説明

鉄道模型の自動運転装置並びに鉄道模型の2列車自動運転方法及び2列車追突防止自動運転方法。

【課題】
列車の動力車に特別の細工をしないで二列車の定速の自動運転や2列車を同方向へ走行させた場合に自動追突防止可能な運転方法を提案する。
【解決手段】
Nゲージのような鉄道模型の動力車と全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した線路とを使用し、動力車の走行・停止にかかわらず線路のどのセクションにあるかを検出して速度情報を検出する等の処理をマイコン部と制御情報をマイコン部に転送するパソコン部とで構成した装置で、自動運転をしたり、自動停止をしたり、2列車同方向への運転時に追突を防止して様々な高度の自動運転を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道模型の自動運転装置及びその自動運転方法に関し、特に既存の模型用レール及び動力車に大幅な改造を加えることなく、高度な運転シミュレーションを実現することができる鉄道模型の自動運転装置及び鉄道模型の2列車自動運転方法・追突防止自動運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型の運転方法は様々な形態が提案されているが、一つの分類法として、リアルな運転台を模して運転手のような操作をして模型車両を楽しむ例があり、他方は集中制御盤を模して全部の線路を表示し、各車両を同時に運転シミュレーションして楽しむ例がある。本発明は後者に属するものである。
【0003】
全線を集中管理で運転制御する方式は実際の鉄道では一般的であるが、模型車両の分野では制御が複雑になってしまうため、従来例は多くない。制御が複雑となるため、車両自体に制御機器を搭載しなければならないため、いわゆるNゲージでは実現が困難であり、いわゆるHOゲージのような少し大きな空間を作れるタイプに多い(例えば特開2001−54684号)。
【0004】
しかし最近は狭い範囲でも実物と同様の運転シミュレーションを楽しむためより小型タイプのNゲージ形式が多く採用されている。ところが、複雑な運転シミュレーションをするために車両自体に制御機器を組み込むには制御機器が未だ極小化されていないため、社慮自体はモータだけとし、単純な運転しか実現できないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−54684号公報
【特許文献2】特開平10−252102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数台の模型車両を同時に運転管理をする場合に従来の複雑かつ大がかりな装置を用いることなく、比較的入手容易なマイコンを利用して複数台の模型車両を同時に定速運転をしたり、複線に設置した線路上に二台以上の車両を運転したり、単線の線路上に二台の車両を投入した場合に追突を自動的に防止しうるという高度な運転制御を実現する等の技術的課題を達しうる模型鉄道自動運転装置及び自動運転方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1に、
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置において、
モータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、
動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成したことを特徴とする鉄道模型の自動運転装置
である。
【0008】
本発明は第2に、
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置のモータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成した鉄道模型の自動運転装置において、
動力車の現在速度を監視し、現在速度と一定速度に設定する速度との差を電圧値に換算して計算して得た修正信号を、外部のパソコン部からマイコン側へ供給して一定速度を保持するようにした鉄道模型の自動運転装置
である。
【0009】
本発明は第3に、
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置のモータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成した鉄道模型の自動運転装置において、
動力車の現在速度を監視し、動力車の停止セクションへの進入時からパソコン側タイマーでカウントしたカウント値と、設定した停止位置までの距離とから、モータの電源供給を停止する時間を計算する任意位置停止部を設けた鉄道模型の自動運転装置
である。
【0010】
本発明は第4に、
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した自動運転装置を用いた鉄道模型の自動運転方法において、
各ポイントを列車1用に切り替えるためのパソコン部からの指令をマイコン側へ送信し、
次に全てのセクション電気極性を列車1の前進側に設定し、
初回のみ列車1用の起動電圧を全てのセクションに与え、
起動電圧を動力車が直線セクションに達するまで保持し、
直線のセクションの速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定して次の線路電圧情報としてメモリーに格納し、
線路電圧を動力車が停止セクションに達するまで保持し、
停止セクションに達した瞬間からパソコン部のタイマーを起動して列車1の停止時間設定値と一致するまで待ち、一致したとき停止セクションの線路電圧を停止電圧に設定して列車1を停止させる第1の手順、
次に、タイマーによる一定時間後、各ポイントを列車2用に切り替えて全てのセクションを列車2用に設定とし、
初回のみ列車2の起動電圧2を全てのセクションに与え、
起動電圧を動力車がセクション2に達するまで保持し、
直線のセクションの速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定して次の線路電圧情報としてメモリーに格納し、
線路電圧を動力車が停止セクションに達するまで保持し、
停止セクションに達した瞬間からパソコン部のタイマーを起動して列車2の停止時間設定値と一致するまで待ち、一致したとき停止セクションの線路電圧を停止電圧に設定して列車2を停止させる第2の手順、
一定時間後に第1の手順に戻る第3の手順とより構成したことを特徴とする鉄道模型の2列車自動運転方法
