説明

鉄筋篭の現場内無溶接組立工法及びその補助筋付き補強枠。

【課題】 鉄筋篭を吊り起こしのときの変形による崩壊を防止し、補強枠の補助筋で主筋の位置決め治具を兼用することで組立作業効率とコストの改善を図ること。
【解決手段】 柱状に配置した縦主筋に、フープ筋を格子状に配置すると共に補強枠も各配設して柱状に組み立て形成した鉄筋篭において、柱状に配置した複数の該縦主筋と平行して配設する補助筋を、予め前記補強枠に溶着し、該補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持して鉄筋篭を組み立てる鉄筋篭の現場無溶接組立工法と、柱状に配置した該縦主筋に配設する補強枠に予め補助筋を溶着し、該補助筋は該縦主筋に平行して該補強枠に配設されると共に且つ管理された環境下で、予め所定数の補助筋を該補強枠に溶着したその補助筋付き補強枠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋篭を構築現場内で無溶接により組み立てる現場内無溶接組立工法と鉄筋篭を補強するための補助筋付き補強枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋篭の組立は、柱状に配置した複数の縦主筋と環状または角状のフープ筋を格子状に組み合わせて、円柱状または角柱状の鉄筋籠の組立体を、その建て込み近くで、組立治具などを使用して横組みすることが一般的に行われている。
【0003】
また、耐震基礎などに使用される鉄筋篭の主筋は、通常、太い主筋で横組みされ、その組み上がった鉄筋籠をクレーンで釣支移送するとき、その主筋の太さで相当の高重量により撓み、捻れなど変形が大きく、その変形の対応と、鉄筋篭を設置したときの座掘変形の防止用に補強枠が使用されている。
【0004】
さらに、その鉄筋籠を円柱状に組立するとき、主筋とフープ筋及び補強枠を各格子状に組み合せ、その各格子状の交差部を直交クランプ、Uボルトなどの取付金具、結束または溶接で保持固定して鉄筋籠として組み立てている。
【0005】
しかして、鉄筋籠の組立に関連する先行技術として、円環状補強筋の外周に鉄筋と補強筋との固着接続部が分離し難いことと、溶接による主筋の断面欠損、及び変質をなくす鉄筋籠とその製造方法を提供することを目的に、円環状補強筋の外面に鉄筋を接し、その鉄筋にU字形金具を嵌合接触させて補強筋の外面側に溶接して、その鉄筋をU字形金具の円弧形内面と補強筋の外面とで挟持して形成する鉄筋籠と、
U字形金具の両端部と補強筋の外面とを溶接し、溶接部の冷却収縮により、鉄筋をU字形金具の円弧形内面と補強筋の外面とで挟持して鉄筋籠を形成する鉄筋籠製造法とする実施例を示す「鉄筋籠及びその製造法」がある。(例えば、特許文献1参照)
【0006】
しかしてまた、鉄筋籠の組立に関連して溶接を用いず接合金具で組み立てる先行技術として、接合金具は、一対の挟持体がそれぞれ略U字状の抱持部を有し、その開放端部を帯状鋼材の両周縁部分にそれぞれ主筋を外側から抱持した状態で掛合させ、当該掛合部を梃子の支点としてボルトとナットの締付け力を抱持部の基部に作用させて主筋を帯状鋼材に押圧する構成の接合金具で、鉄筋組立体を組み立てるとする実施例を示す「鉄筋組立体及びその組立てに用いる接合金具」がある。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−344321号公報
【特許文献2】特開2004−3282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状の鉄筋篭の組立は、その建て込み近くで横組みされることが一般的で、コンクリ−ト構造物の構築場所まで鉄筋篭をクレ−ン等で吊り起こし搬送して設置するが、鉄筋篭が耐震基礎用の場合は、通常より高重量であることから、その吊り起こす時に、主筋の捻れ、各係止部のずれなど変形により崩壊することがありその対策が望まれていた。
【0009】
そして、その対策として補強枠が用いられ、該補強枠と主筋を取付金具または溶接またはその両方を組合せて鉄筋籠を組立ていたが、その対策にも関わらず、その鉄筋籠を吊り起こすときに、上述した主筋の捻れ、変形などにより取付金具がずれまたは溶接部が外れることがあり、未だ解決されず、さらなる対策が望まれていた。
【0010】
