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鉄吸収促進剤
説明

鉄吸収促進剤

【課題】貧血改善等のための飲食品、健康食品及び医薬品として、鉄吸収促進作用を有する鉄吸収促進組成物、鉄剤、及び鉄強化飲食品、並びに鉄強化飲食品の製造法を提供しようとするものである。
【解決手段】ニコチアナミンを有効成分とする経口用鉄吸収促進組成物、並びにニコチアナミン−鉄化合物のキレート体、若しくはニコチアナミン及び鉄化合物の混合物を有効成分として含有する鉄吸収促進作用を有する飲食品及び医薬品並びにその製造方法を提供し、貧血等の症状の改善、並びに献血後、手術後及び産後の経口用鉄吸収促進剤及び経口用鉄剤として適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチアナミンを有効成分とする鉄吸収促進組成物、ニコチアナミンと鉄化合物を単に混合してなる、若しくはこれらをキレート結合させてなる吸収性のよい鉄剤、及び鉄強化飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄の欠乏に際しては、レバー等に含まれるヘム鉄を摂取することや、ビタミンC、システインなど鉄の吸収を促進させる成分の多い食品を摂取することが勧められている。鉄は、消化管内の環境におけるpHでは可溶化しにくく、消化管から吸収されにくい微量元素であり、そのため、鉄成分を大量に経口摂取しても、摂取した鉄成分の大部分はそのまま体外に排出されてしまうため、消化管からの鉄の吸収を促進させる素材が望まれていた。また、有経女性は成人男性より多くの鉄成分が必要と考えられているが、男性に比較して女性の摂取鉄成分量は必要量を下回ると考えられている。そのため、貧血改善のための健康食品や薬剤として吸収性の良い鉄強化飲食品や鉄吸収促進剤の開発が望まれていた。
【0003】
一方、ニコチアナミンは、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有することから、血圧降下作用を有することが知られている。ニコチアナミンは、タバコ、イネ、クコ、ブナ、インゲン豆、大豆、ノニなど広く植物界に分布し、この植物から取得できることが知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。
【0004】
インゲン豆や大豆に存在するニコチアナミンは、これを水又は熱水抽出した液を、合成樹脂を用いて精製する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、大豆の水抽出液若しくは分離大豆タンパク質製造に際して副生するダイズホエーに有機溶媒を添加することにより沈殿物を生成させ、該沈殿物中からニコチアナミンを高濃度に取得する方法が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。その他にも、イネ根部やノニ等から、ニコチアナミンを取得する方法が知られている(例えば、特許文献5、特許文献6参照)。また、合成による方法でニコチアナミンを製造する方法も開発されている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.,No.22,2017−2020(1971)
【特許文献1】特開昭63−87990号公報
【特許文献2】特開平5−246865号公報
【特許文献3】特開2002−179647号公報
【特許文献4】特開2003−231675号公報
【特許文献5】特開2005−51519号公報
【特許文献6】特開2003−55248号公報
【特許文献7】特開2004−277317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貧血改善等のための飲食品、健康食品及び医薬品として、鉄吸収促進作用を有する鉄吸収促進組成物、鉄剤、及び鉄強化飲食品、並びに鉄強化飲食品の製造法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ニコチアナミンに優れた鉄吸収促進作用を有することを見出し、ニコチアナミンと鉄化合物の混合物、及びニコチアナミン−鉄化合物のキレート体に血中鉄濃度を上昇させる効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従って、本発明は、
(1)ニコチアナミンを有効成分とする鉄吸収促進組成物
(2)ニコチアナミン及び鉄化合物を含有する鉄剤
