説明

鉄道模型車両の自動連結器

【課題】実物の自動連結器と良く似た形状でありながら構造が簡単で、部品点数が少なく、組立が容易な鉄道模型車両の自動連結器を提供する。
【解決手段】連結器本体2は、連結器胴4aの先端部にナックル部4bが基端部に係止部4cが形成されたナックル部連結器部材4と、連結器胴5aの先端部に受け部5bが基端部に係止部5cが形成された受け部連結器部材5からなり、受け部5bは連結位置及び解放位置間で変位する。支持部材3は、支持板6aと、支持板6に立設されて係止部4c,5cと係合する支持軸6bと、支持軸6bの外側に係止部4c,5cを囲むように連設されたバネ部6cが一体に形成された下部支持部材6と、下部支持部材6に固定されて連結器本体2を挟持する上部支持部材7からなり、連結器本体2と支持部材3との間に車両が曲線部を走行するときに連結器本体2を曲線部に追従させるガイド機構8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道模型車両の自動連結器に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型車両においては、車両同士を連結する連結器としてアーノルド式の連結器を始めとして種々の構造の自動連結式の連結器(自動連結器)が提案されている。
例えば、鉄道模型車両本体に固定された支持ケースに収容されて左右に揺動可能に支持され、上方から見て一側部が開放したフック形状のナックル部の開放部側に親指状の受け部が配置され、常時はコイルバネにより基準位置へ復帰力が与えられていると共に受け部とナックル部が相対的に開放部閉じ側の連結状態位置に付勢され、ナックル部に斜め下方に延出して設けられた金属棒がレール間に設置されたマグネットの磁力によりナックル部の位置する側に引き付けられることで、連結が解放されるように構成した自動連結器、すなわち、連結機能及び連結を解放する機能の両方を有する自動連結器が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連結器は、実物の鉄道車両においても車両本体の大きさに比べて非常に小さい形状をなしており、これに伴い模型の鉄道車両における連結器も非常に小さい形状となる。このため、鉄道模型車両の連結器は、部品点数が少なく、かつ組み立てが容易であることが望ましい。
しかしながら、特許文献1に記載されている自動連結器は、基準位置への復帰力を付与すると共に受け部とナックル部を相対的に開放部閉じ側の連結状態位置に付勢するためのコイルバネや、ナックル部に斜め下方に延出して設けられてレール間に配設されたマグネットの磁力によりナックル部の位置する側に引き付けられる金属棒を備えていることから、構造が複雑であると共に部品点数が多く、その分だけ組み立てが難しいうえ、高価になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、実物の自動連結器と良く似た形状でありながら構造が簡単で、部品点数が少なく、その結果、組立が容易で且つ安価な鉄道模型車両の自動連結器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明に係る鉄道模型車両の自動連結器は、連結器胴の先端部に上方から見て一側部が開放したフック状のナックル部とこのナックル部の開放部側に配置され開放部閉じ側の連結位置と開放部開き側の解放位置に変位可能な親指状の受け部とを有する連結器本体と、該連結器本体を左右に揺動可能に支持して鉄道模型車両の端部に取り付ける支持部材とからなる鉄道模型車両の自動連結器であって、 前記連結器本体は、ナックル部連結器部材と受け部連結器部材からなり、前記ナックル部連結器部材は、連結器胴の先端部に前記ナックル部が形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部が形成され、前記受け部連結器部材は、連結器胴の先端部に受け部が形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部が形成され、これらのナックル部連結器部材と受け部連結器部材とが重ねられて相対回動可能とされ、前記受け部を前記連結位置又は解放位置に変位可能とされ、前記支持部材は、下部支持部材と上部支持部材からなり、前記下部支持部材は、前記連結器胴の基端部側と係止部を載置する支持板と、該支持板に立設され前記係止部と係合して前記連結器本体を左右に揺動可能に支持する支持軸と、該支持軸の外側に前記係止部を囲繞するように連設され先端部が前記連結器胴の基端