説明

鉄道車両用ゲートドライブ回路

【課題】 ゲートドライブ回路のゲート指令部とゲート電源部内の高圧側と低圧側の絶縁を可能とし、さらにゲートドライブ回路の小型化を図ることができる鉄道車両用ゲートドライブ回路を提供することを目的とする。
【解決手段】 実施形態の鉄道車両用ゲートドライブ回路は、架線と接続されるトランス103と、トランス103の架線側に接続され、鉄道車両の電力変換器のスイッチング素子を駆動する2つのスイッチ102a、102bと、トランスの架線とは反対側で接続する整流回路104を介してゲート電源を供給し、トランスの架線とは反対側で接続する信号検出回路106を介してゲート指令を出力する鉄道車両用ゲートドライブ回路を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両用ゲートドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は架線から電力を取り入れ、鉄道車両内に搭載されている電力変換器で架線電力を変換する。電力変換器は複数のスイッチング素子で構成され、スイッチング素子のオン・オフ動作により電力を変換し、車両に搭載されている他装置への電力を供給する。このようなスイッチング素子のオン・オフ動作はゲートドライブ回路により行われている。
【0003】
従来のゲートドライブ回路は、図5(a)(b)に示すとおりの構成である。ゲートドライブ回路はスイッチング素子をオン・オフさせるための電圧を発生させるゲート電源部204と、制御ユニットからのオン・オフ指令でスイッチング素子をオン・オフさせるためのゲート指令部205を有している。
【0004】
図5(a)に示すように、交流電源201とトランス202が接続される。トランス202は交流電源201とは反対側で整流回路203と接続される。整流回路203は直列に接続された平滑コンデンサ204a、204bと接続され、ゲート電源部204となる。また、図5(b)に示すように制御ユニット205はフォトカプラ206と接続される。フォトカプラ206は第1、2のスイッチ207a、bを介して、スイッチング素子208に接続される。同図に示すように、ゲート電源部204はトランス202により、高圧側の交流電源201と低圧側の整流回路側に絶縁され、ゲート指令205部はフォトカプラ206により、高圧側のスイッチング素子208側と低圧側の制御ユニット205a側に絶縁されている。このように高圧側と低圧側の絶縁方法として、ゲート指令部205はフォトカプラを、ゲート電源部204はトランスを用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−270548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したフォトカプラとトランスを用いたゲート電源部とゲート指令部内の高圧側と低圧側の絶縁方法においては、部品間が十分に絶縁するための距離を確保する必要がある。そのため部品間の隙間を多くとることで装置全体の外形が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決するために、ゲートドライブ回路のゲート指令部とゲート電源部内の高圧側と低圧側の絶縁を可能とし、さらにゲートドライブ回路の小型化を図ることができる鉄道車両用ゲートドライブ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の鉄道車両用ゲートドライブ回路は、架線と接続されるトランスと、トランスの架線側に接続され、鉄道車両の電力変換器のスイッチング素子を駆動する2つのスイッチと、トランスの架線とは反対側で接続する整流回路を介してゲート電源を供給し、トランスの架線とは反対側で接続する信号検出回路を介してゲート指令を出力する鉄道車両用ゲートドライブ回路を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の鉄道用ゲートドライブ回路の構成図。
【図2】第1の実施形態の鉄道用ゲートドライブ回路のゲート指令をタイムチャート。
【図3】第2の実施形態の鉄道用ゲートドライブ回路の構成図。
【図4】第3の実施形態の鉄道用ゲートドライブ回路の構成図。
【図5】従来の鉄道用電力変換装置(形式的なことですが、従来図は最後としています)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかるゲートドライブ回路の実施例について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、第1の実施形態について図1を参照して説明する。図1に示すように、直流電源101、第一スイッチ102a、第二スイッチ102b、トランス103、整流回路104、平滑コンデンサ105a、105b、信号検出回路106、ゲート電源部107、ゲート指令部108を有している。
