説明

鉄系消臭剤、消臭剤を含有する消臭性を有する熱可塑性樹脂および繊維加工品

【課題】使用場所や用途が限定されず、安定して消臭機能を発揮できる鉄系消臭剤等を提供する。
【解決手段】板状のプラスチック成形品本体2の表面に表皮材3が積層されている。表皮材3は、目付重量が10ないし400g/mの布4の裏面に鉄系消臭剤5を付着したものであり、その鉄系消臭剤5が付着されている裏面がプラスチック成形品本体2の表面に接合されている。鉄系消臭剤5は、2価の鉄化合物、キレート剤、多孔物質および粒子径100nm以下の微粒子酸化チタンよりなる。この消臭性を有するプラスチック成形品1は鉄系消臭剤5が布4の表面に露出していないので、鉄系消臭剤5が直接空気にさらされないために耐久性が向上し、経時的に安定した消臭性能を発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄系消臭剤およびこの鉄系消臭剤を含有する消臭性を有する熱可塑性樹脂ならびに前記鉄系消臭剤を付着させた消臭性を有する繊維加工品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭剤組成物として無機系、有機系、天然系およびその組み合わせからなるものが開発されており、最近特に酸化チタンを用いた光触媒の研究が盛んに行われている。光触媒は紫外線の照射によって繰り返し臭気物質などの有機物を分解することが可能であり、安全で低コストな消臭剤組成物として注目されている。光触媒活性を得るには紫外線レベルの光により励起状態とすることが必要であり、一般に太陽光が届く場所での使用またはブラックライトの照射装置を配置できる場所での使用などその用途が限定されたものであった。このため、可視光レベルの光によっても消臭性能を発揮するために鉄イオンまたは金属化合物のクラスターを含有させる(例えば、特許文献1または2)ことが知られている。
【0003】
一方、紫外線等の光を必要としない消臭剤組成物として鉄化合物とキレート剤からなるもの(例えば、特許文献3または4)が知られている。鉄化合物とキレート剤からなる消臭剤組成物は二酸化チタンなどの顔料と混合して塗料として用いたり、樹脂と混練して樹脂成形品として利用することができる。
【0004】
【特許文献1】特許2876524号公報
【特許文献2】特許3791150号公報
【特許文献3】特公平04−16182号公報
【特許文献4】特許3665970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、光触媒にあっては、消臭機能の面から見ると、その消臭性能は未だ十分なものではなく、繊維加工品やプラスチック成形品等に付着または配合させて使用する場合、基材となる繊維や樹脂を劣化させるおそれがあった。また、鉄化合物とキレート剤からなる鉄系消臭剤にあっては、紫外線の当らない場所での使用が可能であり、樹脂を劣化させるおそれがないものの、樹脂材料に付着または配合した場合には臭気物質と接触可能な表面に露出した部分でのみ消臭機能が発揮されるため、想定した所望の性能を発揮することができず消臭性能の更なる向上が求められていた。
【0006】
本発明は、紫外線が当たる場所であっても当たらない場所であっても安定して消臭性を発揮することができる鉄系消臭剤、消臭性を有する熱可塑性樹脂、消臭性を有する繊維加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の鉄系消臭剤は、2価の鉄化合物、キレート剤、多孔物質及び粒子径100nm以下の微粒子酸化チタンよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述のとおり構成されているので次に記載するような効果を奏する。
【0009】
紫外線が当たる場所であっても当たらない場所であっても安定して優れた消臭性を発揮し、鉄系消臭剤を基材に付着させて使用する場合にも、長期間にわたって離脱することがなく消臭機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の一使用例を示し、消臭性を有するプラスチック成形品(消臭プラスチック成形品)の模式斜視図である。
【0012】
消臭プラスチック成形品1は、熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形品本体2の表面に表皮材3が積層されている。表皮材3は、目付重量が600g/m以下、好ましくは10ないし400g/mの範囲以内の布4からなり、布4の裏面に2価の鉄化合物を含有する鉄系消臭剤5を付着したものであり、その鉄系消臭剤5が付着されている裏面をプラスチック成形品本体2の表面に対向させて接合されている。
【0013】
本発明に係る鉄系消臭剤は、2価の鉄化合物、キレート剤、多孔物質及び粒子径100nm以下の微粒子酸化チタンよりなることを特徴とする。
【0014】
図2は、消臭プラスチック成形品の製造方法の工程を示し、(a)は型開きされた分割型間に表皮材とパリソンを配置した状態を示す説明図、(b)は型締めした分割型によってパリソンを挟持した状態を示す説明図である。
【0015】