部側の両側部を挟持して基準位置への復帰力を付与するバネ部とが一体に形成され、前記上部支持部材は、前記連結器本体の連結器胴の基端部側と係止部の上部を覆い且つ前記下部支持部材に固定されて前記連結器本体を挟持し、前記連結器本体と前記支持部材との間に前記支持部材に前記連結器本体を係止すると共に前記車両が曲線部を走行するときに前記連結器本体を前記曲線部に追従させるガイド機構を設けたことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る鉄道模型車両の自動連結器において、連結器胴の先端部にナックル部が形成され、基端部に略U字形状をなす係止部が形成されたナックル部連結器部材と、連結器胴の先端部に受け部が形成され、基端部に略U字形状をなす係止部が形成された受け部連結器部材とを重ねて連結器本体を形成する。
この際、ナックル部連結器部材と受け部連結器部材とは、相対回動可能とされていて、受け部は、連結位置又は解放位置に変位可能とされている。
【0008】
また、本発明に係る鉄道模型車両の自動連結器では、下部支持部材の支持軸とバネ部との間に連結器本体の係止部を収容すると共に、バネ部の両端部の間に連結器胴を収容して支持板に連結器胴の基端部側と係止部を載置し、上部支持部材を被せて下部支持部材に固定する。すなわち、支持部材内に連結器本体を収容する。
ここで、バネ部から常に基準位置に復帰する方向の力が付与されている連結器本体は、車両が曲線部を走行する段階において、ガイド機構によりバネ部からの復帰力に抗して曲線部に応じて揺動して追従するので、車両が曲線部をスムーズに走行し得ることとなり、連結器の姿態の見栄えも良いものとなる。
【0009】
本発明の請求項2に係る鉄道模型車両の自動連結器において、前記連結器本体は、前記連結器胴を上下に分割して上側の連結器胴の先端部に前記ナックル部又は受け部を形成し、基端部に前記係止部を形成し、下側の連結器胴の先端部に前記受け部又はナックル部を形成し、基端部に前記係止部を形成したことを特徴としている。
このように、連結器胴を上下に分割して、一方の連結器胴の先端部にナックル部を形成すると共に基端部に係止部を形成してナックル部連結器部材を形成し、他方の連結器胴の先端部に受け部を形成すると共に基端部に係止部を形成して受け部連結器部材を形成し、これらの連結器部材同士を重ねて連結器本体を形成することで、連結器本体の構造の簡略化が図られることとなる。
【0010】
本発明の請求項3に係る鉄道模型車両の自動連結器において、前記ガイド機構は、前記連結器胴の基端部側の上面又は下面に突設されたガイドピンと、前記上部支持部材又は下部支持部材に前記連結器胴の基端部側から先端部側の左右方向に向って略V字形状に延出して形成され前記ガイドピンと係合するガイド溝からなり、前記連結器本体が前記支持部材から脱落することを防止すると共に前記車両が前記曲線部を走行するときに前記ガイドピンが前記ガイド溝の前記曲線部の内側に位置する側の溝内を移動して前記連結器本体を前記曲線部に応じて揺動させ且つ前記支持部材から引き出すことを特徴としている。
【0011】
上記連結器本体の連結器胴に突設されたガイドピンを支持部材に設けられたガイド溝に係合させることで、連結器本体の支持部材からの脱落を防いでいる。一方、車両が曲線部を走行する段階では、ガイドピンがガイド溝の曲線部の内側に位置する側の溝内を移動して曲線部に応じて揺動するので、連結器本体は支持部材から引き出され、これにより、車両は、曲率半径の小さい曲線部を円滑に走行し得ると共に、連結された隣接する車両の各端部同士の干渉が阻止されるうえ、連結器の姿態も見栄えが良くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る鉄道模型車両の自動連結器では、上記した構成としているので、実物の自動連結器と良く似た形状でありながら、構造が簡単で且つ部品点数が少なく、その結果、組み立て容易化及びコストの低減を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
また、本発明の請求項2に係る鉄道模型車両の自動連結器では、上記した構成としたから、より一層の構造の簡略化を実現でき、本発明の請求項3に係る鉄道模型車両の自動連結器では、上記した構成としたため、請求項1に係る鉄道模型車両の自動連結器の効果に加えて、連結器の姿態の見栄えを良好なものとすることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る鉄道模型車両の自動連結器の斜視図である。