【0012】
直流電源101とトランス103は接続される。トランス103は直流電源101側に第1スイッチ102a、第2スイッチ102bを有している。トランス103は直流電源101とは反対側にゲート電源部107、ゲート指令部108と接続される。ゲート電源部107は整流回路104、平滑コンデンサ105a、105bを有しており、トランス103には整流回路104整流回路104が接続され、流回路104は直列に接続された平滑コンデンサ105a、105bと接続される。また、ゲート指令部108ではトランス103の3次側の直流電源101とは反対側に、信号検出回路106が接続される。信号検出回路106からの出力はゲート指令となる。トランス103に対して直流電源101側が低圧側となり、トランス103に対して整流回路104側を高圧側となる。
【0013】
(作用)
次に本実施形態の作用について説明する。図2の(a)(b)に示すように直流電源101からの電流は第1、2のスイッチ102a、bに交互に投入、開放を繰り返すことで逆位相の波形を形成する。このよう第1、2のスイッチ102a、bのスイッチング動作により生成される交流電力は、トランス103に供給される。ゲート電源部107では、トランス103を介して第1、2のスイッチ102a、bより生成された交流電力は整流回路104に供給される。交流電力を受け取った整流回路104は、交流電力を整流し、平滑コンデンサ105a、bへ供給する。平滑コンデンサ105a、b整流された交流電力を平滑し、ゲート電源電圧を発生させる。
【0014】
ゲート指令部108では、第1、2のスイッチ102a、bのスイッチング周波数を切り替え、信号検出回路106でスイッチング周波数の高低を検出し、ゲート指令とする。図2に示すように、第1のスイッチ102aがONしているときは、第2のスイッチ102bがOFFしている。このとき、ア時点からイ時点(周波数a)では第1のスイッチ102aと第2のスイッチ102bのスイッチング周波数が低周波のため、ゲート指令はゲートオフとなる。また、イ時点からウ時点(周波数b)では、第1のスイッチ102aと第2のスイッチ102bのスイッチング周波数が高周波となるため、ゲート指令はゲートオンとなる。
【0015】
(効果)
以上述べた本実施形態のドライブ回路によれば、電力変換装置のスイッチング動作とゲート指令の電源を共通化することにより、ゲートドライブ回路のゲート指令部とゲート電源部内の高圧側と低圧側の絶縁を可能とし、さらにゲートドライブ回路を小型することが可能となる。
【0016】
(第2の実施形態)
(構成)
以下に第2の実施形態について図3を参照して説明する。尚、図1乃至2と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0017】
本実施形態は、第1の実施形態とはダイオード109a、b、AND回路110a、b、信号検出回路111を有している点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0018】
(構成)
トランス103の3次側と4次側にダイオード109a、bが接続される。ダイオード109a、bはAND回路110aに接続される。トランス103の3次側と4次側のもう一方は、AND回路110bに接続される。AND回路110a、bは信号検出回路111に接続され、ゲート指令部108を構成する。
【0019】
(作用)
本実施形態の作用は、トランス103の1次側と2次側は第1の実施形態の作用と同様である。トランス103の3次側と4次側のダイオード109a、b側より出力される信号は、AND回路110aにて積をとる。このため、同種の信号がAND回路110aに入力されなければ、AND回路110aからの出力は発生しない。また、トランス103の3次側と4次側のもう一方より出力させる信号についても、AND回路110bに同種の信号が入力されなければ、AND回路110bからの出力は発生しない。
【0020】
上記作用により、AND回路110a、bにそれぞれ同種の信号が入力された場合は、AND回路110a、bから出力され、信号検出回路111で信号検出され、ゲート指令が出力される。しかし、異種の信号が入力された場合は、AND回路110a、bからの出力されないため、ゲート指令は出力されない。
【0021】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態のゲートドライブ回路によれば、電力変換装置のスイッチング動作とゲート指令の電源を共通化することにより、ゲートドライブ回路のゲート指令部とゲート電源部内の高圧側と低圧側の絶縁を可能とし、さらにゲートドライブ回路を小型することが可能となる。
【0022】