そして、その現象における取付金具のずれは、後述する鉄筋独特の表面形状による保持力不足が起因し、また施工現場内での溶接は、現場の気温、湿度など一定しない環境条件により溶接不良が発生することにあり、そのことにより上述変形などで取付金具のずれまたは溶接部が外れて崩壊につながり、その改善が求められ、またその取付または溶接箇所の良否の確認と管理が現場内では煩雑となり、その改善も求められていた。
【0011】
また、上述施工現場内で行う溶接による組立において、施工現場内での溶接工程は、施工現場の気温、湿度など環境条件が何時も同じ条件で作業できないこと、また溶接習熟度が一定条件を満たす作業者が、その現場の進捗状態に合わせて常に得られないため、溶接不良による取付不良、変形とそれによる崩壊などを防ぐために、施工現場内での溶接工程を無くすことが求められ、そこで直交クランプ、Uボルトなどの取付金具により組立が行われているが、該取付金具も耐震基礎などに使用される鉄筋篭の主筋は、高重量でその鉄筋篭が歪んだとき、その主筋と補強筋を止める取付金具が締め付け部分でずれて緩み、それにより鉄筋篭の変形、そして崩壊となり、それらの改善が求められていた。
【0012】
なお、上述する取付金具による締め付けにおいて、鉄筋篭を補強するための補強枠と該主筋を固定するとき、締め付け強度を高めるため、取付金具を主筋サイズに合った直交クランプまたはUボルトなどの取付金具を使用するが、その主筋と補強枠を直交させて取付金具で締め付け保持するとき、その主筋等に使用する鉄筋独特の凹凸を形成する表面形状により、その交差する凹凸同士の直交状態がうまく咬み合ってないと、吊り起こしのときの歪みによりずれが生じ、特に、この鉄筋の丸棒状を直交させて支持する場合、その交差する接触部は常に一点で接触しているから、その接触する支持部分ではずれが生じやすく、上記のような崩壊に繋がり、また鉄筋篭の組立においては、その直交させて締め付け保持する箇所が数多くあることから、その確認と管理が煩雑となり、その改善が求められていた。
【0013】
しかして、先行技術で開示される特許文献1の「鉄筋籠及びその製造法」は、円環状補強筋の外面に鉄筋を接し、その鉄筋にU字形金具を嵌合接触させて補強筋の外面側に溶接することから、施工現場での溶接を前提とし、しかし、近年、施工現場内での溶接工程を無くすよう求められ、それは加工工場のように一定の条件と作業者の管理ができず、その施工現場の環境条件と作業者の溶接習熟度が、何時も同じ条件で作業できないことから、高重量の鉄筋篭をクレーンで釣支するとき、鉄筋篭が歪み変形し、溶接不良があると外れて崩壊することがあり、上述したようにその多くの直交する溶接部分の確認と管理が煩雑となり、それらの改善が求められていた。
【0014】
しかしてまた、先行技術で開示される特許文献2の「鉄筋組立体及びその組立てに用いる接合金具」は、一対の挟持体5,5の掛止部51,51を帯状鋼材3の両周縁部に掛合させて、他端側を連結するボルト6a及びナット6bを締め付け、突起部54aで主筋2を帯状鋼材3に向けて押圧することにより圧着するとしているが、その接合金具で強く圧着して安定した高い固定強度で両者が結合されても、上述した課題のように、主筋と補強枠を直交させて接合金具で締め付け保持するとき、直交させての支持は一点支持となり、またその主筋等に使用する鉄筋独特の凹凸を形成する表面形状により、その凹凸と直交状態が常にうまく咬み合っていることはなく、そのことから鉄筋組立体の吊り起こしのときの歪みによるずれが、高い固定強度を緩める結果となり、上記のような崩壊に繋がり、またその直交させて締め付け保持する箇所が、数多くあることからその確認と管理が煩雑となり、その改善が求められていた。
【0015】
このような課題から本発明は、管理された環境下で予め補強枠に補助筋を溶着して、該補助筋と共に補強枠と主筋を直交クランプ、Uボルトなどの取付金具により締め付け保持することから、主筋と補助筋とが平行して補強枠と共に支持されるので、その支持部分は、平行しての接触支持となり多少の変形によってもずれることはなく、また補強枠の補助筋が主筋に対して平行して設けられることから、その補助筋が主筋の位置決め治具として兼用し、鉄筋篭の組立工法と補助筋付き補強枠で、上述した課題の解決を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を有効に達成するために、第1の解決手段として、柱状に配置した縦主筋に、フープ筋を格子状に配置すると共に補強枠も各配設して柱状に組み立て形成した鉄筋篭において、柱状に配置した複数の該縦主筋と平行して配設する補助筋を、予め前記補強枠に溶着し、該補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持して鉄筋篭を組み立てるとしたことにより、
