説明

鉄道模型車両の車輪支持構造

【課題】この発明は部品点数を増大させることなく、車輪にクッション性を与えるようにした鉄道模型車両の車輪支持構造を提供する。
【解決手段】車輪7を回動自在に支承し、かつレールから供給された電力を案内する金属製の軸受集電板20に、車輪7を上下動自在に支承するバネ部40を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉄道模型車両の車輪支持構造に関し、詳しくは鉄道模型車両において車軸の両端に固着された車輪を上下動可能に支持する車輪の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道模型車両では、車軸の両端にそれぞれ車輪を固着し取り付けた車輪体を備えている。
【0003】
そして、この車輪体の支持構造としては、一般に車軸を台車枠又はフレームに回動自在に支持させ、これにより車輪体を支持させる構造であった。
【0004】
また、従来の鉄道模型車両では、1つの台車枠又はフレームに2あるいは2以上の複数の車輪体を所定の間隔をあけて配列するのが一般的であった。
【0005】
この台車枠又はフレームは、通常、合成樹脂又はアルミダイキャスト等で一体成形されることが多く、このような台車枠又はフレームの内側面には車輪体の軸受けとして機能する小さな穴が形成されており、この軸受け用の穴に各車輪の外側中心から突出する回転中心軸を嵌装することで各車輪体を回動自在に軸受け支持していた。
【0006】
また、従来では、車輪体を支承する構造として、上述した各車輪の外側中心から突出する回転中心軸を、レールから供給された電力を案内する金属製の軸受集電板により回動自在に支承するようにしたものもある。
【0007】
しかしながら、上述した従来の鉄道模型車両における車輪体の支持構造は、単に軸受け用の穴に回転中心軸を挿入することで各車輪体を軸受け支持し、また軸受集電板により単に各車輪体を回動自在に支承するだけであるので、車輪体の支持構造にはまったくクッション性はなく、そのため鉄道模型車両がレール上を走行している時に、レールの継ぎ目による段差又はレールのねじれ等を含む変形による凹凸を通過する際に車輪の浮き上がりを招き、或いはレールから外れ、その結果、車輪を介して供給される電動モータへの集電機能が損なわれて集電障害による電動モータの停止や、車両の脱線が起こる、という問題があった。
【0008】
なお、上述した問題を解決するため、従来では車輪にクッション機能をもたせるため車軸に独立部品としてのバネ部材(板バネ、コイルバネ等)を介在させ、これによりレールの継ぎ目による段差又はレールのねじれ等を含む変形による凹凸を通過する際の車輪の浮き上がりを防止して、集電障害による電動モータの停止や、車両の脱線を防止するようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した車輪にクッション機能をもたせるため車軸に独立部品としてのバネ部材を介在させるようにした従来の鉄道模型車両の車輪支持構造によると、新たに独立部品としてのバネ部材を車軸に介在させるから、部品点数及び組立て工程が増大し、鉄道模型車両のコストアップの要因となる難点があった。
【0010】
この発明は上述した事情に鑑み、部品点数を増大させることなく、車輪にクッション性を与えるようにした鉄道模型車両の車輪支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、この発明では、レールから供給された電力を案内するとともに、車輪を回動自在に支承する金属製の軸受集電板が配設された鉄道模型車両の車輪支持構造において、前記軸受集電板に前記車輪を上下動自在に支承するバネ部を形成するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上述した、本願発明に係る鉄道模型車両の車輪支持構造によると、従来から車輪を支持し、かつ電力を供給する給電ラインとしての役割を果たす軸受集電板に、車輪を上下動自在に支承するバネ部を形成するようにしたから、この軸受集電板のバネ部が車輪のクッションとして機能し、このため新たに部品点数および組立工定数を増大させることなく車輪にクッション性を与えることができるので、クッション製を有する鉄道模型車両の車輪支持構造を安価に提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明に係る鉄道模型車両の車輪支持構造の一実施例を詳述する。