である。
【0011】
本発明は第5に、
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した自動運転装置を用いた鉄道模型の自動運転方法において、
単線かつ同方向へ2列車を運行する線路と列車の配置とし、
車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にし、
車両の走行によって車両が次のセクションに移ったとき停止電圧区間も次のセクションに移動して常に車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にすると共に、
停止電圧区間以外のセクションに走行電圧を与えて2列車を同時に走行させることを特徴とする鉄道模型の2列車追突防止自動運転方法
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第1に、
集中制御盤を模して全部の線路を表示し、各車両を同時に運転シミュレーションして楽しむ鉄道模型の自動運転が可能な例えばNゲージのような極小模型のような列車自体に各種制御機器を組み込むことが困難な車両であっても、また既存の動力車及びレールに特別の細工を施すことなく、高度な自動運転を実現することができる効果を有する。
【0013】
本発明は第2に、
鉄道模型の動力車の現在速度を監視し、現在速度と一定速度に設定する速度との差を電圧値に換算して計算して得た修正信号を、外部のパソコン部からマイコン側へ供給して一定速度を保持するように構成したので、
集中制御盤を模して全部の線路を表示し、各車両を同時に運転シミュレーションして楽しむ鉄道模型の自動運転が可能な例えばNゲージのような極小模型のような列車自体に各種制御機器を組み込むことが困難な車両であっても、また既存の動力車及びレールに特別の細工を施すことなく、一定速度を維持して自動運転を実現することができる効果を有する。
【0014】
本発明は第3に、
動力車の現在速度を監視し、動力車の停止セクションへの進入時からパソコン側タイマーでカウントしたカウント値と、設定した停止位置までの距離とから、モータの電源供給を停止する時間を計算する任意位置停止部を設けたので、
集中制御盤を模して全部の線路を表示し、各車両を同時に運転シミュレーションして楽しむ鉄道模型の自動運転が可能な例えばNゲージのような極小模型のような列車自体に各種制御機器を組み込むことが困難な車両であっても、また既存の動力車及びレールに特別の細工を施すことなく、一定速度を維持して自動運転を実現し、かつ予め設定した停止位置(例えば線路上に設置したホームの停止線)に正確に自動的に停止させることができる効果を有する。
【0015】
本発明は第4に、
集中制御盤を模して全部の線路を表示し、各車両を同時に運転シミュレーションして楽しむ鉄道模型の自動運転が可能な例えばNゲージのような極小模型のような列車自体に各種制御機器を組み込むことが困難な車両であっても、また既存の動力車及びレールに特別の細工を施すことなく、二列車を同時に運転するという高度な自動運転を実現することができる効果を有する。
【0016】
本発明は第5に、
単線かつ同方向へ2列車を運行する線路と列車の配置とし、
車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にし、
車両の走行によって車両が次のセクションに移ったとき停止電圧区間も次のセクションに移動して常に車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にすると共に、
停止電圧区間以外のセクションに走行電圧を与えて2列車を同時に走行させるように構成したので、
単線上に同方向へ2列車を運行する場合であっても、仮に夫々の列車を異なる速度に設定しても物理的に追突することがないので、自動列車停止(ATS)運転を模型運転でシミュレーションすることができ、更に高度な自動運転装置を体験できるという特異な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一例を示す線路配置及びブロック図
【図2】マイコン部の一例を示すブロック図
【図3】10mSタイマー割り込みの手順の図
【図4】セクション1の車両位置、速度情報検出の処理手順図
【図5】セクション2の車両位置、速度情報検出の処理手順図
【図6】セクション3の車両位置、速度情報検出の処理手順図
【図7】セクション4の車両位置、速度情報検出の処理手順図
【図8】セクション5の車両位置、速度情報検出の処理手順図
【図9】一定間隔の割り込み周期でパソコン側にシリアルポートより送信する手順図
【図10】マイコン部に搭載のポイント制御の一例を示すブロック図
【図11】マイコン部のメインプログラムの手順図
【図12】自動運転時の列車交換線路配置図
【図13】自動運転手順図1
【図14】自動運転手順図2
【図15】本発明の他の例を示す線路配置図
【図16】本発明の他の例を示す線路配置図
【図17】本発明の他の方法の例を示す手順図1
【図18】本発明の他の方法の例を示す手順図2
【発明を実施するための形態】
【0018】
鉄道模型のNゲージ用線路と一両編成や長大編成の列車を一定の速度で自動運転したり、複線線路に適用したり、単線に2列車を同方向へ自動運転した場合に追突防止を自動的になされる鉄道模型。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す模型鉄道自動運転装置の系統図である。10は全部の線路を複数のセクションに分割した単線レールを示す。そして全区間を例えば五つに分割してセクション1ないし5に設定する。各セクションのレールは絶縁体を介して電気的に絶縁され、隣接セクションとの電気的導通がないように設置される。
【0020】
運転の制御系統は、図1に示す線路を、集中制御盤を模したコンピュータ(パソコン)50の画面に表現し、マウス等のポインティングデバイスで制御信号をシリアルポートを介してマイコン部へ送信指示するように構成されている。
【0021】
他方、制御信号を受信するマイコン部20は、ワンチップマイコンで構成され、図2に示すように、信号受信部、五つのセクションに対応する五つのモータドライバが内蔵され、夫々の出力信号は夫々対応するレール10上の動力車に供給されている。
【0022】
この実施例ではレール10上の動力車が、あるセクションに位置しているかをリアルタイムで把握するため、マイコン部には位置検出部21が設けられている。
【0023】
