説明

鉄道用軸受洗浄装置

【課題】 鉄道車両の車軸に配設されるころ軸受の内周面に塗布されている古いグリースの除去を十分に行う。
【解決手段】 本発明に係る鉄道用軸受洗浄装置1は、鉄道車両の車軸に配設される円環状のころ軸受Bの洗浄を行う。そして、鉄道用軸受洗浄装置1は、回転軸240に対して回転可能に配設され、ころ軸受Bの中心軸と回転軸240とが略同軸に配置されるように、ころ軸受Bを支持する回転支持部材250,290と、回転軸240の上端部に配設され、該回転軸240の内部を介して圧送される洗浄用液体を、ころ軸受Bの内周面に対して噴射可能な液体噴射手段270と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車軸に配設されるころ軸受の洗浄を行う鉄道用軸受洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、安全性維持のために、3〜4年毎に定期点検が行われる。特に、鉄道用車両の定期点検では、鉄道用車両の車輪と車軸との間に嵌め込まれているころ軸受に塗布されているグリースの交換が行われる。
ころ軸受に塗布されているグリースの交換を行う際には、ころ軸受に塗布されている古いグリースを除去した後に、新しいグリースをころ軸受に塗布する必要がある。
従来、ころ軸受に塗布されている古いグリースの除去は、作業員の手作業により行われていた。具体的には、作業員の手作業により、グリース掻き出し用のヘラを用いて、ころ軸受からある程度の古いグリースを掻き取った後に、ころ軸受を白灯油等の洗浄用液体を充填された洗浄槽内に挿入し、ブラシを用いて、ころ軸受の全体を洗浄していた。
【0003】
しかしながら、ころ軸受は、内輪部材と外輪部材との間に複数のころが配設された複雑な構造となっているため、手作業による古いグリースの除去では、作業効率が悪く、隅々まで古いグリースを除去することが困難であった。特に、所定期間使用されたころ軸受のグリースは、金属粉や粉塵等が混入しているため、手作業による除去が困難となっている。
そこで、従来、ころ軸受に対して洗浄用液体を噴射することによって、ころ軸受に付着されている古いグリースを除去する装置が知られている(特許文献1参照)。
この装置では、複数の噴射ノズルが、搬送レール上を搬送される被洗浄物を包囲するように配設されている。そして、各噴射ノズルから洗浄用液体を所定圧力で噴射することによって、被洗浄物に塗布されている古いグリースを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−258714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、ころ軸受の内周面に塗布されている古いグリースの除去が不十分となる恐れがある。
本発明の課題は、鉄道車両の車軸に配設されるころ軸受の内周面に塗布されている古いグリースの除去を十分に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第一の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置は、鉄道車両の車軸に配設される円環状のころ軸受の洗浄を行う鉄道用軸受洗浄装置であって、回転軸に対して回転可能に配設され、前記ころ軸受の中心軸と前記回転軸とが略同軸に配置されるように前記ころ軸受を支持する回転支持部材と、前記回転軸の上端部に配設され、該回転軸の内部を介して圧送される洗浄用液体を前記ころ軸受の内周面に対して噴射可能な液体噴射手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第一の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置では、液体噴射手段が回転支持部材の回転軸の上端部に配設されていることによって、回転支持部材に支持されているころ軸受の内周面に対する洗浄用液体の噴射を効果的に行うことができる。
また、回転支持部材が回転軸に対して回転されることによって、ころ軸受の内周面の全周に対して洗浄用液体の噴射を行うことができる。
したがって、第一の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置によれば、ころ軸受の内周面に塗布されている古いグリースの除去を十分に行うことが可能となる。
また、第一の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置では、液体噴射手段が噴射する洗浄用液体が回転軸の内部を介して圧送されることにより、ころ軸受を回転支持部材に設置する際に、液体噴射手段が邪魔になることが防止され、回転支持部材へのころ軸受の設置を容易に行うことが可能となる。
ここで、回転軸としては、例えば、後述する回転軸240が該当する。回転支持部材としては、例えば、後述する回転部材250及び軸受設置治具290が該当する。液体噴射手段としては、例えば、後述する噴射ノズル270が該当する。
【0008】
また、第二の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置は、第一の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置において、前記回転支持部材は、前記ころ軸受の端面を支持する端面支持部と、前記ころ軸受の内周面を支持する内周面支持部と、を有することを特徴とする。
第二の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置では、回転支持部材がころ軸受の内周面を支持する内周面支持部を有することにより、回転支持部材におけるころ軸受の位置決めを容易に行うことが可能となる。
ここで、端面支持部としては、例えば、後述する第二支持部294、第一支持部293が該当する。内周面支持部としては、例えば、後述する支持柱295、第二支持部294、調整カラー296が該当する。
【0009】
さらに、第三の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置は、第一又は第二の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置において、前記液体噴射手段には、前記洗浄用液体を噴射可能な液体噴射口が複数設けられ、前記複数の液体噴射口が設けられている位置は、前記回転軸が延びる方向に沿ってずらされていることを特徴とする。
第三の発明に係る鉄道用軸受洗浄装置では、液体噴射手段が、回転軸が延びる方向に沿って位置をずらして設けられた複数の液体噴射口を有することによって、ころ軸受の内周面に対する洗浄用液体の噴射をさらに効果的に行うことが可能となる。
ここで、液体噴射口としては、例えば、後述する噴射口271が該当する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ころ軸受の内周面に塗布されている古いグリースの除去を十分に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道用軸受洗浄装置の正面図である。
