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鉄欠乏性貧血症治療用組成物
説明

鉄欠乏性貧血症治療用組成物

【課題】鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を提供すること。
【解決手段】本発明により、2mg以上の鉄と、1gより多く12g以下の量のイソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを含有する組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄欠乏性貧血症は世界で最も多く発症している栄養素欠乏症で、発展途上国では25〜50%、先進国においても10〜20%の人々が罹患していると言われている。
鉄は生体内では約70%がヘモグロビン(Hb)として存在し、酸素を全身に運搬する機能を有する。このような鉄は機能鉄と呼ばれている。残りの約30%は、肝臓や脾臓などの臓器内に実質的に蓄えられており、貯蔵鉄と呼ばれている。体内の鉄が不足すると、貯蔵鉄を取り崩してHbが作られる。さらに鉄不足の状態が続いて貯蔵鉄が枯渇すると、機能鉄が使用されるようになって潜在性鉄欠乏性貧血症となる。さらに鉄不足の状態が続いて貯蔵鉄も機能鉄も枯渇すると鉄欠乏性貧血症となる。これらの症状の軽減、改善又は治療のためには鉄剤の摂取が必須であるが、鉄を摂取すると、先ず機能鉄の量が増加し、その後に貯蔵鉄の量が増加する。従って、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するには、機能鉄だけでなく、貯蔵鉄も十分量体内に存在させることが望まれる。
一方、鉄は吸収が悪いため長期の摂取が必要となる。また、鉄剤摂取は嘔吐や下痢、食欲不振等の消化管障害を引き起こす可能性がある。従って、その摂取期間をできるだけ短くすること、又はその摂取量をできるだけ少なくすることが望まれている。
これまでに、貧血モデルラットに鉄剤とプロリンを併用して投与するとHbの回復が促進すること(非特許文献1)、通常の食事をしたアスリートの血中ヘモグロビン濃度が5種類のアミノ酸(アルギニン、グルタミン、バリン、イソロイシン、ロイシン)摂取により増加すること(特許文献1)、グルタミンまたはバリンが鉄の吸収を促進すること(特許文献2、非特許文献2)、アルギニン摂取により腎性貧血患者の血中ヘモグロビン濃度が増加すること(特許文献3)が報告されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002-3372号公報
【特許文献2】国際特許公開2006/046880 A1
【特許文献3】国際特許公開2005/089743 A1
【非特許文献1】J. Nutr Sci Vitaminol, 49, 7-12, 2003.
【非特許文献2】Br. J. Nutr. (1975), 33, 351.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、優れた鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を見出すべく鋭意検討した結果、特定量の鉄と、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを組み合わせると、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症の優れた軽減、改善又は治療効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2mg以上の鉄と、1gより多く12g以下の量のイソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを含有する組成物を提供する。
【0006】
本発明はまた、2mg以上の鉄と、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを含有する、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を提供する。
本発明はまた、2mg以上の鉄と、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸との、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を製造するための使用を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症の軽減、改善又は治療が可能となり、貧血に伴う労作意欲の低下、易疲労感、息切れ、立ちくらみ、動悸、頭痛、肩こり、冷え性等の臨床症状が改善できる。
本発明によればまた、回復までの鉄の摂取期間を短縮することができ、或いは鉄の摂取量を低減することができるため、鉄の服用に伴う、嘔吐や下痢、食欲不振等の消化管障害といった副作用発現もほとんどなく鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療できる。