位置検出部21は、図2に示すように、各セクションに対応して設けたモータドライバ22のグラウンド側に電流検出用の低抵抗を設け、動力車のモータ電流を検出してこのとき得られる数10mVの電圧を増幅器23により100倍程度増幅して数Vにしてアナログコンパレータ24で一定以上の電圧になったとき、マイコン部20の割り込み入力の割り込み信号となる。したがって、模型車両の動力車のモータ電流を検出することによって、どのセクションで動力車両が走行しているか否かを、割り込み入力のポート番号よりマイコンソフトで処理できることになる。
この場合、走行用の直流電源は12VのPWM(パルス幅変調)波形を使用しているため、走行中のセクションでは一定周期の割り込みが発生している。駆動用モータが回らない程度にPWMのパルス幅を短くすると(直流実効値で0.2〜0.4V程度)停止中でも割り込みが発生するため、停止中でも車両の現在位置情報が得られることになる。
【0024】
従来、この模型車両の現在位置検出を行うには、車両側に永久磁石を載せ、線路側にリードスイッチを設ける等の改造が必要であり、配線等も複雑になってしまうものが多い。
また停止させたい位置は駅のホームになるケースが多いため、狭い場所にリードスイッチ等を設けるのに制約が多かったが、このような構成を採用することにより、リードスイッチ等が不要となり、車両と線路には改造等を行わないため、既存の車両や線路をそのまま利用することが可能となる。
【0025】
速度情報検出部30は、図3に示すように、ワンチップマイコンに搭載の16ビットカウンタによる割り込み処理で10mS毎に1を加算されるRAM(10mS)番地を構成する。
そして長円形に敷かれたエンドレスの線路(図1参照)で車両を時計方向に走行させるときは、セクション1→セクション2→セクション3→セクション4→セクション5の方向に車両が進むように構成されている。
【0026】
したがって、セクション1の割り込みポートに割り込み信号が入った瞬間、車両はセクション5を抜けた瞬間でもある。そのためRAM(10mS)番地の値をセクション5の速度情報として格納し、RAM(10mS)番地を0にクリアする。このクリア処理は最初の1回のみとする。
この場合、この信号はPWM波形のため、セクション1の線路上に車両がある間、割り込み信号が入り続ける。したがって、セクション1に車両が存在する情報をRAM(セクション1)に格納し続けることになる。
【0027】
次にセクション2に割り込み信号が入った瞬間、セクション1を抜けた瞬間でもあるため、RAM(10mS)番地の値をセクション1の速度情報として格納し、RAM(10mS)番地を0にクリアする。同様にこのクリア処理は最初の1回のみとし、セクション2に車両がある情報をRAM(セクション2)に格納し続ける。
【0028】
以下同様に各セクションに入った瞬間が一つ前のセクションの10mS単位の通過時間となる。
以上の説明は図4ないし図8に示すように、各セクション毎の手順の流れ図でも理解される。そして車両が線路を最初の一回りすると、各セクションの通過時間が得られることになる。
【0029】
更に図9に示すように、マイコン部20からパソコン50側に、動力車の位置データと各通過時間を100mS間隔でシリアルポートにて送信しており、送信毎に位置データをクリア(1を書いている)している。尚、PWM波形の周期はこの値以下のため常に最新の位置情報が得られることになる。
【0030】
この場合、車両がある状態ではRAM(セクション)番地の内容を”0”とし、車両がない状態を”1”としている。例えばセクション1の線路上に車両があり、各セクションの通過時間が5秒のときの格納内容は次のようになる。
【0031】
RAM(セクション1) = 0 RAM(セクション1通過時間) = 500
RAM(セクション2) = 1 RAM(セクション2通過時間) = 500
RAM(セクション3) = 1 RAM(セクション3通過時間) = 500
RAM(セクション4) = 1 RAM(セクション4通過時間) = 500
RAM(セクション5) = 1 RAM(セクション5通過時間) = 500
【0032】
反時計方向に車両を走行させるときは、セクション5→セクション4→セクション3→セクション2→セクション1の方向になるため、セクション1に割り込み入力信号が入った瞬間はセクション2を抜けた瞬間、つまりセクション2の通過時間となり、時計方向のときと逆隣となる(図4〜図8参照)。
【0033】
速度制御PWM波形発生部40は、図2に示すように、ワンチップマイコンに搭載の16ビットタイマー5チャンネルを使用して、各セクション毎に独立したモータドライバ22を構成している。モータドライバ22の出力はタイマー出力と、模型車両の前進・後退を決めるパラレルポートのビット出力とANDゲートによりPWM変調されている。
【0034】
各タイマーのパルス幅はパソコン側よりのコマンドで0〜65535に任意の値に設定でき、12Vの電源電圧に対し1mV以下の分解能になり、微小な速度変化に対応可能となっている。動力車(モータ搭載車両)がセクションの境界にあるとき、二箇所のモータドライバから給電されて加算されるため、各チャンネル間の位相も合わせておく必要がある。
【0035】
またパソコン50側よりのコマンドでパラレルポートの各ビットのハイ(1)、ロー(0) を制御しているため、車両の進行方向の切り替えもパソコン側で行なえることになる。すなわち右側の線路がプラス極性のとき車両が前進するように決めた場合は、線路の走行方向すなわち時計方向・反時計方向の決定はモータドライバの正転・逆転を設定するパラレルポートのビット出力で決められる。
【0036】
図2に示すモータドライバ1は、IN1(ポート出力1)が1(5V)、IN2(ポート出力2)が0(0V)のときOUT1がプラス側に、IN1が0、IN2が1のときOUT2がプラス側になる。IN1、IN2が0のとき出力はハイインピーダンスになり動力車のモータは停止となる。例えばパソコン50側より”P1=1”、“P2=0” のコマンドを受信するとポート出力1が1に、ポート出力2が0になり、OUT1側がプラス極性になる。
【0037】
またパソコン50の端末からの”PWM1_12000”のコマンドをマイコン側で受信すると、PWMタイマー出力1のパルス幅は12000÷65535のデューティ比18.31%になり、電圧は12Vを乗じて得た2.197Vとなる。この設定により車両の進行方向が決まり、この電圧に対応した速度で走行することになる。
【0038】
