説明

鉄道車両台車異常検知システム

【課題】鉄道車両の台車にマイクロホンを取り付け、測定した音を分析する鉄道車両の台車異常検知システムにおいて、想定されている異常については、その異常の種類まで検知し、想定外の異常についてもその発生を検知できるようにする。
【解決手段】測定音を周波数解析により時系列の周波数成分に分解する。分解したデータを多次元座標空間上の代表点との距離により、類似データをまとめるクラスタリング技術により、複数のカテゴリに分類する。各カテゴリの代表点は、予め正常時のデータと異常時のデータを学習させ、記憶させておく。各カテゴリに分類されたデータは、記憶カテゴリを参照することで異常を検知し、記憶されていないカテゴリに分類された場合は、想定外の異常が発生したと判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンを用いて台車の異常を検出する鉄道車両台車異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
設置したマイクロホンを用いて、音により状態を推定する技術としては、例えば、特許文献1に、交通事故検知を対象として、事故音を他の交通音と区別して検出する技術が開示されている。すなわち、検出した音響信号に対して、パワースペクトルを演算し、スペクトルパターンを作成し、作成したスペクトルパターンと、予め設定されたパターンを比較し、一致する場合に事故音検出と判断するものである。これにより、事故音と他の交通音を区別することが可能となる。
【0003】
また、特許文献2には、鉄道車両等の車輪を対象として、車輪にハンマで外力を加えることにより発生した打音を分析して、異常の判定を行う技術が開示されている。すなわち、周波数帯域毎の時系列信号に分離し、瞬間的な最大値を抽出し、その最大値を予め設定された振動基準値と比較し、所定の関係から外れたとき比較結果信号を出し、例えば、比較結果信号が3個以上の場合に警報を出力している。これにより、複数の周波数帯域毎の時系列信号の最大値を比較することで、異常判定の信頼性を上げようとしている。
【0004】
さらに、特許文献3には、同じく鉄道車両等の車輪を対象として、走行中の2ヶ所で振動挙動を検出し、評価装置で実際特性値を形成し、これを基準特性値と比較し、大きくそれたときに異常と判断する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−142042号公報
【特許文献2】特開2000−131294号公報
【特許文献3】特表2003−502624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、測定データからパワースペクトル等の特徴量を抽出し、異常時の特徴量のパターンと比較する方式では、比較用の基準パターンの作成に大きな負担がかかる。すなわち、正常時と異常時のデータを比較し、異常時のスペクトルの特徴量を抽出し、比較対象となる異常時の特徴量のパターンを作成しなければならず、その作業は容易ではない。また、想定外の異常が発生し、一致するパターンがない場合には、その異常を検知することができないという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2や3のように、振動の大きさを抽出し、基準値と比較してその差異の程度で異常の判定を行う技術では、異常の種別を判定することはできない。また、ノイズや周辺環境の影響を受けやすく、異常が無いにもかかわらず異常と判断する可能性もある。
【0008】
本発明の目的は、鉄道車両の台車の複数種類の異常を検知できる鉄道車両台車異常検知システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、想定外の異常又は正常状態も含めて、様々な鉄道車両の台車の異常又は正常状態を検知できる鉄道車両台車異常検知システムを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、異常又は正常状態に対応する新たな基準値の作成が容易な鉄道車両台車異常検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の望ましい実施態様においては、鉄道車両の台車について、異常がない正常時の音と、想定される異常の音をマイクロホンにて測定する。マイクロホンで測定した音を周波数解析により、周波数成分、望ましくは時系列の周波数成分に変換する。変換した周波数成分のデータを、その類似度ごとに分類してカテゴリ分けするクラスタリング処理を行う。ここで、クラスタリングとは、特徴空間上で近くにあるものをまとめてグループ化することを言う。グループ化するには、適応共鳴理論やベクトル量子化等の汎用の技術を用いればよい。クラスタリングにおいては、正常時のデータと異常のデータが別のカテゴリに分類されるまでパラメータの調整を行う。また、各異常も、その種類毎に異なるカテゴリに分類されるようにパラメータを調整する。
【0012】