主筋と補助筋とが平行して補強枠と共に取付金物で拘持していることで、鉄筋篭を吊り起こす時に、該補助筋が主筋を支持するので、鉄筋篭が全体として弾発変形するのみで、取付金物で拘持している部分は、歪みにより変形してずれを起こさないように作用し、また鉄筋篭を補強するための補強枠に設けた補助筋で、主筋配置の位置決め治具として兼用してその鉄筋篭を組立てるとしている。
【0017】
また、第2の解決手段として、柱状に配置した縦主筋に、フープ筋を格子状に配置すると共に補強枠も各配設して柱状に組み立て形成した鉄筋篭の該補強枠において、予め管理された環境下で、前記複数の縦主筋に対応する位置で、且つ該縦主筋と平行するように、予め所定数の補助筋を補強枠に溶着したことにより、
主筋と補助筋とが平行して補強枠と共に取付金物で拘持することで、鉄筋篭を吊り起こすときに、該補助筋が主筋とのずれを支持するので、鉄筋篭が全体として弾発変形するのみで、取付金物で拘持している部分は歪みにより変形してずれを起こさないように作用し、また鉄筋篭を補強するための補強枠に設けた補助筋を主筋配置の位置決め治具と兼用するとしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上述したそれぞれの手段によって有効な効果が得られるようにしたもので、特に、第1の解決手段の、柱状に配置した複数の縦主筋に、横筋のフープ筋を所定間隔で格子状に多数配置して柱状に形成すると共に横筋の補強枠も所定位置に所定数、各配設した鉄筋篭の該補強枠において、該主筋の配置を容易に設定でき、且つ該鉄筋篭の吊り起こし搬送時における変形及び崩壊が防止できるように、前記複数の縦主筋に対応する位置で、且つ該縦主筋と平行するように、予め補助筋を補強枠に溶着し、該補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持して鉄筋篭を組み立てる現場内無溶接組立工法により、
補強枠の補助筋が、主筋に対して平行に設けられることから、主筋と補助筋とが平行して補強枠と共に支持されるので、その支持部分は、交差部の点支持ではなく、補助筋により主筋と平行して接触する平行接触で支持面積が大きく、取付金具で安定して支持でき、その交差接触支持と平行接触支持の差により、接触面積とねじれなどの変形に対して大きく対変形支持力を有することで、鉄筋篭が全体として弾発変形するのみで、取付金物で拘持されている部分は、歪みにより変形してずれを起こさないように作用し、鉄筋篭を吊り起こしのときの全体的な弾発変形は起きるもののそれによるずれは起きず、またその弾発変形は全体的な撓みで崩壊に繋がることもなく、さらにその直交させて締め付け保持する、数多くの直交する点接触の箇所の確認と管理の必要のない強固な鉄筋篭を組み立てできる組立工法となる。
【0019】
また、補助筋の溶着が、溶着条件及びその品質管理が一定しない鉄筋篭構築現場内で溶着組立するのではなく、予め管理された状態で補強枠に補強筋を溶着するので、常に一定条件で適切に溶着した補助筋付き補強枠が提供でき、その補強枠を施工現場に運び込み組立するので、品質の安定した鉄筋篭が組立できる。
【0020】
さらに、該補強枠の補助筋が、主筋に対して平行に設けられることから、鉄筋篭を組立するとき、主筋を補助筋の位置に配置して、フープ筋とで正確な鉄筋篭を形成するための主筋位置決め治具として兼用できるので、従来使用されていた主筋位置決め治具と補強枠を個別に扱うことなく、また鉄筋篭組立の前準備の主筋位置決め治具の組立も必要なく、組立作業効率が良く、使用する資材及び組立効率によりコスト低減となる。
【0021】