尚、この実施例ではPWMの発信周期は26mS程度と低めにしている。これは動力車のモータと車輪との歯車比が小さいとき、低速時のトルクが小さくなり、高めの電圧を加えないと走り出さず、また走り出すとすぐに高速になってしまい低速時の制御が難しい性質の問題も解消する。モータコイルのインピーダンスの性質と考えられるが、発信周期を低めにすると低速時でも粘りのある走行ができる。ただし低すぎると速度情報の誤差要因になるため、実施例ではこの周期にしている。
【0039】
ポイント制御部45は、図10に示すように、構成されている。すなわち各ポイントは永久磁石と電磁石の組み合わせで構成されており、短時間の通電(0.3秒程度)で動作する。通常の2線式ポイントでは、直線側と曲線側の切り替えは直流12Vの極性反転で行う。
ポイントを制御するときはモータドライバの正転・逆転を決めるパラレルポートのビット出力を短時間出力すれば制御できることになる。
【0040】
図10において、モータドライバ46はIN1(ポート出力11)が1(5V)、IN2(ポート出力12)が0(0V)のときOUT1がプラス12V側に、IN1が0、IN2が1のときOUT2がプラス12V側になる。そしてIN1,IN2が0のときハイインピーダンス状態になり、電磁石コイルに電流は流れない。例えばOUT1側がプラス12Vのとき直線側、OUT2がプラス側のとき曲線(待避線)側に切り替わることになる。
【0041】
パソコン50側より例えば”P11=1”のコマンドを受けると、ポート出力11が1になり、約0.3秒後に“P11=0”のコマンドを受けると、ポート出力11が0になる。これでポイント1を直線側に切り替えることができる。この例では6箇所のポイント制御を行なうことが可能となっている。
【0042】
マイコン側のメインプログラムは、図11に示すように、パソコン50側よりシリアルポートに送られたコマンドを解釈し、そのコマンドに対応した処理を実行するものである。
【0043】
各コマンドと同じ文字列を持った配列のテーブルになっており、比較して一致した文字列の配列要素より順番に番号が決められているためコマンドに対応した処理を実行できることになる。
【0044】
PWMタイマーに対する数字のアスキーコード(0〜65535)を含んだコマンドでは、アスキーコードを2進変換し、この値を指定のPWMタイマーのレジスタに書き込む。このメインプログラムは無限ループになっており、メインプログラム実行中に一時中断してパソコン側50からの割り込み信号により、各対応する割り込みソフトが実行される。
【0045】
パソコン部50は、図1に示すように、マイコン側とシリアルポート又はシリアル−USB変換アダプタを介してUSBポートに接続している。
【0046】
パソコン部50は、少なくとも実物換算時速算出部51と直流実効値計算部52とを備えている。実物換算時速算出部51の例について説明すると、縮尺が1/150のNゲージ鉄道模型で説明すると、線路長を150倍すると実物換算できる。半周180度の曲線部分は半径×円周率×150より求められる。
【0047】
実物換算100メートルの距離をマイコン部20より送られたそのセクションの通過時間が500のとき10mS単位のため
500×10=5000(mS)
5000÷1000=5(秒)
100(m)÷5(秒)=20m/S
秒速20メートルが求まる。
そして
(20÷1000)×60×60=72(km/h)
より時速72キロが求まる。この方法で他の縮尺の鉄道模型でも実物換算した速度算出ができることになる。
【0048】
直流実効値計算部52の一例について説明する。
マイコン部のPWM波形発生部のタイマーが16ビットのため、線路電圧設定値は0〜65535の値になり、
12V×(線路電圧設定値÷65535)
より実効値の電圧が得られる。そのためデューティ比50%で6V、25%で3Vとなる。
更に、
12(V)÷65535=0.0001831(V)
の1ビットあたりの分解能より、線路電圧は
0.0001831×線路電圧設定値
より求められる。この線路電圧設定値をマイコン部20の5チャンネルPWMタイマーに送ることにより、各セクション毎に任意の電圧を設定できることになる。
【実施例2】
【0049】
次に、以上のように構成したパソコン部50とマイコン部20とを有線接続し、図1に示すように、5分割の線路を用いて、模型車両の一定速度制御を実現する一例について説明する。尚、駆動電圧と回転数・トルクの関係は、モータの特性に起因して模型車両毎に大きく異なるが、ある車両の場合は線路電圧2Vのとき時速70キロメートル、4Vのとき時速200キロメートルであった場合、線路電圧に対する速度は指数関数的になるという事実がある。すなわち二乗した値よりは小さな値のため、一定速度で走らせたい速度と実際の速度の比の平方根を現在の線路電圧に乗じ、この値を線路電圧設定値の近似値として、マイコン部20の速度情報PWM波形発生部40のPWMタイマーに送ることにより、一定速度制御のフィードバック自動制御が行えることになる。
【0050】
例えば、一定速度の設定値を時速72キロメートルに設定し、現在の動力車の走行速度が時速70キロメートル、現在の線路電圧が2Vのとき
72÷70=1.02857
1.02857の平方根=1.014185
2V×1.014185=2.028V
となる。
【0051】
このように、この例では常に動力車のモータの回転数及び現在速度を監視しているため、必要な電圧制御量をパソコン50側よりマイコン20側へ送れば、全体の系として一定速度を保つように収束させることができる。
【0052】
一般に、セクション1,4のようにカーブでは直線のセクションに比べて車輪の抵抗が増すので、同じ電圧設定値ではセクション1,4で平均速度が減速するが、この例では各セクション毎に電圧設定値を独立して印加可能のため、直線のセクションと同様の速度にするために、カーブでの速度と比較して不足分の電圧をカーブのセクションに対し上記の計算式で求めた数値を加算して印加することにより、直線、カーブ共にほぼ同等の速度を維持することができることになる。
【0053】
尚、最初に起動するときは、現在の速度と線路電圧のデータがないため、その車両の一定速度設定値に対する平均的線路電圧を与えておく。この電圧は車両毎に異なるため、予め調べておく必要がある。平均的線路電圧とは、予め動力車を線路上で数回程度運転した線路電圧のデータを取得したものである。
【0054】
一般に模型車両は一定速度設定値に対し、起動時には高めの線路電圧になり、各部に潤滑油がなじむためと考えられるが、徐々に線路電圧が低下し、長時間経つとモータコイルの温度上昇による電気抵抗増加のためと考えられ、線路電圧の上昇の傾向が見られる。実際には線路の各セクションにおいて、動力車との摩擦・モータ自体の特性により、最初の一周と次の周では数値が異なるため、平均化して平均値を予め取得しておくのがその後の速度安定運転には必要である。
