説明

鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法

【課題】実環境で観察されるような、腐食の進行が速い微生物腐食に対して評価可能な、鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法を提供する。
【解決手段】炭酸物質、硫酸イオン、塩素イオンを含む嫌気条件の水溶液中に、鉄を電子供与体として、かつ、前記炭酸物質を炭素源として培養可能なメタン生成菌及び硫酸塩還元菌を存在させ、当該メタン生成菌及び硫酸塩還元菌を含む水溶液と鉄又は鉄を含む合金とを接触させ、又は、前記微生物を含む水溶液中に鉄又は鉄を含む合金を浸漬して、前記鉄又は鉄を含む合金を嫌気条件で腐食させた後、又は、更にその後、空気又は酸素を供給して、前記水溶液中の溶存酸素濃度を高めることにより好気条件として、前記鉄又は鉄を含む合金を腐食させた後、当該腐食量を測定して、前記鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄または鉄を含む合金に対して腐食能を有する微生物による鉄または鉄を含む合金の耐食性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2001年米国のFHWA(The US Federal Highway Administration)により金属の腐食に関わるコストの調査結果が報告された(非特許文献1)。本報告によると、米国では金属腐食による損失は年間2760億ドルに達し、国内総生産(GDP)の3.1%に相当すると報告されている。また、米国のガス産業において、パイプラインなどの腐食に掛かるコストが年間134億ドルに達し、このうちの約20億ドル(約15%)は微生物腐食によるものと報告されている(非特許文献2)。わが国においても腐食防食協会と日本防錆技術協会を中心とする腐食コスト調査委員会の調査により、1997年にわが国の腐食対策に講じた費用は3兆9千億円で、わが国の国内総生産(GDP)の0.8%に相当すると報告されている(非特許文献3)。以上のように、腐食による被害額は甚大であり、これを防ぐことは資源の乏しい我が国にとって重要な課題である。
【0003】
微生物腐食はこれまで鉄鋼材料を中心に多く報告されている。酸素が利用できる好気条件と、酸素が利用できない嫌気条件でそれぞれ異なる種類の微生物が鉄鋼材料の腐食作用を示すことが知られている。嫌気条件の微生物腐食の原因微生物として硫酸塩還元菌に関する多くの報告がある。硫酸塩還元菌は、海水などに含まれる硫酸塩を硫化物に還元する活性を有する。その結果発生する硫化水素は、鉄をはじめとしてさまざまな金属と硫化物をつくるため、強い腐食性が知られている。また、硫酸塩還元菌には、水素原子あるいは水素分子をプロトンに酸化できる酵素、ヒドロゲナーゼを有するものがある。嫌気条件下、すなわち酸化還元電位の低い還元的な環境条件では、中性条件においても水の分解により発生するプロトンを用いて、鉄表面でカソード反応が起こり、水素原子さらに水素分子が形成される(この反応にカップルして、アノードでは、鉄の酸化がおこり、Fe(II)が生成する)。この際、ヒドロゲナーゼ活性を有する硫酸塩還元菌は、カソード反応で生成する水素原子あるいは水素分子を、カソード反応で電子受容体となるプロトンに酸化し、鉄表面を復極させて、カソード反応を促進する。この結果、電子の授受が円滑にすすむため、嫌気条件における鉄の酸化、鉄のアノード溶解が促進される。このようなヒドロゲナーゼを有する硫酸塩還元菌による腐食促進メカニズムは、カソード復極説として知られている(非特許文献4)。
【0004】
例えば油井など、石油環境では、硫酸塩還元菌による腐食影響は、大きな課題になっている(非特許文献5)。段階的な希釈により硫酸塩還元菌を検出、存在量をモニタリングするための簡易なキットなどが、石油生産に関わる産業分野では使用されている(非特許文献6)。
【0005】
以上のように、硫酸塩還元菌による鉄鋼材料の微生物腐食は、広く知られており、その検出や存在量測定のための技術が報告されている。また、硫酸塩還元菌の増殖を抑制する方法なども考案されている。例えば、非特許文献7では、抗生物質を生産する微生物を共存させることで、硫酸塩還元菌の増殖を抑制する方法などが報告されている。
【0006】
また、硫酸塩還元菌のほかにも、嫌気環境に棲息する微生物生態系を構成する主要な微生物として、メタン生成菌がある。メタン生成菌を嫌気環境における腐食原因菌としては、一般的にこれまで認知されてはいない。例えば、非特許文献8には、微生物腐食の原因菌が紹介されているが、この中でメタン生成菌は、腐食原因菌として説明されていない。これは、硫酸塩還元菌の生成する硫化水素が極めて強力な腐食原因物質であるのに対して、メタン生成菌が生成するメタンは、腐食原因物質ではないことが、メタン生成菌が腐食原因菌としてみなされてこなかったことの、大きな要因として考えられる。
【0007】
【非特許文献1】Report FHWA-RD-01-156, September 2001.
