説明

鉄吸収促進剤

【課題】非ヘム鉄等の鉄分を安定して吸収できる、少量で効果を発揮する鉄吸収促進剤の提供。
【解決手段】豆類の種皮、特に大豆の種皮を酸又はキレート剤存在下で加熱抽出して得られるものであるペクチンを有効成分とする鉄吸収促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、大豆種皮ペクチン(大豆の種皮由来のペクチン)を有効成分とする鉄吸収促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、生命を維持する上で不可欠である必須微量栄養素の一つである。酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンの主要成分であるとともに、筋肉中のミオグロビン及び体内の酸化還元に関与する酵素の成分として重要であり、生体内における増血作用に欠かせない因子である。
近年の国民栄養調査によれば、国の定めた標準値としての鉄分の摂取量は男女平均ではほぼ満たされているにも関わらず、有経女性の半数が鉄欠乏であるといわれている。また成長期の子供が鉄欠乏となる傾向が増加しているという指摘もあり、鉄欠乏によって生じる貧血等の諸症状の予防改善が必要とされている。
【0003】
鉄の欠乏は、出血、妊娠、鉄欠乏食の摂取、腸からの鉄吸収異常等によって生じ、これが持続すると、鉄欠乏性貧血症に至る。従来、鉄の欠乏に際しては、クエン酸鉄、乳酸鉄、塩化第二鉄、硫酸鉄などの非ヘム鉄、及び肉、レバー等に含まれるヘム鉄を摂取することやビタミンC、システインなど鉄の吸収を促進させる成分の多い食品を摂取することが勧められ、鉄の吸収を低下させるフィチン酸、リン酸、タンニン酸などを多く含む食品の摂取を避けることが望ましいとされてきた。
また、非ヘム鉄の吸収を促進する物質についても研究され、グアーガム酵素分解物(例えば、特許文献1参照)、魚肉のタンパク分解酵素液から得られたペプチド(例えば、特許文献2参照)、ペクチンの加水分解物である分子量およそ3,000以下のオリゴガラクツロン酸(特許文献3参照)、あるいはペクチンなどの食物繊維等が開示されている。
【0004】
このうちペクチンは、非ヘム鉄吸収を阻害する、あるいは、非ヘム鉄吸収に影響しないとする報告がある一方で、非ヘム鉄吸収を促進するとの報告もされている。
例えば、非特許文献1では、分子量あるいはエステル化度の異なる4種のペクチンを8%飼料に配合したものを用いて非ヘム鉄(硫酸第一鉄)の吸収に与える影響を調査しており、高エステル化度のペクチンあるいは低分子量のペクチンが吸収促進作用を示したことが報告されている。そして、特に高エステル化度(エステル化度75%)で低分子量(分子量89,000)のものが明確な鉄吸収促進作用を示すこと、及び、低エステル化度で高分子量のペクチンは無作用であったことが報告されている。
【0005】
特許文献4では大豆(おから)から製造したガラクツロン酸を18%含有する水溶性多糖類のミネラル吸収促進剤が開示され、卵巣摘出ラットに大豆水溶性多糖類を5%添加した飼料を与えたとき、カルシウム及びマグネシウム吸収能が向上したことが示されている。この文献では鉄吸収に関するデータはないが、ミネラルの一種として鉄が挙げられている。
また、非特許文献2では、特許文献4と実質的に同様の方法によって調整された大豆水溶性多糖類を5%配合した飼料を投与すると、胃切除ラットの鉄吸収障害を防止(改善)したことが報告されている。
このような大豆水溶性多糖類は、ガラクツロン酸を20%程度含有し、構造中に典型的なペクチン構造を有するものであることが知られている(例えば、非特許文献3、参照)。
【0006】
非特許文献1や、非特許文献2では、ペクチンやガラクツロン酸を含有する大豆水溶性多糖類が鉄の吸収を促進することが開示されているものの、いずれも5%以上の配合で効果を示しているため、ヒトを摂取対象とする食品に利用する場合には、有効な配合量が大きいため、製造できる食品の形態や摂取方法が大きく制限されることになる。