【図2】図1に示す鉄道用軸受洗浄装置の側面図である。
【図3】図1に示す鉄道用軸受洗浄装置の平面図である。
【図4】設置ユニット及び載置ユニットの正面図である。
【図5】設置ユニットの側面図である。
【図6】図4に示す設置ユニット及び載置ユニットの平面図である。
【図7】洗浄装置及び搬送ユニットの正面図である。
【図8】図7に示す洗浄装置及び搬送ユニットの平面図である。
【図9】図7に示すA−A線に沿う断面図である。
【図10】図9に示す回転支持装置の拡大図である。
【図11】円錐ころ軸受用の軸受設置治具を示す。
【図12】洗浄用液体循環装置の正面図である。
【図13】図12に示す洗浄用液体循環装置の側面図である。
【図14】図12に示す洗浄用液体循環装置の平面図である。
【図15】円筒ころ軸受用の軸受設置治具を示す。
【図16】保持器用の軸受設置治具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、本発明に係る鉄道用軸受洗浄用装置を、鉄道用軸受洗浄装置1に適用している。鉄道用軸受洗浄装置1は、鉄道車両の車軸に配設される円環状のころ軸受B(図11参照)の洗浄を行う装置である。
【0013】
(鉄道用軸受洗浄装置1の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道用軸受洗浄装置の正面図である。図2は、図1に示す鉄道用軸受洗浄装置の側面図である。図3は、図1に示す鉄道用軸受洗浄装置の平面図である。
図1乃至3に示すように、鉄道用軸受洗浄装置1は、ころ軸受Bが設置される設置ユニット100と、設置ユニット100に設置されたころ軸受Bの洗浄を行う洗浄ユニット200と、洗浄ユニット200により洗浄されたころ軸受Bが載置される載置ユニット300と、ころ軸受Bの搬送を行う搬送ユニット400と、を備えている。
【0014】
(設置ユニット100の構成)
図4は、設置ユニット及び載置ユニットの正面図である。図5は、設置ユニットの側面図である。図6は、図4に示す設置ユニット及び載置ユニットの平面図である。なお、図4から図6では、洗浄ユニット200及び搬送ユニット400のそれぞれについて、全部又は一部の図示を省略している。
図4乃至6に示すように、設置ユニット100は、台座部110と、台座部110に配設された軸受設置治具120と、を有している。
台座部110は、天板111と、天板111を支持する枠体112と、を有し、テーブル状に形成されている。
軸受設置治具120は、金属により形成され、天板111の上面に配設されている。軸受設置治具120は、一対の支持脚121を介して天板111の上面に固定されている。軸受設置治具120は、円盤状の基礎板116と、基礎板116の上面に配設された複数の支持部材113と、を有している。本実施形態では、基礎板116の上面には、4つの支持部材113が配設されている。
【0015】
各支持部材113は、天板111の上面に配設された支持部114と、支持部114の上面に配設された支持柱115と、支持柱115に対して着脱可能に装着される調整カラー115aと、を有している。
支持部114及び支持柱115は、それぞれ円柱状に形成されている。支持柱115の外径は、支持部114の外径より小さく構成されている。そして、支持部114及び支持柱115は、同軸状に配設されている。
支持柱115の上端部は、上端に向かって縮径するように形成されている。調整カラー115aは、円筒状(リング状)に形成されている。調整カラー115aの外径は、支持部114の外径より小さく構成されている。また、調整カラー115aの内径は、支持柱115の外径と略同一に構成されている。調整カラー115aは、支持柱115に装着され、支持柱115の下端部の外周を覆うように配設される。そして、軸受設置治具120では、調整カラー115aを着脱することによって、内径の異なるころ軸受Bを設置することが可能となっている。
【0016】
ここで、調整カラー115aは、内径が異なる複数種類のころ軸受Bのそれぞれに対応するものが用意されている。具体的には、調整カラー115aは、外径が異なる複数種類のものが用意されている。そして、鉄道用軸受洗浄装置1によりころ軸受Bの洗浄を開始する際に、当該ころ軸受Bの内径に対応する調整カラー115aが、支持柱115に取り付けられる。
また、軸受設置治具120は、後述する軸受設置治具290と同様に、ころ軸受Bの種類・大きさのそれぞれに対応するものが用意されている。そして、鉄道用軸受洗浄装置1によりころ軸受Bの洗浄を開始する際に、当該ころ軸受Bの種類・大きさに対応する軸受設置治具120が、一対の支持脚121に取り付けられる。
【0017】
(設置ユニット100の作用)
設置ユニット100では、ころ軸受Bが、軸受設置治具120に設置される。本実施形態では、作業員の手作業により、ころ軸受Bが、軸受設置治具120に設置される。
具体的には、ころ軸受Bは、その中心軸が延びる方向を上下方向(図1、図4及び図5に示す上下方向)として、軸受設置治具120に設置される。この際、全ての支持部材113の支持柱115(支持柱115に調整カラー115aが装着されている場合には、支持柱115及び調整カラー115a)が、ころ軸受Bの内周面に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各支持部材113の支持部114の上面が、ころ軸受Bの下端面を支持する。また、各支持部材113の支持柱115(支持柱115に調整カラー115aが装着されている場合には、調整カラー115a)の外周面が、ころ軸受Bの内周面を支持する。これによって、軸受設置治具120において、ころ軸受Bの位置が固定される。
【0018】
そして、後述する鉄道用軸受洗浄装置1によるころ軸受Bの洗浄を開始するための操作ボタン204がON状態とされると、後述する搬送ユニット400による軸受設置処理が開始される。
【0019】
(洗浄ユニット200の構成)
図1及び図2に示すように、洗浄ユニット200は、台座部201と、台座部201に配設された洗浄装置210及び洗浄用液体循環装置220と、を有している。
台座部201は、天板202と、天板202を支持する枠体203と、を有し、テーブル状に形成されている。天板202の上面には、鉄道用軸受洗浄装置1によるころ軸受Bの洗浄を開始するための操作ボタン204が配設されている。
図7は、洗浄装置及び搬送ユニットの正面図である。図8は、図7に示す洗浄装置及び搬送ユニットの平面図である。図9は、図7に示すA−A線に沿う断面図である。図10は、図9に示す回転支持装置の拡大図である。なお、図10では、軸受設置治具290の図示を省略している。
図7から図9に示すように、洗浄装置210は、洗浄槽211と、回転支持装置230と、を有している。
【0020】
洗浄槽211は、天板が設けられておらず、上側が開放された箱状に形成されている。洗浄槽211の開放面は、前側に向かって低くなるように傾斜している。洗浄槽211の開放面には、この開放面を開閉可能な開閉蓋212が配設されている。開閉蓋212は、エアシリンダー213によって、開閉される。