さらに、本発明によれば、在宅で毎日簡単に服用できることから、確実に、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症の軽減、改善又は治療効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<鉄(鉄剤)>
本発明において用いることのできる鉄は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩およびEDTA、DTPAなどのキレート剤またはトランスフェリン、ラクトフェリンなどのタンパク質による鉄錯体の形態をとることができる。
本発明の組成物における鉄の量は、2mg以上、好ましくは3〜10mgである。なお、塩および錯体の形態をとる場合、鉄元素に換算した場合の量が上記範囲内にあることを意味する。鉄の量がこのような範囲にあると、ヒト鉄要求量および鉄摂取による副作用軽減の観点から好ましい。
【0009】
<アミノ酸>
本発明において用いるアミノ酸は、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸である。これらのアミノ酸は、遊離体、塩、及び溶媒和物の何れの形態でも良い。塩としては、例えば、式中のカルボキシル基に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン等の有機アミンとの塩を、塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。溶媒和物としては、水和物、アルコール付加物等を挙げることが出来る。これらのアミノ酸はまた、L体、D体、DL体およびL体とD体の任意の比率の混合物のいずれであっても良い。これらのアミノ酸は、上記物質の2種類以上を併用することができることは言うまでもない。
本発明の組成物におけるアミノ酸の総量、つまりアミノ酸が一種の場合はその量、アミノ酸が二種以上の場合はそれらの合計量である。アミノ酸の総量が2g以上であるのが好ましく、4g以上であるのがより好ましい。アミノ酸の総量の上限は、12g以下であるのが好ましく、10g以下であるのがより好ましい。このような範囲は、後掲実施例でラットの貧血改善効果を示したアミノ酸用量とその際の摂取タンパク質量からヒトでの効果量を推定し設定されたため、十分な貧血改善効果を奏せしめ得る点で好ましい。
本発明の組成物は、更にグルタミンを含有することもできる。このうち、イソロイシン、バリン及びロイシンの3種を含有するのが好ましい。なお、これら3種のアミノ酸をBCAA(branched-chain amino acids)ともいう。これら3種のアミノ酸を含有すると、タンパク合成促進の観点で好ましい。イソロイシン、バリン、ロイシン、アルギニン及びグルタミンの5種を含有するもまた好ましい。5種のアミノ酸全てを含有すると、アミノ酸インバランスの危険性を低減させる観点で好ましい。
本発明の組成物において、イソロイシンが10〜40重量部、バリンが5〜20重量部、ロイシンが10〜35重量部、アルギニンが10〜40重量部、グルタミンが10〜40重量部であるのが好ましい。各アミノ酸の量がこのような範囲にあると、アミノ酸インバランスの低減および貧血改善効果発現の観点から好ましい。
【0010】
本発明の組成物を、成長期の子供、若い女性、特に妊婦、潰瘍又は腫瘍による消化管出血や痔からの出血などによる慢性的な出血が見られる人、胃や十二指腸切除後などの吸収不良の人に、連続的に数十日間投与ないし経口摂取させることにより、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療することができる。
上記目的のために用いる投与ないし摂取量は、年齢、体重などにより決定されるが、通常成人一日あたりの量として、経口投与ないし摂取の場合、2g〜12g、非経口投与ないし摂取の場合、2g〜6gの範囲で所期の効果が期待でき、この範囲で最も優れた効果が得られる量を選択することができる。一回あたりの投与ないし摂取量は、一日あたりの投与ないし摂取量が上記範囲内になるように設定すればよく、例えば、2g〜6gとすることができる。
本発明の組成物は、医薬組成物形態の他、上記疾患又は病態の軽減、改善又は治療のために用いられるものである旨の表示を附した食品、健康食品、サプリメント、栄養剤組成物又は飼料等の形態をとることもできる。
【0011】
医薬組成物形態の場合、医薬的に許容できる担体又は希釈剤、例えばカルボキシメチルセルロース・エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポテトスターチ・コーンスターチ等の澱粉類、乳糖・ショ糖等の糖類、ピーナツ油・コーン油・ゴマ油等の植物性油、ポリエチレングリコール、アルギン酸、ゼラチン、タルク等と混合し、錠剤・散剤・丸剤・顆粒剤・カプセル剤・シロップ等の経口剤、皮下注射剤・静脈内注射剤・筋肉内注射剤・硬膜外腔注射剤・くも膜下腔注射剤等の注射剤、経鼻投与製剤・経皮製剤・軟膏剤等の外用剤、直腸坐剤・膣坐剤等の坐剤、点滴剤等の剤形とすることができる。
本発明の医薬組成物は、経口的又は非経口的に、例えば経腸、経静脈投与することができる。
【0012】