(1)図2の(a)に示すように、型開きした一方の分割型11および他方の分割型12との間に布4をその表面を一方の分割型11のキャビティ面11aに対向させて配置する。
【0016】
(2)上記(1)の工程ののち、押出機の押出ヘッド10より溶融したパリソン13を押し出して布4の裏面と他方の分割型12との間に配置する。
【0017】
(3)上記(2)の工程ののち、型締めを行い一方の分割型11および他方の分割型12のピンチオフ部11b、12bの間でパリソン13を挟持する。
【0018】
(4)上記(3)の工程ののち、パリソン13内へ図示しない吹込手段を介して加圧流体を導入し、加圧流体の内圧によってパリソン13をキャビティ面11aに配置された布4と他方の分割型12のキャビティ面12aにならう形状に膨張させる。
【0019】
(5)上記(4)の工程ののち、冷却したのち型開きを行って消臭プラスチック成形品を取り出す。
【0020】
つまり、本発明に係る鉄系消臭剤を布の裏面とプラスチック成形品本体の表面との間に介在させ、鉄系消臭剤が布の表面に実質的に露出しないものとすることにより、継続的に安定した消臭性能を発揮することができる消臭性を有するプラスチック成形品(消臭プラスチック成形品)を得るものである。
【0021】
表皮材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維からなる布であり、織物、編み物、不織布などから選択することができる。特に、消臭性を有するプラスチック成形品の用途が自動車用内装材の場合は、紫外線を遮断しかつ通気性を良好とする観点から目付重量が10〜400g/mの範囲以内の不織布が好ましい。目付重量が10g/mより小さいと成形品本体外面の凹凸が、微細なものまで表面に反映されるため外観が損なわれる可能性が高くなる。逆に目付重量が600g/mより大きいと立体形状再現性に劣り、さらに臭気物質の消臭剤への接触が困難となり消臭機能が発揮できなくなる。ただし、表皮材は臭気物質が消臭剤に接触することを阻害しない範囲で選択することができ、前記不織布の表面に樹脂シートをラミネートした多層とすることができる。
【0022】
繊維に鉄系消臭剤を担持させる方法は、表面付着、含浸、溶融混練等の手段を用いることが出来、特に限定されるのもではないが、消臭の活性を高めるため、好ましくは樹脂エマルジョンをバインダーとして含む水性スラリー液を用い、スプレードライ、ディッピング、塗付等で繊維表面に付着させる方法を用いる。この場合、好ましくはポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン等のSP値9.5以上の繊維を用いる。
【0023】
SP値とは溶解度パラメーターであり、凝集エネルギー密度(cal/cm)の平方根として求められる。
【0024】
SP値9.5以上の繊維を用いることにより、鉄系消臭剤の繊維への付着性が良好となり製品の耐久性を高めることが出来る。
【0025】
プラスチック成形品本体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のSP値が9.5未満の樹脂を用いることが好ましい。SP値が9.5未満の樹脂の樹脂を用いることにより、プラスチック成形品本体の吸湿性を抑え耐久性を高めることができる。
【0026】
ブロー成形の場合、熱可塑性樹脂はメルトテンションが1gf以上でメルトフローレイトが2g/10分以下であることが好ましい。メルトテンションが1gf未満あるいはメルトフローレイトが2g/10分を超えるとパリソンのドローダウンが大きく、安定して成形体を得ることが難しい。
【0027】
プラスチック成形品本体は上述したブロー成形に限らず、シートブロー成形、射出成形などの他の公知の熱可塑性樹脂を溶融させて金型内で成形する方法によって成形することができる。
【0028】
例えば射出成形の場合は、型開きした一方の分割型のキャビティ面に裏面に鉄系消臭剤を付着させた布をその表面を対向させて配置したのち型締めを行い、ついでキャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂を射出・充填してプラスチック成形品本体を射出成形すると同時に前記布を貼着させて積層する。
【0029】
鉄系消臭剤は、バインダーおよび水を含有する水性スラリーとして用いられる。
【0030】
2価の鉄化合物としては、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、臭化第1鉄、ヨウ化第1鉄等の鉄(II)の無機酸塩の他、没食子酸第1鉄、リンゴ酸第1鉄、フマル酸第1鉄等の鉄(II)の有機酸塩等が挙げられる。
【0031】
