説明

鉄道車両向け分散型計算機システム及びその動作制御方法、並びに無線LANアクセスポイント

【課題】位置識別媒体が不要であり、通信のスループットを向上させることができ、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる鉄道車両向け分散型計算機システムを提供する。
【解決手段】複数の表示端末の表示内容を個別に制御する複数の端末計算機4と、無線LANアクセスポイント3と、このアクセスポイントを介して、表示端末に表示させる情報を配信すると共に端末計算機4の動作を制御する情報サービス管理装置2とを有し、無線LANアクセスポイント3は、通信範囲を限定したアンテナを用いて端末計算機4と無線通信を確立し、このアンテナと端末計算機4の識別情報の組合せ情報を取得するアンテナID取得部33と、この組合せ情報と自身の識別情報を車両内位置情報として情報サービス管理装置2に通知するDHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のドア近傍に設けられた複数の表示端末に情報を表示する、鉄道情報サービス提供システムに好適な鉄道車両向け分散型計算機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの乗客向け情報サービスとして、車両内の各所にLED(Light Emitting Diode)ディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示端末を設置し、各種案内、ニュース、広告映像などを乗客に提供するシステムが実用化されている。また、乗客の満足度を高めるべく、各表示端末への表示内容は一律ではなく、その設置位置に適した内容を選択して表示する等の技術が導入されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような鉄道などの乗客向け情報サービスを提供するシステムにおいては、各表示端末への表示内容として、その設置位置に適した内容を選択して表示する制御を行うためには、それぞれの表示端末を制御する端末計算機に、表示端末の設置位置に応じた表示内容を出力するように動作パラメータを設定する必要があり、この動作パラメータの設定作業を効率的に実施する技術が重要となる。
【0005】
そのような技術として、例えば、本発明者らが以前に出願した特願2010−225696号の技術がある。この技術には、「各車両に設置される無線LANアクセスポイントを介して動作制御装置に無線で接続されるそれぞれの端末計算機は、自身の車両内における設置位置を特定し、特定した設置位置を動作制御装置に通知して自身の動作パラメータを取得して動作することで表示制御を行う。一方、動作制御装置は、端末計算機の配置パターンを含む列車の編成データに基づいてそれぞれの設置位置に対応する動作パラメータを生成し、端末計算機からの通知を中継した無線LANアクセスポイントを識別して車両の号車番号を特定し、通知された設置位置に対応する動作パラメータを当該端末計算機に送信する。」技術が記載されている。
【0006】
しかし、上述した特願2010−225696号の技術を適用するためには、以下のような改善点があることが分かった。例えば、動作パラメータ設定の際、車両内の設置位置を記録した位置識別媒体を表示端末、端末計算機とは別に車両に設置する必要があり、設置作業時には複数の設置位置に対し、当該の位置識別媒体を間違えなく設置しなければならず、表示端末の艤装作業の工数が増加する。また仮に、位置識別媒体の設置場所を間違った場合、表示端末の画面に別の位置で表示すべき間違った映像が表示されるが、このシステムではその映像が正しいかどうかを診断することができず、正しいかどうかを診断するためには実際に表示されている内容と設置位置を目視などで確認して、診断する必要がある。
【0007】
さらに、車両内の金属で密閉された筐体の中で、かつ近接して多数の表示端末と無線LANアクセスポイントが設置され、その間で無線通信が行われるため、各機器同士で電波干渉が起こりやすく、通信のスループットの低下につながる。
【0008】
そこで、本発明は上述した改善点に鑑みてなされたものであり、その代表的な目的は、位置識別媒体が不要であり、通信のスループットを向上させることができ、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる鉄道車両向け分散型計算機システムを提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
すなわち、代表的なものの概要は、鉄道車両向け分散型計算機システム、鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法、無線LANアクセスポイントに適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0012】
(1)鉄道車両向け分散型計算機システムは、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムである。
【0013】
それぞれの前記端末計算機は、自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得する動作パラメータ取得部と、前記動作パラメータ取得部で取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御する表示制御部と、を有する。
【0014】
前記無線LANアクセスポイントは、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部と、前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部と、を有する。
【0015】
前記動作制御装置は、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記アンテナの通信範囲が車両内のどの位置に該当するかのアンテナ通信範囲とを編成データとして記憶する編成データ記憶部と、前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から前記編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信する端末計算機管理部と、を有する。
【0016】
(2)鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法は、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法である。
【0017】
前記無線LANアクセスポイントにおいて、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得し、取得した前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知するステップを有する。
【0018】
前記動作制御装置において、前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに前記無線LANアクセスポイントの識別情報と前記アンテナの通信範囲とを記憶した編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信するステップを有する。
【0019】
前記端末計算機において、自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得し、取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御するステップを有する。
【0020】