食品形態の場合、適宜の添加剤を使用して常法により調製することもできる。このような添加剤としては味を調整改良する果汁、デキストリン、環状オリゴ糖、糖類(果糖、ブドウ糖、液糖、蔗糖)、酸味料、香料、抹茶粉末、油脂、テクスチャーを改善する乳化剤、コラーゲン、全脂粉乳、増粘多糖類や寒天(ゼリー飲料の場合)など通常健康食品又は栄養機能食品の成分として使用されているものを挙げる事ができる。
本発明の食品は、更に、アミノ酸、ビタミン類、特にビタミンB2、ビタミンC、卵殻カルシウムパントテン酸カルシウム、その他のミネラル類、特にカルシウム、ローヤルゼリー、プロポリス、蜂蜜、食物繊維、アガリクス、キチン、キトサン、カプサイシン、ポリフェノール、カロテノイド、脂肪酸、ムコ多糖、補酵素、抗酸化物質などを配合することにより健康食品又は栄養機能食品とすることもできる。これらの量は特に限定されないが、本発明の組成物が栄養機能食品の形態をとる場合、ビタミンB2を0.33〜12mg含有するのが好ましい。本発明の組成物が栄養機能食品の形態をとる場合、ビタミンCを24〜1000mg含有するのが好ましい。カルシウムの場合、210〜600mg含有するのが好ましい。
【0013】
サプリメント形態の場合、乳化剤、色素、香料等と混合し、錠剤、カプセル状、リキッド状等の剤型をとることができる。
本発明の組成物は、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、サル等の哺乳動物またはニワトリ、キジ、ダチョウ等の鳥類の飼料としてもよく、例えば、当該技術分野において周知の方法にしたがい、飼料用の固体又は液体の添加剤とすることもできる。
本発明の組成物の製品形態には特別の制限は無く、通常用いられているアミノ酸の摂取できる形態であればいずれの形態でもよい。このような形態としては経口摂取であれば適当な賦形剤を使用した粉末、顆粒、タブレット、液体(飲料、ゼリー飲料)、キャンディ(チョコレート等)、バー状ないしステック状の菓子あるいは上記1種あるいは2種のアミノ酸の単なる混合物を挙げることができる。また静脈投与であれば上記1種あるいは2種のアミノ酸を含有した輸液、水溶液、用時調整のためのアミノ酸粉末を挙げることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を具体的に実施例で説明する。ここで用いた分析項目は、血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数、血清フェリチン濃度であり、これらは、貧血の診断もしくは貧血回復の程度を判断するために一般的に測定され、薬理学および生理学の観点から妥当なものである。今回の全ての結果は平均値±標準誤差で示した。また統計解析には、各測定項目についてT検定(鉄剤単独群に対して)またはTukey−Kramerの多重検定を用いて全ての試験群間の平均値の検定を行った。なお、本明細書において、単に「%」と記載した場合は質量%を表す。
【0015】
試験例1(鉄欠乏性貧血モデルラットに鉄剤と各種アミノ酸を併用して供与した際の貧血指標血中成分の確認)
(1)試験の概要:
(a)3週間にわたる鉄欠乏食供与および瀉血により、鉄欠乏状態になり鉄欠乏性貧血モデルラットを作成できることが報告されている(日本栄養学会誌 57, 89-97, 2004)。そこで、この鉄欠乏性貧血モデルラットを対象に、鉄剤とともに5種類の混合アミノ酸(バリン、イソロイシン、ロイシン(以下、3つあわせてBCAAという)、アルギニン,グルタミンを適宜組み合わせて3週間供与することにより貧血状態の改善が促進され得るかを検討した。
(b)3週齢のWistar系雄ラットを用いて実験を開始した。
(c)ラット42匹に鉄欠乏食(鉄として2〜3mg/kg含有)を3週間供与し、その間に1週間に1回、計3回瀉血を行った(貧血誘導期)。その後、血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数をもとに以下の7群に群分けし、(i)鉄剤単独群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄 (ii)プロリン併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+プロリン (iii)アラニン併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+アラニン (iv)グリシン併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+グリシン (v)3AA併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+プロリン&アラニン&グリシン (vi)5AA併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+BCAA&アルギニン&グルタミン (vii)FRT組成AA併用群:鉄欠乏食+クエン酸第一鉄+フェリチンタンパク質組成アミノ酸それぞれ対応している飼料を供与した(貧血回復期)。3週間経過後採血し、血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数および血清フェリチン濃度を測定した。
【0016】
