説明

鉄道車両及び貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法

【課題】乗客と小口貨物を同時に輸送することを可能とする。
【解決手段】鉄道車両のうちの制御機器2を搭載する必要のない付随車両1bの、乗客が搭乗する車体3の下面3aを貨物コンテナCが搭載可能なように構成した本発明の鉄道車両が、所定の停止位置に停車した時に、前記下面3aへの貨物コンテナCの積み下ろしを行う。
【効果】省エネルギーで、CO2排出量を殆ど増加させることなく、小口貨物の運搬事業が行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物コンテナを搭載可能な鉄道車両、及びこの鉄道車両に貨物コンテナを積み下ろしする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機やバスでは、車体の客室の床下部分のスペースに乗客の荷物等を搭載して乗客と同時に荷物を輸送することが行われている。
【0003】
一方、鉄道車両では、専ら貨物専用車両(貨車)により貨物のみを運搬し、乗客専用車両(電車等)では、乗客のみを輸送することが行われていた。
【0004】
ところが、近年、一部の電車等では、乗客と少量の荷物を同時に運搬するようにしたものが実用化されている。例えば特許文献1に記載された鉄道車両は、車体を長手方向に2区分化し、上部を客室に、下部を荷物室としている。また、非特許文献1に記載された鉄道車両は、客室の一部を荷物スペースとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両は、車体の上部を客室に、下部を荷物室としているので、荷物室の高さ分だけ車体の高さが高くなり、特に曲線路走行時の安定性に問題が残る。
【0006】
一方、非特許文献1に記載された鉄道車両は、貨物スペースを設けた分、乗客用スペースを削減する必要が生じ、乗客の輸送能力が減少する。
【0007】
また、どちらの鉄道車両も、もっぱら乗客の手荷物を運搬するためのもので、貨物輸送手段として使用されるレベルのものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−263866号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ROLLING STOCK &MACHINERY、第2巻第7号「−関西国際空港アクセス特急車両−南海電鉄「ラピート」50000系特急車」、p4〜9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、従来の乗客と荷物を同時に運搬するようにした鉄道用車両は、もっぱら乗客の荷物を運搬するためのもので、貨物輸送手段として使用されるレベルのものではなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法は、
乗客と小口貨物を同時に輸送することを可能とするために、
鉄道車両のうちの制御機器を搭載する必要のない付随車両の、乗客が搭乗する車体の下面を貨物コンテナが搭載可能なように構成した本発明の鉄道車両が、所定の停止位置に停車した時に、前記下面への貨物コンテナの積み下ろしを行うことを最も主要な特徴としている。
【0012】
本発明は、電車等の鉄道車両の車体の下面に、電動機等の制御機器を搭載する必要がない付随車両の乗客が搭乗する車体の下面に、宅配便等の小口貨物を運搬する貨物コンテナを搭載するので、乗客と小口貨物を同時に輸送することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、付随車両の乗客が搭乗する車体の下面に、小口貨物を運搬する貨物コンテナを搭載することにより、省エネルギーで、CO2排出量を殆ど増加させることなく、小口貨物の運搬事業が行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】付随車両の車体の下面に貨物コンテナを装備した本発明の鉄道車両の一例を示す概略図である。
【図2】駅等の停車場において、本発明方法による貨物コンテナの積み下ろし状態を説明する車両の進行方向の断面図で、(a)は台車部を示した図、(b)は貨物コンテナ搭載部を示した図である。
【図3】鉄道車両の車体の下面に装備する貨物コンテナの一例を示した図で、(a)は車両幅方向から見た図、(b)は車両の前後方向から見た図である。
【図4】駅等の停車場において、本発明方法による貨物コンテナの積み下ろし状態を説明する上方から見た図である。
【図5】従来の鉄道車両の制御機器の配置例を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、乗客と小口貨物を同時に輸送するという目的を、付随車両の乗客が搭乗する車体の下面に、小口貨物を運搬する貨物コンテナを搭載することによって実現した。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の着想と共に本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を用いて説明する。