(3)無線LANアクセスポイントは、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの前記無線LANアクセスポイントである。
【0021】
前記無線LANアクセスポイントは、指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置された前記端末計算機と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナを前記動作制御装置から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替える指向性アンテナ制御部と、前記指向性アンテナ制御部で切り替えた指向性アンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部と、前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部と、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0023】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、位置識別媒体が不要であり、通信のスループットを向上させることができ、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる鉄道車両向け分散型計算機システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、車両に搭載される装置の構成とその接続及び配置例とを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、(a),(b)は進行方向左側と右側とで表示内容が異なる案内画面の表示例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、端末計算機の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、無線LANアクセスポイントの構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、無線LANアクセスポイントの指向性アンテナの配置と特性を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、情報サービス管理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、端末計算機がIPアドレスを取得するまでの動作の流れを示すシーケンス図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、端末計算機が動作パラメータを取得して表示制御を行う動作の流れを示すシーケンス図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、編成データテーブルの構成及びデータ例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、アンテナ配置パターン定義テーブルの構成及びデータ例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、端末計算機を管理するPC管理テーブルの初期状態のデータ例を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、PC管理テーブルの構成及び端末計算機が登録された後のデータ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0026】
さらに、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0027】
[本発明の実施形態の概要]
(1)本発明の実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システム(一例として、()内に対応する構成要素などを付記)は、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末(表示端末40)の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機(端末計算機4)と、各車両に設置される無線LANアクセスポイント(無線LANアクセスポイント3)と、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置(情報サービス管理装置2)と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システム(分散型計算機システム10)である。
【0028】
それぞれの前記端末計算機は、自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得する動作パラメータ取得部(動作パラメータ取得部44)と、前記動作パラメータ取得部で取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御する表示制御部(端末表示制御部45)と、を有する。
【0029】
前記無線LANアクセスポイントは、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部(アンテナID取得部33)と、前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部(DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34)と、を有する。
【0030】
前記動作制御装置は、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記アンテナの通信範囲が車両内のどの位置に該当するかのアンテナ通信範囲とを編成データとして記憶する編成データ記憶部(編成データ記憶部81)と、前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から前記編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信する端末計算機管理部(PC管理部24)と、を有する。
【0031】
(2)本発明の実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法(一例として、()内に対応するステップなどを付記)は、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法である。
【0032】
前記無線LANアクセスポイントにおいて、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得し、取得した前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知するステップ(ステップS321,S322)を有する。
【0033】
前記動作制御装置において、前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに前記無線LANアクセスポイントの識別情報と前記アンテナの通信範囲とを記憶した編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信するステップ(ステップS221,S222)を有する。
【0034】
前記端末計算機において、自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得し、取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御するステップ(ステップS422,S423,S424)を有する。
