説明

鉄道車両用蛍光灯の電子機器の取付構造

【課題】長い照明用灯具に装着された安定器やインバータであっても人手を要せず簡単に取外し、取り付け、作業が可能で煩雑さもない鉄道車両用蛍光灯の安定器・インバータのような電子機器の取付構造を提供する。
【解決手段】照明用蛍光灯3を取り付け両端部近傍に蛍光灯を着脱するソケット5を設けた灯具本体2の中央部に穴2bを設け、該穴2bに、取付板4に固定したインバータ10等の電子機器を嵌め入れ、該取付板4をボルトで前記工具本体2に着脱自在に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の照明用蛍光灯を取り付ける灯具本体回りの、特に客室の照明用の蛍光灯と共に取り付ける安定器やインバータを取り外す際、蛍光灯灯具本体を車体側から取り外すことなく、安定器やインバータのみを取り外し、メンテナンスや交換が簡単にできる蛍光灯の安定器やインバータのような電子機器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の照明器具に限らない一般の家屋の天井や小型温室等で使用される吊り下げ形の蛍光灯器具においては、組立作業が簡単であって、吊り下げ具を器具本体に簡単に取り付けることができ、しかも吊り下げ具の取付位置を自由にかえることのできる吊り下げ形蛍光灯器具が提案されている。即ち、吊り下げ形蛍光灯器具として、横断面略逆U字形のアルミニウム押出形材製器具本体と、安定器等の電気部品が取り付けられる横断面L形のアルミニウム押出形製電気部品取付部材とを備え、器具本体の頂壁にほぼ下向きに突出した電気部品取付部材連結用係合部を、前側壁にほぼ後向きに突出した係合部材をそれぞれ長さ方向に形成し、係合部に係わり合って止められる係止部材を、電気部品取付部材の垂直壁の上縁部および水平壁の前縁部の長さ方向に形成し、器具本体の頂壁に上方に開口した内部拡大溝を長さ方向に形成し、内部拡大溝に吊り下げ具の基端部を摺動自在に嵌め込むようにした吊下げ形蛍光灯器具が提案されている(特許文献1)
【0003】
また、駅のプラットホームや工場などの二重天井を張らない建築構造物の連用蛍光灯システムとして、配線用ダクトの開口部に着脱自在に固定する固定板に導体を埋設し、ソケット及び安定器に突設した連結端子を導体に接触させて導通せしめ、隣接する固定基板の導体相互間を接続具で接続し、連結端子は、埋設した導体の両側面を表出する一対の連結穴に挿入し、導体を挟着状態で固定し、接続具は、両面ソケットを使用する構成の連用蛍光灯システムが提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−315627
【特許文献2】特開平7−045107
【0005】
また、鉄道車両用の客車には、平面図の図6(A)および側面図の図6(B)に示すように、灯具本体20内の両端部にソケット25を取り付け、該ソケット25に蛍光灯23両端部(片側省略)が取り付けられる。そして下面側にはカバー24で蛍光灯23を覆っているが、中にはカバーの設けられていないものもある。灯具本体20の上側に安定器或いはインバータ26のような電子機器を配置してある。車両内の照明としては、天井側にかかる構成の蛍光灯ユニットが連続して縦方向に二列に並べて配置され、車内を照明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来使用されている鉄道車両用照明用灯具では、安定器やインバータ等を交換する際には、灯具本体を取り外す必要がある。しかし、灯具本体は長い長尺物のため少なくとも二人がかりの作業となる。しかも安定器やインバータは灯具本体の裏側に取り付けてあるためこれら安定器やインバータの取外し,取り付け作業は極めて煩雑な作業となりかつ作業効率も悪いという問題がある。更に、安定器やインバータの取外し,取り付け作業は灯具本体の裏側からの作業となるためと灯具本体の表側を損傷しないよう細心の注意が必要である。このように、従来の車両用照明用灯具の安定器やインバータの交換作業は、作業性が悪く、人手を要し、器具を損傷しやすく煩雑である、という問題があった。
【0007】
本発明は上記する課題に対処するためになされたものであり、例え長い照明用灯具に装着された安定器やインバータであっても人手を要せず簡単に取外し、取り付け、作業が可能で煩雑さもない鉄道車両用蛍光灯の安定器・インバータのような電子機器の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、この発明は、上記する課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、照明用蛍光灯を取り付け両端部近傍に該蛍光灯を着脱するソケットを設けると共に中央部に穴2bを設けた灯具本体2と、前記穴2bに嵌め入れ前記灯具本体2の上方側に突出して該灯具本体2に取り付ける安定器やインバータ10等の電子機器と、これらの安定器やインバータ10等の電子機器の下側を支持して前記灯具本体に着脱可能に固定される取付板4と、を備えてなる鉄道車両用蛍光灯の電子機器の取付構造であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明を上記手段とすれば、蛍光灯の安定器或いはインバータの取付作業が従来、二人以上を要していた安定器やインバータの取り付け,取外し作業を一人でしかも簡単に行うことができる。また、灯具本体全体を取り外す必要はなく、必要な安定器或いはインバータ部分のみを取り外し交換すれば良い。そして取外し、取り付け作業時に灯具本体を損傷させる恐れもなくなる。このように、本発明によれば、一人で簡単かつ安全に取外し、取り付け作業が可能となるから作業能率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の鉄道車両用蛍光灯の安定器やインバータ(以下、単にインバータ等とする)の取付構造を備えた鉄道車両の簡易断面図である。図2(A)は、図1のP部分の平面図であり、図2(B)は側面図であり、図2(C)は底面図である。
【0011】