また、大豆の種皮からはガラクツロン酸を50%以上含有するペクチンが得られることが知られている(例えば、非特許文献4、参照)。しかし、大豆種皮ペクチンの、鉄等のミネラルを吸収する作用については検討されていない。
【0007】
また、特許文献5においては、大豆を麹菌等で処理して得られる高分子物質が、鉄分吸収促進作用を示したことが開示されているが、この方法では、大豆を発酵させることが必要であるため、実際に鉄吸収促進剤を製造する場合には経済的な負担が大きい。
【0008】
ヒトを摂取対象とする鉄分吸収剤を製造する場合、非ヘム鉄の吸収は、食品に含まれる蓚酸、フィチン酸、多量の食物繊維あるいはポリフェノール等の様々な物質によって影響を受けるため、食事の種類による吸収量の変動が大きいという問題があった。
そこで、非ヘム鉄等の鉄分を安定して吸収するために、食事の時間帯をさけて簡便かつ無理なく摂取でき、少量で効果を発揮するカプセルや錠剤等の形態で提供され得るものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−247860号公報
【特許文献2】特開平05−229959号公報
【特許文献3】特開平05−316997号公報
【特許文献4】特許第4470492号
【特許文献5】特開2006−199641号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M. KIM et.al., J. Nutr. 122,2298-2305 (1992)
【非特許文献2】K. Shiga. et. al., J. Nutr., 133(4),1120-1126 (2003)
【非特許文献3】A.Nkamura,et.al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,65(10),2249-2258 (2001)
【非特許文献4】R.Gnanasambandam et.al.,Food Chemistory,65,461-467 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、非ヘム鉄等の鉄分を安定して吸収できる、少量で効果を発揮する鉄吸収促進剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題に基づいて鋭意検討した結果、豆類の種皮、特に大豆種皮ペクチンが従来知られていたペクチン類のおよそ1/100という少量で優れた鉄吸収促進作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)に記載の鉄吸収促進剤に関する。
(1)大豆種皮ペクチンを有効成分とする鉄吸収促進剤。
(2)大豆種皮ペクチンが、大豆の種皮を酸又はキレート剤存在下で加熱抽出して得られるものである上記(1)に記載の鉄吸収促進剤。
(3)キレート剤がクエン酸、EDTA又はそれらの塩である上記(2)に記載の鉄吸収促進剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄吸収促進剤は有効成分となる大豆種皮ペクチンを水溶液や粉末としてそのまま、又は非ヘム鉄剤とともに配合して、飲食品、医薬等に利用することが可能である。本発明の大豆種皮ペクチンはヒト等の動物に対して1g/日以下の投与で効果が期待できるため、錠剤やカプセルの様な形態で摂取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】鉄吸収促進剤鉄吸収促進作用を調べた図である(試験例1の試験1)。
【図2】鉄吸収促進剤鉄吸収促進作用を調べた図である(試験例1の試験2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の「鉄吸収促進剤」とは、ヒト等の動物において、非ヘム鉄等の鉄分の吸収を促進する作用を有し、鉄吸収促進用に用いる物質のことをいう。本発明の「鉄吸収促進剤」は、「大豆種皮ペクチン」を有効成分とするものであれば、この有効成分のみからなる剤であっても、さらにその他の成分を含むものであっても良い。なお、本発明において「大豆種皮ペクチン」とは、大豆の種皮由来のペクチンのことを指す。