【0014】
図1はこの発明に係る鉄道模型車両の車輪支持構造を示す台車1の組立分解斜視図で、特に台車1の裏側から見た組立分解斜視図である。
【0015】
この台車1は、図示せぬ鉄道模型車両の車両本体に装着される台車枠2と、この台車枠2に嵌着支承されるハウジング3とから構成されている。
【0016】
このハウジング3内には図示せぬ駆動モータの動力を伝達する歯車減速機構が収容されている。
【0017】
そして、このハウジング3の下縁には所定の間隔で配置される三個の車輪体4,5,6の各車軸4a,5a,6aを回転且つ上下動自在に緩やかに嵌合する略円弧形状の切り欠3a,3b,3cが形成されている。
【0018】
なお、この三個の車輪体4,5,6を構成する各車軸4a,5a,6aの両側方には従来と同様にそれぞれ一対の車輪7が固着され、この各一対の車輪7の中心部には先端が略三角錐形状の回転中心軸8が突出している。
【0019】
なお、図1で、符号9、10は、前記ハウジング3内に配設される図示せぬ歯車減速機構の一部を構成する中間ギァで、この各中間ギャ9,10のうち、中間ギャ9は、二つの車輪体4,5の各車軸4a,5aに固着された従動ギャ11,12と歯合し、この二つの車輪体4,5を回転駆動するものである。
【0020】
一方、上述した三個の車輪体4,5,6を構成する各車輪7の中心部に突設された回転中心軸8を回動自在に支承する軸受手段は、レールから供給された電力を図示せぬ駆動モータへ案内する左右一対の金属製の軸受集電板20に形成されている。
【0021】
この金属製の軸受集電板20には、ハウジング3の両側方にそれぞれ突設された一対の位置決めボス3d,3eにそれぞれ嵌合する一対の位置決め孔21,22が穿設され、この一対の位置決め孔21,22を対応する一対の位置決めボス3d,3eに嵌着することにより上述した一対の軸受集電板20は、ハウジング3の両側方に位置決め支承される。
【0022】
一方、この一対の軸受集電板20には、前記各車輪7の中心部に突設された先端が略三角錐形状の回転中心軸8と対向する位置に、当該回転中心軸8の先端を嵌挿して回動自在に支承する断面略円錐形状の軸受凹部23,24,25が突設されている。
【0023】
そして、この軸受集電板20の各軸受凹部23,24,25に対応する各車輪7の回転中心軸8を構成する略三角錐形状の先端を嵌装させることにより、上述した三個の各車輪体4,5,6は一対の軸受集電板20間に回動自在に支承されることとなる。
【0024】
一方、この軸受集電板20には、各車輪7を支承した状態の拡大正面図で示す図2のように、軸受集電板20に形成された各軸受凹部23,24,25のうち、軸受凹部24が、一端が上下動自在な自由端としたバネ部40に形成されている。
【0025】
このバネ部40は軸受集電板20の基体20aから略L字形に折り曲げ延設された一本のアーム41からなり、その一端41aは基体20a側に固定され、他端41bが上下動自在な自由端となリ、この他端(自由端)41bに軸受凹部24が形成されている。
【0026】
このように、他端41bを自由端としたアーム41からなるバネ部40の当該他端41bに軸受凹部24を形成し、そこに車輪7の回転中心軸8の先端を支承させると、車輪体5の全体が矢印で示すように、弾発性を持って上下動自在となり、このため、軸受集電板20のバネ部40が車輪7のクッションとして機能し、このためレールの継ぎ目による段差又はレールのねじれ等を含む変形による凹凸を通過する際の車輪7の浮き上がりを防止して、集電障害による電動モータの停止や、車両の脱線を防止することとなる。
【0027】
なお、上記実施例では、三個の車輪体4,5,6のうち、中間の車輪体5の回転中心軸8を支承する軸受凹部24を、バネ部40を構成するアーム41の自由端41bに形成するようにして、車輪体5の車輪7のみににクッション性を付与させるようにしたが、この発明は上記実施例に限定されることなく、三個の車輪体4,5,6の全ての車輪7にクッション性を付与させることも勿論可能である。
【0028】
即ち、図2と同一部分を同一符号で示す図3のように、三個の車輪体4,5,6の各車輪7を支承する、軸受集電板20の各軸受凹部23,24,25を、それぞれバネ部40を構成するアーム41の自由端41bに形成すると、この各バネ部40により三個の車輪体4,5,6の全ての車輪7にクッション性を付与することが出来る。
