説明

鉄系粉末焼結体製プリフォーム

【課題】アルミ二ウム合金に鋳包まれて使用される鉄系粉末焼結体製プリフォームを提供する。
【解決手段】断面が半円弧状または円弧状で中心軸方向に沿って連続形成される内周面に複数の大きな内側溝11aと、隣接する該大きな内側溝の間に複数の小さな内側溝11bとを設ける。大きな内側溝は、互いに対向する二つの平坦部と該二つの平坦部の間を連続するように形成された溝底部とからなり、平坦部の長さA(mm)が0.1mm〜1.0mmで、溝幅B(mm)が0.5〜10.0mmで、隣接する各溝幅中心間の間隔Pが、1.5Bmm以上10Bmm以下であり、かつ互いに対向する二つの平坦部が成す角度η(°)が10°以下とすることが好ましい。また、小さな内側溝11bは、溝深さd(mm)が0.05〜1.0mmで、小さな内側溝の溝幅中心間の間隔で0.02mm以上とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ二ウム合金製部材に鋳包まれる鉄系粉末焼結体製プリフォームに係り、とくにアルミ二ウム合金との密着性の向上による鋳包み性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品の軽量化および放熱性を高める目的から、アルミ二ウム合金製の自動車部品が一般化しつつある。例えば、自動車用エンジンでは、重量軽減を目的として、シリンダブロックをアルミ二ウム合金製とすることが行われている。
しかし、アルミ二ウム合金は、従来の鋳鉄に比べて強度、耐摩耗性、剛性等の機械的特性が低いこと、熱膨張係数が高いことなど、自動車用構造部材としての材料特性が不足する場合があるという問題が生じている。アルミ二ウム合金製部材の材料特性向上方法の一つとして、重力鋳造、高圧ダイカスト鋳造等によって異種材料を鋳包む技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミ二ウム合金製ハウジングキャップの軸受部を、鉄系材料を鋳包んで形成したエンジンブロックが提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、アルミ二ウム合金のみでは得られない強度増加があり、剛性が大幅に向上するとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、アルミ二ウム合金との界面を隙間なく接合させるために、鉄系材料の表面にアルミめっき等の表面処理を施す必要があり、製造コストの増加を招くという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、アルミ二ウム合金等の軽金属合金製部材に鋳包まれて使用される鉄系焼結体が提案されている。特許文献2に記載された技術は、Cu:5〜40%を含み、基地中に遊離Cu相が分散した組織とし、さらに好ましくはショットブラスト処理あるいはさらに水蒸気処理を施して、表面粗さを特定の粗さ範囲とすることにより、アルミ二ウム合金等の溶湯との濡れ性が向上し、アルミ二ウム合金等による鋳包み性が向上し、アルミ二ウム合金等と鉄系焼結体との接合強度が向上するとしている。しかし、特許文献2に記載された技術によっても、鋳包まれる鉄系粉末焼結体(鉄系プリフォーム)の形状や仕様等に起因して、プリフォームとアルミ二ウム合金母材との界面が一定の接合強度に達成する前に、凝固、収縮時に発生する応力により、界面の密着が不安定となり、界面に隙間が発生するという問題が懸念される。このような場合には、鉄系プリフォームとアルミニウム合金等の母材との接合強度が低下し問題となる。
【0005】
このような問題に対し、特許文献3には、アルミ二ウム合金による鋳包み性に優れた鉄系プリフォームが提案されている。特許文献3に記載された鉄系プリフォームは、断面半円弧状の鉄系プリフォームの内周面に、中心軸芯に向かって開口し、周方向に複数の、特定の寸法の平坦部を有し断面ほぼU字形状の内側溝を備えている。この内側溝の存在により、鉄系プリフォームの内周面との間に注湯されたアルミ二ウム合金薄肉部で、アルミ二ウム合金溶湯の移動が抑制され、残留応力が軽減および均等化されて、割れ等の発生が防止できるとしている。特許文献3に記載された技術では、更なる密着性向上のために、ショットブラスト等の表面処理を施すことが好ましいとしている。
【特許文献1】特開昭60−219436号公報
【特許文献2】特開2004−204298号公報
