説明

鉄ホメオスタシスの調節剤としてのヘプシジンの使用

【課題】鉄ホメオスタシスの異常の診断および治療のための薬物の提供。
【解決手段】ヘプシジンの成熟形態である特定のポリペプチドの使用。鉄過剰に起因する異常として、肝癌、心筋症、糖尿病または貧血の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄ホメオスタシス(iron homeostasis)異常の診断および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、ほぼ全ての生物の成長と生存のために要求される必須の要素である。哺乳動物では、鉄バランスは、食事性鉄分の十二指腸での吸収のレベルにおいてまず調節される。吸収に続いて、3価の鉄は血行中のアポトランスフェリンに与えられ、赤血球前駆体を含む
組織に輸送され、そこでトランスフェリン受容体に媒介されるエンドサイトーシスにより取り込まれる。細網内皮系マクロファージは、老化赤血球のヘモグロビンの分解からの鉄の再利用に主要な役割を果たしているが、肝細胞は、フェリチンポリマー中に生物の鉄の蓄積の大部分を含む。過去5年間にわたり、鉄吸収および鉄ホメオスタシスの調節に関与するタンパク質に関する情報の重要な主体が、ヒトとマウスとの両方において、明らかな鉄異常に導く先天性欠陥の研究から現れてきている(概説は、ANDREWS、Nat. Rev. Genet.、1、208〜217、2000を参照)。鉄欠乏症の場合、鉄吸収経路に直接関与するタンパク質の機能の低下を通常引き起こすので、確認された遺伝子欠陥の病態生理学の結果はよく理解されている。このタンパク質は、鉄輸送体DMT1(Nramp2またはDCT1とも呼ばれる)(FLEMINGら、Nat. Genet.、16、383〜386、1997;GUNSHINら、Nature、388、482〜488、1997)、フェロポルチン(ferroportin)(IREG1またはMTP1とも呼ばれる)(DONOVANら、Nature、403、776〜781、2000)、ならびにフェロプロチンに結合する銅オキシダーゼ、即ちセルロプラスミン(HARRIS、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96、10812〜10817、1999;YOSHIDAら、Nat. Genet.、9、267〜272、1995)およびヘファスチン(haephastin)(VULPEら、Nat. Genet.、21、195〜199、1999)を含む。
【0003】
これに対して、遺伝的鉄過剰に関連するいくつかの異常により、鉄ホメオスタシスの制御におけるその機能的役割がほとんど理解されずに残っている種々のタンパク質が同定された。ヒトにおいては、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は、食事性鉄分の過剰吸収により引き起こされる一般の常染色体上の劣性遺伝子疾患であり、血漿、ならびに特に膵臓、肝臓および皮膚を含む複数の器官における鉄過剰を引き起こし、これらの器官や組織において鉄沈着による損傷となる。
【0004】
ヘモクロマトーシスは、通常、染色体6p上に位置するHLA−結合ヘモクロマトーシス遺
伝子(HFEと名付けられる)の突然変異によるものであり、多くの患者はHFEのC282Y突然
変異の同型接合体である(FEDERら、Nat. Genet.、13、399〜408、1996)。加えて、他の遺伝子座が、異なるHHファミリーに含まれている:7q上のトランスフェリン受容体2遺伝
子(TFR2)のナンセンス突然変異が、2つのHH非−HLA−結合ファミリーで報告されており(CAMASCHELLAら、Nat. Genet.、25、14〜15、2000)、幼時ヘモクロマトーシスの遺伝子座は、最近、染色体アーム1qに位置付けられた(HFE2)。最後に、鉄吸収は、体の鉄蓄積のレベルと赤血球造血に必要な鉄の量とに応答して調節されることが長く知られていた(ROYら、FEBS Lett.、484、271〜274、2000)が、腸の細胞が鉄吸収を調節することをプログラムするシグナルの分子の性質は、まだ同定されずに残っている。
【0005】
転写因子USF2をエンコードするマウス遺伝子の破壊、および肝臓でのグルコース依存性遺伝子調節におけるその結果(VALLETら、J. Biol. Chem.、272、21944〜21949、1997)
が、最近報告されている。
本発明者らは、今回、驚くべきことに、Usf2 -/-マウスが、コントロールよりもノックアウトマウスにおいて鉄含量が大幅に低い脾臓以外の複数の臓器での鉄過剰を発生させることを観察している。これらの鉄代謝異常は、遺伝性ヘモクロマトーシスにおいて観察さ
れることに類似している。しかしながら、この病理でのその密接な関係のために以前に同定された、例えばHFEまたはTFR2などの遺伝子における変化は観察されなかった。よって
、本発明者らは、Usf2 -/-マウスおよび野生型マウスの肝臓の間でのサプレッシブサブトラクティブハイブリダイゼーション(suppressive subtractive hybridization)により、Usf2 -/-マウスにおける鉄ホメオスタシスの異常の原因になるであろう新しい遺伝子の候
補を探索した。これは、ペプチドヘプシジンをエンコードするcDNAの単離を許容した。
【0006】
ヘプシジン(肝臓発現抗菌ペプチド(liver-expressed antimicrobial peptide)、LEAP-1とも呼ばれる)は、最近、ヒト血液の限外ろ過物と尿とから精製され、抗菌活性を示すジスルフィド結合したペプチドであることが見出された(KRAUSEら、FEBS Lett.、480、147〜150、2000;PARKら、J. Biol. Chem.、276、7806〜7810、2001)。このタンパク質は、肝臓において83アミノ酸を含むプロペプチドの形態で合成され、20、22または25のアミノ酸の成熟ペプチドに変換される(PARKら、J. Biol. Chem.、276、7806〜7810、2001;PIGEONら、J. Biol. Chem.、276、7811〜7819、2001)。最近、ヘプシジンはまた、実験的または自然発生的に鉄過剰であるマウスの肝臓で大量に合成されることが報告された(PIGEONら、J. Biol. Chem.、276、7811〜7819、2001)。この過剰発現と鉄過剰との関係は疑問であるが、それがおそらく慢性鉄過剰に関する炎症に起因するであろうことが示された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対して、本発明者らは、今回、ヘプシジン発現の完全な欠損は、Usf2 -/-マウスにおいて進行性組織鉄過剰を導くことを示している。さらに、彼らは、構成性肝臓特異的プロモーターの調節下でヘプシジンを発現する導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスを得て、該トランスジェニックマウスが極度の貧血であったことを観察している。
これらの発見は、特に、小腸による食事性鉄分の捕捉、または胎盤関門を通しての母体−胎児(maternofoetal)の鉄分輸送、および網内細胞マクロファージによる鉄分再利用
を調節することを介する、鉄ホメオスタシスの新しい調節手段を提案することを許容する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、システイン残基を位置2、5、6、8、9、14、17および18に有し、次
の配列:
Ile Cys Ile Phe Cys Cys Gly Cys Cys His Arg Ser Lys Cys Gly Met Cys Cys Lys Thr (SEQ ID NO: 1)
と少なくとも50%の同一性もしくは60%の類似性、好ましくは少なくとも60%の同一性もし
くは少なくとも70%の類似性を有する20アミノ酸の配列を含むポリペプチドの使用、また
は鉄過剰を減少させるために有用である医薬品を製造するための、上記ポリペプチドをエンコードする核酸の使用を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】野生型およびUsf2 -/-マウスの肝臓および膵臓での鉄のレベルの測定結果。
【図2】野生型およびUsf2 -/-マウスの脾臓での鉄のレベルの測定結果。
【図3】野生型およびUsf2 -/-マウスの肝臓でのHFEおよびTFR2遺伝子の発現の測定結果。
【図4】Usf2およびヘプシジン遺伝子のゲノムの構成。
【図5】ヘプシジン遺伝子の発現レベルのノザンブロット解析。
【図6】ヘプシジンの腸およびマクロファージへの影響を示すモデル図。
【図7】TTR-hepc1トランスジェニックマウス創始者の作製のための構築物、および異なる創始者のサザンブロット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の使用のために好ましいポリペプチドまたは核酸は、例えば配列SEQ ID NO: 1を有する20アミノ酸のポリペプチドにより、もしくは配列:
Phe Pro Ile Cys Ile Phe Cys Cys Gly Cys Cys His Arg Ser Lys Cys Gly Met Cys Cys Lys Thr (SEQ ID NO: 2)
を有する22アミノ酸のポリペプチドにより、もしくは配列:
Asp Thr His Phe Pro Ile Cys Ile Phe Cys Cys Gly Cys Cys His Arg Ser Lys Cys Gly Met Cys Cys Lys Thr (SEQ ID NO: 3)
を有する25アミノ酸のポリペプチドにより表されるヒトヘプシジンの成熟形態、または上記ポリペプチドをエンコードする核酸である。
上記ヘプシジンの成熟形態の前駆体、即ち、プロヘプシジンおよびプレプロヘプシジン、ならびに上記前駆体をエンコードする核酸を用いることもできる。
本発明の使用に好適なポリペプチドまたは核酸のその他の例としては、脊椎動物、好ましくは哺乳動物の、ヒトヘプシジンの成熟形態もしくはその前駆体の同種、または上記ポリペプチドをエンコードする核酸である。ヒトヘプシジンの公知の脊椎動物の同種として
は、例えばラットヘプシジン、マウスヘプシジン、マスヘプシジンが挙げられる。
ヘプシジンの成熟形態、および結果としてプロ−またはプレプロ−配列の部分の全てを含むキメラポリペプチドを用いることもできる。
【0011】
本発明はまた、上記で定義されるポリペプチドの機能性同等物の使用を包含する。ここで、機能性同等物とは、ペプチド変形物、またはヘプシジンの成熟形態と同じ機能的活性を有するその他の化合物として定義される。そのような機能性同等物の例としては、配列SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 3を有するポリペプチドのいずれかの3次
元構造をまねて設計された化合物が挙げられる。特に関心があるものとしては、改良された安定性と生物学的半減期とを有する上記ポリペプチドの誘導体である。そのような誘導体の典型的な例としては、例えばアミノ酸配列が逆であり、L-アミノ酸がD-アミノ酸で置換された「レトロインバーソ(retro-inverso)」ペプチドが挙げられる。
これらのペプチドおよび核酸の全ては、当業者に公知の典型的な方法により得ることができる。例えば、20アミノ酸および25アミノ酸の形態のヘプシジンは、KRAUSEら、またはPARKらに開示のように、血漿または尿から得ることができる。代わりに、ヘプシジンを発現する細胞を培養し、細胞培養物から該ポリペプチドを回収することにより得ることもできる。
特定の態様によると、上記細胞は、上記で定義されるポリペプチドのうち一つをエンコードする核酸で形質転換された宿主細胞である。
特にペプチド誘導体の場合、化学的合成もまた用いることができる。
ヘプシジンをエンコードする核酸は、例えば該核酸と選択的にハイブリダイズし得る適切なプライマーを用いて、脊椎動物のゲノムまたはcDNAライブラリーから得ることができる。また、ポリ核酸合成の典型的な技術により得ることもできる。
【0012】
本発明はまた、鉄吸収を減少させることができるヘプシジンの機能性同等物のスクリーニング方法を提供する。
例として、鉄ホメオスタシスの調節におけるヘプシジンの生物学的特性を有する機能性同等物は、ヘプシジンが欠乏した動物、特に非ヒト哺乳動物、例えば、ヘプシジン発現の欠損を有し、結果として鉄過剰であるノックアウトマウスから容易にスクリーニングすることができる。
特に、鉄吸収を減少させることができるヘプシジンの機能性同等物のスクリーニング方法は次の工程を含む:
−ヘプシジン発現が欠損したノックアウト動物に、鉄吸収を減少させる能力を試験する化合物を投与し;
−該動物における鉄過剰についての該化合物の影響を測定する。
本発明により得られる医薬品は:
−ヘモクロマトーシスの全ての形態;
−例えば、サラセミア等の遺伝性および/または先天性貧血に関する二次的鉄過剰;
ならびにこれに関連する疾患の予防および/または治療に有用である。これらの後者の疾患は、例えば肝癌、心筋症または糖尿病を含む。
【0013】
他の態様によると、本発明はまた、腸による食事性鉄分の捕捉の増大および/またはマクロファージによる鉄再利用の増大を介しての鉄吸収の増加のために有用な医薬品を製造するための、ヘプシジンの発現またはヘプシジンの活性の阻害剤の使用を提案する。該医薬品は、貧血または貧血に関連する疾患の治療に有用である。これは、特に炎症性の症候群に関連する場合、例えばリウマチ性多発関節炎などの骨関節の疾患、悪性病変(malignacies)などの、感染や炎症などの条件下で起こる急性または慢性疾患に関連する貧血を
特に含む。
ヘプシジンの発現の阻害剤は、例えばアンチセンスRNAもしくはDNAまたはリボザイムを含む。
ヘプシジンの活性の阻害剤は、例えば抗ヘプシジン抗体、特にヘプシジンの成熟形態に対する抗体を含む。
【0014】
本発明はまた、例えばトランスジェニック動物、特に、その発現がその動物において貧血を誘導する、ヘプシジンを発現する導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスなどの非ヒトトランスジェニック哺乳動物を用いるヘプシジンの活性の他の阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
例えば、鉄吸収を増大させることができるヘプシジンの活性の阻害剤のスクリーニング方法は、次の工程を含む:
−ヘプシジンを発現する導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に、ヘプシジンの活性の阻害剤を介して鉄吸収を増大させる能力を試験する化合物を投与し;
−該動物における貧血についての該化合物の影響を測定する。
【0015】
本発明により得られる医薬品は、それらの性質に応じて種々の方法で投与できる:
例えば、ヘプシジンポリペプチドもしくはその機能性同等物、および抗ヘプシジン抗体などのヘプシジン阻害剤は、そのまま、または適切な担体もしくは賦形剤と混合して投与できる。これらは全身または局所的に用いることができる。投与の好ましい経路は、例えば筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内の注射を含む非経口の経路である。
医薬品が経口投与に適した形態であり、有効成分を胃および腸の酵素から防御することが可能であれば、経口経路も用いることができる。
【0016】
上記に示したように、例えば細胞内で上記ポリペプチドの発現を可能にするために、上記のヘプシジンポリペプチドのいずれかをエンコードする核酸、または治療される被験対象の細胞内でヘプシジンの発現を抑制するために、アンチセンスRNAに転写された核酸な
どの核酸分子を用いることもできる。
この場合、上記核酸分子は、遺伝子輸送の典型的な技術により標的細胞に導入することができる。
典型的には、上記核酸分子は適切なプロモーターの転写制御下に置かれる。プロモーターの選択は、医薬品の意図する使用、および/または標的器官もしくは組織に依存する。よって、構成的もしくは誘導的(inductible)のいずれか、および/または広布もしくは組織特有のいずれかであるプロモーターを選択することができる。
このように得られた発現カセットは、裸のDNAとして細胞に直接輸送するか、例えばア
デノウイルス由来ベクター等のウイルスベクターのような適切なベクター内に配置することができる。
輸送方法および/またはベクターの選択は、標的器官もしくは組織、および/または短期間の発現(一過性発現)もしくは安定した発現のどちらが必要であるかに依存する。
遺伝子輸送は、治療される被験対象から移動され、その後、該被験対象に再移植される細胞について体外で(ex vivo)行うか、または該被験対象に核酸を直接投与することに
より行うことができる。
【0017】
本発明はまた、遺伝子的修飾がヘプシジン発現の異常となる、遺伝子的に修飾された非ヒト動物を提供する。本発明はまた、上記遺伝子的に修飾された動物から得られる細胞、組織、器官等の生物学的材料をも含む。
これは、特にノックアウト動物、好ましくはノックアウト哺乳動物、特に機能性ヘプシジンを発現しないノックアウトマウスを含む。このヘプシジンの発現の欠乏は、該動物における鉄過剰を誘導する。転写因子USF2をエンコードする遺伝子が不活性化されている、VALLETら(J. Biol. Chem.、272、21944〜21949、1997)により開示された公知のノック
アウトマウスは除く。
本発明のノックアウト動物は、ヘプシジンの遺伝子を完全または部分的に不活性化することにより得ることができ、上記不活性化はヘプシジンの産生の欠如またはその機能の喪
失となる。
ヘプシジンの遺伝子の不活性化は:
−上記タンパク質の産生の欠如もしくはその機能の喪失となる、ヘプシジンをエンコードする配列、および/または
−ヘプシジンの産生の欠如もしくは産生されるヘプシジンの量の劇的な減少となる、ヘプシジンの発現を調節する少なくとも1つの調節配列、
を標的とすることができる。
【0018】
ヘプシジン発現の異常を有する、本発明の遺伝子的に修飾されたその他の動物は、その発現がその動物において貧血となる、ヘプシジンを発現する導入遺伝子を有するトランスジェニック動物、好ましくはトランスジェニック哺乳動物、特にトランスジェニックマウスである。
トランスジェニックまたはノックアウト動物の好適な作製方法は、当業者に公知であり、例えば:Manipulating the Mouse Embryo、第2版、HOGANらによる、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1994;Transgenic Animal Technology、C. PINKERT編、Academic Press Inc.、1994;Gene Targeting:A Practical Approach、A.L. JOYNER編、Oxford University Press、1995;Strategies in Transgenic Animal Science、G.M. MONASTERSKYおよびJ.M. ROBL編、ASM Press、1995;Mouse Genetics:Concepts and Applications、Lee M. SILVERによる、Oxford University Press、1995に開示される。
【0019】
ヘプシジンを発現する導入遺伝子を有するトランスジェニック動物とともに、機能性ヘプシジンを発現しないノックアウト動物は、鉄ホメオスタシスの機構を研究するためのモデルとして用いることができる。これらは、上述したように、鉄吸収においてヘプシジンと同じ効果を有する化合物のスクリーニングのため、または鉄吸収においてヘプシジンの効果を阻害し得る化合物のスクリーニングのために用いることもできる。
【0020】
本発明はまた、鉄吸収の異常がヘプシジンの変異またはヘプシジンの産生異常に関連するかを検出するための診断方法をも提供する。
例えば本発明は:
−鉄吸収の異常を患う被験対象からの生体試料においてヘプシジンの量を測定することを含む、該異常がヘプシジンの産生異常に関連するかを検出する方法;
−鉄吸収の異常を患う被験対象から得られる核酸試料においてヘプシジンの遺伝子の変異を検出することを含む、該異常が機能性ヘプシジンの産生を減ずる変異に関連するかを検出する方法
を提供する。
ヘプシジンの量を測定するために好適な生体試料は、例えば、血液、尿もしくは羊水試料、または臓器生検、特に肝臓生検もしくは胎盤生検を含む。
機能性ヘプシジンの産生を減ずる変異を検出するために好適な核酸試料は、RNA、cDNA
またはゲノムDNAを含む。
生体試料中のヘプシジンの量は、例として、HPLCクロマトグラフィー、質量分析等の公知の方法により、または抗ヘプシジン抗体を用いる免疫学的検定により容易に測定することができる。
ヘプシジンの遺伝子における変異は、試験されるDNA試料から以前に単離された該遺伝
子またはその一部分を配列決定し、鉄ホメオスタシスの異常を有さない一またはいくつかの被験対象から得ることができる、対応する野生型配列と、配列を比較することにより容易に検出することができる。
【0021】
本発明は、ノックアウト動物におけるヘプシジンの産生の欠乏、またはトランスジェニック動物におけるヘプシジンの過剰産生の影響を説明する実施例に言及する、次の付加的な記述によりさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の説明としてのみ与えられ、その限定のいずれをも構成しないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0022】
実施例1:ヘプシジン発現が欠如したノックアウトマウスの特性
材料および方法
Usf2 -/- マウスの作製と遺伝子型の決定
Usf2遺伝子の破壊は、以前に記載されている(VALLETら、J. Biol. Chem.、272、21944〜21949、1997)。変異したアレレは、マウスUSF2遺伝子のエキソン7中の、プロモーターがないIRESβgeoカセットを含む。研究したマウスは全て、C57BL/6および129/Sv株からの寄与を含んだ混合の遺伝的バックグラウンドを有する。マウスは、kgあたり280 mgの炭酸第二鉄を含む標準の実験室マウス用固形試料(AO3、UAR、フランス)で維持した。マウスは、2.5ヶ月から19ヶ月までの齢で犠牲にした。マウス−尾DNAについての遺伝子型の決定は、野生型(WT)およびUSF2ノックアウトアレレを同定するために、単独のPCR反応を用
