説明

鉄道レールの溶接時におけるレール突き合わせ部の溶接角度形成装置

【課題】 レール溶接のための、レール突き合わせ角度を容易に設定し、保持する装置を提供する。
【解決手段】 一対のレールR,Rを、端面を相対向させて配置し、該各レールRの端部両側の、該レールを対称軸とした対称位置に、コンクリート製枕木等の固定体6に固着した基盤4をそれぞれ配置する。また、該基盤4に揺動枠12を横軸揺動自在に枢着し、該揺動枠12に前記レールRの頭部下面を押圧する傾斜ボルト1を前記頭部下面に対して進退自在に設ける。また、前記基盤には前記レールの底部側面を押圧する横ボルト2を前記レールRの底部側面に対して進退自在に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄道レールを溶接手段で接続するに際し、予め、レールの溶接端面を互いに角度を与えて突き合わせて溶接し、角変形を利用して該溶接部に塑性変形を与えてレール溶接部に圧縮残留応力が生じるようにしているが、本発明は、レールの溶接端面を角度を与えて付き合わせるために利用する、鉄道レールの溶接時におけるレール突き合わせ部の溶接角度形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接時のレール突き合わせ部の、レール頭面側が上方に突出する角変形を確保(芯出し)させるために、従来は、「矢」と称する、所謂楔材を用意し、該楔材をレールと該レールを支持する支持材(現場溶接では枕木)との間に挟挿する手段が採られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、楔材を、レールと支持材(概し、コンクリート製枕木)との間の適所に挟挿して、レール突き合わせ部の角度(角変形)を形成、保持させるようにしているので、該挟挿作業が煩雑であるし、また、微妙な角度に設定することから熟練を要する。
【0004】
本発明は、このような従来例の欠点に着目し、レール溶接のための、レール突き合わせ角度を容易に設定する(芯出しする)ことのできる装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一対のレールを、端面を相対向させて配置し、該各レールの端部両側の、該レールを対称軸とした対称位置に、前記レールの頭部下面を押圧する傾斜ボルトと底部側面を押圧する横ボルトをそれぞれ設けたことを基本的手段とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、互いに溶接するレールに対しボルトを進退させて押圧することにより(殊に、傾斜ボルトで押圧することにより)、レール突き合わせ部の角度を容易に設定し、保持することができ、次段の溶接工程までの時間を短時間で済ませることができ、現場でのレール溶接施工に適用するに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】正面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の側面図。
【図5】角度形成具の正面図。
【図6】角度形成具の平面図。
【図7】角度形成具の側面図。
【図8】図7の縦断面図。
【実施例】
【0008】
図面は本発明に係る、鉄道レールの溶接時におけるレール突き合わせ部の溶接角度形成装置の一実施例を示し、実施例は、溶接面である端面R´を互いに相対するように配して、直列に並べた一対のレールR,Rのレール突き合わせ部(接続部)の両側に、各レールR毎に左右一対の角度形成具Aを、レールRを対称軸として対称的に配し、該角度形成具Aに備えた傾斜ボルト1、横ボルト2および縦ボルト3のそれぞれをレールRに対し適宜進退させてレールRを押圧させて、前記レールR,Rの端面R´,R´間の向き合わせ角度すなわち突き合わせ部の角度を適宜の角度に設定せしめ、その設定角度を保持するものである。
【0009】
図中、4は角度形成具Aの基盤で、基盤4は、下部材4a上に上中央部材4bと左右の上側部材4c,4cを溶接して立設して構成し、前記中央部材4bと側部材4cの縦部片とで成る左右それぞれ一対の支承部片5,5´を上面左右に備えたもので、上面中央には固定体6に設けたねじ穴7に螺合して基盤4を固定体6に止着するための固着ボルト8挿通用の貫通孔9を設け、この貫通孔9の両側には該貫通孔9と直交する方向にして第一螺子孔10を設け、これに前記横ボルト2を螺合して組付けてある。
【0010】