【特許文献3】特開2007−98408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最近では、エンジン等の部材の更なる軽量化、高性能化の観点から、アルミ二ウム合金で鋳包まれる鉄系プリフォームも更なる軽量化、薄肉化が要求されている。特許文献3に記載された技術において、鉄系プリフォームの更なる薄肉化を実施すれば、周方向に複数の、特定の寸法、とくに所定の長さの平坦部を有する内側溝を形成できない場合が生じ、プリフォームとアルミ二ウム合金との密着性が低下するという問題があった。また、薄肉の鉄系プリフォームでは、ショットブラストによる表面処理を施すと、ショットによる変形、割れ等の不具合の発生が懸念され、プリフォームの生産性に問題を残していた。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みて成されたものであり、アルミ二ウム合金等に鋳包まれて使用される鉄系プリフォームのアルミ二ウム合金との密着性が更に向上し、アルミ二ウム合金による鋳包み性に優れた薄肉鉄系プリフォームを提供することを目的とする。なお、ここでいう「薄肉」とは、最低肉厚が2mm以上10mm以下の場合をいうものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鉄系プリフォームとアルミ二ウム合金との密着性に影響する各種要因について、鋭意研究した。その結果、大きな内側溝を複数、内周面に設けることにより、鉄系プリフォームを鋳包む際に、注湯されたアルミ二ウム合金がこの大きな内側溝に侵入し、各大きな内側溝が溶湯の凝固時に内周面に沿って発生する収縮応力を均等に受け止め、凝固時にアルミ二ウム合金溶湯に生じる応力を軽減して、界面における隙間の発生を防止できることを知見した。
【0009】
しかし、高負荷化等のアルミニウム合金の製品機能の向上要求から、大きな内側溝のみでは、所望の密着性を維持できず、ショットブラスト等の表面処理を施すことが必要となっていた。とくに薄肉のプリフォームでは、金型構造の制約で、所望の密着性を確保するために所望の平坦部を有する大きな内側溝を、必要な数だけ設けることができない場合が考えられ、密着性の低下が懸念された。そこで、本発明者らは、粉末のプレス成形時に導入可能な、大きな内側溝を、プリフォームの内周面に従来より配設間隔(ピッチ)を拡大して設けると共に、それに加えて、該大きな内側溝の間に、粉末のプレス成形時に導入可能な、特定寸法形状の複数の小さい内側溝を、複合して設けることに想到した。
【0010】
鉄系プリフォームをアルミ二ウム合金に鋳包むと、注湯されたアルミ二ウム合金が、プリフォームの内周面に複数形成された各大きな内側溝に侵入し、これにより凝固時に溶湯に発生する収縮応力が分散され、溶湯の移動を抑制して、凝固時のアルミ二ウム合金とプリフォームとの密着性を確保できる。さらにプリフォームの内周面に複数形成された各小さな内側溝にもアルミ二ウム合金溶湯が侵入し、凝固後の収縮時に発生する応力を分散させることができるため、凝固後の収縮時にアルミ二ウム合金に発生する残留応力を低減、かつ分散させることができ、アルミ二ウム合金とプリフォームとの接合強度がさらに向上する。これにより、ショットブラスト等の表面処理を施すことなく、鋳包まれるアルミ二ウム合金との密着性を顕著に向上させることができるプリフォームを製造できることを新規に見出した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)アルミ二ウム合金で鋳包まれて使用される鉄系粉末焼結体製プリフォームであって、中心軸方向と直交する断面が半円弧状または円弧状で、該中心軸方向に沿って連続形成される内周面を有し、前記内周面には、周方向に所定の間隔を隔て、中心軸芯に向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成された複数の大きな内側溝と、隣接する該大きな内側溝の間に、周方向に所定の間隔を隔て、中心軸芯に向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成された複数の小さな内側溝とを有することを特徴とするアルミ二ウム合金鋳包み性に優れた鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
【0012】
(2)(1)において、前記大きな内側溝が、中心軸芯に向かって開口し、互いに対向する二つの平坦部と該二つの平坦部の間を連続するように形成された溝底部とからなり、かつ前記平坦部の長さA(mm)が0.1mm以上1.0mm以下で、前記大きな内側溝の溝幅B(mm)が0.5〜10.0mmで、隣接する前記大きな内側溝の各溝幅中心間の間隔Pが、前記大きな内側溝の溝幅B(mm)との関係で、1.5Bmm以上10Bmm以下であり、かつ互いに対向する二つの平坦部が成す角度η(°)が10°以下である溝形状を有し、前記小さな内側溝が、中心軸芯に向かって開口し、溝深さd(mm)が0.05〜1.0mmである溝形状を有し、隣接する該小さな内側溝同士の間隔が該小さな内側溝の溝幅中心間の間隔pで0.02mm以上であることを特徴とする鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
(3)(2)において、前記小さな内側溝の溝形状が、断面V字形状、断面台形状、断面半円弧状のうちのいずれかであることを特徴とする鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
