説明

鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置と、腐食環境測定装置を使用した、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法、また、鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法

【課題】鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置と、腐食環境測定装置を使用した、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法、また、鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置100は、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成した所定の長さの薄板部材11に、複数の取付台12を固定し、この取付台12にACMセンサ1を取り付けて腐食環境測定装置100を形成し、鉄塔を構成する各種部材の内部に、薄板部材11を屈曲させながら腐食環境測定装置100を挿入し、ACMセンサ1を取り付けている薄板部材11を当該部材の内部に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、架空送電鉄塔等の構成材である腹材、水平材、補助材等の各種部材内部の腐食量・腐食性を、例えば、腐食速度等を簡易に評価可能なACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサによって測定する、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置と、腐食環境測定装置を使用した、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法、また、鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、架空送電鉄塔等を構成する腹材、水平材、補助材等の各種部材内部の腐食環境は充分に解明されておらず、その測定方法も確立されていないのが実状である。
【0003】
腐食をもたらす環境因子としては、例えば、架空送電鉄塔等の構造物が海岸近くに設置されている場合や、降雨や光化学スモッグ、その他の腐食性ガス(例えば、ソックスSOx)等に晒されている場合において、大気中を飛来している海塩、降雨時の酸性雨、光化学スモッグや腐食性ガス等に含まれる各種成分等が挙げられる。これらの種々の環境因子によって、架空送電鉄塔等を構成する腹材、水平材、補助材等の各種部材内部が腐食するというトラブルが多発しているのである。
【0004】
この様な環境因子により、架空送電鉄塔等を構成する各種部材内部の腐食を防止するものとして、例えば、特許文献1に開示されているような、鋼管の断面形状や長手方向寸法等に拘わらず防食効果を良好に発揮させる、電気防食構造が存在する。
【0005】
この電気防食構造は、鋼管内に犠牲電極を貫通するように配置して成り、この犠牲電極は、鋼管に通される鋼線等からなる芯線(索状体)に一定の間隔で吹き流し状の電極束を取り付けたものである。この電極束は、鋼管の材料である鉄よりも電極電位の低い金属からなる多数の細長のシートを、それらの一端側で結束することにより構成されている。
【0006】
また、特許文献2に開示されているような、鉄塔建設の前段階や既設の鉄塔において施工が比較的に容易であり、鉄塔の鋼管内部の防食効果の高い腐食抑制方法も存在する。
【0007】
この腐食抑制方法は、鉄塔の構成部材である鋼管の内部の空気を窒素やアルゴンガスなどの不活性ガスと置換したうえで管端を密閉し、鋼管内部の空気を不活性ガスと置換する前に鋼管内部を乾燥させて水分を除去することにより、鋼管内面を空気および水と遮断して、鋼管内面に腐食が発生するのを防止することができ、また、それまでに発生していた腐食の進行も停止するものである。
【0008】
さらに、特許文献3に開示されているような、鉄塔の基礎の安定性が良好であり、低コスト化が図れる鋼管鉄塔内部防錆方法も存在する。
【0009】
この鋼管鉄塔内部防錆方法は、既設の中空鋼管鉄塔の鋼管内部の腐食を防止するために用いる場合には、中空鋼管鉄塔を構成する鉄塔鋼管の内部空間に挿入した押出機によって発泡スチロール(合成樹脂)を押し出しながら、ウインチを用いてケーブルを巻き取ることにより押出機を徐々に引き上げ、鉄塔鋼管の内部空間を、鉄塔鋼管の底部から頂部まで、押し出した発泡スチロールで充填するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−20405号公報
【特許文献2】特開2003−64490号公報
【特許文献3】特開2007−162406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1乃至特許文献3の内容は、いずれも鋼管内部の腐食を未然に防止するための構造や方法であることから、特許文献1乃至特許文献3の内容により、鋼管内部の腐食量・腐食性(腐食速度等)を正確に測定・監視(モニタリング)することができない。
【0012】
また、特許文献1乃至特許文献3による技術をもってしても、半永久的な腐食防止を期待することはできない。例えば、犠牲電極・不活性ガス・発泡スチロール等の寿命は限られており、これらの定期的な交換が必要となることから、腐食の進行状況を常に定期的に測定・監視(モニタリング)する必要があるのである。
【0013】
このため、例えば、腐食速度等を簡易に評価可能なACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサを使用して、鋼管部材内部の腐食量・腐食性を測定・監視(モニタリング)する方法が採用されている。
【0014】