洗浄槽211の底板には、洗浄用液体を排出するための排出孔(図示せず)が2つ設けられている。そして、各排出孔には、洗浄用液体を誘導する排出管214が配設されている。各排出管214は、排出孔に固定された第一排管214aと、第一排管214aの下端部に接続された第二排管214bと、を有している。各第二排管214bは、その内側に第一排管214aの下端部が挿入された状態で配設され、シリンダー214c(図12参照)によって、上下方向に沿って移動可能となっている。そして、各排出管214は、第二配管214bが上下方向に沿って移動されることによって、その全長を伸縮可能となっている。また、図10に示すように、洗浄槽211の底板には、回転支持装置230の後述する軸受部材260が配設される軸受孔215が設けられている。
さらに、洗浄槽211内には、複数の噴射口218が設けられている。各噴射口218は、後述する配管241に接続されて、配管241から圧送される洗浄用液体を噴射可能となっている。ここで、洗浄用液体としては、温水、白灯油等を用いることができる。
【0021】
図10に示すように、回転支持装置230は、回転軸240と、回転軸240に対して回転可能に配設された回転部材250と、回転部材250を回転可能に支持する軸受部材260と、回転軸240に取り付けられた噴射ノズル270と、回転部材250を回転駆動させる駆動装置280と、回転部材250に着脱可能に取り付けられた軸受設置治具290(図11参照)と、を有している。
回転軸240は、中空状に形成されている。本実施形態では、回転軸240は、円筒状の管体により形成されている。回転軸240は、洗浄槽211の底板の下面に配設された収容箱217に固定されている。回転軸240は、軸受孔215を介して、洗浄槽211の下方から洗浄槽211の内側まで延びている。また、回転軸240の下端部には、洗浄用液体を回転軸240内に圧送するための配管241が接続されている。
回転部材250は、外径が異なる複数の円柱体を同軸状に組み合わせた形状となっている。回転部材250には、回転軸240が挿通される軸孔251が設けられている。軸孔251は、回転部材250の中心軸に沿って、回転部材250を貫通するように設けられている。また、回転部材250は、軸受部材260により軸支される被軸支部253と、被軸支部253の上端部に固定された治具取付部254と、を有している。
【0022】
治具取付部254は、円盤状に形成されている。治具取付部254の上面には、軸受設置治具290の後述する嵌合孔291aに嵌合する嵌合凸部254aが設けられている。嵌合凸部254aは、上方に向かって円盤状に突出するように形成されている。また、治具取付部254の上面には、複数のネジ孔254bが設けられている。
軸受部材260は、円筒状に形成されている。軸受部材260の内周面には、回転部材250の被軸支部253の外周面を軸支する玉軸受261が設けられている。軸受部材260は、洗浄槽211の軸受孔215に固定されている。そして、回転部材250は、軸孔251に回転軸240が挿通された状態で、軸受部材260により回転可能に軸支される。この際、回転軸240の上端部は、回転部材250の治具取付部254の上面から上方に向かって突出した状態となる。
噴射ノズル270は、回転軸240の上端部に着脱可能に取り付けられている。噴射ノズル270には、複数(本実施形態では、2つ)の噴射口271が設けられている。複数の噴射口271が設けられている位置は、回転軸240が延びる方向(上下方向)に沿ってずらされている。各噴射口271は、回転軸240の内部を介して圧送される洗浄用液体を噴射可能となっている。
【0023】
駆動装置280は、モーター281と、モーター281の駆動軸に固定されたタイミングプーリー282と、回転部材250の被軸支部253の下端部に固定されたタイミングプーリー283と、両タイミングプーリー282,283を連結して、タイミングプーリー282の回転力をタイミングプーリー283に伝達するタイミングベルト284と、を有している。
軸受設置治具290は、ころ軸受Bの種類・大きさのそれぞれに対応するものが用意されている。そして、鉄道用軸受洗浄装置1によりころ軸受Bの洗浄を開始する際に、当該ころ軸受Bの種類・大きさに対応する軸受設置治具290が、回転部材250に取り付けられる。本実施形態では、円錐ころ軸受B1に対応する軸受設置治具290の一例について説明する。
【0024】
図11は、円錐ころ軸受用の軸受設置治具を示す。図11(a)は、円錐ころ軸受用の軸受設置治具の平面図であり、図11(b)は、図11(a)に示すB−B線に沿う断面図であり、図11(c)は、図11(b)に示す円錐ころ軸受用の軸受設置治具について調整カラーを取り外した状態を示す。なお、図11では、円錐ころ軸受B1を破線で示している。
図11に示す軸受設置治具290は、円錐ころ軸受B1を設置することが可能に構成されている。
ここで、円錐ころ軸受B1は、外輪部材(図11において図示せず)と、内輪部材3と、外輪部材と内輪部材3との間において転動可能に配設された複数の円錐ころ4と、複数の円錐ころ4を保持する保持器5と、を有している。外輪部材は、円環状に形成され、その内周面において、複数の円錐ころ4が転動する転動面が形成されている。内輪部材3は、円環状に形成され、その外周面において、複数の円錐ころ4が転動する転動面が形成されている。複数の円錐ころ4は、外輪部材の転動面と内輪部材3の転動面との間に配設される。また、保持器5は、円環状に形成され、外輪部材と内輪部材3との間に配設される。保持器5は、隣り合う円錐ころ4が所定の間隔を維持するように、複数の円錐ころ4を転動可能に保持する。
【0025】
そして、図11に示す軸受設置治具290は、外輪部材が取り外された状態の円錐ころ軸受B1を設置することが可能に構成されている。
軸受設置治具290は、金属により形成されている。軸受設置治具290は、円盤状の基礎板291と、基礎板291の上面に配設された複数の支持部材292と、を有している。本実施形態では、基礎板291の上面において、4つの支持部材292が配設されている。
基礎板291の中央部には、治具取付部254の嵌合凸部254aが嵌合される嵌合孔291aが設けられている。嵌合孔291aは、嵌合凸部254aの形状に適合するように、略円形の貫通孔となっている。また、基礎板291には、複数のネジ孔291bが設けられている。各ネジ孔291bは、治具取付部254の各ネジ孔254bに対応する位置に設けられている。
各支持部材292は、基礎板291の上面に配設された第一支持部293と、第一支持部293の上面に配設された第二支持部294と、第二支持部の上面に配設された支持柱295と、支持柱295に対して着脱可能に装着される調整カラー296と、を有している。
【0026】
第一支持部293、第二支持部294及び支持柱295は、それぞれ円柱状に形成されている。第二支持部294の外径は、第一支持部293の外径より小さく構成されている。また、支持柱295の外径は、第二支持部294の外径より小さく構成されている。そして、第一支持部293、第二支持部294及び支持柱295は、同軸状に配設されている。