(4)(3)において、前記断面V字形状が、開き角度θ:30〜120°のV字形状であることを特徴とする鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミ二ウム合金に鋳包まれたのちに、高い接合強度と優れた密着性を確保できる、鉄系粉末焼結体製プリフォームを安価にしかも容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のプリフォームは、鉄系粉末焼結体製で、アルミ二ウム合金で鋳包まれて使用される部材である。例えば、鉄系粉末と、黒鉛粉と、銅粉と、ワックス系潤滑粒子粉と、あるいはさらに被削性改善用粉末と、を混合して混合粉とし、該混合粉を金型に充填しプレス等により加圧成形し圧粉体と、該圧粉体を焼結して鉄系粉末焼結体とすることにより製造される。焼結に際しては、所望の密度、熱膨張係数を有するように焼結条件を調整することが好ましい。
【0015】
本発明のプリフォーム1は、例えば、図1に示すような形状であり、中心軸方向と直交する断面がほぼ半円弧状または円弧状で、該中心軸方向に沿って連続形成される内周面11と、断面が円弧状で中心軸方向に沿って延在する外周面12と、相対向する二つの端面13,13とで画成された本体10と、該本体10の両側に一体形成されたフランジ部14,14とを有する。なお、両フランジ部には貫通孔14a,14aがそれぞれ穿設されている。
【0016】
内周面11には、周方向に所定の間隔を隔てて、複数の大きな内側溝11aと、隣接する該大きな内側溝の間に複数の小さな内側溝11bがそれぞれ形成される。外周面12には、周方向に所定の間隔を隔てて、複数の外側溝12aが形成される。また、端面13には、複数の端側凹部13aあるいは端側溝13b(図示せず)が形成される。内側溝、外側溝、凹部又は端側溝を形成することにより、プリフォームをアルミ二ウム合金に鋳包む際に、アルミ二ウム合金溶湯との接合強度、密着性が向上する。内側溝、外側溝、端側凹部又は端側溝は、金型による加圧成形時に同時に形成することが、生産性向上、さらには製造コストの低減のうえで好ましい。なお、外側溝、端側溝、端側凹部の形状はとくに限定する必要はないが、金型製作上の容易さから断面V字形状、あるいは断面半円弧状、断面台形状とすることが好ましい。
【0017】
本発明のプリフォームで、内周面に形成される大きな内側溝11aおよび小さな内側溝11bはいずれも、中心軸芯Cに向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成される。そして、大きな内側溝11aは、図2に示すように、互いに対向する二つの平坦部11a1,11a1と該二つの平坦部の間を連続するように形成された溝底部11a2とからなる。この大きな内側溝11aは、中心軸芯Cから溝幅中心へ延在する基準線Lに対し対称な形状を呈する。なお、内周面11から平坦部11a1へは、滑らかに連続する曲面で形成される。また、平坦部11a1から溝底部11a2へも滑らかに連続する曲面で形成されることは言うまでもない。
【0018】
この大きな内側溝11aにおける平坦部11a1の長さA(mm)は、0.1〜1.0mmの範囲に設定することが好ましい。平坦部11a1の長さAが0.1mm未満では、アルミニウム合金溶湯の移動を抑制する効果が不十分となる。一方、1.0mmを超えて大きくなると、金型の強度が低下するとともに、アルミニウム合金に残留する応力が過大となり、クラック発生の原因となる。このため、大きな内側溝11aにおける平坦部11a1の長さA(mm)は、0.1〜1.0mmの範囲に設定した。なお、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0019】
なお、平坦部同士を連続するように形成される溝底部11a2は、好ましくは曲率半径cの円弧状とすることが好ましい。曲率半径cは、金型寿命の向上、製品の強度確保の観点から、溝幅Bの1/5〜1程度とすることが好ましい。
また、この大きな内側溝11aにおける二つの平坦部11a1,11a1が成す角度η(°)が0℃を含む10°以下を満足することが好ましい。角度η(°)を10°以下とすることにより、プリフォームとアルミ二ウム合金との界面強度を所望の値以上とすることができ、高い密着性を確保できる。また、これにより、アルミ二ウム合金溶湯の凝固時の応力集中が抑制され、注湯されたアルミ二ウム合金の破断やクラックの発生が防止できる。
【0020】
さらにこの大きな内側溝11aにおける溝幅B(mm)は、0.5〜10.0mmに限定することが好ましい。溝幅Bが0.5mm未満では、注湯されるアルミニウム合金が大きな内側溝内に侵入しにくくなり、所望の接合強度を確保できなくなり、プリフォームとアルミ二ウム合金との密着性が低下する。なお、好ましくは2〜5mmである。
