説明

鉄道用電気設備の監視制御システム、監視制御装置、および鉄道用電力系統の停電区間検出方法ならびに停電区間通知方法

【課題】鉄道用電力系統の停電区間を確実に検出することができる鉄道用電気設備の監視制御システムを得ること。
【解決手段】ネットワーク3を介して鉄道用電力系統4の電気設備を監視制御する鉄道用電気設備の監視制御システム1であって、遠隔制御対象の遠制機器9の状態を示す遠制機器状態情報、および、遠隔制御対象外の非遠制機器10の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、電車線7の停電区間、および、沿線設備に電力を供給する高圧配電線8の停電区間を検出する監視制御装置2と、電車線7あるいは高圧配電線8のうちの一方あるいは両方に電力を供給する変電所5に設けられ、ネットワーク3を介して遠制機器状態情報を監視制御装置2に送信する遠制子局6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用電気設備の監視制御システム、監視制御装置、および鉄道用電力系統の停電区間検出方法ならびに停電区間通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車線における停電区間の検出方法として、例えば、監視システムにより検出されたき電遮断器の開情報に基づいて、当該開状態のき電遮断器に対向するき電遮断器の開閉状態を確認し、開状態であれば監視システムにより検出されたき電遮断器および対向き電遮断器に接続されたき電区間を停電区間として検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−301178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、監視システムが遠制子局を介して状態を取得可能な遠制機器のうち、き電遮断器の状態にのみ基づいて停電区間の検出を行っているため、信号機や電灯等の沿線設備に電力を供給する高圧配電線の停電区間を検出することができない。また、例えば、変電所内において隣接区間からの延長き電を行うために設けられたタイ断路器等のき電遮断器以外の遠制機器や、隣接する変電所間でき電区間を区分する区分断路器や遠制子局が設けられていない変電所のき電遮断器や断路器等の監視システムの遠隔制御対象外となっている非遠制機器の状態を考慮していないため、実際には停電している区間であっても停電していないと判断してしまう場合がある、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、鉄道用電力系統の停電区間を確実に検出することができる鉄道用電気設備の監視制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる鉄道用電気設備の監視制御システムは、ネットワークを介して鉄道用電力系統の電気設備を監視制御する鉄道用電気設備の監視制御システムであって、遠隔制御対象の遠制機器の状態を示す遠制機器状態情報、および、遠隔制御対象外の非遠制機器の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、電車線の停電区間、および、沿線設備に電力を供給する高圧配電線の停電区間を検出する監視制御装置と、前記電車線あるいは前記高圧配電線のうちの一方あるいは両方に電力を供給する変電所に設けられ、前記ネットワークを介して前記遠制機器状態情報を前記監視制御装置に送信する遠制子局と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄道用電力系統の停電区間を確実に検出することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システムの監視制御対象となる鉄道用電力系統の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の一構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の遠制機器データベースの一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の非遠制機器データベースの一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の停電条件データベースの一例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の充停電状態データベースの一例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態にかかる鉄道用電力系統の停電区間検出方法および停電区間通知方法における処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システム、監視制御装置、および鉄道用電力系統の停電区間検出方法ならびに停電区間通知方法について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システムの概略構成図である。図1に示すように、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システム1は、実施の形態にかかる監視制御装置2と、監視制御装置2が接続されるネットワーク(図1に示す例では、LAN)3と、そのネットワーク3に接続される遠制子局6とを含み構成される。
【0011】
遠制子局6は、監視制御システム1における監視制御対象となる鉄道用電力系統4に含まれる各変電所5に設けられ、監視制御装置2の遠隔制御対象となる遠制機器9の状態が変化した際に、ネットワーク3を介して、遠制機器9の状態を示す遠制機器状態情報を監視制御装置2に送信する。
