説明

鉄筋コンクリート外装木造建築物及びその建築方法

【課題】木の温もりを感じ取ることができて、鉄筋コンクリート並の強度を発揮でき、さらには鉄筋コンクリート造よりも建築コストを抑えることのできる建築物を提供する。
【解決手段】立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、立ち上がり部の上側に外面が木板12bによって形成された木造建築物12を建築する木造工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に木板12bに沿って鉄筋13を配置する配筋工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側であって鉄筋13よりもさらに外側の部分に型枠20を立てる型枠設置工程と、木板12bと型枠20との隙間にコンクリート14を流し込むコンクリート注入工程と、コンクリート14を養生させるコンクリート養生工程とを経て、木造建築物12の外面に鉄筋コンクリート製の外壁14を一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波による被害を抑えることも可能な鉄筋コンクリート外装木造建築物と、その建築方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
沿岸部の平地に建てられた建築物は、津波により甚大な被害を受けるおそれがある。今年3月に発生した東日本大震災による被害状況は、10メートルを超えるような高い津波が発生すると、殆どの木造建築物は跡形もなく押し流されてしまうことを物語っている。これに対し、鉄筋コンクリート造の建築物は、その形を保っているものも多く、木造建築物よりも津波に対して強いことが分かる。このため、耐津波を意識するならば、建築物は、木造よりも鉄筋コンクリート造とすべきであるといえる。
【0003】
しかし、鉄筋コンクリート造の建築物は、同じ規模の木造建築物よりも建築コストが高くなるという欠点があった。また、家屋などにおいては、木の質感を好み、コンクリートの無機質な質感を嫌う人もいる。木の温もりを感じ取ることができて、鉄筋コンクリート並の強度を発揮でき、さらには鉄筋コンクリート造よりも建築コストを抑えることのできる家屋を建てることができればよいのであるが、このような三拍子そろった家屋は、これまでに提案されていない。
【0004】
ところで、耐津波という観点では、これまでに以下のような技術が提案されている。例えば、特許文献1には、4本の支柱に対して家屋の四隅を昇降自在に係合させる技術が記載されている。これにより、津波が発生した際には、海水の浮力によって家屋を上昇させることができるとされている。しかし、この技術は、支柱の設置コストがかかるだけでなく、支柱によって家屋の外観が悪くなるおそれがある。また、津波が家屋に激しくぶつかった場合には、家屋が浮力により上昇するよりも前に倒壊するおそれもある。
【0005】
また、特許文献2には、家屋が建てられた敷地をコンクリート壁と、水密仕様の門扉によって囲む技術が記載されている。特許文献2の技術を採用すると、津波が家屋の外壁に直接ぶつからないようにすることができるので、家屋が津波から受ける被害が小さくなると予想される。しかし、コンクリート壁を超える高さの津波に対しては、耐津波効果は著しく低下すると考えられる。高い津波にも耐えられるように、コンクリート壁を高くすると、家屋の日当たりや風通しが著しく悪化するだけでなく、建築コストが大幅に増大してしまう。
【0006】
さらに、特許文献3には、金属板を溶接することにより家屋の一階部分の外壁を形成するとともに、外壁に設ける開閉部分を全て水密構造とする技術が記載されている。これにより、家屋内部へ水が浸入するのを防ぐことができるとされている。しかし、外壁が金属板で形成された家屋は、断熱性を確保しにくいという欠点がある。また、外壁の耐食性や耐候性を確保しにくい。さらには、外観が奇異で安っぽく、外観デザインの自由度も低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平07−016861号公報
【特許文献2】特開平08−086119号公報
【特許文献3】実登第3061212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、木の温もりを感じ取ることができて、鉄筋コンクリート並の強度を発揮でき、さらには鉄筋コンクリート造よりも建築コストを抑えることのできる鉄筋コンクリート外装木造建築物を提供するものである。また、この鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、立ち上がり部の上側に、外面が木板(合板や、間伐材などの無垢板など)によって形成された木造建築物を建築する木造工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に、前記木板に沿って鉄筋を配置する配筋工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側であって、前記鉄筋よりもさらに外側の部分に、型枠を立てる型枠設置工程と、前記木板と前記型枠との隙間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程とを経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を一体化させることを特徴とする鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法を提供することによって解決される。