キレート剤としては、イオンに対してキレート化能を有するものであれば任意のものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン等のポリアミノカルボン酸又はその水溶性塩;エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等のポリアミノリン酸又はその水溶性塩;クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸又はその水溶性塩、アルキルジホスホン酸又はその水溶性塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、単独又は混合物の形で用いることができる。本発明においては、特に、EDTAやイミノ二酢酸等のポリアミノカルボン酸及びそれらの水溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)の使用が好適である。キレート剤は鉄系消臭剤に含まれる二価の鉄イオンと反応し安定化する。キレート剤の使用量は、水性樹脂液中に存在する第1鉄イオン〔Fe(II)〕の0.1〜50%、好ましくは2〜30%、より好ましくは5〜20%をキレート化する割合量であればよい。
【0032】
本発明において、2価の鉄化合物とキレート剤との組合せの好ましいものとして、硫酸鉄とEDTAの組合せを示すことができるが、この場合のEDTAの具体的使用量を示すと、硫酸鉄(FeSO・7HO)100重量部当り、EDTA1〜80重量部、好ましくは20〜60重量部である。キレート剤は、水中の鉄イオン安定化させ、鉄イオンの沈殿を防止する。
【0033】
水性樹脂液に対する2価の鉄化合物とキレート剤の添加方法としては、水性樹脂液に対して2価の鉄化合物とキレート剤をそのまま添加する方法の他、好ましくは、2価の鉄化合物とキレート剤の両者を含む水溶液の形態で添加する方法等を採用することができる。2価の鉄化合物とキレート剤を含む水溶液として添加する場合、2価の鉄化合物の濃度は5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。また、この水溶液にはミョウバンを含有させるのも好ましい。
【0034】
多孔物質としては、ゼオライト、白土、活性白土、ケイソウ土、モンモリロナイト、セピオライト、カオリン、ベントナイト、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム等が挙げられる。多孔物質は2価の鉄イオンを含む有効成分を吸着して安定化すると共に、吸着剤として悪臭物質を捕捉する。
【0035】
水性スラリー液のpHは、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9である。pH6未満の水性スラリーを用いるとアセトアルデヒドの消臭性能が低くなる。pH9以上の水性スラリーは二価の鉄イオンの安定性が低下する。
【0036】
酸化チタンとしては、粒子径100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子状のものであり、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンが好適に用いられる。本発明に係る鉄系消臭剤にはその消臭性能を向上させるため所謂光触媒機能を有する酸化チタンを添加しているが、光触媒による消臭機能を得るものとは異なる。つまり、光触媒酸化チタンが添加された鉄系消臭剤は、紫外線さらには可視光線領域の光の有無に関わらず消臭性能が著しく向上する特徴を有する。
【0037】
バインダーとしては、従来の水性塗料に用いられている樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、アクリル系エマルジョン、スチレンーブタジエン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョンが挙げられる。
【0038】
本発明の鉄系消臭剤には、必要に応じ、マグネシウム化合物やリトポン等の無機粉体を添加することができる。これらの無機粉体の添加により、塗膜の発泡性が向上する。マグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。これらの無機粉体は、組成物中、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%である。
【0039】
また、必要に応じ、pH調整剤、着色剤や分散剤(界面活性剤)、増粘剤(水溶性高分子)、難燃剤(アンチモン酸化物)等を配合することができ、さらに、本発明の鉄系消臭剤を壁や床、天井等の固体表面に対する塗料として用いる場合には、二酸化チタンや酸化亜鉛を含有する水性エマルジョンペーストを適量添加することもできる。これらの二酸化チタンや酸化亜鉛の添加量は、組成物中1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。本発明の組成物のpHは、特に制約されないが、通常、6〜9、好ましくは7〜8の範囲に規定するのがよい。
【0040】
本発明の鉄系消臭剤は、繊維加工品に対して0.1mmol/m以上の割合で付着されていることが好ましい。0.1mmol/m未満であると消臭性能が低くなる。
【0041】
臭気ガスの除去率は、消臭性を有するプラスチック成形品のニーズ、コスト等を考慮して水性スラリーからなる鉄系消臭剤の水希釈倍率を変化させることによって調製することができる。
【0042】