【0055】
このように車両の状態に応じて制御量を可変可能としたので、動力車の一定速度運転が行われることになる。
【実施例3】
【0056】
次に、例えば線路に駅ホーム等を設置して停止線で確実に停止させる等の任意位置での停止の制御方法について説明する。
【0057】
例えば図12に示すように、セクション5の区間内に駅のホームを設置した場合、このホームの所定の位置に停車させるときは、動力車がセクション5に入った瞬間からタイマーを起動し、例えば時速72キロメートル(秒速20メートル)でセクション5に進入したときに、8秒後に停止させるときは、実物換算でセクション5の境界部分の位置から160メートル先で停止する。
【0058】
編成の動力車の部分で現在位置を感知するため、先頭が機関車のときは先頭部分からの距離を把握する必要がある。編成の中間に動力車があることが多い電車や気動車では、その動力車の部分からの距離を把握する必要がある。
【0059】
タイマーの設定値はパソコン50側で任意の値に可変できるようにしているため、速度や編成の長短にかかわらず任意の地点で停止できる。
【0060】
本発明装置を用いて、自動運転をする場合は、図12に示すように、単線の線路において駅ホームで上下線の列車交換を行うイメージを実現する例で説明すると、セクション5の部分のみ複線にしてあり、行き違いができるように線路を設置してある。
【0061】
最初はセクション5の駅のホームの複線部分(上下線ホーム)に各々の模型列車を設置しておき、模型列車1を時計方向の進行、曲線部分(退避線側)の模型列車2を反時計方向の進行とし、ポイントは車両が通過する側のみ通電するタイプを使用して説明を進める。
【0062】
時計方向のときセクション2の速度を一定速度算出の速度情報とし、反時計方向のときセクション3の速度を一定速度算出の速度情報とし、一定速度設定を行う(例えば実物換算で時速70キロメートル)。その理由はカーブのあるセクション1やセクション4では車両に走行抵抗が加わるため、正しい電圧・回転数の関係を把握することができないことが多い。直線部分のセクション2又はセクション3での範囲で一定速度算出の速度情報とするほうが安定するためである。
【0063】
まず、ポイント1、2を直線側に切り替えるため、パソコン50側からの指令をマイコン20側へ送信する。
【0064】
次に全てのセクション1,2,3,4,5を時計方向(右側の線路がプラス極性のとき車両が前進)に設定する。そして初回のみ列車1用の起動電圧1を全てのセクションに与えると時計方向に列車1は動くことになる。この状態をセクション3に達するまで保持する。
【0065】
直線部分のセクション2の速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定し、次の時計方向の線路電圧情報としてメモリーに格納しておく。この状態をセクション5に達するまで保持する。
【0066】
そしてセクション5に達した瞬間からパソコン部20内蔵のタイマーを起動して列車1の停止時間設定値と一致するまで処理を待つ。一致したときセクション5の線路電圧を停止電圧(0.2〜0.4V程度)に設定することにより列車1は停止する。この場合、線路電圧は0ではないので、列車1の位置情報は取得していることになる。
【0067】
次に、タイマーによる一定時間後、ポイント1、2を曲線側に切り替える。
【0068】
次に全てのセクション1,2,3,4,5を反時計方向に設定する。
【0069】
初回のみ列車2の起動電圧2を全てのセクションに与えると反時計方向に列車2は動くことになる。この状態をセクション2に達するまで保持する。
【0070】
セクション3の速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定し、次の反時計方向線路電圧情報としてメモリーに格納しておく。この状態をセクション5に達するまで保持する。
【0071】
セクション5に達した瞬間からタイマーを起動して列車2の停止時間設定値と一致するまで処理を待つ。一致したときセクション5の線路電圧を停止電圧(0.2〜0.4V程度)に設定すると列車2は停止する。一定時間後にプログラムの最初の部分に戻り、また最初からの自動運転を繰り返すことができる。
【0072】
これにより、列車1と列車2が交互にセクション5の駅ホームの部分に停止線で停止し、その後ポイントを切り替えて反対側の列車が走ることになり、各々が設定された一定速度で走り続けることになる。図13及び図14は以上の手順の流れを示したものである。
【0073】
尚、パソコン50側のディスプレイには全線の線路配置図(図12)を表示しており、セクション毎に車両を感知した部分を赤に他を青で表示することにより、どのセクションを走行しているか一目で分かるようにすることができる。また各セクションの速度表示も行なうことが可能となる。
【0074】
以上説明した運転パターンは一例であり、その他の運転パターンと線路配置は多数実現できる。例えば図15に示すように、両端が終点となり中間点ですれ違う線路配置や、図16に示すように、中間にスイッチバックのある線路配置等を実現可能である。このように本発明は、複雑な運転パターンを、ソフト開発の比較的容易なパソコンソフトで行えるものである。
【実施例4】
【0075】
次に、図15図に示すように、両端が終点となり中間点で列車交換する線路配置に適用した例について説明する。この場合、セクション3の部分で列車交換が行えるように待避線(複線)にしてある。
【0076】
最初に、セクション1のA1の線路部分に列車1を設置し、セクション5のC2の線路部分に列車2を設置しておく。
【0077】
次にポイント1とポイント2を直線側に切り替える。
【0078】
次にセクション1→セクション2→セクション3の方向で走行するように線路極性を設定する。A1の列車1の走行電圧A1を印加すると、列車1はセクション1からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0079】
セクション3に達した瞬間にマイコン側のタイマーを起動し、停止時間B1の設定時間と一致するまで待つ。一致したとき線路電圧を停止電圧に設定し列車1をB1の位置に停止させる。
【0080】
更に一定時間後にポイント2、ポイント3、ポイント4を曲線側に切り替える。
【0081】
次に、セクション5→セクション4→セクション3の方向で走行するように線路極性を設定する。
【0082】