いて行った。ゲノムDNA(0.5〜1μg)を、3つのプライマーを含む50μgの反応で用いた:野生型USF2アレレは、次のプライマーを用いて増幅した:
−フォワード(イントロン6にアニールする):
GCGAAGCCCTGGGTTCAATC(SEQ ID NO:4)および
−リバース(イントロン7にアニールする):
GGGGTCCACCACTTCAAGAGG(SEQ ID NO:5)。
【0023】
ノックアウトUSF2アレレは、次のプライマーを用いて増幅した:
−フォワード:
GCGAAGCCCTGGGTTCAATC(SEQ ID NO:6)および
−リバース(標的構築物のNeo選択マーカーにアニールする):
GAATTCTCTAGAGCGGCCGGAC(SEQ ID NO:7)。
PCRは、以下のように行った:20mM Tris-HCl(pH8.4)、50mM KCl、0.05% W-I、2mM MgCl2、5%グリセリン、0.04%ブロモフェノールブルー、0.2mMの各dNTP、0.2μMの各プライマー、2ユニットのTaqポリメラーゼ(Gibco)中で、94℃で4分間の最初の変性工程および72℃で5分間の最後の伸長工程とともに37サイクル(各サイクルは、94℃で30秒、56℃で30秒、および72℃で40秒である)。反応を、エチジウムブロマイドを含む1.5〜2%アガロースゲル上で分析した。このマウス遺伝子型の決定のためのPCR法は、以前に報告されたサザンブロット法(VALLETら、J. Biol. Chem.、272、21944〜21949、1997)と同様の結果を与えることがわかった。
【0024】
サプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)によるサブトラクテッ
ド(subtracted)ライブラリーの作成
以前に記載されたように全RNAを調製した(CHOMCZYNSKIおよびSACCHI、Anal. Biochem.、162、156〜159、1987)。ポリアデニル化RNAをオリゴ(dT)セルロース(Boehringer Mannheim Biochemica)を用いて単離した。SSHは、全ての工程において製造業者の勧告に従い、PCR-select(登録商標)cDNAサブトラクションキット(Clonetech)を用いて、5ヶ月齢目の同型接合のUSF2欠損マウスからの3つのプールされた肝臓RNA(「ドライバー」)、および5ヶ月齢目の野生型マウスからの肝臓RNA(「テスター」)の間で行った。簡単に、連結されたテスター14 ngおよび非−連結ドライバーcDNA 420 ngを混合し、変性して再びアニールするのを許容した。サブトラクティブハイブリダイゼーション後、cDNA 1μlを2回転のPCRにより増幅した。サブトラクテッドcDNAライブラリーは、AdvanTAge (登録商標) PCRクローニングキット(Clontech)を用いてpT-Advベクターにクローニングした。Advantage cDNAポリメラーゼミックス(Clonetech)を用いた2次PCR(15サイクル)
後、サブトラクテッドPCR cDNAミックスを、クローニング効率を最大にするように、1ユ
ニットのTaq DNAポリメラーゼ(Gibco BRL)とともに72℃でさらに10分間インキュベートし、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)で精製した。ライゲーション混合物を、Cell-Porator(登録商標)(Gibco BRL)を用いたエレクトロポレーション(1.8 kV)により、ElectromaxバクテリアDH10B株(Gibco BRL)に導入した。アンピシリン(100μg/ml)を含む22×22 cmの寒天プレート上にライブラリーを置き、40μlのX-gal(40 mg/ml)および40μlのIPTG(0.1M)とともに広げた。バクテリアをコロニーが見えるまで37℃で培養し、青/白染色が明確に区別できるまで4℃で保存した。
【0025】
リバースノザン高密度ブロットおよびスクリーニング
合計400の個体のクローンを収集し、水30μlに再懸濁し、100℃で10分間加熱し、次い
で氷中に5分間置き、5分間遠心分離した。3μlの透明な上清を用いて、次のプライマーとともにPCRを行った:
−フォワード:
5'-CAGGAAACAGCTATGACCATGATTAC-3'(SEQ ID NO:8)および
−リバース:
5'-TAATACGACTCACTATAGGGCGA-3'(SEQ ID NO:9)。
PCR産物をHybond-N+フィルター(Amersham Pharmacia)上にブロットした。ブロットを、以下に記載のように野生型またはUsf2 -/-マウスの肝臓からのポリアデニル化RNA 2μgとともに合成した、32P-dCTP-標識二本鎖cDNA(RTS RadPrime DNA Labeling System、Gibco)とともに72℃で一晩ハイブリダイズした。ブロットを68℃で20分間、2×SSC/0.1% SDS 中で4回、および68℃で20分間、0.2×SSC/0.1% SDS中で2回洗浄した。
【0026】
逆転写およびRT-PCR
二本鎖cDNAを、20μl中、2μgの全RNA(またはサブトラクテッドライブラリーについてはポリA RNA)とともに、0.25 mM 各dNTP、200 ngのランダムヘキサヌクレオチドプラ
イマー、20ユニットのRNAsin(Promega)、10 mM DTTおよび200ユニットのM-MLV逆転写酵素(Gibco)の存在下で合成した。サーマルサイクラー(Perkin Elmer Cetus)中、70℃で10分間RNAを変性させた後、96℃で6分間逆転写酵素を不活性化する前に、反応を42℃で1時間行った。反応の最後に、80μlの10 mM Tris-HCl (pH 8.0)および0.1 mM EDTA (pH 8.0)を添加した。50μlの20mM Tris-HCl(pH8.4)、50mM KCl、2mM MgCl2、0.05%(v/v)W-1、0.2mMの各dNTP、1pmolのフォワードおよびリバース特異的プライマー(以下に列挙する)、1pmolのフォワードおよびリバースコントロールβ−アクチンプライマー、ならびに2ユニットのTaqポリメラーゼ(Gibco)中の5μlの逆転写酵素とともにPCR増幅を行った。PCR条件は、94℃で20秒の変性、50℃で20秒のアニーリング、および72℃で20秒のプライマー伸長が25サイクルであった。PCRに続いて、増幅産物(HEPC1またはHEPC2について171 bp、β−アクチンについて250 bp)を1.5%アガロースゲル上での電気泳動により分離した。
【0027】
プライマーの配列は、次のとおりであった:
*HEPC1:
−フォワード:
5'-CCTATCTCCATCAACAGATG-3'(SEQ ID NO:10)および
−リバース
5'-AACAGATACCACACTGGGAA-3'(SEQ ID NO:11);
*HEPC2:
−フォワード:
5'-CCTATCTCCAGCAACAGATG-3'(SEQ ID NO:12)および
−リバース:
5'-AACAGATACCACAGGAGGGT-3'(SEQ ID NO:13);
*β−アクチン:
−フォワード:
5'-AGCCATGTACGTAGCCATCC-3'(SEQ ID NO:14)および
−リバース:
5'-TTTGATGTCACGCACGATTT-3'(SEQ ID NO:15)。
【0028】
DMT1の増幅に用いたプライマーは、次のとおりであった:
*IREなしのDMT1イソ型:
−フォワード:
5'-TCCTGGACTGTGGACGCT-3'(SEQ ID NO:16)および
