説明

鉄道模型の効果音発生装置

【課題】 低コストで、走行音の変化を忠実に再現する。
【解決手段】 鉄道車両模型が走行する少なくとも2つのレール部材80a、80bが、両者の間にギャップを有する状態に、ベース6c上に配置され、前記ギャップ付近を外して配置した枕木100、102を介してベース6cに固定されている。ギャップ付近にピエゾ素子16が配置され、鉄道車両模型が走行する際に発生する振動音を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道模型の効果音を発生する鉄道模型の効果音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道模型の効果音発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。この効果音発生装置では、車両の走行音、ブレーキに関する効果音等がROMに音声データとして記憶されている。鉄道車両模型の走行状態を制御するマスターコントローラの操作状態に応じた速度で、ROMの音声データを音声再生LSIが読み出し、D/A変換器でアナログ信号に変換して、スピーカに供給する。なお、特許文献1には開示されていないが、音声データとしては、実際の鉄道車両の走行音等を録音したものを使用する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−93754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、実際の走行音等に基づくものであるので、リアリティがある効果音を得ることができるが、鉄道車両模型の実際の走行状態や鉄道車両模型の物理的な特徴とは無関係に効果音を発生するので、おもしろみに欠ける。特に、鉄道車両模型の速度に応じた効果音の制御しか行っていないので、例えば鉄道模型の特定のレール上の位置付近で鉄道車両が近づいて来て、通過し、離れていくときに聞こえる走行音の変化を再現しようとしても、このような効果音を再現することはできないし、また、複数の鉄道車両模型が例えばレールのギャップ位置を通過していくごとに発生する音を再現することができない。また、特許文献1の技術では、音声データを記憶するROMや音声LSIやこれらを制御するCPU等が必要であり、コストが高くなり、鉄道模型の入門者が使用するような製品への搭載は困難であった。
【0005】
本発明は、低コストで、走行音の変化を忠実に再現することができる鉄道模型の効果音発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鉄道模型の効果音発生装置は、レールユニットを有している。レールユニットでは、鉄道車両模型が走行する少なくとも2つのレール部材が、両者の間にギャップを有する状態に、ベース上に配置されている。また、レールのギャップ付近を外して設けた枕木を介してレールが前記ベースに固定されている。枕木は、ベースと一体に構成することもできるし、ベースと別個に構成することもできる。前記ギャップ付近に振動音検出手段が配置され、前記鉄道車両模型が走行する際に発生する振動音を検出する。振動音音出手段としては、例えば圧電素子を使用することができる。
【0007】
本発明の他の態様の鉄道模型の効果音発生装置も、レールユニットを有している。このレールユニットでは、鉄道車両模型が走行するレールを、その長さ方向に沿って分割した複数のレール部材のうち少なくとも1つのレール部材がベース上に配置されている。前記少なくとも1つのレール部材は、それの一端部側で隣接する別のレール部材との間にギャップを有し、前記ギャップ付近を外して設けられた枕木を介して前記ベースに固定されている。前記ギャップ付近に振動音検出手段が配置され、前記鉄道車両模型が走行する際に発生する振動音を検出する。振動音音出手段としては、例えば圧電素子を使用することができる。
【0008】
これら両態様の鉄道模型の効果音発生装置では、鉄道車両模型が振動音検出手段に近づき、振動音検出手段の付近を通過し、離れていく際に発生する振動音を、振動音検出手段が検出するので、実際の鉄道車両が通過していく際に発生する音と同じように変化する音を検出することができる。特に、隣接するレール部材間にギャップを作り、その付近に振動音検出手段を配置しているので、レール部材間のギャップを鉄道車両模型が通過する際に発生する音は、実際の鉄道車両が実際のレールに存在するギャップを通過する際に発生する音に非常に類似したものとなる。しかも、ギャップ付近では、レール部材を支持する枕木を排除してあるので、レール部材は、鉄道車両模型の通過時に振動し、ギャップを通過する際に発生する音をリアルに再現することができる。更に、音声データを記憶するROMや、音声LSI等を使用していないので、コストを低減することができる。