以上の処理により、異常時のスペクトルパターンから特徴量を抽出するという困難な作業を行うことなく、クラスタリング技術により、正常時のデータと各異常のデータが異なるカテゴリに分類されるようになる。したがって、入力されたデータがどのカテゴリに分類されるか判定することで、正常と異常の判断を行い、異常の場合にはどのような異常が発生したのか判断することができる。
【0013】
また、想定外で未学習の異常が発生した場合には、新しいカテゴリを生成し、そこに分類する。これにより、想定外の異常(又は正常)が発生したことを検知することができ、この場合には、この新規のカテゴリを、人手によって、どのような異常(又は正常)であるかを確認し、新たな基準データとして記憶させることは、比較的容易である。このようにして、鉄道車両の台車について、想定していた異常と想定外の異常の両方を検知することが可能となる。
【0014】
また、学習時の正常時のデータの中に、周辺環境が変化した場合のデータも入れておくことにより、周辺環境の変化に影響されず、異常を検知することが可能となる。
【0015】
具体的には、まず、異常検知を行うために、予め学習結果より、どのカテゴリが正常に対応し、どのカテゴリが異常に対応するのかカテゴリ記憶媒体に記憶しておく。
【0016】
台車異常検知時には、マイクロホンからの測定音を周波数解析手段で時系列の周波数成分に変換する。変換された周波数成分のデータをクラスタリング手段により、似ているデータは同じカテゴリになるように分類する。
【0017】
クラスタリングは、予め正常時の音と、想定した異常の音とを、周波数解析したデータとして学習させ記憶させておいた記憶媒体を参照しながらカテゴリの分類を行う。このクラスタリング手段によって、データがどのカテゴリに分類されたかを参照して、分類されたカテゴリが正常か異常であるか、また、異常の場合は、どのような異常であるかを判別する。
【0018】
さらに、カテゴリ記憶媒体に記録されていないカテゴリに分類された場合には、想定外の異常(又は正常状態)が発生したものと判断する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の望ましい実施態様によれば、鉄道車両の台車の異常を、想定していた複数種類に分けて検知することができる。
【0020】
また、本発明の望ましい実施態様によれば、想定外の異常又は正常状態についても、その発生を検知することが可能となる。
【0021】
さらに、本発明の望ましい実施態様によれば、異常又は正常状態に対応する新たな基準値の作成が容易な鉄道車両台車異常検知システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
マイクロホンで測定した音を用いて鉄道車両の台車の異常を検知するという目的を、音以外には特別な情報を必要としない構成で実現した。以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施例による鉄道車両台車異常検知システムの全体構成図である。
【0024】
複数の車両202からなる列車201において、各車両202の台車に複数のマイクロホン102(102a〜102c)を設置する。台車異常検知装置101は、車上ネットワーク203を介して、マイクロホン102から測定音103を収集する。測定音103を収集した台車異常検知装置101は、各測定音103について解析を行い、対象の台車に異常があるかどうか判断する。異常を判断する方法の詳細については後述する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例による鉄道車両台車異常検知システムにおける台車異常検知装置101の機能ブロック図である。
【0026】
測定音入力手段104は、マイクロホン102より、車上ネットワーク203を介して、測定音103を受信し、測定音記憶媒体112に記憶する。測定音記憶媒体112は、測定音103を記録として残す場合には、ハードディスク等の大容量の媒体で構成し、異常検知に使用した後すぐに廃棄する場合には、フラッシュメモリ等で構成すればよい。
【0027】
周波数解析手段105は、測定音記憶媒体112を参照し、異常検知の対象とする音を取り出す。対象とする音は、複数の前記マイクロホン102で測定された測定音103であり、現在時刻から数秒前までのデータや、予め定めた閾値以上の出力の前後数秒間というように、測定音記憶媒体112の容量等に応じて適切に選択する。周波数解析手段105は、選択したデータを周波数解析し、時系列の周波数成分に展開する。時系列の周波数成分への展開には、ウェーブレット変換や短時間フーリエ変換を用いればよい。
【0028】
図3は、図1の台車異常検知装置101でのデータ変換の様子を示すグラフで、入力された測定音103を正常と異常のカテゴリに分類するまでのデータ処理の流れを示す。
【0029】
図3(A)は、マイクロホン102における測定音103を示し、同図(B)はそれぞれを周波数解析により時系列の周波数成分に展開した結果を示す。図3(B)において、色の濃い部分が強い周波数成分であることを示している。