支持柱295の上端部は、上端に向かって縮径するように形成されている。調整カラー296は、円筒状(リング状)に形成されている。調整カラー296の外径は、第二支持部294の外径と略同一に構成されている。また、調整カラー296の内径は、支持柱295の外径と略同一に構成されている。調整カラー296は、支持柱295に装着され、支持柱295の下端部の外周を覆うように配設される。そして、軸受設置治具290では、調整カラー296を着脱することによって、内径の異なる円錐ころ軸受B1を設置することが可能となっている。
そして、鉄道用軸受洗浄装置1により円錐ころ軸受B1の洗浄を行う際には、軸受設置治具290を、回転部材250の治具取付部254に取り付ける。具体的には、治具取付部254の嵌合凸部254aを、軸受設置治具290の嵌合孔291aに嵌合して、一連となっている治具取付部254のネジ孔254b及び軸受設置治具290のネジ孔291bにボルトを螺合する。これにより、軸受設置治具290が回転部材250に取り付けられる。
【0027】
また、内径が大きい円錐ころ軸受B1aの洗浄を行う場合には、図11(a)に示すように、調整カラー296を支持柱295に装着する。この場合、円錐ころ軸受B1が軸受設置治具290に設置されると、全ての第二支持部294が、円錐ころ軸受B1aの内周面(内輪部材3の内周面)に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各第一支持部293の上面が、円錐ころ軸受B1aの内輪部材3の下端面を支持する。また、各第二支持部294の外周面及び各支持柱295に装着されている調整カラー296の外周面が、円錐ころ軸受B1aの内周面(内輪部材3の内周面)を支持する。
一方、内径が小さい円錐ころ軸受B1bを洗浄する場合には、図11(b)に示すように、支持柱295から調整カラー296を取り外す。この場合、円錐ころ軸受B1bが軸受設置治具290に設置されると、全ての支持柱295が、円錐ころ軸受B1bの内周面に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各第二支持部294の上面が、円錐ころ軸受B1bの内輪部材3の下端面を支持する。また、各支持柱295の外周面が、円錐ころ軸受B1bの内周面(内輪部材3の内周面)を支持する。
ここで、洗浄ユニット200では、噴射ノズル270が、軸受設置治具290に設置された円錐ころ軸受B1の内周面(本実施形態では、内輪部材3の内周面)に囲まれた領域の内側に配置される。この際、図10に示すように、噴射ノズル270の噴射口271の上下方向の位置は、軸受設置治具290に設置されている円錐ころ軸受B1の上下方向の位置と略一致するように設定されている。また、洗浄ユニット200では、軸受設置治具290は、ころ軸受B1の中心軸と回転軸240とが略同軸に配置されるように、円錐ころ軸受B1を支持する。
【0028】
図12は、洗浄用液体循環装置の正面図である。図13は、図12に示す洗浄用液体循環装置の側面図である。なお、図13では、洗浄用液貯留槽の一方側の側板の図示を省略している。図14は、図12に示す洗浄用液体循環装置の平面図である。
図12から図14に示すように、洗浄用液体循環装置220は、洗浄用液体に含まれるグリースを回収するグリース回収装置221と、洗浄用液体を洗浄装置210に圧送する洗浄用液体圧送装置225と、を有している。
グリース回収装置221は、洗浄槽211の排出管214から排出された洗浄用液体を受容するグリース受け222と、グリース受け222に堆積しているグリースを掻き出すスクレーパ223と、スクレーパ223により掻き出されたグリースを回収するグリース回収箱224と、を有している。
【0029】
グリース受け222は、天板が設けられておらず、上側が開放された箱状に形成されている。本実施形態では、グリース受け222は、前板が設けられておらず、前側が開放されている。また、グリース受け222の後板は、複数の孔が設けられたパンチングメタルにより形成されている。グリース受け222の前端は、グリース回収箱224内の上端部に配置されている。グリース受け222は、その前端部に配設された回転軸222aによって、後述する洗浄用液体貯留槽226に対して回転可能に取り付けられている。そして、グリース受け222は、駆動手段(図示せず)によって、底板が後側に向かって傾斜した第一状態(図13に示す実線で示す状態)と、底板が略水平となる第二状態(図13に示す破線で示す状態)と、に回転可能となっている。
スクレーパ223は、ガイドレール223bに沿って移動可能に配設されている。ガイドレール223bは、前後方向に沿って延びている。スクレーパ223は、エアシリンダー223aによって、グリース受け222の後端部の初期位置(図13に示す位置)とグリース受け222の前端の終了位置との間において移動される。スクレーパ223は、弾性体(本実施形態では、スプリング)を介して、ガイドレール223bに取り付けられている。
ここで、スクレーパ223は、第一状態を形成するグリース受け222の底板の上面に接触せず、第二状態を形成するグリース受け222の底板の上面に接触するように配設されている。そして、スクレーパ223は、スプリングを介して、第二状態を形成するグリース受け222の底板の上面に弾性接触する。
【0030】
そして、グリース回収装置221では、グリース受け222が第二状態とされることによって、スクレーパ223の下端部が、グリース受け222の底板の上面に接触する。さらに、グリース受け222が第二状態とされている際に、スクレーパ223が、初期位置から終了位置に移動されることによって、このスクレーパ223が、グリース受け222の底板の上面に堆積しているグリースを、グリース回収箱224内へ掻き出す。
洗浄用液体圧送装置225は、洗浄用液体を貯留する洗浄用液体貯留槽226と、洗浄用液体貯留槽226に貯留されている洗浄用液体の加熱を行うシースヒータ227と、洗浄用液体貯留槽226に貯留されている洗浄用液体を配管241に圧送するポンプ228と、を有している。
洗浄用液体貯留槽226は、箱状に形成され、グリース受け222から溢出した洗浄用液体を貯留可能となっている。シースヒータ227は、洗浄用液体貯留槽226内の底部に配設され、洗浄用液体を設定した温度に加熱可能となっている。
ポンプ228は、洗浄用液体貯留槽226内の底部に配設された吸水口226aから吸水した洗浄用液体を、設定した圧力で配管241に圧送可能となっている。また、本実施形態では、吸水口226aに、サクションフィルタ226bが配設されている。
【0031】
(洗浄ユニット200の作用)
初期状態の洗浄ユニット200では、洗浄槽211の開閉蓋212が開放面を開放する位置に配置される。また、初期状態の洗浄ユニット200では、各排出管214の第二排管214bが、下方位置に配置された状態(各排出管214が下方に向かって伸長した状態)となる。さらに、初期状態の洗浄ユニット200では、グリース受け222が、第一状態とされるとともに、スクレーパ223が、初期位置に配置される。
洗浄ユニット200では、後述する搬送ユニット400による軸受設置処理の終了に応じて、ころ軸受Bの洗浄を行う洗浄処理が開始される。