金属の腐食性に影響を与える因子として、温度、湿度、降雨、大気中を飛来している海塩や腐食性ガス(ソックスSOx)等が挙げられるが、ACMセンサは、これらの複雑な環境因子により電気化学的に発生する鋼の腐食電流を直接計測できるので、ACMセンサの出力電流値を解析することにより、環境の腐食性を直接、且つ定量的に評価することができる。
【0015】
そのため、従来においては、上記したACMセンサを、温湿度センサと共に架空送電鉄塔等の鋼構造物の脚部や高所に設置し、時間毎の出力電流を測定したものを、電流を記録する装置(データロガー)に記録し、記録されたデータに基づいて、大気環境における腐食性を測定する方法が採られている。
【0016】
具体的には、複数のACMセンサを、所定の長さの板片部材に取り付けて、架空送電鉄塔等の鋼構造物に沿って当該板片部材を固定して、腐食性を測定していたのである。
【0017】
しかし、架空送電鉄塔等の構造物において、例えば、腹材の両端に継ぎ手が存在し、さらに継ぎ手周辺は、他の部材と交わっていることが多いことから、複数のACMセンサを取り付けている所定の長さの板片部材を、腹材内部に挿入することができない事態が生じている。
【0018】
すなわち、腹材両端の開口部中央からは、長手方向に沿って略平板状の継ぎ手が突設され、この継ぎ手はボルト・ナットを介して、例えば、主柱材等の周面に突設した継ぎ手に連結されることから、腹材内部にACMセンサを入れる際に、継ぎ手周辺の主柱材等の他の部材である、継ぎ手を固定するボルト・ナット等が障害となって、複数のACMセンサを取り付けている所定の長さの板片部材の挿入が非常に困難になっている。
【0019】
具体的には、図10(a)に示すように、鉄塔Pにおいて、主鋼管である主柱材SPには、継ぎ手であるガセットプレートGPが固定されており、このガセットプレートGPには補強用の腹材Kが接合されている。この接合は、腹材Kの端部に固定された連結プレートLPを、主柱材SPのガセットプレートGPに宛がって、ボルトV・ナットN等を介して、ガセットプレートGPに連結プレートLPを固定するのである。
【0020】
連結プレートLPは、所定の帯板を略U字状に折曲して形成されている。そして、腹材Kの端部には、対向するように一対の切り欠き溝を設け、この切り欠き溝に連結プレートLPの折曲部分を挿入し、その接合部分を溶接して、腹材Kの端部に連結プレートLPを固定している。また、連結プレートLPは、略U字状に折曲している開放部分の内部にガセットプレートGPを導入するように、連結プレートLPをガセットプレートGPに宛がい、ボルトV・ナットN等を介して、ガセットプレートGPに連結プレートLPを固定している。
【0021】
この際、腹材Kの連結プレートLPは、図10(a)に示すように、腹材Kの端部において、腹材Kの内部を分断して、腹材Kの内部を二分するように固定されていることから、腹材Kの端部には、略半円状の2つの開口部Qが、連結プレートLPを挟んで両側に形成されている。
【0022】
また、鉄塔Pを構成する腹材Kの接合部分において、このような開口部Qが存在することから、この開口部Qから鳥が侵入して、腹材K内に巣を作ってしまうことがある。さらに、開口部Qの存在により、所定の風音が発生してしまうこともある。
【0023】
この様な事態の発生を回避するために、図10(b)に示すように、腹材Kの開口部Qを塞ぐように、半月状の管端金具Hが、所定の接続片を介して腹材Kの端部に固定されている。
【0024】
その為、腹材Kの内部に向けて、複数のACMセンサを取り付けている所定の長さの板片部材を挿入するためには、腹材Kの端部から管端金具Hを撤去する必要がある。
【0025】
しかし、腹材Kの端部から管端金具Hを撤去した場合であっても、依然として、図10(a)に示すように、ガセットプレートGPに連結プレートLPを固定するボルトV・ナットNや、主柱材SP自体の存在が、所定の長さの板片部材の挿入に対して障害となり、腹材Kの内部に、複数のACMセンサを取り付けている板片部材を挿入できない事態が生じている。
【0026】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、屈曲可能な所定の長さの薄板部材にACMセンサを配置して、薄板部材を適宜屈曲させることで、ボルト・ナットや、主鋼管である主柱材を避けながら、腹材の端部からACMセンサを配置している薄板部材を挿入し、腹材内部の腐食環境を常時測定・監視(モニタリング)することができる、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置と、腐食環境測定装置を使用した、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法、また、鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置は、屈曲可能な所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成し、鉄塔を構成する各種部材の内部に、薄板部材を屈曲させながら腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置したことで、上述した課題を解決した。
【0028】
また、本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置は、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成した所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成し、鉄塔を構成する各種部材の内部に、薄板部材を屈曲させながら腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
さらに、鉄塔を構成する各種部材は、腹材、水平材、補助材等であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0030】