しかして、第2の解決手段の、柱状に配置した複数の縦主筋に、横筋のフープ筋を所定間隔で格子状に多数配置して柱状に形成すると共に横筋の補強枠も所定位置に所定数、各配設した鉄筋篭の該補強枠において、該主筋の配置を容易に設定でき、且つ該鉄筋篭の吊り起こし搬送時における変形及び崩壊が防止でき、且つ前記補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持できるように、予め管理された環境下で、前記複数の縦主筋に対応する位置で、且つ該縦主筋と平行するように、予め所定数の補助筋を補強枠に溶着したことにより、
補助筋付き補強枠が、該補助筋と共に主筋を取付金物で拘持するので、従来のような交差部の点支持ではなく、補助筋により主筋と平行して接触する平行接触で支持面積が大きく、取付金具で安定して支持でき、その交差接触支持と平行接触支持の差により、接触面積とねじれなどの変形に対して大きく対変形支持力を有することで、鉄筋篭を吊り起こしのとき鉄筋篭が全体として弾発変形するのみで、取付金物で拘持されている部分は、歪みにより変形してずれを起こさないように作用し、よって鉄筋篭を吊り起こしたときの全体としての弾発変形は起きるもののそれによるずれは起きず、またその変形により崩壊に繋がることもない鉄筋篭の補助筋付き補強枠が提供できる。
【0022】
また、上述する補強枠と主筋を直交クランプ、Uボルトなどの取付金物で拘持するとき、主筋等に使用する鉄筋独特の凹凸を形成する表面形状のその凹凸と、補強枠または取付金物との直交状態をうまく咬み合せなくても、補助筋が主筋と平行して設けられ、その状態で支持されるので、補助筋が主筋と平行して接触する平行接触支持で支持面積が大きく、該取付金具で安定して支持でき、上述のように多少の変形によってもずれることはなく、その変形による崩壊に繋がることもない鉄筋篭の補助筋付き補強枠が提供できる。
【0023】
さらに、補助筋の溶着が、溶着条件及びその品質管理が一定しない鉄筋篭構築現場内で溶着組立するのではなく、工場内の管理された状態で行うため、気温、湿度など環境条件が何時も同じ条件で作業でき、また溶接習熟度が一定条件を満たす作業者が、現場の進捗状態に左右されることなく前以て製作でき、また溶着後の品質管理も設備管理が整えられるので、常に一定条件の良質な溶着した補助筋付き補強枠が提供できる。
【0024】
加えて、該補強枠の補助筋が、主筋に対して平行に設けられることから、主筋を補助筋の位置に配置して、フープ筋とで正確な鉄筋篭を形成するための主筋位置決め治具として兼用できるので、組立作業の効率が良くコスト低減となり、また補強枠及び補助筋とで正確で補強された鉄筋篭を形成することにより、鉄筋籠を吊り起こし移送と、その高重量による鉄筋籠及びそのフープ筋の変形も防ぐことができる。
よって、これらのことから本発明は、実用上著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の鉄筋篭1の平面図である。
【図2】本発明の補強枠4の側面図である。
【図3】本発明の補強枠4の要部の側面図である。
【図4】本発明の補強枠4及びフープ筋3の取付状態を示す要部の斜視図である。
【図5】本発明の取付金具7の斜視図である。
【図6】本発明の主筋2と補強枠4の取付状態を示す側面図である。
【図7】本発明の主筋2と補強枠4の取付状態を示す要部の側面図である。
【図8】本発明の他の実施例の補強枠14及びフープ筋3の取付状態を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
柱状に配置した縦主筋に、フープ筋を格子状に配置すると共に補強枠も各配設して柱状に組み立て形成した鉄筋篭において、柱状に配置した複数の該縦主筋と平行して配設する補助筋を、予め前記補強枠に溶着し、該補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持して鉄筋篭を組み立てる鉄筋篭の現場内無溶接組立工法と、
柱状に配置した縦主筋に、フープ筋を格子状に配置すると共に補強枠も各配設して柱状に組み立て形成した鉄筋篭の該補強枠において、柱状に配置した該縦主筋に配設する補強枠に予め補助筋を溶着し、該補助筋は該縦主筋に平行して該補強枠に配設されると共に且つ管理された環境下で、予め所定数の補助筋を該補強枠に溶着したその補助筋付き補強枠の提供を実現させた。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1及び図2において、1は鉄筋篭で、該鉄筋篭1は、柱状に配設された縦主筋2に、環状のフープ筋3と補強枠4を所定間隔の格子状に外嵌して柱状に組み合わせて、地上で横組みされたものである。