【0012】
各変電所5は、本実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システム1の停電区間検出対象である電車線7に電力を供給すると共に、同様に本実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システム1の停電区間検出対象であり、信号機等の沿線設備に電力を供給する高圧配電線8に電力を供給する。なお、図1に示す例では、電車線7および高圧配電線8の両方に各変電所5から電力を供給する例を示したが、電車線7あるいは高圧配電線8のうちの一方に電力を供給する変電所を鉄道用電力系統4に含んでいてもよい。
【0013】
監視制御装置2は、遠制子局6から送信される遠制機器状態情報と、監視制御装置2の遠隔制御対象外となっている非遠制機器10の状態を示す非遠制機器状態情報とに基づいて、電車線7および高圧配電線8の停電区間を検出する。なお、非遠制機器10の状態を示す非遠制機器状態情報は、例えば、監視制御装置2、遠制子局6、あるいはネットワーク3に接続された情報端末(図示せず)から、随時変更するようにすればよい。
【0014】
図2は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御システムの監視制御対象となる鉄道用電力系統の一例を示す図である。なお、本実施の形態では、上述したように、図1に示した電車線7に加え、信号機等の沿線設備に電力を供給する高圧配電線8をも停電区間検出対象としているが、ここでは、説明を容易とするため、高圧配電線8を停電区間検出対象とした場合の説明は省略する。
【0015】
図2に示すように、各変電所5a〜5cには、それぞれ遠制子局6が設けられている。また、下り側電車線7aおよび上り側電車線7bからなる電車線7は、セクションにより複数のき電区間100a〜100hに分割され、各き電区間100a〜100hは、各変電所5a,5b,5c内の各き電遮断器200a〜200d,300a〜300d,400a〜400dに接続される。
【0016】
図2に示す例では、き電区間100aは、変電所5a内のき電遮断器200aに接続されている。また、き電区間100bは、変電所5a内のき電遮断器200bに接続されている。また、き電区間100cは、変電所5a内のき電遮断器200cおよび変電所5b内のき電遮断器300aに接続されている。また、き電区間100dは、変電所5a内のき電遮断器200dおよび変電所5b内のき電遮断器300bに接続されている。また、き電区間100eは、変電所5b内のき電遮断器300cおよび変電所5c内のき電遮断器400aに接続されている。また、き電区間100fは、変電所5b内のき電遮断器300dおよび変電所5c内のき電遮断器400bに接続されている。また、き電区間100gは、変電所5c内のき電遮断器400cに接続されている。また、き電区間100hは、変電所5c内のき電遮断器400dに接続されている。
【0017】
また、図2に示す例では、変電所5b内に、き電区間100aおよびき電区間100cの間で延長き電を行う断路器(タイ断路器)500aが設けられ、き電区間100bおよびき電区間100dの間で延長き電を行う断路器(タイ断路器)500bが設けられている。これら各断路器500a,500bおよび上述した各き電遮断器200a〜200d,300a〜300d,400a〜400dは、図1に示す遠制機器9に相当し、各変電所5a〜5cに設けられた配電盤(図示せず)および遠制子局6を介して、監視制御装置2から遠隔制御および監視が可能な機器である。
【0018】
また、図2に示すように、例えば、き電区間100aを変電所5a側と変電所5b側とに区分する断路器(区分断路器)500cが接続されている場合がある。このように、各変電所5a〜5cの外部に設けられている機器や、遠制子局6が設けられていない変電所(図示せず)のき電遮断器や断路器等は、図1に示す非遠制機器10に相当し、監視制御装置2の遠隔制御対象外となっている機器である。
【0019】
つぎに、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の構成および各構成部について、図1〜図7を参照して説明する。図3は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の一構成例を示す図である。図3に示すように、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置2は、機器状態監視部11、充停電区間判定部12、画面表示部13、充停電情報送信部14、遠制機器データベース15、非遠制機器データベース16、停電条件データベース17、および充停電状態データベース18を備え構成される。
【0020】
図4は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の遠制機器データベースの一例を示す図である。図4に示すように、遠制機器データベース15には、各遠制機器9(すなわち、例えば図2に示す各き電遮断器200a〜200d,300a〜300d,400a〜400dおよび各断路器500a,500b)毎に、各遠制機器9が配備された変電所と、現時点における各遠制機器9の状態(つまり、例えば各き電遮断器200a〜200d,300a〜300d,400a〜400dおよび各断路器500a,500bの開閉状態)とが関連付けられて格納される。
【0021】