−リバース:
5'-GGTGTTCAGAAGATAGAGTTCAGG-3'(SEQ ID NO:17);
*IRE を含むDMT1:
−フォワード:
5'-TGTTTGATTGCATTGGGTCTG-3'(SEQ ID NO:18)および
−リバース:
5'-CGCTCAGCAGGACTTTCGAG-3'(SEQ ID NO:19);
*14Sを用いた標準化:
−フォワード:
5'-CAGGACCAAGACCCCTGGA-3'(SEQ ID NO:20)および
−リバース:
5'-ATCTTCATCCCAGAGCGA-3'(SEQ ID NO:21)。
【0029】
ノザンブロット
特異的mRNAを検出するのに用いるプローブの増幅のために用いたmRNAは:
*マウスヘモクロマトーシス(HFE)cDNA増幅用(1080 bp):
−フォワード:
5'- ATGAGCCTATCAGCTGGGCT -3'(SEQ ID NO:22)および
−リバース:
5'-TCACTCACAGTCTGTTAAGA -3'(SEQ ID NO:23);
*マウストランスフェリン受容体(TfR)cDNA増幅用(285bp):
−フォワード:
5'-GAAATCCCTGTCTGTTATAC -3'(SEQ ID NO:24)
−リバース:
5'-GGCAAAGCTGAAAGCATTTC -3'(SEQ ID NO:25);
*マウストランスフェリン受容体2(TFR2) cDNA 増幅用(333bp):
−フォワード:
5'-TACAGCTCGGAGCGGAACG -3'(SEQ ID NO:26)および
−リバース:
5'-TTACAATCTCAGGCACCTCC -3'(SEQ ID NO:27);
* マウスセルロプラスミンcDNA増幅用(350bp):
−フォワード:
5'-ACTTATTTCAGTTGACACGG -3'(SEQ ID NO)28)および
−リバース:
5'-GCAGCACATACACATACTGT -3'(SEQ ID NO:29);
*マウスヘムオキシゲナーゼ1(Hmox1)cDNA増幅用(258bp):
−フォワード:
5'-ATGGAGCGTCCACAGCCCG -3'(SEQ ID NO:30)および
−リバース:
5'-CCTTCGGTGCAGCTCCTCAG -3'(SEQ ID NO:31)
【0030】
各フラグメントは、Taqポリメラーゼおよび肝臓の全cDNAを用いて増幅し、アガロース
ゲル(Qiaquick PCR精製キット、Qiagen)を用いて精製し、TAベクター(AdvanTAgeクロ
ーニングキット、Clontech)にサブクローニングした。組換えプラスミドをプロトコルに
従って選択し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地中に増幅し、精製した(QIAprep Spin Miniprep、Qiagen)。各cDNAをEcoRIでの消化とアガロースゲルへの移入の後にベク
ターから精製した。HEPC1 mRNAの検出に使用したプローブは、サプレッシブサブトラクティブハイブリダイゼーションにより単離したpT-Adv/HEPC1のEcoRIによる消化物から調製した。各原料からのRNA 20μgをホルムアミド含有緩衝液中で変性させ、1%アガロース、2.2Mホルムアミドゲルで電気泳動した。以前に記載されたようにしてノザンブロットを行った(VALLETら、J. Biol. Chem.、272、1944〜21949、1997)。各ブロットを、ストリップし(stripped)、リボソーム18S cDNAと再プローブし、ロードしたRNAの組込み性と量とを確認した。
【0031】
サザンブロット
サザンブロットは、以前に記載されたように行った(VALLETら、J. Biol. Chem.、272
、21944〜21949、1997)。HEPC1プローブを、次のプライマーとともに増幅した1437bpの
マウスゲノムDNA断片から作成した:
−フォワード:
5'-GAGCAGCACCACCTATCTCCA-3'(SEQ ID NO:32)および
−リバース:
5'-AACAGATACCACAGGAGGGT-3'(SEQ ID NO:33)。
PvuIIで消化後、545bpの断片をアガロースゲルから精製してサザンブロットのプローブとして用いた。このHEPC1プローブは、相同のHEPC2領域と95%の同一性を示した。
【0032】
マウスの血液学的分析
マウスを犠牲にする前に眼窩後静脈切開により血液を得て、ヘパリンを添加した試験管(capiject(登録商標)T-MLH、Terumo(登録商標)medical corporation)に収集した。血液細胞総計と赤血球パラメータとをMaxMコールター自動分析器を用いて測定した。
【0033】
鉄測定および組織学
鉄レベルの定量は、IL test(登録商標)(Instrumentation Laboratory)を用いて器
官の断片または全体についてTorranceおよびBothwell (1968)により以前に記載されたよ
うに行った。組織学については、組織を4%ホルムアルデヒド中に固定し、パラフィンに包埋し、スライドに載せ、標準の方法を用いてプルシアンブルーおよび核赤対比染色により染色した。
【0034】
結果
Usf2 -/- マウスの肝臓と膵臓における大量鉄過剰
生育3ヶ月目以降の全てのUSF2 -/- マウスは、肝臓に濃茶色の色素沈着と膵臓に多少
の明白なブロンズ色の色素沈着とを示す。この表現型の特性は、鉄吸収の先天性異常であるヘモクロマトーシスの特徴であるので、我々は、Usf2 -/- マウスの鉄状態を分析する
ことを決定した。まず、鉄蓄積のレベルを評価するために、標準食餌で維持した野生型およびUsf2 -/- マウスの肝臓および膵臓について、Perlのプルシアンブルー染色を行った

結果を図1(A〜D)に示す:
凡例:(A) 8ヶ月齢の野生型マウス(×50)、(B) 8ヶ月齢のUsf2 -/- 同腹子および(C) 19ヶ月齢のUsf2 -/- マウス (×10)からの肝臓の断面。(D)の膵臓の断面は、8ヶ月齢のUsf2 -/- マウス(×12.5)からのものである。Cの矢印の頭は、肝細胞の核中の鉄を示す。Dの矢印の頭は、外分泌組織中に散在したランゲルハンス島を指す。
コントロールマウスは肝臓において陽性の鉄染色をほとんどまたは全く示さなかったが(図1A)、Usf2 -/- マウスは肝細胞において鉄蓄積を示した(図1B〜C)。この鉄沈着は、最初は門脈周囲の肝細胞に限られており、次いで年齢とともに、染色された肝細胞の数が増加した。19ヶ月齢までには、図1Cに示すように、鉄蓄積は多く、染色は肝臓の柔組織のい
たるところで均一であった。さらに、顕著な核鉄蓄積がいくつかの肝細胞で検出された(
図1B)。膵臓では、同様の、即ち、コントロールの組織では染色されず、Usf2 -/- マウスの外分泌膵臓では顕著な鉄の蓄積という結果が得られた(図1D)。
【0035】
動物生存中の鉄過剰をより正確に定量するため、2.5〜19ヶ月齢のマウスの肝臓と膵臓
とにおける鉄のレベルを測定した。
結果を図1(EおよびF)に示す:
凡例:コントロール(野生型で異型接合体のマウス、▲)ならびにUsf2 -/- マウス(
□)において測定した、年齢−依存の肝臓(E)および膵臓(F)の非−ヘム鉄濃度(乾燥組織1グラムあたりの鉄のマイクログラム)。
図1Eに示すように、鉄は、誕生後60および100日の間のマウスの肝臓において蓄積し、
野生型マウスにおけるよりも約10倍多い鉄含量に相当するプラトーに到達した。膵臓では(図1F)、鉄蓄積がより進行的であり、Usf2 -/- マウスにおけるレベルは野生型のマウス