【非特許文献2】National Energy Technology Laboratory, DE-FC26-01NT41158
【非特許文献3】わが国における腐食コスト(腐食防食協会、日本防錆技術協会)(1997)
【非特許文献4】Von Wolzogen Kuehr and van der Vlugt, Water 16, 147 (1934)
【非特許文献5】Petroleum Microbiology, edited by Atlas,R.M., Macmillan Publishing Company (1984)
【非特許文献6】Microbiologically Influenced Corrosion, NACE International
【0008】
p.43(1997)
【0009】
【非特許文献7】Zuo R, Wood TK. Appl Microbiol Biotechnol. 65: 747(2004)
【非特許文献8】腐食反応とその制御(第3版)ユーリック、レヴィー共著(産業図書)(1989)
【非特許文献9】Aspects of Microbially induced corrosion, papers from EUROCORR’96 and The EFC Working party on Microbial Corrosion, edited by Thierry,D., The Institute of Materials P.4(1997)
【非特許文献10】Pankhania,I.P., Moosavi,A.N. and Hamilton,W.A., J.Gen.Microbiol 132, 3357-3365 (1986)
【非特許文献11】Aspects of Microbially induced corrosion, papers from EUROCORR’96 and The EFC Working party on Microbial Corrosion, edited by Thierry,D., The Institute of Materials P.11-P.37(1997)
【非特許文献12】Daniels,L., Belay,N., Rajagopal,B.S. and Weimer,P.J., Science 237, 509-511(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、嫌気条件で微生物腐食の原因となる微生物として、硫酸塩還元菌については広く知られており、硫酸塩還元菌に対する検出方法や、腐食対策方法も報告されている。水やスラッジ等の環境試料から硫酸塩還元菌を検出する方法は、例えば米国のASTMによって ASTM D4412-84(2002) Standard Test Methods for Sulfate-Reducing Bacteria in Water and Water-Formed Deposits が定められている。
【0011】
しかしながら、硫酸塩還元菌に対する耐食性を評価する方法は確立されていない。硫酸塩還元菌を検出するために培養する際には、電子供与体として、水素ガスか、有機酸などの有機物を添加する必要がある。非特許文献9には、硫酸塩還元菌の電子供与体として用いられる物質が報告されている。水素の他に、有機酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ブチル酸、オキザル酸、コハク酸、マレイン酸、ピルビン酸など)、脂肪酸(炭素数18まで)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、など)、アミノ酸(アラニン、グルタミン酸、p-アミノベンゼン酸など)、糖類(フルクトース、グルコース、グリセロールなど)、炭化水素類(ノルマルアルカン、トルエン、キシレンなど)などが記載されている。硫酸塩還元菌を用いて、鉄や鉄を含む合金の腐食を調べる場合には、上記のように電子供与体を供給して硫酸塩還元菌を培養しながら、例えば腐食生成物をX線等を用いて解析して、硫酸塩還元菌による腐食生成物の特徴である硫化鉄を検出したり、電気化学的に腐食電流等を測定して、腐食速度を測定したりすることが報告されている(非特許文献10、非特許文献11)。電子供与体として主に用いられるのは有機酸や水素である。
【0012】
しかしながら、培養した硫酸塩還元菌を用いて、鉄又は鉄を含む合金を腐食させても、その腐食は実環境で観察される腐食と比較すると一般にきわめて軽微である。したがって、培養した硫酸塩還元菌のみを用いた腐食では、微生物腐食を過小評価してしまうため、鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価する方法として適当でない。また、硫酸塩還元菌以外の嫌気性微生物であるメタン生成菌については、腐食の原因微生物として必ずしも一般的には認識されていないのが現状である。
【0013】
しかしながら、メタン生成菌が腐食原因菌であることを示す学術的な報告はある。ダニエルス(Daniels)らは、メタン生成菌が鉄を腐食する性質を有することを報告している(非特許文献12)。ただし、非特許文献7のようにメタン生成菌の腐食原因性に関しては、学術的には一部報告があるが、一般的には認知されていない状況である。したがって、メタン生成菌を用いて、鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価している報告はない。実際の嫌気環境には、メタン生成菌と硫酸塩還元菌が共存していることが考えられる。メタン生成菌と硫酸塩還元菌の両方による微生物腐食が生じていることが考えられる。
【0014】
そこで、本発明では、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の両方を用いることで、実環境で観察されるような腐食の進行が速い微生物作用に起因する腐食に対しても評価可能な、鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を共存させることにより、鉄又は鉄を含む合金が実環境で生じるような激しい腐食を生じることを見い出した。これにより、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の両方を一緒に用いて、鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価する方法を確立し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨とするところは次の(1)〜(5)である。
(1) 炭酸物質、硫酸イオン、及び塩素イオンを含む嫌気条件の水溶液中に、鉄を電子供与体として、かつ、前記炭酸物質を炭素源として培養可能なメタン生成菌及び硫酸塩還元菌を存在させ、当該メタン生成菌及び硫酸塩還元菌を含む水溶液と鉄又は鉄を含む合金とを接触させ、又は、前記微生物を含む水溶液中に鉄又は鉄を含む合金を浸漬して、前記鉄又は鉄を含む合金を嫌気条件で腐食させた後、又は、更にその後、空気又は酸素を供給して、前記水溶液中の溶存酸素濃度を高めることにより好気条件として、前記鉄又は鉄を含む合金を腐食させた後、当該腐食量を測定して、前記鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価することを特徴とする鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