【0028】
そこで、該鉄筋篭1に使用される縦主筋2は、構築する杭の規模によりその縦主筋2の鉄筋径が適宜選ばれ、通常、フープ筋3より大径の鉄筋が使用され、また該フープ筋3は、その使用する鉄筋の両端部を溶着して環状に形成したもので、該フープ筋3を縦主筋2に対し所定間隔で格子状に外嵌配設する。
【0029】
また、補強枠4は、図1に示すように平板状で、両端部を溶着して環状に形成し、図2及び図3に示すように、該環状の補強枠4の内側に、所定長さの丸棒状の補助筋5,5,…を、前記鉄筋篭1の縦主筋2が配置される所定位置に、該縦主筋2とは平行する格好で予めそれぞれ溶着する。
【0030】
その溶着において、補助筋5,5,…が溶着された補強枠4が、組立てられた鉄筋篭1のように大きくなく、比較的運搬が容易であることから、溶着する環境が一定しない施工現場内で行う必要がなく、管理された工場内で作業することが可能となり、よって気温、湿度など環境条件が何時も同じ条件であり、また溶接習熟度が一定条件を満たす作業者により、その管理された工場内で作業を行い、常に一定条件の溶着とする。
【0031】
そして、図1に示すように、縦主筋2に各配置されたフープ筋3及び補強枠4をそれぞれ保持固定することにおいて、縦主筋2に保持固定するフープ筋3は、図4に示すように、結束線6で結束して保持固定され、また縦主筋2に保持固定する補強枠4は、取付金具7の交差クランプ8にて保持固定される。
【0032】
そこで、該取付金具7の交差クランプ8は、市販されるUボルト形状であって、図5に示すように、平面形状が略U字状の形状のものを正面略コの字状に折り曲げて形成した形状とし、直交する部材間を該交差クランプ8で、直交状態で掛け止め、平板の支持板9と共にナット10で螺着して保持固定する取付金具7である。
【0033】
つまり、その保持固定する取付は、図4に示すように、先ず、交差クランプ8の一方側の略Uの字部11を補強枠4に外嵌して掛けると共に補助筋5と直交する縦主筋2の双方を、交差クランプ8の腕部12,12で保持させ、次に、交差クランプ8のネジ部13,13を他方側の補強枠4に外嵌すると共に支持板9を介してナット10,10で螺着して該補強枠4と、縦主筋2とが直交した状態で保持固定し、該補助筋5も縦主筋2と平行した状態で保持固定される。
【0034】
しかして、鉄筋篭1の組立において、鉄筋篭1の組立における主筋位置決め治具と補強は、予め補強枠4に配置溶着された補助筋5,5,…を、縦主筋2,2,…の主筋位置決め治具として利用して、該補助筋5,5,…に縦主筋2,2,…を配置すると共に各取付金具7,7,…で保持固定して、図1に示すように、鉄筋篭1の両端部近傍で、補強用の補強枠4,4として、鉄筋篭1に取付配置されている。
【0035】
そこで、その鉄筋篭1の組立課程は、図2に示すように、補強枠4にそれぞれ配置溶着された補助筋5,5,…に、上述したように、縦主筋2,2,…を並設すると共に図6及び図7に示すように、取付金具7,7,…で保持固定する。
【0036】
そして、補強枠4,4に配置された縦主筋2,2,…に、所定間隔でフープ筋3,3,…を配置すると共に結束線6,6,…で結束して保持固定して、図1に示す鉄筋篭1が組み立てられる。
【0037】
このようにして施工現場近傍で横組みされた鉄筋篭1を、その施工現場に施工された穴に挿入施工するとき、該鉄筋篭1をクレーンで釣支して吊り起こすと、該鉄筋篭1の重量で、釣支された側の縦主筋2,2,…と他方、接地側の縦主筋2,2,…との間で全体として弾発変形し、その時、補強枠4,4に配置された各補助筋5,5,…が、縦主筋2,2,…に対して、該補助筋5,5,…の長さの分、長手方向に接触した平行接触支持の状態で取付金具7で保持固定するので、従来のような交差する交点での点接触ではなく、つまり、交差接触支持と平行接触支持との差は、接触面積とねじれなどの変形に対して大きく対変形支持力を有することから、吊り起こしによって起こる該鉄筋篭1の縦主筋2,2,…の変形は、弾発変形に留まり、交差する取付部分の変形、ずれ、捻れなどは起こらず保持固定される。
【0038】
このことから、鉄筋篭1をクレーンで釣支して吊り起こしたとき、該鉄筋篭1全体としての弾発変形は起こるが、交差する取付部分の変形、ずれ、捻れなどが起こらず、該鉄筋篭1の崩壊に繋がることのない組立工法として、またその補助筋付き補強枠が提供できる。
