鉄道模型の室内灯セットにおける照明板
【課題】模型車輌の車体内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することの可能な鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を提供する。
【解決手段】鉄道模型の室内灯セットにおける照明板10は、上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を乱反射させる反射発光層11を形成するとともに、入光面10iの形成された一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて、反射発光層11によって乱反射する光量を増大させるべく、反射発光層11の面積を漸増させる態様で形成した。
【解決手段】鉄道模型の室内灯セットにおける照明板10は、上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を乱反射させる反射発光層11を形成するとともに、入光面10iの形成された一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて、反射発光層11によって乱反射する光量を増大させるべく、反射発光層11の面積を漸増させる態様で形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、詳しくは、模型車輌の車内に装着される室内灯セットの構成部材である照明板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型における実感を高める手法の1つとして、車輌の前照灯や尾灯を点灯させたり、あるいは車輌(客車)の室内灯を点灯させることが行われ、特に車体の内部を照明することにより、夜行列車のムード等が効果的に再現され、夜景に一層の臨場感を付与することができる。
【0003】
上述の如き臨場感の付与を目的として、模型車輌の室内を照明する“室内灯セット”が従来より提供されており、この“室内灯セット”は、LED等の光源を実装した基板を有するライトユニットと、上記光源からの光によって車内の全域を照明するための照明板とを具備している(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
上記照明板は、透光性を有するアクリル樹脂等の透明材料から成る部材であり、車体のほぼ全長に亘って延在する帯板状を呈し、車体内部における天井側に取り付けられている。
【0005】
また、上記照明板における一方の端部には入光面が形成され、この入光面から導入された上記光源の光は、照明板における上面(反射面)と下面(出光面)との、相対向する板鏡面で臨界全反射を繰り返すことにより、上記照明板における他方の端部にまで伝達され、このとき、照明板における下面(出光面)からの発光によって、車体の内部が前後方向の全域に亘って照明されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社積水金属の鉄道模型のカタログ 「KATO Nゲージ・HOゲージ鉄道模型カタログ 2011」 137頁、220頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した如き従来の“室内灯セット”において、照明板の入光面から導入された光源の光は、上記照明板の他方の端部にまで伝達される間に、「光量は光源からの距離の2乗に反比例する」という、“逆2乗の法則”に則って減衰することは避けられない。
【0008】
このため、上記照明板における上記ライトユニット(光源)に対向した一方の端部側の下面(出光面)からの発光量に対して、上記照明板における他方の端部側の下面(出光面)からの発光量が落ちるために、車体の内部を前後方向の全域に亘って均一の光量で照明することができず、車内の明るさが部分的に変化してしまう不都合があった。
【0009】
本願発明の目的は、上述の如き実状に鑑みて、模型車輌の車体内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することの可能な、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するべく、本件出願に係る第1の発明は、光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を乱反射させる反射発光層を形成するとともに、入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、反射発光層によって乱反射する光量を増大させるべく、反射発光層の面積を漸増させる態様で形成したことを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成するべく、本件出願に係る第2の発明は、光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、上面の長手方向に沿って、内部を伝達する光を下方へ反射投光させる複数のV状溝を並列に形成するとともに、入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、複数のV状溝によって反射投光される光量を指数関数的に漸増させるべく、複数のV状溝における隣り合うV状溝との間隔を、他方の端部側から指数関数的に漸増させる態様で形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板によれば、一方の端部における入光面から導入された光源の光は、他方の端部に伝達されるまでの間に減衰するものの、上面に形成した反射発光層によって乱反射する光量が、一方の端部から他方の端部に向けて増大することにより、照明板から出光される光量は照明板の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することができる。
【0013】
また、第2の発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板によれば、一方の端部における入光面から導入された光源の光は、他方の端部に伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面に形成した複数のV状溝によって反射投光される光量が、一方の端部から他方の端部に向けて指数関数的に増大することにより、照明板から出光される光量は照明板の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを採用して成る鉄道模型の車輌を示す分解斜視図。
【図2】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを装着して成る鉄道模型の車輌を示す断面側面図。