(3)鉄化合物が、塩化鉄、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、乳酸鉄、コンドロイチン硫酸鉄、フマル酸第一鉄、及びピロリン酸鉄からなる群から選ばれる1種以上である上記(2)記載の鉄剤
(4)鉄剤が、ニコチアナミン及び鉄化合物を単に混合してなるもの、若しくは、これらをキレート結合させてなるものである上記(2)又は(3)のいずれか1に記載の鉄剤
(5)上記(2)〜(4)のいずれか1に記載の鉄剤を含有する鉄強化飲食品
(6)飲食品に鉄化合物を添加する鉄強化飲食品の製造法において、ニコチアナミンと鉄化合物をキレート結合させてなるものを使用することを特徴とする鉄強化飲食品の製造法
(7)飲食品に鉄化合物を添加して得られる鉄強化飲食品の製造法において、飲食品にニコチアナミン及び鉄化合物を添加して、ニコチアナミンと鉄化合物のキレート体を生成させることを特徴とする鉄強化飲食品の製造法
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ニコチアナミンを有効成分とする鉄吸収促進組成物、並びにニコチアナミン及び鉄化合物の混合物、若しくはニコチアナミン−鉄化合物のキレート体を有効成分として含有する鉄吸収促進作用を有する医薬品及び飲食品並びにその製造方法を提供し、貧血等の症状の改善、並びに献血後、手術後及び産後の鉄吸収促進剤若しくは鉄剤として有用な効果を発揮する。本発明の鉄吸収促進組成物や鉄剤は鉄の吸収性を著しく改善することができるので、貧血改善等のための飲食品、健康食品、医薬品として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)ニコチアナミンの製造方法
本発明に使用するニコチアナミンは、例えば特開平5−246865号、特開2002−179647号、特開2003−231675号、特開2003−55248号、特開2004−277317号に記載されているように、天然物、例えば大豆やインゲン豆などの豆類、トマト、ノニ、ソバ等の比較的ニコチアナミンを多く含む素材から常法に従って抽出された抽出物から常法に従って分離・精製されたものであっても、化学的又は酵素的に合成されたものであっても、また微生物によって産生されたものであってもよい。
【0011】
鉄吸収促進作用を有する限りにおいて、本発明に使用するニコチアナミンとしては、高純度精製品の他、ニコチアナミン含有物を使用することもできる。例えば、大豆を原料として製造されるしょう油、味噌、豆腐、納豆、豆乳等の大豆加工食品、並びに該大豆加工食品の製造工程で大量に副生し、廃液として捨てられていた大豆の水又は熱水による浸漬廃液及び蒸煮廃液中に著しい量のニコチアナミンが含有されている(特開平5−246865号公報)。
【0012】
ニコチアナミンを含む食品や廃液からのニコチアナミンの抽出・濃縮方法としては、例えば、大豆を2〜20倍量の水に浸漬し、常温〜80℃で加温しながら、1時間〜2日間静置若しくは必要に応じて攪拌や循環を行った後、水を留去すれば良い。抽出時の水の量、抽出温度・時間、留去温度・減圧度などの条件は、原料大豆の種類、脱脂の有無、水の液性等に影響されるため、抽出液中のニコチアナミン抽出量と純度が最大となるよう適宜選択をすればよい。留去後に得られた濃縮液はさらに留去を続けて乾固物とすることもできるし、スプレードライや凍結乾燥などの公知の方法を用いて粉末化しても良い。その際、必要に応じてデキストリンなどの賦形剤を加えることもできる。
【0013】
得られたニコチアナミン含有物に対して、イオン交換樹脂、セファデックス、ポリアミド、シリカゲル、ODS、活性炭等を用いたカラムクロマトグラフ、セルロース膜等を用いた膜分離、水−エタノールなどを用いた沈殿処理などの公知の精製・分離・脱色操作を行えば、より高純度のニコチアナミン含有物を得ることもできる。ニコチアナミンの測定は一般的な生体液アミノ酸分析法により測定することができる。
【0014】
さらにまた、ニコチアナミンは水溶性に優れているので各種の飲食品に添加することができる。また、本発明のニコチアナミンは酸付加塩であってもよく、これらは単独で又は組み合せて、使用することができる。酸付加塩としては製薬上許容される塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などが好ましいものとして挙げられる。
【0015】
(2)鉄吸収促進組成物
本発明の鉄吸収促進組成物は、ニコチアナミンを有効成分とすることを特徴とし経口若しくは非経口で作用を発揮する。本発明の鉄吸収促進組成物は、医薬品として、あるいは飲食品に添加して用いることができる。