【0009】
前記ギャップ付近を前記鉄道車両模型が走行する際の前記レールの振動状態を調整する振動調整手段を設けることができる。この調整手段としては、例えば、ギャップ付近の枕木を着脱自在に構成したり、前記ギャップ付近における前記枕木をレール部材の長さ方向に沿って移動可能としたりするものにできる。ギャップ付近のレールは、その近傍に枕木が存在していないので、片持ち梁状態となっている。そして、このギャップに近い位置にある枕木を抜いたり、枕木を移動することによって、片持ち梁状態が変化するので、この鉄道模型の効果音発生装置の使用者の好みに応じた効果音を発生することができる。
【0010】
前記振動音検出手段の出力信号の特定の周波数領域を強調するようにフィルタリングするフィルタ手段と、このフィルタ手段の出力信号を増幅して、前記レールのギャップ付近に配置されたスピーカに供給する増幅手段とを、具備することもできる。フィルタ手段は、例えば検出された振動音の例えば低音域を強調するようにすることができる。このように特定の周波数領域を強調した振動音を増幅手段で増幅してスピーカから出力するので、よりリアルな走行音を再現することができる。しかも、スピーカは、振動音検出手段の設置場所付近に配置してあるので、鉄道車両模型が近づき、離れているように変化する走行音を、その鉄道車両模型が近づき、離れていく場所の付近で聴くことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、低コストで、鉄道車両模型の走行状態に対応して変化する効果音を再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態の鉄道模型の効果音発生装置は、図1に示すような鉄道模型に実施されている。この鉄道模型は、例えば長方形状の基台2の一面上に、複数、例えば16個のレールユニットを組み合わせて、鉄道模型(図示せず)が走行するレール4を構成している。レールユニットには、直線用のレールユニット4aと、カーブ用のレールユニット4bと、センサレールユニット4cと、鉄橋センサレールユニット4dとがある。このレール4上を図示していない鉄道車両模型が、マスターコントローラ3の操作によって走行する。
【0013】
図2、図3に示すように、直線用のレールユニット4aは、直線状のベース6a上に、カーブ用のレールユニット4bは、円弧状のベース6b上に、それぞれ1対のレール部材8a、8a、8b、8bを有している。レール部材8a、8aは、ベース6aの幅方向に所定の間隔をおいて、かつベース6aの長さ方向に沿って配置されている。同様にレール部材8b、8bは、円弧状のベース6b上に、レール部材8a、8aと同じ間隔をベース6bの幅方向にあけてベース6bに沿ってカーブして配置されている。ベース6a、6bと各レール部材8a、8bとの間には、ベース6a、6bの長さ方向に沿って一定間隔で一列に配置された枕木10、10・・・が介在している。これら枕木10、10・・・は、ベース6a、6bと一体に構成されている。これら枕木10、10・・・の上面に各レール部材8a、8a、8b、8bそれぞれの両側に位置するように設けられている挟持部11、11・・・によって、レール部材8a、8a、8b、8bは、枕木10、10・・・に固定されている。
【0014】
センサレールユニット4cでは、ベース6aと同様なベース6c上に複数対、例えば2対のレール部材80a、80a、80b、80bが配置されている。レール部材80a、80aの間隔、レール部材80b、80bの間隔は、レール部材8a、8aの間隔、レール部材8b、8bの間隔と同一である。レール部材80a、80a、80b、80bは、ベース6cの長さ方向に沿って配置され、レール部材80aと80bとの間には、ギャップが形成されている。なお、センサレールユニット4cのレール部材80a、80aと直線状のレールユニット4aのレール部材8a、8aとの接合部には、ギャップは形成されていない。同様にセンサレールユニット4cのレール部材80a、80aと円弧状のレールユニット4bのレール部材8b、8bとの接合部間にも、ギャップは形成されていない。
【0015】
レール部材80a、80a、80b、80bのギャップ付近に振動音検出手段、例えば圧電素子、具体的にはピエゾ素子16が配置されている。例えば、センサレールユニット4cでは、ベース6cにおけるレール部材80a、80aと80b、80bとのギャップに対応する部分の厚さを薄くするために、この部分にベース6cの下側に開口した凹所18が形成されている。この凹所18底部にピエゾ素子16が取り付けられている。ピエゾ素子16は、鉄道車両模型がレール部材8a、8b、80a、80b上を走行する際に、凹所18の底部に生じた振動に応じた信号、例えば電圧を発生する。凹所18内にピエゾ素子16を配置することによって、鉄道車両模型が実際に発生する振動音を良好に集音することができ、また、基台2を介して伝達される振動の影響を除去できる。
