説明

鉄筋籠および鉄筋籠の建込方法

【課題】建込装置を利用しながらも、鉄筋籠本体の全体を地中に建て込むことが可能な鉄筋籠を提供すること。
【解決手段】複数本の縦筋1,1,…と複数本の横筋2,2,…とを格子状に組み合わせて形成した鉄筋籠本体A1と、複数本の縦筋1,1,…のうちの一部を上方向に延長して形成した仮設部A3と、を備える鉄筋籠Aであって、鉄筋籠本体A1は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第一補助部材3,3,…を有し、仮設部A3は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第二補助部材4,4,…を有し、第一補助部材3および第二補助部材4は、いずれも、少なくとも二本の縦筋1に横架されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋籠および鉄筋籠の建込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭や地中連続壁の鉄筋籠を掘削穴に建て込む方法として、建込装置を利用した方法が知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1の建込装置は、左右に並べた二個一組のセンタホールジャッキを備えるものであり、特許文献2の建込装置は、上下に並べた二個一組の作動ピンを備えるものである。鉄筋籠には、建込装置に係止するための補助部材(特許文献1の係止部材、特許文献2の補強材)が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−299915号公報
【特許文献2】特許第4097242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の鉄筋籠では、補助部材が鉄筋籠本体(縦筋と横筋とを格子状に配筋してなる部分)に装着されているので、建込装置だけでは、鉄筋籠本体の全体を地中に建て込むことができない。
【0005】
このような観点から、本発明は、建込装置を利用しながらも、鉄筋籠本体の全体を地中に建て込むことが可能な鉄筋籠および鉄筋籠の建込方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明に係る鉄筋籠は、複数本の縦筋と複数本の横筋とを格子状に組み合わせて形成した鉄筋籠本体と、前記複数本の縦筋のうちの一部を上方向に延長して形成した仮設部と、を備える鉄筋籠であって、前記鉄筋籠本体は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第一補助部材を有し、前記仮設部は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第二補助部材を有し、前記各第一補助部材および前記各第二補助部材は、いずれも、少なくとも二本の前記縦筋に横架されていることを特徴とする。
【0007】
建込装置を利用して鉄筋籠を建て込む場合には、例えば、鉄筋籠を建込装置の第一支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を下降させるステップと、鉄筋籠を建込装置の第二支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を上昇させるステップとを繰り返すことになるが、本発明に係る鉄筋籠によれば、建込装置で支持可能な補助部材が仮設部にも設けられているので、仮設部に対しても、前記したステップを行うことが可能となる。なお、本発明に係る鉄筋籠は、例えば、場所打ちコンクリート杭や地中連続壁に用いることができる。
【0008】