におけるより20倍高い最大値であった。鉄蓄積は腎臓および心臓でも測定され、それぞれ、2−ならびに4−倍の蓄積を示した。最後に、Usf2 -/- の血清においてはコントロールマウスに比べて1.7−倍高い鉄レベルが見られた(コントロール[n=15]において3.550±259μgの鉄/lに対して、Usf2 -/- マウス[n=13]において6.274±514μgの鉄/l、P<0.0001)が、この増加は年齢−依存ではないと思われた。このUsf2 -/- マウスにおける血清鉄レベルの増加は、トランスフェリンの飽和における1.6−倍の増加(コントロール[n=6]において61±9%の飽和に対して、Usf2 -/- マウス[n=6]において95±9%の飽和、P<0.0004)に関連した。最後に、今までのところ分析した最高齢の雌(19ヶ月)においては、筋肉、子宮、肺および脳下垂体を含む試験した全ての組織における鉄レベルの増加とともに、鉄過剰が広がった(表示せず)。
【0036】
Usf2 -/- マウスの脾臓は、自然の鉄沈着に耐性である
結果を図2に示す:
図2の凡例:
(A)コントロール(野生型で異型接合体のマウス、▲)およびUsf2 -/- マウス(□)において測定した、年齢−依存の脾臓の非−ヘム鉄濃度(乾燥組織1グラムあたりの鉄のマ
イクログラム)。鉄をPerlの染色で染色した、(B)8ヶ月齢の野生型マウス(×20)および(C)8ヶ月齢のUsf2 -/- 同腹子(×20)の代表からの脾臓断面。RP、赤色脾髄;WP 白色脾髄。
試験した全ての他の組織に比べると、野生型マウスの脾臓において、示すように(図2A)年齢−依存の鉄蓄積が観察された。
Perlのプルシアンブルー染色と陽性の反応を示した顆粒が観察され、最初は赤色脾髄の細胞の間に散在していた(図2B)。我々は、この蓄積がマウス間で大きく変動することを見出し、これは各動物の(129/sv × C57BL/6)雑種株バックグラウンドに依存するであ
ろうことを示唆していた。この自然の鉄貯蔵は、C57BL/6マウスにおいて以前に報告されており、脾臓のマクロファージにおいて主に発生することが記載された(VENINGAら、Lab. Anim.、23、16〜20、1989)。驚くことに、Usf2 -/- マウスの脾臓において、鉄レベルは非常に低いままであり(図2A)、Perlのプルシアンブルー染色は完全に欠失していた(図2C)。
【0037】
Usf2 -/- マウスにおいて赤血球パラメータは影響されない
Usf2 -/- マウスにおける鉄蓄積の増加が異常造血性貧血に起因する可能性を除外する
ために、異なった年齢のコントロールおよびUsf2 -/- マウスにおける赤血球パラメータ
を測定した。赤血球細胞数(RBC、106/ml)、ヘモグロビン濃度(Hb、g/dl)および平均血
球容量(MCB、fl)の値は正常であった:RBC、HbならびにMCBは、それぞれ、野生型マウス(n=3)について10.3±0.3、16.73±0.49、および48.27±0.67;Usf2 -/- マウス(n=3)に
ついて10.0±0.3、15.67±0.06および48.63±1.36であった。
よって、興味深いことに、Usf2 -/- マウスにおいて観察された鉄異常は、鉄蓄積に対
する脾臓の耐性および正常の血液のパラメータを含めて、遺伝性ヘモクロマトーシスのマウスモデルであるHFE -/-マウスの表現型に著しく類似する(LEVYら、Blood、94、9〜11
、1999;ZHOUら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95、2492〜2497、1998)。
【0038】
HFEおよびTFR2遺伝子の発現は、Usf2 -/- マウスの肝臓において変更されない
USF2は転写因子であるので、鉄代謝に関係するタンパク質をエンコードする遺伝子の調節にUSF2が関与しうるかを測定した。HFE -/- マウスとUsf2 -/- モデルとの間の類似性
のために、HFE遺伝子の発現をまず確認した。最近、HHでの突然変異が報告された(CAMASCHELLAら、Nat. Genet.、25、14〜15、2000)トランスフェリン受容体−2をエンコードする遺伝子についても調べた。
結果を図3に示す。
図3の凡例:
野生型マウスおよびUsf2 -/- マウス(3〜11ヶ月齢)からの肝臓全RNA 20μgを電気泳動
し、ブロットした。ブロットをHFE (A)およびRTF2 (B)について32P標識プローブ(材料と方法に記載のようにPCRにより作成)とともにハイブリダイズした。
図3Aのノザンブロットに示すように、Usf2 -/- マウスの肝臓におけるHFE mRNAの発生量は、野生型のものに匹敵する。ノザンブロット分析もまた、遺伝子RTf2の肝臓での発現が、野生型マウスと比較して、Usf2 -/- マウスでは変更されないことを示した(図3B)。
【0039】
セルロプラスミン、ヘムオキシゲナーゼ1およびトランスフェリン受容体mRNAのレベル
についても、鉄バランスをかき乱す障害においてこれらのmRNAの発生量が変更されたことが報告されている(概説は、ANDREWSら、Nutr. Rev.、57、114〜123、1999を参照)ので
Usf2 -/- マウスにおいてモニターした。再び、これらのmRNAのレベルは、Usf2 -/- およびコントロールマウスにおけるものに匹敵することがわかった。
最後に、腸細胞に食事性還元鉄を活発に輸送する主要な膜貫通鉄摂取タンパク質である、DMT1遺伝子(Nramp2ということもある)の発現を分析した。DMT1の十二指腸での発現を、RT−PCRを用いた相対的定量(7匹のUsf2 -/-に対して、6匹のコントロールマウス)により分析した。2つのマウスの群の間で統計学的に有意な差は見られなかった(表示せず)。
【0040】
サブトラクションcDNAライブラリーの分析:ヘモクロマトーシスの推定の候補としてのヘプシジンの同定
Usf2 -/- マウスにおいてその発現のレベルが変更された遺伝子を同定するために、Usf2 -/- (ドライバー)および野生型(テスター)マウスの肝臓の間でサブトラクテッドcDNAライブラリーを行った(DIATCHENKO、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93、6025〜6030、1996)。リバースノザンブロットで分析したところ、Usf2 -/- マウスからの肝臓において、分析した400クローンのうちいくつかのクローンは下方に調節されていた(表示せず)。これらのクローンのうちの1つは、最近特性決定されたペプチドヘプシジンをエンコードする全長cDNAを含んでいた(KRAUSEら、FEBS Lett.、480、147〜150、2000; PARKら、J. Biol. Chem.、276、7806〜7810、2001; PIGEONら、J. Biol. Chem.、276、7811〜7819、2001)。
【0041】
染色体7におけるUsf2 およびヘプシジンの遺伝子のマウスでの構成
マウスのゲノムは、同一のマウスゲノミッククローン(Genbankクローン、受理番号 AC020841)上にともに位置する、2つの密接に関連するヘプシジン遺伝子を含む。これらの遺伝子は、PIGEONらにより、HEPC1およびHEPC2と呼ばれた(J. Biol. Chem.、276、7811〜7819、2001)。興味深いことに、ゲノミックCT7-8N15クローンもまた、マウスの染色体7におけるUsf2 遺伝子に極めて近接してHEPC1が位置することを明らかにした。PIGEONらは、HEPC1Usf2遺伝子のすぐ下流に位置したことを報告した(PIGEONら、J. Biol. Chem.、276、7811〜7819、2001)。他のゲノミッククローンである、RP23-22G9 (Genbank、受理番号AC087143)を分析することにより、Usf2遺伝子の一部分(エキソン8、9および10を包含する)もまた重複しており、実際に、HEPC1が短くされたUsf2遺伝子の下流にあったことが見出された。