【0016】
レール部材80a、80a、80b、80bとベース6cとの間にも、枕木100、100・・・が一定間隔で配置されている。これら枕木100も、枕木10と同様に、ベース6cと一体に構成されている。但し、レール部材80a、80aと80b、80bとのギャップの両側に位置する複数の枕木102、102は、ベース6cとは別個に形成されており、ベース6c上に枕木100、102の両外側にそれぞれ位置するように設けられた固定部120に固定手段、例えば釘140によって固定されている。レール部材80a、80bは、枕木100、102には、レール部材8a、8bが枕木10に固定されていたのと同様に、枕木100、102上に設けた挟持部11によって固定されている。
【0017】
釘140を抜くことによって、破線で示すように、ギャップの両側にそれぞれ位置する複数の枕木102を除去することが可能である。即ち、枕木102はベース6cに対して着脱自在に設けられている。このようにギャップの両側に位置する枕木102をギャップに近いものから除去することによって、レール部材80a、80a、80b、80bのギャップの両側に位置する、枕木102によって固定されていない部分が、片持ち梁状態となり、鉄道車両模型が、この上を走行する際に自由振動し、ピエゾ素子16で検出される振動音の低音域が強調されたものとなり、実際のレール上を実際の鉄道車両が走行している状態に近い音となる。
【0018】
また、取り外した枕木102の数によって、ピエゾ素子16によって検出される振動音の周波数特性が変化する。従って、枕木102を着脱自在に構成しているので、この効果音発生装置の使用者の好みの振動音が検出されるように、取り外す枕木102の本数を任意に変更できる。枕木102を着脱自在とすることによって振動調整手段が構成されている。
【0019】
或いは、着脱自在な複数の枕木102を除去し、その代わりに、ギャップの両側の枕木102を設けていた区間に、レール部材80a、80bの長さ方向に沿って移動可能に複数の枕木を設け、これら位置を変更可能な枕木の間隔を調整して、レール部材80a、80a、80b、80bの振動状態を変化させて、使用者の好みの振動音を検出するようにすることもできる。このように枕木を移動可能に構成することによっても振動調整手段を構成できる。
【0020】
ピエゾ素子16で集音された振動音は、図1に示すように、センサレールユニット4cの近傍に配置された放音システム20に供給されている。放音システム20は、図4に示すように、ピエゾ素子16で集音された振動音は、整形部22によって波形整形された後、フィルタ手段、例えばイコライザとして機能する低音調整部24及び高音調整部26によって、例えば低音が強調されるように周波数特性がそれぞれ調整された後、増幅手段、例えばパワーアンプ28によって電力増幅され、スピーカ30から放音される。
【0021】
鉄道車両模型が、レール4上を走行しているとき、この走行による振動音がピエゾ素子16で検出される。ピエゾ素子16から離れた位置を鉄道車両模型が走行している場合には、ピエゾ素子16で検出される振動音も小さく、鉄道車両模型がピエゾ素子16に近づいてくると、検出される振動音も大きくなる。そして、鉄道車両模型がピエゾ素子16上を通過しているとき、検出される振動音も最大になる。しかも、鉄道車両模型が複数台連結されてい場合には、各鉄道車両模型の車輪がギャップを通過するごとに、実際の鉄道車両が実際のレールのギャップを通過する際に発生する音に似た振動音が発生し、この振動音がピエゾ素子16によって検出される。従って、鉄道車両模型の台数、車輪の位置、数に応じて発生する振動音が検出される。また、複数の鉄道模型車両の中間にある鉄道模型車両がギャップの部分を通過している際、既にギャップを通過して離れた位置にある先頭側の鉄道車両模型が発生する振動音もピエゾ素子16で検出される。従って、鉄道車両模型の走行状態に応じた効果音を、レール部材80a、80bのギャップ付近で聴いているのに近似した振動音を検出することができる。また、上述したようにレール部材80a、80aと80b、80bとのギャップの両側の枕木102を除去して、レール部材80a、80a、80b、80bのギャップの両側の部分を自由振動するように構成しているので、実際の鉄道車両がレールのギャップ上を走行していく状態で発生する音に更に近似させた振動音を検出できる。
【0022】