すなわち、第一支持部材と第二支持部材とを具備した建込装置によって本発明に係る鉄筋籠を掘削穴に建て込む際には、一の前記第一補助部材を前記第一支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を下降させるステップと、他の前記第一補助部材を前記第二支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を上昇させるステップとを繰り返すことで、前記鉄筋籠本体を掘削穴内に挿入した後、一の前記第二補助部材を前記第一支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を下降させるステップと、他の前記第二補助部材を前記第二支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を上昇させるステップとを繰り返すことで、前記仮設部を掘削穴内に挿入する、という建込方法を実行することができるので、鉄筋籠本体の全体を地中に位置させることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建込装置を利用しながらも、鉄筋籠本体の全体を地中に建て込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る鉄筋籠を示す側面図、(b)および(c)は(a)の部分拡大図である。
【図2】(a)は図1の(b)のX1−X1矢視図、(b)は図1の(c)のX2−X2矢視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る建込装置を示す側面図である。
【図4】図3のY1−Y1矢視図である。
【図5】昇降支持部および固定支持部を示す側面図である。
【図6】(a)は第一支持部材の前部を示す拡大上面図、(b)は(a)の側面図である。
【図7】図4のY2−Y2矢視図であって、(a)は昇降支持部を下降させた状態を示す図、(b)は昇降支持部を上昇させた状態を示す図である。
【図8】(a)および(b)は、鉄筋籠の建込方法を示す側面図である。
【図9】(a)および(b)は、図8の(b)に続く手順を示す側面図である。
【図10】(a)〜(d)は、昇降支持部および固定支持部の動作例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る鉄筋籠Aは、場所打ちコンクリート杭に用いられるものであり、図1の(a)に示すように、鉄筋籠本体A1と、接合部A2と、仮設部A3とを備えている。鉄筋籠Aは、建込装置B,B(図3参照)を利用して掘削穴に建て込まれる。
【0012】
鉄筋籠本体A1は、図1の(c)に示すように、複数本の縦筋1,1,…と複数本の横筋2,2,…とを格子状に組み合わせて形成した部位であり、場所打ちコンクリート杭の本体部分に埋設される。鉄筋籠本体A1は、縦筋1および横筋2に加えて、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第一補助部材3,3,…を備えている。
【0013】
縦筋1は、杭主筋であり、鉄筋継手(図示略)を介して連結された複数の異形鉄筋からなる。
【0014】
横筋2は、いわゆるフープ筋であり、図2の(b)に示すように、総ての縦筋1,1,…を取り囲むように配筋されている。本実施形態の横筋2は、縦筋1,1,…の外周側に配筋されている。
【0015】
第一補助部材3は、リング状に成形されており、総ての縦筋1,1,…に横架されている。本実施形態の第一補助部材3は、縦筋1,1,…の内周側に配置されており、鉄筋組立時においては、段取り筋として利用される。第一補助部材3の材質、断面形状、縦筋1への固定方法等に制限はないが、本実施形態では、曲げ加工を施した山形鋼を第一補助部材3とし、縦筋1に溶接している。なお、本実施形態では、第一補助部材3を非構造部材(コンクリートの補強に寄与しない部材)とみなして、縦筋1および横筋2の配筋設計を行っている。
【0016】
接合部A2は、図1の(c)に示すように、総ての縦筋1,1,…を上方向に延長して形成した部位であり、図示せぬコンクリート基礎に埋設される。接合部A2は、縦筋1に加えて、第一補助部材3を備えているが、横筋2を備えていない。第一補助部材3は、鉄筋籠本体A1のものと同様である。
【0017】
仮設部A3は、図1の(b)に示すように、複数本の縦筋1,1,…のうちの一部を上方向に延長して形成した部位であり、コンクリート基礎の構築後に撤去される。仮設部A3は、縦筋1に加えて、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第二補助部材4,4,…を備えているが、横筋2を備えていない。
【0018】
