説明

鉄筋引抜試験装置

【課題】コンクリート上に延出する鉄筋長さが短い場合であっても鉄筋をチャックして引抜試験を行うことのできる鉄筋引抜試験装置を提供する。
【解決手段】先端側に反力部材を設けたロッド5と、該ロッド5が伸縮可能に収容されるシリンダ部を内蔵する本体部7とを有する油圧ジャッキ9を一対備え、該一対の油圧ジャッキ9の各ジャッキが前記本体部側面11を対向させて所定間隔離して配置され、引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持部材13を各本体部7の対向側面におけるロッド寄りの部位に設けてなることを特徴とする鉄筋引抜試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに埋設された鉄筋の引抜耐力試験に使用される鉄筋引抜試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに埋設された鉄筋の引抜耐力試験に使用される鉄筋引抜試験装置としては、例えば特許文献1に記載された鉄筋引き抜き試験装置がある。
特許文献1に記載された鉄筋引き抜き試験装置は、二つ割りしたブロックの併合面に直交する面が垂直面で、かつ、対向する面が下方から上方にかけて開拡する一定の曲率をもつ曲面である鉄筋挿通孔を形成した引き抜き治具と、引き抜き治具の鉄筋挿通孔の垂直面と一定の曲率をもつ曲面に沿った形状のくさびと、引き抜き治具を加圧するジャッキ装置とからなることを特徴とするものである(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
鉄筋を引抜く際、上記鉄筋引き抜き試験装置においては、U字状の開口部を有する反力部材に鉄筋を挿入するようにして前記反力部材をコンクリート上に設置し、その上に2本のジャッキをシリンダを上に向けて設置する。そして、シリンダ上端部に加圧部材を設置し、該加圧部材の上面に鉄筋をチャックした引き抜き治具の下面を当接させる。このように配置して、ジャッキのシリンダを伸張させることで、加圧部材を介して引き抜き治具を押し上げ、鉄筋に引抜力を与えるようにしていうる(特許文献1の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3048994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の鉄筋引き抜き試験装置においては、鉄筋をチャックした引き抜き治具をこれの下方に配置したジャッキで押し上げるようにしているため、鉄筋をチャックした引き抜き治具の下方に反力部材、ジャッキ、および加圧部材を配置するスペースが必要となる。そのため、コンクリートから延出する鉄筋の長さが短い場合には適用できないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、コンクリート上に延出する鉄筋長さが短い場合であっても鉄筋をチャックして引抜試験を行うことのできる鉄筋引抜試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る鉄筋引抜試験装置は、先端側に反力部材を設けたロッドと、該ロッドが伸縮可能に収容されるシリンダ部を内蔵する本体部とを有する油圧ジャッキを一対備え、該一対の油圧ジャッキの各ジャッキが前記本体部側面を対向させて所定間隔離して配置され、引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持部材を前記各本体部の対向側面におけるロッド寄りの部位に設けてなることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記鉄筋把持部材は、各本体部側面に取り付けられ、内面がテーパ状に形成された半割りのテーパ枠と、該半割りのテーパ枠を枠体として一体化するテーパ枠固定具と、前記テーパ枠内に設置されて引抜対象となる鉄筋を把持するテーパ状の鉄筋把持具とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、試験対象の鉄筋を跨ぐことができる荷重計測装置を前記一対のジャッキの両方の反力部材に亘るように設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、先端側に反力部材を設けたロッドと、該ロッドが伸縮可能に収容されるシリンダ部を内蔵する本体部とを有する油圧ジャッキを一対備え、該一対の油圧ジャッキの各ジャッキが前記本体部側面を対向させて所定間隔離して配置され、引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持部を前記各本体部の対向側面におけるロッド寄りの部位に設けてなるので、鉄筋を把持するために必要な鉄筋の長さが短くてよく、種々の鉄筋を対象として引抜試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鉄筋引抜試験装置の説明図であり、ロッドを伸張させた状態を示している。