C2の位置にある列車2に対し走行電圧C2を印加すると、列車2はセクション5からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0083】
セクション3に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B2の設定時間と一致するまで待つ。
【0084】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をB2の位置に停止させる。
【0085】
更に一定時間後にポイント2、ポイント3、ポイント4を直線側に切り替える。
【0086】
次に、セクション3→セクション4→セクション5の方向で走行するように線路極性を設定する。
【0087】
B1の位置にある列車1に対し走行電圧A1を印加すると、列車1はセクション3からセクション5の方向に走行する。この状態をセクション5に達するまで維持する。
【0088】
セクション5に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間C1の設定時間と一致するまで待つ。
【0089】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をC1の位置に停止させる。
【0090】
更に一定時間後にポイント1、ポイント2、ポイント3を曲線側に切り替える。
【0091】
セクション3→セクション2→セクション1の方向で走行するように線路極性を設定する。
【0092】
B2の位置にある列車2に対し走行電圧C2を印加すると、列車2はセクション3からセクション1の方向に走行する。この状態をセクション1に達するまで維持する。
【0093】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間A2の設定値と一致するまで待つ。
【0094】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をA2の位置に停止させる。
【0095】
更に一定時間後にセクション1→セクション2→セクション3の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0096】
A2の列車2の走行電圧A2を印加すると、列車2はセクション1からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0097】
セクション3に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B2の設定値と一致するまで待つ。
【0098】
停止時間B2の設定値と一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をB2の位置に停止させる。
【0099】
更に一定時間後にポイント2、ポイント3、ポイント4を直線側に切り替える。
【0100】
セクション5→セクション4→セクション3の方向で走行するように線路極性を設定する。
【0101】
C1の位置にある列車1に対し走行電圧C1を印加すると、列車1はセクション5からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0102】
セクション3に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B1の設定値と一致するまで待つ。
【0103】
停止時間B1の設定値一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をB1の位置に停止させる。
【0104】
更に一定時間後にポイント2、ポイント3、ポイント4を曲線側に切り替える。
【0105】
セクション3→セクション4→セクション5の方向で走行するように線路極性を設定する。
【0106】
B2の位置ある列車2に対し走行電圧A2を印加すると、セクション3からセクション5の方向に走行する。この状態をセクション5に達するまで維持する。
【0107】
セクション5に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間C2の設定値と一致するまで待つ。
【0108】
停止時間C2の設定値一致したとき線路電圧を停止電圧に設定し列車2をC2の位置に停止させる。
【0109】
更に一定時間後にポイント1、ポイント2、ポイント3を直線側に切り替える。
【0110】
セクション3→セクション2→セクション1の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0111】
B1の位置にある列車1に対し走行電圧C1を印加すると、列車1はセクション3からセクション1の方向に走行する。この状態をセクション1に達するまで維持する。
【0112】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間A1の設定値と一致するまで待つ。停止時間A1の設定値一致したとき線路電圧を停止電圧に設定し列車1をA1の位置に停止させる。
【0113】
最終的には一定時間経過後に自動運転ルーチンの始めの部分に戻る。
【0114】
この実施例では各車両の進行方向により走行電圧と速度が大幅に異なるため、各進行方向ごとに走行電圧を設定している。
【実施例5】
【0115】
次に、図16に示すように、中間にスイッチバックのある線路配置での中間部で列車交換が行えるような線路配置に適用した例について説明する。
【0116】
最初に、セクション3のA1に列車1を、セクション4のC1に列車2を設置しておく。そしてポイント3、ポイント2、ポイント1を直線側に切り替える。
【0117】
更にセクション3→セクション2→セクション1の方向に走行するように、線路極性を設定する。
【0118】
A1に位置する列車1に対し走行電圧A1を印加すると、セクション3からセクション1の方向に走行する。この状態をセクション1に達するまで維持する。
【0119】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B1の設定値と一致するまで待つ。一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をB1の位置に停止させる。
【0120】
更に一定時間経過後、ポイント4、ポイント2、ポイント1を曲線側に切り替える。
【0121】
セクション4→セクション2→セクション1の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0122】