【0029】
また上記実施例では、そして、このバネ部40を軸受集電板20の基体20aから略L字形に折り曲げ延設された一本のアーム41から構成するようにしたが、この発明は上記実施例に限定されることなく、図3と同一部分を同一符号で示す図4のように、軸受集電板20の基体20aから略U字形に折り曲げ延設された一本のアーム50から構成するようにしても良い。このように、略U字形に折り曲げ延設された一本のアーム50によりバネ部40を構成すると、そのクッション性が一層向上する。
【0030】
なお、この場合も、前述したのと同様に三個の車輪体4,5,6の全ての車輪7にクッション性を付与することが出来る。
【0031】
さらに、上記各実施例では、三個の車輪体4,5,6を回動自在に支承する軸受集電板20について詳述したが、この発明は上記実施例に限定されることなく、三個の車輪体4,5,6以上の数の車輪体、例えば図5に示すように、4個の車輪体4,5,6,60を支承する軸受集電板20に適用してもよく、本願発明において車輪体の数は実施例に限定されることはない。なお、車輪体60の構造は他の車輪体4,5,6と略同一構造であることは言うまでもない。
【0032】
また上記各実施例のうち、図2、図3の実施例では、バネ部40を略L字形に折り曲げ延設した一本のアーム41から構成し、また図4の実施例では、バネ部40を略U字形に折り曲げ延設した一本のアーム50から構成するようにしたが、この発明は、上記実施例に限定されることなく図5に示すように、バネ部40を略U字形に複数回蛇行形成した一本のアーム70から構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本願発明は、部品点数を増大させることなく、車輪にクッション性を与えるようにした鉄道模型車両の車輪支持構造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はこの発明に係る、鉄道模型車両の車輪支持構造を示す台車の組立分解斜視図。
【図2】図2は、この発明に係る車輪支持構造を構成する軸受集電板の正面図。
【図3】図3はこの発明に係る車輪支持構造を構成する軸受集電板の他の実施例を示す正面図。
【図4】図4は、この発明に係る車輪支持構造を構成する軸受集電板のさらに他の実施例を示す正面図。
【図5】図5は、この発明に係る車輪支持構造を構成する軸受集電板のさらに他の実施例を示す正面図。
【符号の説明】
【0035】
7…車輪
20…軸受集電板
40…バネ部
41,50,70…アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールから供給された電力を案内するとともに、車輪を回動自在に支承する金属製の軸受集電板が配設された鉄道模型車両の車輪支持構造において、
前記軸受集電板に前記車輪を上下動自在に支承するバネ部を形成するようにしたことを特徴とする鉄道模型車両の車輪支持構造。
【請求項2】
前記バネ部は、前記軸受集電板の基体から延設され、先端が自由端となるアームから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道模型車両の車輪支持構造。
【請求項3】
前記アームは略L字形に折り曲げ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄道模型車両の車輪支持構造。
【請求項4】
前記アームは略U字形に折り曲げ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄道模型車両の車輪支持構造。
【請求項5】
前記アームは略U字形に複数回蛇行し形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄道模型車両の車輪支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−202657(P2007−202657A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22649(P2006−22649)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(594007630)株式会社関水金属 (5)
【Fターム(参考)】