【0016】
本発明の鉄吸収促進組成物を鉄吸収促進剤として用いる場合、投与形態は、経口投与又は非経口投与が都合よく行われるものであればどのような剤形のものであってもよく、例えば注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、腸溶剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、トローチ等を挙げることができ、これらを症状に応じてそれぞれ単独で、又は組み合わせて使用することができる。これら各種製剤は、常法に従って目的に応じて主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
【0017】
ニコチアナミンの投与量は投与経路、剤形、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常は成人に対し、経口投与の場合、本発明のニコチアナミンの総量として1mg〜250mg/日、好ましくは6mg〜180mg/日、より好ましくは20mg〜100mg/日であるが特に限定されるものではない。
【0018】
本発明の鉄吸収促進組成物を鉄吸収促進飲食品の形態で使用する場合には、所要量の本発明に使用するニコチアナミン、又はこれらを主成分とする抽出物を単独で若しくは飲食品原料、特にニコチアナミンを本来実質的に含有しない飲食品原料に加えて、一般の製造法により加工製造することができる。その配合量は剤型、食品の形態性状により異なるが、一般的な飲料におけるニコチアナミン量としては200ml当り0.0005〜0.125%(W/V)、好ましくは0.003〜0.09%(W/V)、より好ましくは0.01〜0.05%(W/V)が好ましいが特に限定されるものではない。
【0019】
献血後や手術後、産後の鉄吸収促進を目的として、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の鉄吸収促進飲食品を加え、その場で調整した機能性食品の形態で患者に与えることもできる。また、本発明の鉄吸収促進飲食品には、微量元素、ビタミンC、ペプチド等の他の鉄吸収代謝促進剤(特許第3167402号)と組み合わせて使用することもできる。本発明の鉄吸収促進剤及び鉄吸収促進飲食品は、鉄の利用が不十分であるために起こる種々の症状に対する予防改善及び健康維持、献血後、手術後、産後の鉄吸収促進に効果的である。
【0020】
(3)鉄剤
本発明の鉄剤は、ニコチアナミン及び鉄化合物を含有する。ニコチアナミンは鉄とキレート体を形成して鉄の吸収を促進するので、本発明により、鉄分の吸収性が改善された鉄剤が得られる。
【0021】
鉄化合物としては、特に限定されることなく、塩化鉄、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、乳酸鉄、コンドロイチン硫酸鉄、フマル酸第一鉄、ピロリン酸鉄、その他無機ないし有機の鉄化合物が適宜使用できるし、配合量も市販鉄剤と同様にすればよい。
【0022】
本発明の鉄剤は、貧血、頭痛、耳鳴り、息切れ、眩暈、運動障害、倦怠感等の鉄の利用が不十分であるために起こる種々の症状に非特異的に適用されることが期待できる。また、献血後や手術後、産後の鉄剤としても適用できると考えられる。
【0023】
本発明の鉄剤は、医薬品として、あるいは飲食品に添加して用いることができる。医薬品として用いる場合、投与形態は、経口投与又は非経口投与が都合よく行われるものであればどのような剤形のものであってもよく、例えば注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、腸溶剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、トローチ等を挙げることができ、これらを症状に応じてそれぞれ単独で、又は組み合わせて使用することができる。これら各種製剤は、常法に従って目的に応じて主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
【0024】