【0035】
(3)本発明の実施形態に係る無線LANアクセスポイント(一例として、()内に対応する構成要素などを付記)は、列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの前記無線LANアクセスポイントである。
【0036】
前記無線LANアクセスポイントは、指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置された前記端末計算機と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナ(指向性アンテナ35)と、前記複数の指向性アンテナを前記動作制御装置から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替える指向性アンテナ制御部(指向性アンテナ制御部31)と、前記指向性アンテナ制御部で切り替えた指向性アンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部(アンテナID取得部33)と、前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部(DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34)と、を有する。
【0037】
上述した本発明の実施形態の概要に基づいた本発明の一実施形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0038】
[本発明の一実施形態]
本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムを、図1〜図13を参照して説明する。
【0039】
<鉄道車両向け分散型計算機システムの構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムの構成例を示す図である。図1には、1号車からn号車までのn両(nは1以上の任意の整数)の車両が連結されて編成される列車に搭載された分散型計算機システム10の構成例を示している。
【0040】
図1において、破線の枠は列車を編成する車両を表しており、各車両には、それぞれ、無線LANアクセスポイント(以下、AP(Access Point)と略記)3と、複数の端末計算機(以下、PC(Personal Computer)と略記)4とが備えられ、この両者の間の通信は無線によって行われる。
【0041】
それぞれのPC4は、車両内のドア上部などに設置されるLEDディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示端末40(図4に図示)に近接する壁面などに埋め込まれ、この例では、各表示端末(の設置場所)40と1対1に対応付けられてその表示内容を個別に制御する計算機である。これらすべてのPC4は、自身に接続されている表示端末40に情報サービス用の各種画面を表示させるという同一の機能を有する。ただし、表示端末40の仕様や設置位置などに応じて表示内容を変えることができるように、それぞれのPC4は、自身に接続されている表示端末40の設置位置に対応して情報サービス管理装置2から配信される所定の動作パラメータによって、各種の表示制御動作を実行できるようにプログラム制御される。これにより、例えば、進行方向右側と左側とで異なる情報を表示させたり、停車駅の階段やエレベータなどの位置を示す案内図を車両毎に変えたり、車両内の位置によって放映する広告映像を変えたりするなどの、きめ細かな表示制御が可能となる。
【0042】
1つの車両に設置される表示端末40の数(=PC4の数)は任意であるが、通常は2台(車両の前後両端に設置)から24台の間であることが多く、同じ数の表示端末40が設置された車両だけで編成される列車もあるし、異なる数の表示端末40が設置された車両を任意に組み合わせて編成される列車もある。図1の例では、1号車にPC#1−1〜PC#1−8の計8台、2号車にPC#2−1〜PC#2−24の計24台のPC4が設置されている。なお、PC#j−kなる標記は、j号車のk番目のPC4を表すものとする。
【0043】
図1に示すように、分散型計算機システム10には、各PC4にIP(Internet Protocol)通信に必要となるIPアドレスなどを割り当てるDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ1と、各PC4にその動作を規定する動作パラメータ並びに情報サービスの提供に必要な各種の情報を配信する情報サービス管理装置2と、車両間を接続するLAN(Local Area Network)5とが備えられる。また、DHCPサーバ1と情報サービス管理装置2と各車両に備えられるAP3とが、LAN5を介して相互に通信可能に接続されることで、PC4を含めた無線LANシステムが構築される。このLAN5には、通常はバス型もしくはループ型などの有線LANを用いるが、PC4を接続する無線LANとは使用する周波数帯域が異なる別方式の無線LANを用いてもよい。なお、DHCPサーバ1は情報サービス管理装置2のなかに実装するようにしてもよい。
【0044】
また、情報サービス管理装置2へは、不図示の列車無線通信手段によって、情報配信センタ70から情報サービスの提供に必要な列車の編成データ、運行管理データ、コンテンツの表示スケジュールなどの各種情報が送信される。
【0045】
<車両に搭載される装置の構成とその接続及び配置例>
図2は、車両に搭載される装置の構成とその接続及び配置例とを示す図である。図2の例は、1号車である車両9に、DHCPサーバ1と情報サービス管理装置2とを搭載すると共に、計8台の不図示の表示端末40とその制御を行うPC4(PC#1−1〜PC#1−8)と車両中央にAP3とを設置した場合を示している。なお、DHCPサーバ1と情報サービス管理装置2とは、他の任意の車両9に搭載してもよいし、両者を別々の車両9に搭載してもよい。
【0046】
また、図2の太線にて示すように、同一の列車内に設置される各PC4と情報サービス管理装置2とを含む各装置は、大もとの電源を共有し同じタイミングで供給電力のオン/オフが行われる各車両9の電源6に接続され、この例では、電源ライン7によりほぼすべて同じタイミングで電源のオン/オフが行われるものとする。また、2つの車両9同士が連結されるときには、電源ライン7及びLAN5も相互に接続されるものとする。
【0047】
<端末計算機が行う表示制御の動作の概要>
ここで、PC4が行う表示制御の動作の概要を説明する。図3は、列車の運行時に車両内の情報サービス用の表示端末40に表示される、進行方向左側と右側とで表示内容が異なる案内画面の表示例である。これらは、いずれも列車が次の停車駅に近づいたときに表示される案内画面であり、図3(a)は、ドアが開く側の表示端末40に表示される画面の例、図3(b)は、その反対側の表示端末40に表示される画面の例である。
【0048】
図3に示すように、運行ガイド表示部61a,61bには、次の停車駅の名前65a,65bを案内するメッセージ、当該表示端末40が設置されている自車両の号車番号66a、66b、及び開くドアの方向67a,67bを案内するメッセージなどが表示される。テロップ表示部62a,62bには、列車の運行に伴う案内メッセージなどのほか、ニュースなどのテキストメッセージが次々に右から左方向に移動するように表示される。また、ホーム案内図表示部63a,63bには、次の停車駅のホームにある各種設備の位置を示す案内図が表示され、車両位置表示部64a,64bには、当該表示端末40が設置されている自車両の位置が識別可能に図形表示される。
【0049】