また、鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去した状態で、腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置した後に、腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
加えて、薄板部材は、コンベックス状であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0032】
また、取付台は、ACMセンサを載せる扁平コ字枠状の載置部と、ACMセンサを保持するよう互いに内側に向けて略L字状に突設した押さえ部を備え、押さえ部と側壁部との間には、ACMセンサを脱着可能とする切除部が設けられていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0033】
さらに、取付台の載置部の裏面には、取付台を薄板部材の所定位置に固定するためのリベット孔を両端に有する保持部材を挿通可能とした複数の取手部を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0034】
また、複数の取付台のいずれかに、腐食絶対量を測定・監視(モニタリング)するための暴露試験片を取り付けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0035】
加えて、薄板部材に、温湿度センサが付設されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0036】
この他、本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法は、前記した腐食環境測定装置を使用することで、同じく上述した課題を解決した。
【0037】
また、本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法は、所定の長さの薄板部材に複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けた腐食環境測定装置を、鉄塔を構成する各種部材の内部に挿入するに際し、前記薄板部材として、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用い、当該薄板部材を屈曲させながら挿入することで、同じく上述した課題を解決した。
【0038】
また、鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去する工程と、
腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置する工程と、
腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖する工程と、
から成ることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置は、屈曲可能な所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成していることから、薄板部材を適宜屈曲させることで、鉄塔を構成する各種部材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置して、その腐食量・腐食性を測定することができる。
【0040】
また、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成した所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成していることから、鉄塔を構成する各種部材の周辺に様々な障害物が存在している場合であっても、薄板部材を適宜屈曲させることで、当該障害物を避けながら、鉄塔を構成する各種部材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置して、その腐食量・腐食性を測定することができる。
【0041】
さらに、鉄塔を構成する各種部材は、腹材、水平材、補助材等であることから、当該部材の内部にACMセンサを取り付けている薄板部材を配置して、鉄塔を構成する各種部材の腐食量・腐食性を具体的に測定することができる。
【0042】
具体的には、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成した所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けたことから、腹材の端部近傍において、ガセットプレートに連結プレートを固定するボルト・ナットや、主柱材等の障害物が存在している場合であっても、薄板部材を適宜屈曲させることで、当該障害物を避けながら、腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置して、腹材の腐食量・腐食性を具体的に測定することができる。
【0043】
また、鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去した状態で、腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置した後に、腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖していることから、腹材の端部における開口部から腹材内に鳥等の動物が侵入して巣を作ってしまう事態の発生を防止すると共に、露出状態の開口部により風音が生じてしまう事態の発生も防止している。
【0044】
加えて、腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖することにより、腹材の内部環境(通気性・温度・湿度等)を元の通常の状態とし、当該腹材の内部に配置した腐食環境測定装置により、腹材内部の腐食速度と腐食量を正確に測定することができる。