図5は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の非遠制機器データベースの一例を示す図である。図5に示すように、非遠制機器データベース16には、各非遠制機器10(すなわち、例えば図2に示す断路器500c)毎に、各非遠制機器10が配備されたき電区間(すなわち、例えば断路器500cが配備されたき電区間100d)と、現時点における各非遠制機器10の状態(つまり、例えば断路器500cの開閉状態)とが関連付けられて格納される。
【0022】
図6は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の停電条件データベースの一例を示す図である。図6に示すように、停電条件データベース17には、各き電区間(すなわち、例えば図2に示す各き電区間100a〜100h)毎にあらかじめ定義された停電条件と、各き電区間に含まれる駅とが関連付けられて格納されている。
【0023】
例えば、図2および図6に示す例では、き電区間100aでは、変電所5aのき電遮断器200aが開放している場合には、他にき電区間100aに電力を供給する経路がないので、停電区間となる。つまり、各き電区間毎に定義された停電条件と各遠制機器9の状態および各非遠制機器10の状態とが一致する場合には、そのき電区間が停電区間であると判定する。
【0024】
なお、図2および図6に示す例では、き電区間100cでは、(a)および(b)の2つの停電条件が存在するが、停電条件(a)および停電条件(b)のうち、少なくともいずれか一方が一致している場合には、き電区間100cに電力を供給する経路が存在しないこととなるので、停電区間であると判定することができる。つまり、停電条件が1つ存在するき電区間では、停電条件と遠制機器9および非遠制機器10の状態とが一致した場合に、当該き電区間を停電区間と判定し、停電条件と遠制機器9および非遠制機器10の状態とが一致しない場合に、当該き電区間を充電区間と判定し、停電条件が2つ以上存在するき電区間では、少なくともいずれか1つ以上の停電条件と遠制機器9および非遠制機器10の状態とが一致した場合に、当該き電区間を停電区間と判定し、全ての停電条件と遠制機器9および非遠制機器10の状態とが一致しない場合に、当該き電区間を充電区間と判定する。
【0025】
図7は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の監視制御装置の充停電状態データベースの一例を示す図である。図7に示すように、充停電状態データベース18には、各き電区間(すなわち、例えば図2に示す各き電区間100a〜100h)毎に、現時点における充停電状態と、各き電区間に含まれる駅とが関連付けられて格納される。
【0026】
機器状態監視部11は、遠制子局6から送信される遠制機器状態情報に基づいて、各遠制機器9の状態変化(つまり、例えば各き電遮断器200a〜200d,300a〜300d,400a〜400dおよび各断路器500a,500bの開閉状態の変化)を監視すると共に、非遠制機器10の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、各非遠制機器10の状態変更(つまり、例えば断路器500cの開閉状態の変更)を監視し、遠制機器9の状態変化を検知した場合、遠制機器データベース15を更新し、非遠制機器10の状態変更を検知した場合、非遠制機器データベース16を更新すると共に、充停電区間判定部12に機器状態更新通知を送信(つまり、充停電区間判定部12に遠制機器データベース15あるいは非遠制機器データベース16を更新したことを通知)する。
【0027】
充停電区間判定部12は、機器状態監視部11から機器状態更新通知を受信した場合、遠制機器データベース15および非遠制機器データベース16を参照して、遠制機器9および非遠制機器10の状態を取得すると共に、停電条件データベース17を参照して、各き電区間(すなわち、例えば図2に示す各き電区間100a〜100h)毎に定義された停電条件を取得し、取得した遠制機器9および非遠制機器10の状態と停電条件とを照合し、当該き電区間が停電区間であるか否かを判定して、充停電状態データベース18を更新し、画面表示部13および充停電情報送信部14に充停電状態更新通知を送信(つまり、画面表示部13および充停電情報送信部14に充停電状態データベース18を更新したことを通知)する。
【0028】
画面表示部13は、充停電区間判定部12から充停電状態更新通知を受信した場合、充停電状態データベース18を参照し、各き電区間毎の充停電状態を取得して画面表示を行う。
【0029】
充停電情報送信部14は、充停電区間判定部12から充停電状態更新通知を受信した場合、充停電状態データベース18を参照し、各き電区間毎の充停電状態を取得して、例えば運行管理システムや設備監視システム等の他システムに充停電情報として送信する。
【0030】
本実施の形態では、各変電所の外部に設けられている機器、あるいは遠制子局が設けられていない変電所のき電遮断器や断路器等、監視制御装置の遠隔制御対象外となっている非遠制機器の状態変更を監視し、区間毎にあらかじめ定義された停電条件と、遠制機器の状態および非遠制機器の状態とを照合して、各区間毎の充停電状態を判定する。つまり、き電遮断器の開閉状態だけでなく、き電遮断器以外の遠制機器の状態変化や非遠制機器の状態変更をも停電区間の検出に用いることにより、電車線の停電区間を確実に検出することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、電車線に加え、信号機等の沿線設備に電力を供給する高圧配電線も停電区間検出対象としている。つまり、電車線と同様に、遠隔制御および監視が可能な各変電所内に設けられた全ての遠制機器の状態変化、および、監視制御装置の遠隔制御対象外となっている非遠制機器の状態変更を停電区間の検出に用いることにより、高圧配電線の停電区間をも確実に検出することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、遠制機器の状態変化や非遠制機器の状態変更が生じた時点で、画面上に表示される区間毎の充停電状態が更新される。したがって、迅速に当該システムの指令員が停電区間を把握することができる。
