説明

鉄道車両用車体

【課題】簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供する。
【解決手段】屋根構10、側構20、及び、床構30を有する鉄道車両用車体を、屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受60と、吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒50と、側構の上部と吊手棒受又は吊手棒とを連結する側構連結部材100とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用車体に関し、特には簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を向上したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電車等の鉄道用旅客車の車体は、一般に床構、側構、妻構、屋根構を有するほぼ六面体として構成された箱状の構造物となっている。
また、鉄道車両用車体は、軽量化とともに、振動抑制による乗り心地改善や衝突安全性の向上のため、剛性を確保することも要求される。
【0003】
従来、踏切事故や脱線衝突事故に対する安全性を向上するために、車体側面方向から側構体に作用する荷重に対する強度を向上させることを目的として、床構の横梁、側構体の側柱、及び、屋根後退の垂木を同一断面内に配置した補強骨組部を、車体長手方向の複数箇所に配置した鉄道車両が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された技術では、車体の屋根構、側構、床構といった各構体における構造部材の配置等の基本設計に及ぼす制約が多く、車両の設計自由度が低くなってしまう。また、既存の車両には適用することが極めて困難である。
【0005】
また、本願の発明者らは、後述する非特許文献1において、左右の側構に設けられた戸袋柱の上端部間を、枕木方向に延びた円筒状の吊手棒によって連結し、これによって車体剛性を向上させて振動抑制等を図ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−62440号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】谷口宏次他「吊手棒を活用した車体剛性向上手法」第15回鉄道技術・政策連合シンポジウム(J−Rail2008)講演論文集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載された従来技術においては、それ以前の従来技術との比較においては比較的簡素な構成によって車体剛性を向上できるが、左右の戸袋柱間を連結するため、既存の車体に適用しようとした場合、既存の吊手棒の設計や配置を大幅に変更する必要があり、設計及び施工が困難である。また、車体中央の通路部には吊手を配置する必要がない場合であっても、当該手法を適用しようとする限り、枕木方向の全幅にわたって吊手棒を配置する必要があるため、車両設計時における制約が大きくなる。
本発明は上述した問題に鑑みなされたものであって、簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の鉄道車両用車体は、屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、前記側構の上部と前記吊手棒受とを連結する側構連結部材とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、吊手棒受及び側構連結部材が屋根構と側構との相対角度変化を拘束する効果、及び、屋根構、側構の面外変形を拘束する効果の少なくとも一方が得られることによって車体の剛性が向上する。これによって、振動抑制による乗り心地改善や衝突安全性の向上を図ることができる。また、このような側構連結部材は、設計済の新造車あるいは現在運用中の既存の車体にも小規模な設計変更や改修によって適用することができ、汎用性、実用性が高い。
なお、本発明において、吊手受棒は屋根構から直接突き出したものに限らず、例えば灯具受等の他部品を介して屋根構に取り付けられたものも含むものとする。
【0010】
また、本発明の鉄道車両用車体は、屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、前記側構の上部と前記吊手棒とを連結する側構連結部材とを備えることを特徴とする。
本発明においても、吊手棒受と側構連結部材とが吊手棒を介して連結されることによって、上述した発明と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0011】
本発明において、前記吊手棒は枕木方向に離間して複数設けられ、複数の前記吊手棒の間を連結するとともに枕木方向にほぼ沿って延びた吊手棒連結部材を備える構成とすることができる。