【0045】
また、ACMセンサが腹材の内部に挿入されると、薄板部材は元の真っ直ぐな状態に復元するので、ACMセンサ自体は、腹材内部の長手方向に沿った好ましい位置に配置され、腹材内部の腐食環境を常時測定・監視(モニタリング)することができる。
【0046】
さらに、薄板部材は、コンベックス状であることから、鉄塔を構成する各種部材(腹材、水平材、補助材等)内部への挿入時において、所定の長さの薄板部材に対し、所定以上の外力を加えると屈曲する薄板部材の好ましい属性を、容易に付与できる。加えて、各種部材(腹材、水平材、補助材等)内部での設置時において、所定の長さの薄板部材に対し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元する属性も容易に付与できる。
【0047】
このとき、薄板部材に、メジャーとしての所定の目盛が付されているときには、鉄塔を構成する各種部材(腹材、水平材、補助材等)内部に腐食環境測定装置を挿入した時に、腐食環境測定装置の位置を把握して、各種部材(腹材、水平材、補助材等)内部の好ましい位置に腐食環境測定装置を配置することができる。
【0048】
加えて、取付台は、ACMセンサを載せる扁平コ字枠状の載置部と、ACMセンサを保持するよう互いに内側に向けて略L字状に突設した押さえ部を備え、押さえ部と側壁部との間には、ACMセンサを脱着可能とする切除部が設けられていることから、取付台によるACMセンサを保持している状態が、載置部の側壁部と押さえ部により確実に維持される。
【0049】
また、ACMセンサの定期的な交換時においては、ACMセンサの脱着が、切除部を介して容易に行える。
【0050】
さらに、取付台の載置部の裏面には、取付台を薄板部材の所定位置に固定するためのリベット孔を両端に有する保持部材を挿通可能とした複数の取手部を備えているので、この保持部材を介して、薄板部材の所定の位置に取付台を確実に固定できる。
【0051】
また、複数の取付台のいずれかに、腐食絶対量を測定・監視(モニタリング)するための暴露試験片を取り付けたことから、各種部材(腹材、水平材、補助材等)の内部において、ACMセンサにより腐食速度を測定することに加えて、暴露試験片の変化を観察して、暴露試験片の腐食絶対量を正確に測定・監視(モニタリング)することができる。
【0052】
加えて、薄板部材に、温湿度センサが付設されていることから、各種部材(腹材、水平材、補助材等)の内部において、腐食に影響を及ぼす温度と湿度も、同時に測定することができる。
【0053】
この他、本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法においても、前記した腐食環境測定装置を使用することから、鉄塔を構成する各種部材(腹材、水平材、補助材等)の周辺に様々な障害物が存在している場合であっても、薄板部材を適宜屈曲させることで、当該障害物を避けながら、各種部材(腹材、水平材、補助材等)の内部に腐食環境測定装置を挿入することができる。
【0054】
また、本発明に係る鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法においては、所定の長さの薄板部材に複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けた腐食環境測定装置を、鉄塔を構成する各種部材の内部に挿入するに際し、前記薄板部材として、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用い、当該薄板部材を屈曲させながら挿入することから、鉄塔を構成する各種部材(腹材、水平材、補助材等)の周辺に様々な障害物が存在している場合であっても、薄板部材を適宜屈曲させることで、当該障害物を避けながら、各種部材(腹材、水平材、補助材等)の内部に腐食環境測定装置を適正に配置することができる。
【0055】
さらに、ACMセンサを取り付けている薄板部材が当該部材(腹材、水平材、補助材等)の内部に挿入されると、薄板部材は元の真っ直ぐな状態に復元するので、ACMセンサ自体は、各種部材(腹材、水平材、補助材等)内部の長手方向に沿った好ましい位置に配置されて、各種部材(腹材、水平材、補助材等)の腐食量・腐食性を測定することができる。
【0056】
また、鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去する工程と、
腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置する工程と、
腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖する工程と、
から成ることから、腹材の内部に腐食環境測定装置を適正に配置することができる。
【0057】
加えて、腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖していることから、腹材の端部における開口部から腹材内に鳥等の動物が侵入して巣を作ってしまう事態の発生を防止すると共に、露出状態の開口部により風音が生じてしまう事態の発生も防止している。
【0058】
また、ボルト固定式の管端金具の存在により、腹材の内部環境(通気性・温度・湿度等)を元の通常の状態とし、当該腹材の内部に配置した腐食環境測定装置により、腹材内部の腐食速度と腐食量を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】所定の長さの薄板部材に複数の取付台を固定し、個々の取付台に、ACMセンサと暴露試験片を配置する状態を示す分解斜視図である。
【図2】取付台の構成を示すもので、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図である。