また、この大きな内側溝11aは、周方向に所定の間隔を隔てて、内周面に、複数個設ける。周方向に所定の間隔、すなわち、隣接する各溝幅中心間の間隔P(mm)が、1.5Bmm以上10Bmm以下を満足するように、複数個設けることが好ましい。溝幅中心間の間隔P(mm)が、1.5Bmm未満では、薄肉プリフォームの場合、金型構造および金型寿命の関係から、所望形状の内側溝を配設できない場合が多い。一方、各溝幅中心間の間隔P(mm)が、10Bを超えて大きくなると、大きな内側溝の設置個数が少なくなり、所望の接合強度や密着性を確保できなくなる。このため、隣接する各溝幅中心間の間隔P(mm)は、1.5Bmm以上10Bmm以下の範囲に限定することが好ましい。
【0021】
なお、大きな内側溝11aの深さDは、平坦部11a1の長さ、溝底部11a2の曲率半径、各部を連続する部分の形状によって制約されるが、概ね、0.5〜5mmとすることが密着性向上、金型強度の確保の観点から好ましい。
さらに本発明では、複数の大きな内側溝11aの間に、図3に示すように、複数の小さな内側溝11bを設ける。図3では断面V字形状の溝を複数、設けた例を示す。これにより、鋳包まれるプリフォームと、注湯されたアルミ二ウム合金との接合強度がさらに増加し、密着性が顕著に向上する。隣接する大きな内側溝11a,11a間に設けられる複数の小さな内側溝11b,11b,‥‥は、中心軸芯Cに向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成される、溝深さd(mm):0.05〜1.0mmの溝形状を有する。
【0022】
溝深さd(mm)が0.05mm未満では、溝が浅すぎて、アルミニウム合金との接触面積が少なくなるため、接合強度をさらに増加させることができず、密着性が低下する。一方、1.0mmを超えて大きくなると、金型強度が低下し、所望の金型を製作できなくなり、また、製品(プリフォーム)が局部的に薄肉となり、変形、割れ等の不具合の発生が懸念される。このため、本発明では、小さい内側溝の溝深さd(mm)を、0.05〜1.0mmの範囲に限定することが好ましい。なお、好ましくは0.2〜1mmである。
【0023】
また、隣接する小さな内側溝11b同士の間隔は、小さな内側溝の溝幅中心間の間隔pで0.02mm以上とすることが好ましい。小さな内側溝の溝幅中心間の間隔が、0.02mm未満では、間隔が狭すぎて、注湯されるアルミニウム合金の侵入が少ないため、接合強度をさらに増加させることができず、密着性が低下する。なお、小さな内側溝の溝幅中心間の間隔は、密着性向上の観点から10B以下とすることが好ましい。
【0024】
また、小さな内側溝は、上記した,溝深さd、溝幅中心間の間隔pを有し、溝形状が断面V字形状、断面台形状、断面半円弧状のうちのいずれかとすることが好ましい。
溝形状が、図3に示すような断面V字形状の場合には、V字の開き角度θは30〜120°とすることが好ましい。というのは、V字の開き角度θが30°未満では、溝幅が狭すぎて金型強度が低下しやすく、金型に破損、欠け等の不具合の発生頻度が高くなり、一方、V字の開き角度が120°を超えて大きくなると、接合強度の向上代が小さくなり、溝を形成したことによる効果が小さくなるためである。
【0025】
また、本発明では、小さな内側溝は、上記した,溝深さd、溝幅中心間の間隔pを有し、図4に示すような、断面台形状、あるいは断面半円弧状としてもよい。
なお、本発明のプリフォームには、プリフォームの精度、品質に影響しない程度に、ショットブラスト処理を施して、更なる密着性向上を図ってもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0026】
鉄系粉末と、黒鉛粉と、銅粉と、ワックス系潤滑粒子粉とを、混合して混合粉とした。ついで得られた混合粉を所定形状の金型に充填し、プレス成形(成形圧力:600MPa)で圧粉して、図1に示す形状のプリフォーム(圧粉体)とした。ついで、これら圧粉体を還元雰囲気中の温度:1130℃で焼結し、薄肉鉄系粉末焼結体製プリフォーム(大きさ:最小肉厚約3mm×外径約100mmφ×内径約80mmφ)とした。なお、内周面に設ける大きな内側溝の溝形状および内周面に設ける小さな内側溝の溝形状を表1に示すように変化させた。比較のために、大きい内側溝のみを導入した場合を従来例とした。また、小さい内側溝のみを導入した場合についても、評価した。また、一部のプリフォームにはショットブラスト処理を施した。
【0027】
得られた薄肉プリフォーム(焼結体)を、補強部材として、内燃機関の軸受部を模した簡易金型の所定位置に装着し、ついで、高圧ダイキャストによりアルミ二ウム合金溶湯(JIS ADC12)を注湯し、図5(a)に示すような簡易形状のテストピースとした。
得られたテストピースから、図5(a)(b)に示すようにプリフォームとアルミニウム合金との界面を含む剪断試験片(肉厚:5mm)を採取した。図5(c)のように、界面に剪断応力が作用するように試験片を押え治具で保持し、試験片のアルミニウム合金側を押し治具で押圧し、剪断変形させ、剪断強度を求めた。なお、押し治具は、アルミニウム合金側のみに押圧がかかるように押圧面形状を調整した治具とした(図5の場合には半円形状とした。)。