(2) 前記腐食量の測定を、2種類以上の鉄又は鉄を含む合金について行い、当該鉄又は鉄を含む合金それぞれの腐食量の測定結果を比較して、前記鉄又は鉄を含む合金それぞれの前記メタン生成菌及び硫酸塩還元菌に対する耐食性を相対的に評価することを特徴とする(1)の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
(3) 前記水溶液中の全炭酸濃度が100mg/L以上、硫酸イオン濃度が100mg/L以上7000mg/L以下、pHが5以上9以下、塩素イオン濃度が1000mg/L以上30000mg/L以下、嫌気条件における溶存酸素濃度が0.2mg/L未満であり、空気あるいは酸素を供給した後の好気条件における溶存酸素濃度が2mg/L以上であることを特徴とする(1)又は(2)の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
(4) 前記メタン生成菌がメタノコッカレス(Methanococcales)目メタノコッカシアエ(Methanococcaceae)科に属する微生物であり、前記硫酸塩還元菌がデスルホビブリオナレス(Desulfovibrionales)目デスルホビブリオナシアエ(Desulfovibrionaceae)科に属する微生物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
(5) 前記メタン生成菌が受託番号NITE BP−252で特定される微生物であることを特徴とする(4)の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
【0016】
尚、本発明で言うところの水溶液中の全炭酸濃度とは、溶存した二酸化炭素と炭酸物質の濃度の総和のことである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に存在させることにより、鉄又は鉄を含む合金の腐食を促進させることができるようになり、実環境の微生物腐食で観察されるような激しい腐食に対する耐食性を評価することが可能となる。
【0018】
これにより、耐食性の鉄鋼材料開発や防食技術の開発に有効活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明で使用するメタン生成菌と硫酸塩還元菌について説明する。本発明で使用するメタン生成菌と硫酸塩還元菌は、鉄を電子供与体として、かつ、二酸化炭素若しくは炭酸物質を炭素源として培養可能なメタン生成菌及び硫酸塩還元菌を使用する。ここで炭酸物質とは、二酸化炭素が水に溶解した形態の炭酸水素イオン、炭酸イオンおよびこれらの塩を意味する。たとえば、表1の鉄炭酸培地をもちいて、気相には窒素と二酸化炭素の混合ガス(N2(80%)+CO2(20%))を充填した嫌気条件で培養可能なメタン生成菌及び硫酸塩還元菌であれば、本発明の耐食性評価に使用することができる。
【0020】
ここで嫌気条件の目安としては、溶存酸素濃度が0.2mg/L未満となっていることを確認すればよい。メタン生成菌や硫酸塩還元菌は単離株でなくとも、これらの集積培養も使用可能である。もちろん、表1の培地は一例であって、このほかの培養方法によって取得した前記の条件を満足するメタン生成菌及び硫酸塩還元菌も本発明の耐食性の評価に使用することが可能である。前記の条件を満足するメタン生成菌としては、例えばメタノコッカレス(Methanococcales)目メタノコッカシアエ(Methanococcaceae)科に属するメタン生成菌がある。さらに、受託番号NITE BP−252で特定されるメタン生成菌メタノコッカス マルパリディスKA1(Methanococcus maripaludis KA1)がある。また、前記の条件を満足する硫酸塩還元菌としては、例えばデスルホビブリオナレス(Desulfovibrionales)目デスルホビブリオナシアエ(Desulfovibrionaceae)科に属する硫酸塩還元菌がある。
【0021】
次に、本発明の鉄または鉄を含む合金の微生物腐食に対する耐食性を評価する方法について説明する。ここでいう鉄を含む合金とは、鉄をその成分として含む合金を意味し、鉄の含有割合が低いものも含む。該当する鉄または鉄を含む合金としては、純鉄、炭素鋼、マンガン鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼などがある。まず、鉄若しくは鉄を含有する合金の耐食性を評価するために用いる水溶液について説明する。
【0022】
耐食性を評価するために用いる水溶液はメタン生成菌と硫酸塩還元菌の炭素源として用いるため、二酸化炭素若しくは炭酸物質を含む。特にメタン生成細菌ではこれら二酸化炭素およびその溶解した形態の炭酸水素イオンや炭酸イオンを還元してメタンを生成するので、二酸化炭素は重要な基質である。本水溶液の全炭酸濃度(溶存した二酸化炭素と炭酸物質の濃度の総和)は、100mg/L以上であることが好ましい。ここで、全炭酸濃度とは水溶液に溶存した二酸化炭素と炭酸物質の濃度の総和のことである。
【0023】
炭酸物質は二酸化炭素が水に溶解した形態の炭酸水素イオン、炭酸イオンおよびこれらの塩であり、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の炭素源として必要である。pH5以上pH9以下では、主要な存在形態は炭酸水素イオンである。また、pH緩衝作用があるため、耐食性の評価中にpHを変動させない効果もある。全炭酸濃度が100mg/L未満の場合は、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の炭素源が不足するため、腐食作用が弱くなる。また、pH緩衝作用が弱くなるため、pHが低下して、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の増殖を抑制するpHになる可能性がある。このため、本水溶液の全炭酸濃度は、100mg/L以上とする。緩衝能によりpHを安定化させることと、メタン生成菌による腐食を促進するため、可能であれば全炭酸濃度を1000mg/L以上とすることがより好ましい。なお、全炭酸濃度の上限については、飽和濃度まで用いることができる。
【0024】
なお、全炭酸濃度の測定については、例えば、JIS K 0101に記載の塩化ストロンチウム-塩酸滴定法や、赤外線分光法などの方法により測定することができる。
【0025】
また、本水溶液の硫酸イオン濃度は、100mg/L以上であることが好ましい。硫酸イオンは硫酸塩還元菌の基質であるため、本水溶液の硫酸イオン濃度が100mg/L未満であると、硫酸塩還元菌による腐食活性が落ちるからである。硫酸塩還元菌による腐食を促進するため、可能であれば硫酸イオン濃度を1000mg/L以上とすることがより好ましい。なお、硫酸イオン濃度の上限については、7000mg/L程度までが好ましい。海水の硫酸イオン濃度は2500mg/L程度であるが、化石海水などで硫酸イオン濃度が7000mg/L程度に達するものが報告されているからである。これ以上の硫酸イオン濃度でも耐食性評価は可能ではあるが、実際の腐食環境では考えにくいため、7000mg/L程度までが好ましい。
【0026】
また、本水溶液のpHは、pH5以上pH9以下であることが好ましい。pH5未満あるいはpH9を超えるpHの範囲では、微生物腐食の原因となるメタン生成菌と硫酸塩還元菌が共に増殖しにくい状態となるため、これらの微生物を用いて耐食性の評価を行なうことが困難になる。このため、本水溶液は、pHが5以上9以下であることが好ましい。
【0027】