【図3】保持部材を介して、取付台を薄板部材に取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図4】ACMセンサの構成を示し、(a)は表面側の平面図、(b)はACMセンサの測定原理を示した概略の説明図である。
【図5】複数のACMセンサと暴露試験片を取り付けている薄板部材を腹材の内部に挿入する状態を示すもので、(a)はACMセンサを取り付けている2個の取付台の間に位置している薄板部材を屈曲させている状態を示す斜視図、(b)は薄板部材の略中間部分を屈曲させている状態を示す斜視図である。
【図6】複数の取付台を固定している薄板部材を腹材の内部に挿入する状態を示すもので、(a)はACMセンサを取り付けている2個の取付台の間に位置している薄板部材を屈曲させて、1個目の取付台を腹材内部に挿入している状態を示す斜視図、(b)は薄板部材の略中間部分を屈曲させて、2個の取付台を腹材内部に挿入している状態を示す斜視図、(c)は薄板部材の全体が腹材内部に挿入され、薄板部材が元の真っ直ぐな状態に復元して、ACMセンサが腹材内部の長手方向に沿った位置に配置されている状態を示す斜視図である。
【図7】鉄塔の鋼管構造を示すもので、(a)は開口部が露出している腹材の端部に、ボルト固定式の管端金具を取り付ける状態を示す分解斜視図、(b)は腹材の端部に、ボルト固定式の管端金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】腐食環境測定装置を送電線用の既設鉄塔に複数設置し、腐食性を測定している状態を説明した概略の側面図である。
【図9】腐食環境測定装置に延設している被覆番線の構成を示すもので、(a)は薄板部材の環状部分に、被覆番線を取り付けている状態を示す斜視図、(b)は腐食環境測定装置に延設した被覆番線を、腹材の開口部に取り付けている管端金具の隙間部分から引き出し、鉄塔の主柱材に巻き付けて固定している状態を示す斜視図である。
【図10】鉄塔の鋼管構造を示すもので、腹材の端部に固定された連結プレートを、主柱材のガセットプレートに宛がって、ボルト・ナット等を介して、ガセットプレートに連結プレートを固定している状態を示す斜視図、(b)は腹材の開口部を塞ぐように、半月状の管端金具が固定されている状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0061】
本発明に係る腐食環境測定装置100は、図1に示すように、所定の長さの薄板部材11と、薄板部材11に固定した複数の取付台12を備えている。
【0062】
また、取付台12には、図1に示すように、複数のACMセンサ1が取り付けられている。
【0063】
本発明に係る腐食環境測定装置100は、図8に示すように、架空送電用の鉄塔P等を構成している各種部材(腹材K、水平材L、補助材M等)の内部に配置されるものであるが、以下の説明を、腐食環境測定装置100が腹材K内に配置される場合を一例にして行う。
【0064】
腐食環境測定装置100の取付台12に取り付けられるACMセンサ1は、大気環境の腐食性を定量的に評価するものである。このACMセンサ1は、図4(a)(b)に示すように、鋼基板2の表面に絶縁性ペースト3と導電性ペースト4を積層したものであり、例えば、鉄(Fe)等の鋼基板2と銀(Ag)等の導電性ペースト4からそれぞれ導線2a,4aが引き出され、無抵抗電流計等の計測器5に接続されている。そして、鋼基板2表面の露出部がセンサのアノード(陽極)となり、導電性ペースト4がカソード(陰極)となる。
【0065】
ACMセンサ1の測定原理は、当該ACMセンサ1の置かれた環境が乾燥状態で、表面に何も堆積していない時(初期)には、絶縁性ペースト3によりアノード(鋼基板2)とカソード(導電性ペースト4)が絶縁されているので、その間に電位は発生せず、電流は計測されない。
【0066】
一方、ACMセンサ1表面の導電性ペースト4(Ag)と鋼基板2(Fe)を絶縁して配置した部分に、雨や露により水膜が形成されると、両金属間を水膜が連結するので、金属間の電位差によりガルバニック電流が生じる。このガルバニック電流は、鋼材料や亜鉛材料の腐食量に対して相関があることから、腐食速度を定量評価できるものである。
【0067】
このACMセンサ1は、温湿度センサ21と共に腹材K内部に設置され、時間毎の出力電流を測定したものを、電流を記録する装置(データロガー)に記録し、記録されたデータに基づいて、大気環境における腐食性を測定するのである。
【0068】
腐食環境測定装置100において、複数の取付台12を固定する薄板部材11は、屈曲可能なものである。この薄板部材11としては、例えば、折り尺のように、複数の箇所で屈曲できる構成の物であっても良い。
【0069】
また、薄板部材11を、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成しても良い。例えば、コンベックススケール等のスチール製のスケールを用いると、薄板部材11として好ましいものとなる。このとき、薄板部材11は、任意の位置で屈曲できることは勿論のこと、屈曲部分を連続的に移動させるような屈曲も可能である。
【0070】
薄板部材11に固定されている取付台12は、図2(a)に示すように、矩形薄板状のACMセンサ1の左右両端を、側壁部14によって保持した状態で載置される扁平コ字枠状の載置部13によって形成されている。
【0071】
取付台12の側壁部14に直交する他の側辺には、ACMセンサ1の前後両端を保持するために、互いに内側に向けて略L字状に突設した押さえ部15が一体的に形成されている。
【0072】
このとき、図2(a)に示すように、押さえ部15自体の載置部13側辺に沿った長さを、当該側辺自体の長さよりも短くすることで、押さえ部15の端部と側壁部14の端部との間に、切除部16が形成される。
【0073】
そして、ACMセンサ1は、自身の一端側を、先ず一方の押さえ部15に係止させ、当該ACMセンサ1を若干押し込みながら、他端側を他方の押さえ部15の内側に潜らせて係止させることで、両押さえ部15及び側壁部14の間(載置部13上)に、ACMセンサ1が装着される。
【0074】