本実施形態では、鉄筋籠Aの中心を挟んで対向する二つの領域L,Rのそれぞれにおいて、複数(本実施形態においては五本)の縦筋1,1,…が延長されるとともに、複数の第二補助部材4,4,…が配置されている。図2の(a)に示すように,左右の領域L,Rは、いずれも平面視円弧状となり、二つの領域L,Rの間には、縦筋1が延長されない領域M,Mが存在している。
【0019】
第二補助部材4は、平面視円弧状に成形されており、少なくとも二本の縦筋1,1,…に横架されている。第二補助部材4の断面形状、平面形状、本数および設置高さは、左右の領域L,Rで同じである。本実施形態の第二補助部材4は、縦筋1,1,…の内周側に配置されており、鉄筋組立時においては、段取り筋として利用される。第二補助部材4の材質、断面形状、縦筋1への固定方法等に制限はないが、本実施形態では、曲げ加工を施した山形鋼を第二補助部材4とし、各縦筋1と溶接している。なお、本実施形態では、領域Lあるいは領域Rにおける縦筋1,1の間隔を、鉄筋籠本体A1における縦筋1,1の間隔と同一にしているが、領域L,Rにおける縦筋1,1の間隔が鉄筋籠本体A1における縦筋1,1の間隔よりも大きくなるよう、延長すべき縦筋1を間引いてもよい。
【0020】
次に、図3乃至図7を参照して、建込装置Bの構成を説明する。
図3および図4に示すように、建込装置Bは、掘削穴Hの開口縁部に設置されるものであり、支持架構B1と、昇降支持部B2と、固定支持部B3と、昇降機構B4とを備えている。各建込装置Bは、昇降支持部B2および固定支持部B3を上下に配置してなるユニットを二つ備えるとともに、両ユニットに共通の支持架構B1および昇降機構B4を備えている。なお、本実施形態では、二つの建込装置B,Bを対向させているが、建込装置Bの位置や数は適宜変更してもよい。
【0021】
支持架構B1は、図4に示すように、敷桁11、支持桁12、ガイドレール13、支柱14、繋ぎ部材15などを備えている。
【0022】
敷桁11は、掘削穴Hを挟んで両側に配置されている。一対の敷桁11,11は、互いに平行となるように配置されていて、掘削穴Hを挟んで対向している。敷桁11,11は、二本の支持桁12,12によって連結されている。各敷桁11は、他の建込装置Bに向かって延出していて、他の建込装置Bの敷桁11にボルト接合されている。敷桁11は、鋼材(例えば、H型鋼、I形鋼、溝形鋼、角形鋼管など)からなる。
【0023】
支持桁12は、敷桁11と交差する方向に配置されており、支持桁12の端部は、敷桁11に接合されている。二本の支持桁12,12は、敷桁11の長手方向に間隔をあけて並設されており、互いに平行である。一方の支持桁12は、掘削穴Hに面するように配置されており、他方の支持桁12は、一方の支持桁12を挟んで掘削穴Hの反対側に配置されている。支持桁12は、鋼材からなる。
【0024】
ガイドレール13は、昇降支持部B2の軌条を兼ねる棒状部材であり、一対の支持桁12,12のうち、前側(掘削穴Hに近い方)の支持桁12に立設されている。ガイドレール13の後面は、上車輪24の走行面となり、ガイドレール13の前面は、下車輪25の走行面となる。本実施形態では、一の昇降支持部B2に対して二本のガイドレール13,13が配置されている。二本一組のガイドレール13,13は、支持桁12の長手方向(以下「左右方向」という。)に間隔をあけて並設されており、第一ホルダ22を挟んで対向している。本実施形態では、I形鋼をガイドレール13としているが、H型鋼、溝形鋼、角形鋼管などをガイドレール13としてもよい。
【0025】
支柱14は、一対の支持桁12,12のうち、後側(掘削穴Hから遠い方)の支持桁12に立設されている。すなわち、支柱14は、ガイドレール13の後方に配置されている。本実施形態では、一の昇降支持部B2に対して二本の支柱14,14を配置している。二本一組の支柱14,14は、左右方向に間隔をあけて並設されていて、第一支持部材21を挟んで対向している。支柱14,14の上端部は、繋ぎ部材15を介してガイドレール13,13に接続されている。本実施形態では、角形鋼管を支柱14としているが、H型鋼、I形鋼、溝形鋼などを支柱14としてもよい。
【0026】