(d)アミノ酸をクエン酸第一鉄と併用して添加した群はすべて、鉄剤単独群に比べ血清フェリチン濃度が増加した。特にBCAA&アルギニン&グルタミンを添加した群ではその増加が著しく、鉄剤単独群に比べ平均値が約3倍まで上昇した(図1参照)。また赤血球数についても、5AA併用群において鉄剤単独群に比べ有意に増加した(第4表参照)。
(e)以上の結果より、BCAA,アルギニン,グルタミンの5種類のアミノ酸を鉄剤と併用摂取することにより、鉄剤単独群に比べ赤血球数及び血清フェリチン濃度を共に有意に増加させることが確認された。赤血球数の増加は機能鉄回復の指標であり、血清フェリチン濃度の増加は、貯蔵鉄の回復を示す。そのため、この結果より、鉄とBCAA,アルギニン,グルタミンの5種類のアミノ酸とを併用すると、鉄欠乏性貧血症または鉄欠乏症の回復を促進する効果を有すると考えられる。
【0017】
(2)実験の詳細
(a)各群の構成:下記第1表に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
【化1】

【0020】
(c)飼料調整:貧血誘導期飼料は、下記第2表に示す鉄欠乏食組成に従って調製した。貧血回復期飼料は、貧血誘導期飼料にクエン酸第一鉄を288mg/kg(鉄元素として30mg/kg)および各種アミノ酸を20g/kg混合し、貧血回復期におけるそれぞれの群の飼料を作成した。
【0021】
【表2】

【0022】
(d)アミノ酸比率:BCAA&アルギニン&グルタミンおよびフェリチンタンパク質組成アミノ酸の割合を下記第3表に示す。5AA併用群およびFRT組成AA併用群の貧血回復期における飼料は、このアミノ酸比で飼料中に20g/kg添加された。
【0023】
【表3】

【0024】
(e)動物飼育:3週齢のWistar系雄性ラット42匹(7試験群×6匹)を日本チャールス・リバーより購入し、12時間の明暗サイクル(7:00−19:00)、室温25℃の動物飼育室で1ケージに2匹ごとを飼育した。1週間の馴化後、鉄欠乏食(鉄として2〜3mg/kg含有)を供与し、1週間に1回1ml程度瀉血を行った(貧血誘導期)。3週間経過時点で、血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数および血清フェリチン濃度が一定になるように7群に群分けし、それぞれの群に鉄欠乏食に(i)クエン酸第一鉄 (ii)クエン酸第一鉄+プロリン (iii)クエン酸第一鉄+アラニン (iv)クエン酸第一鉄+グリシン (v)クエン酸第一鉄+プロリン&アラニン&グリシン (vi)クエン酸第一鉄+BCAA&アルギニン&グルタミン (vii)クエン酸第一鉄+フェリチンタンパク質組成アミノ酸を添加した各種飼料を3週間供与した(貧血回復期)。なおクエン酸第一鉄は飼料中に288mg/kg(鉄元素として30mg/kg)、また各種アミノ酸は20g/kg添加された。
(f)貧血指標血中成分の測定:貧血回復期終了時点に、尾静脈および後大静脈から採血し、その血液を用いて血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数および血清フェリチン濃度を測定した。血中ヘモグロビン濃度は、動物用生化学自動分析装置(富士写真フィルム製 富士ドライケム5500)を用いて採血後即時に測定された。ヘマトクリット値および赤血球数は、全血を用いて多項目自動血球計数装置(Sysmex社製)によって分析された。また血清フェリチン濃度は、採取した血液を遠心機(日立社製 himacCF15D)で遠心し、ラットフェリチン測定キット(パナファーム・ラボラトリーズ)を用いて測定した。
(g)試験結果:鉄剤と各種アミノ酸を3週間併用して供与した後の血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値および赤血球数を下記第4表にまとめた。*は(i)鉄剤単独群に比べ危険率P<0.05で有意差があることを示す。また血清フェリチン濃度の結果は、図1に示した。
【0025】
【表4】

【0026】
試験例2(鉄欠乏性貧血モデルラットに鉄剤と各種アミノ酸を併用して供与した際の貯蔵鉄量の確認)
(1)試験の概要:
(a)試験例1と同様に貧血を誘発させたラットにアルギニン、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはこれら5種類のアミノ酸混合を鉄剤とともに2週間供与することにより脾臓および肝臓中の鉄含量が増加するかを検討した。
(b)試験1と同様に3週齢のWistar系雄性ラットに鉄欠乏食を3週間供与して貧血モデルラットを作成し、6群に群分けした。それぞれの群に、クエン酸第一鉄単独もしくはクエン酸第一鉄+アミノ酸(アルギニン、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはこれら5種類のアミノ酸混合)を2週間供与し、脾臓および肝臓中の鉄含量を測定した。
【0027】
(c)アミノ酸を供与された群は、鉄剤単独群に比べ脾臓中の鉄含量が増加することが確認された。中でも特に5種類アミノ酸混合を供与した群において脾臓中の鉄含量が増加した(第6表参照)。しかし本試験では肝臓中の鉄含量はアミノ酸供与によって特に変化しなかった。