検出された振動音は、レール部材80a、80aと80b、80bとのギャップ付近に配置されている放音システム20の低音調整部24及び高音調整部26によって低音が強調されるように周波数特性が調整されて、スピーカ30から放音されるので、実際の鉄道車両がレールのギャップに近づいて、通過し、遠ざかっていく際に発生する音に、より近い音を、この効果音発生装置の使用者が、レール部材80a、80aと80b、80bとのギャップの付近で聴くことができる。しかも、この走行音は、走行している鉄道車両模型が複数台の場合、各鉄道車両模型の車輪がギャップ上を通過するごとに、実際の鉄道車両がレールのギャップを通過する際に発生する音に類似した音を発生し、鉄道車両模型の台数に対応した走行音を発生する。
【0023】
図5に示すように、鉄橋センサレールユニット4dは、センサレールユニット4cとほぼ同様に構成されている。即ち、鉄橋センサレールユニット4dは、ベース6dを有し、レールセンサ4cのレール部材80a、80a、80b、80bと同様に、レール部材82a、82a、82b、82bが両者の間にギャップを形成するように配置され、ベース6dと一体に形成された枕木110、110・・・を介してベース6d上に設けられている。レール部材82a、82a、82b、82bは、枕木110には挟持部11によって固定されている。レール部材82a、82aと82b、82bとのギャップの両側には複数の枕木112が設けられている。枕木112は、枕木102と同様にベース6dと別個に形成され、ベース6dに対して着脱自在に設けられており、そのうちギャップの近いものから所定の本数が除去されている。なお、上述したのと同様に、着脱自在の枕木112に代えて、ギャップの両側にレール部材82a、82bの長さ方向に沿って移動可能な複数の枕木を設けることもできる。
【0024】
ギャップの下方に凹所180が形成され、その凹所180の底に、音検出手段として例えばピエゾ素子160が配置されている。レール部材82a、82bの両側には、トラス構造部32が設けられている。トラス構造部32は、例えば合成樹脂製である。ベース6dの両端は、橋脚部34、34によって基台2に固定されている。図5では図示を省略したが、基台2上に立てられた橋脚34、34上で、隣接するレールユニットと接合されている。
【0025】
図1に示すように、鉄橋センサレールユニット4dのピエゾ素子160で検出された振動音は、鉄橋センサレールユニット4dの近傍に配置された放音システム20aに供給されている。放音システム20aは、図6に示すように、整形部22a、低音調整部24a、高音調整部26、パワーアンプ28a、スピーカ30aを有し、これらの構成は、放音システム20の整形部22、低音調整部24、高音調整部26、パワーアンプ28、スピーカ30と同様である。従って、センサレールユニット4c上を鉄道車両模型が通過していく際には、放音システム20と同様な走行音をスピーカ30aから放音することができる。
【0026】
但し、鉄道車両が実際に鉄橋を通過する際に発生する走行音は、金属製のトラス構造部上を通過していくので、レール上を鉄道車両が通過する際に発生する走行音に、様々の周波数成分が含まれ、複雑な音響効果が付与されている。しかし、鉄道車両模型が合成樹脂製のトラス構造部32上を通過しても、このような複雑な音響効果は付与されない。そこで、整形部22aで整形された振動音に、全周波数域に広がるノイズ、例えばホワイトノイズを生成するホワイトノイズ生成手段、例えばホワイトノイズ生成部36が生成したホワイトノイズを、合成手段、例えば合成部38によって合成している。ホワイトノイズは様々な周波数成分を有するが、そのレベルは一定であるので、単にホワイトノイズを合成しただけでは、鉄道車両がトラス構造部32を通過している際に付与される音響効果を付与することはできない。そこで、整形部22aからの振動音をエンベロープ検出手段、例えばエンベロープ検出部40に供給して、振動音のエンベロープを検出し、この検出されたエンベロープとホワイトノイズとを、エンベロープ付与手段、例えばエンベロープ付与部42に供給することによって、ホワイトノイズに振動音のエンベロープを付与し、振動音のエンベロープが付与されたホワイトノイズを合成部38に供給している。
【0027】
従って、鉄道車両模型が鉄橋センサレールユニット4dから離れた場所を走行しているときには、エンベロープ検出部40で検出される振動音のエンベロープの値は小さいので、エンベロープ付与部42から合成部38に供給されるホワイトノイズのレベルも小さい。鉄道車両模型が鉄橋センサレールユニット4dに近づくにつれて、エンベロープ検出部40で検出される振動音のエンベロープの値も大きくなり、鉄橋センサレールユニット4d上を通過しているとき、振動音のエンベロープの値は最大となり、鉄橋センサレールユニット4dを鉄道車両模型が離れて行くに従って振動音のエンベロープの値も小さくなっていく。この振動音のエンベロープの変化に従ってエンベロープ付与部42からのホワイトノイズのレベルも変化する。また、レール部材82a、82b間のギャップを鉄道車両模型の車輪が通過するとき、振動音のエンベロープが変化するが、この変化に追従してホワイトノイズのエンベロープも変化する。