また、耐食性を評価するために用いる水溶液は塩素イオンを含むことが好ましい。塩素イオンは、二酸化炭素や硫酸イオンとは異なり、メタン生成菌や硫酸塩還元菌の基質ではない。しかし、塩素イオンは石油環境や、船舶のバラストタンクなど、実環境で微生物に起因する腐食が起こる環境において、かん水や海水に起因すると考えられるものが環境水中に高濃度に検出される。海水には19000mg/L程度の塩素イオンが含まれる。塩素イオンは腐食促進物質でもある。したがって、耐食性を評価するために用いる水溶液は塩素イオンを含むことが好ましい。塩素イオン濃度が1000mg/L未満の場合には、微生物腐食で問題になるような激しい腐食が起きにくい。ただし、淡水の河川水環境など、1000mg/L未満の塩素イオン濃度においても耐食性を評価することはもちろん可能である。また、かん水や海水が蒸発により濃縮した条件であっても塩素イオン濃度が30000mg/Lを超えるような条件は実腐食環境ではあまり考えられない。塩素イオン濃度が30000mg/Lを超えるような高塩環境では、微生物の腐食影響よりも、塩素イオンによる腐食影響が強く出ること可能性がある。また、塩素イオン濃度が30000mg/Lを超える場合には、微生物腐食の原因となる硫酸塩還元菌およびメタン生成菌の生育にも阻害を及ぼす可能性がある。以上の理由により、本水溶液は塩素イオンを1000mg/L以上30000mg/L以下含むことが好ましい。
【0028】
また、嫌気条件における本水溶液の溶存酸素濃度は0.2mg/L未満とする。溶存酸素濃度が0.2mg/L以上であると、嫌気性微生物である、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の増殖が抑制されるからである。このため、本水溶液の溶存酸素濃度は0.2mg/L未満とする。
【0029】
本水溶液の溶存酸素濃度を0.2mg/L未満に維持して、メタン生成菌と硫酸塩還元菌により、鉄若しくは鉄を含有する合金を腐食させる際、嫌気条件に維持して腐食させる時間は24時間以上とすることが好ましい。24時間未満の場合には、嫌気条件の時間が短いため、メタン生成菌や硫酸塩還元菌による腐食が十分に進行しない可能性がある。ただしこのような場合であっても、腐食に伴って流れる電流を例えば無抵抗電流計などを用いて測定することにより、腐食の進行状況をモニタリングすることは可能である。
【0030】
また、上記嫌気状態での腐食だけでは、腐食程度が弱い場合等においては、更に、腐食を促進させて評価することができる。そのためには、嫌気条件で腐食させた後、本水溶液の溶存酸素濃度を上げて、鉄若しくは鉄を含有する合金の耐食性を評価すればよい。溶存酸素濃度としては、2mg/L以上に上げて維持することが好ましい。
【0031】
嫌気条件から溶存酸素濃度を上げて、耐食試験を行なう理由は、嫌気条件で微生物腐食させた後に、溶存酸素濃度を上げると、激しい腐食が起こる現象を、本発明者らが見い出したことによる。更には、嫌気条件での腐食程度と、その後溶存酸素濃度を上げた条件での腐食程度には正の相関関係があることを見出したことにもよる。
【0032】
実際の腐食環境においても、例えば、原油タンカーのカーゴタンクの底板のように、原油を積んでいる時は嫌気条件であるが、空荷のバラスト航海時は、酸素の存在する好気環境となり、嫌気条件と好気条件をくりかえす腐食環境で、激しい底板の腐食が起こることが知られている。
【0033】
嫌気条件から、溶存酸素濃度を0.2mg/L〜2mg/Lの間に上げた場合には、酸素による腐食促進の影響が小さい。したがって、この場合には、本水溶液の溶存酸素濃度を2mg/L以上に上げて維持する。尚、溶存酸素濃度を2mg/L以上に上げて維持する時間についてであるが、それまでに嫌気条件で腐食した鉄若しくは鉄を含有する合金は、酸素によって容易に酸化されるため、酸素にさらされると短時間で激しく腐食する。このような酸素による腐食影響はきわめて短時間にも現れるため、溶存酸素濃度を2mg/L以上に上げて維持する時間は、どのような時間であってもかまわないが、好気条件に維持する時間も24時間以上とすることが好ましい。酸素の腐食影響をより顕著にするためには、溶存酸素濃度を2mg/L以上に上げて維持する時間を24時間以上とすることが好ましい。尚、嫌気条件の後の、空気あるいは酸素の供給による好気条件での試験をおこなわず、嫌気条件のみの試験で鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価することも可能である。また、上記の嫌気条件、好気条件を1サイクルとして、このサイクルを繰り返して鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価することももちろん可能である。これらの条件は、腐食の実環境に合わせて選択することで、より定量的な評価が可能となる。
【0034】
鉄若しくは鉄を含む合金の耐食性を評価しようとする場合は、本水溶液中にメタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に存在させて、鉄若しくは鉄を含む合金とこれらの微生物を含む本水溶液とを接触させて耐食性を評価する。若しくは、これらの微生物を含む本水溶液中に鉄若しくは鉄を含む合金を浸漬して耐食性を評価する。ここで接触させる方法としては、例えば、窒素と二酸化炭素の混合ガスによる嫌気的なガス雰囲気中に、耐食性を評価しようとする、鉄または鉄を含む合金の表面を露出させた状態で、この露出した表面上に、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を含む水溶液を接触させて置く、あるいは、接触させて付着させることにより、本水溶液と接触した鉄又は鉄を含む合金を腐食させることで、耐食性の評価が可能である。
【0035】
また、前記の鉄若しくは鉄を含む合金と接触させるメタン生成菌と硫酸塩還元菌を含む水溶液、あるいは、その中に鉄若しくは鉄を含む合金を浸漬させるメタン生成菌と硫酸塩還元菌を含む水溶液は、メタン生成菌及び硫酸塩還元菌を添加する前に、前記のように各成分濃度を満たすように調製した水溶液をフィルターろ過やオートクレーブ等で滅菌したものを使用する。また、人工海水やフィルターろ過やオートクレーブ等で滅菌した自然海水などを用いることも可能である。これらにメタン生成菌と硫酸塩還元菌を添加することで、耐食性の評価の試験液として用いることが可能である。
【0036】
特殊な微生物の培養液を用いずとも、また、特別な栄養塩を添加しなくとも、人工海水やフィルターろ過やオートクレーブ等で滅菌した自然海水のように一般的に使用される腐食試験液を用いることが可能なことが、本発明の耐食性の評価方法の特徴である。
【0037】
市販の人工海水は、滅菌しなくとも液中にもともと微生物がわずかにしか存在しないので、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を添加することで、そのまま耐食性の評価の試験液として用いることが可能である。
【0038】
メタン生成菌及び硫酸塩還元菌は、いずれも嫌気性微生物であることから、耐食性を評価するために用いる水の溶存酸素濃度が0.2mg/L未満であることをあらかじめ確認することが望ましい。尚、嫌気環境で腐食試験をするため、試験液が接する気相は、窒素ガス、アルゴンガスを不活性な嫌気性のガスとして使用するとともに、炭素源となる二酸化炭素を含むことが好ましい。この二酸化炭素の濃度については、特に限定条件は無い。ただし、メタン生成菌と硫酸塩還元菌による腐食を促進するために、二酸化炭素濃度が1%以上であることがより望ましい。二酸化炭素と混合するガスとしては、上記のように窒素ガスやアルゴンガスなどを用いることができる。例えば、窒素あるいはアルゴンに対して二酸化炭素を19:1から1:1の比率の間で用いることがより望ましい。