具体的には、搬送ユニット400によって、ころ軸受Bは、その中心軸が延びる方向を上下方向として、軸受設置治具290に設置される。この際、全ての支持部材292の支持柱295(支持柱295に調整カラー296が装着されている場合には、支持柱295及び第二支持部材294)が、ころ軸受Bの内周面に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各支持部材292の第二支持部294(支持柱295に調整カラー296が装着されている場合には、第一支持部293)の上面が、ころ軸受Bの下端面を支持する。また、各支持部材292の支持柱295(支持柱295に調整カラー296が装着されている場合には、第二支持部294及び調整カラー296)の外周面が、ころ軸受Bの内周面を支持する。これによって、軸受設置治具290において、ころ軸受Bの位置が固定される。この際、軸受設置治具290は、ころ軸受B1の中心軸と回転軸240とが略同軸に配置されるように、ころ軸受Bを支持する。
【0032】
軸受設置治具290へのころ軸受Bの設置が完了(搬送ユニット400による軸受設置処理が終了)すると、洗浄処理が開始される。
洗浄処理が開始されると、まず、洗浄槽211の開閉蓋212が開放面を閉鎖する位置に配置される。
そして、洗浄用液体によりころ軸受Bの洗浄を行う洗浄工程が開始される。洗浄工程では、駆動装置280のモーター281が駆動されて、回転部材250の回転が開始される。これによって、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの回転が開始される。
また、洗浄工程では、洗浄用液体圧送装置225のポンプ228が駆動されて、洗浄用液体貯留槽226に貯留されている洗浄用液体の圧送が開始される。これによって、各噴射口218及び各噴射口271による洗浄用液体の噴射が開始される。具体的には、配管241を介して圧送された洗浄用液体が、各噴射口218から噴射される。この際、各噴射口218は、洗浄用液体を、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの外周面に対して噴射する。また、配管241及び回転軸240を介して圧送された洗浄用液体が、噴射ノズル270の各噴射孔271から噴射される。この際、各噴射口271は、洗浄用液体を、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの内周面に対して噴射する。なお、洗浄用液体貯留槽226に貯留されている洗浄用液体は、シースヒータ227によって、予め設定された温度に加熱される。
【0033】
各噴射口218,271から噴射された洗浄用液体は、各排出管214を介して、洗浄槽211内からグリース受け222の底板の上面に排出される。ここで、グリース受け222上に排出された洗浄用液体には、ころ軸受Bに塗布されていた古いグリースが混入した状態となっている。そして、グリース受け222の上に排出された洗浄用液体は、グリース受け222の底板の上面が後側に向かって傾斜している(第一状態となっている)ことによって、グリース受け222の後端部から洗浄用液体貯留槽226内へ溢出する。本実施形態では、グリース受け222の底板の上面に排出された洗浄用液体は、グリース受け222の後板(パンチングメタル)に設けられた複数の孔から洗浄用液体貯留槽226内へ溢出する。この際、洗浄用液体に混入しているグリースが、グリース受け222の底板の上面に沈殿・堆積される。これによって、グリースが除去された洗浄用液体を、再び、各噴射口218及び各噴射口271へ圧送することが可能となる。
そして、洗浄工程が終了すると、乾燥工程が開始される。乾燥工程では、各噴射口218及び各噴射口271からの洗浄用液体の噴射が停止された状態で、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの回転が行われる。この際、所定の温度の気体を、各噴射口218及び各噴射口271からころ軸受Bに対して噴射する構成としても構わない。また、噴射口218,271とは別個に気体を噴射可能な気体噴射口を設けて、この気体噴射口からころ軸受Bに対して所定の温度の気体を噴射する構成としても構わない。
【0034】
さらに、乾燥工程が終了すると、洗浄槽211の開閉蓋212が開放面を開放する位置に配置される。これによって、搬送ユニット400によるころ軸受Bの搬出が可能となる。
また、乾燥工程が終了すると、後処理工程が開始される。後処理工程では、まず、各排出管214の第二排出管214bが、下方位置から上方位置に移動された状態(各排出管214が上方に向かって短縮した状態)となる。また、グリース受け222が、第一状態から第二状態に回転され、スクレーパ223の下端部が、グリース受け222の底板の上面に弾性接触する。その後、スクレーパ223が、初期位置から終了位置に水平移動されて、グリース受け222の底板の上面を摺動する。これによって、グリース受け222の底板の上面に堆積しているグリースが、グリース受け222の前端部からグリース回収箱224内へ掻き出される。その後、スクレーパ223が、終了位置から初期位置に移動され、グリース受け222が、第二状態から第一状態に配置されるとともに、各排出管214の第二排出管214bが、上方位置から下方位置に回転される。これによって、洗浄ユニット200による洗浄処理が終了して、洗浄ユニット200が、初期状態に復帰する。
【0035】
(載置ユニット300の構成)
図4及び図6に示すように、載置ユニット300は、台座部310と、台座部310に配設された軸受載置台320と、を有している。
台座部310は、天板311及び天板311を支持する枠体312を有し、テーブル状に形成されている。
軸受載置台320は、天板311上に配設されている。軸受載置台320は、一対の支持台321から構成されている。各支持台321は、2本の脚柱321aを介して天板311に固定された基礎板321bと、基礎板321bの上面に固定された複数の支持柱321cと、を有している。本実施形態では、各基礎板321bにおいて、3本の支持柱321cが設けられている。
【0036】
(載置ユニット300の作用)
載置ユニット300では、後述する搬送ユニット400による軸受搬出処理によって、ころ軸受Bが載置される。
具体的には、搬送ユニット400によって、ころ軸受Bは、その中心軸が延びる方向を上下方向として、軸受載置台320に載置される。この際、全ての支持柱321cが、ころ軸受Bの内周面に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各支持台321の基礎板321の上面が、ころ軸受Bの下端面を支持する。また、各支持台321の各支持柱321cの外周面が、ころ軸受Bの内周面を支持する。これによって、軸受載置台320において、ころ軸受Bの位置が固定される。
【0037】
(搬送ユニット400の構成)
図7から図9に示すように、搬送ユニット400は、枠体410と、枠体410に固定されたガイドレール420と、ガイドレール420に沿って移動される移動ベース430と、移動ベース430に取り付けられた第一搬送装置440及び第二搬送装置450と、を有している。
枠体410は、洗浄ユニット200の台座部201に固定され、洗浄ユニット200の上方に向かって延びている。ガイドレール420は、設置ユニット100の上方から載置ユニット300の上方まで、左右方向に沿って延びるように配設されている。