その他の成分としては、吸収の対象となる硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の鉄分が例示できる。これらの鉄分の配合量は大豆種皮ペクチン100に対して鉄として0.5〜20程度が好ましい。さらに鉄吸収促進作用を有するとされているアスコルビン酸やシステインなどを併用して配合してもよい。また、剤の形態を保つために必要な保形剤等を配合しても良く、これらはヒト等の動物が安全に摂取できる成分のものであればいずれのものであっても良い。
【0017】
本発明の「大豆種皮ペクチン」は、大豆の種皮に水を加えて加熱したり、さらに酸やキレート剤とともに加熱したりすることで抽出して得ることができる水溶性多糖類のことをいう。このような大豆種皮ペクチンは、酸やキレート剤を加えて加熱抽出を行うと高い収率で抽出することができる。
好適には、塩酸、あるいは、クエン酸やその塩、EDTAなどのキレート剤を用いて80℃から130℃程度で、1時間から数時間加熱抽出するのがよい。
抽出物は固液分離して、必要に応じて中和、脱色やキレート剤を除去する操作を加えてもよい。得られた抽出液は、そのままあるいは濃縮して、あるいはさらに、乾燥することによっても利用することができる。
【0018】
本発明の「大豆種皮ペクチン」は、ガラクツロン酸を炭水化物あたりで40%〜80%含むことが好ましい。また、分子量がおよそ0.5万から100万程度であるのが好ましく、エステル化度が30〜70%程度であることが好ましい。
また、本発明の「大豆種皮ペクチン」には“大豆の種皮を酸又はキレート剤存在下で加熱抽出して得られる、ガラクツロン酸を含有する水溶性多糖類”をさらに陰イオン交換樹脂カラムで分画して得られる酸性画分も含むことができる。
このような酸性画分からなる「大豆種皮ペクチン」はガラクツロン酸を40%以上含有するペクチンであり、さらに、キシロースとガラクツロン酸の比(Xyl/GalAc比)が0.2以上、さらに好ましくは0.30程度であることが好ましい。
【0019】
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施例、試験例における分析は以下のように行った。
ウロン酸はm−ヒドロキシジフェニル法(Blumenkrantzらの方法)で測定し、ガラクツロン酸に換算した。中性糖(ラムノース、フコース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マンノース)はTFA分解後、糖アルコールアセテート誘導体としてGC−MSにより定量した。これらの方法により測定したガラクツロン酸及び中性糖を合わせて構成糖質量として、この質量に対する各構成糖の割合を構成糖組成とした。
タンパク含量はブラッドフォードでBSA換算した、エステル化度はNaOH加水分解後のメタノールをGCにより測定して算出した。灰分含量は600℃で4時間灰化して、また、脂質はエチルエーテル抽出法で測定した。炭水化物は100−(水分+タンパク質+脂質+灰分)とした。
【0021】
[実施例1]
<鉄吸収促進剤(発明品1)>
水洗後乾燥した粉砕大豆種皮1部に対し、3%のクエン酸水溶液(pH約2.0)10部を添加し、80℃で3時間抽出した。固液分離して透明なろ液を回収し、これを流水中で透析(分画分子量6000)して、透析内液を噴霧乾燥して大豆種皮ペクチンを得た(発明品1)。本品は、分子量6000以上であり、ガラクツロン酸を51%含有していた。また、水分8%を含み、乾物あたりタンパク質6%、灰分7%、脂質0%、炭水化物87%であった。
【0022】
[実施例2]
<鉄吸収促進剤(発明品2)>
水洗後乾燥した粉砕大豆種皮1部に対し、1.5%クエン酸−クエン酸ナトリウム溶液(pH6)10部を添加し、80℃で3時間抽出した。固液分離して透明なろ液を回収し、これを流水中で透析(分画分子量6000)して、透析内液を噴霧乾燥して大豆種皮ペクチンを得た(発明品2)。本品は、分子量6000以上であり、ガラクツロン酸を46%含有していた。また、水分9%を含み、乾物あたりタンパク質7%、灰分7%、脂質0%、炭水化物86%であった。
【0023】