【0039】
耐食性評価に用いるための、水溶液へのメタン生成菌と硫酸塩還元菌の初期添加量については、例えば初期濃度で103細胞/mL以上107細胞/mL以下とすることが好ましい。初期の濃度が103細胞/mL未満であると、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の増殖に時間を要するため、耐食性の評価に時間が掛かり効率的でない。また、初期の濃度が107細胞/mL以上であると、メタン生成菌と硫酸塩還元菌の濃度がすぐに飽和に達するため、これらの微生物の増殖にともなって起こる腐食影響を評価しづらくなる問題があるからである。また、本発明ではメタン生成菌と硫酸塩還元菌をともに存在させた条件で耐食性を評価するが、対照として、微生物を添加しない無菌の場合、あるいはメタン生成菌のみを添加した場合、あるいは硫酸塩還元菌のみを添加した場合についても耐食性を評価して比較することが好ましい。
【0040】
尚、耐食性を評価しようとする鉄若しくは鉄を含む合金の試験片の形状は、試験液と接触あるいは、試験液に浸漬できれば、どのような形状であってもかまわない。腐食をより進行させたい場合は、比表面積の大きな形状とすればよいし、入手の容易性から平板を用いることもできる。ただし、2種類以上の鉄または鉄を含む合金の耐食性を比較する場合は、同じ形状の試験片を用いることが好ましい。
【0041】
耐食性の評価における温度条件は、メタン生成菌及び硫酸塩還元菌の成育温度の範囲、20℃以上40℃以下が好ましい。温度が20℃未満、あるいは40℃を超える場合、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に安定に成育できないため、安定に耐食性を評価するために、20℃以上40℃以下が好ましい。
【0042】
鉄若しくは鉄を含む合金の腐食量の測定方法については、例えば、腐食試験前後の質量を測定し、その差から腐食量を求める方法がある。具体的には、試験終了後に、試験片を取り出して、腐食生成物を例えば水にといだクレンザーをつけた脱脂綿を用いて取り除いた後、水で洗浄して、例えばブロワーを用いて速やかに乾燥させた試験片の質量を測定し、試験前の試験片の質量からの変化を測定する方法である。
【0043】
また、試験中に試験片から溶出した鉄の量をフェナントロリン法等によって測定するなどによって、腐食量を測定することが可能である。また、試験片を例えばクロスポリッシング加工等により腐食した試験片の断面を観察できるようにしておいて、電子顕微鏡等を用いて、腐食部位の断面構造や腐食部位の深さなどを観察することによっても、腐食量の測定が可能である。
【0044】
また、鉄から溶解する鉄イオンによって電流が流れることから、電気化学的に電流量を測定することで、溶解した鉄の量すなはち腐食量の測定が可能である。
【0045】
また、鉄を電子供与体とするメタン生成菌及び硫酸塩還元菌による腐食であることから、硫酸塩還元菌による腐食に関しては、腐食に伴い、硫化鉄など硫化物の量が増加する。したがって、硫化物の量を測定することによっても腐食量の測定が可能である。硫化物の量の測定方法としては、例えば、JIS K 0102のよう素滴定法などがある。
【0046】
メタン生成菌による腐食に関してはも、腐食がすすむほど、二酸化炭素の還元により発生するメタンの生成量は増加することになる。したがって、メタンの生成量を測定することによっても腐食量の測定が可能である。メタンの測定方法としては、例えば、上記、鉄または鉄を含む合金で耐食性の評価試験を行なった試験液の上部の気体を回収して、ガスクロマトグラフ分離管でメタンを分離した後、水素炎イオン化検出器に導入してメタンを測定する方法や、ガスクロマトグラフ質量分析計でメタンを測定する方法、レーザガス検知器を用いてメタンを測定する方法などがある。
【0047】
以上のように、本発明の微生物を作用させた場合の、鉄または鉄を含む合金の腐食量を材料ごとに比較することによって、材料の耐食性を評価することが可能となる。また、鉄または鉄を含む合金と接するまたはこれらを含む水の中に、本発明の微生物の存在有無の条件で、鉄または鉄を含む合金の腐食量を比較することによって、鉄又は鉄を含む合金の微生物腐食に対する耐食性を評価することが可能である。
【0048】
尚、メタン生成菌による腐食では、炭酸鉄が形成される。したがって、腐食生成物をX線回折や蛍光X線分析等で解析する等により、炭酸鉄が検出されれば、メタン生成菌による腐食が生じていると判断できる。また、硫酸塩還元菌による腐食では、硫酸塩還元菌が鉄に対して腐食性の硫化水素を発生するため、硫化鉄が発生する。したがって、腐食生成物をX線回折や蛍光X線分析等で解析する等により、硫化鉄が検出されれば硫酸塩還元菌による腐食が生じていると判断できる。本発明のように、メタン生成菌と硫酸塩還元菌が共存して腐食する場合、炭酸鉄と硫化鉄が、共に検出されることが腐食生成物の特徴であるが、どちらかの腐食影響がより強い場合は、炭酸鉄あるいは硫化鉄のどちらかが検出されることもある。また、嫌気条件でこれらの微生物により腐食させた後、好気条件に移行して酸素による腐食影響を受ける場合は、例えば水酸化鉄が形成される等、この限りではない。
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
{実施例1}炭素鋼の耐食性評価実験
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、表1に記載の鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源とした培地から鉄顆粒を除いた培地を耐食性評価試験液として25mL用意した。試験開始時、試験液の全炭酸濃度は1500mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は13000mg/L、pH7.0であった。気相はN2:CO2 = 80%:20%として、この試験液中に、炭素鋼(鉄の質量含有率99%)試験片(10mm×10mm×1mm)を浸漬した。耐食性を評価しようとする炭素鋼の試験片を試験液に浸漬することにより、試験片に含まれる鉄が微生物への電子供与体となる。表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される、石油取扱い施設の内部が腐食した鉄配管の中の腐食部位から採取した水の中に含まれていたメタン生成菌と硫酸塩還元菌を混合して含む集積培養液を本耐食性を評価する試験液に1/20体積添加した。本耐食性評価試験液中のメタン生成菌と硫酸塩還元菌を合わせた初期濃度はDAPI染色により計数したところ、2×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して、嫌気条件における耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0051】
試験片は、試験開始前と、試験後に試験片の質量を測定して、質量の減少量を試験時間(1週間)で割って腐食速度を求めた。試験後の試験片については、水にといだクレンザーをつけた脱脂綿を用いて腐食生成物を除去後、試験片を水で洗浄して空気ブロワーを用いて乾燥させた後、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。結果を表2に示す。
【0052】