【0028】
得られた剪断強度について、従来例を基準(1.00)として、剪断強度比を算出した。剪断強度比が1.00より小さい場合には、界面強さが低く、従来に比べて密着性が低下していると評価し、1.00より大きい場合には、界面強さが高く、従来に比べて密着性が向上していると評価した。
得られた結果を表1に併記した。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明例はいずれも、剪断強度比が0.80以上であり、比較例に比べてはもちろん、従来例とほぼ同等あるいはそれ以上に、密着性が向上していることがわかる。なお、本発明の好適範囲を外れる本発明例(焼結体No.7、No.8、No.11)は、剪断強度比が1.0未満と、従来例に比べ界面の接合強さが若干低下し、密着性が若干低下している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のプリフォームの概略形状を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明のプリフォームで内周面に設けられる大きな内側溝の溝形状を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明のプリフォームで内周面に設けられる小さな内側溝の溝形状を模式的に示す断面図である。
【図4】小さな内側溝の溝形状の他の例を模式的に示す断面図である。
【図5】実施例で用いた剪断試験片の採取方法と剪断変形方法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 プリフォーム
10 本体
11 内周面
11a 大きな内側溝
11a1 平坦部
11a2 溝底部
11b 小さな内側溝
12 外周面
12a 外側溝
13 端面
13a 端側溝
14 フランジ部
14a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ二ウム合金で鋳包まれて使用される鉄系粉末焼結体製プリフォームであって、中心軸方向と直交する断面が半円弧状または円弧状で、該中心軸方向に沿って連続形成される内周面を有し、前記内周面には、周方向に所定の間隔を隔て、中心軸芯に向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成された複数の大きな内側溝と、隣接する該大きな内側溝の間に、周方向に所定の間隔を隔て、中心軸芯に向かって開口し、かつ中心軸方向に沿って連続して形成された複数の小さな内側溝とを有することを特徴とするアルミ二ウム合金鋳包み性に優れた鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
【請求項2】
前記大きな内側溝が、中心軸芯に向かって開口し、互いに対向する二つの平坦部と該二つの平坦部の間を連続するように形成された溝底部とからなり、かつ前記平坦部の長さA(mm)が0.1mm以上1.0mm以下で、前記大きな内側溝の溝幅B(mm)が0.5〜10.0mmで、隣接する前記大きな内側溝の各溝幅中心間の間隔Pが、前記大きな内側溝の溝幅B(mm)との関係で、1.5Bmm以上10Bmm以下であり、かつ互いに対向する二つの平坦部が成す角度η(°)が10°以下である溝形状を有し、前記小さな内側溝が、中心軸芯に向かって開口し、溝深さd(mm)が0.05〜1.0mmである溝形状を有し、隣接する該小さな内側溝同士の間隔が該小さな内側溝の溝幅中心間の間隔pで0.02mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鉄系粉末焼結体製プリフォーム。
【請求項3】
前記小さな内側溝の溝形状が、断面V字形状、断面台形状、断面半円弧状のうちのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の鉄系粉末焼結体製鉄系プリフォーム。
【請求項4】
前記断面V字形状が、開き角度θ:30〜120°のV字形状であることを特徴とする請求項3に記載の鉄系粉末焼結体製プリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−82648(P2010−82648A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253651(P2008−253651)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390022806)日本ピストンリング株式会社 (137)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】