図3(a)と図3(b)とを比較して分かるように、同じ列車の同じ車両に設置される表示端末40であっても、進行方向左側と右側とでは、画面の構成、表示するメッセージ、案内図などが異なる場合がある。また、同じ列車の同じ進行方向左(右)側に設置される表示端末40であっても、自車両の位置によって、表示すべき号車番号や図形などが異なる場合がある。
【0050】
さらには、同じ車両の同じ進行方向左(右)側に設置される表示端末40であっても、車両内における設置位置によって流すメッセージや広告の内容を変えたい場合もある。そこで、それぞれの表示端末40の表示制御を司る各PC4を、当該表示端末40の設置位置に応じて情報サービス管理装置2から配信される動作パラメータに基づいて、各種の表示パターンを切り換えて動作させるようにプログラム制御する。これにより、同一のPC4であっても、それが制御する表示端末40の設置位置に応じて、動的に動作を切り換えることが可能となり、表示端末40の設置位置に応じたきめ細かい表示制御を行うことができる。
【0051】
<端末計算機の構成と機能>
続いて、それぞれの端末計算機(PC)4の構成と機能とについて説明する。図4は、端末計算機(PC)4の構成例を示す機能ブロック図である。各PC4は、PC識別名及びMAC(Media Access Control)アドレスなどの固有情報を除いて、すべて同一の構成を有する。
【0052】
図4に示すように、PC4は、電源投入検知部41、MACアドレス取得部42、IPアドレス取得部43、動作パラメータ取得部44、端末表示制御部45、無線LAN送受信部46、及び表示コンテンツ更新部47の各処理部と、動作パラメータ記憶部48及び表示コンテンツ記憶部49の各記憶部とを備える。
【0053】
電源投入検知部41は、PC4の電源が投入されたことを検知して、MACアドレス取得部42を起動する。MACアドレス取得部42は、PC4に搭載されている不図示の無線LANカードに付された固有の識別番号であるMACアドレスを当該無線LANカードから読み取り、読み取ったMACアドレスをIPアドレス取得部43に引き渡す。IPアドレス取得部43は、DHCPサーバ1にMACアドレス取得部42から引き渡されたMACアドレスを通知してIPアドレスを取得するように無線LAN送受信部46に指示し、無線LAN送受信部46から引き渡されたIPアドレスを動作パラメータ取得部44に引き渡す。
【0054】
動作パラメータ取得部44は、情報サービス管理装置2にIPアドレス取得部43から引き渡されたIPアドレスを通知して動作パラメータを取得するように無線LAN送受信部46に指示し、無線LAN送受信部46から引き渡された動作パラメータを動作パラメータ記憶部48に記憶させる。
【0055】
端末表示制御部45は、動作パラメータ記憶部48に記憶された動作パラメータにしたがって表示端末40に表示させる画面の表示データを生成し、生成した表示データを表示端末40に送信する。また、端末表示制御部45は、情報サービス管理装置2から送信される次駅案内指示などの表示制御情報にしたがって画面の構成や表示内容を切り換えたり、表示コンテンツ記憶部49に記憶された表示スケジュールにしたがって表示コンテンツ記憶部49に記憶された各種の表示コンテンツを表示端末40に表示させたりする。
【0056】
表示コンテンツ更新部47は、無線LAN送受信部46を介して情報サービス管理装置2から送信される表示スケジュールや追加及び更新用の表示コンテンツを受信し、受信した表示スケジュールや表示コンテンツを表示コンテンツ記憶部49に記憶させる。
【0057】
無線LAN送受信部46は、不図示の無線LANカード及び不図示の無指向性アンテナを介してAP3と無線で交信することにより、PC4とDHCPサーバ1及び情報サービス管理装置2との間の無線の通信リンクを確立し、IP通信によって情報サービス管理装置2と各種データの送受信を行う。
【0058】
<無線LANアクセスポイントの構成と機能>
次に、無線LANアクセスポイント(AP)3の構成と機能とについて説明する。図5は、無線LANアクセスポイント(AP)3の構成例を示す機能ブロック図である。図5に示すように、AP3は、指向性アンテナ制御部31、PC交信部32、アンテナID取得部33、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34、複数の指向性アンテナ35を備える。
【0059】
指向性アンテナ制御部31は、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34から転送されたアンテナ制御情報に基づき、複数の指向性アンテナ35を切り替える。PC交信部32は、指向性アンテナ35を介して、PC4から受信したIPアドレス要求をDHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34に引き渡し、パラメータ要求をアンテナID取得部33に引き渡す。また、PC交信部32は、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34から受信したIPアドレス、動作パラメータ、表示制御情報、表示コンテンツをPC4に引き渡す。アンテナID取得部33は、PC交信部32から引き渡されたパラメータ要求がどの指向性アンテナ35で受信したかを特定し、そのアンテナIDを取得し、パラメータ要求に含めて、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34に引き渡す。
【0060】
DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34は、PC交信部32から受信したIPアドレス要求をDHCPサーバ1に、アンテナID取得部33から受信したパラメータ要求を情報サービス管理装置2に引き渡す。また、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34は、DHCPサーバ1から受信したIPアドレスをPC交信部32に引き渡す。また、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34は、情報サービス管理装置2から受信した動作パラメータ、表示制御情報、表示コンテンツをPC交信部32に引き渡す。また、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34は、情報サービス管理装置2から受信したアンテナ制御情報を指向性アンテナ制御部31に引き渡す。
【0061】
<無線LANアクセスポイントの指向性アンテナの配置例とその特性>
図6は、AP3の指向性アンテナ35の配置例とその特性を示す図である。図6の例は、車両9の中央に計4本の指向性アンテナ(AID#1〜AID#4)を搭載したAP(AP#2−1)3が設置されると共に、計4台の不図示の表示端末40とその制御を行うPC(PC#2−1〜PC#2−4)4を設置した場合を示している。指向性アンテナの本数と表示端末40の台数とは同じ数となる。各指向性アンテナの電波の到達範囲は、それぞれ斜線で塗りつぶされた楕円となるようにそれぞれ指向性と設置角度を調整し、特定のPC4にのみ電波が届くように設計している。例えば、AID#1はPC#2−1、AID#2はPC#2−2、AID#3はPC#2−3、AID#4はPC#2−4にのみ電波が届くように指向性アンテナの指向性と設置角度を調整する。
【0062】
<情報サービス管理装置の構成と機能>
次に、情報サービス管理装置2の構成と機能について説明する。図7は、情報サービス管理装置2の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、情報サービス管理装置2は、電源投入検知部21、有線LAN送受信部22、動作パラメータ群生成部23、PC管理部24、表示コンテンツ配信制御部25、表示制御情報配信制御部26、編成データ更新部27、アンテナ制御情報生成部28、及び情報配信センタ交信部29の各処理部と、編成データ記憶部81、PC管理データ記憶部82、及び配信コンテンツ記憶部83の各記憶部とを備える。