【図3】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを示す全体斜視図。
【図4】(a)、(b)および(c)は、第1の発明に係る照明板を示す平面図、側面図および端面図。
【図5】(a)、(b)および(c)は、第1の発明に係る照明板の他の実施例を示す平面図、側面図および端面図。
【図6】(a)および(b)は、図5の照明板に形成された反射発光層を概念的に示した平面図および側面図。
【図7】図6に示した照明板の反射発光層における平面形状の座標値を列記した表1。
【図8】(a)は第1の発明に係る照明板の更に他の実施例を示す平面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく端面図、(d)は(a)中のd−d線断面図。
【図9】(a)、(b)および(c)は、第2の発明に係る照明板を示す平面図、側面図および端面図。
【図10】(a)および(b)は、図9の照明板の要部を拡大して示す平面図および側面図。
【図11】(a)および(b)は、図9の照明板に形成されたV状溝を概念的に示した平面図および側面図。
【図12】図11に示した照明板のV状溝における形成位置を列記した表2。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を、幾つかの実施例を示す図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1および図2は、本願発明に係る室内灯セットの照明板を、通勤型電車の模型車輌に装着される室内灯セットに適用した一実施例を示しており、この模型車輌1は、前後の台車2、2が取り付けられた床板3の上部に、実物車輌の外観を模した樹脂成型品の車体4が組み付けられ、この車体4の内部には室内灯セット5が設置されている。
【0017】
上記室内灯セット5は、図1〜図3に示す如く、ライトユニット6と照明板10とを具備して成り、上記ライトユニット6は、ホルダ6Hに基板6Bが保持され、この基板6Bには、レール(図示せず)からの給電により駆動する白色LED(光源)6Lが実装されている。
【0018】
一方、上記室内灯セット5を構成する照明板10は、透光材料の1つであるアクリル樹脂から形成された部材であり、車体4の前後方向に沿って延在する帯板状を呈し、図2に示す如く上記車体4の内部における天井側に取り付けられている。
【0019】
図3および図4に示す如く、上記照明板10における一方の端部10Aには、入光面10iが形成されているとともに、左右の側縁にはフランジ10fと複数の係止爪10p、10p…とが形成され、これらの係止爪10pを介して車体4の内部に取り付けられた状態において、上記照明板10の入光面10iはライトユニット6の白色LED(光源)6Lと相対している。
【0020】
なお、他方の端部10Bにおける下面10uには、幅方向に延びる複数のノッチ10n、10n…が形成されており、選択した1つのノッチ10nで照明板10を折り割ることにより、車体長に合わせて照明板10の長さを調整し得ることは言うまでもない。
【0021】
上述した如く、車体4の内部に取り付けられた照明板10に対して、図4中の矢印Iで示す如く、入光面10iから導入された白色LED(光源)6Lの光は、照明板10における上面(反射面)10uと下面(出光面)10lとの、相対向する板鏡面で臨界全反射を繰り返すことにより、上記照明板10における他方の端部10Bにまで伝達され、照明板10における下面(出光面)10lの発光により、車体4の内部が前後方向の全域に亘って照明されることとなる。
【0022】
因みに、上記照明板10における上面(反射面)10u、下面(出光面)10l、および入光面10iは、それぞれ“反射効率”、“出光効率”および“入光効率”の向上を目的として“鏡面仕上げ”が為されている。
【0023】
ここで、図3および図4に示す如く、照明板10における上面10uには、上記照明板10の内部を伝達している白色LED(光源)6Lからの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜11によって形成されている。
【0024】
上記塗膜(反射発光層)11は、照明板10の全長に亘って形成されているとともに、照明板10における一方の端部10A(入光面10i)から他方の端部10B(終端面10e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0025】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)11は、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて拡幅する三角形状を呈しており、照明板10の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、長手方向における左右の外形線10o、10oは、それぞれ直線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)11によって乱反射する光量は、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて一次関数的に漸増することとなる。
【0026】
上述した如き実施例の照明板10によれば、一方の端部10Aにおける入光面10iから導入された白色LED(光源)6Lの光は、他方の端部10Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面10uに形成した塗膜(反射発光層)11によって乱反射する光量が、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて増大することにより、照明板10における下面(出光面)10lから出光される光量は、上記照明板10の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って均等化することが可能となる。
【0027】
図5に示した照明板20は、本願発明に係る照明板の他の実施例であり、この照明板20における基本的な構成は、後述する塗膜(反射発光層)21の形状以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。よって、上記照明板10と同様の作用を為す構成要素には、10を加算した20番台の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0028】
図5に示す如く、照明板20における上面20uには、上記照明板20の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜21により形成されている。
【0029】