【0010】
本発明の建築方法で建築された鉄筋コンクリート外装木造建築物は、木板の外面に鉄筋コンクリート造の外壁が一体化された構造となっているため、非常に強度に優れ、激しい津波の圧力にも十分耐えることができるものとなっているだけでなく、木造建築物が浮かないようにすることもできる。また、鉄筋コンクリート造の外壁により、建築物の重量を増大させることができるので、建物全体が津波により押し流されるのを防ぐこともできる。さらには、鉄筋コンクリート造の外壁によって、従来の木造建築物よりも耐震性や耐火性を大幅に向上させることができる。さらにまた、本発明の建築方法で建築された鉄筋コンクリート外装木造建築物の内部は、従来の木造建築物と同様であるために、木の温もりや優れた吸湿性などの木造建築物の利点は損なわれない。加えて、鉄筋コンクリート造の外壁を構築している間に、内部(木造建築物部分)の内装などの工事を並行して進めることができるので、工期の短縮や建築コストの削減も可能になる。本発明の鉄筋コンクリート外装木造建築物は、各種建築物として使用することができるが、なかでも、木の質感を好まれやすく、建築コストの低減に対する需要も高い、家屋(住宅など)に最適である。
【0011】
本発明の鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法では、その木造工程において、前記木板から外方に金具を突き出させ、配筋工程において、前記金具と前記鉄筋とを連結することも好ましい。金具と鉄筋の連結は、前記木板から外方に突出するU字ボルト(金具)の内側に鉄筋を通すなど、金具に鉄筋を直接的に連結する場合だけでなく、前記U字ボルト(金具)と鉄筋とを別の金具や針金などで結束するなど、金具に鉄筋を間接的に連結する場合も含む。これにより、鉄筋コンクリート造の外壁と木造建築物の外面(木板)との一体性を高めることが可能になり、鉄筋コンクリート造の外壁に対して木造建築物をより浮きにくくすることが可能になる。加えて、得られる鉄筋コンクリート外装木造建築物の強度をさらに高めることができる。
【0012】
また、本発明の鉄筋コンクリート外装木造建築物の構築方法では、前記鉄筋コンクリート製の外壁における前記木造建築物の窓又は扉に対応する部分に開口部を設け、前記外壁の外面に前記開口部を覆うための鋼製扉を取り付けることも好ましい。これにより、従来の木造建築物と同程度まで鉄筋コンクリート外装木造建築物の採光性や通気性を確保しながらも、耐津波性を維持することが可能になる。鋼製扉としては、開き戸タイプのものや、引き戸タイプのものが挙げられる。鋼製扉における外壁との接触部分に、ゴム製のパッキンなどを施して水密性を高めることも好ましい。
【0013】
ところで、ここまでは、鉄筋コンクリート外装木造建築物を新築する場合について述べたが、上記課題は、既存の木造建築物の基礎における立ち上がり部の外周に沿って底版部を形成する基礎延長工程と、立ち上がり部の上側に、外面が木板によって形成された木造建築物を建築する木造工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に、前記木板に沿って鉄筋を配置する配筋工程と、立ち上がり部よりも外側の底版部の上側であって、前記鉄筋よりもさらに外側の部分に、型枠を立てる型枠設置工程と、前記木板と前記型枠との隙間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程とを経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を一体化させることを特徴とする鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法を提供することによっても解決される。このように、既存の木造建築物を改造する方式であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、木の温もりを感じ取ることができて、鉄筋コンクリート並の強度を発揮でき、さらには鉄筋コンクリート造よりも建築コストを抑えることのできる鉄筋コンクリート外装木造建築物を提供することが可能になる。また、この鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、基礎構築工程を終えた直後の家屋の外観を示した斜視図である。
【図2】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、木造工程を終えた直後の家屋の外観を示した斜視図である。
【図3】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、配筋工程を行っている途中の家屋の外観を示した斜視図である。
【図4】本発明の建築方法の配筋工程において、鉄筋を木造家屋(木造建築物)の外面から突出して設けられた金具に連結した例を、家屋を水平に切断して前記金具の周辺を拡大した状態を示した断面図である。
【図5】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、型枠設置工程を終えた直後の家屋の外観を示した斜視図である。
【図6】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、コンクリート注入工程を終えた直後の家屋を水平に切断した状態を示した断面図である。