【0028】
このように、鉄道車両模型の走行に忠実に従って発生する走行音に、レベルが鉄道車両模型の走行に忠実に従って変化するホワイトノイズが付加されているので、鉄道車両が鉄橋上を走行している際に発生する走行音に近似した走行音を、放音システム20aのスピーカ30aから放音することができる。
【0029】
レール部材80a、80b間のギャップ及びレール部材82a、82b間のギャップは、鉄道車両が通過する際に自由振動が可能な程度の大きさであって、かつ鉄道車両模型の車輪が脱輪しない程度の大きさに設定されている。Nゲージの場合、線路幅が9mmで、鉄道模型全体の縮尺は1/148乃至1/160であるが、この場合、ギャップとしては、1乃至2mmに設定されている。
【0030】
鉄道車両模型は、マスターコントローラ3から流れ、レール4を流れマスターコントローラ3に戻る電流を駆動源として走行するので、同一のレール4のレイアウトにおいて、センサユニット4cや鉄橋センサユニット4dのようにギャップを備えたレールユニットが単数だけ存在する場合には、ギャップ上を通過する鉄道車両模型の車輪を介してギャップの両側に位置するレール部材に電流を流すことができるが、ギャップを備えたレールユニットが複数存在する場合には、ギャップを備える1つのレールユニットを鉄道車両模型が通過していても、ギャップを有する他のレールユニットで電流の通過が阻止され、鉄道車両模型を走行させることができない。そこで、ギャップを有する各レールユニット内にギャップをバイパスして電流を流すバイパス回路が設けられている。
【0031】
上記の実施形態のセンサレールユニット4cや鉄橋センサユニット4dでは、1つのベース6c、6d上に設けたレール部材80a、80bの間、レール部材82a、82bの間にギャップをそれぞれ形成したが、図7に示すように、隣接して配置される2つのレールユニット4e、4fのベース6e、6f上の1対のレール部材84a、84a、84b、84b間にギャップを形成することもできる。通常には、レール部材84a、84a、84b、84bは、ベース6c、6dの長さに等しい長さに形成するが、センサユニットとして例えばレールユニット4e側を使用する場合、レールユニット4eのレール部材84a、84aの長さ寸法をベース6eの長さ寸法よりも短く形成し、ベース6eにおけるベース6fと接合される端部側で、レール部材84b、84bとの間にギャップが形成されるようにレール部材84a、84aを配置する。ベース6eの下部に、上記の実施形態と同様に凹所182を形成し、その内部にピエゾ素子162が配置される。鉄橋センサユニットとして使用する場合には、ベース6eの両側にトラス構造部を配置し、このピエゾ素子162の出力を放音システム20aに供給する。また、レール部材84a、84a、84b、84bは、枕木112、114に固定されているが、レールユニット6eの枕木112のうちギャップの近傍の1つまたは複数のものは、上記の実施形態で説明したのと同様に、着脱自在またはレール部材84a、84aの長さ方向に沿って移動可能に構成されている。
【0032】
上記の実施形態では、センサレールユニット4c及び鉄橋センサレールユニット4dは、直線用レールユニット4aと同様に直線状のレール部材80a、80a、80b、80b、82a、82a、82b、82bを有するものとしたが、カーブ用レールユニット4bと同様に湾曲した2対のレール部材を使用することもできる。但し、それら2対のレール部材間にギャップを形成するように配置し、そのギャップの下方にピエゾ素子16、160を設ける。
【0033】
上記の実施形態では、振動音検出手段として、圧力が加わると電圧を発生するピエゾ素子16、160を使用したが、インピーダンスが変化する素子と、この素子と例えば抵抗器とを直流電源の間に直列に接続したものを振動音検出手段として使用することもできる。また、上記の実施形態では、ピエゾ素子16、160は、センサレールユニット4c、鉄橋センサレールユニット4dそれぞれに1つずつ設けたが、ベース6c、6dの長さ方向に沿って異なる複数の位置にそれぞれピエゾ素子を設け、これらによって検出された振動音を合成して、放音システム20、20aに供給することもできる。この場合、使用するピエゾ素子16、160の大きさを異なるものとすると、検出された振動音の周波数特性がピエゾ素子ごとに異なったものとなるので、よりリアルな走行音を得ることができる。
【0034】
また、上記の実施形態では、センサレールユニット4c、鉄橋センサレールユニット4dでは、2対のレール部材80a、80a、80b、80b、82a、82a、82b、82bを使用したが、3対以上のレール部材を使用することもできる。この場合、隣接するレール部材との間にはギャップを形成することが望ましい。また、これらギャップに対応するように、上記の実施形態と同様にピエゾ素子を設けることができる。