【0017】
日本国内では、通常、レール踏面から鉄道車両の車体の下面までは1100mmの高さがあり、鉄道車両の中でも電動車両1aは、図5に示すように、この車体3の下面に電動機等の制御機器2を搭載している。従って、乗客が搭乗する車体3の下面には、殆ど空きスペースがない状況である。
【0018】
一方、編成車両内の約半数を占める付随車両1bは、電動機等の制御機器2を搭載する必要がなく、車体3の下面はその殆どが空きスペースSになっているが、従来、この空きスペースSは何ら利用されてはいなかった。なお、図5中の4は台車を示す。
【0019】
ところが、近年、鉄道のプラットホームでは自動開閉式ホーム柵が実用化され、鉄道車両は停車駅のホームの決まった停止位置に±30cmの精度で停止制御できるようになった。
【0020】
そこで、発明者は、鉄道車両のうちの制御機器を搭載する必要のない付随車両に着目し、駅ではプラットホームの下になり、荷物の積み込みのためにアクセスする事ができなかった付随車両の、乗客が搭乗する車体の下面に貨物コンテナを搭載することを考えた。
【0021】
そして、このように、付随車両に貨物コンテナを搭載すれば、停車駅のホームの決まった停止位置に±30cmの精度で停止制御できることから、駅の決まった位置で貨物コンテナを容易に自動的に積み下ろしすることが可能になる。
【0022】
これにより、鉄道が網の目のように設置された都市部では、鉄道の主要駅で小口貨物の自動積み下ろしを行うことができるようになって、省エネルギーで、CO2排出量を殆ど増加させることなく、宅配便の配送等の小口貨物の運搬事業を行うことが可能になる。
【0023】
本発明は、以上の考えのもとになされたものである。
すなわち、本発明の鉄道車両は、図1に示すように、鉄道車両のうちの制御機器2を搭載する必要のない付随車両1bの、乗客が搭乗する車体3の下面3aを貨物コンテナCが搭載可能なように構成したことを特徴とするものである。
【0024】
この付随車両1bの貨物コンテナCを搭載可能な構成としては、付随車両1bの車体3の下面3aに貨物コンテナCを搭載できるものであればどのような構成でも良い。
【0025】
例えば図2では、車体3の下面3aの空きスペースSに、例えば2本で対をなす横断面L字状の案内レール5を、車両幅方向(図2の紙面左右方向)に、所定数(図1の例では2対)設けている。
【0026】
そして、例えば車両幅方向両側の所定位置における前記案内レール5の近傍に、可動式のストッパ6を設置し、貨物コンテナCを搭載した場合に、この貨物コンテナCを車体3の下面3aに固定できるようにしている。
【0027】
一方、貨物コンテナCは、例えば図3に示すように、その上面Caに前記案内レール5に案内されるコロ7を、長手方向の四隅近傍に回転自在に設けている。そして、車体の幅方向のどちらの側からでも積み下ろしができるように、その下面Cbの長手方向両側に、係合凹部8を設けている。
【0028】
図3に示した貨物コンテナCは、その内部に貨物を出し入れするための蓋9も、長手方向両側に設けている。これらの蓋9は、貨物コンテナCの上面Ca側の枢支部9aを支点として開閉するようになされており、蓋9の、貨物コンテナCの下面Cb側部分に取付けたハンドル10の回動により閉じた状態でロックするようになっている。
【0029】
本発明の貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法は、前記本発明の鉄道車両の、自動開閉式ホーム柵11cが設けられたプラットホーム11への停車時に、車両の停車時間内に車体3の下面3aに貨物コンテナCの積み下ろしを行うことを特徴としている。
【0030】
このプラットホーム11において貨物コンテナCの積み下ろしを行う位置は、前記プラットホーム11における、付随車両2aの貨物コンテナCを搭載する空きスペースS部分が停止する位置である。
【0031】
このプラットホーム11の下部11aの当該位置には、本発明の鉄道車両の車体3の下面3aに、貨物コンテナCを積み下ろしできるように、図2(b)に示すように、車体3の下面3aに設けた案内レール5と連続するレール12が設けられている。
【0032】
そして、例えば、本発明の鉄道車両の車体3の下面3aに設けた案内レール5に吊り下げられた状態でストッパ6によって固定された貨物コンテナCを、主要駅に停車した際に下ろすには以下のように行う。
【0033】
先ず、駅の自動開閉式ホーム柵11cの動作に連動して鉄道車両の停止を検知し、乗客乗降用ドアの開動作に合せて前記ストッパ6を解除する。この解除とともに、前記レール12の一方端に枢支連結した可動レール13を、例えばシリンダ14のロッドを突出させて、レール12と直線状となるように位置させる。
【0034】
レール12と可動レール13を直線状となした後は、プラットホーム11の下部11aにおける前記レール12の下方に設けられた駆動体15を貨物コンテナC側に移動させ、駆動体15の先端部に設けた係合爪15aを貨物コンテナCの係合凹部8に係合させる。
【0035】
駆動体15の係合爪15aを貨物コンテナCの係合凹部8に係合させた後は、駆動体15を反車両側に引き戻し、貨物コンテナCをプラットホーム11の下部11aの奥に設けた保管部11b(図4参照)まで引き入れる。