本発明の鉄剤の投与量は投与経路、剤形、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常は成人に対し、経口投与の場合、本発明のニコチアナミンの総量として1mg〜250mg/日及び鉄イオン(鉄量として換算)として0.18mg〜46.1mg/日、好ましくはニコチアナミンの総量として6mg〜180mg/日及び鉄イオン(鉄量として換算)として1.1mg〜33.2mg/日、より好ましくはニコチアナミンの総量として20mg〜100mg/日及び鉄イオン(鉄量として換算)として3.7mg〜18.5mg/日であるが特に限定されるものではない。鉄剤中のニコチアナミンと鉄イオン(鉄イオンは鉄量として換算)の配合比は、1:0.001〜1:100(W/W)が望ましく、1:0.01〜1:10(W/W)がより望ましく、1:0.1〜1:1(W/W)がさらに望ましいが特に限定されるものではない。
【0025】
(4)鉄強化飲食品とその製造法
本発明の鉄強化飲食品は、上記の鉄剤を含有することを特徴とする。鉄強化飲食品の形態としては、ニコチアナミン及び鉄化合物を単に混合してなるもの、若しくはニコチアナミンと鉄化合物をキレート結合させてなるものを、蛋白質(蛋白質源としてはアミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆やソバ蛋白質、卵アルブミン等の蛋白質が最も広く使用されるが、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆やソバ加水分解物等の他、アミノ酸単体の混合物も使用される)、糖類、脂肪等に、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等とともに配合し、自然流動食、半消化態栄養食及び成分栄養食とするか、又は、固形若しくは液状の食品ないしは嗜好品、例えばパン、めん類、ごはん、菓子類(ビスケット、ケーキ、キャンデー、チョコレート、和菓子)、豆腐及びその加工品などの農産食品、清酒、薬用酒などの発酵食品、みりん、食酢、しょう油、味噌、ドレッシング、ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品、かまぼこ、揚げ天、はんぺんなどの水産食品、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、牛乳、豆乳、茶などの飲料等の形態にすることができる。
【0026】
本発明の鉄強化飲食品の形態で使用する場合には、その配合量は剤型、食品の形態性状により異なるが、一般的な飲料におけるニコチアナミン量及び鉄イオン(鉄量として換算)としては200ml当りニコチアナミン0.0005〜0.125%(W/V)及び鉄イオン(鉄量として換算)0.000093〜0.023%(W/V)、好ましくはニコチアナミン0.003〜0.09%(W/V)及び鉄イオン(鉄量として換算)0.00055〜0.017%(W/V)、より好ましくはニコチアナミン0.01〜0.05%(W/V)及び鉄イオン(鉄量として換算)0.0019〜0.0093%(W/V)が好ましいが特に限定されるものではない。
【0027】
(5)安全性
本発明のニコチアナミンや微量元素は、元来植物生体内に存在する物質であるため、低毒性で安全性も高いことから、鉄吸収促進組成物若しく鉄剤としての意義も大きい。
例えば、ニコチアナミンを2%含む大豆抽出物の安全性については日本農芸化学会2005年大会(佐藤ら、札幌)にて急性毒性試験や28日間の亜急性毒性試験で問題がないことが発表されている。
以下、実施例により本発明を説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0028】
(1)ニコチアナミンの調整
粉砕した脱脂大豆ミール20キログラムに水250リットルを添加し、pH9に調製した。25℃で90分間浸漬した後、脱脂大豆ミールを除去し、水抽出液235リットルを得た。ついで、水抽出液のpHを4.5に調製し、遠心分離(7500G、30分)し、生じた沈殿を除去し、225リットルの上清を得た。
【0029】
この大豆の水抽出液(大豆ホエー)225リットルに対し、活性炭(武田薬品工業社製精製白鷺)7.5kgを添加し、室温で3時間攪拌し、不純物を吸着させた。これに珪藻土ろ過助剤(ラジオライト500)7.5kgを混和し、No.2ろ紙上で吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0030】
このろ液を分画分子量1,000の中空糸型限外濾過モジュール(日本ミリポア社製のプレップスケールUFカートリッジPLAC型)で処理し、透過液を凍結乾燥して白色の粉末1.5kgを得た。この中にはニコチアナミンが0.3%含有していた。得られた限外濾過液を、陰イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオンPA318)カラム(容積50リットル。OH型)に供し、蒸留水100リットルで洗浄、更に0.5規定塩酸100リットルで溶出した。