【図7】本発明の建築方法で建築されている家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)であって、型枠撤去工程を終えた直後の家屋の外観を示した斜視図である。
【図8】本発明の建築方法で建築された家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)の外観を示した斜視図である。
【図9】本発明の建築方法で建築された家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)の施工方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の鉄筋コンクリート外装木造建築物及びその建築方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法は、上述したように各種の建築物を建築する際に使用することができるが、以下においては、耐津波性に優れた家屋(耐津波家屋)を建築する場合を例に挙げて説明する。本実施態様の建築方法では、基礎構築工程と、木造工程と、配筋工程と、型枠設置工程と、コンクリート注入工程と、コンクリート養生工程と、型枠撤去工程と、仕上工程とを経て、家屋を建築する。以下、これらの工程について順番に説明する。
【0017】
[基礎構築工程]
図1は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、基礎構築工程を終えた直後の家屋10の外観を示した斜視図である。基礎構築工程では、図1に示すように、立ち上がり部11aの外周に沿って底版部11bが形成された基礎11を構築する。基礎11は、基礎構築用の型枠内に鉄筋を配置してコンクリートを流し込み、該コンクリートを養生させた後、型枠を撤去することにより構築される。図1を含む各図において、家屋10におけるコンクリートで形成された部分は、網掛けのハッチングで示している。基礎11は、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11bが設けられていない「布基礎」であってもよいが、本実施態様では、立ち上がり部11aの内側の区画に底版部11bが設けられた「べた基礎」を採用している。これにより、家屋10の耐津波性や耐震性をさらに向上することができる。基礎11の下側には図示省略の基礎杭を埋設し、該基礎杭を基礎11と一体化させておくことも好ましい。これにより、津波などによって、家屋10が基礎11ごと浮き揚げられないようにし、家屋10の耐津波性を高めることができる。基礎構築工程を終えると、木造工程を開始する。立ち上がり部11aよりも外側の底版部11bには、後述する配筋工程で鉄筋13を建てるための複数の穴11cを所定間隔で設けている。
【0018】
[木造工程]
基礎構築工程が完了すると、木造工程を開始する。図2は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、木造工程を終えた直後の家屋10の外観を示した斜視図である。図2を含む各図において、木造家屋12の屋根12aは、一部を破断して描いてある。木造工程では、図2に示すように、基礎11における立ち上がり部11aの上側に、外面が木板12bによって形成された木造家屋12を建築する。本実施態様の建築方法においては、木板12bとして合板を採用している。木造家屋12は、この段階では、外壁の仕上げを行わず、合板12bが外面に剥き出したままにしておく。木造家屋12は、外面が合板12bにより形成されるのであれば、その具体的な工法は限定されない。ツーバイフォーパネル工法などのパネル工法のほか、軸組工法(在来工法)において外面を合板貼りとする工法などが例示される。ところで、後述する配筋工程以降の各工程は、上述した木造工程が完了していなくても、少なくとも木造家屋12の外面に合板12bが貼られた状態であれば開始することができる。このように、配筋工程以降の各工程と木造工程とを並行して行うことで、工期を短縮することができる。
【0019】
[配筋工程]
図3は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、配筋工程を行っている途中の家屋10の外観を示した斜視図である。配筋工程では、図3に示すように、基礎11における立ち上がり部11aよりも外側の底版部11bの上面に設けられた穴11cに、鉄筋13を合板12に対して平行となるように立てていく。使用する鉄筋13の太さは、特に限定されないが、通常、直径が13〜16mm程度のものが使用される。図3の例では、隣り合う鉄筋13は、独立した状態となっているが、水平方向に他の鉄筋やワイヤーなどを通し、鉛直に立てられた鉄筋13を水平方向に連結することも好ましい。これにより、後述する鉄筋コンクリート造の外壁14の強度をより高めることができる。また、図4に示すように、合板12bから外方に突き出た金具12fと鉄筋13とを連結することも好ましい。図4は、鉄筋13を木造家屋12の外面から突出して設けられた金具12fに連結した例を、木造家屋12を水平に切断して金具12fの周辺を拡大した状態を示した断面図である。図4の例では、木造家屋12における梁12dと柱12eなどを接続するためのU字ボルト12f(金具)の内部に鉄筋13を通すことにより、金具12fと鉄筋13を連結している。これにより、後述する鉄筋コンクリート造の外壁14と木造家屋12との一体性を高めることができる。