【図2】本発明の実施の形態1に係る鉄筋引抜試験装置の説明図であり、ロッドを縮退させた状態を示している。
【図3】図1に示した鉄筋引抜試験装置の説明図であり、内部の構造を分かり易くするために分解した状態を示す図である。
【図4】図1に示した鉄筋引抜試験装置の説明図であり、内部の構造を分かり易くするために分解した状態を示す図である。
【図5】図1に示した鉄筋引抜試験装置の説明図であり、内部の構造を分かり易くするために分解した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る鉄筋引抜試験装置の鉄筋把持具の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る鉄筋把持具によって鉄筋を把持した状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る鉄筋引抜試験装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る鉄筋引抜試験装置を図1乃至図7に基づいて説明する。
本実施の形態に係る鉄筋引抜試験装置1は、先端側に反力部材3を設けたロッド5と、該ロッド5が伸縮可能に収容されるシリンダ部(図示なし)を有する本体部7とを有する油圧ジャッキ9を一対有し、該一対の油圧ジャッキ9が前記本体部側面11を対向させて所定間隔離して配置され、前記各本体部7の対向側面に引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持部材13を備えてなるものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0013】
<油圧ジャッキ>
本実施の形態においては、2台の油圧ジャッキ9を一対として使用し、図1、図2に示すように、鉄筋把持部材13が設けられた側面を対向させて配置される。各油圧ジャッキ9は、2本のロッド5を有し、該2本のロッド5に共通する反力部材3がロッド5先端に設置されている。油圧ポンプ15から送られる圧油は分岐金具14によって分岐され、各油圧ジャッキ9に送られて各ロッド5が伸縮するように構成されている。ロッド5に作用する引抜き荷重は油圧計17によって測定することができる。
各油圧ジャッキ9は、本体部7の上方に延出するハンドル18を有している(図1、図2参照)。
【0014】
<鉄筋把持部>
鉄筋把持部は、各本体部側面11に取り付けられた半割りのテーパ枠19と、該半割りのテーパ枠19を枠体として一体化するテーパ枠固定具21と、前記テーパ枠内に設置されて引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持具23(図6参照)とを備えている。
半割りのテーパ枠19は、図3、図4に示されるように、平面視で略コ字状をしており、コ字の向かい合う両片に外方に突出するフランジ部25を有している。コ字の向かい合う両片部が上面から下面に向かって中心側に傾斜する傾斜面27になっており、つまり、向かい合う両片部がテーパになっている。
【0015】
テーパ枠19は、各本体部側面11におけるロッド寄りの部位に設けられており、それ故に引抜対象の鉄筋のコンクリートからの延出長さが短くても把持することが可能になっている。
テーパ枠19は本体部7の側面にネジ固定されるため、テーパ枠19には固定用のネジ穴29が設けられている(図3、図4、図5参照)。テーパ枠19の下面には中央に半円の切り欠き部31を有する位置決め用の位置決め板33が設置されている。位置決め板33の半円状の切り欠き部31を引抜き対象となる鉄筋に位置合わせすることで、ジャッキの鉄筋に対する位置合わせができるようになっている。位置決め板33はテーパ枠19にボルト35によって固定されている(図4参照)。
一方のテーパ枠19のコ字の両片側端面には、凸部37が設けられ、他方のテーパ枠19には前記凸部37に対向する位置に凸部37が挿入可能な凹部(図示なし)が設けられている。凸部37を凹部に嵌合させることで、一対のジャッキの位置合わせができるようになっている。
【0016】
一対の半割りのテーパ枠19の対向面を当接させた状態で、各テーパ枠19のフランジ部25が離れないように一体化するテーパ枠固定具21が設けられる。テーパ枠固定具21には、フランジ部25が挿入される溝部39が設けられており、該溝部39にフランジ部25が挿入されることで半割りのテーパ枠19を一体化する(図3、図4参照)。
【0017】
テーパ枠19内には、引抜対象となる鉄筋を把持するテーパ状の鉄筋把持具23が設置される。鉄筋把持具23としては、市販のものを使用することができ、図6はその一例を示している。鉄筋把持具23は、上部にフランジ41を有し、側面がテーパ枠19のテーパの傾斜面27に沿う傾斜面27になっている一対の半割り部材43から構成されている。各半割り部材43の中心部には半円筒状の凹溝45が形成され、該凹溝45の内周面には周方向に延びる突条47が複数設けられている。