[試験例1]
実施例1及び2の鉄吸収促進剤(発明品1、2)及び次の比較品1〜4を用いて、鉄吸収促進効果を調べた。
比較品1
非特許文献4に記載されている方法と同様の方法により製造した大豆水溶性多糖類を比較品1とした。
すなわち、脱脂大豆に50℃の温水を10倍量加えてよく攪拌後圧搾し、水溶性物質を除いた。その残渣(おから)に2倍量の水を加え、塩酸でpH5.0に調整した後、120℃で90分間抽出した。抽出液を粒状活性炭(和光純薬工業)で脱色し、噴霧乾燥して大豆由来の水溶性多糖類粉末を得た。この粉末は水分7%を含み、乾物あたり粗タンパク6%、粗脂肪0%、灰分7%及び炭水化物87%であった。また、ガラクツロン酸18%を含んでいた。
【0024】
比較品2
大豆を脱皮して大豆種皮を採取し、これを100メッシュ以下になるまで粉砕して調製した微粉末を用いた。
【0025】
比較品3(3−A、3−B)
特許文献5に記載されている方法準じて製造した高分子物質を比較品3−Aとした。
すなわち、脱脂大豆に1.2倍量の熱水を加えて30分放置後、120℃30分オートクレーブした。これに大豆の20%のグルコースを加え混合し、クリーンルーム内で送風して水分を約45%に調整した。この一部に麹菌を摂取して30℃3日間培養して麹を作成した。これに5倍量の熱水を加えてホモジナイズし、遠心分離、ろ過によって澄明な水抽出液を得た。この抽出液を分画分子量6,000の透析チューブに入れて1晩透析して非透析画分を得、凍結乾燥したものを比較品3−A(麹菌処理)とした。また、麹菌を添加する前の原料に5倍量の熱水を加えてホモジナイズし、遠心分離、ろ過によって澄明な水抽出液を得た。この抽出液を分画分子量6,000の透析チューブに入れて1晩透析して非透析画分を得、凍結乾燥したものを比較品3−B(麹菌処理なし)とした。
【0026】
比較品4
非特許文献1において使用されているものと近いと思われるGENU HMペクチン(三晶株式会社)を用いた。本品の分子量をHPLCによって測定したところ(TSKgel G−3000(東ソー株式会社製)カラム、溶離液として0.01M硫酸ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を使用)、5〜70万に分布し6.5万に最大ピークがあった。また、エステル化度は約60%であった。
【0027】
<試験1>
鉄欠乏食で飼育して貧血状態にしたマウスを、鉄吸収促進剤(発明品1,2)、比較品3−A、比較品3−Bをそれぞれ0.06%と鉄(硫酸第一鉄(鉄として4.2mg/100g))を配合した飼料又は鉄(硫酸第一鉄(鉄として4.2mg/100g))のみを配合した飼料(対照)で飼育した後、血清及び肝臓中の鉄量を測定することによって評価した。
すなわち、3週令ICR雄マウスに鉄欠乏飼料(F2FeDD、オリエンタル酵母社製)を蒸留水と共に2週間自由摂食させ貧血状態にした。2週間後、貧血マウスを各群10匹にわけ、鉄欠乏飼料に、上記の飼料をそれぞれ与えて、蒸留水とともに2週間自由摂取させた。
飼育最終日に、クロロホルム麻酔下で開腹し、腹部大動脈から採血及び肝臓を摘出した。血清鉄は、血液を遠心分離(9,000rpm,10min,4℃)して測定した。肝臓中の非ヘム鉄は肝臓をトリクロロ酢酸溶液とピロリン酸混合溶液中でホモジナイズ及び加熱抽出し、遠心分離して得られた上清を用いて測定した。鉄は原子吸光法で測定した。
【0028】
<試験2>
鉄吸収促進剤(発明品1)、比較品1,2,4をそれぞれ0.06%配合した飼料を用いた以外は試験1と同様の方法で試験を行った。
【0029】
<結果>
鉄欠乏性貧血では肝臓中の非ヘム鉄が大きく低下することが知られているが、試験1及び2において、本発明の鉄吸収促進剤(発明品1、2)を与えると、図1及び2に示されたように、肝臓中の非ヘム鉄及び血清鉄に有意な増加が認められた(図1,図2において、図中のa,b,cは、異なる文字間で有意差(P<0.05)が認められたことを示す)。また、比較品3−Aもやや効果が見られたが、麹処理する前の抽出物(比較品3−B)には効果がなかった。