繋ぎ部材15は、ガイドレール13および支柱14の上端に配置されており、ガイドレール13と支柱14とを繋いでいる。本実施形態の繋ぎ部材15は、一の昇降支持部B2に対応して配置された棒状部材群(ガイドレール13,13と支柱14,14)を一括して繋いでいる。ガイドレール13,13を繋ぎ部材15で連結すると、各ガイドレール13の横倒れが防止されるようになり、ガイドレール13と支柱14とを繋ぎ部材15で連結すると、ガイドレール13の前方への倒れあるいは後方への倒れが防止されるようになる。
【0027】
昇降支持部B2は、図5に示すように、第一支持部材21、第一ホルダ22、第一進退用アクチュエータ23、上車輪24、下車輪25などを備えるものであり、ガイドレール13に沿って上下に移動する。なお、本実施形態の昇降支持部B2は、左右一対のガイドレール13,13に対応して、上車輪24および下車輪25を二つずつ備えている(図4参照)。
【0028】
第一支持部材21は、進退可能な状態で第一ホルダ22に貫設されており、支持位置(図1に示す第一補助部材3または第二補助部材4を支持可能な位置)と退避位置(鉄筋籠Aに干渉しない位置)とを選択することができる。「支持位置」とするには、第一支持部材21を前進させて、第一ホルダ22の前端からの突出量を増大させればよく、「退避位置」とするには、第一支持部材21を後退させて、第一ホルダ22の前端からの突出量を減少させればよい。すなわち、第一支持部材21を「支持位置」に向けて前進させると、第一支持部材21の前端部が隣り合う縦筋1,1(図2参照)の間を通って鉄筋籠Aの内部に挿入され、図6に示すように、第一補助部材3または第二補助部材4を下から支持し得るようになる。また、第一支持部材21を「退避位置」に向けて後退させると、第一支持部材21の前端部が鉄筋籠Aから抜け出るようになる。
【0029】
第一支持部材21の前端部は、縦筋1,1の「あき」よりも小さな幅寸法に成形されており、かつ、横筋2,2の「あき」よりも小さな高さ寸法に成形されている。本実施形態では、第一支持部材21の前端部の高さおよび幅を、その後方の部位よりも小さくしている。
【0030】
第一支持部材21の前端部の上面には、突起21aが形成されている。突起21aは、第一支持部材21が支持位置にあるときに、第一補助部材3または第二補助部材4を超えたところに位置し、第一補助部材3または第二補助部材4の脱落を阻止する。
【0031】
図5に示すように、第一支持部材21は、第一ホルダ22を貫通しており、第一ホルダ22の後端部は、第一ホルダ22の後端から常に突出している。第一支持部材21のうち、第一ホルダ22の後端から突出する部分は、左右の支柱14,14の間に位置している(図4参照)。第一支持部材21の後端部(第一ホルダ22の後端から常に突出する部分)には、下方に向けて延出するロッド取付部21bが形成されている。
【0032】
第一ホルダ22は、第一支持部材21を抱持するものであり、左右のガイドレール13,13の間に配置されている(図4参照)。第一ホルダ22は、第一支持部材21が支持位置に移動したときには、第一支持部材21の中間部を抱持する。第一支持部材21を支持位置に移動させると、第一支持部材21の前部の突出量(第一ホルダ22の前端からの突出量)が増大し、第一支持部材21の前端部が片持ち梁のような状態になるところ、本実施形態においては、第一支持部材21が支持位置に移動したときでも、第一ホルダ22全体で第一支持部材21の中間部を支持することができるので、鉄筋籠Aの重量が作用した状態の第一支持部材21を安定的に支持することが可能となる。なお、第一ホルダ22は、第一支持部材21の前端部に作用する荷重によって第一支持部材21が回転しないよう、少なくとも第一支持部材21の上下を支持している。
【0033】
第一進退用アクチュエータ23は、第一支持部材21を支持位置と退避位置との間で往復させるものであり、第一支持部材21の下に配置されている。本実施形態の第一進退用アクチュエータ23は、いわゆる電動シリンダであり、進退可能な第一ロッド23a、第一ロッド23aを抱持する収容筒23b、第一ロッド23aの動力源となる電動モータ23c、減速機(図示せず)を収容したギアケース23dなどを備えている。なお、第一進退用アクチュエータ23は、第一ホルダ22の下面に取り付けられており、第一ホルダ22と一緒に昇降する。
【0034】