なお、他の実施の形態による消臭性を有するプラスチック成形品は、目付け重量が10ないし600g/mの布を構成する繊維はSP値が9.5以上であり、かつ繊維表面に顔料を含まない実質的に無色の2価の鉄化合物を含有する鉄系消臭剤が担持されており、プラスチック成形品本体はSP値が9.5未満であり、メルトテンションが1gf以上でメルトフローレイトが2g/10分以下の熱可塑性樹脂にて構成されていることを特徴とする。
【実施例】
【0043】
(消臭剤の調製)
水100部に対し、硫酸第1鉄・7水塩(FeSO4 ・7H2 O)10部と、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム(EDTA−2Na)10部を溶解させた後、ゼオライト20部と、分散剤としての非イオン性界面活性(レオドール、花王社製)1部を添加し、均一に撹拌混合し、次いで硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム及びpH調節剤として炭酸水素ナトリウムを適量添加して、pH約8の水性スラリーを調製し、混合液Aとした。この混合液A80部に対して水性アクリル樹脂エマルジョン(固形分10wt%)20部を加えた後、水で8倍に希釈し、混合液Bとした。
【0044】
次に、混合液B、光触媒酸化チタンゾル、顔料用酸化チタン、四塩化チタンを用いて消臭剤溶液を作成した。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1;混合液B100部に対して酸化チタンゾル(固形分30wt%,粒子径30nm)0.5部と水200部を加えて均一に混合し消臭剤溶液C1を得た。次に、200cmの不織布の表面にC1溶液1.8mlをスプレーで付着させた後、100℃で10分乾燥させ、試料D1を作成した。
【0047】
続いて試料D1について以下のアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。アセトアルデヒド消臭試験にはガスサンプリングバルブ、10w蛍光灯用ホルダー及び小型ファンを設置した17.5Lの密閉容器を用い、密閉容器に面積200cm2 の前記試料を入れ、アセトアルデヒド(ガス)0.3mlをリアクターに注入し、速やかに検知管によりアセトアルデヒド濃度を測定してこの値を初期濃度(a)volppmとする。このとき試料面の波長300nm〜400nmの紫外線放射照度は0.01W/m未満(室内灯レベル)であった。一定時間後にガス濃度を測定し(b)volppmとする。(a)と(b)より次の式で除去率(c)を求める。
【0048】
除去率(%)=(a−b)/a×100
【0049】
次に試料を入れずに同様の操作を行い、1volppm以上のガス濃度の減少がある場合はこの値を除去量(a−b)より差引いて補正を行った。
【0050】
実施例2;試料D1について蛍光灯を消灯した状態で、密閉容器に覆いを取り付けて光を遮り、暗所での測定を行った以外は実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0051】
実施例3;ポリエステル繊維を用いニードルパンチ法にて製造した目付重量400g/cm2 の不織布の裏面側に消臭剤溶液C1を、不織布に対して90g/mの割合でスプレーで付着させた後、100℃で15分乾燥させた。その後、不織布を分割型にセットして、メルトテンションが3.5gfでメルトフローレイトが0.5g/10分であるポリプロピレン樹脂を用いてブロー成形を行い、消臭プラスチック成形品を得た。消臭プラスチック成形品から(縦)12.5cm×(横)16cmを切取り、試料D2を得た。鉄系消臭剤の付着量は鉄化合物として0.7mmol/m2 であった。試料D2について実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0052】
実施例4;混合液B100部に対して酸化チタンゾル1.0部と水199部を加えて均一に混合して消臭剤溶液C2を得た。以下実施例1と同様の手順で試料D3を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0053】
実施例5;混合液B100部に対して酸化チタンゾル0.1部及び水200部を加えて均一に混合して消臭剤溶液C4を得た。以下実施例1と同様の手順で試料D4を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0054】
実施例6;混合液B15部に対して酸化チタンゾル0.5部及び水284部を加えて均一に混合して消臭剤溶液C4を得た。以下実施例1と同様の手順で試料D5を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0055】
比較例1;混合液Bを水で3倍に希釈して消臭剤溶液C5とした後、1.8ml/200cm2の割合で不織布に付着させ、100℃で10分乾燥して試料D6を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0056】