Usf2およびヘプシジン遺伝子のゲノムの構成を図4に示す。
図4の凡例:
Usf2およびヘプシジン遺伝子を包含する遺伝子座領域の概略図(一定の比率で描かれていない)。標的とされるアレレは、エキソン7でのベータジオ(betageo)カセットの挿入で示される(VALLETら、J. Biol. Chem.、272、21944〜21949、1997)。データは、ゲノミッ
クRP23-22G9クローン(Genbank)に由来する。今までのところ、2つのヘプシジン遺伝子の
間の向きおよび距離に関するデータは得られていない。図の右側のサザンブロットは、BglIIで消化し、HEPC1プローブとハイブリダイズさせた、野生型、異型接合体および同型接合体のマウスの尾のDNAからである。遺伝子型に関わらず、予想される大きさ、12.4 kbpおよび5.1 kbpの2つのバンドが検出された。USF2プローブを用いて、同じバンドが検出された。
【0042】
HEPC2遺伝子は完全な機能性Usf2遺伝子の下流に位置し、HEPC1遺伝子は部分的Usf2遺伝子の下流に位置する。現在では、HEPC1およびHEPC2遺伝子の5'〜3'の相対的な向き、ならびにこれらの間の距離に関する情報は得られていない。
Usf2遺伝子およびヘプシジン遺伝子座が近接していることから、標的Usf2アレレのイントロン7における組換えの発生がHEPC1およびHEPC2遺伝子を消滅させるかまたは短くする
かを測定した。この仮定を確かめるために、野生型、Usf2 +/- またはUsf2 -/- マウスの尾のゲノムDNAとHEPC1プローブとでサザンブロットを行った(図4)。ゲノムDNAは、BglIIで消化した。AC087143遺伝子座の分析に基づき、この消化により、それぞれHEPC1およびHEPC2遺伝子を含む、5.1および12.4 kbpの2つの断片が生じると予測された。HEPC1およびHEPC2のハイブリダイズする領域の間の類似性が近い(95%を超える)ことにより、両方のバンドはHEPC1プローブにより明示されると予想された。図4のサザンブロットに示すように、これが見出されたことであった。Usf2 -/- マウスからのDNAについて同じパターンが観察されたことから、ヘプシジン遺伝子がUsf2 -/- マウスに存在すること、およびそれらが主要なリアレンジを受けていないことが示された。最後に、2つのバンドがエキソン8〜エキソン10に広がるUSF2プローブともハイブリダイズしたことから、USF2のエキソン8〜10が実際に重複することが示された。
【0043】
ヘプシジン遺伝子はUsf2 -/- マウスの肝臓において完全にサイレントである。
ヘプシジン遺伝子の発現のレベルをノザンブロット分析により測定した。実際、ヘプシジンmRNAは、Usf2 -/- マウスの肝臓において全く検出不可能であった(図5A)。Usf2 +/- マウスの肝臓が野生型マウスに比べて、少ない量のヘプシジンmRNAを含んでいたことは注目に値する。HEPC1およびHEPC2メッセンジャーの相対的なレベルをさらに評価するために、HEPC1およびHEPC2転写産物への特異的プライマーを設計した。RT-PCRにより、両方の遺伝子が野生型マウスの肝臓では活発に転写された(図5B〜C)が、HEPC1およびHEPC2転写産物の両方がUsf2 -/- マウスの肝臓には全く存在しなかったことが示された。
図5の凡例:
(A) 野生型、Usf2 +/- およびUsf2 -/- 動物(3〜11ヶ月齢)からの肝臓全RNA20マイクログラムを電気泳動し、ブロットした。ブロットを32P−標識HEPCプローブ(「材料と方
法」に記載のように作成)とハイブリダイズさせたが、これはHEPC1およびHEPC2転写産物の両方を認識すると考えられた。(B) 相対的なHEPC1およびHEPC2のレベルを、RT-PCRにより材料と方法に記載のように測定した。PCRに続いて、増幅産物(HEPC1またはHEPC2につ
いて171 bp、およびβ−アクチンについて250 bp)を1.5%アガロースゲル上の電気泳動により分離した。HEPC1およびHEPC2特異的プライマーのどちらも、それぞれHEPC2およびHEPC1 PCR産物を再増幅しなかったことから、各プライマー対の高い特異性が示された(表示せず)。
【0044】
HFEノックアウトマウスおよびUsf2 -/- ヘプシジン欠損マウスの間の鉄代謝の変化の類似性は、ヘプシジンがHFEと同じ調節経路で機能しているであろうことを示唆する。HFEが十二指腸粘膜の腺窩細胞にあるトランスフェリン受容体と物理的に相互作用することが示されている(WAHEEDら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96、1579〜1584、1999)。理論に結びつけられることなく、この相互作用がこれらの細胞の鉄の状態を調節し、これらの細胞が、次いで絨毛の先端における成熟細胞での先端および基底外側の輸送体の発現を調節することが仮定できる。ヘプシジンは、HFE/ベータ2ミクログロブリン/トランスフェリン受容体複合体との直接相互作用を介すると考えられるHFE活性に欠かせないであろう。同様
に、ヘプシジンは、マクロファージでの鉄貯蔵の調節に欠かせないであろう。図6に示す
モデルによると、変異HFEタンパク質の存在またはヘプシジン発現の完全な欠損は、腸で
の鉄吸収の増加およびマクロファージでの鉄貯蔵の減少の原因であろう。
このモデルにおいて、ヘプシジンは、腸細胞での鉄輸送を減少させることにより、またマクロファージが鉄を保存するようにプログラムすることにより鉄過剰を防止する。Usf2
-/-マウスにおいて、ヘプシジン欠損は腸の鉄輸送の増加およびマクロファージの鉄貯蔵の減少の原因であろう。
両方の条件下で、血漿の鉄はトランスフェリン結合能力を圧倒し、非−トランスフェリン結合鉄が心臓および膵臓を含む種々の組織に蓄積する。
【0045】
鉄ホメオスタシスにおいて提案されるヘプシジンの役割によると、ヘプシジン産生は、肝細胞におけるTFR2により媒介される、トランスフェリン−結合鉄の摂取に依存するであろう。これはおそらく、次に鉄吸収を増加ならしめるヘプシジン分泌の減少をTFR2欠損が導くとすると、なぜTFR2欠損がヒト遺伝的ヘモクロマトーシスの形態の原因であるかを説明するであろう。この仮定は、TFR2欠損被験対象またはTFR2ノックアウトマウスでの血漿ヘプシジンを測定することにより分析できる。
【0046】
実施例2:ヘプシジンを過剰発現するトランスジェニックマウスの特性
方法
トランスジェニックマウスの作製
プライマー
5'-GGGGGATATCAGGCCTCTGCACAGCAGAACAGAAGG-3' (SEQ ID NO: 34)および
5'-GGGGGATATCAGGCCTCTATGTTTTGCAACAGATACC-3' (SEQ ID NO: 35)
を用いてマウスhepc1 cDNAの全長cDNAを増幅した。
両方のプライマーはStuI部位を含む(下線部)。
hepc1 PCR断片を、マウストランスサイレチン(TTR)プロモーター(第1のエキソン、第1のイントロンおよびほとんどの第2のエキソンからなる)とSV40スモール-T ポリ(A)シグ