表2に示したように、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌と硫酸塩還元菌の集積培養液を添加した系では、炭素鋼の腐食が促進された。無菌の系に比べて、腐食速度は約10倍になった。
【0053】
以上のように、本発明の微生物を用いて、鉄を含む合金の耐食性を評価できる。
【0054】
【表1−1】

【0055】
【表1−2】

【0056】
【表2】

【0057】
{実施例2}純鉄の耐食性評価試験(嫌気条件における耐食性評価試験)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、表1に記載の鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源とした培地から鉄のみを除いた耐食性評価試験液を20mL用意した。試験開始時、試験液の全炭酸濃度は1500mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は13000mg/L、pH7.0であった。
【0058】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、この試験液中に、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される、デスルホビブリオナレス(Desulfovibrionales)目デスルホビブリオナシアエ(Desulfovibrionaceae)科に属する硫酸塩還元菌とメタノコッカレス(Methanococcales)目メタノコッカシアエ(Methanococcaceae)科に属するメタン生成菌(受託番号NITE BP−252)の培養液を、本耐食性を評価する試験液に1/20体積それぞれ添加することにより、硫酸塩還元菌単独添加、メタン生成菌単独添加、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に添加したもの、および両方の菌株を添加しない無菌系を対照として用意した。本耐食性評価試験液に添加したメタン生成菌と硫酸塩還元菌の初期濃度をDAPI染色により計数したところ、それぞれ2×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食試験を行なった。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも腐食試験を行なった。腐食量は、試験液中の懸濁物を含む鉄濃度を測定することにより、算出した。結果を表3に示す。
【0059】
表3に示したように、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌単離株と硫酸塩還元菌単離株を両方添加した系では、純鉄の腐食が促進された。無菌の系に比べて、腐食速度は約15倍になった。
【0060】
【表3】

【0061】
{実施例3}純鉄の耐食性評価試験(嫌気条件に引き続き好気条件とする耐食性評価試験)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、表1に記載の鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源とした培地から鉄のみを除いた耐食性評価試験液を20mL用意した。試験開始時、試験液の全炭酸濃度は1500mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は13000mg/L、pH7.0であった。
【0062】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、この試験液中に、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される、デスルホビブリオナレス(Desulfovibrionales)目デスルホビブリオナシアエ(Desulfovibrionaceae)科に属する硫酸塩還元菌とメタノコッカレス(Methanococcales)目メタノコッカシアエ(Methanococcaceae)科に属するメタン生成菌(受託番号NITE BP−252)の培養液を、本耐食性を評価する試験液に1/20体積それぞれ添加することにより、硫酸塩還元菌単独添加、メタン生成菌単独添加、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に添加したもの、および両方の菌株を添加しない無菌系を対照として用意した。本耐食性評価試験液に添加したメタン生成菌と硫酸塩還元菌の初期濃度をDAPI染色により計数したところ、それぞれ2×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食試験を行なった後、容器のフタを開け空気開放した。試験液のDOが2mg/L以上となっていることを確認し、さらに1週間25℃で静置した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも腐食試験を行なった。腐食量は、試験液中の懸濁物を含む鉄濃度を測定することにより、算出した。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0063】
表4に示したように、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌単離株と硫酸塩還元菌単離株を両方添加した系では、純鉄の腐食が促進された。無菌の系に比べて、腐食速度は約40倍になった。
【0064】
【表4】

【0065】
{実施例4}人工海水を用いた炭素鋼の耐食性評価実験
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、人工海水を25mL用意した。試験開始時、試験液の全炭酸濃度は150mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は19000mg/L、pH8.2であった。
【0066】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、この試験液中に、炭素鋼(鉄の質量含有率99%)試験片(10mm×10mm×1mm)を浸漬した。表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌として、デスホビブリオナシエと、同じく鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌として、メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)の培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエの初期濃度は共に、1×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させた後、さらに1週間25℃で静置させて、耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0067】
試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0068】
結果を表5に示す。表5に示したように、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエを添加した系では、炭素鋼の腐食が促進された。無菌の系に比べて、腐食速度は約60倍になった。以上のように、人工海水を用いても、メタン生成菌と硫酸塩還元菌による微生物腐食に対する耐食性を評価できることが明らかになった。