第一ロッド23aおよび収容筒23bは、ロッド取付部21bの前側(掘削穴H側)に配置されている。第一ロッド23aは、ロッド取付部21bに接続されており、第一ロッド23aを退行させると、第一支持部材21が支持位置に向けて移動し、第一ロッド23aを進出させると、第一支持部材21が退避位置に向けて移動する。第一ホルダ22の後端から突出するロッド取付部21bに第一ロッド23aを接続すると、第一支持部材21を退避位置に移動させたときに、第一支持部材21の前端部を第一ホルダ22に収容することができる。なお、ロッド取付部21bに第一ロッド23aを接続すると、第一支持部材21の前部に第一ロッド23aを接続する場合に比べて、第一支持部材21の前部の突出量を小さくする(片持ち状に張り出す部分を小さくする)ことが可能になるので、鉄筋籠Aを安定的に支持することが可能となる。
【0035】
第一ロッド23aおよび収容筒23bは、第一支持部材21の直下に位置しており、電動モータ23cは、収容筒23bの直下に位置している。このようにすると、第一支持部材21と第一進退用アクチュエータ23とが上下に重なるようになるので、第一進退用アクチュエータ23を第一支持部材21の後方に配置する場合に比べて、昇降支持部B2の奥行き寸法が小さくなる。
【0036】
上車輪24は、第一支持部材21の上に位置しており、かつ、ガイドレール13の後面を走行する。上車輪24,24の車軸は、軸箱24aに支持されている。軸箱24aは、上車輪24,24の間に配置されており、第一ホルダ22の上面に固定されている。
【0037】
下車輪25は、第一支持部材21の下に位置しており、かつ、ガイドレール13の前面を走行する。下車輪25,25の車軸は、軸箱25aに支持されている。軸箱25aは、下車輪25,25の間に配置されており、第一ホルダ22の下面に固定されている。
【0038】
固定支持部B3は、第二支持部材31、第二ホルダ32、第二進退用アクチュエータ33などを備えている。昇降支持部B2と異なり、固定支持部B3は、上下に移動しない。本実施形態の固定支持部B3は、昇降支持部B2の直下に位置している。
【0039】
第二支持部材31の構成は、昇降支持部B2の第一支持部材21と同様である。すなわち、第二支持部材31は、「支持位置」と「退避位置」とを選択可能であり、第二支持部材31の前端部は、隣り合う縦筋1,1の間を通って鉄筋籠Aの内部に挿入され、支持位置において第一補助部材3または第二補助部材4を下から支持する。また、第二支持部材31の前端部の上面には、突起が形成されている。なお、第二支持部材31の後端部には、上方に向けて延出するロッド取付部31bが形成されている。
【0040】
第二ホルダ32は、前側の支持桁12に固定されている。第二ホルダ32のその他の構成は、昇降支持部B2の第一ホルダ22と同様である。
【0041】
第二進退用アクチュエータ33は、第二支持部材31を支持位置と退避位置との間で往復させるものであり、第二支持部材31の上に配置されている。本実施形態の第二進退用アクチュエータ33は、いわゆる電動シリンダであり、進退可能な第二ロッド33a、第二ロッド33aを抱持する収容筒33b、第二ロッド33aの動力源となる電動モータ33c、減速機(図示せず)を収容したギアケース33dなどを備えている。なお、第二進退用アクチュエータ33は、第二ホルダ32の上面に取り付けられている。
【0042】
第二ロッド33aおよび収容筒33bは、ロッド取付部31bの前側(掘削穴H側)に配置されている。第二ロッド33aは、ロッド取付部31bに接続されており、第二ロッド33aを退行させると、第二支持部材31が支持位置に向けて移動し、第二ロッド33aを進出させると、第二支持部材31が退避位置に向けて移動する。第二支持部材31を退避位置に移動させると、第二支持部材31の前端部が第二ホルダ32に収容された状態となる。なお、ロッド取付部31bに第二ロッド33aを接続すると、第二支持部材31の前部に第二ロッド33aを接続する場合に比べて、第二支持部材31の前部の突出量を小さくすることが可能になるので、鉄筋籠Aを安定的に支持することが可能となる。
【0043】
第二ロッド33aおよび収容筒33bは、第二支持部材31の直上に位置しており、電動モータ33cは、収容筒33bの直上に位置している。このようにすると、第二支持部材31と第二進退用アクチュエータ33とが上下に重なるようになるので、第二進退用アクチュエータ33を第二支持部材31の後方に配置する場合に比べて、固定支持部B3の奥行き寸法が小さくなる。