上記塗膜(反射発光層)21は、照明板20の全長に亘って形成されているとともに、照明板20における一方の端部20A(入光面20i)から他方の端部20B(終端面20e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0030】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)21は、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて拡幅する略三角形状を呈しており、照明板10の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、長手方向における左右の外形線20o、20oは、それぞれ指数関数的曲線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)21によって乱反射する光量は、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて指数関数的に漸増することとなる。
【0031】
図6は、上述した照明板20の概念モデルを示しており、この照明板20のモデルの外形寸法は、全長113mm、幅11mm、厚さ2.8mmであり、入光面20iから10.6mmまでは塗膜(反射発光層)21を不用とし、他方の端部20B(終端面20e)を基点として、一方の端部20Aにおける入光面20iに向かって収束する塗膜(反射発光層)21を形成し、この塗膜(反射発光層)21における左右の外形線20o、20oを指数関数的曲線で描いている。
【0032】
図7の“表1”は、図6に示した照明板20の概念モデルにおける平面形状の座標値を列記したもので、個々のパターン座標位置は、終端面20eの基点(0)から入光面20iに向かって0.1mm単位の指数関数d2で加算する間隔とし、その間隔毎の曲線変化分を0.2mmとして算出したものである。
【0033】
上述した如き実施例の照明板20によれば、一方の端部20Aにおける入光面20iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部20Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面20uに形成した塗膜(反射発光層)21によって乱反射する光量が、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて指数関数的に増大することにより、照明板20における下面(出光面)20lから出光される光量は、上記照明板20の全長に亘って平均化されることとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘り極めて均等なものとすることが可能となる。
【0034】
図8に示した照明板30は、本願発明に係る照明板の更に他の実施例であり、この照明板30における基本的な構成は、後述する塗膜(反射発光層)31の形状、および複数のスリット30s、30s…が形成されている以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。よって、上記照明板10と同様の作用を為す構成要素には、20を加算した30番台の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0035】
図8に示す如く、照明板30における左右の側縁部には、それぞれ照明板30の長手方向に延びる複数個(実施例では片側5箇所)のスリット30s、30s…が形成されており、上記照明板30の内部を伝搬している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光の一部が、上記スリット30sの内周面から出光することで、これらスリット30s、30s…によって直管蛍光灯が擬似的に表現されることとなる。
【0036】
また、照明板30における上面30uには、上記照明板30の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜31により形成されている。
【0037】
上記塗膜(反射発光層)31は、照明板30の全長に亘って形成されているとともに、照明板30における一方の端部30A(入光面30i)から他方の端部30B(終端面30e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0038】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)31は、一方の端部30Aから一定の幅で他方の端部30Bに向けて延び、他方の端部30Bにおいて拡幅する形状を呈しており、照明板30の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、他方の端部30Bにおける左右の外形線30o、30oは、それぞれ指数関数的曲線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)31によって乱反射する光量は、他方の端部30Bにおいて指数関数的に漸増することとなる。
【0039】
上述した如き実施例の照明板30によれば、一方の端部30Aにおける入光面30iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部30Bに伝達されるまでの間に減衰するものの、上面30uに形成した塗膜(反射発光層)31によって乱反射する光量が、特に他方の端部30Bにおいて指数関数的に増大することにより、照明板30における下面(出光面)30lから出光される光量は、上記照明板30の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って均等なものとすることが可能となる。
【0040】
なお、上述した如く、直管蛍光灯を擬似的に表現することを目的として、照明板30における左右の側縁部に、それぞれスリット30s、30s…を形成する構成は、図4に示した如く塗膜(反射発光層)11の外形線11oを直線とした照明板10や、図5に示した如く塗膜(反射発光層)21の外形線21oを指数関数的曲線とした照明板20においても、極めて有効に採用し得ることは言うまでもない。
【0041】
ここで、上面に反射発光層を形成することを共通の特徴とした照明板10、照明板20、照明板30においては、何れも光の反射率等を考慮した上で、白色塗料の塗膜により反射発光層を形成しているが、設計の条件によっては白色以外の任意の色彩の塗料を用いて反射発光層を形成することも可能である。
【0042】
また、上述した実施例においては、何れも反射発光層の全面を白一色としているが、反射発光層の部分毎に異なる色彩を用いることにより、例えば、室内をコンパートメント毎に色分けしたり、窓毎に室内を色分けし得ることは言うまでもない。
【0043】