【0063】
電源投入検知部21は、情報サービス管理装置2の電源が投入されたことを検知して、アンテナ制御情報生成部28と動作パラメータ群生成部23を起動する。アンテナ制御情報生成部28は、アンテナ配置パターン定義テーブル812からアンテナ配置情報を入手し、その情報に基づきアンテナ制御情報を生成し、各PC4の指向性アンテナの切替制御をするように有線LAN送受信部22に指示する。
【0064】
動作パラメータ群生成部23は、編成データ記憶部81の編成データテーブル811に記憶されている自列車の編成データ、及びアンテナ配置パターン定義テーブル812に記憶されているアンテナの配置パターンに基づいて、自列車に設置される各PC4に配布すべき動作パラメータ群を生成し、PC管理データ記憶部82に記憶されるPC管理テーブル821の初期設定を行う。編成データテーブル811、アンテナ配置パターン定義テーブル812、及びPC管理テーブル821の詳細は、図10、図11、図12を用いて後記する。
【0065】
有線LAN送受信部22は、AP3とLAN5(図1参照)を介して交信することにより、PC4とIP通信によって各種データの送受信を行う。なお、情報サービス管理装置2のIPアドレスは、予め固定のIPアドレスが割り当てられており、各AP3のIPアドレスは、例えば、列車の編成データの一部として、情報配信センタ70から通知されるものとする。
【0066】
PC管理部24は、有線LAN送受信部22を介して、各PC4から送信されるパラメータ要求を受信し、受信したパラメータ要求に含まれるアンテナIDをPC管理テーブル821から検索して取得し、取得した動作パラメータを当該PC4に返送する。また、受信したパラメータ要求に含まれる当該PC4のPC識別名、MACアドレス、及びIPアドレスをPC管理テーブル821に格納する。
【0067】
表示コンテンツ配信制御部25は、情報配信センタ交信部29を介して情報配信センタ70から送信されるニュースや広告などの各種配信コンテンツを受信し、受信した配信コンテンツを配信コンテンツ記憶部83に格納すると共に、PC管理部24に各PC4への配信コンテンツの配信を依頼する。PC管理部24は、表示コンテンツ配信制御部25から配信を依頼された配信コンテンツを、そのコンテンツの表示を行うすべてのPC4に有線LAN送受信部22を介して送信する。例えば、ニュースの配信を依頼された場合であれば、ニュースを表示するすべてのPC4にそのニュースを送信する。また、配信先が特定された配信コンテンツであれば、該当するPC4だけにそのコンテンツを送信する。
【0068】
表示制御情報配信制御部26は、情報配信センタ交信部29を介して、情報配信センタ70から送信される自列車の位置などの運行管理データを受信し、PC管理部24に各PC4へ次駅案内などの指示を行う表示制御情報を送信するように依頼する。PC管理部24は、表示制御情報配信制御部26から送信を依頼された表示制御情報を、それに基づいて表示制御を行うすべてのPC4に送信する。
【0069】
<乗客向けの情報サービスを提供するための動作>
続いて、以上説明した各装置が連携して乗客向けの情報サービスを提供するための動作について詳しく説明する。図8は、それぞれの端末計算機(PC)4がIP通信を行うのに必要となるIPアドレスを取得するまでの動作の流れを示すシーケンス図である。図9は、IPアドレスを取得したそれぞれの端末計算機(PC)4が情報サービス管理装置2から動作パラメータを取得して表示端末40の表示制御を行う動作の流れを示すシーケンス図である。以下、図8のシーケンス図に沿って、それぞれのPC4がDHCPサーバ1からIPアドレスを取得するまでの動作の詳細を説明し、続いて、図9のシーケンス図に沿って、取得したIPアドレスを用いて、情報サービス管理装置2から自身の動作を規定する動作パラメータを取得して表示制御を行う動作について説明する。
【0070】
まず、電源6が起動され、電源ライン7によって各装置への電力の供給が開始されると、PC4の電源投入検知部41が自装置の電源投入を検知して(ステップS411)、MACアドレス取得部42を起動する。次に、MACアドレス取得部42は、自装置に搭載されている無線LANカードからその固有番号であるMACアドレスを読み込むことによって当該MACアドレスを取得する(ステップS412)。
【0071】
同じく電源が投入された情報サービス管理装置2は、電源投入検知部21により、自装置の電源投入を検知して(ステップS211)、アンテナ制御情報生成部28を起動する。アンテナ制御情報生成部28は、各AP3に対し、送受信アンテナにAID#1(指向性アンテナ)を設定するためにアンテナ制御情報を送信する(ステップS212)。
【0072】
AID#1と接続されるPC4について、IPアドレスと動作パラメータを設定する。設定が完了すれば、同じ要領で、AID#2、#3・・・について、IPアドレスと動作パラメータの設定を行い、全てのPC4のIPアドレス、動作パラメータの設定を行う。
【0073】
同じく電源が投入されたAP3は、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34を介して、情報サービス管理装置2から送信されたアンテナ制御情報をもとに送受信アンテナに設定する(ステップS311)。例えば、アンテナ制御情報がAID#1であれば、送受信アンテナをAID#1に、AID#2であれば、送受信アンテナをAID#2に、AID#3であれば、送受信アンテナをAID#3に、AID#4であれば、送受信アンテナをAID#4にそれぞれ設定する。
【0074】
送受信アンテナに設定した指向性アンテナを使用し、所定周期で自身のMACアドレスなどの無線通信を行うために必要な情報を通知するビーコン信号を送信する(ステップS312)。PC4の無線LAN送受信部46がこのビーコン信号を検知すると(ステップS413)、当該AP3との間の通信リンクを確立するために自身のMACアドレスや認証情報などを通知するアソシエーション要求を送信する(ステップS414)。
【0075】
このアソシエーション要求がAP3の上記指向性アンテナによって受信され、必要なクライアント認証が行われた結果(ステップS313)、接続が許可されると、AP3からPC4宛に(PC4のMACアドレスを指定して)接続許可を通知すると共に無線通信を行うときの通信パラメータを通知するアソシエーション応答が送信される。このとき、複数のPC4からアソシエーション要求を受信する可能性があるが、最も電波強度の高いPC4以外のアソシエーション要求は破棄するものとする。このアソシエーション応答(R13)を受信したPC4の無線LAN送受信部46が、通知された通信パラメータを無線LANカードに設定することにより(ステップS415)、PC4とAP3との間で無線通信を行うための通信リンク(アソシエーション)が確立し、以後、PC4はAP3を介して他の装置と通信できるようになる。
【0076】
PC4とAP3との間のアソシエーションが確立すると、次に、PC4のIPアドレス取得部43は、IPアドレスを取得したい旨と自身のMACアドレスとを通知するブロードキャスト信号であるDHCP DISCOVERをAP3に送信する(ステップS416)。AP3によって中継されるこのブロードキャスト信号を受信したDHCPサーバ1は、割り当て可能なIPアドレスの候補を1つ選択して(ステップS111)、PC4宛に(PC4のMACアドレスを指定して)そのIPアドレス候補を通知する信号であるDHCP OFFERを送信する。
【0077】