ナルカセットとの間に導入した。構築物は、キャップサイトの5'に3 kbのマウスTTR DNA
配列を有する(YANら、EMBO J.、9、869〜879、1990)。4.7 kbpのTTR-hepc1導入遺伝子は
、HindIIIでの消化によりプラスミド配列から分離され、前核マイクロインジェクション
に用いられた。
【0047】
PCRおよびサザンブロッティングによる遺伝子型の決定
標準的な方法に従ってサザンブロッティングを行った(SAMBROOKら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989)。ゲノムDNAを尾から次のように調製した:尾の5 mmの断片を各マウスから切断し、500 μlの消化ミックス (50 mM Tris、pH 8/100 mM EDTA/100 mM NaCl/1% SDS)中に入れた。プロテイナーゼK(200 μg)を添加し、55℃で一晩消化を行った。500 μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール (1/24/25)を添加することにより、試料を直接抽出した。ボルテックスおよび遠心分離後、透明な水相を1容のイソプロパノールで沈殿させた。サザンブロッティングのために、DNAをBamHIで消化して導入遺伝子を2回切断した。電気泳動後、DNAをナイロンメンブレン(Hybond-N+、Amersham)に移した。プローブは、前記のTTRプラスミドからの1.7kbpのBglII-HindIII断片に相当する(YANら、EMBO J.、9、869〜878、1990)。市場で入手可能なキット(DNA Labeling System、Gibco)を用いて、プローブをランダムプライミングによりdCTP 32Pで標識した。5.3 kbpの標識された断片は内在性TTR遺伝子に相当し、4.7 kbpの標識された断片は導入遺伝子に相当する。
PCR反応のために、ゲノムDNA(0.5〜1 μg)を、2つのプライマーを含む25 μgの反応に
用いた:
TTC-hepc1導入遺伝子を、プライマー:
- 5'-CTTTTTGCACCATGCACCTTTC-3' (SEQ ID NO: 36; TTRのイントロン1にアニールする)および
- 5'-AACAGATACCACACTGGGAA-3' (SEQ ID NO: 37; hepc1 cDNAにアニールする)
を用いて増幅した。
PCR反応は、次のように行った:20 mM Tris-HCl (pH 8.4)、50 mM KCl、0.05% W-I、2 mM MgCl2、0.2 mM 各dNTP、0.2 μM 各プライマー、2 ユニットのTaq ポリメラーゼ(Gibco)中で、94℃で4分間の最初の変性工程および72℃で5分間の最後の伸長工程とともに25サイクル(各サイクルは、94℃で40秒、50℃で40秒および72℃で40秒である)。612 bpの特異的産物が、同じ大きさの非特異的断片とともに増幅された。導入遺伝子の存在は、PCR産物を10ユニットのStuIで2時間消化して268 bpおよび344 bpを与えた後、明らかにされる。反応を、エチジウムブロマイドを含む1.5〜2%アガロースゲル上で分析した。非特異的断片の増幅は、導入遺伝子が存在しないことがゲノムDNAの欠失または分解によるものではないことを確実にする。マウス遺伝子型の決定のためのこのPCR法は、サザンブロット法と同じ結果を与えることがわかった。
【0048】
結果
TTR-hepc1トランスジェニックマウスの特性
線状にされた構築物の典型的なマイクロインジェクション法により、合計9つの独立し
たトランスジェニックマウス創始者(transgenic founder mice)を作製した。
構築物を概略的に図7Aに示す。
図7Bは、異なる創始者とのサザンブロットを示す。
3つのトランスジェニックマウス創始者(TH27、TH37およびTH52)は、それらの野生型マ
ウス(Wt)同腹子と区別できなかった。3つのトランスジェニックマウス創始者は、蒼白の
皮膚で誕生し、誕生後、数時間以内に死亡した(bb2、3および5)。最後に、残りの3つのトランスジェニックマウス創始者(TH5、35および44)の表現型は、明瞭であった:それらは
全身毛がなく、皮膚はしわくちゃであった。これらの動物について血液スミアを行い、しわの皮膚を持つ3つのマウスにおいて、強い変形赤血球症および低色素血症の証拠が見ら
れた。
上記の実施例は、鉄ホメオスタシスの鍵となる調節剤としてのヘプシジンの役割を強調する。ヘプシジンは、変異したときに鉄代謝の異常な調節およびHHの発展に関与し得る、新規の遺伝子の候補として提案される。最後に、上記の新しい鉄過剰疾患のマウスモデルは、鉄ホメオスタシスの理解とともに、HHにおける鉄貯蔵の予防および補正に対する新しい治療アプローチを試験するために適した動物モデルであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄過剰を減少させるための医薬品を製造するための、システイン残基を位置2、5、6、8、9、14、17および18に有し、配列SEQ ID NO:1と少なくとも50%の同一性または60%の類似性、好ましくは少なくとも60%の同一性または少なくとも70%の類似性を有する20アミノ酸の配列を含むポリペプチドの使用
【請求項2】
ポリペプチドが脊椎動物からのヘプシジンの成熟形態である、請求項1の使用
【請求項3】
脊椎動物が哺乳動物である、請求項2の使用
【請求項4】
医薬品が、ヘモクロマトーシスもしくはそれに起因する疾患の予防および/または治療に有用である、請求項1〜3のいずれかの使用
【請求項5】
疾患が肝癌、心筋症または糖尿病から選択される、請求項4の使用
【請求項6】
鉄吸収を増大させるための医薬品を製造するための、ヘプシジンの発現またはヘプシジンの活性の阻害剤の使用
【請求項7】
医薬品が貧血またはそれに起因する疾患の治療に有用である、請求項6の使用
【請求項8】
転写因子USF2をエンコードする遺伝子もまた不活性化されているノックアウトマウスを除く、ヘプシジンの遺伝子が不活性化されている非ヒトノックアウト動物
【請求項9】
ヘプシジンを発現する導入遺伝子を含む非ヒトトランスジェニック動物
【請求項10】
鉄吸収を減少させる化合物のスクリーニングのための、ヘプシジンの遺伝子が不活性化されている非ヒトノックアウト動物の使用
【請求項11】
鉄吸収においてヘプシジンの効果を阻害し得る化合物をスクリーニングするための、請求項9の非ヒトトランスジェニック動物の使用
【請求項12】
鉄吸収の異常を患う被験対象からの生体試料においてヘプシジンの量を測定することを含む、該異常がヘプシジン産生異常に関連するかを検出するための診断方法
【請求項13】
鉄吸収の異常を患う被験対象からの核酸試料においてヘプシジンの遺伝子の変異を検出することを含む、該異常が機能性ヘプシジンの産生を減ずる変異に関連するかを検出するための診断方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111755(P2012−111755A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263858(P2011−263858)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2003−501483(P2003−501483)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【Fターム(参考)】