図9に示した照明板40は、本願発明に係る照明板の更に他の実施例であり、この照明板40における基本的な構成は、反射発光層に替えて後述する複数のV状溝40v、40v…が形成されている以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。
【0044】
照明板40における上面40uには、上記照明板40の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて反射投光させるための複数のV状溝40v、40v…が、照明板40の長手方向に沿って並列に形成されている。因みに、本実施例におけるV状溝40vの形状は、図10に示す如く、溝幅Wを1mm、深さDを0.5mm、傾斜角(反射角)を45°に施定されている。
【0045】
上記複数のV状溝40v、40v…は、照明板40における一方の端部40A(入光面40i)から他方の端部40B(終端面40e)に向けて、上記複数のV状溝40v、40v…によって反射投光される光量が、指数関数的に増大する態様で形成されている。
【0046】
具体的には、上記複数のV状溝40v、40v…を、隣り合うV状溝40vとV状溝40vsの間隔が、他方の端部40B(終端面40e)側から、指数関数的に漸増する態様で形成しており、このため複数のV状溝40v、40v…によって下方へ反射投光される光量は、一方の端部40Aから他方の端部40Bに向けて指数関数的に漸増することとなる。
【0047】
図11は、上述した照明板40の概念モデルを示しており、この照明板40のモデルの外形寸法は、全長113mm、幅11mm、厚さ2.8mmであり、V状溝40vの形状は、溝幅1mm、深さ0.5mm、傾斜角(反射角)45°とした。
【0048】
図12の“表2”は、図11に示した照明板40の概念モデルにおけるV状溝40vの形成位置を列記したもので、個々のV状溝40vの形成位置は、終端面40eの基点(0)から0.1mmを単位とし、指数関数d2で加算するピッチを算出したものである。因みに、入光面40iから10.6mmまではV状溝40vを不用とした一方、終端面40eから2.5mmまでは複数のV状溝40vを形成できない領域となる。
【0049】
上述した如き実施例の照明板40によれば、一方の端部40Aにおける入光面40iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部40Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面40uに形成した複数のV状溝40v、40v…によって下方へ反射投光される光量が、一方の端部40Aから他方の端部40Bに向けて指数関数的に増大することにより、照明板40における下面(出光面)40lから出光される光量は、上記照明板40の全長に亘って平均化されることとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って極めて均等なものとすることが可能となる。
【0050】
なお、上述した各々の実施例においては、照明板を透光材料の1つであるアクリル樹脂から形成しているが、照明板としての十全な透明度を備えた材料であれば、例えば、ポリカーボネート等の様々な材料を用いることによって、照明板を形成し得ることは言うまでもない。
【0051】
また、上述した各実施例においては、白色蛍光灯の色調を再現するべく、光源として白色LEDを採用しているが、電球色の室内灯の色調を再現することを目的として、橙色系のLEDや電球を光源に採用し得ることは勿論である。
【0052】
さらに、本願発明は「鉄道模型の室内灯セットにおける照明板」を対象とし、各実施例においても車輌の室内灯セットにおける照明板について開示しているが、本願発明に係る照明板を具備して成る室内灯セットを、例えば駅舎、住居、ビルディング等の、様々なストラクチャーの室内照明を再現するオプションパーツとして、極めて有効に使用し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1…模型車輌、
2…台車、
3…床板、
4…車体、
5…室内灯セット、
6…ライトユニット、
6L…白色LED(光源)、
10、20、30…照明板、
10A、20A、30A…一方の端部、
10B、20B、30B…他方の端部、
10u、20u、30u…上面、
10l、20l、30l…下面、
10i、20i、30i…入光面、
11、21、31…塗膜(反射発光層)、
11o、21o、31o…外形線、
30s…スリット、
40…照明板、
40A…一方の端部、
40B…他方の端部、
40u…上面、
40l…下面、
40i…入光面、
40v…V状溝。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、詳しくは、模型車輌の車内に装着される室内灯セットの構成部材である照明板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型における実感を高める手法の1つとして、車輌の前照灯や尾灯を点灯させたり、あるいは車輌(客車)の室内灯を点灯させることが行われ、特に車体の内部を照明することにより、夜行列車のムード等が効果的に再現され、夜景に一層の臨場感を付与することができる。
【0003】
上述の如き臨場感の付与を目的として、模型車輌の室内を照明する“室内灯セット”が従来より提供されており、この“室内灯セット”は、LED等の光源を実装した基板を有するライトユニットと、上記光源からの光によって車内の全域を照明するための照明板とを具備している(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
上記照明板は、透光性を有するアクリル樹脂等の透明材料から成る部材であり、車体のほぼ全長に亘って延在する帯板状を呈し、車体内部における天井側に取り付けられている。
【0005】
また、上記照明板における一方の端部には入光面が形成され、この入光面から導入された上記光源の光は、照明板における上面(反射面)と下面(出光面)との、相対向する板鏡面で臨界全反射を繰り返すことにより、上記照明板における他方の端部にまで伝達され、このとき、照明板における下面(出光面)からの発光によって、車体の内部が前後方向の全域に亘って照明されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社積水金属の鉄道模型のカタログ 「KATO Nゲージ・HOゲージ鉄道模型カタログ 2011」 137頁、220頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した如き従来の“室内灯セット”において、照明板の入光面から導入された光源の光は、上記照明板の他方の端部にまで伝達される間に、「光量は光源からの距離の2乗に反比例する」という、“逆2乗の法則”に則って減衰することは避けられない。
【0008】