【0039】
なお、図8に示す、他の実施例は、上述した図4の実施例と略同様で、相違点において、板状の補強枠4に換えて、上述したフープ筋3,3を並設すると共に要所を溶着(図示では2カ所を溶着部Aとして示す。)して、フープ筋と同様の物を利用した補強枠14として、一体的に形成し、そして上述する補強枠4と同様、該補強枠14に補助筋5を溶着(図示では1カ所を溶着部Bとして示す。)して使用する。
【0040】
また、上述した図4の実施例では、フープ筋3,3,…を結束線6,6,…で結束して保持固定しているが、上述の取付金具7と略同様の形状で、小型の取付金具7aを使用しても良く、この取付金具7aは、鉄筋篭1の変形強度を増す必要がある場合に、結束線6に換えて使用され、その使用数は、鉄筋篭1の必要変形強度に対して適宜変更され、例えば、結束線6と取付金具7aを交互に使用して50%の使用率とするように使用される。
【0041】
さらに、この結束線6に換えて交差クランプとして、市販のUボルトを直交部に少なくとも一カ所外嵌し、さらに結束線6を交差状に結束して設けても良いが、図示は省略した。
【0042】
加えて、通常汎用に使用される結束線6に換えて、番線など少し太い結束線に換えて使用しても好ましいが図示は使用略した。
【0043】
これらの適用は、近年、耐震基礎用としての鉄筋篭が、その耐震仕様で組み立てられ、その各鉄筋の保持固定方法も耐震対策として適宜、変更要求があり、その変更に即して適宜選ばれ、またこのことは補強枠4に設けられる補助筋5の配置数も同様で、該補強枠4に配置される補助筋5の配置数が、縦主筋2とは必ずしも同数とする必要が無く、適宜変更される。なお、本実施例の図1で示すように縦主筋2と補助筋5の配置数は同数として示している。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の鉄筋篭の現場内無溶接組立工法とその補助筋付き補強枠は、耐震基礎などに使用される鉄筋篭の組立の主筋位置決め治具と、鉄筋篭の変形及び崩壊防止の補強枠と兼用して使用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄筋篭
2 縦主筋
3 フープ筋
4,14 補強枠
5 補助筋
7 取付金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に配置した複数の縦主筋に、横筋のフープ筋を所定間隔で格子状に多数配置して柱状に形成すると共に横筋の補強枠も所定位置に所定数、各配設した鉄筋篭の該補強枠において、該主筋の配置を容易に設定でき、且つ該鉄筋篭の吊り起こし搬送時における変形及び崩壊が防止できるように、前記複数の縦主筋に対応する位置で、且つ該縦主筋と平行するように、予め補助筋を補強枠に溶着し、該補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持して鉄筋篭を組み立てることを特徴とする鉄筋篭の現場内無溶接組立工法。
【請求項2】
柱状に配置した複数の縦主筋に、横筋のフープ筋を所定間隔で格子状に多数配置して柱状に形成すると共に横筋の補強枠も所定位置に所定数、各配設した鉄筋篭の該補強枠において、該主筋の配置を容易に設定でき、且つ該鉄筋篭の吊り起こし搬送時における変形及び崩壊が防止でき、且つ前記補強枠及び補助筋と共に縦主筋を取付金物で拘持できるように、予め管理された環境下で、前記複数の縦主筋に対応する位置で、且つ該縦主筋と平行するように、予め所定数の補助筋を補強枠に溶着したことを特徴とする鉄筋篭の補助筋付き補強枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40542(P2013−40542A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187950(P2011−187950)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【特許番号】特許第4858888号(P4858888)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(508283875)株式会社恵信工業 (7)
【Fターム(参考)】