【0033】
また、本実施の形態では、遠制機器の状態変化や非遠制機器の状態変更が生じた時点で、区間毎の充停電状態が運行管理システムや設備監視システム等の他システムに充停電情報として送信される。これにより、当該システムの指令員が他システムの指令員に停電区間を連絡する手間がなくなり、その際に生じる連絡ミスや設備異常等の誤検出も防ぐことができる。より具体的には、運行管理システムでは、停電区間をより正確且つ迅速に表示することができ、また、沿線設備を監視する設備監視システムでは、停電による信号機等の異常を故障として検出することがあるが、例えば、作業に伴う計画停電等による信号機等の沿線設備の異常を故障として誤検出するのを防止することができる。
【0034】
つぎに、実施の形態にかかる鉄道用電力系統の停電区間検出方法および停電区間通知方法について、図3〜図8を参照して説明する。図8は、実施の形態にかかる鉄道用電気設備の停電区間検出方法および停電区間通知方法における処理手順の一例を示す図である。
【0035】
機器状態監視部11は、各遠制機器9の状態変化および各非遠制機器10の状態変更を監視し(ステップST101)、各遠制機器9の状態変化あるいは各非遠制機器10の状態変更を検知するまで待機する(ステップST101;No)。各遠制機器9の状態変化あるいは各非遠制機器10の状態変更を検知した場合(ステップST101;Yes)、機器状態監視部11は、遠制機器データベース15あるいは非遠制機器データベース16を更新すると共に(ステップST102)、充停電区間判定部12に機器状態更新通知を送信する(ステップST103)。
【0036】
充停電区間判定部12は、機器状態監視部11から機器状態更新通知を受信すると(ステップST104)、遠制機器データベース15および非遠制機器データベース16を参照して、各遠制機器9および各非遠制機器10の状態を取得すると共に(ステップST105)、停電条件データベース17を参照して、各き電区間毎に定義された停電条件を取得し(ステップST106)、各き電区間毎に、取得した各遠制機器9および各非遠制機器10の状態と停電条件とを照合して、当該き電区間が停電区間であるか否かを判定する(ステップST107)。
【0037】
当該き電区間が停電区間である場合には(ステップST107;Yes)、充停電区間判定部12は、充停電状態データベース18上において該当するき電区間の充停電状態を「停電」に設定し(ステップST108)、当該き電区間が停電区間でなはい場合には(ステップST107;No)、充停電状態データベース18上において該当するき電区間の充停電状態を「充電」に設定する(ステップST109)。そして、充停電区間判定部12は、停電区間検出対象である全てのき電区間の充停電状態判定が完了したか否かを判定し(ステップST110)、停電区間検出対象である全てのき電区間の充停電状態判定が完了していなければ(ステップST110;No)、ステップST107の処理に戻り、停電区間検出対象である全てのき電区間の充停電状態判定が完了するまで、ステップST107〜ステップST110の処理を繰り返し実施する。停電区間検出対象である全てのき電区間の充停電状態判定が完了していれば(ステップST110;Yes)、充停電区間判定部12は、画面表示部13および充停電情報送信部14に充停電状態更新通知を送信する(ステップST111)。
【0038】
充停電区間判定部12から充停電状態更新通知を受信すると(ステップST112)、画面表示部13は、充停電状態データベース18を参照し、各き電区間毎の充停電状態を取得して画面表示を行い、充停電情報送信部14は、充停電状態データベース18を参照し、各き電区間毎の充停電状態を取得して、例えば運行管理システムや設備監視システム等の他システムに充停電情報として送信し(ステップST113)、ステップST101の処理に戻り、ステップST101〜ステップST113の処理を繰り返し実施する。
【0039】
以上説明したように、実施の形態の鉄道用電気設備の監視制御システム、監視制御装置、および鉄道用電力系統の停電区間検出方法ならびに停電区間通知方法によれば、遠隔制御および監視が可能な各変電所内に設けられた全ての遠制機器の状態変化、および、各変電所の外部に設けられている機器、あるいは遠制子局が設けられていない変電所のき電遮断器や断路器等、監視制御装置の遠隔制御対象外となっている非遠制機器の状態変更を監視し、区間毎にあらかじめ定義された停電条件と、遠制機器および非遠制機器の状態とを照合して、各区間毎の充停電状態を判定する、つまり、き電遮断器の開閉状態だけでなく、き電遮断器以外の遠制機器の状態変化や非遠制機器の状態変更をも停電区間の検出に用いるようにしたので、電車線の停電区間を確実に検出することができる。
【0040】
また、電車線に加え、信号機等の沿線設備に電力を供給する高圧配電線も停電区間検出対象とし、電車線と同様に、遠隔制御および監視が可能な各変電所内に設けられた全ての遠制機器の状態変化、および、監視制御装置の遠隔制御対象外となっている非遠制機器の状態変更を停電区間の検出に用いるようにしたので、高圧配電線の停電区間をも確実に検出することができる。
【0041】
また、遠制機器の状態変化や非遠制機器の状態変更が生じた時点で、画面上に表示される区間毎の充停電状態が更新されるので、迅速に当該システムの指令員が停電区間を把握することができる。