【0044】
昇降機構B4は、図7に示すように、昇降用アクチュエータ41と、連結部42を備えている。本実施形態の昇降機構B4は、左右二つの昇降支持部B2,B2を同時に昇降させるものであり、連結部42は、左右二つの昇降支持部B2,B2に接続されている。
【0045】
昇降用アクチュエータ41は、第一支持部材21,21を昇降させるものであり、昇降支持部B2,B2の間に配置されている。本実施形態の昇降用アクチュエータ41は、いわゆる電動シリンダであり、進退可能な昇降ロッド41a、昇降ロッド41aを抱持する収容筒41b、昇降ロッド41aの動力源となる電動モータ41c、減速機(図示せず)を収容したギアケース41dなどを備えている。なお、昇降用アクチュエータ41は、支持桁12に固定されている。
【0046】
昇降ロッド41aは、連結部42に接続されており、昇降ロッド41aを進出させると、連結部42が上昇し(図7の(a)参照)、昇降ロッド41aを退行させると、連結部42が下降する(図7の(b)参照)。
【0047】
連結部42は、昇降用アクチュエータ41の上に配置された頂部42aと、頂部42aから下方に向かって延びる柱部42bと、柱部42bの下端部から側方に向かって延びる梁部42cとを備えている。なお、柱部42bおよび梁部42cは、二つずつ設けられている。
【0048】
頂部42aは、昇降ロッド41aの上端部に接続されており、梁部42cは、ガイドレール13と支柱14との間を通り(図4参照)、第一ホルダ22に接続されている。柱部42b,42bは、頂部42aと梁部42c,42cとを繋いでおり、昇降ロッド41aおよび収容筒42bを挟んで対向している。頂部42aと梁部42cとの間に柱部42bを介在させると、昇降ロッド41aの上端よりも下がったところに昇降支持部B2が位置するようになるので、柱部42bを介在させない場合に比べて、昇降支持部B2の上昇限を低くすることができ、ひいては、ガイドレール13の長尺化を抑制することができる。
【0049】
次に、図8乃至図10を参照して、建込装置Bを利用して鉄筋籠Aを掘削穴Hに建て込む方法を説明する。
【0050】
以下では、鉄筋籠Aがn個のブロックα1,α2,…,αn-1,αnに分割されている場合を例示する。なお、最下段からn−1個のブロックα1,α2,…,αn-1は鉄筋籠本体A1となり、最上段のブロックαnは、接合部A2および仮設部A3となる。
【0051】
図8の(a)に示すように、まず、揚重機械(図示略)を利用して最下段のブロックα1を掘削穴Hの上方に搬入し、ブロックα1の下部を建込装置B,Bに保持させる。次に、建込装置B,Bを利用してブロックα1を掘削穴Hに挿入する。
【0052】
ブロックα1(鉄筋籠本体A1)を掘削穴Hに挿入するには、図10の(a)および(b)に示すように、一の第一補助部材3を第一支持部材21に載置した状態で第一支持部材21を下降させる下降ステップと、図10の(c)および(d)に示すように、他の第一補助部材3を第二支持部材31に載置した状態で第一支持部材21を上昇させる上昇ステップとを繰り返せばよい。
【0053】
より詳細に説明すると、下降ステップでは、まず、第一支持部材21を第一補助部材3の下に位置させて、第一支持部材21でブロックα1を支持する(図10の(a)参照)。次に、昇降ロッド41aを退行させることで(図7の(a)参照)、昇降支持部B2を下降させる(図10の(b)参照)。なお、下降ステップは、総ての第二支持部材31を退避させた状態で行う。その後、昇降支持部B2の高さ位置を微調整し、他の第一補助部材3(第一支持部材21に支持された第一補助部材3の下側に位置する第一補助部材3)を第二支持部材31のやや上に位置させる。なお、第一支持部材21を下降させる際には、一方の建込装置Bの昇降用アクチュエータ41と他方の建込装置Bの昇降用アクチュエータ41とで、動作を同期させることが望ましい。ちなみに、本実施形態では、電動シリンダを昇降用アクチュエータ41としているので、容易に同期させることができる。
【0054】