これらの図に示すように、本発明の鉄道車両用蛍光灯のインバータ等は、鉄道車両1の天井部1Aに設けられる。天井板1Aには配線用ダクト1Bが設けられているが、灯具本体2はこの配線用ダクト1Bにねじ止めによって固定される。図2(A)に図示する灯具本体2の長穴2a、2a・・はボルトを通すための穴である。後述するように、これらのインバータ10等は先ずスタッドボルト7、7とナット8、8(図4(C)参照)によって取付板4に固定され、該取付板4が灯具本体2にボルト9、9で固定される。図2(B)に示すように、前記灯具本体2には、両端部近傍に蛍光灯3を着脱するソケット5、5を設けて照明用の蛍光灯3を取り付けるが、上側には安定器或いはインバータ10等の上部が見える。そして、図2(C)に示すように、客室側からは、灯具本体2にはソケット5、5と、取付板4と蛍光灯3が見えるのみである。
【0012】
図3(A)は、図2(A)のAーA矢視図であって、蛍光灯3を下側にして安定器或いはインバータ10等を装着した状態の断面図である。図3(B)は灯具本体2からインバータ10等を取り外した状態の図2(A)のAーA矢視図である。また、これらの図は図1のP部拡大図でもある。鉄道車両の客車の天井部1Aには上記するように配線用ダクト1Bが設けられているが、このダクト1Bは天井板1Aにスペーサ6を介して固定される。灯具本体2は、上記したように長穴2a、2a、・・を設けて調整できるようにして、前記配線用ダクト1Bにねじ止め固定される。この固定方法については更に後述する。インバータ10等は上記したように、スタッドボルト7、7とナット8、8で取付板4に固定されている。そしてこの状態で取付板4は両端部をボルト9、9によって灯具本体ケース2に固定される。こうして,取付板4の取り付け、取り外しだけでインバータ10等のみの取り付け、取外し可能な状態で灯具本体に取り付けられる。
【0013】
次に、本発明における安定器やインバータの取外し方法について説明する。何らかの具合で安定器やインバータ10を取り外す必要が生じたときには、先ず、蛍光灯3を外し、次に灯具本体2に固定している取付板4のボルト9、9を取り外せば良い。灯具本体2にはインバータ10の置かれていた部分には穴2bが開いている(図4参照)。また、このインバータ10を外すと後にはソケット5、5と、ソケット取付具11(図3(B)参照)のみが残り、安定器或いはインバータ10等を修理したり、新しいものを取付板4に付けて再び取付板4をボルト9、9で灯具本体2に取り付ければよい。
【0014】
更に、斜視図でインバータ10を外す方法について説明する。図4はこの取り外しの順序を示す斜視図である。図4(A)は鉄道車両の車内における蛍光灯の取り付け状態を示す。インバータ10等を取り外す必要が生じたときには、図4(B)に示すように、蛍光灯3を外し、取付板4の固定ボルト9、9を外すと該取付板4にインバータ10等が固定された状態で外される。外された状態で取付板4とインバータ10等を固定しているスタッドボルト7、7をナット8、8を緩めて外すと、図4(B)の取付板4部分の拡大図である図4(C)に示すように、取付板4とインバータ10等とは分離される。こうしてインバータ10等を修理したり交換して取り付けることが可能となる。
【0015】
図5は、インバータ10等を元の灯具本体2に取り付ける作業手順を示す場合の斜視図である。修理したり或いは新品のインバータ10は取付板4に固定する。このスタッドボルト7、7はインバータ10のケースの端部でナット8、8で固定する。そして取付板4はインバータ10等を取り付け、また、電気接続用のレセプタクル12を付けた状態で該インバータ10等を灯具本体2の穴2aに嵌め入れ、取付板4をボルト9、9で灯具本体2に固定する。
【0016】
尚、上記具体的な実施の形態ではインバータ10等のみを交換できるように灯具本体の一部に穴を開けた構造としたが、例えば検知器等の器具類を搭載し、交換できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の鉄道車両用蛍光灯の安定器やインバータの取付構造を備えた鉄道車両の簡易断面図である。
【図2】図2(A)は、図1のP部分の平面図であり、図2(B)は側面図であり、図2(C)は底面図である。
【図3】図3(A)は、図2(A)のAーA矢視図であって、蛍光灯を下側にしてインバータ等を装着した状態の断面図であり、図3(B)は、灯具本体からインバータ10等を取り外した状態を示す図である。
【図4】図4(A)は鉄道車両の車内における蛍光灯の取り付け状態を示す図であり、図4(B)は、蛍光灯を外し、取付板から固定ボルを外しインバータ等を固定した状態で外した状態の図であり、図4(C)は、固定板からインバータを外した状態の図である。
【図5】図5は、インバータ等を元の灯具本体に取り付ける作業手順を示す場合の斜視図である。
【図6】図6(A)は、従来の鉄道車両用の車内に設ける灯具本体の平面図であり、図6(B)は、側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 鉄道車両
2 灯具本体
2a 長穴
2b 穴
3 蛍光灯
4 取付板
5 ソケット
6 スペーサ
7 スタッドボルト
8 ナット
9 ボルト
10 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明用蛍光灯を取り付け両端部近傍に該蛍光灯を着脱するソケットを設けると共に中央部に穴を設けた灯具本体と、前記穴に嵌め入れ前記灯具本体の上方側に突出して該灯具本体に取り付ける安定器やインバータ等の電子機器と、これらの安定器やインバータ等の電子機器の下側を支持して前記灯具本体に着脱可能に固定される取付板と、を備えてなる鉄道車両用蛍光灯の電子機器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−95145(P2010−95145A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267524(P2008−267524)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】