【0036】
なお、図3に示した例では、前記駆動体15は、本体15bの下面に設けたラック15cに噛み合うピニオン15dをモータ15eで正逆回転させることで駆動体15を移動させるものを示している。そして、係合爪15aは本体15bの一方端に枢支し、シリンダ15fのロッドの出退動により、上下方向に揺動して貨物コンテナCの係合凹部8への係合または係合状態からの解除を行うものを示している。しかしながら、先に説明した作用を奏するものであれば、その構成は問わない。
【0037】
ところで、停車時におけるプラットホーム11の停止位置への車体3の停止精度は、先に説明したように、±30cmである。
【0038】
従って、車体3の上方から見た主要駅のプラットホーム11を示した図4に示すように、前記レール12、可動レール13等の位置を車体3の下面3aに設けた案内レール5の位置に合わせるよう、支持レール16により60cm程度移動できる構造としている。また、この移動機構は、プラットホーム11の下部11aの奥に設けた保管部11bに貨物コンテナCを移動する際にも利用できる。
【0039】
以上の本発明は、既存電車の車両、路線、駅設備を活用することができ、新たなインフラを整備することなく、若干の改良により、主要駅での30秒〜1分程度の停車時間の間に、貨物コンテナの積み下ろしを自動で行うことができる。従って、従来の乗客を運搬する電車としての機能はそのままで、車体下面の空きスペースを用いて、小口の貨物輸送を行うことができる。
【0040】
特に、国土交通省の最近の宅配便取扱個数の調査統計によれば、その伸びはネット販売の普及等により急速に増加している。そして、その98.9%がトラックで運搬されていることから、その一部を本発明の鉄道車両を用いた運搬に切替えることで、CO2排出量の減少につながり、環境悪化の緩和になる。
【0041】
前記本発明方法では、貨物コンテナにICタグ等の電子的標識を取り付けておき、電車が駅に侵入した際にその貨物コンテナの行き先及び運搬経路等の情報を瞬時に読み取り、自動積み下ろし可否を判断するようにしておくことが望ましい。
【0042】
このようにすれば、事前運送計画を綿密に立てることなく、自動で貨物コンテナを目的地に運搬する自動運搬管理システムにより、運搬管理の人件費を削減することも可能になる。
【0043】
本発明は上記の例に限らず、本発明の各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは、言うまでもない。
【0044】
例えば、上記の説明では、付随車両に搭載した貨物コンテナを下す場合について説明したが、主要駅のプラットホームに停車した付随車両に貨物コンテナを積み込む場合も、同様の操作で行うことができる。
【0045】
その際は、前記の例のように、駅の自動開閉式ホーム柵の動作に連動して鉄道車両の停止を検知し、乗客乗降用ドアの閉動作までに貨物コンテナを積み込むようにすれば、スムーズに貨物コンテナの積み下ろしが行える。
【符号の説明】
【0046】
1b 付随台車
2 制御機器
3 車体
3a 下面
C 貨物コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のうちの制御機器を搭載する必要のない付随車両の、乗客が搭乗する車体の下面を貨物コンテナが搭載可能なように構成したことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
鉄道車両のうちの制御機器を搭載する必要のない付随車両の、乗客が搭乗する車体の下面を貨物コンテナが搭載可能なように構成した鉄道車両が所定の停止位置に停車した時に、前記下面への貨物コンテナの積み下ろしを行うことを特徴とする貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法。
【請求項3】
前記貨物コンテナに、行き先および運搬経路情報を記録した電子標識を取り付けておき、鉄道車両が停車した時に、前記記録情報を読み取って貨物コンテナの積み下ろしを行うことを特徴とする請求項2に記載の貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法。
【請求項4】
駅の自動開閉式ホーム柵の動作に連動して鉄道車両の停止を検知し、乗客乗降用ドアの開動作に合せて、前記貨物コンテナを降ろすことを特徴とする請求項2又は3に記載の貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法。
【請求項5】
駅の自動開閉式ホーム柵の動作に連動して鉄道車両の停止を検知し、乗客乗降用ドアの閉動作までに貨物コンテナを積み込むことを特徴とする請求項2又は3に記載の貨物コンテナの鉄道車両への積み下ろし方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46365(P2011−46365A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198864(P2009−198864)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】