次に、第二ロッド33aを退行させて、第二支持部材31を支持位置に向けて移動させる。第二支持部材31の前端部が鉄筋籠本体A1の内部に挿入されたら、昇降支持部B2を僅かに下降させて、第一補助部材3を第二支持部材31に載置する。第一補助部材3を第二支持部材31に載置したら、第一ロッド23aを進出させて、第一支持部材21を退避位置に向けて移動させる(図10の(c)参照)。なお、第一支持部材21を退避位置に向けて移動させる作業は、フェールセーフの観点から、一方の建込装置Bの第一進退用アクチュエータ23と他方の建込装置Bの第一進退用アクチュエータ23とを、時間をずらして別々に動作させることが望ましい。
【0055】
総ての第一支持部材21を退避させたら、上昇ステップを行う。上昇ステップでは、まず、昇降ロッド41aを進出させることで(図7の(b)参照)、昇降支持部B2を上昇させ、他の第一補助部材3(下降ステップで第一支持部材21が支持していた第一補助部材3の上側に位置する第一補助部材3)のやや下に第一支持部材21を位置させる(図10の(d)参照)。その後、第一ロッド23aを退行させて、第一支持部材21を支持位置に向けて移動させる。第一支持部材21の前端部がブロックα1の内部に挿入されたら、昇降支持部B2を僅かに上昇させて、ブロックα1を第一支持部材21に受け替える。第一支持部材21への受け替えが完了したら、第二ロッド33aを進出させて、第二支持部材31を退避位置に向けて移動させる(図10の(a)参照)。なお、第二支持部材31を退避位置に向けて移動させる作業は、フェールセーフの観点から、一方の建込装置Bの第二進退用アクチュエータ33と他方の建込装置Bの第二進退用アクチュエータ33とを、時間をずらして別々に動作させることが望ましい。
【0056】
上記各ステップを繰り返し、ブロックα1の上端部が建込装置B,Bに保持された状態となったら、図8の(b)に示すように、揚重機械(図示略)を利用して下から二段目のブロックα2を掘削穴Hの上方に搬入する。最下段のブロックα1の直上にブロックα2を位置させたら、図示せぬ機械式鉄筋継手を用いてブロックα1,α2を連結し、その後、建込装置B,Bを利用してブロックα1,α2を下降させる。以後、上記各ステップと同様の作業を繰り返す。
【0057】
図9の(a)に示すように、上から二段目のブロックαn-1の上端部が建込装置B,Bに保持された状態となったら、揚重機械(図示略)を利用して最上段のブロックαnを掘削穴Hの上方に搬入する。ブロックαn-1の直上に最上段のブロックαn(仮設部A3を含むブロック)を位置させたら、図示せぬ機械式鉄筋継手を用いてブロックαn-1,αnを連結し、その後、建込装置B,Bを利用してブロックα1,α2,…,αn-1,αnを下降させる(図9の(b)参照)。
【0058】
ブロックαnを掘削穴Hに挿入するには、図示は省略するが、一の第二補助部材4を第一支持部材21に載置した状態で第一支持部材21を下降させるステップと、他の第二補助部材4を第二支持部材31に載置した状態で第一支持部材21を上昇させるステップとを繰り返せばよい。詳細は、図10に示す手順と同様である。
【0059】
最上段のブロックαn(すなわち、仮設部A3)を掘削穴Hに挿入すると、ブロックα1,α2,…,αn-1(すなわち、鉄筋籠本体A1)を建込装置Bの下方に位置させることが可能となる。
【0060】
なお、最上段のブロックαnの上端部が建込装置B,Bに保持された状態となったら、図9の(b)に示すように、鉄筋籠Aを支持部材16に受け替え、建込装置Bを撤去する。その後、接合部A2の上端部までコンクリートを打設すると、場所打ちコンクリート杭が形成される。仮設部A3は、コンクリートが硬化した後に切除する。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る鉄筋籠Aによれば、上記の建込方法を採用することが可能となるので、建込装置Bを利用しながらも、鉄筋籠本体A1の全体を地中に建て込むことが可能となる。
【0062】