【0030】
クラスタリング手段106は、周波数解析手段105から解析した周波数成分をデータとして受け取り、学習結果記憶媒体107を参照しながら、データをいくつかのカテゴリに分類する。カテゴリの分類は、適応共鳴理論やベクトル量子化等の技術を用いれば良い。カテゴリの分類の基本的な考え方は、データの類似度を計算することである。学習結果記憶媒体107には、各カテゴリの代表点が、多次元の座標空間上の代表点データとして記憶されている。マイクロホン102により得られた各測定音データについて、各カテゴリの代表点との距離を比較し、所定の近さに属する代表点のカテゴリを、その測定音のカテゴリとして分類する。すべてのカテゴリの代表点から遠い場合には、そのデータは新しいカテゴリのデータであると判断する。近い、遠いの判断は、予め定めた閾値に従う。学習結果記憶媒体107への、各カテゴリの代表点を記憶させる方法については後述する。
【0031】
学習結果記憶媒体107は、カテゴリの量によってその容量が決定されるが、カテゴリが多い場合には、ハードディスク等の大容量の媒体で構成し、カテゴリが少ない場合には、フラッシュメモリ等で構成すればよい。
【0032】
図3(C)は、図3(B)の周波数解析結果を各時刻のデータごとにクラスタリングした結果を示す。
【0033】
異常検知手段108は、クラスタリング手段106によって出力された各データのカテゴリと、カテゴリ記憶媒体110を参照して、各データが正常であるか異常であるかを判断する。カテゴリ記憶媒体110は、各カテゴリについて、そのカテゴリが正常を示すカテゴリであるか、異常を示すカテゴリであるか、異常の場合はその異常の種別は何であるかのデータテーブルを記憶している媒体である。異常検知手段108は、クラスタリング手段106から出力されたカテゴリについて、カテゴリ記憶媒体110を参照し、正常であるか、異常であるか、異常の場合はその種別を判定する。カテゴリ記憶媒体110にないカテゴリが出力された場合には、未知の異常(又は未知の正常状態)と判定する。その判定結果を異常検知結果111として出力する。カテゴリ記憶媒体110における各カテゴリのデータの作成方法については後述する。
【0034】
カテゴリ記憶媒体110は、カテゴリの量によってその容量が決定されるが、カテゴリが多い場合には、ハードディスク等の大容量の媒体で構成し、カテゴリが少ない場合には、フラッシュメモリ等で構成すればよい。
【0035】
図3(C)において、ここでは一例として、カテゴリ1〜3を正常のカテゴリとし、カテゴリ4を異常カテゴリとしている。この結果、カテゴリ1〜3に分類されたデータを正常と判定し、カテゴリ4に分類されたデータを異常であると判定している。
【0036】
台車異常検知装置101を上記のように構成することにより、測定音103を周波数成分に分解し、さらにその周波数成分をクラスタリングにより、類似しているデータごとにカテゴリに分類することが可能となる。分類されたカテゴリを参照することにより、予め想定していた異常については、異常の発生とその種類を検知でき、想定外の異常(又は未知の正常状態)についても、その発生を検知することできる。
【0037】
図4は、前記実施例における台車異常検知装置101における異常検知処理フロー図である。以下に、各ステップ毎に順を追って説明する。
【0038】
ステップ401:
マイクロホンにおいて測定したデータを、測定音入力手段104で受信し、測定音記憶媒体112に保存し、ステップ402へ進む。
【0039】
ステップ402:
測定音記憶媒体112に保存した音を、周波数解析手段105で時系列の周波数成分に分解し、ステップ403へ進む。
【0040】
ステップ403:
周波数解析手段で時系列の周波数成分に分解されたデータを、クラスタリング手段106によりカテゴリに分類する。クラスタリングでは、学習結果記憶媒体107を参照し、得られたデータを、多次元座標空間上に記憶させておいた複数の代表点との距離を測り、予定の近さ(閾値の範囲内)に代表点があれば、その代表点の属するカテゴリであると判断する。このようにして、データの類似度毎に、似ているデータを同じカテゴリにまとめる。どのカテゴリにも属さないデータについては、新規カテゴリを作成して分類する。カテゴリ分類したらステップ404へ進む。
【0041】
なお、得られたデータが、どのカテゴリにも属さず、新規カテゴリが作成された場合、車庫において、検査員が、その台車の状態を確認し、正常又はある種の異常を確認する。そして、新たな種類の異常あるいは新たな正常状態の学習データとして、学習結果記憶媒体107に追加記憶させることができる。
【0042】
このことから容易に理解できるように、この実施例によれば、学習結果記憶媒体107には、当初から、多くの異常あるいは正常のカテゴリデータを記憶させておく必要はない。実際の使用とともに、上記の要領で学習しながら、判断基準となるカテゴリデータを増やしていくことができる。したがって、さらに、異常又は正常状態に対応する新たな基準値の作成が容易となる。