これによれば、左右の吊手棒を連結することによって、車体剛性をさらに向上することができる。
この場合、前記側構連結部材と前記吊手棒連結部材とを車両前後方向にオフセットして配置した構成としてもよい。
これによれば、側構連結部材、吊手棒連結部材それぞれの車両前後方向位置を、車内のデザインや使い勝手等を考慮して最適に設定することができる。
また、前記側構連結部材と前記吊手棒連結部材とを車両前後方向におけるほぼ同じ位置に配置した構成としてもよい。
これによれば、側構連結部材と吊手棒連結部材との間で直接的に荷重伝達が行えることから、車体の剛性向上効果が向上する。
【0012】
本発明において、前記側構連結部材の前記側構側の端部は、側構に沿って延びた柱状部材に接続される構成とすることができる。
これによれば、側構連結部材を側構の高剛性な部分である柱状部材に接続することによって、側構連結部材と側構との間の荷重伝達を効率よく行うことができる。
この場合、前記柱状部材は戸袋に沿って上下方向に延びた戸袋柱である構成とすることができる。
また、この場合、前記側構連結部材の前記側構側の端部は、前記柱状部材と該柱状部材に隣接する内装材との間にわたして設けられた接続部材を介して前記柱状部材に接続される構成とすることができる。
これによれば、柱状部材の車室内側に、この柱状部材に対して間隔を隔てた状態で内装部材が設けられる場合であっても側構連結部材を接続することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した鉄道車両用車体の第1実施形態の模式的横断面図である。
【図2】第1実施形態の鉄道車両用車体の斜視断面図である。
【図3】第1実施形態の鉄道用車体の断面図であって、図3(a)は車体上部を左右中心線で切って見た側面視図であり、図3(b)は図3(a)のb−b部矢視図である。
【図4】図3のIV−IV部矢視断面図である。
【図5】本発明を適用した鉄道車両用車体の第2実施形態の模式的横断面図である。
【図6】第2実施形態の鉄道車両用車体の斜視断面図である。
【図7】第2実施形態の鉄道用車体の断面図であって、図7(a)は車体上部を左右中心線で切って見た側面視図であり、図7(b)は図7(a)のb−b部矢視図である。
【図8】図7のVIII−VIII部矢視断面図である。
【図9】本発明を適用した鉄道車両用車体の第3実施形態の模式的横断面図である。
【図10】第3実施形態の鉄道用車体の断面図であって、図10(a)は車体上部を左右中心線で切って見た側面視図であり、図10(b)は図10(a)のb−b部矢視図である。
【図11】本発明を適用した鉄道車両用車体の第4実施形態の模式的拡大断面図であって、図4に相当する断面を示すものである。
【図12】本発明を適用した鉄道車両用車体の第5実施形態の模式的拡大断面図であって、図4に相当する断面を示すものである。
【図13】本発明を適用した鉄道車両用車体の第6実施形態の斜視断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1乃至第6実施形態に係る鉄道車両用車体について説明する。
なお、以下の説明では、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角をなす方向を横方向(枕木方向)、軌道面に垂直な方向を上下方向と称する。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態の鉄道車両用車体(以下単に「車体」と称する)1は、例えば片側4ドアの通勤型電車のステンレス鋼製車体である。
車体1は、屋根構10、側構20、床構30及び妻構90(図3参照)を有するほぼ六面体状に形成されている。
【0017】
屋根構10は、屋根外板11及び垂木12を有して構成される。
屋根外板11は、車体1の外表面部となる波形形状の部材である(波形部分の図示は省略)。屋根外板11は、車体1の横断面における形状が、上方が凸となる円弧状に湾曲して形成されている。
垂木12は、車幅方向にほぼ沿って伸びた梁状の部材である。垂木12は、屋根外板11の下面に沿って配置され、屋根外板11に対して例えばスポット溶接、レーザ溶接等により複数個所で固定されている。垂木12は、車体1の前後方向に分散して複数設けられている。
【0018】
側構20は、車体1の左右両側面部を構成する部分であって、図2等に示すように、外板21、ドア開口22、窓開口23等を有して構成されている。
また、側構20の上端部でありかつ屋根構10の左右側端部には、幕板受20aが設けられている。
幕板受20aは、屋根外板11の車幅方向両端部における下面部にそれぞれ接合され、車体1の長手方向に伸びた部材である。
外板21は、車体1の外表面部となる板状の部材である。外板21の上端部及び下端部は、屋根構10及び床構30の車幅方向における両端部とそれぞれ接合されている。