PC4のIPアドレス取得部43は、無線LAN送受信部46を介して受信されるこのDHCP OFFERによって通知されたIPアドレス候補を受け入れ(ステップS417)、そのIPアドレス候補を利用したい旨を通知する信号であるDHCP REQUESTをDHCPサーバ1宛に送信する。AP3によって中継されるこの信号を受信したDHCPサーバ1は、IPアドレス候補として通知したIPアドレスの貸出し処理を行い(ステップS112)、貸出しが完了した旨を通知する信号であるDHCP ACKをPC4宛に送信する。この信号を受信したPC4のIPアドレス取得部43は、当該IPアドレスを自装置のIPアドレスとして設定し(ステップS418)、IPアドレスの取得が完了する。
【0078】
続いて、PC4が取得したIPアドレスを用いて情報サービス管理装置2から自身の動作を規定する動作パラメータを取得して表示制御を行う動作について説明する。以下、図9のシーケンス図に沿って、各装置の動作を詳細に説明する。
【0079】
IPアドレスの取得が完了すると、動作パラメータ取得部44は、AP3に自身の固有情報であるPC識別名を通知するためにパラメータ要求を送信する(ステップS421)。このとき、無線LAN送受信部46は、MACアドレス取得部42によって取得された自装置のMACアドレスと、IPアドレス取得部43によって、取得された自装置のIPアドレスとを含んだパラメータ要求のIPパケットを生成してAP3に送信する。
【0080】
AP3のアンテナID取得部33は、PC交信部32を介してIPパケット化されたパラメータ要求の受信に使用したアンテナを特定し、この特定したアンテナID(AID#)を取得し(ステップS321)、パラメータ要求に当該アンテナID(AID#)を付与し、DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34を介して、情報サービス管理装置2に送信する(ステップS322)。
【0081】
情報サービス管理装置2のPC管理部24は、有線LAN送受信部22を介してIPパケット化されたパラメータ要求を受信すると、編成データテーブル811を参照してこのIPパケットを送信してきたAP3のMACアドレスから、当該AP3及び当該PC4が設置されている車両の号車番号を特定して、特定した号車番号と通知された位置番号とによって特定される設置位置に該当するPC管理テーブル821のレコードにPC4から通知されたPC識別名と受信したIPパケットに含まれている当該PC4のMACアドレス及びIPアドレスとを登録する(ステップS221)。続いて、PC管理部24は、当該レコードに対応して生成済みをPC管理テーブル821から取得して、取得した動作パラメータを含む動作パラメータをPC4に送信する(ステップS222)。
【0082】
ここで、編成データ記憶部81に備えられる編成データテーブル811とアンテナ配置パターン定義テーブル812、PC管理データ記憶部82に備えられるPC管理テーブル821について、図10〜図13を用いて説明する。
【0083】
図10は、編成データ記憶部81に備えられる編成データテーブル811の構成及びデータ例である。図10に示すように、編成データテーブル811には、列車を編成しているそれぞれの車両に対応するレコードが号車番号順に登録される。各レコードは、号車番号、PC数、アクセスポイント属性データ、及び配置パターンを属性にもつ。号車番号とは、列車を編成している車両の連結順に各車両に付される一連番号である。PC数とは、当該車両に設置されているPCの数(=表示端末40の数)である。アクセスポイント属性データとは、当該車両に設置されているAP3の属性データであり、AP3の識別番号、無線通信チャンネル番号、MACアドレス、及びIPアドレスを含む。配置パターンとは、当該車両への表示端末40を設置する場所の配置パターンの識別名である。
【0084】
図10のデータ例は、1号車にはパターンAによって、8台のPC4が設置されると共に、識別番号が「AP#1」、無線通信チャンネル番号が「1」、MACアドレスが「0x−−−abf0」、IPアドレスが「192.168.1.11」であるAP3が1台設置されており、2号車には、パターンBによって24台のPC4が設置され、さらに3号車には、パターンCによって4台のPC4が設置されていることなどを示している。ここでの配置パターンとは、車両の中でどのように表示端末40を設置しているかを示し、配置パターンに合わせて、AP3のアンテナの指向性と向きを調整している。
【0085】
図11は、編成データ記憶部81に備えられるアンテナ配置パターン定義テーブル812の構成及びデータ例である。図11に示すように、アンテナ配置パターン定義テーブル812には、車両に表示端末40を配置するパターンのそれぞれに対応するレコードが登録される。各レコードは、配置パターン、アンテナID(AID)、PC設置位置を属性にもつ。
【0086】
図11のデータ例は、パターンAでは、4本のアンテナがあり、AID#1はPC設置場所がIのPC4と、AID#2はPC設置場所がIIのPC4と、AID#3はPC設置場所がIIIのPC4と、AID#4はPC設置場所がIVのPC4とそれぞれ通信が確立するようにアンテナを配置していることを示す。
【0087】
図12は、情報サービス管理装置2のPC管理部24が情報配信センタ70から列車の編成データを受信したときにPC管理データ記憶部82に生成されるPC管理テーブル821の初期状態のデータ例である。図12に示すように、初期状態のPC管理テーブル821には、当該列車を編成する各車両に設置されるそれぞれのPC4に対応するレコードが号車番号及びアンテナID(AID)順に登録される。各レコードは、号車番号、アンテナID(AID)、及びポインタ値を属性にもつ。
【0088】
号車番号とは、当該PC4が設置される車両の号車番号である。アンテナID(AID)とは、当該PC4のアンテナを識別する番号であり、アンテナIDから当該PC4に対応付けされた表示端末40の車両内における設置位置を識別するための番号でもある。
【0089】
ポインタ値には、当該PC4に配信すべき動作パラメータのリストのアドレスを示すポインタ値が登録される。ここで、例えばp(A,1)なる標記は、前記した配置パターンが「パターンA」であるPC4に配信すべき1番目の動作パラメータのリストへのポインタ値を表している。情報配信センタ70から受信した列車の編成データは、編成データ更新部27によって編成データテーブル811(図10)に登録されており、PC管理部24は、この編成データテーブル811とアンテナ配置パターン定義テーブル812(図11)とを参照することによって、各車両の各設置位置に対応するそれぞれのPC4に配布すべき動作パラメータを特定し、特定した動作パラメータのリストへのポインタ値をPC管理テーブル821に登録する。
【0090】
そして、図9のステップS221では、パラメータ要求を送信してきたPC4の号車番号とアンテナIDとに対応するレコードをPC管理テーブル821から検索して、当該レコードにそのPC4のPC識別名などを登録し、続くステップS222では、当該レコードのポインタ値から動作パラメータのリストを取得して、取得した動作パラメータをそのPC4に送信する。
【0091】
このような動作を、パラメータ要求を送信してきたそれぞれのPC4毎に繰り返し実行することにより、図13に例示するように、PC登録後のPC管理テーブル821のそれぞれのレコードには、それに対応するPC4のPC識別名、MACアドレス、及びIPアドレスが追加登録されることになる。
【0092】
再び図9に戻って説明を続ける。PC4の動作パラメータ取得部44は、無線LAN送受信部46を介して動作パラメータを受信すると、受信した動作パラメータを動作パラメータ記憶部48に格納し、端末表示制御部45は、動作パラメータ記憶部48に格納された動作パラメータを参照して自身の動作を制御することによって、表示コンテンツ記憶部49から必要な表示スケジュールやコンテンツを取得して表示端末40に表示させる初期表示データを生成する(ステップS422)。これにより、生成された初期表示画面の表示データP1は表示端末40に送信され、初期表示画面が表示される。