このため、上記照明板における上記ライトユニット(光源)に対向した一方の端部側の下面(出光面)からの発光量に対して、上記照明板における他方の端部側の下面(出光面)からの発光量が落ちるために、車体の内部を前後方向の全域に亘って均一の光量で照明することができず、車内の明るさが部分的に変化してしまう不都合があった。
【0009】
本願発明の目的は、上述の如き実状に鑑みて、模型車輌の車体内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することの可能な、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するべく、本件出願に係る第1の発明は、光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を乱反射させる反射発光層を形成するとともに、入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、反射発光層によって乱反射する光量を増大させるべく、反射発光層の面積を漸増させる態様で形成したことを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成するべく、本件出願に係る第2の発明は、光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を対象とし、上面の長手方向に沿って、内部を伝達する光を下方へ反射投光させる複数のV状溝を並列に形成するとともに、入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、複数のV状溝によって反射投光される光量を指数関数的に漸増させるべく、複数のV状溝における隣り合うV状溝との間隔を、他方の端部側から指数関数的に漸増させる態様で形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板によれば、一方の端部における入光面から導入された光源の光は、他方の端部に伝達されるまでの間に減衰するものの、上面に形成した反射発光層によって乱反射する光量が、一方の端部から他方の端部に向けて増大することにより、照明板から出光される光量は照明板の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することができる。
【0013】
また、第2の発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板によれば、一方の端部における入光面から導入された光源の光は、他方の端部に伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面に形成した複数のV状溝によって反射投光される光量が、一方の端部から他方の端部に向けて指数関数的に増大することにより、照明板から出光される光量は照明板の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を、車体の全域に亘って均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを採用して成る鉄道模型の車輌を示す分解斜視図。
【図2】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを装着して成る鉄道模型の車輌を示す断面側面図。
【図3】本願発明に係る照明板を構成部品とする室内灯セットを示す全体斜視図。
【図4】(a)、(b)および(c)は、第1の発明に係る照明板を示す平面図、側面図および端面図。
【図5】(a)、(b)および(c)は、第1の発明に係る照明板の他の実施例を示す平面図、側面図および端面図。
【図6】(a)および(b)は、図5の照明板に形成された反射発光層を概念的に示した平面図および側面図。
【図7】図6に示した照明板の反射発光層における平面形状の座標値を列記した表1。
【図8】(a)は第1の発明に係る照明板の更に他の実施例を示す平面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく端面図、(d)は(a)中のd−d線断面図。
【図9】(a)、(b)および(c)は、第2の発明に係る照明板を示す平面図、側面図および端面図。
【図10】(a)および(b)は、図9の照明板の要部を拡大して示す平面図および側面図。
【図11】(a)および(b)は、図9の照明板に形成されたV状溝を概念的に示した平面図および側面図。
【図12】図11に示した照明板のV状溝における形成位置を列記した表2。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明に係る鉄道模型の室内灯セットにおける照明板を、幾つかの実施例を示す図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1および図2は、本願発明に係る室内灯セットの照明板を、通勤型電車の模型車輌に装着される室内灯セットに適用した一実施例を示しており、この模型車輌1は、前後の台車2、2が取り付けられた床板3の上部に、実物車輌の外観を模した樹脂成型品の車体4が組み付けられ、この車体4の内部には室内灯セット5が設置されている。
【0017】
上記室内灯セット5は、図1〜図3に示す如く、ライトユニット6と照明板10とを具備して成り、上記ライトユニット6は、ホルダ6Hに基板6Bが保持され、この基板6Bには、レール(図示せず)からの給電により駆動する白色LED(光源)6Lが実装されている。
【0018】
一方、上記室内灯セット5を構成する照明板10は、透光材料の1つであるアクリル樹脂から形成された部材であり、車体4の前後方向に沿って延在する帯板状を呈し、図2に示す如く上記車体4の内部における天井側に取り付けられている。
【0019】
図3および図4に示す如く、上記照明板10における一方の端部10Aには、入光面10iが形成されているとともに、左右の側縁にはフランジ10fと複数の係止爪10p、10p…とが形成され、これらの係止爪10pを介して車体4の内部に取り付けられた状態において、上記照明板10の入光面10iはライトユニット6の白色LED(光源)6Lと相対している。
【0020】
なお、他方の端部10Bにおける下面10uには、幅方向に延びる複数のノッチ10n、10n…が形成されており、選択した1つのノッチ10nで照明板10を折り割ることにより、車体長に合わせて照明板10の長さを調整し得ることは言うまでもない。
【0021】
上述した如く、車体4の内部に取り付けられた照明板10に対して、図4中の矢印Iで示す如く、入光面10iから導入された白色LED(光源)6Lの光は、照明板10における上面(反射面)10uと下面(出光面)10lとの、相対向する板鏡面で臨界全反射を繰り返すことにより、上記照明板10における他方の端部10Bにまで伝達され、照明板10における下面(出光面)10lの発光により、車体4の内部が前後方向の全域に亘って照明されることとなる。