【0069】
【表5】

【0070】
{実施例5}人工海水を用いた純鉄の耐食性評価実験(全炭酸濃度の影響)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、全炭酸濃度が50mg/L、100mg/L、500mg/L、1000mg/L、1500mg/L、2000mg/Lの人工海水を各25mLずつ用意した。試験開始時の硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は19000mg/L、pH8.2であった。
【0071】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。
【0072】
表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌として、デスホビブリオナシエと、同じく鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌として、メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)の培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエの初期濃度は共に、1×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させた後、さらに1週間25℃で静置させて、耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0073】
試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0074】
結果を図1に示す。図1に示したように、全炭酸濃度が100mg/L以上で、純鉄の腐食が促進された。したがって、耐食性を評価する際には、試験液の全炭酸濃度は100mg/L以上とするべきことが判明した。
{実施例6}人工海水を用いた純鉄の耐食性評価実験(硫酸イオン濃度の影響)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、硫酸イオン濃度が50mg/L、100mg/L、1000mg/L、2000mg/L、3000mg/L、7000mg/Lの人工海水を各25mLずつ用意した。試験開始時の全炭酸濃度は1500mg/L、塩素イオン濃度は19000mg/L、pH8.2であった。
【0075】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。
【0076】
表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌として、デスホビブリオナシエと、同じく鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌として、メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)の培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエの初期濃度は共に、1×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させた後、さらに1週間25℃で静置させて、耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0077】
試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0078】
結果を図2に示す。図2に示したように、硫酸イオン濃度が100mg/L以上で、純鉄の腐食が促進されることが判明した。
{実施例7}人工海水を用いた純鉄の耐食性評価実験(pHの影響)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、pHが4、5、6、7、8、9、10の人工海水を各25mLずつ用意した。試験開始時の全炭酸濃度は1500mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は19000mg/Lであった。
【0079】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。
【0080】
表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌として、デスホビブリオナシエと、同じく鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌として、メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)の培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエの初期濃度は共に、1×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させた後、さらに1週間25℃で静置させて、耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0081】
試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0082】
結果を図3に示す。図3に示したように、pHが5以上9以下で、純鉄の腐食が促進されることが判明した。
{実施例8}人工海水を用いた純鉄の耐食性評価実験(塩素イオン濃度の影響)
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、塩素イオン濃度が100mg/L、500mg/L、1000mg/L、5000mg/L、10000mg/L、15000mg/L、20000mg/L、25000mg/L、30000mg/Lの人工海水を各25mLずつ用意した。これらの人工海水は、塩化ナトリウムを添加せず調製した人工海水をベースに、塩化ナトリウムを塩素イオンが設定濃度になるように適当量添加することで調製した。試験開始時の全炭酸濃度は1500mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、pHは8.2であった。
【0083】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、純鉄(鉄の質量含有率99.9%以上)試験片(10mm×10mm×0.1mm、質量80mg)を浸漬した。
【0084】
表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養される硫酸塩還元菌として、デスホビブリオナシエと、同じく鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌として、メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)の培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエとメタン生成菌メタノコッカシアエの初期濃度は共に、1×105細胞/mLであった。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させた後、さらに1週間25℃で静置させて、耐食性を評価した。尚、対照として、微生物を添加しない無菌の系でも耐食性を評価した。