また、図2(b)に示すように、載置部13の裏面の前後2箇所には、帯板の中間部分を略コ字形に折り曲げて成る取手部17の両端部が、例えば、スポット溶接等の手段を用いて固定されて、前後一対の矩形孔が形成されている。
【0075】
これらの両取手部17により形成される各矩形孔には、保持部材18が挿入するように配置される。この保持部材18は、取付台12の長手方向の寸法よりも若干長めの帯板により形成され、保持部材18の両端部には、リベット孔19が設けられている。
【0076】
そして、図3に示すように、取付台12を上方に向けた状態で保持部材18を薄板部材11の所定の位置に配置し、リベット孔19にリベットRを打ち込んで薄板部材11に貫通させることで、取付台12が薄板部材11に固定される。この様にして、図1に示すように、薄板部材11に、例えば、4個の取付台12が固定される。
【0077】
取付台12には、基本的にACMセンサ1が取り付けられるが、図1に示すように、複数の取付台12のいずれかに、腐食絶対量を測定・監視(モニタリング)するための暴露試験片20を取り付けても良い。この暴露試験片20は、矩形薄板状のACMセンサ1と略同じ大きさと形状を有し、取付台12の載置部13への装着は、上記したACMセンサ1と同じ動作によって行われる。
【0078】
特定のACMセンサ1には、図1に示すように、温湿度センサ21が接続されている。この温湿度センサ21は、取付台12の間に位置している薄板部材1の表面に、例えば、針金やバンド等の締結部材22を利用して薄板部材11に固定される。
【0079】
この様な腐食環境測定装置100を使用して、例えば、架空送電用の鉄塔P等の腹材K内部の腐食量・腐食性を測定する際には、図10(a)に示すように、腹材Kの端部から管端金具Hを撤去して開口部Qが露出している状態において、腹材K内部に腐食環境測定装置100を挿入する。
【0080】
具体的には、まず、図5(a)・図6(a)に示すように、ACMセンサ1と暴露試験片20を取り付けている全ての取付台12の側壁部14が上下に位置するように腐食環境測定装置100を傾けて、取付台12における載置部13の裏面を連結プレートLPに沿うようにして、1個目の取付台12を腹材K内部に押し込みながら、1個目の取付台12と2個目の取付台12の間に位置している薄板部材11を略90度屈曲させて、ACMセンサ1を取り付けている1個目の取付台12の全体を腹材K内部に挿入する。
【0081】
次に、図5(b)・図6(b)に示すように、2個目の取付台12を腹材K内部に押し込みながら、薄板部材11の略中間部分を略90度屈曲させて、ACMセンサ1を取り付けている2個目の取付台12の全体を腹材K内部に挿入する。
【0082】
さらに、3個目の取付台12を腹材K内部に押し込みながら、3個目の取付台12と4個目の取付台12の間に位置している薄板部材11を略90度屈曲させて、暴露試験片20を取り付けている3個目の取付台12の全体を腹材K内部に挿入する。
【0083】
最後に、4個目の取付台12を腹材K内部に押し込みながら、薄板部材11の後端側部分を略90度屈曲させて、暴露試験片20を取り付けている4個目の取付台12の全体を腹材K内部に挿入する。
【0084】
このとき、図6(a)(b)に示すように、腹材Kの開口部Qの近傍に、ガセットプレートGPに連結プレートLPを固定しているボルトV・ナットNが存在している場合であっても、薄板部材11が屈曲することで、薄板部材11と、薄板部材11に配置している個々の取付台12は、これらの部材を避けながら、腹材Kの開口部Qを介して腹材K内に挿入される。
【0085】
また、薄板部材11を屈曲させたとき、取付台12の裏面側がボルトV・ナットNに面していることから、取付台12に載置されているACMセンサ1にボルトV・ナットNが当たることがなく、ACMセンサ1の破損を防止している。
【0086】
さらに、腹材K内部に腐食環境測定装置100の全体を挿入すると、図6(c)に示すように、薄板部材11が元の真っ直ぐな状態に復元するので、個々の取付台12に取り付けているACMセンサ1と暴露試験片20は、腹材K内部の長手方向に沿った好ましい位置に配置される。
【0087】
このとき、腹材K内部における個々の取付台12は、図6(c)に示すように、側壁部14が左右に位置した状態となり、個々の取付台12において、ACMセンサ1と暴露試験片20が上向きに配置される。また、腹材K内部において、取付台12の側壁部14は、腹材Kの内周壁に当接した状態となる。
【0088】
腐食環境測定装置100を腹材K内部に配置した後には、図7(a)(b)に示すように、腹材Kの開口部Qにボルト固定式の管端金具40を取り付けて、僅かな隙間を残した状態で、腹材Kの開口部Qを閉鎖する。
【0089】
このボルト固定式の管端金具40は、図7(a)に示すように、閉鎖板41と、固定金具42により構成されている。
【0090】
閉鎖板41は、腹材Kの開口部Qの輪郭に略合致した半円状に形成されている。また、固定金具42は、閉鎖板41を固定している小半円状の板片43と、板片43に連設した基礎板44により構成されている。小半円状の板片43は、基礎板44に対して、90度の角度を有するように垂設されている。
【0091】
さらに、基礎板44は、図7(a)に示す状態において、若干下方を向いた傾斜状に板片43に固定されている。また、板片43は、所定の取付孔45を備えている。この取付孔45は、図7(a)に示すように、ナットNを貫装させる角状部分と、ボルトVの軸部を貫装させる円状部分を連接して形成されている。
【0092】
ボルト固定式の管端金具40を取り付けるとき、図7(a)(b)に示すように、腹材Kの開口部Qを閉鎖するように、閉鎖板41を配置する。そして、ナットNを若干緩めた状態で、基礎板44の取付孔45における角状部分に、ナットNを貫装させる。
【0093】
次に、基礎板44を若干開口部Q寄りに移動させて、ボルトVの軸部を、基礎板44の円状部分に貫装させる。この状態で、ナットNを絞め付けて、ボルト固定式の管端金具40を、腹材Kの開口部Qを閉鎖するように固定するのである。