【0043】
ステップ404:
クラスタリング手段106により分類されたカテゴリと、カテゴリ記憶媒体110を参照して、分類されたカテゴリが正常のカテゴリであるか、異常のカテゴリであるか、異常の場合は、異常の種類は何かを判定する。カテゴリ記憶媒体110に無いカテゴリに分類された場合には、想定外の異常が発生したと判断し、上述の処理を行う。
【0044】
図5は、前記実施例における台車異常検知装置101の学習結果記憶媒体107のデータとカテゴリ記憶媒体110のデータを作成する学習処理の処理フロー図である。同様にして、各ステップ毎に順を追って説明する。
【0045】
ステップ501:
マイクロホンにおいて測定したデータを、予め記憶させたいデータをすべてまとめて正常、異常の区別と共に、測定音入力手段104で受信し、測定音記憶媒体112に保存し、ステップ502へ進む。周辺環境の変化に左右されずに異常検知を正しく行えるようにするには、記憶させたいデータの中に周辺環境の異なるデータを予め含めておけばよい。
【0046】
ステップ502:
測定音記憶媒体112に保存した音を、周波数解析手段105で時系列の周波数成分に分解し、ステップ503へ進む。
【0047】
ステップ503:
各周波数成分のデータをクラスタリングによりカテゴリ分類し、分類されたカテゴリが正常と異常の種別と合うまでステップ504からステップ508の処理を繰り返す。
【0048】
ステップ504:
カテゴリ分類時の類似度の判定の閾値となるパラメータを調整して、ステップ505へ進む。閾値は高く設定すれば類似度の判定が厳しくなり多くのカテゴリが生成される。
【0049】
ステップ505:
学習が収束するまでステップ506から508の処理を繰り返す。学習が収束するとは、各データが常に同じカテゴリに分類されるようになる、つまり、カテゴリ分類が同じ結果になる状態のことを指す。
【0050】
ステップ506:
測定音記憶媒体112に記憶されている全てのデータについて、ステップ507とステップ508の処理を繰り返す。
【0051】
ステップ507:
学習結果記憶媒体107を参照しながら、データを最も類似するカテゴリに分類する。閾値以上の類似カテゴリがない場合は新規カテゴリを生成する。ステップ508へ進む。
【0052】
ステップ508:
ステップ507のカテゴリ分類結果を基に当該カテゴリの代表点を更新し、その結果を学習結果記憶媒体107に反映する。
【0053】
ステップ509:
各カテゴリが正常に対応するか、異常に対応するか、異常の場合はどの異常に対応するかをカテゴリ分類結果を比較しながら判定し、その結果をカテゴリ記憶媒体110に保存する。
【0054】
図6は、前記実施例において、実際に台上試験にて台車の音を測定し、異常検知を実施した結果を示す。
【0055】
台上試験において、継手の異常検知を目的とし様々な異常を設定して試験を行った。その中で、次の5つについて、それぞれの異常検知を行うことができるか実験した。(1)通常品:異常の無い新品の継手、(2)ボルトが1本抜けた継手、(3)ボルトが2本抜けた継手、(4)ピニオン側の軸を10mm変位させた継手、(5)磨耗品:300万km走行し摩耗した継手である。
【0056】
結果は、図6に示すように、(3)ボルトを2本抜いた場合以外は、各異常は1つのカテゴリに分類され、正しく異常検知を行うことができた。ボルトが2本抜いた場合も、カテゴリ0、4、5と、複数のカテゴリに分類されているものの、他の異常とカテゴリが混ざることなく分離可能で、正しく異常検知できていることが判る。
【0057】
以上により、台車の異常を検知した場合は、その結果を車両のモニタに表示し、運転手や車掌に通知すればよい。あるいは、無線等の情報伝送技術を用いて、指令室や車庫に通知する構成としてもよい。通知を受けた運転手、車掌、指令員、又は作業者は、異常の程度に合わせて、例えば重度の異常であれば、すぐに列車を停車させる。車庫まで走行可能な異常であれば、車庫にて修理する準備をしながら、列車を車庫まで走らせる等の判断を行うことができる。
【0058】
本実施例の鉄道車両台車異常検知システムによれば、測定音を周波数成分に分解し、その周波数成分をクラスタリングにより、類似しているデータごとにカテゴリに分類することが可能となる。分類されたカテゴリを参照することにより、予め想定していた異常については、異常の発生とその種類を判定でき、想定外の異常については異常の発生を検知することできる。また、周辺環境の変化の影響も考慮して異常検知を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例による台車異常検知装置101の機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施例による鉄道車両台車異常検知システムの全体構成図。
【図3】図1の台車異常検知装置101におけるデータ変換の様子を示すグラフ。
【図4】図1の台車異常検知装置101における異常検知の処理フロー図。
【図5】図1の台車異常検知装置101における学習処理の処理フロー図。