(d)以上の結果より、BCAA,アルギニン,グルタミンの5種類のアミノ酸を鉄剤と併用摂取することにより、鉄剤単独群に比べ貯蔵鉄が増加することが確認された。そのためこの結果より、鉄剤とBCAA,アルギニン,グルタミンの5種類のアミノ酸との併用は、鉄剤単独摂取に比べて鉄欠乏性貧血症または鉄欠乏症からの回復を促進することが示された。
【0028】
(2)実験の詳細
(a)各群の構成:下記第5表に示す。
【0029】
【表5】

【0030】
【化2】

【0031】
(c)飼料調整:試験1と同様に飼料を調整した(第2表参照)。なおクエン酸第一鉄および各種アミノ酸も試験1と同様の添加量とした。
【0032】
(d)アミノ酸比率:BCAA&アルギニン&グルタミンのアミノ酸比率は試験1と同様に調整された(第3表参照)。
【0033】
(e)動物飼育:3週齢のWistar系雄性ラット28匹(7試験群×4匹)を日本チャールス・リバーより購入し、試験1と同条件で飼育を開始した。1週間の馴化後、試験1と同様にラットに貧血を誘導させた。3週間経過時点で、血中ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数および血清フェリチン濃度が一定になるように7群に群分けし、それぞれの群に鉄欠乏食に(i)クエン酸第一鉄 (ii)クエン酸第一鉄+アルギニン (iii)クエン酸第一鉄+グルタミン (iv)クエン酸第一鉄+イソロイシン (v)クエン酸第一鉄+ロイシン (vi)クエン酸第一鉄+バリン (vii)クエン酸第一鉄+BCAA&アルギニン&グルタミンを添加した各種飼料を2週間供与した(貧血回復期)。
(f)脾臓及び肝臓中鉄含量の測定:貧血回復期終了時点に、過麻酔下でラットから脾臓および肝臓を摘出し、重量を測定した。それらを凍結乾燥機を用いて乾燥後、めのう乳鉢を用いて粉砕した。硝酸および過塩素酸によって粉砕したサンプルから鉄を抽出し、原子吸光光度計を用いて鉄イオン濃度を測定した。
(g)試験結果:鉄剤と各種アミノ酸を2週間併用して供与した後の脾臓中の鉄含量を第6表にまとめた。*は(i)鉄剤単独群に比べ危険率P<0.1で有意差があることを示す。なお肝臓中の鉄含量は本試験ではアミノ酸添加によって変化しなかった。
【0034】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、試験1の貧血回復期終了時点における血清フェリチン濃度を示す図である。血清フェリチン濃度は貯蔵鉄量と正の相関を有することが知られており、貯蔵鉄量の推定に用いられる。*鉄剤単独群に比べ、危険率P<0.05で有意差があることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2mg以上の鉄と、1gより多く12g以下の量のイソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを含有する組成物。
【請求項2】
更に、グルタミンを含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アミノ酸が、イソロイシン、バリン及びロイシンである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
アミノ酸が、イソロイシン、バリン、ロイシン、アルギニン及びグルタミンであり、イソロイシンが10〜40重量部、バリンが5〜20重量部、ロイシンが10〜35重量部、アルギニンが10〜40重量部、グルタミンが10〜40重量部である請求項2項記載の組成物。
【請求項5】
経口用医薬品、食品、栄養剤またはサプリメントの形態である請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
2mg以上の鉄と、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸とを含有する、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物。
【請求項7】
更に、グルタミンを含有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
アミノ酸が、イソロイシン、バリン及びロイシンである請求項6記載の組成物。
【請求項9】
アミノ酸が、イソロイシン、バリン、ロイシン、アルギニン及びグルタミンであり、イソロイシンが10〜40重量部、バリンが5〜20重量部、ロイシンが10〜35重量部、アルギニンが10〜40重量部、グルタミンが10〜40重量部である請求項7項記載の組成物。
【請求項10】
2mg以上の鉄と、イソロイシン、バリン、ロイシン及びアルギニンからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸との、鉄欠乏性貧血症ないし潜在性鉄欠乏性貧血症を軽減、改善又は治療するための組成物を製造するための使用。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50277(P2008−50277A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225825(P2006−225825)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】