【0093】
また、必要に応じて、情報配信センタ70から情報サービス管理装置2に送信される列車の編成データと表示コンテンツや表示スケジュールを含む配信コンテンツとは、表示コンテンツ配信制御部25によって受信され、配信コンテンツ記憶部83にデータが保存される。
【0094】
これとは別に、情報配信センタ70から情報サービス管理装置2へは、列車の位置情報などの運行管理データが送信され、情報サービス管理装置2の表示制御情報配信制御部26は、受信した運行管理データに基づいて、例えば次駅案内のテロップを流すように指示する表示制御情報の配信をPC管理部24に依頼する。依頼を受けたPC管理部24は、編成データテーブル811(図10)、アンテナ配置パターン定義テーブル812(図11)、PC管理テーブル821(図13)、動作パラメータのリスト(図12)などを参照することによって、その表示制御情報を配信すべき対象のPC4を抽出して、抽出したPC4のそれぞれにその表示制御情報を配信する(ステップS223)。これにより、例えばテロップ表示を行わない表示端末40に対応するPC4への不要な表示制御情報の配信を抑止する。
【0095】
この表示制御情報を受信したPC4の端末表示制御部45は、動作パラメータ記憶部48に格納されている動作パラメータを参照して自身の動作を制御することによって、受信した表示制御情報に対応した表示データの更新を行い(ステップS423)、これにより、例えば次駅案内のテロップの表示データP2を生成して表示端末40に送信する。以後同様にして、新たな運行管理データに基づいて、情報サービス管理装置2からPC4への表示制御情報の送信が行われ(ステップS224)、PC4が受信した表示制御情報に対応した表示データの更新を行うことで(ステップS424)、表示データP3を生成して表示端末40に送信する。
【0096】
また、情報配信センタ70から送信され、配信コンテンツ記憶部83に保存された例えば最新のニュースや天気予報などの配信コンテンツは、表示コンテンツ配信制御部25によって、その情報を必要とするそれぞれのPC4に更新コンテンツとして適宜配信される。この更新コンテンツを受信した各PC4の表示コンテンツ更新部47は、受信したコンテンツや表示スケジュールを表示コンテンツ記憶部49に保存する。
【0097】
以後、端末表示制御部45は、表示コンテンツ記憶部49に保存されている最新の表示スケジュールにしたがって更新されたコンテンツを表示するための表示データ更新を行う。これにより、更新された表示データPjを生成して表示端末40に送信する。
【0098】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システム10によれば、各PC4が動作パラメータ取得部44と端末表示制御部45などを有し、AP3がアンテナID取得部33とDHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部34などを有し、情報サービス管理装置2が編成データ記憶部81とPC管理部24などを有する。
【0099】
そして、AP3において、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されているPC4と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報とPC4の識別情報との組合せ情報を取得し、取得した組合せ情報と自身の識別情報とを車両内位置情報として情報サービス管理装置2に通知する。
【0100】
さらに、情報サービス管理装置2において、AP3から通知される車両内位置情報に含まれるAP3の識別情報からそれぞれのPC4の号車番号を特定し、車両内位置情報に含まれるアンテナの識別情報とPC4の識別情報との組合せ情報から、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとにAP3の識別情報とアンテナの通信範囲とを記憶した編成データを参照することによって、当該PC4の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する動作パラメータを生成し、AP3を介して、当該PC4に送信する。
【0101】
さらに、PC4において、自身の端末識別情報をAP3に通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを情報サービス管理装置2からAP3を介して取得し、取得した動作パラメータにしたがって動作することによって表示端末40の表示内容を制御する。
【0102】
これにより、車両9内の設置位置を記録した位置識別媒体を設置する必要がなくなる。また、特定の表示端末40とAP3で無線通信を行うため、スループットが向上する。この結果、位置識別媒体が不要であり、通信のスループットを向上させることができ、かつ、各PC4にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる。
【0103】
特に、AP3は、指向性アンテナ制御部31を有することにより、指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置されたPC4と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナ35を情報サービス管理装置2から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替えることができる。
【0104】
特に、情報サービス管理装置2は、表示制御情報配信制御部26を有することにより、PC4に送信した動作パラメータに基づいて、当該PC4に対応付けられた表示端末40に表示される情報を選択して、当該PC4に配信することができる。
【0105】
また、本技術は、無線LAN以外にも無線通信可能な通信手段でも実現可能である。
【0106】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0107】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0108】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、鉄道車両のドア近傍に設けられた複数の表示端末に情報を表示する、鉄道情報サービス提供システムに好適な鉄道車両向け分散型計算機システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 DHCPサーバ
2 情報サービス管理装置
3 無線LANアクセスポイント
4 端末計算機
5 LAN
6 電源
7 電源ライン
9 車両
10 分散型計算機システム
21 電源投入検知部
22 有線LAN送受信部
23 動作パラメータ群生成部
24 PC管理部
25 表示コンテンツ配信制御部
26 表示制御情報配信制御部
27 編成データ更新部
28 アンテナ制御情報生成部
29 情報配信センタ交信部
31 指向性アンテナ制御部
32 PC交信部
33 アンテナID取得部
34 DHCPサーバ兼情報サービス管理装置交信部
35 指向性アンテナ
40 表示端末
41 電源投入検知部
42 MACアドレス取得部
43 IPアドレス取得部
44 動作パラメータ取得部
45 端末表示制御部
46 無線LAN送受信部
47 表示コンテンツ更新部
48 動作パラメータ記憶部
49 表示コンテンツ記憶部
61a,61b 運行ガイド表示部
62a,62b テロップ表示部
63a,63b ホーム案内図表示部
64a,64b 車両位置表示部
65a,65b 次の停車駅の名前
66a,66b 自車両の号車番号
67a,67b 開くドアの方向
70 情報配信センタ
81 編成データ記憶部
811 編成データテーブル
812 アンテナ配置パターン定義テーブル
82 PC管理データ記憶部