【0035】
上記の実施形態では、放音システム20、20aにおいて低音調整部24及び高音調整部26を設けたが、いずれか一方のみを設けることもできるし、両方とも除去することもできる。
【0036】
上記の実施形態のセンサユニット4cでは、枕木102を着脱自在にするために釘140を用いたが、これに限ったものではなく、枕木102を着脱自在にするための構成は種々のものを使用することができる。例えば固定部120に対して各枕木102を着脱自在に設けておき、そのうち所望のものを取り除くようにしてもよい。鉄橋レールユニットにおいても、同様に行える。
【0037】
また、上記の実施形態では、鉄橋センサレールユニット4dでの音検出手段としてピエゾ素子のような感圧素子を使用したが、例えばマイクロホン等の集音手段を使用することもできる。
【0038】
また、放音システム20aは、ピエゾ素子160の検出信号に基づいて走行音を発生したが、ピエゾ素子160の検出信号を用いずに、走行音を生成し、これに、ピエゾ素子160の検出信号のエンベロープをホワイトノイズに付与したものを付加して鉄橋走行音として出力することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の1実施形態の効果音発生装置を実施した鉄道模型の平面図である。
【図2】図1の効果音発生装置で使用するセンサレールユニットの側面図である。
【図3】図2のセンサレールの平面図である。
【図4】図2のセンサレールユニットと共に使用するサウンドシステムのブロック図である。
【図5】図1の効果音発生装置で使用する鉄橋センサレールユニットの側面図である。
【図6】図5の鉄橋センサレールユニットと共に使用するサウンドシステムのブロック図である。
【図7】図2及び図3のセンサレールユニットの変形例の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
4c センサレールユニット
6c ベース
16 ピエゾ素子(振動音検出手段)
24 低音調整部(フィルタ手段)
26 高音調整部(フィルタ手段)
82a、82b レール部材
102 枕木(振動調整手段)
140 釘(振動調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両模型が走行する少なくとも2つのレール部材が、両者の間にギャップを有する状態にベース上に配置され、各前記レール部材が、前記ギャップ付近を外して設けられた枕木を介して前記ベースに固定されたレールユニットと、
前記ギャップ付近に配置され、前記鉄道車両模型が走行する際に発生する振動音を検出する振動音検出手段とを、
具備する鉄道模型の効果音発生装置。
【請求項2】
鉄道車両模型が走行するレールを、その長さ方向に沿って分割した複数のレール部材のうち少なくとも1つのレール部材がベース上に配置され、前記少なくとも1つのレール部材は、それの一端部側で隣接する別のレール部材との間にギャップを有し、前記ギャップ付近を外して設けられた枕木を介して前記ベースに固定されたレールユニットと、
前記ギャップ付近に配置され、前記鉄道車両模型が走行する際に発生する振動音を検出する振動音検出手段とを、
具備する鉄道模型の効果音発生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の鉄道模型の効果音発生装置において、前記ギャップ付近を前記鉄道車両模型が走行する際の前記レールの振動状態を調整する振動調整手段を設けた鉄道模型の効果音発生装置。
【請求項4】
請求項3記載の鉄道模型の効果音発生装置において、前記振動調整手段は、前記ギャップ付近における前記枕木を着脱自在に構成したものである鉄道模型の効果音発生装置。
【請求項5】
請求項3記載の鉄道模型の効果音発生装置において、前記振動調整手段は、前記ギャップ付近における前記枕木がレール部材の長さ方向に沿って移動可能としたものである鉄道模型の効果音発生装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の鉄道模型の効果音発生装置において、前記振動音検出手段の出力信号の特定の周波数領域を強調するようにフィルタリングするフィルタ手段と、このフィルタ手段の出力信号を増幅して、前記レールのギャップ付近に配置されたスピーカに供給する増幅手段とを、具備する鉄道模型の効果音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−11912(P2010−11912A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172262(P2008−172262)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】