【0042】
また、区間毎の充停電状態を運行管理システムや設備監視システム等の他システムに充停電情報として送信するようにしたので、当該システムの指令員が他システムの指令員に停電区間を連絡する手間がなくなり、その際に生じる連絡ミスや設備異常等の誤検出も防ぐことができる。より具体的には、運行管理システムでは、停電区間をより正確且つ迅速に表示することができ、また、沿線設備を監視する設備監視システムでは、停電による信号機等の異常を故障として検出することがあるが、例えば、作業に伴う計画停電等による信号機等の沿線設備の異常を故障として誤検出するのを防止することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、区間毎の充停電状態の画面表示と充停電情報の他システムへの送信とを同時に行う例について説明しているが、いずれか一方を実施する構成とすることも可能である。
【0044】
また、上述した実施の形態では、充停電状態データベースが更新された時点で他システムに充停電情報を送信する例について説明しているが、この充停電情報を送信するタイミングはこれに限らず、例えば、充停電状態データベースが更新されなくても、一定周期で送信するようにしてもよい。
【0045】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 監視制御システム
2 監視制御装置
3 ネットワーク(LAN)
4 鉄道用電力系統
5,5a,5b,5c 変電所
6 遠制子局
7 電車線
7a 下り側電車線
7b 上り側電車線
8 高圧配電線
9 遠制機器
10 非遠制機器
11 機器状態監視部
12 充停電区間判定部
13 画面表示部
14 充停電情報送信部
15 遠制機器データベース
16 非遠制機器データベース
17 停電条件データベース
18 充停電状態データベース
100a〜100h き電区間
200a〜200d,300a〜300d,400a〜400d き電遮断器
500a,500b 断路器(タイ断路器)
500c 断路器(区分断路器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して鉄道用電力系統の電気設備を監視制御する鉄道用電気設備の監視制御システムであって、
遠隔制御対象の遠制機器の状態を示す遠制機器状態情報、および、遠隔制御対象外の非遠制機器の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、電車線の停電区間、および、沿線設備に電力を供給する高圧配電線の停電区間を検出する監視制御装置と、
前記電車線あるいは前記高圧配電線のうちの一方あるいは両方に電力を供給する変電所に設けられ、前記ネットワークを介して前記遠制機器状態情報を前記監視制御装置に送信する遠制子局と、
を備えることを特徴とする鉄道用電気設備の監視制御システム。
【請求項2】
前記監視制御装置は、
前記遠制機器の状態を格納する遠制機器データベースと、
前記非遠制機器の状態を格納する非遠制機器データベースと、
前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎にあらかじめ定義された停電条件を格納する停電条件データベースと、
前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎の充停電状態を格納する充停電状態データベースと、
前記遠制機器状態情報に基づいて、前記遠制機器の状態変化を監視し、前記遠制機器の状態変化を検知した際に、前記遠制機器データベースを更新すると共に、前記非遠制機器状態情報に基づいて、前記非遠制機器の状態変更を監視し、前記非遠制機器の状態変更を検知した際に、前記非遠制機器データベースを更新する機器状態監視部と、
前記遠制機器データベース、前記非遠制機器データベース、および前記停電条件データベースを参照し、前記遠制機器および前記非遠制機器の状態と前記停電条件とを取得して、前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎の充停電状態を判定し、前記充停電状態データベースを更新する充停電区間判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄道用電気設備の監視制御システム。
【請求項3】
前記充停電区間判定部は、
前記停電条件が1つ存在する区間では、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に、当該区間を停電区間と判定し、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定し、
前記停電条件が2つ以上存在する区間では、全ての前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に当該区間を停電区間と判定し、いずれか一つ以上の前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の鉄道用電気設備の監視制御システム。
【請求項4】
前記監視制御装置は、前記充停電状態データベースを参照し、前記各区間毎の充停電状態を取得して画面表示を行う画面表示部をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の鉄道用電気設備の監視制御システム。
【請求項5】
前記監視制御装置は、前記充停電状態データベースを参照し、前記各区間毎の充停電状態を取得して充停電情報として送信する充停電情報送信部をさらに備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の鉄道用電気設備の監視制御システム。