【図2】図1に示した自動連結器の分解斜視図である。
【図3】図2に示した自動連結器の下部支持部材に連結器本体を組付けた状態の上面図である。
【図4】図1に示した自動連結器の上面図である。
【図5】図1に示した自動連結器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る鉄道模型車両の自動連結器を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動連結器(以下「連結器」という)1は、連結器本体2と、連結器本体2を支持する支持部材3とから主として構成されている。連結器本体2は、ナックル部4bを有するナックル部連結器部材4と受け部5bを有する受け部連結器部材5とにより形成されており、一方、支持部材3は、下部支持部材6と上部支持部材7とにより形成されている。
【0015】
連結器本体2のナックル部連結器部材は、図2に示すように、棒状をなす連結器胴4aの先端部に上方から見て一側部が開放したフック状のナックル部4bが形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部4cが形成されている。この係止部4cは、連結器胴4aよりも拡幅されている。また、連結器胴4aの略中央から係止部4cまでの両側部4dが上方から見てテーパ状をなして幅狭となるように形成されている。
【0016】
連結器胴4aの係止部4cとの連設部の上面中央位置にガイドピン4eが突設されている。また、連結器胴4aとナックル部4bとの連設部の下面中央位置にストッパピン4fが突設されている。
一方、連結器本体2の受け部連結器部材5は、棒状をなす連結器胴5aの先端部に上方から見てナックル部4bの開放部側に親指状の受け部5bが形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部5cが形成されている。この係止部5cは、連結器胴5aよりも拡幅されている。また、連結器胴5aの略中央から係止部5cまでの両側部5dが上方から見てテーパ状をなして幅狭となるように形成されている。
【0017】
連結器胴5aと受け部5bとの連設部の上面中央位置にストッパピン4fと対応して左右方向(横方向)に長い長穴5fが形成されている。この長穴5fは、後述するようにストッパピン4fと係合してナックル部4bに対して受け部5bを開放部閉じ側の連結位置と開放部開き側の解放位置との間で変位可能としている。
上記ナックル部連結器部材4の連結器胴4a及び係止部4cと、受け部連結器部材5の連結器胴5a及び係止部5cとは、同一の形状とされており、連結器胴5a及び係止部5c上に連結器胴4a及び係止部4cを合致させて重ね合わせることができるように形成されている。
【0018】
これらのナックル部連結器部材4及び受け部連結器部材5は、プラスチック等の樹脂部材により一体に形成されており、且つ、ナックル部4b及び受け部5bは、実車に装備されている自動連結器のナックル部及び受け部と極めて良く似た形状に形成されている。そして、受け部連結器部材5の連結器胴5a及び係止部5c上に、ナックル部連結器部材4の連結器胴4a及び係止部4cを重ね合わせ、ストッパピン4fを長穴5fに係合させて連結器本体2を形成する。
【0019】
なお、以後説明を分かり易くするために重ね合わせた連結器胴4aと5a、係止部4cと5c、及び側部4dと5dを、連結器本体2の連結器胴2a、係止部2c、及び側部2dと称することとする。
すなわち、連結器本体2は、連結器胴を上下に分割して、上側の連結器胴4aの先端部にナックル部4bを形成すると共に基端部に係止部4cを形成し、下側の連結器胴5aの先端部に受け部5bを形成すると共に基端部に係止部5cを形成して、ナックル部連結器部材4及び受け部連結器部材5を相対的に回動可能とし、且つ、上側の連結器胴4aの先端部の下面に設けたストッパピン4fと、下側の連結器胴5aの先端部の上面に設けた長穴5fとを係合させるようにして形成されている。これにより、ナックル部4bに対して受け部5bを連結位置又は解放位置に変位可能としている。
【0020】
下部支持部材6は、連結器本体2の連結器胴2aの基端部側と係止部2cを載置する支持板6aと、連結器本体2を左右に揺動可能に支持する支持軸6bと、連結器本体2を基準位置に復帰させるバネ部6cとにより形成されている。
支持軸6bは、円筒状をなし支持板6aの後部側(係止部5cを載置する側)の中心位置に立設されており、上端面に係止爪6dが周方向に等間隔をなして複数、例えば2本形成されている。この支持軸6bは、外周面に連結器本体2の係止部2cが摺接して回動可能とされている。また、支持板6aの前側両側部に上部支持部材7を固定するための孔6eが設けられている。