【0022】
因みに、上記照明板10における上面(反射面)10u、下面(出光面)10l、および入光面10iは、それぞれ“反射効率”、“出光効率”および“入光効率”の向上を目的として“鏡面仕上げ”が為されている。
【0023】
ここで、図3および図4に示す如く、照明板10における上面10uには、上記照明板10の内部を伝達している白色LED(光源)6Lからの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜11によって形成されている。
【0024】
上記塗膜(反射発光層)11は、照明板10の全長に亘って形成されているとともに、照明板10における一方の端部10A(入光面10i)から他方の端部10B(終端面10e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0025】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)11は、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて拡幅する三角形状を呈しており、照明板10の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、長手方向における左右の外形線10o、10oは、それぞれ直線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)11によって乱反射する光量は、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて一次関数的に漸増することとなる。
【0026】
上述した如き実施例の照明板10によれば、一方の端部10Aにおける入光面10iから導入された白色LED(光源)6Lの光は、他方の端部10Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面10uに形成した塗膜(反射発光層)11によって乱反射する光量が、一方の端部10Aから他方の端部10Bに向けて増大することにより、照明板10における下面(出光面)10lから出光される光量は、上記照明板10の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って均等化することが可能となる。
【0027】
図5に示した照明板20は、本願発明に係る照明板の他の実施例であり、この照明板20における基本的な構成は、後述する塗膜(反射発光層)21の形状以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。よって、上記照明板10と同様の作用を為す構成要素には、10を加算した20番台の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0028】
図5に示す如く、照明板20における上面20uには、上記照明板20の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜21により形成されている。
【0029】
上記塗膜(反射発光層)21は、照明板20の全長に亘って形成されているとともに、照明板20における一方の端部20A(入光面20i)から他方の端部20B(終端面20e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0030】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)21は、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて拡幅する略三角形状を呈しており、照明板10の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、長手方向における左右の外形線20o、20oは、それぞれ指数関数的曲線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)21によって乱反射する光量は、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて指数関数的に漸増することとなる。
【0031】
図6は、上述した照明板20の概念モデルを示しており、この照明板20のモデルの外形寸法は、全長113mm、幅11mm、厚さ2.8mmであり、入光面20iから10.6mmまでは塗膜(反射発光層)21を不用とし、他方の端部20B(終端面20e)を基点として、一方の端部20Aにおける入光面20iに向かって収束する塗膜(反射発光層)21を形成し、この塗膜(反射発光層)21における左右の外形線20o、20oを指数関数的曲線で描いている。
【0032】
図7の“表1”は、図6に示した照明板20の概念モデルにおける平面形状の座標値を列記したもので、個々のパターン座標位置は、終端面20eの基点(0)から入光面20iに向かって0.1mm単位の指数関数d2で加算する間隔とし、その間隔毎の曲線変化分を0.2mmとして算出したものである。
【0033】
上述した如き実施例の照明板20によれば、一方の端部20Aにおける入光面20iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部20Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面20uに形成した塗膜(反射発光層)21によって乱反射する光量が、一方の端部20Aから他方の端部20Bに向けて指数関数的に増大することにより、照明板20における下面(出光面)20lから出光される光量は、上記照明板20の全長に亘って平均化されることとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘り極めて均等なものとすることが可能となる。
【0034】
図8に示した照明板30は、本願発明に係る照明板の更に他の実施例であり、この照明板30における基本的な構成は、後述する塗膜(反射発光層)31の形状、および複数のスリット30s、30s…が形成されている以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。よって、上記照明板10と同様の作用を為す構成要素には、20を加算した30番台の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0035】
図8に示す如く、照明板30における左右の側縁部には、それぞれ照明板30の長手方向に延びる複数個(実施例では片側5箇所)のスリット30s、30s…が形成されており、上記照明板30の内部を伝搬している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光の一部が、上記スリット30sの内周面から出光することで、これらスリット30s、30s…によって直管蛍光灯が擬似的に表現されることとなる。