また、第一支持部材21と第一進退用アクチュエータ23とを上下に重ね、さらには、第一支持部材21の後端部に第一ロッド23aを接続するとともに、第一支持部材21と第一ロッド23aの進退方向を逆にしたので、昇降支持部B2の奥行き寸法が小さくなる。固定支持部B3についても同様である。すなわち、本実施形態に係る建込装置Bによれば、昇降支持部B2および固定支持部B3のコンパクト化を図ることができるので、作業スペースが狭隘であっても、建込装置Bを設置することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態の建込装置Bでは、上車輪24がガイドレール13の後面に当接し、下車輪25がガイドレール13の前面に当接するので、鉄筋籠Aを第一支持部材21に載置したときに生じるモーメントに好適に対抗することが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態では、鉄筋籠本体A1と仮設部A3との間に接合部A2を介在させた場合を例示したが、接合部A2は省略してもよい。
【0065】
本実施形態では、昇降支持部B2の下に固定支持部B3を配置した場合を例示したが、昇降支持部B2の上に固定支持部B3を配置してもよい。
【0066】
本実施形態では、第一支持部材21の下に第一進退用アクチュエータ23を配置したが、第一支持部材21の上に第一進退用アクチュエータ23を配置してもよい。また、本実施形態では、第二支持部材31の上に第二進退用アクチュエータ33を配置したが、第二支持部材31の下に第二進退用アクチュエータ33を配置してもよい。
【0067】
本実施形態では、第一進退用アクチュエータ23、第二進退用アクチュエータ33および昇降用アクチュエータ41が電動シリンダである場合を例示したが、電動シリンダに代えて油圧シリンダやエアシリンダを用いても勿論差し支えない。また、第一進退用アクチュエータ23および第二進退用アクチュエータ33を省略し、第一支持部材21および第二支持部材31の進退動作を手動で行ってもよい。
【符号の説明】
【0068】
A 鉄筋籠
A1 鉄筋籠本体
A3 仮設部
1 縦筋
2 横筋
3 第一補助部材
4 第二補助部材
B 建込装置
21 第一支持部材
31 第二支持部材
H 掘削穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の縦筋と複数本の横筋とを格子状に組み合わせて形成した鉄筋籠本体と、
前記複数本の縦筋のうちの一部を上方向に延長して形成した仮設部と、を備える鉄筋籠であって、
前記鉄筋籠本体は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第一補助部材を有し、
前記仮設部は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の第二補助部材を有し、
前記各第一補助部材および前記各第二補助部材は、いずれも、少なくとも二本の前記縦筋に横架されている、ことを特徴とする鉄筋籠。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋籠を掘削穴に建て込む方法であって、
第一支持部材と第二支持部材とを具備した建込装置を、前記掘削穴の開口縁部に設置しておき、
一の前記第一補助部材を前記第一支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を下降させるステップと、他の前記第一補助部材を前記第二支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を上昇させるステップとを繰り返すことで、前記鉄筋籠本体を掘削穴内に挿入し、
その後、一の前記第二補助部材を前記第一支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を下降させるステップと、他の前記第二補助部材を前記第二支持部材に載置した状態で前記第一支持部材を上昇させるステップとを繰り返すことで、前記仮設部を掘削穴内に挿入する、ことを特徴とする鉄筋籠の建込方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−241400(P2012−241400A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111689(P2011−111689)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000159272)吉永機械株式会社 (6)
【Fターム(参考)】