比較例2;酸化チタンゾル10部とコロイダイカルシリカ30部及び水110部を撹拌混合し、光触媒溶液C6を調製した。光触媒液C6を1.0ml/200cm2の割合で不織布に付着させた試料D7を作成した。その後、試料D7をリアクターに入れ、容器内にケミカルランプを取り付け、波長300nm〜400nmで放射照度1W/m2の紫外線(車両内における太陽光レベル)を1時間照射して試料を前処理した後、ランプを点灯したままアセトアルデヒドガスを導入した以外は実施例1の方法に従って測定を行った。
【0057】
比較例3;比較例2と同様にケミカルランプで1時間前処理した試料D7を用いて、アセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。ただし、容器内のランプは白色蛍光灯を用いて、試料面に光を照射しながら測定を行った。試料面の波長300nm〜400nmの放射照度0.2W/m2であった。
【0058】
比較例4;比較例2と同様にケミカルランプで1時間前処理した試料D7を用いて、アセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。ただし、容器内のランプを点灯せずに測定を行った。試料面の波長300nm〜400nmの紫外線放射照度は0.01W/m未満(室内灯レベル)であった。
【0059】
比較例5;混合液B1.5部に対して酸化チタンゾル0.5部及び水298部を加えて均一に混合して消臭剤溶液C7を得た。以下実施例1と同様の手順で試料D8を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0060】
比較例6;酸化チタンの種類を比較するため、混合液B100部に対して顔料用酸化チタン(粒子径250nm)0.3部及び水200部を加え消臭剤溶液C8を調整した。以下実施例1と同様の手順で試料D9を作製し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0061】
比較例7;酸化チタンの種類を比較するため、混合液B100部に対して四塩化チタン0.7部とイソプロピルアルコール199部を加えた後、水で2倍に希釈し消臭剤溶液C9を調整した。消臭剤溶液C9を3.6ml/200cm2の割合で不織布に付着させて試料D10を作成し、実施例1と同様の方法にてアセトアルデヒド消臭試験を行い消臭性能の評価を行った。
【0062】
尚、消臭性能の評価結果を表2に示した。試料D1、D2、D3については1時間未満でアセトアルデヒド濃度が検知管の検出限界以下となったので除去率はこの値以上であるとした。
【0063】
【表2】

【0064】
表2より、本発明に係る消臭剤は、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドに対して優れた消臭性能を示し、紫外線照射なしでも消臭性能を発揮することができる。さらに、従来の鉄系の消臭剤または光触媒と比較して消臭性能が著しく向上することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る消臭性を有するプラスチック成形品の模式斜視図である。
【図2】本発明に係る消臭性を有するプラスチック成形品の製造方法の一実施の形態を示し、(a)は型開きされた分割型間に表皮材とパリソンを配置した状態を示す説明図、(b)は型締めした分割型によってパリソンを挟持した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 消臭プラスチック成形品
2 プラスチック成形品本体
3 表皮材
4 布
5 鉄系消臭剤
10 押出ヘッド
11 一方の分割型
11a、12a キャビティ面
11b、12b ピンチオフ部
12 他方の分割型
13 パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価の鉄化合物、キレート剤、多孔物質及び粒子径100nm以下の微粒子酸化チタンよりなることを特徴とする鉄系消臭剤。
【請求項2】
熱可塑性樹脂中に、請求項1記載の鉄系消臭剤を含有させたことを特徴とする消臭性を有する熱可塑性樹脂。
【請求項3】
繊維加工品に、請求項1記載の鉄系消臭剤を付着させたことを特徴する消臭性を有する繊維加工品。
【請求項4】
繊維加工品に対して、請求項1記載の鉄系消臭剤を0.1mmol/m以上の割合で付着させたことを特徴とする消臭性を有する繊維加工品。
【請求項5】
請求項1記載の鉄系消臭剤を、目付重量が10ないし400g/mの範囲以内の布の裏面に付着させたことを特徴する消臭性を有する繊維加工品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−106567(P2009−106567A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282654(P2007−282654)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【出願人】(595149221)南姜エフニカ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】