【0031】
続いてこれを陽イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50W×2)カラム(容積50リットル。H型)に供し、蒸留水100リットルで洗浄、更に0.5%アンモニア水溶液で溶出した。100リットル目から150リットル目までを分取し、ロータリーエバポレーターを用いて5リットルまで濃縮した。最終的にこれを凍結乾燥し、5gの白色粉末を得た。
【0032】
この中にはニコチアナミンが40%含有していた。さらに得られたニコチアナミン含有粉末を少量の水に溶解し、予め100%エタノールで平衡化したポリアミドC−200(和光純薬工業社製)カラム(容積25リットル)に供し、100%エタノール、90%エタノール、80%エタノール、70%エタノール、60%エタノール、50%エタノールをそれぞれ50リットルずつ用いて、順次溶出させた。
【0033】
70%エタノール、60%エタノール、50%エタノールの溶出画分を濃縮後、ろ過して凍結乾燥したところ、白色粉末2gを得た。この中にはニコチアナミンが80%含有していた。
【0034】
さらに得られたニコチアナミン含有粉末を少量の水に溶解し、ポリアミドC−200に再度供し、溶出画分を活性炭処理後、ろ過し、エタノール沈殿させ、ろ過して凍結乾燥したところ、白色粉末1gを得た。この中にはニコチアナミンが100%含有していた。
【実施例2】
【0035】
(2)ニコチアナミンの鉄可溶化促進効果
まず、本発明に使用するニコチアナミンについて、鉄の可溶化促進効果を確認した。鉄は、消化管でのpHでは可溶化しにくく、消化管から吸収されにくい微量元素であり、そのため、鉄化合物を大量に経口摂取しても、摂取した鉄化合物の大部分はそのまま体外に排出されてしまう。ニコチアナミンによる鉄の可溶化促進効果により、鉄の腸管からの吸収促進作用の発揮が期待できるのである。
【0036】
すなわち、本発明に係るニコチアナミンについて、各種の鉄試料に対するpH7.5においての(リン酸緩衝液ベース)鉄可溶化試験を行った。なお、比較対照試料としては、蒸留水を用いた。鉄の測定は和光純薬工業社製の血清鉄測定用キットFe C−テストワコー(カタログNo.432−27202)を用いた。
【0037】
鉄の溶解性に関する試験は次のようにして行った。まず、pH7.5のリン酸緩衝液800μlに水に溶解したニコチアナミン(0〜3.6mM)溶液100μl及び一般的に貧血の治療薬として水に溶けにくいことから経口投与され、中性で非常に溶解しにくい硫酸第一鉄(FeSO)若しくは強化剤として利用される塩化第二鉄(FeCl)の3.6mM水溶液100μlを添加した。ついで、一晩振盪して、上清を0.45μmのフィルターでろ過した後、鉄の量を測定した。
【0038】
上記した手法にしたがって、2種類の鉄試料、塩化第二鉄(FeCl)、硫酸第一鉄(FeSO)について、鉄可溶化率を測定し、表1に結果を示した。
【0039】
【表1】

【0040】
上記結果から明らかなように、ニコチアナミンを加えるほど溶液中における鉄の可溶化率が大幅に増加し、ニコチアナミンは優れた鉄可溶化能を有していることが立証された。すなわち、各鉄化合物と当量のニコチアナミンを共存させることにより、中性溶液における鉄の溶解性の向上を図ることができた。ニコチアナミンの優れた鉄可溶化能により鉄吸収促進効果が発揮されると考えられる。また、特に、中性付近では溶解しにくい塩化第二鉄や硫酸第一鉄の溶解性が改善されたことは飲料などへの応用の範囲を拡大できると考えられる。
【実施例3】
【0041】
(3)ニコチアナミンの鉄吸収促進作用
ニコチアナミンについて、マウスを用いて鉄吸収促進作用を検討し、鉄吸収促進効果を確認した。表2にそれぞれの試験群を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
16時間絶食させた5週令のICR雄マウス(1群6匹)に上記の表2に示した検体を、経口投与用ゾンデを用いて強制経口投与した。所定の時間に眼窩静脈叢より血液を採取して、血清中の鉄の量を和光純薬工業社製の血清鉄測定用キットFe C−テストワコー(カタログNo.432−27202)を用いて測定した。なお、ニコチアナミン粉末(純度100%)中のミネラルは1ppm以下であり、実験試料にニコチアナミン(純度100%)を添加しても、鉄含量の値はほぼ同等である。なお、A群からD群については、鉄イオン(鉄量として換算)として2mg/kg(各溶液:10ml/kg)となるように投与した。結果を表3に示した。