第一搬送装置440は、移動ベース430に固定されたシリンダー441と、シリンダー441によって上下方向に沿って移動(突出又は収容)されるピストンロッド442と、ピストンロッド442の下端部に取付けられたチャック装置443と、を有している。チャック装置443は、互いに近接又は離間する方向に可動する一対の開閉アーム443aを有している。各開閉アーム443aの下端部には、ころ軸受Bの下端面を支持するチャック爪443bが固定されている。チャック装置443は、ピストンロッド442が下方に移動(突出)されることによって下方位置に配置され、ピストンロッド442が上方に移動(収容)されることによって上方位置に配置される。なお、図1では、チャック装置443が下方位置に配置された状態を示している。
【0038】
第二搬送装置450は、移動ベース430に固定されたシリンダー451と、シリンダー451によって上下方向に沿って移動(突出又は収容)されるピストンロッド452と、ピストンロッド452の下端部に取付けられたチャック装置453と、を有している。チャック装置453は、互いに近接又は離間する方向に可動する一対の開閉アーム453aを有している。各開閉アーム453aの下端部には、ころ軸受Bの下端面を支持するチャック爪453bが固定されている。チャック装置453は、ピストンロッド452が下方に移動(突出)されることによって下方位置に配置され、ピストンロッド452が上方に移動(収容)されることによって上方位置に配置される。なお、図1では、チャック装置453が上方位置に配置された状態を示している。
移動ベース430は、左右方向に沿って延びるように長尺状に形成されている。第一搬送装置440は、移動ベース430の一端部に取り付けられ、第二搬送装置450は、移動エース430の他端部に取り付けられている。移動ベース430は、マグネット式ロッドレスシリンダー411のベース411aに固定されている。マグネット式ロッドレスシリンダー411は、磁力によりベース411aを左右方向に沿って移動させることが可能となっている。これにより、第一搬送装置440及び第二搬送装置450は、互いに同期した状態で、左右方向に沿って移動される。
【0039】
(搬送ユニット400の作用)
初期状態の搬送ユニット400では、第一搬送装置440が、設置ユニット100の軸受設置治具120の上方に配置され、第二搬送装置450が、洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方に配置される。また、初期状態の搬送ユニット400では、チャック装置443及びチャック装置453が、ともに、上方位置に配置される。
そして、搬送ユニット400では、操作ボタン204がON状態とされることに応じて、ころ軸受Bを洗浄ユニット200に設置する軸受設置処理を開始する。
軸受設置処理では、まず、初期状態の搬送ユニット400のチャック装置443が、上方位置から下方位置に移動される。また、下方位置に配置されたチャック装置443の一対の開閉アーム443aが、互いに近接する方向に可動されて、各開閉アーム443aのチャック爪443bが、軸受設置治具120に設置されているころ軸受Bの下端面の下方に入り込む。これによって、軸受設置治具120に設置されているころ軸受Bが、チャック装置443により保持される。
【0040】
また、ころ軸受Bを保持したチャック装置443が、下方位置から上方位置に移動された後に、第一搬送装置440が、設置ユニット100の軸受設置治具120の上方から洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方に移動される。これに伴い、第二搬送装置440が、洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方から載置ユニット300の軸受載置台320の上方に移動される。
さらに、軸受設置治具290の上方に配置された第一搬送装置440のチャック装置443が、上方位置から下方位置に移動されて、チャック装置443により保持されているころ軸受Bが、洗浄ユニット200の軸受設置治具290に設置される。また、下方位置に配置されたチャック装置443の一対の開閉アーム443aが、互いに離間する方向に可動されて、各開閉アーム443aのチャック爪443bによる軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの下端面の支持が解除される。これによって、軸受設置治具290へのころ軸受Bの設置が完了する。
【0041】
そして、チャック装置443が、下方位置から上方位置に移動された後に、第一搬送装置440が、洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方から設置ユニット100の軸受設置治具120の上方に移動される。これに伴い、第二搬送装置440が、載置ユニット300の軸受載置台320の上方から洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方に移動される。これによって、搬送ユニット400による軸受設置処理が終了して、搬送ユニット400が、初期状態に復帰する。
一方、搬送ユニット400では、洗浄ユニット200による洗浄処理の終了に応じて、ころ軸受Bを洗浄ユニット200から搬出して載置ユニット300に載置する軸受搬出処理を開始する。
【0042】
軸受搬出処理では、初期状態の搬送ユニット400のチャック装置453が、上方位置から下方位置に移動される。また、下方位置に配置されたチャック装置453の一対の開閉アーム453aが、互いに近接する方向に可動されて、各開閉アーム453aのチャック爪453bが、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bの下端面の下方に入り込む。これによって、軸受設置治具290に設置されているころ軸受Bが、チャック装置453により保持される。
また、ころ軸受Bを保持したチャック装置453が、下方位置から上方位置に移動された後に、第二搬送装置450が、洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方から載置ユニット300の軸受載置台320の上方に移動される。これに伴い、第一搬送装置440が、設置ユニット100の軸受設置治具120の上方から洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方に移動される。
【0043】
さらに、軸受載置台320の上方に配置された第二搬送装置450のチャック装置453が、上方位置から下方位置に移動されて、チャック装置453により保持されているころ軸受Bが、載置ユニット300の軸受載置台320に載置される。また、下方位置に配置されたチャック装置453の一対の開閉アーム453aが、互いに離間する方向に可動されて、各開閉アーム453aのチャック爪453bによる軸受載置台320に載置されているころ軸受Bの下端面の支持が解除される。これによって、軸受載置台320へのころ軸受Bの載置が完了する。