【図6】図1の実施例における台車異常検知の結果を示す図。
【符号の説明】
【0060】
101…台車異常検知装置、102…マイクロホン、103…測定音、104…測定音入力手段、105…周波数解析手段、106…クラスタリング手段、107…学習結果記憶媒体、108…異常検知手段、110…カテゴリ記憶媒体、111…異常検知結果、112…測定音記憶媒体、201…列車、202…車両、203…車上ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に台車の音を測定するマイクロホンを備えた鉄道車両と、前記マイクロホンの出力を入力し、台車の異常検知を行う台車異常検知装置を有する鉄道車両台車異常検知システムであって、前記台車異常検知装置が前記入力を周波数解析により周波数成分のデータに分解する周波数解析手段と、正常のカテゴリと複数の異常種別毎のカテゴリにそれぞれ対応する基準データを記憶するカテゴリ記憶媒体と、得られた前記データを前記基準データとの類似度に応じて複数のカテゴリに分類するクラスタリング手段と、分類されたカテゴリに応じて、正常又は特定の異常を判断する異常検知手段を備えたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項2】
請求項1において、前記異常検知手段は、前記カテゴリ記憶媒体に記憶された基準データ以外のデータが得られたとき、想定外の状況が発生したと判断する手段を備えたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記クラスタリング手段は、正常のカテゴリと複数の異常種別毎のカテゴリに対応する前記基準データを、多次元の座標空間に代表点として設定し、これらの代表点との距離に応じて前記類似度を判定し、複数のカテゴリに分類することを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記周波数解析手段は、前記マイクロホンの出力を周波数解析により、時系列の周波数成分のデータに分解するように構成したことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記異常検知手段は、前記カテゴリ記憶媒体に記憶された基準データ以外のデータが得られたとき、このデータを新規のカテゴリに対応する基準データとして、前記カテゴリ記憶媒体に記憶させる手段を備えたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記周波数解析手段が、前記マイクロホンの出力を時系列の周波数成分に分解する手段として、ウェーブレット変換を用いることを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記周波数解析手段が、前記マイクロホンの出力を時系列の周波数成分に分解する手段として、短時間フーリエ変換を用いることを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記クラスタリング手段がデータを類似度ごとにカテゴリに分類する手段として、適応共鳴理論を用いることを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記クラスタリング手段がデータを類似度ごとにカテゴリに分類する手段として、ベクトル量子化を用いることを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、異常に対応するカテゴリ判定用として、台車の継手のボルト抜けに対応する基準データを記憶させたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、異常に対応するカテゴリ判定用として、台車の継手の軸の高さの変位に対応する基準データを記憶させたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかにおいて、異常に対応するカテゴリ判定用として、台車の継手の摩耗に対応する基準データを記憶させたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかにおいて、前記異常検知手段によって検知した異常を、車上モニタに表示する手段を備えたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかにおいて、前記異常検知手段によって検知した異常を、情報伝送装置を介して、運行管理指令室及び/又は車庫に通知する手段を備えたことを特徴とする鉄道車両台車異常検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−256153(P2007−256153A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82639(P2006−82639)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】