【0021】
バネ部6cは、支持軸6bの後部の左右両側から薄板状をなして当該支持軸6bを同心的に囲むように対称に延出し、先端部6f,6fがくびれて支持板6aの前端部近傍位置まで前後方向の中心線の両側に略平行に延出して開口している。バネ部6cの幅は、支持軸6bの高さよりも僅かに狭く形成されており、下端面が支持板6aから僅かに上方に位置し、上端面が支持軸6bの上端面よりも僅かに下方に位置している。これにより、バネ部6cは、変形可能とされている。
【0022】
支持軸6bとバネ部6cとの間隔は、連結器本体2の係止部2cが回動自在に収容可能に設定されており、先端部6f,6fの間隔は、連結器胴2aの幅よりも僅かに狭く設定されている。そして、バネ部6cの先端部6f,6fが連結器胴2aの基端部側の両側部4d,5dに当接可能とされている。
この下部支持部材6は、プラスチック等の樹脂部材により一体に形成されており、バネ部6cは弾性を有している。このように、下部支持部材6の支持板6aと、支持軸6b及びバネ部6cとを一体に形成することで、部品点数の低減を図ることが可能となると共に後述するように組み付けが容易となる。
【0023】
上部支持部材7は、下部支持部材6の支持板6aと略同じ大きさの板体をなし、支持軸6bと対応する位置に支持軸6bの内径と略同径の孔7bが設けられ、当該孔7bの内周面に係止爪6dと係合する係止孔7cが設けられている。また、下面の前側両側部に上部支持部材6の孔6eと対応して支持脚7dが形成され、その下端面に孔6eに嵌合する突起7eが形成されている。支持脚7dの長さは、下部支持部材6の支持軸6bと同じ長さとされている。
【0024】
上部支持部材7の孔7bの前側にナックル部連結器部材4のガイドピン4eと係合するガイド溝7fが設けられている。このガイド溝7fは、孔7b側から前端部の左右方向に向って延出する扁平な略V字形状に形成されている。このガイド溝7fは、ガイドピン4eと協働して上部支持部材7に連結器本体2を係止すると共に、車両が曲線部(カーブ)を走行するときに連結器本体2を曲線部に追従させながら支持部材3から引き出すためのガイド機構8を構成している。
【0025】
また、上部支持部材7の後端部には車体の端部に固定するための取付部7gが形成されている。この上部支持部材7もプラスチック等の樹脂部材により形成されている。
次に、上記連結器1の組み付け及び作用について説明する。
まず、図2に示すように、受け部連結器部材5の連結器胴5a及び係止部5c上にナックル部連結器部材4の連結器胴4a及び係止部4cを重ね合わせ、ストッパピン4fを長穴5fに係合させて連結器本体2を形成する。
【0026】
次いで、図3に示すように、下部支持部材6の上方から支持軸6bとバネ部6cとの間に連結器本体2の係止部2cを収容すると共に、バネ部6cの先端部6f,6fの間に連結器胴2aを収容する。
このとき、バネ部6cの先端部6f,6fは、連結器胴4a及び連結器胴5aのテーパ状をなす側部4d及び5dに弾性的に接することで、連結器胴4a及び5aを基準位置に留め置くと共に内方に引き込む機能を有し、連結器本体2を図示の基準位置に保持する。
【0027】
次いで、図2に示すように、上部支持部材7を連結器本体2の基端部側と係止部2cの上に被せて連結器本体2のガイドピン4eをガイド溝7fに係合し、支持軸6bの係止爪6dを係止孔7cに係合させると共に、支持脚7dの下端面に形成されている突起7eを下部支持部材6の孔6eに圧入する。
このようにして、下部支持部材6に上部支持部材7を固定し、これらの間に連結器本体2を収容することで、連結器1が形成される。
【0028】
連結器本体2が図3に示す基準位置にある状態において、図4に示すように、ガイドピン4eがガイド溝7fの中央に位置しており、当該ガイドピン4eにより連結器本体2の支持部材3からの脱落を防止している。そして、連結器胴2aの前端部側と、ナックル部4b及び受け部5bが支持部材3の前端部3aから突出しており、バネ部6cは、図5に示すように、その下端面及び上端面が下部支持部材6の支持板6a及び上部支持部材7から僅かに離れていて、変形を妨げないようになっている。
【0029】
連結器本体2を形成しているナックル部連結器部材4の連結器胴4a及び係止部4cと、受け部連結器部材5の連結器胴5a及び係止部5cは、合致して重ね合わされており、バネ部6cのバネ力により、図1、図3及び図4に示すように、受け部5bがナックル部4bに対して開放部閉じ側の連結位置に保持されている。