これらのことから、本発明品1及び2は、飼料に0.06%配合することで鉄吸収促進作用があることが明らかである。この結果より本発明品はいずれも、従来、5%以上で効果がある(非特許文献1、非特許文献2等)とされてきたペクチンや大豆多糖類と比べて、およそ1/100以上の少量で顕著な効果を示すものであることが確認された。
【0030】
[試験例2]
<鉄吸収促進剤の有効成分の特定>
本発明の有効成分を明確にするために、以下の方法により、その物質的特徴を調べた。
実施例1と同様に得た鉄吸収促進剤(発明品1)を水に溶解し、陰イオン交換樹脂カラムで分画すると大部分が酸性画分として得られた。
すなわち、TSKgel DEAE−5PWを充填した21.5×150mmカラム(東ソー株式会社製)を用いたHPLC分取によって行った。溶出液として、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)と1M−酢酸ナトリウムを添加した50mM酢酸緩衝液(pH5)の直線グラジエントを用いた。酸性画分を集めて透析脱塩した後凍結乾燥させた。この操作を繰り返し約1gの鉄吸収促進剤の酸性画分を得た。
この鉄吸収促進剤の酸性画分を用い、試験1と同様にして鉄吸収促進作用を評価すると、明確な効果が認められた。
この鉄吸収促進剤の酸性画分の成分及び構成糖の組成を以下のように調べたところ、表1〜3に示すように、ガラクツロン酸を50%程度含有するペクチンであるが、Xyl/GalAc比が0.30と他のペクチンより明らかに大きい特徴があり、このことが、本発明品の効果に影響している可能性が伺えた。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
[実施例3]
粉砕した大豆種皮100gに0.1Nの塩酸1000mlを加えて90℃で45分間還流抽出した(pH1.5)。冷却後遠心分離によって固液分離して抽出液を採取し、pH2に調整後2倍量のエタノールを加えて攪拌、静置後、生じた沈殿物を遠心分離で集めた。沈殿物は70%のエタノールで洗浄後、少量の水を加えて分散溶解し、凍結乾燥した。
得られたペクチンは、ガラクツロン酸60%、エステル化度は50%であった。構成糖質中のXyl/GalAc比は0.25であった。この大豆種皮ペクチンについて試験例1と同様にして鉄吸収促進効果を検証した結果、明確な効果が認められた。
【0035】
[実施例4]
鉄分補給用錠剤の製造
粉砕した大豆種皮10kgに1.0%クエン酸溶液100Lを添加し、25%水酸化ナトリウムでpHをおよそ5に調整した。その後90℃に加熱して3時間抽出し、固液分離して70Lの抽出液を回収した。これを限外ろ過膜により液量が1/5になるまで濃縮し、濃縮物を乾燥して約400gの粉末を得た。粉末中のガラクツロン酸は約30%であった。
この粉末98.2gに硫酸第一鉄1.8gを配合したもの(合計100g)を300mgずつゼラチンカプセルに充填した。本品は1カプセルに約2mgの鉄が含まれており、鉄補給剤として食品や医薬に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の鉄吸収促進剤の提供により、非ヘム鉄等の鉄分を安定して吸収できる、少量で効果を発揮する飲食品、医薬品等を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆種皮ペクチンを有効成分とする鉄吸収促進剤。
【請求項2】
大豆種皮ペクチンが、大豆の種皮を酸又はキレート剤存在下で加熱抽出して得られるものである請求項1に記載の鉄吸収促進剤。
【請求項3】
キレート剤がクエン酸、EDTA又はそれらの塩である請求項2に記載の鉄吸収促進剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−162485(P2012−162485A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23871(P2011−23871)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000112048)ヒガシマル醤油株式会社 (10)
【Fターム(参考)】