【0094】
尚、ボルト固定式の管端金具40は、その取り外しと、再度の取り付けが可能である。その為、腹材K内部に配置している腐食環境測定装置100のACMセンサ1を交換するとき等においては、管端金具40を随時取り外して、腐食環境測定装置100を腹材Kから取り出し、腐食環境測定装置100に新しいACMセンサ1を装着した後に、腐食環境測定装置100を腹材K内部に配置して、腹材Kの開口部Qにボルト固定式の管端金具40を再度取り付けることとなる。
【0095】
次に、上記した腐食環境測定装置100を、送電線用の鉄塔Pに設置する具体例について説明する。
【0096】
例えば、図8に示す送電線用の鉄塔Pにおいて、腐食環境測定装置100を、鉄塔Pの腕金部が存在する上部位置Aと、鉄塔Pの中部位置Bと、鉄塔Pの下部位置Cのそれぞれに存在している腹材K内部に設置する。
【0097】
この様に、上部位置A、中部位置B、下部位置Cにおいて、鉄塔Pにおける高さ条件や、腐食環境測定装置100を挿入する腹材Kの径の条件を変えて、腹材K内部の腐食量・腐食性を測定するのである。
【0098】
また、腹材Kの内部と外部に腐食環境測定装置100を配置して、それぞれの部位における腐食量・腐食性を測定することも可能である。
【0099】
そして、各ACMセンサ1によって時間毎の出力電流を測定したものを、例えば、データロガー30に記録し、この記録されたデータに基づいて、大気環境における腐食性を測定する。
【0100】
このとき、データロガー30を設置した地点におけるACMセンサ1の出力電流データと、適正な波形から求められる測定電流値との関係を示すデータを求める。
【0101】
具体的には、鉄塔Pの上部位置Aに設置された基準となるACMセンサ1の出力電流値と、鉄塔Pの中部位置B及び下部位置Cに設置された被評価となるACMセンサ1の出力電流値の比から、被評価のACMセンサ1の日平均電気量を求める。
【0102】
そして、求めた日平均電気量Q/day(C/day)と腐食速度(mm/year)との相関関係を示すデータを用いて、各地点の推定腐食速度を求める。これにより、各地点における腐食速度の相対評価を行う。
【0103】
このようにして、ACMセンサ1の恒温恒湿槽における測定電流値を求めることにより、予め求めておいた基準データによる腐食速度のデータを用いて、腐食速度を推定する。これと同時に各腐食環境測定装置100に備えられている暴露試験片20の表面状態を直視観察することにより、腐食の絶対量を確認するのである。
【0104】
尚、腐食環境測定装置100は、図9(a)(b)に示すように、薄板部材11の両端部それぞれにおいて、薄板部材11の長手方向に沿った側方に向けて所定の長さの被覆番線50を延設すると、腐食環境測定装置100として好ましいものとなる。この被覆番線50は、針金等の鉄線を塩化ビニル等で被覆したものである。
【0105】
腐食環境測定装置100における薄板部材11への被覆番線50の取り付けは、例えば、図9(a)に示すように、薄板部材11の端部を環状に形成し、この環状部分に被覆番線50を挿通させて所定の長さ部分を折り返した状態とし、この折り返した部分を被覆番線50の端部分に絡めて、薄板部材11の環状部分に被覆番線50を取り付けるのである。
【0106】
薄板部材11の環状部分は、例えば、図9(a)に示すように、薄板部材11の端部を折り返して重ね合わせ、所定の位置にワッシャー51を宛てがってリベット止めする等して形成する。また、折り返した薄板部材11の端部は、ビニルテープ52等を巻き付けて処理する。この様な薄板部材11の折り返した端部の処理により、腹材K内部に腐食環境測定装置100を挿入するときに、所謂引っ掛かりを無くして、腐食環境測定装置100の円滑な挿入が可能となる
【0107】
また、腐食環境測定装置100における薄板部材11の端部に延設した被覆番線50は、図9(b)に示すように、腹材Kの開口部Qに取り付けている管端金具40の隙間部分から引き出し、鉄塔Pの主柱材SP等に巻き付けて固定する。このとき、主柱材SP等に巻き付けている被覆番線50部分に、ビニルテープ52等を巻き付けておく。
【0108】
この被覆番線50は、腹材K内部における腐食環境測定装置100の設置位置や、主柱材SP等に巻き付ける長さに応じて、好ましい長さを適宜選択する。そして、被覆番線50を操作し、腹材K内部における薄板部材11と個々の取付台12の向きを自由に変更して、ACMセンサ1と暴露試験片20による測定条件を適宜変更することが可能である。
【0109】
以上の説明は、本発明に係る腐食環境測定装置100を基本としているが、これ以外に、腐食環境測定装置100を使用した、鉄塔Pを構成する各種部材内部の腐食環境測定方法としても本発明を理解することができる。
【0110】
また、鉄塔Pを構成する各種部材内部に腐食環境測定装置100を配置する方法として本発明を理解したときには、所定の長さの薄板部材11に複数の取付台12を固定し、この取付台12にACMセンサ1を取り付けた腐食環境測定装置100を、鉄塔Pを構成する各種部材の内部に挿入するに際し、前記薄板部材11として、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用い、当該薄板部材11を屈曲させながら挿入するものとなる。
【0111】
具体的には、鉄塔Pを構成する腹材Kの端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具40を撤去する工程と、
腹材Kの端部から、薄板部材11を屈曲させながら腹材Kの内部に腐食環境測定装置100を挿入し、ACMセンサ1を取り付けている薄板部材11を腹材Kの内部に配置する工程と、