【0020】
[型枠設置工程]
配筋工程が完了すると型枠設置工程を開始する。図5は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、型枠設置工程を終えた直後の家屋10の外観を示した斜視図である。型枠設置工程では、図5に示すように、基礎11における立ち上がり部11a(図3を参照)よりも外側の底版部11bの上側であって、鉄筋13よりもさらに外側の部分に、型枠20を鉛直に立てる。本実施態様において、型枠20は、複数枚の合板21(コンパネ)により構築しているが、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用してもよい。型枠20の垂直出し(鉛直出し)は、既に垂直出しが行われている木造家屋12の外面を基準に行えばよいので容易である。型枠20の内面と木造家屋12の外面(合板12b)の外面との間隔D(図6を参照)は、特に限定されない。しかし、間隔Dが狭すぎると、得られる家屋10の外壁14の強度が低下するおそれがあるし、間隔Dが広すぎると、使用するコンクリート14の量が膨大になり、建築コストが高くなるおそれがある。このため、間隔Dは、通常、5〜50cm程度とされ、好ましくは、10〜20cm程度とされる。本実施態様において、間隔Dは15cmとしている。図2に示すように、木造家屋12に窓や扉などの開口部12cが設けられている場合には、後述するコンクリート注入工程において、開口部12cの外側にコンクリート14が流れ込まないように型枠20を配置する。
【0021】
[コンクリート注入工程及びコンクリート養生工程]
型枠設置工程が完了すると、コンクリート注入工程を開始する。図6は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、コンクリート注入工程を終えた直後の家屋10を水平に切断した状態を示した断面図である。コンクリート注入工程では、図6に示すように、木造家屋12の外面を形成する合板12bと型枠20との隙間にコンクリート14を流し込む。木造家屋12における開口部12c(図2を参照)は、コンクリート注入工程を開始するまでに、合板や鋼板などで塞いでおく。コンクリート注入工程において、コンクリート14は、通常、所定高さ毎に又は所定区画毎に段階的に行う。注入するコンクリート14としては、軽量コンクリートや普通コンクリートや重量コンクリートなど、各種のものを使用することができる。コンクリート注入工程が完了すると、コンクリート養生工程を開始し、コンクリート14を養生させる。
【0022】
[型枠撤去工程]
コンクリート養生工程が完了すると型枠撤去工程を開始する。図7は、本発明の建築方法で建築されている家屋10であって、型枠撤去工程を終えた直後の家屋10の外観を示した斜視図である。型枠撤去工程では、型枠20(図6を参照)を取り外して、図7に示すように、コンクリート14が剥き出しの状態とする。ただし、型枠20として、サイディングボードなど、外面に意匠が施された板を使用した場合には、型枠20をそのまま残してもよい。また、内枠として使用された木造家屋12の合板12bは、そのまま残した状態とする。これにより、家屋10の吸湿性や木の質感を維持することができる。また、通常の鉄筋コンクリート造の家屋を建築する際には廃棄されている内枠に相当する部分をそのまま材料として用いることができるので、廃材を削減することもできる。コンクリート14は、木造家屋12の外面を形成する合板12bと一体化された状態となっており、鉄筋コンクリート造の外壁として、家屋10の耐津波性や耐震性を大幅に向上させる。家屋10の外壁14における木造家屋12の開口部12c(図2を参照)に重なる部分には、開口部12cと略同一形状の開口部14aが設けられており、家屋10の採光性や通気性を維持している。
【0023】
[仕上工程]
型枠撤去工程が完了すると必要に応じて仕上工程を開始する。図8は、本発明の建築方法で建築された家屋10(仕上工程を終えた家屋10)の外観を示した斜視図である。家屋10の外壁14は、コンクリートの打ちっぱなしであってもよいが、必要に応じて、塗装処理などの各種処理を施すこともできる。また、バルコニーやウッドデッキなどのアクセサリーを取り付けることもできる。これらの処理は、この仕上工程において行う。また、仕上工程では、図8に示すように、外壁14の開口部14aに鋼製扉14bを取り付けることもできる。これにより、開口部14aからの水の侵入を防ぐことも可能になる。鋼製扉14bにおける外壁14との接触部分には、図示省略のパッキンなどを施して水密性を高めることもできる。また、鋼製扉14bを閉じた際に内側となる部分にカンヌキなどを設けておくことも好ましい。これにより、鋼製扉14bに激しい水流がぶつかったとしても十分に耐えることが可能になる。
【0024】
[その他]
ここまでは、二階建ての木造家屋12(図2を参照)の一階部分と二階部分の全ての外面を鉄筋コンクリート造の外壁14(図7を参照)で囲った例について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。すなわち、木造家屋12は、平屋建てであってもよいし、三階建て以上であってもよい。また、これらの木造家屋12における地面から屋根12aまでの全ての高さに亘って鉄筋コンクリート造の外壁14を設ける必要はなく、地面から所定高さまでのみを外壁14で覆うものであってもよい。例えば、二階建ての木造家屋12における一階部分のみを鉄筋コンクリート造の外壁14で囲う場合などが例示される。木造家屋12の地面から途中の高さまでのみを外壁14で覆う場合には、外壁14の上端は、軒先などで覆っておくとよい。鉄筋コンクリート造の外壁14をどの高さまで設けるかは、家屋10を建てる場所の海抜や地形、あるいは周辺環境などを考慮して適宜決定する。