この連結器1は、図4に2点鎖線で示す模型車両10の端部10aに、上部支持部材7の取付部7gを図示しないねじで固定することで、支持部材3の前端部3aが模型車両10の端部10aと略面一を成すようにして取り付けられ、この状態において、連結器胴2aの前端部側と、ナックル部4b及び受け部5bとが当該模型車両10の端部10aから突出する。これにより、連結器1は、実車に装備されている連結器と良く似た状態で取り付けられ、見栄えが向上する。
【0030】
図4において、模型車両10の連結器1の左側に図示しない模型車両の連結器が連結される。この連結される模型車両の連結器も連結器1と同様に形成されている。連結器1と相手側の連結器を連結する場合、連結器1の受け部5bと相手方の連結器の受け部が開放部閉じ側の連結位置に保持されている。この状態において連結器1を相手方の連結器に押し付けると、連結器1のナックル部4bが相手方の連結器の受け部を開放部開き側(横方向)に押し、同時に相手方の連結器のナックル部が当該連結器1の受け部5bを開放部開き側(横方向)に押す。
【0031】
このように、連結器1は、受け部5bが開放部開き側に押されると、図3に示す連結器胴5aがバネ部6cのバネ力に抗して回動し、受け部5bが図2に示すストッパピン4fと長穴5fによりナックル部4bに対して連結位置から解放位置まで変位する。そして、連結器1のナックル部4bが相手方のナックル部と係合すると、連結器胴5aがバネ部6cのバネ力により開放部閉じ側に基準位置まで回動されて受け部5bが連結位置に復帰する。相手方の連結器についても同様である。これにより、連結器1と相手方の連結器とが連結される。
【0032】
連結器1は、図4に示すように、連結器胴2aの前端部側と、ナックル部4b及び受け部5bが模型車両10の端部10aから突出しているために、連結される車両間の間隔が実車の場合と同様に狭くなるが、模型車両が直線部を走行しているときには隣り合う模型車両の端部同士が干渉することはない。
図4において、模型車両10が曲線部(カーブ)に至り、模型車両10が例えば矢印Aで示す斜め方向を向くと、これに伴い連結器本体2がバネ部6cのバネ力に抗して矢印B方向に揺動し、ガイドピン4eが図示のガイド溝7fの中央位置から曲線部の内側に位置する側のガイド溝7f’内を矢印Cで示す前端部方向に移動する。すなわち、連結器本体2が矢印Dで示すように曲線部の内側に揺動すると共に支持部材3から引き出される。
【0033】
このとき、連結器本体2は、図2及び図3に示すように、係止部2cが略U字形状をなして後部が開口されているので、支持軸6bに係止されることなく引き出される。連結器1に連結されている図示しない相手側の連結器も同様にして連結器本体が曲線部の内側に揺動すると共に支持部材から引き出される。
このように、連結器本体2を曲線部に追従させて揺動させることにより、車両を円滑に走行させることが可能となり、連結器本体2を支持部材3から引き出すことにより、連結された隣り合う車両間の間隔が広くなり、車両の端部同士が干渉することが阻止され、曲率半径の小さい曲線部でも良好に走行することが可能となる。また、曲率半径が小さい曲線部を走行する場合でも連結器の姿態の見栄えも良い。そして、車両が曲線部を通過して直線部に至ると、連結器1の連結器本体2がバネ部6cのバネ力により基準位置に復帰されて図4に示す状態に復帰する。
【0034】
なお、上記実施形態では、連結器本体2を樹脂部材で形成したが、亜鉛合金やアルミニウム合金等の金属部材をダイカスト成形により形成してもよい。実際の車両に装着されている自動連結器は、連結器同士の連結面間に遊間(遊び)があることから、列車の発車時に機関車の連結器から最後尾の車両の連結器までの間で順次音が発生する。上記実施形態における模型車両の連結器1でも、連結器同士の連結面間に遊間(遊び)がある。そこで、連結器本体2を金属部材で形成するようになせば、模型車両の発車時に連結器同士間に音を発生させることが可能となり、使用者の趣味感を満足させることが可能となる。
【0035】
また、上記実施形態において、連結器本体2は、連結器胴2aを上下に分割し、上側の連結器胴4aの先端部にナックル部4bを形成して、下側の連結器胴5aの先端部に受け部5bを形成したが、これとは反対に上側の連結器胴4aの先端部に受け部を形成して、下側の連結器胴5aの先端部にナックル部を形成するようにしてもよい。
また、上側の連結器胴4aの上面にガイドピン4eを突設し、上部支持部材7にガイド溝7fを形成してガイド機構8を形成するようにしたが、下側の連結器胴5aの下面にガイドピンを突設し、下部支持部材6にガイド溝を形成するようにしてもよい。