C2の位置にある列車2の走行電圧A2を印加すると、列車2はセクション4からセクション1の方向に走行する。この状態でセクション1に達するまで待つ。
【0123】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B2の設定値と一致するまで待つ。一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をB2の位置に停止させる。
【0124】
一定時間経過後、ポイント1、ポイント4を直線側に切り替える。(ポイント2は曲線側)
【0125】
セクション1→セクション2→セクション4の方向に走行するよう線路極性を設定する。
【0126】
B1の位置にある列車1の走行電圧B1を印加すると、列車1はセクション1からセクション4の方向に走行する。この状態でセクション4に達するまで待つ。
【0127】
セクション4に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間C1の設定値と一致するまで待つ。
【0128】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をC1の位置に停止させる。
【0129】
更に一定時間経過後、ポイント1を曲線側に、ポイント2を直線側に、ポイント3を曲線側に切り替える。
【0130】
そしてセクション1→セクション2→セクション3の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0131】
B2の位置にある列車2の走行電圧B2を印加すると、列車2はセクション1からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0132】
セクション3に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間A2の設定値と一致するまで待つ。
【0133】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をA2の位置に停止させる。
【0134】
更に一定時間経過後、ポイント2を曲線側に、ポイント1、ポイント4を直線側に切り替える。
【0135】
そしてセクション4→セクション2→セクション1の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0136】
C1の位置にある列車1の走行電圧A1を印加すると、列車1はセクション4からセクション1の方向に走行する。この状態をセクション1に達するまで維持する。
【0137】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B1の設定値と一致するまで待つ。
【0138】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をB1の位置に停止させる。
【0139】
更に一定時間後、ポイント1、ポイント3を曲線側に、ポイント2を直線側に切り替える。
そしてセクション3→セクション2→セクション1の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0140】
A2の位置にある列車2の走行電圧A2を印加すると、列車2はセクション3からセクション1の方向に走行する。この状態をセクション1に達するまで維持する。
【0141】
セクション1に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間B2の設定値と一致するまで待つ。
【0142】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をB2の位置に停止させる。
【0143】
更に一定時間後、ポイント1、ポイント3を直線側に切り替える。
【0144】
そしてセクション1→セクション2→セクション3の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0145】
B1の位置にある列車1の走行電圧B1を印加すると、列車1はセクション1からセクション3の方向に走行する。この状態をセクション3に達するまで維持する。
【0146】
セクション3に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間A1の設定値と一致するまで待つ。
【0147】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車1をA1の位置に停止させる。
【0148】
更に一定時間後、ポイント1、ポイント2、ポイント4を曲線側に切り替える。
【0149】
そしてセクション1→セクション2→セクション4の方向に走行するように線路極性を設定する。
【0150】
B2の位置にある列車2の走行電圧B2を印加すると、列車2はセクション1からセクション4の方向に走行する。この状態をセクション4に達するまで維持する。
【0151】
セクション4に達した瞬間にタイマーを起動し、停止時間C2の設定値と一致するまで待つ。
【0152】
一致したとき線路電圧を停止電圧に設定して列車2をC2の位置に停止させる。最終的には一定時間経過後に始めの部分に戻る。
【0153】
この実施例では各車両の進行方向により走行電圧と速度が大幅に異なるため、各進行方向ごとに走行電圧を設定している。
【実施例6】
【0154】
次に、図1例の基本構成を基にして、2列車追突防止機能付き自動運転(ATS運転)の方法を説明する。
【0155】
まず図1の線路配置において、時計方向進行の例を用いて説明すると、予めセクション5とセクション2に夫々模型車両を配置しておく。
【0156】
そしてセクション5に車両を感知している間、セクション4を停止電圧(0ボルトでない)とし、セクション2に車両を感知している間、セクション1を停止電圧(0ボルトでない)にする。すなわち車両のある直後のセクションを停止電圧にしておき、車両の走行により次のセクションに移ったときに停止電圧区間も移動するようにしておく。
【0157】
今、セクション2の車両をセクション3まで進めるため、停止区間以外に走行電圧を与えて2列車同時に走行させると、セクション2の車両はセクション3に進み、このときセクション5の車両がセクション1に進む。
【0158】
このときセクション4は走行電圧になるため、セクション3の車両はセクション4に進むことができる。
【0159】
順次、前部の車両の停止区間に入ると停止し、前部の車両が次のセクションに入ると後部の車両が次のセクションに進むことができる。