【請求項6】
鉄道用電力系統の電気設備を監視制御する鉄道用電気設備の監視制御装置であって、
遠隔制御対象の遠制機器の状態を格納する遠制機器データベースと、
遠隔制御対象外の非遠制機器の状態を格納する非遠制機器データベースと、
電車線の各区間毎、および、沿線設備に電力を供給する高圧配電線の各区間毎に、あらかじめ定義された停電条件を格納する停電条件データベースと、
前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎の充停電状態を格納する充停電状態データベースと、
前記遠制機器の状態を示す遠制機器状態情報に基づいて、前記遠制機器の状態変化を監視し、前記遠制機器の状態変化を検知した際に、前記遠制機器データベースを更新すると共に、前記非遠制機器の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、前記非遠制機器の状態変更を監視し、前記非遠制機器の状態変更を検知した際に、前記非遠制機器データベースを更新する機器状態監視部と、
前記遠制機器データベース、前記非遠制機器データベース、および前記停電条件データベースを参照し、前記遠制機器および前記非遠制機器の状態と前記停電条件とを取得して、前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎の充停電状態を判定し、前記充停電状態データベースを更新する充停電区間判定部と、
を備えることを特徴とする鉄道用電気設備の監視制御装置。
【請求項7】
前記充停電区間判定部は、
前記停電条件が1つ存在する区間では、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に、当該区間を停電区間と判定し、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定し、
前記停電条件が2つ以上存在する区間では、少なくともいずれか1つ以上の前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に当該区間を停電区間と判定し、全ての前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の鉄道用電気設備の監視制御装置。
【請求項8】
前記充停電状態データベースを参照し、前記各区間毎の充停電状態を取得して画面表示を行う画面表示部をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の鉄道用電気設備の監視制御装置。
【請求項9】
前記充停電状態データベースを参照し、前記各区間毎の充停電状態を取得して充停電情報として送信する充停電情報送信部をさらに備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の鉄道用電気設備の監視制御装置。
【請求項10】
遠隔制御対象の遠制機器の状態を示す遠制機器状態情報に基づいて、前記遠制機器の状態変化を監視すると共に、遠隔制御対象外の非遠制機器の状態を示す非遠制機器状態情報に基づいて、前記非遠制機器の状態変更を監視する機器状態監視ステップと、
前記遠制機器の状態変化、あるいは、前記非遠制機器の状態変更を検知した場合に、電車線の各区間毎、および、沿線設備に電力を供給する高圧配電線の各区間毎にあらかじめ定義された停電条件と、前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とを照合して、前記電車線および前記高圧配電線の各区間毎の充停電状態を判定する充停電区間判定ステップと、
を有することを特徴とする鉄道用電力系統の停電区間検出方法。
【請求項11】
前記充停電区間判定ステップにおいて、
前記停電条件が1つ存在する区間では、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に、当該区間を停電区間と判定し、前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定し、
前記停電条件が2つ以上存在する区間では、少なくともいずれか1つ以上の前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致した場合に当該区間を停電区間と判定し、全ての前記停電条件と前記遠制機器および前記非遠制機器の状態とが一致しない場合に、当該区間を充電区間と判定する
ことを特徴とする請求項10に記載の鉄道用電力系統の停電区間検出方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の鉄道用電力系統の停電区間検出方法を含み、
前記充停電状態を画面表示する画面表示ステップを有することを特徴とする鉄道用電力系統の停電区間通知方法。
【請求項13】
前記充停電状態を充停電情報として送信する充停電情報送信ステップをさらに有することを特徴とする請求項12に記載の鉄道用電力系統の停電区間通知方法。
【請求項14】
請求項10または11に記載の鉄道用電力系統の停電区間検出方法を含み、
前記充停電状態を充停電情報として送信する充停電情報送信ステップを有することを特徴とする鉄道用電力系統の停電区間通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102602(P2013−102602A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244523(P2011−244523)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】