さらに、ガイド溝は、扁平な略V字形状に限るものではなく、他の形状例えば円弧状或いは楕円形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 連結器(自動連結器)
2 連結器本体
2a 連結器胴
2c 係止部
3 支持部材
3a 前端部
4 ナックル部連結器部材
4a 連結器胴
4b ナックル部
4c 係止部
4d 側部
4e ガイドピン
4f ストッパピン
5 受け部連結器部材
5a 連結器胴
5b 受け部
5c 係止部
5d 側部
5f 長穴
6 下部支持部材
6a 支持板
6b 支持軸
6c バネ部
6d 係止爪
6e 孔
6f 先端部
7 上部支持部材
7b 孔
7c 係止孔
7d 支持脚
7e 突起
7f,7f’ ガイド溝
7g 取付部
8 ガイド機構
10 模型車両
10a 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結器胴の先端部に上方から見て一側部が開放したフック状のナックル部とこのナックル部の開放部側に配置され開放部閉じ側の連結位置と開放部開き側の解放位置に変位可能な親指状の受け部とを有する連結器本体と、該連結器本体を左右に揺動可能に支持して鉄道模型車両の端部に取り付ける支持部材とからなる鉄道模型車両の自動連結器であって、
前記連結器本体は、ナックル部連結器部材と受け部連結器部材からなり、
前記ナックル部連結器部材は、連結器胴の先端部に前記ナックル部が形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部が形成され、
前記受け部連結器部材は、連結器胴の先端部に受け部が形成され、基端部に上方から見て略U字形状をなす係止部が形成され、これらのナックル部連結器部材と受け部連結器部材とが重ねられて相対回動可能とされ、前記受け部を前記連結位置又は解放位置に変位可能とされ、
前記支持部材は、下部支持部材と上部支持部材からなり、
前記下部支持部材は、前記連結器胴の基端部側と係止部を載置する支持板と、該支持板に立設され前記係止部と係合して前記連結器本体を左右に揺動可能に支持する支持軸と、該支持軸の外側に前記係止部を囲繞するように連設され先端部が前記連結器胴の基端部側の両側部を挟持して基準位置への復帰力を付与するバネ部とが一体に形成され、
前記上部支持部材は、前記連結器本体の連結器胴の基端部側と係止部の上部を覆い且つ前記下部支持部材に固定されて前記連結器本体を挟持し、
前記連結器本体と前記支持部材との間に前記支持部材に前記連結器本体を係止すると共に前記車両が曲線部を走行するときに前記連結器本体を前記曲線部に追従させるガイド機構を設けた
ことを特徴とする鉄道模型車両の自動連結器。
【請求項2】
前記連結器本体は、前記連結器胴を上下に分割して上側の連結器胴の先端部に前記ナックル部又は受け部を形成し基端部に前記係止部を形成し、下側の連結器胴の先端部に前記受け部又はナックル部を形成し基端部に前記係止部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の鉄道模型車両の自動連結器。
【請求項3】
前記ガイド機構は、前記連結器胴の基端部側の上面又は下面に突設されたガイドピンと、前記上部支持部材又は下部支持部材に前記連結器胴の基端部側から先端部側の左右方向に向って略V字形状に延出して形成され前記ガイドピンと係合するガイド溝からなり、前記連結器本体が前記支持部材から脱落することを防止すると共に前記車両が前記曲線部を走行するときに前記ガイドピンが前記ガイド溝の前記曲線部の内側に位置する側の溝内を移動して前記連結器本体を前記曲線部に応じて揺動させ且つ前記支持部材から引き出すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄道模型車両の自動連結器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−36539(P2011−36539A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188371(P2009−188371)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(509232234)株式会社井門コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】