【0036】
また、照明板30における上面30uには、上記照明板30の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて乱反射させるための反射発光層が、印刷された白色塗料の塗膜31により形成されている。
【0037】
上記塗膜(反射発光層)31は、照明板30の全長に亘って形成されているとともに、照明板30における一方の端部30A(入光面30i)から他方の端部30B(終端面30e)に向けて、乱反射する光量を増大させるべく面積を漸増させる態様で形成されている。
【0038】
具体的には、上記塗膜(反射発光層)31は、一方の端部30Aから一定の幅で他方の端部30Bに向けて延び、他方の端部30Bにおいて拡幅する形状を呈しており、照明板30の中心線(図示せず)を挟んで左右対称に形成されているとともに、他方の端部30Bにおける左右の外形線30o、30oは、それぞれ指数関数的曲線によって形成されており、このため塗膜(反射発光層)31によって乱反射する光量は、他方の端部30Bにおいて指数関数的に漸増することとなる。
【0039】
上述した如き実施例の照明板30によれば、一方の端部30Aにおける入光面30iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部30Bに伝達されるまでの間に減衰するものの、上面30uに形成した塗膜(反射発光層)31によって乱反射する光量が、特に他方の端部30Bにおいて指数関数的に増大することにより、照明板30における下面(出光面)30lから出光される光量は、上記照明板30の全長に亘って略均等なものとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って均等なものとすることが可能となる。
【0040】
なお、上述した如く、直管蛍光灯を擬似的に表現することを目的として、照明板30における左右の側縁部に、それぞれスリット30s、30s…を形成する構成は、図4に示した如く塗膜(反射発光層)11の外形線11oを直線とした照明板10や、図5に示した如く塗膜(反射発光層)21の外形線21oを指数関数的曲線とした照明板20においても、極めて有効に採用し得ることは言うまでもない。
【0041】
ここで、上面に反射発光層を形成することを共通の特徴とした照明板10、照明板20、照明板30においては、何れも光の反射率等を考慮した上で、白色塗料の塗膜により反射発光層を形成しているが、設計の条件によっては白色以外の任意の色彩の塗料を用いて反射発光層を形成することも可能である。
【0042】
また、上述した実施例においては、何れも反射発光層の全面を白一色としているが、反射発光層の部分毎に異なる色彩を用いることにより、例えば、室内をコンパートメント毎に色分けしたり、窓毎に室内を色分けし得ることは言うまでもない。
【0043】
図9に示した照明板40は、本願発明に係る照明板の更に他の実施例であり、この照明板40における基本的な構成は、反射発光層に替えて後述する複数のV状溝40v、40v…が形成されている以外、室内灯セットを構成するライトユニットとの関連性や車体に対する取付態様においても、図1〜図4に示した照明板10と何ら変わるところはない。
【0044】
照明板40における上面40uには、上記照明板40の内部を伝播している白色LED(光源)6L(図2参照)からの光を、下方へ向けて反射投光させるための複数のV状溝40v、40v…が、照明板40の長手方向に沿って並列に形成されている。因みに、本実施例におけるV状溝40vの形状は、図10に示す如く、溝幅Wを1mm、深さDを0.5mm、傾斜角(反射角)を45°に施定されている。
【0045】
上記複数のV状溝40v、40v…は、照明板40における一方の端部40A(入光面40i)から他方の端部40B(終端面40e)に向けて、上記複数のV状溝40v、40v…によって反射投光される光量が、指数関数的に増大する態様で形成されている。
【0046】
具体的には、上記複数のV状溝40v、40v…を、隣り合うV状溝40vとV状溝40vsの間隔が、他方の端部40B(終端面40e)側から、指数関数的に漸増する態様で形成しており、このため複数のV状溝40v、40v…によって下方へ反射投光される光量は、一方の端部40Aから他方の端部40Bに向けて指数関数的に漸増することとなる。
【0047】
図11は、上述した照明板40の概念モデルを示しており、この照明板40のモデルの外形寸法は、全長113mm、幅11mm、厚さ2.8mmであり、V状溝40vの形状は、溝幅1mm、深さ0.5mm、傾斜角(反射角)45°とした。
【0048】
図12の“表2”は、図11に示した照明板40の概念モデルにおけるV状溝40vの形成位置を列記したもので、個々のV状溝40vの形成位置は、終端面40eの基点(0)から0.1mmを単位とし、指数関数d2で加算するピッチを算出したものである。因みに、入光面40iから10.6mmまではV状溝40vを不用とした一方、終端面40eから2.5mmまでは複数のV状溝40vを形成できない領域となる。
【0049】
上述した如き実施例の照明板40によれば、一方の端部40Aにおける入光面40iから導入された白色LED(光源)6L(図2参照)の光は、他方の端部40Bに伝達されるまでの間に“逆2乗の法則”に則って減衰するものの、上面40uに形成した複数のV状溝40v、40v…によって下方へ反射投光される光量が、一方の端部40Aから他方の端部40Bに向けて指数関数的に増大することにより、照明板40における下面(出光面)40lから出光される光量は、上記照明板40の全長に亘って平均化されることとなり、もって車体の内部における照明の光量を全域に亘って極めて均等なものとすることが可能となる。
【0050】
なお、上述した各々の実施例においては、照明板を透光材料の1つであるアクリル樹脂から形成しているが、照明板としての十全な透明度を備えた材料であれば、例えば、ポリカーボネート等の様々な材料を用いることによって、照明板を形成し得ることは言うまでもない。
【0051】
また、上述した各実施例においては、白色蛍光灯の色調を再現するべく、光源として白色LEDを採用しているが、電球色の室内灯の色調を再現することを目的として、橙色系のLEDや電球を光源に採用し得ることは勿論である。
【0052】
さらに、本願発明は「鉄道模型の室内灯セットにおける照明板」を対象とし、各実施例においても車輌の室内灯セットにおける照明板について開示しているが、本願発明に係る照明板を具備して成る室内灯セットを、例えば駅舎、住居、ビルディング等の、様々なストラクチャーの室内照明を再現するオプションパーツとして、極めて有効に使用し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1…模型車輌、