【0044】
【表3】

【0045】
ニコチアナミン−Fe3+キレート体(A群)は2時間目及び5時間目でも塩化第二鉄を投与した群(C群)よりも血清中の鉄の濃度が高く、吸収性に優れるばかりでなく、持続的に吸収されることが判明した。また、ニコチアナミンと鉄化合物を混合してから直ちに溶解後投与した群(B群)においても、5時間目では塩化第二鉄を投与した群(C群)よりも血清中の鉄の濃度が高いことが明らかとなった。なお、塩化第二鉄と硫酸第一鉄の2時間目及び5時間目の血清鉄の量はほぼ同じであった。以上の結果より、ニコチアナミンは、鉄の吸収を促進することが明らかとなった。
【実施例4】
【0046】
(4)鉄強化飲食品の鉄吸収促進効果
ニコチアナミンと鉄を添加したしょう油を摂取させた場合における鉄吸収促進効果について、マウスを用いて検討した。表4にそれぞれの試験群を示す。
【0047】
【表4】

【0048】
16時間絶食させた5週令のICR雄マウス(1群6匹)に下記の表4に示した検体を、経口投与用ゾンデを用いて強制経口投与した。所定の時間に眼窩静脈叢より血液を採取して、血清中の鉄の量を和光純薬工業社製の血清鉄測定用キットFe C−テストワコー(カタログNo.432−27202)を用いて測定した。なお、ニコチアナミン粉末中のミネラルは1ppm以下であり、実験試料にニコチアナミンを添加しても、鉄含量の値はほぼ同等である。結果を表5に示した。
【0049】
【表5】

【0050】
水に塩化第二鉄を添加した群(E群)と比較して、しょう油に塩化第二鉄を添加した群(B群)では、鉄の吸収量の増加が見られた。さらに、しょう油に塩化第二鉄及びニコチアナミンを添加した群(A群)は、水に塩化第二鉄及びニコチアナミン(純度100%)を添加した群(D群)及びしょう油に塩化第二鉄を添加した群(B群)と比較して鉄吸収が促進されることが明らかとなった。以上の結果より、ニコチアナミンは、しょう油に添加された場合でも鉄の吸収を促進することが明らかとなった。また、しょう油中のニコチアナミンは鉄の吸収を促進する傾向があることが判明した。
【実施例5】
【0051】
(5)鉄剤の製造
次の配合(表6)により鉄剤を製造できる。
【0052】
【表6】

【0053】
この混合物を圧縮打錠機により圧縮して、一錠(0.3g)あたりニコチアナミン約85.7mg、鉄イオン(鉄量として換算)約6.6mgを含有する経口用鉄剤10000錠を製造できる。
【実施例6】
【0054】
(6)鉄強化豆乳の製造
次の配合(表7)により鉄強化豆乳を製造できる。
【0055】
【表7】

【0056】
この混合飲料を殺菌して、一本あたりニコチアナミン約39.2mg、鉄イオン(鉄量として換算)約7.4mg/200gを含有する豆乳100本を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチアナミンを有効成分とする鉄吸収促進組成物。
【請求項2】
ニコチアナミン及び鉄化合物を含有する鉄剤。
【請求項3】
鉄化合物が、塩化鉄、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、乳酸鉄、コンドロイチン硫酸鉄、フマル酸第一鉄、及びピロリン酸鉄からなる群から選ばれる1種以上である請求項2記載の鉄剤。
【請求項4】
鉄剤が、ニコチアナミン及び鉄化合物を単に混合してなるもの、若しくは、これらをキレート結合させてなるものである請求項2又は3のいずれか1項に記載の鉄剤。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の鉄剤を含有する鉄強化飲食品。
【請求項6】
飲食品に鉄化合物を添加する鉄強化飲食品の製造法において、ニコチアナミンと鉄化合物をキレート結合させてなるものを使用することを特徴とする鉄強化飲食品の製造法。
【請求項7】
飲食品に鉄化合物を添加して得られる鉄強化飲食品の製造法において、飲食品にニコチアナミン及び鉄化合物を添加して、ニコチアナミンと鉄化合物のキレート体を生成させることを特徴とする鉄強化飲食品の製造法。

【公開番号】特開2007−153807(P2007−153807A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351610(P2005−351610)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】