【0025】
さらに、ここまでは、木造家屋12(図2を参照)の四方全ての外面を鉄筋コンクリート造の外壁14で囲った例について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。すなわち、木造家屋12における津波が進行してくると予想される側(通常、海側)の外面のみを鉄筋コンクリート造の外壁14で覆うようにしてもよい。図9は、本発明の建築方法で建築された家屋10の施工方向を説明するための図である。本発明の建築方法で家屋10を施工する場合には、図9に示すように、家屋10の対角線がそれを建てる地点の津波予想進行方向と一致する向きとなるように、家屋10を施工すると好ましい。これにより、家屋10に到達した津波による圧力が家屋10にまともに印加されないようにして、家屋10の耐津波性をさらに向上することができる。このような向きで家屋10を施工する場合には、海側の2面のみを鉄筋コンクリート造の外壁14で覆うようにしてもよい。ただし、反対側の開口部からの浸水は免れないので、津波による被害を最小限に食い止めるためには、やはり、木造家屋12の四方全ての外面を鉄筋コンクリート造の外壁14で覆うことが好ましい。海岸に近く激しい勢いで津波が到達することが想定される地点に家屋10を施工する場合には、家屋10の外壁14から海側に所定間隔を隔てた場所に、外壁14と同様の形態の鉄筋コンクリート造の塀を海側の外壁14と平行になる向きで施工しておくことも好ましい。これにより、家屋10に到達する津波の勢いを著しく低下させ、家屋10の耐津波性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 家屋(鉄筋コンクリート外装木造建築物)
11 基礎
11a 立ち上がり部
11b 底版部
11b 底版部
11b 底版部
11c 穴
12 木造家屋(木造建築物)
12a 屋根
12b 合板(木板)
12c 開口部
12d 梁
12e 柱
13 鉄筋
14 コンクリート(鉄筋コンクリート造の外壁)
14a 開口部
14b 鋼製扉
20 型枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち上がり部の外周に沿って底版部が形成された基礎を構築する基礎構築工程と、
立ち上がり部の上側に、外面が木板によって形成された木造建築物を建築する木造工程と、
立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に、前記木板に沿って鉄筋を配置する配筋工程と、
立ち上がり部よりも外側の底版部の上側であって、前記鉄筋よりもさらに外側の部分に、型枠を立てる型枠設置工程と、
前記木板と前記型枠との隙間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を一体化させることを特徴とする鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法。
【請求項2】
木造工程において前記木板から外方に金具を突き出させ、配筋工程において前記金具と前記鉄筋とを連結する請求項1記載の鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法。
【請求項3】
前記鉄筋コンクリート製の外壁における前記木造建築物の窓又は扉に対応する部分に開口部を設け、前記外壁の外面に前記開口部を覆うための鋼製扉を取り付ける請求項1又は2記載の鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法。
【請求項4】
既存の木造建築物の基礎における立ち上がり部の外周に沿って底版部を形成する基礎延長工程と、
立ち上がり部の上側に、外面が木板によって形成された木造建築物を建築する木造工程と、
立ち上がり部よりも外側の底版部の上側に、前記木板に沿って鉄筋を配置する配筋工程と、
立ち上がり部よりも外側の底版部の上側であって、前記鉄筋よりもさらに外側の部分に、型枠を立てる型枠設置工程と、
前記木板と前記型枠との隙間にコンクリートを流し込むコンクリート注入工程と、
前記コンクリートを養生させるコンクリート養生工程と、
を経て、木造建築物の外面に鉄筋コンクリート製の外壁を一体化させることを特徴とする鉄筋コンクリート外装木造建築物の建築方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の建築方法によって建築された鉄筋コンクリート外装木造建築物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219542(P2012−219542A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87660(P2011−87660)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【特許番号】特許第4879359号(P4879359)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(508057069)
【Fターム(参考)】