2…台車、
3…床板、
4…車体、
5…室内灯セット、
6…ライトユニット、
6L…白色LED(光源)、
10、20、30…照明板、
10A、20A、30A…一方の端部、
10B、20B、30B…他方の端部、
10u、20u、30u…上面、
10l、20l、30l…下面、
10i、20i、30i…入光面、
11、21、31…塗膜(反射発光層)、
11o、21o、31o…外形線、
30s…スリット、
40…照明板、
40A…一方の端部、
40B…他方の端部、
40u…上面、
40l…下面、
40i…入光面、
40v…V状溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて前記車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板であって、
上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を下方へ乱反射させる反射発光層を形成するとともに、前記入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、前記反射発光層によって乱反射する光量を増大させるべく、前記反射発光層の面積を漸増させる態様で形成したことを特徴とする鉄道模型の室内灯セットの照明板。
【請求項2】
前記反射発光層の平面形状における長手方向の外形線が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記一方の端部から他方の端部に向けて、一次関数的に漸増させるべく、直線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項3】
前記反射発光層の平面形状における長手方向の外形線が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記一方の端部から他方の端部に向けて、指数関数的に漸増させるべく、指数関数的曲線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項4】
前記反射発光層の平面形状における、長手方向の外形線における少なくとも前記他方の端部に臨む一部が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記他方の端部に向けて指数関数的に漸増させるべく、指数関数的曲線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項5】
光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて前記車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板であって、
上面の長手方向に沿って、内部を伝達する光を下方へ反射投光させる複数のV状溝を並列に形成するとともに、前記入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、前記複数のV状溝によって反射投光される光量を指数関数的に漸増させるべく、前記複数のV状溝における隣り合うV状溝との間隔を、前記他方の端部側から指数関数的に漸増させる態様で形成したことを特徴とする鉄道模型の室内灯セットの照明板。
【請求項1】
光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて前記車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板であって、
上面における長手方向の全長に亘って、内部を伝達する光を下方へ乱反射させる反射発光層を形成するとともに、前記入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、前記反射発光層によって乱反射する光量を増大させるべく、前記反射発光層の面積を漸増させる態様で形成したことを特徴とする鉄道模型の室内灯セットの照明板。
【請求項2】
前記反射発光層の平面形状における長手方向の外形線が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記一方の端部から他方の端部に向けて、一次関数的に漸増させるべく、直線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項3】
前記反射発光層の平面形状における長手方向の外形線が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記一方の端部から他方の端部に向けて、指数関数的に漸増させるべく、指数関数的曲線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項4】
前記反射発光層の平面形状における、長手方向の外形線における少なくとも前記他方の端部に臨む一部が、前記反射発光層において乱反射する光量を、前記他方の端部に向けて指数関数的に漸増させるべく、指数関数的曲線を呈していることを特徴とする、請求項1記載の鉄道模型の室内灯セットにおける照明板。
【請求項5】
光源を有するライトユニットと併せて室内灯セットを構成し、帯板状を呈する透光材料から形成されるとともに、車体の内部における天井側に設けられて前記車体の前後方向に延在し、一方の端部における入光面から導入された光源の光を他方の端部に向けて伝達させ、車体の内部を全域に亘って照明するよう構成した、鉄道模型の室内灯セットにおける照明板であって、
上面の長手方向に沿って、内部を伝達する光を下方へ反射投光させる複数のV状溝を並列に形成するとともに、前記入光面の形成された一方の端部から他方の端部に向けて、前記複数のV状溝によって反射投光される光量を指数関数的に漸増させるべく、前記複数のV状溝における隣り合うV状溝との間隔を、前記他方の端部側から指数関数的に漸増させる態様で形成したことを特徴とする鉄道模型の室内灯セットの照明板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−56099(P2013−56099A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197220(P2011−197220)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(594007630)株式会社関水金属 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(594007630)株式会社関水金属 (5)
【Fターム(参考)】
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