腹材Kの端部を、ボルト固定式の管端金具40により閉鎖する工程と、から成るのである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、架空送電鉄塔等の構造物に多用されている各種部材(腹材K、水平材L、補助材M等)の内部の腐食量・腐食性を測定する際に使用されることの他に、例えば、橋梁や通信用タワー・パビリオン等の様々な構造物において、筒状に形成されている種々の鋼管部材内部の腐食を測定・監視(モニタリング)するための装置・方法として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
P…鉄塔
K…腹材
L…水平材
M…補助材
SP…主柱材
GP…ガセットプレート(継ぎ手)
LP…連結プレート(継ぎ手)
V…ボルト
N…ナット
Q…開口部
H…管端金具
R…リベット

100…腐食環境測定装置
1…ACMセンサ
2…鋼基板
2a…導線
3…絶縁性ペースト
4…導電性ペースト
4a…導線
5…計測器
11…薄板部材
12…取付台
13…載置部
14…側壁部
15…押さえ部
16…切除部
17…取手部
18…保持部材
19…リベット孔
20…暴露試験片
21…温湿度センサ
22…締結部材
30…データロガー
40…ボルト固定式の管端金具
41…閉鎖板
42…固定金具
43…板片
44…基礎板
45…取付孔
50…被覆番線
51…ワッシャー
52…ビニルテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能な所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成し、鉄塔を構成する各種部材の内部に、薄板部材を屈曲させながら腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置したことを特徴とする、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項2】
所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用いて形成した所定の長さの薄板部材に、複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けて腐食環境測定装置を形成し、鉄塔を構成する各種部材の内部に、薄板部材を屈曲させながら腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を当該部材の内部に配置したことを特徴とする、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項3】
鉄塔を構成する各種部材は、腹材、水平材、補助材等である請求項1または2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項4】
鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去した状態で、腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置した後に、腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖している請求項1または2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項5】
薄板部材は、コンベックス状である請求項2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項6】
取付台は、ACMセンサを載せる扁平コ字枠状の載置部と、ACMセンサを保持するよう互いに内側に向けて略L字状に突設した押さえ部を備え、押さえ部と側壁部との間には、ACMセンサを脱着可能とする切除部が設けられている請求項1または2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項7】
取付台の載置部の裏面には、取付台を薄板部材の所定位置に固定するためのリベット孔を両端に有する保持部材を挿通可能とした複数の取手部を備えている請求項6に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項8】
複数の取付台のいずれかに、腐食絶対量を測定・監視(モニタリング)するための暴露試験片を取り付けた請求項1または2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項9】
薄板部材に、温湿度センサが付設されている請求項1または2に記載の鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載した腐食環境測定装置を使用した、鉄塔を構成する各種部材内部の腐食環境測定方法。
【請求項11】
所定の長さの薄板部材に複数の取付台を固定し、この取付台にACMセンサを取り付けた腐食環境測定装置を、鉄塔を構成する各種部材の内部に挿入するに際し、前記薄板部材として、所定以上の外力を加えると屈曲し、外力を取り去ると真っ直ぐな状態に復元するフレキシブル素材を用い、当該薄板部材を屈曲させながら挿入することを特徴とする、鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法。
【請求項12】
鉄塔を構成する腹材の端部において、当該端部を閉鎖しているボルト固定式の管端金具を撤去する工程と、
腹材の端部から、薄板部材を屈曲させながら腹材の内部に腐食環境測定装置を挿入し、ACMセンサを取り付けている薄板部材を腹材の内部に配置する工程と、
腹材の端部を、ボルト固定式の管端金具により閉鎖する工程と、
から成る請求項11に記載の鉄塔を構成する各種部材内部に腐食環境測定装置を配置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−189475(P2012−189475A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53919(P2011−53919)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】