そして、チャック装置453が、下方位置から上方位置に移動された後に、第二搬送装置450が、載置ユニット300の軸受載置台320の上方から洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方に移動される。これに伴い、第一搬送装置440が、洗浄ユニット200の軸受設置治具290の上方から設置ユニット100の軸受設置治具120の上方に移動される。これによって、搬送ユニット400による軸受搬出処理が終了して、搬送ユニット400が、初期状態に復帰する。
【0044】
(鉄道用軸受洗浄装置1の動作)
次に、鉄道用軸受洗浄装置1の動作について説明する。
鉄道用軸受洗浄装置1によりころ軸受Bの洗浄を開始する際には、まず、ころ軸受Bを、軸受設置治具120に配置する。そして、操作ボタン204をON状態とすることによって、搬送ユニット400による軸受設置処理が実行されて、軸家設置治具120に設置されていたころ軸受Bが、洗浄ユニット200の軸受設置治具290に移動される。
搬送ユニット400による軸受設置処理が終了すると、洗浄ユニット200による洗浄処理が開始される。
【0045】
洗浄処理では、まず、洗浄工程が実行される。洗浄工程では、回転部材250が、加減速を繰り返しつつ回転される。本実施形態では、回転部材250は、約5秒サイクルで、40rpmから600rpmまでの間で加減速される。
また、洗浄工程では、所定温度に加熱された洗浄用液体が、ころ軸受Bに対して噴射される。本実施形態では、洗浄用液体の温度は、60℃以上、好ましくは70℃以上に設定される。
さらに、洗浄工程では、両噴射口218及び両噴射口271からの洗浄用液体の噴射(以下、全体洗浄工程とする)を行った後、両噴射口271からの洗浄用液体の噴射(以下、内側洗浄工程とする)を行い、その後、両噴射口218からの洗浄用液体の噴射(以下、外側洗浄工程)を行う。
【0046】
本実施形態では、ポンプ228として、50Hz、3.7kW、最大圧力2.0MPa、最大流量50L/minのポンプを使用している。そして、全体洗浄工程では、各噴射口218,271から噴射される洗浄用液体の圧力を、0.4MPaに設定している。また、内側洗浄工程では、各噴射口271から噴射される洗浄用液体の圧力を、2.0MPaに設定している。さらに、外側洗浄工程では、各噴射口218から噴射される洗浄用液体の圧力を、0.6MPaに設定している。
また、洗浄処理では、洗浄工程が終了すると、乾燥工程が実行される。乾燥工程では、回転部材250が所定の回転数で回転されることによって、ころ軸受Bの乾燥が行われる。本実施形態では、回転部材250は、500rpmで回転される。
洗浄ユニット200による洗浄処理が終了すると、搬送ユニット400による軸受搬出処理が実行されて、軸受設置治具290に設置されていたころ軸受Bが、載置ユニット300の軸受載置台320に移動される。
これにより、鉄道用軸受洗浄装置1によるころ軸受Bの洗浄が完了する。
【0047】
以上のように、鉄道用軸受洗浄装置1では、噴射ノズル270(両噴射口218)が回転部材250(軸受設置治具290)の回転軸240の上端部に配設されていることによって、軸受設置治具290に支持されているころ軸受Bの内周面に対する洗浄用液体の噴射を効果的に行うことができる。また、軸受設置治具290が回転軸240に対して回転されることによって、ころ軸受Bの内周面の全周に対して洗浄用液体の噴射を行うことができる。
したがって、鉄道用軸受洗浄装置1によれば、ころ軸受Bの内周面に塗布されている古いグリースの除去を十分に行うことが可能となる。
また、鉄道用軸受洗浄装置1では、噴射ノズル270が噴射する洗浄用液体が回転軸240の内部を介して圧送されることにより、ころ軸受Bを軸受設置治具290に設置する際に、噴射ノズル270が邪魔になることが防止され、軸受設置治具290へのころ軸受Bの設置を容易に行うことが可能となる。
【0048】
さらに、鉄道用軸受洗浄装置1では、軸受設置治具290がころ軸受Bの内周面を支持する支持柱295(支持柱295に調整カラー296が装着されている場合には、第二支持部294及び調整カラー296)を有することにより、軸受設置治具290におけるころ軸受Bの位置決めを容易に行うことが可能となる。
また、鉄道用軸受洗浄装置1では、噴射ノズル270が、回転軸240が延びる方向に沿って位置をずらして設けられた複数の噴射口271を有することによって、ころ軸受Bの内周面に対する洗浄用液体の噴射をさらに効果的に行うことが可能となる。
【0049】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態では、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、上記実施形態に係る鉄道用軸受洗浄装置1では、軸受設置治具290を交換することによって、種々のころ軸受Bの洗浄を行うことが可能となっている。
図15は、円筒ころ軸受用の軸受設置治具を示す。図15(a)は、円筒ころ軸受用の軸受設置治具の平面図であり、図15(b)は、図15(a)に示すC−C線に沿う断面図である。なお、図15では、円筒ころ軸受B2を破線で示している。
図15に示す軸受設置治具800は、円筒ころ軸受B2を設置することが可能に構成されている。
ここで、円筒ころ軸受B2は、円錐ころ軸受B1と同様に、外輪部材6と、内輪部材(図15において図示せず)と、外輪部材6と内輪部材との間において転動可能に配設された複数の円筒ころ4と、複数の円筒ころ4を保持する保持器5と、を有している。外輪部材6は、円環状に形成され、その内周面において、複数の円筒ころ4が転動する転動面が形成されている。内輪部材は、円環状に形成され、その外周面において、複数の円筒ころ4が転動する転動面が形成されている。複数の円筒ころ4は、外輪部材6の転動面と内輪部材の転動面との間に配設される。また、保持器5は、円環状に形成され、外輪部材6と内輪部材との間に配設される。保持器5は、隣り合う円筒ころ4が所定の間隔を維持するように、複数の円筒ころ4を転動可能に保持する。
【0050】
そして、図15に示す軸受設置治具800は、内輪部材が取り外された状態の円筒ころ軸受B2を設置することが可能に構成されている。
軸受設置治具800は、金属により形成されている。軸受設置治具800は、円盤状の基礎板810と、基礎板810の上面に配設された複数の支持部材820及び複数の支持柱830と、を有している。ここで、複数の支持部材820は、基礎板810の中心点を中心とする第一円周上において、所定の間隔で配設されている。また、複数の支持柱830は、基礎板810の中心点を中心とする第二円周上において、所定の間隔で配設されている。そして、第二円周の半径は、第一円周の半径より小さく設定されている。本実施形態では、基礎板810の上面において、4つの支持部材820及び4つの支持柱830が配設されている。
基礎板810の中央部には、治具取付部254の嵌合凸部254aが嵌合される嵌合孔811が設けられている。嵌合孔811は、嵌合凸部254aの形状に適合するように、略円形の貫通孔となっている。また、基礎板810には、複数のネジ孔812が設けられている。各ネジ孔812は、治具取付部254の各ネジ孔254bに対応する位置に設けられている。