フランジ41には鉄筋把持具23を取り外すときに取り外し用のボルトを螺入するためのボルト穴49が形成されている。鉄筋把持具23は、テーパ枠19内に設置され、テーパ枠19を押し上げることにより、図7に示すように、テーパ枠19内に押し込まれ、引抜対象の鉄筋をより強く把持する構造になっている。
【0018】
次に、上記のように構成された本実施の形態の鉄筋引抜き装置の使用方法について説明する。
片側のジャッキを、位置決め板33の切り欠き部31内に引抜対象の鉄筋が位置するように配置する(図3参照)。そして、対向側のジャッキを、同じく切り欠き部31に鉄筋が位置するように配置すると共に、テーパ枠19の凹部と凸部37を嵌合させる。そして、テーパ固定具をテーパ枠19に設置してテーパ枠19を一体化する。
テーパ枠19が一体化されると、鉄筋把持具23をテーパ枠19内に、鉄筋を把持させるように設置する。
【0019】
この状態で油圧ジャッキ9を駆動してロッド5を伸張させると、鉄筋把持具23はテーパ枠19に押し込まれ、それによって鉄筋把持具23を構成する半割り部材43が押し縮められて鉄筋を強固に把持する。この状態でさらにロッド5を伸ばすことで、鉄筋に引抜き力が付加され、そのときの油圧が計測されて、鉄筋の引抜耐力が測定される。
試験後に鉄筋把持具23をテーパ枠19から外す際には、鉄筋把持具23のフランジ41に設けたボルト穴49にボルトを螺入することで、鉄筋把持具23をテーパ枠19から離隔させることができ、容易に外すことができる。
【0020】
以上のように、本実施の形態においては、半割りのテーパ枠19を本体部側面11におけるロッド寄りの部位に設置したので、鉄筋を把持するために必要な鉄筋の長さが短くてよく、種々の鉄筋を対象として実際の計測ができる。
また、鉄筋を把持するためのテーパ枠19が半割りになっているので、鉄筋に枠体を挿通する必要がなく、鉄筋が極端に長い場合や、鉄筋の先端が湾曲している場合や、さらには鉄筋の先端が開放端となっていない閉端の場合のように枠体の挿入が困難な場合でも難なく適用できる。
【0021】
[実施の形態2]
図8に基づいて実施の形態2に係る鉄筋引抜試験装置51を説明する。本実施の形態に係る鉄筋引抜試験装置51は、荷重測定装置であるロードセル52を一対のジャッキの両方の反力部材3に亘るように設置したものである。ロードセル52には、U字状の開口部53が設けられ、引抜き対象の鉄筋を側方から挿入できるようになっている。ロードセル52は反力部材3に磁石によって着脱可能に設置される。
ロードセル52を設けることによって、鉄筋引抜き耐力を正確にかつタイムリーに検出することができる。
つまり、油圧計17で鉄筋引抜き耐力を計測すると、ジャッキのシリンダの摺動抵抗や、配管内を油が流れるときの抵抗があるため、計測値が実際の鉄筋引抜き抵抗値よりも大きくなり、油圧計17そのままの値では誤差がでる。これをなくするには油の流れが落ち着くまで少し時間をおく必要がある。これに対して、ロードセル52を用いることにより、タイムリーに正確な引抜き耐力測定ができる。
【符号の説明】
【0022】
1 鉄筋引抜試験装置
3 反力部材
5 ロッド
7 本体部
9 油圧ジャッキ
11 本体部側面
13 鉄筋把持部材
14 分岐金具
15 油圧ポンプ
17 油圧計
18 ハンドル
19 テーパ枠
21 テーパ枠固定具
23 鉄筋把持具
25 フランジ部
27 傾斜面
29 ネジ穴
31 切り欠き部
33 位置決め板
35 ボルト
37 凸部
39 溝部
41 フランジ
43 半割り部材
45 凹溝
47 突条
49 ボルト穴
51 鉄筋引抜試験装置
52 ロードセル
53 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に反力部材を設けたロッドと、該ロッドが伸縮可能に収容されるシリンダ部を内蔵する本体部とを有する油圧ジャッキを一対備え、該一対の油圧ジャッキの各ジャッキが前記本体部側面を対向させて所定間隔離して配置され、引抜対象となる鉄筋を把持する鉄筋把持部材を前記各本体部の対向側面におけるロッド寄りの部位に設けてなることを特徴とする鉄筋引抜試験装置。
【請求項2】
前記鉄筋把持部材は、各本体部側面に取り付けられ、内面がテーパ状に形成された半割りのテーパ枠と、該半割りのテーパ枠を枠体として一体化するテーパ枠固定具と、前記テーパ枠内に設置されて引抜対象となる鉄筋を把持するテーパ状の鉄筋把持具とを備えてなることを特徴とする請求項1記載の鉄筋引抜試験装置。
【請求項3】
試験対象の鉄筋を跨ぐことができる荷重計測装置を前記一対のジャッキの両方の反力部材に亘るように設置したことを特徴とする請求項1または2記載の鉄筋引抜試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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