また、本実施形態ではAND回路110a、bにそれぞれ同種の信号が入力された場合のみ、ゲート指令が出力されるため、第1の実施形態よりも信頼性が高まり、ゲートドライブ回路を小型にすることが出来る。
【0023】
(第3の実施形態)
以下に第3の実施形態について図4を参照して説明する。尚、図1乃至3と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0024】
本実施形態は、第1の実施形態とはイオード109a、b、信号検出回路112a、b、AND回路113を有している点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0025】
(構成)
トランス103の3次側と4次側にダイオード109a、bが接続される。ダイオード109a、bは信号検出回路112a、bに接続される。トランス103の3次側と4次側のもう一方も、信号検出回路112a、bに接続される。信号検出回路112a、bはAND回路113に接続され、ゲート指令部108を構成する。
【0026】

(作用)
本実施例3の作用は、トランス103の1次側と2次側は第1の実施形態と同様である。
【0027】
トランス103の3次側と4次側からの出力はそれぞれ信号検出回路112a、bにより、信号検出される。信号検出回路112a、bより出力された信号は、AND回路113でそれぞれ同極の信号の積をとり、ゲート指令として出力される。
【0028】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態のゲートドライブ回路によれば、電力変換装置のスイッチング動作とゲート指令の電源を共通化することにより、ゲートドライブ回路のゲート指令部とゲート電源部内の高圧側と低圧側の絶縁を可能とし、さらにゲートドライブ回路を小型することが可能となる。
【0029】
また、AND回路113にそれぞれ同種の信号が入力された場合のみ、ゲート指令が出力されるため、第1の実施形態よりさらに信頼性を高め、ゲートドライブ回路を小型にすることが出来る。
【0030】
上記で説明された全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。そのため、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
101…直流電源
102a、b…第1、2のスイッチ
103…トランス
104…整流回路
105a、b…平滑コンデンサ
106…信号検出回路
107…ゲート電源部、
108…ゲート指令部
109a、b…ダイオード
110a、b…AND回路
111…信号検出回路
112a、b…信号検出回路1,2
113…AND回路
201…交流電源
202…トランス
203…整流回路
204a、b…平滑コンデンサ
205…制御ユニット
206…フォトカプラ
207a、b…第1、2のスイッチ
208…スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線と接続されるトランスと、
前記トランスの架線側に接続され、鉄道車両の電力変換器のスイッチング素子を駆動する2つのスイッチと、
前記トランスの架線とは反対側で接続する整流回路を介してゲート電源を供給し、
前記トランスの架線とは反対側で接続する信号検出回路を介してゲート指令を出力する鉄道車両用ゲートドライブ回路。
【請求項2】
架線と接続されるトランスと、
前記トランスの架線側に接続され、鉄道車両の電力変換器のスイッチング素子を駆動する2つのスイッチと、
前記トランスの架線とは反対側で接続する整流回路を介してゲート電源を供給し、
前記トランスの架線とは反対側で接続する2つのダイオードと、
前記2つのダイオードから出力される信号が同じである場合に信号を出力するAND回路と、
前記AND回路と接続され、信号検出回路を介してゲート指令を出力する鉄道車両用ゲートドライブ回路。
【請求項3】
架線と接続されるトランスと、
前記トランスの架線側に接続され、鉄道車両の電力変換器のスイッチング素子を駆動する2つのスイッチと、
前記トランスの架線とは反対側で接続する整流回路を介してゲート電源を供給し、
前記トランスの架線とは反対側で接続する2つの信号検出回路と、
前記2つの信号検出回路から出力される信号が同じである場合にゲート指令を出力するAND回路と、
を備える鉄道車両用ゲートドライブ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223080(P2012−223080A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90228(P2011−90228)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】