また、前記基盤4を形成する(支承部片5,5´を構成する)前記各上側部材4cには前記レールR側に向くようにして部片4c´を突設し、該部片4c´に第二螺子孔11を縦方向にして設け、該第二螺子孔11には前記縦ボルト3を螺合して、その先端が第二螺子孔11より突出して前記Rの底部Rc上面を押圧するようにしてある。
【0011】
基盤4の上面に立設した前記各一対の支承部片5,5´間に、中央部片12aと該中央部片12aの長手方向の両端に相対設した一対の脚部片12b,12bとで成る揺動枠12の脚部片12b,12bを係合し、該脚部片12bに設けた透孔13と前記支承部片5,5´に設けた透孔14とねじ孔15を一致させ、外側の支承部片5´に設けた透孔14側からこれら各孔に軸ボルト16を挿通させて、その先端を内側のねじ孔15に螺合するようにして、揺動枠12を前記基盤4に揺動自在に枢着してある。
【0012】
揺動枠12は、前記中央部片12aの中央に設けた第三螺子孔17を備え、該第三螺子孔17に袋ナット頭部形状の頭部を設けて押圧部1aとした前記傾斜ボルト1を、中央部片12aの外側から螺合し、前記押圧部1aがレールRの頭部Raの下面を接離するようにしてある。
【0013】
なお、傾斜ボルト1は、揺動枠12の軸ボルト16を軸とした揺動により容易に傾斜し、先端の押圧部1aがレール頭部Ra下面を押圧してレールRを押し上げる。
【0014】
図示は、本発明に係る装置を現場施工時に適用する例を示すが、工場内で使用しても必ずしも不都合はない。従って、図示の場合は、固定体6はコンクリート製枕木で構成され、該固定体6に設けたねじ穴7は、レール締結時に押えバネなどを締付けるためのボルト用のねじ穴が利用される。そして、適宜選択された前記固定体6としての前記枕木に、該枕木上に載置したレールの端部の両側に該レールを対称軸として対称的に、接続する各レールRに角度形成具Aを配し、該形成具Aの基盤4を、貫通孔9を通じて固定体6(枕木)側に設けたねじ穴7に固着ボルト8を螺合して締め付けることにより固定体6に固着する。
【0015】
この状態でレールRを介して配した左右一対二組の各角度形成具Aの傾斜ボルト1を、適宜操作して頭部Raの下面に向けて前進させてこれを押圧させると、各レールRは接続部(溶接部)側の端部が部分的に持ち上げられ、レール端面R´は上面が開放状のV字形を描いて相対向し、その対向状態が意図通りのとき、横ボルト2を操作してレールR方向に前進させ、その先端をレールRの底部Rcの側面に圧接し、レールRを挟持させることによりレールの突き合わせ角度が形成され、所望の角度が保持され次段のテルミット溶接などの溶接作業に移行することができる。
【0016】
傾斜ボルト1の操作によりレールRの突き合わせ角度が形成されても、レールRにねじれが生じることがあるが、該ねじれは、レールRの両側に配した一対二組の角度形成具Aの傾斜ボルト1のレールRに対して進退させることによって行うことができる。もっとも、当該ねじれ状態をそのままにして、各角度形成具Aの縦ボルト3の適宜のものをレールRの底部Rcに圧接させることによっても、ねじれの解消を行うことができ、レールR,Rが所望通りの関係位置にあるときは、横ボルト2の操作を最終工程として角度形成操作を行えば良い。
【符号の説明】
【0017】
1 傾斜ボルト
2 横ボルト
3 縦ボルト
4 基盤
12 揺動枠
R レール
Ra 頭部
Rc 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレールを、端面を相対向させて配置し、該各レールの端部両側の、該レールを対称軸とした対称位置に、コンクリート製枕木等の固定体に固着した基盤をそれぞれ配置し、該基盤に揺動枠を横軸揺動自在に枢着し、該揺動枠に前記レールの頭部下面を押圧する傾斜ボルトを前記頭部下面に対して進退自在に設けると共に、前記基盤に前記レールの底部側面を押圧する横ボルトを前記レールの底部側面に対して進退自在に設けた、鉄道レール溶接時におけるレール突き合わせ部の溶接角度形成装置。
【請求項2】
基盤にレールの底部上面を押圧する縦ボルトを前記底部上面に対して進退自在に設けた、請求項1記載の鉄道レール溶接時におけるレール突き合わせ部の溶接角度形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106259(P2012−106259A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256877(P2010−256877)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(398024354)株式会社全溶 (2)
【出願人】(391030125)保線機器整備株式会社 (39)
【Fターム(参考)】