【0085】
試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0086】
結果を図3に示す。図4に示したように、塩素イオン濃度が1000mg/L以上で、純鉄試験片の腐食が促進されることが判明した。
{実施例9}相対的な耐食性の比較試験
容積75mLの密栓可能なガラス容器に、人工海水を25mL用意した。試験開始時、試験液の全炭酸濃度は150mg/L、硫酸イオン濃度は2700mg/L、塩素イオン濃度は19000mg/L、pH8.2であった。
【0087】
気相はN2:CO2 = 80%:20%として、この試験液中に、成分組成の異なる3種類の合金鋼A、B、C及び純鉄の同一形状の試験片(10mm×10mm×1mm)を浸漬した。
【0088】
表1の培地により、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に含む集積培養液を、それぞれ本耐食性評価のための試験液に1/40体積ずつ添加した。耐食試験液に添加した際の、メタン生成菌と硫酸塩還元菌を合わせた初期濃度は1×103細胞/mLとした。25℃で1週間静置して嫌気条件で腐食させた後、容器のフタをいったんはずして、気相を空気と入れ換えるとともに、試験液も攪拌して、空気と十分に接触させて溶存酸素濃度を2mg/L以上とした後、さらに1週間25℃で静置して、それぞれの試験片を腐食させて耐食性を評価した。試験片は、試験開始前と、試験後に質量を測定して、腐食速度を求めた。試験後の試験片については、腐食生成物を取り除いて質量測定をおこなった。尚、耐食性の評価では、嫌気条件で1週間、好気条件で1週間、それぞれ要し、嫌気条件と好気条件では腐食速度が異なるが、合計の試験時間2週間を用いて、平均化した腐食速度を算出した。
【0089】
結果を表6に示す。表6に示したように、鉄を唯一の電子供与体、二酸化炭素と炭酸水素イオンを炭素源として培養されるメタン生成菌と硫酸塩還元菌を共に含む集積培養系を用いて、合金鋼Aが最もよい耐食性を示すことがあきらかになった。以上のように、2種類以上の鉄鋼材料の耐食性を比較して評価できることが明らかになった。
【0090】
【表6】

【0091】
{実施例10}人工海水を用いた塗装に欠落がある鉄板の耐食性評価実験
図5に示したように、中央部の直径2mmの円形範囲を除いて、タールエポキシ塗装した100mm×100mm×2mmの形状の炭素鋼SS400製の鉄板の上部に、外径70mm、内径65mmで高さ100mmのアクリル製円筒をタールエポキシ塗装した鉄板の塗装面上で接着させた鉄板の腐食試験装置を2つ用意した。円筒内に炭酸水素ナトリウムを用いて全炭酸濃度を1500mg/Lとした人工海水を200mL入れ、Nガスでバブリングして溶存酸素濃度DO<0.2mg/Lとなったことを確認した。Nガスを満たした嫌気チャンバー内で、2つある腐食試験装置のうち、一方にはメタン生成菌メタノコッカシアエ(受託番号NITE BP−252)と硫酸塩還元菌デスホビブリオナシエを共に共に初期濃度で1×106細胞/mLになるように添加した。円筒内の液面から上部の気相をN2ガスで満たした状態でゴム栓を用いて密栓した。なお、残るもう1つの腐食試験装置は、対照用に微生物の添加はおこなわず、微生物を添加した系と同様に円筒内の液面から上部の気相をNガスで満たした状態でゴム栓を用いて密栓した。両方の腐食試験装置を25℃で2週間静置して嫌気条件で腐食させた後、ゴム栓をはずして、円筒内の人工海水にそれぞれ空気を供給して溶存酸素濃度DOが約3mg/Lの状態で1日間おいた。直径2mmの円形の塗装をしなかった部位について、腐食生成物を除去後、最大腐食深さを測定した。メタン生成菌と硫酸塩還元菌を添加した腐食試験装置と微生物を添加しなかった腐食試験装置それぞれの最大腐食深さの測定結果を表7に示す。メタン生成菌と硫酸塩還元菌を添加した場合には、これらの微生物を添加しない場合に比べて最大腐食深さは約30倍に増加した。以上のように、塗装に欠落がある鉄板鉄板にメタン生成菌と硫酸塩還元菌を添加した腐食試験液が接触し、さらに二酸化炭素ガスを使用しなくとも試験液中に溶存した炭酸塩を使用することによって、耐食性の評価が可能であることが判明した。
【0092】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】試験液の全炭酸濃度が鉄腐食速度に及ぼす影響。
【図2】試験液の硫酸イオン濃度が鉄腐食速度に及ぼす影響。
【図3】試験液のpHが鉄腐食速度に及ぼす影響。
【図4】試験液の塩素イオン濃度が鉄腐食速度に及ぼす影響。
【図5】腐食試験装置の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸物質、硫酸イオン、及び塩素イオンを含む嫌気条件の水溶液中に、鉄を電子供与体として、かつ、前記炭酸物質を炭素源として培養可能なメタン生成菌及び硫酸塩還元菌を存在させ、当該メタン生成菌及び硫酸塩還元菌を含む水溶液と鉄又は鉄を含む合金とを接触させ、又は、前記微生物を含む水溶液中に鉄又は鉄を含む合金を浸漬して、前記鉄又は鉄を含む合金を嫌気条件で腐食させた後、又は、更にその後、空気又は酸素を供給して、前記水溶液中の溶存酸素濃度を高めることにより好気条件として、前記鉄又は鉄を含む合金を腐食させた後、当該腐食量を測定して、前記鉄又は鉄を含む合金の耐食性を評価することを特徴とする鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
【請求項2】
前記腐食量の測定を、2種類以上の鉄又は鉄を含む合金について行い、当該鉄又は鉄を含む合金それぞれの腐食量の測定結果を比較して、前記鉄又は鉄を含む合金それぞれの前記メタン生成菌及び硫酸塩還元菌に対する耐食性を相対的に評価することを特徴とする請求項1に記載の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
【請求項3】
前記水溶液中の全炭酸濃度が100mg/L以上、硫酸イオン濃度が100mg/L以上7000mg/L以下、pHが5以上9以下、塩素イオン濃度が1000mg/L以上30000mg/L以下、嫌気条件における溶存酸素濃度が0.2mg/L未満であり、空気あるいは酸素を供給した後の好気条件における溶存酸素濃度が2mg/L以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
【請求項4】
前記メタン生成菌がメタノコッカレス(Methanococcales)目メタノコッカシアエ(Methanococcaceae)科に属する微生物であり、前記硫酸塩還元菌がデスルホビブリオナレス(Desulfovibrionales)目デスルホビブリオナシアエ(Desulfovibrionaceae)科に属する微生物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。
【請求項5】
前記メタン生成菌が受託番号NITE BP−252で特定される微生物であることを特徴とする請求項4に記載の鉄又は鉄を含む合金の耐食性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−215852(P2008−215852A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49837(P2007−49837)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】