、1年にわたり種々の用量の化合物Iで処置した。
【0064】
ALTは標準生物医学的技術に従い測定し、例えばBrinkmann T, Dreier J, Diekmann J, Gotting C, Klauke R, Schumann G, Kleesiek Kに記載のInternational Federation of Clinical Chemistry参照法を使用して測定した。血液ドナースクリーニングのためのアラニンアミノトランスフェラーゼ値は、この新しいInternational Federation of Clinical Chemistry参照法を37℃で使用した。Vox Sang. 2003 85(3):159-64。
【0065】
記載の結果は、化合物Iの適切な投与が、ALTのベースライン値に維持されたALTパラメータ、すなわち、ベースラインALT値を超えないALT値を有する患者をもたらす。
ベースラインALT値は、治験参加時の段階での患者において決定した患者のALT値として定義し、すなわちALTベースライン値は、化合物I処置開始前の患者のALT値である。
【0066】
化合物Iの投与を受けた患者は、適切な化合物Iの投与で、鉄体内濃度が低下する(下記参照、20および30mg/体重kg/日の用量についてのALT値)。ALT値はベースライン値付近に維持するか、またはベースライン値より低く改善される。
【0067】
【表1】

表1:種々の用量の化合物Iで1年間処置後のサラセミア患者のALT値(表1の結果と比較して別の治験)
【0068】
【表2】

表2:種々の投与量の化合物Iで処置後の稀に発生した貧血患者のALT値
【0069】
実施例6:
化合物Iを、インターフェロン、例えばペグ化インターフェロンおよびリバビリンを含む治療に応答しないか、持続して応答しない、慢性ウイルス性C型肝炎、例えば遺伝子型1の患者に投与する。
化合物Iの2から3個の異なる量を試験する。
群あたりの患者数:8−12
【0070】
実施例7:
患者に下記を投与する:
− 化合物Iと生物反応修飾物質、例えばインターフェロンαの組み合わせ物、
− 化合物Iと生物反応修飾物質、例えばインターフェロンαおよびヌクレオシド代謝拮抗物質、例えばリバビリンの組み合わせ物、
− 化合物Iとリバビリンの組み合わせ物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置用薬剤の製造のための、下記式
【化1】

の化合物Iの使用。
【請求項2】
肝臓疾患が慢性C型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪肝疾患である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
肝臓疾患が慢性C型肝炎である、請求項2記載の使用。
【請求項4】
処置により達成される鉄状態が欠乏または半欠乏(near-deficiency)の状態である、請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
化合物Iが分散可能な錠剤(dispersible tablet)の形である、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
化合物Iが多形体Aである、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
化合物Iを50mgから4000mgの化合物Iに対応する一日量で投与する、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
化合物Iを2または3ヶ月毎に少なくとも2週間、1日1回投与する、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
化合物Iを1月あたり少なくとも7日間、1日1回投与する、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
過剰な鉄が病因に関与する肝臓疾患の処置のための、請求項1から9のいずれかに記載用式Iの化合物の使用。
【請求項11】
鉄が病因に関与する肝臓疾患を有する哺乳動物の処置方法であって、このような処置を必要とする該動物に、過剰な鉄の除去に有効な量の化合物Iを投与することを含む、方法。
【請求項12】
(a)化合物Iおよび(b)生物反応修飾物質および/またはヌクレオシド代謝拮抗物質を含む、組み合わせ物。
【請求項13】
(b)生物反応修飾物質がインターフェロンである、請求項12記載の組み合わせ物。
【請求項14】
インターフェロンがインターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンαcon−1、ペグインターフェロンα−2bまたはペグインターフェロンα−2aから成る群から選択される、請求項13記載の組み合わせ物。
【請求項15】
ヌクレオシド代謝拮抗物質がリバビリン、ビラミジン(viramidine)またはバロピシタビン(valopicitabine)から成る群から選択される、請求項14記載の組み合わせ物。
【請求項16】
ヌクレオシド代謝拮抗物質がリバビリンである、請求項14記載の組み合わせ物。
【請求項17】
標準的治療に応答しない慢性C型肝炎患者の処置用薬剤の製造のための、請求項12から16のいずれかに記載の組み合わせ物の使用。

【公開番号】特開2013−82726(P2013−82726A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−277849(P2012−277849)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2008−514737(P2008−514737)の分割
【原出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】