【0051】
各支持部材820及び各支持柱830は、それぞれ、円柱状に形成されている。支持柱830の上端部は、上端に向かって縮径するように形成されている。
そして、鉄道用軸受洗浄装置1により円筒ころ軸受B2の洗浄を行う際には、軸受設置治具800を、回転部材250の治具取付部254に取り付ける。具体的には、治具取付部254の嵌合凸部254aを、軸受設置治具800の嵌合孔811に嵌合して、一連となっている治具取付部254のネジ孔254b及び軸受設置治具800のネジ孔812にボルトを螺合する。これにより、軸受設置治具800が回転部材250に取り付けられる。
また、軸受設置治具800に円筒ころ軸受B2を設置する際には、円筒ころ軸受B2を、その中心軸が延びる方向を上下方向として、軸受設置治具800に設置する。この際、全ての支持柱830が、円筒ころ軸受B2の内周面(保持器5の内周面)に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各支持部材820の上面が、円筒ころ軸受B2の下端面を支持する。また、各支持柱830の外周面が、円筒ころ軸受Bの内周面(保持器5の内周面)を支持する。これによって、軸受設置治具800において、円筒ころ軸受B2の位置が固定される。
【0052】
図16は、保持器用の軸受設置治具を示す。図16(a)は、保持器用の軸受設置治具の平面図であり、図16(b)は、図16(a)に示すD−D線に沿う断面図である。なお、図16では、保持器B3を破線で示している。
図16に示す軸受設置治具900は、円筒ころ軸受B2の保持器5を設置することが可能に構成されている。ここで、保持器5には、複数の円筒ころ4が保持されている。
軸受設置治具900は、金属により形成されている。軸受設置治具900は、円盤状の基礎板910と、基礎板910の上面に配設された複数の支持部材920と、を有している。本実施形態では、基礎板910の上面において、4つの支持部材920が配設されている。
基礎板910の中央部には、治具取付部254の嵌合凸部254aが嵌合される嵌合孔911が設けられている。嵌合孔911は、嵌合凸部254aの形状に適合するように、略円形の貫通孔となっている。また、基礎板910には、複数のネジ孔912が設けられている。各ネジ孔912は、治具取付部254の各ネジ孔254bに対応する位置に設けられている。
【0053】
各支持部材920は、基礎板910の上面に配設された支持部921と、支持部921の上面に配設された支持柱922と、を有している。
支持部921及び支持柱922は、それぞれ、円柱状に形成されている。支持柱922の外径は、支持部921外径より小さく構成されている。そして、支持部921及び支持柱922は、同軸状に配設されている。また、支持柱922の上端部は、上端に向かって縮径するように形成されている。
そして、鉄道用軸受洗浄装置1により保持器5の洗浄を行う際には、軸受設置治具900を、回転部材250の治具取付部254に取り付ける。具体的には、治具取付部254の嵌合凸部254aを、軸受設置治具900の嵌合孔911に嵌合して、一連となっている治具取付部254のネジ孔254b及び軸受設置治具900のネジ孔912にボルトを螺合する。これにより、軸受設置治具900が回転部材250に取り付けられる。
【0054】
また、軸受設置治具900に保持器5を設置する際には、保持器5を、その中心軸が延びる方向を上下方向として、軸受設置治具900に設置する。この際、全ての支持柱922が、保持器5の内周面に囲まれた領域の内側に入り込んだ状態となる。そして、各支持部921の上面が、保持器5の下端面を支持する。また、各支持柱922の外周面が、保持器5の内周面を支持する。これによって、軸受設置治具900において、保持器5の位置が固定される。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄道用軸受洗浄装置
B ころ軸受
B1 円錐ころ軸受
B2 円筒ころ軸受
3 内輪部材
4 円錐ころ,円筒ころ
5 保持器
6 外輪部材
100 設置ユニット
110 台座部
113 支持部材
114 支持部
115 支持柱
115a 調整カラー
116 基礎板
120 軸受設置治具
200 洗浄ユニット
201 台座部
204 操作ボタン
210 洗浄装置
211 洗浄槽
212 開閉蓋
213 エアシリンダー
214 排出管
214a 第一排管
214b 第二排管
215 軸受孔
218 噴射口
220 洗浄用液体循環装置
221 グリース回収装置
222 グリース受け
223 スクレーパ
224 グリース回収箱
225 洗浄用液体圧送装置
226 洗浄用液体貯留槽
227 シースヒータ
228 ポンプ
230 回転支持装置
240 回転軸
250 回転部材
251 軸孔
253 被軸支部
254 治具取付部
260 軸受部材
261 玉軸受
270 噴射ノズル
271 噴射口
280 駆動装置
281 モーター
282 タイミングプーリー
283 タイミングプーリー
284 タイミングベルト
290 軸受設置治具
291 基礎板
292 支持部材
293 第一支持部
294 第二支持部
295 支持柱
296 調整カラー
300 載置ユニット
310 台座部
320 軸受載置台
400 搬送ユニット
410 枠体
420 ガイドレール
430 移動ベース
440 第一搬送装置
450 第二搬送装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車軸に配設される円環状のころ軸受の洗浄を行う鉄道用軸受洗浄装置であって、
回転軸に対して回転可能に配設され、前記ころ軸受の中心軸と前記回転軸とが略同軸に配置されるように前記ころ軸受を支持する回転支持部材と、
前記回転軸の上端部に配設され、該回転軸の内部を介して圧送される洗浄用液体を前記ころ軸受の内周面に対して噴射可能な液体噴射手段と、を備えることを特徴とする鉄道用軸受洗浄装置。
【請求項2】
前記回転支持部材は、前記ころ軸受の端面を支持する端面支持部と、前記ころ軸受の内周面を支持する内周面支持部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道用軸受洗浄装置。
【請求項3】
前記液体噴射手段には、前記洗浄用液体を噴射可能な液体噴射口が複数設けられ、
前記複数の液体噴射口が設けられている位置は、前記回転軸が延びる方向に沿ってずらされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道用軸受洗浄装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−50171(P2013−50171A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188632(P2011−188632)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(594078364)東洋パーツ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】