821 PC管理テーブル
83 配信コンテンツ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、
各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、
前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムであって、
それぞれの前記端末計算機は、
自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得する動作パラメータ取得部と、
前記動作パラメータ取得部で取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御する表示制御部と、を有し、
前記無線LANアクセスポイントは、
通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部と、
前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部と、を有し、
前記動作制御装置は、
自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記アンテナの通信範囲が車両内のどの位置に該当するかのアンテナ通信範囲とを編成データとして記憶する編成データ記憶部と、
前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から前記編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信する端末計算機管理部と、を有することを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、
前記無線LANアクセスポイントは、さらに、
指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置された前記端末計算機と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナと、
前記複数の指向性アンテナを前記動作制御装置から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替える指向性アンテナ制御部と、を有し、
無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報から前記車両内における当該端末計算機の設置位置が特定されることを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両向け分散型計算機システムにおいて、
前記動作制御装置は、さらに、
それぞれの前記端末計算機に送信した前記動作パラメータに基づいて、当該端末計算機に対応付けられた表示端末に表示される情報を選択して、当該端末計算機に配信する配信制御部を有することを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システム。
【請求項4】
列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、
各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、
前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法であって、
前記無線LANアクセスポイントにおいて、通信範囲を限定したアンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得し、取得した前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知するステップと、
前記動作制御装置において、前記無線LANアクセスポイントから通知される前記車両内位置情報に含まれる前記無線LANアクセスポイントの識別情報からそれぞれの前記端末計算機の号車番号を特定し、前記車両内位置情報に含まれる前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報から、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに前記無線LANアクセスポイントの識別情報と前記アンテナの通信範囲とを記憶した編成データを参照することによって、当該端末計算機の車両内の設置位置を特定し、個々の設置位置に対応する前記動作パラメータを生成し、前記無線LANアクセスポイントを介して、当該端末計算機に送信するステップと、
前記端末計算機において、自身の端末識別情報を前記無線LANアクセスポイントに通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から前記無線LANアクセスポイントを介して取得し、取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示端末の表示内容を制御するステップと、を有することを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法において、
前記無線LANアクセスポイントにおいて、指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置された前記端末計算機と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナを、前記動作制御装置から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替えることを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法において、
前記動作制御装置において、それぞれの前記端末計算機に送信した前記動作パラメータに基づいて、当該端末計算機に対応付けられた表示端末に表示される情報を選択して、当該端末計算機に配信することを特徴とする鉄道車両向け分散型計算機システムの動作制御方法。
【請求項7】
列車を編成する車両内に設置される複数の表示端末の表示内容を個別に制御し、前記複数の表示端末に対応付けられて設置される複数の端末計算機と、
各車両に設置される無線LANアクセスポイントと、
前記無線LANアクセスポイントを介して、前記複数の表示端末に表示させる情報を配信すると共に、前記複数の端末計算機の動作を制御する動作制御装置と、を有する鉄道車両向け分散型計算機システムの前記無線LANアクセスポイントであって、
指向性と設置角度とを調整して、特定の位置に設置された前記端末計算機と無線通信を確立するように設計した複数の指向性アンテナと、
前記複数の指向性アンテナを前記動作制御装置から送信されるアンテナ制御情報に基づいて切り替える指向性アンテナ制御部と、
前記指向性アンテナ制御部で切り替えた指向性アンテナを用いて、車両内の所定エリアに設置されている前記端末計算機と無線通信を確立し、無線通信が確立したアンテナの識別情報と端末計算機の識別情報との組合せ情報を取得する識別情報取得部と、
前記アンテナの識別情報と前記端末計算機の識別情報との組合せ情報と、自身の識別情報とを車両内位置情報として前記動作制御装置に通知する位置情報通知部と、を有することを特徴とする無線LANアクセスポイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−77996(P2013−77996A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216955(P2011−216955)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】