【0160】
この例では2つの列車の走行電圧と速度は同じ程度の車両とし、車両の編成は各セクションの長さより短くする。
【0161】
したがって、仮に前部の車両に後部の車両が追いつきそうになっても、前部車両の直後のセクションは停止電圧のため、進行することがなく、自動的に列車は停止状態になる。この状態は前部車両が次のセクションに移動するまで続き、次のセクションに移動すると、一時停止中の後部車両は再び走行可能になる。図17、図18は以上の手順の流れ図を示している。
【0162】
以上の説明で理解されるように、反時計方向運転であっても、時計方向運転とはセクションの前後が逆隣となるだけで同様に実現できることになる。
【0163】
従来はこの自動運転を行うとき、各車両にデコーダとモータドライバを積載し、線路に走行用の直流電源とデコーダ制御用の高周波信号を重畳し、各車両のデコーダ毎を指令する制御信号を送って制御していた。更に線路側に車両位置検出センサーも必要であったが、本発明では車両の改造、位置検出センサー等を不要にしてこのようなATS運転が行えることになる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、ワンチップマイコンを複数使用してマイコン間をシリアルポート接続としてパソコンと接続することにより、10箇所以上のセクションの数、多数のポイントを制御して更に大規模に発展できる。
【0165】
本発明は、コンピュータが他の機械を制御する自動制御の分野での教育用教材としての価値もある。
【符号の説明】
【0166】
10 単線レール
20 マイコン部
21 位置検出部
30 速度情報検出部
40 速度情報PWM波形発生部
45 ポイント制御部
50 パソコン
51 実物換算時速算出部
52 直流実効値計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置において、
モータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、
動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成したことを特徴とする鉄道模型の自動運転装置。
【請求項2】
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置のモータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成した鉄道模型の自動運転装置において、
動力車の現在速度を監視し、現在速度と一定速度に設定する速度との差を電圧値に換算して計算して得た修正信号を、外部のパソコン部からマイコン側へ供給して一定速度を保持するようにした鉄道模型の自動運転装置。
【請求項3】
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した鉄道模型の自動運転装置のモータの電流を検出して割り込み信号を取得し、割り込み信号をマイコン側のメインルーチンに割り込み処理をして動力車の現在位置を停止・走行にかかわらず検出する位置検出部と、動力車の走行時にマイコン側のRAMに格納する割り込み信号のカウント数と各セクションのレール長とから速度を計算する速度情報検出部とより構成した鉄道模型の自動運転装置において、
動力車の現在速度を監視し、動力車の停止セクションへの進入時からパソコン側タイマーでカウントしたカウント値と、設定した停止位置までの距離とから、モータの電源供給を停止する時間を計算する任意位置停止部を設けた鉄道模型の自動運転装置。
【請求項4】
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した自動運転装置を用いた鉄道模型の自動運転方法において、
各ポイントを列車1用に切り替えるためのパソコン部からの指令をマイコン側へ送信し、
次に全てのセクション電気極性を列車1の前進側に設定し、
初回のみ列車1用の起動電圧を全てのセクションに与え、
起動電圧を動力車が直線セクションに達するまで保持し、
直線のセクションの速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定して次の線路電圧情報としてメモリーに格納し、
線路電圧を動力車が停止セクションに達するまで保持し、
停止セクションに達した瞬間からマイコン部のタイマーを起動して列車1の停止時間設定値と一致するまで待ち、一致したとき停止セクションの線路電圧を停止電圧に設定して列車1を停止させる第1の手順と、
次に、タイマーによる一定時間後、各ポイントを列車2用に切り替えて全てのセクションを列車2用に設定とし、
初回のみ列車2の起動電圧2を全てのセクションに与え、
起動電圧を動力車がセクション2に達するまで保持し、
直線のセクションの速度より算出した線路電圧を全てのセクションに設定して次の線路電圧情報としてメモリーに格納し、
線路電圧を動力車が停止セクションに達するまで保持し、
停止セクションに達した瞬間からマイコン部のタイマーを起動して列車2の停止時間設定値と一致するまで待ち、一致したとき停止セクションの線路電圧を停止電圧に設定して列車2を停止させる第2の手順とより構成し、
一定時間後に第1の手順に戻る第3の手順を必要により加えるように構成したことを特徴とする鉄道模型の2列車自動運転方法。
【請求項5】
全線路を複数のセクションに分割して夫々絶縁処理した各セクションのレールに、デジタルの制御信号及びモータドライブ信号を供給した自動運転装置を用いた鉄道模型の自動運転方法において、
単線かつ同方向へ2列車を運行する線路と列車の配置とし、
車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にし、
車両の走行によって車両が次のセクションに移ったとき停止電圧区間も次のセクションに移動して常に車両のあるセクションの直後のセクションを常に停止電圧にすると共に、
停止電圧区間以外のセクションに走行電圧を与えて2列車を同時に走行させることを特徴とする鉄道模型の2列車追突防止自動運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−252955(P2010−252955A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104929(P2009−104929)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(308011085)
【Fターム(参考)】