ドア開口22は、旅客乗降用の図示しないドアが開閉可能に設けられる部分である。ドア開口22は、車体1の一方の側面に例えば4つがほぼ等間隔に分散して設けられている。
窓開口23は、隣接する一対のドア開口22の中間部等に設けられている。
【0019】
戸袋内柱24及び戸尻柱25は、ドア開口22の両側にそれぞれ設けられドアを収容する戸袋に備えられる部材である。戸袋内柱24は、戸袋の入口側に設けられ、戸尻柱25はその反対側(ドア開口22から遠い側)に設けられる。戸袋内柱24及び戸尻柱25は、鉛直方向にほぼ沿って伸びて形成され、その下端部は床構30の車幅方向における端部と隣接して配置されている。また、戸袋内柱24及び戸尻柱25の上部には傾斜部24a、25aが設けられている。傾斜部24a、25aは、上端部が下端部に対して枕木方向中央側となるように内傾している。傾斜部24a、25aは、幕板受20aと隣接して配置され、その上端部が幕板受20aに固定されている。戸袋内柱24及び戸尻柱25は、一つの戸袋につき1本ずつが平行に設けられている。
【0020】
また、窓開口23の上部には、上下方向に延びた柱状部材26が設けられている。柱状部材26は、例えばいわゆるハット形の横断面形状を有するパネルを、側構20の内面にスポット溶接等で固定することによって形成されている。
【0021】
床構30は、車体1の床面部を構成する部分であって、図示しない側梁、横梁、枕梁等によって構成されるフレームの上面部に床板を固定して構成されている。
【0022】
また、車体1はさらに灯具受け40、前後吊手棒50、吊手棒受60、横吊手棒71,72を備えている。
灯具受け40は、車室内を照明する図示しない照明機器が装着される灯具支持部材であって、車体1の前後方向に延びた矩形断面の梁状に形成されている。灯具受け40は、車幅方向に離間して例えば一対が設けられ、屋根構10の車幅方向中央部における下面に装着されている。また、灯具受け40は、車体1の前後方向におけるほぼ全長にわたって形成されている。
左右の灯具受け40の間には、空調用のダクトD(図1、図4参照。図2、図3では図示を省略)が配置されている。
【0023】
前後吊手棒50は、車両の前後方向に延びて配置された丸パイプ状の部材であって、吊手S(図4参照)が取り付けられるものである。前後吊手棒50は、車幅方向に間隔を隔てて例えば2本が並行して設けられている。左右の前後吊手棒50は、左右の灯具受け40の下方にそれぞれ配置されている。
また、左右の前後吊手棒50は、図3(b)に示すように、横吊手棒71,72によって、相互に連結されている。
【0024】
吊手棒受60は、灯具受け40と前後吊手棒50とを連結し、前後吊手棒50を吊り下げて支持する支柱状の部材である。吊手棒受60の上端部は、灯具受け40の下面に固定されている。また、吊手棒受60の下端部には、前後吊手棒50が固定されている。
吊手棒受60は、前後吊手棒50の両端部及び中間部に配置されている。中間部の吊手棒受60は、例えば、車両前後方向における位置がドア開口22の両端部近傍に配置されている。
【0025】
横吊手棒71,72は、横方向に直線状に延びて配置された丸パイプ状の部材であって、左右の前後吊手棒50を連結するとともに、吊手Sが取り付けられるものである。
横吊手棒71の両端部は、左右の吊手棒受60の下端部近傍にそれぞれ固定されている。
横吊手棒72の両端部は、前後の吊手棒受60の中間部において、前後吊手棒50にT字ジョイントを介して固定されている。T字ジョイントは、前後吊手棒50が挿入される円筒の外周面から、横吊手棒72の端部が挿入される円筒を径方向に立設したものである。
【0026】
妻構90は、車体1の前後方向における両端部に設けられ、妻面を構成するものである。
【0027】
また、車体1は、以下説明する側構連結部材100が備えられている。
側構連結部材100は、例えば鋼等の丸パイプ材によって形成され、横方向にほぼ沿って延びるとともに、前後吊手棒50と側構20の上部とを連結するものである。
図4等に示すように、側構連結部材100の吊手棒50側の端部は、T字ジョイントJを介して前後吊手棒50に連結されている。また、側構連結部材100の側構20側の端部は、戸袋内柱24の傾斜部24aの上端部近傍に、例えば図示しないジョイントを介して、ボルト−ナット等で固定されている。
【0028】
図4に示すように、側構連結部材100は、吊手棒側端部101、側構側端部102、中間部103を備えている。側構連結部材100は、一本の丸パイプを曲げ加工することによってこれらの各部を形成し、S字上に屈曲して一体に成形されている。
吊手棒側端部101は、吊手棒50から枕木方向外側に延びた部分であり、水平ないしは外側がやや持ち上がるように緩やかに傾斜している。
側構側端部102は、図4に二点鎖線で図示する棚Rの傾斜に沿って、枕木方向内側が外側に対して高くなるように傾斜している。
中間部103は、吊手棒側端部101と側構側端部102とを連結する部分であって、側構側端部102側のほうが高くなるように傾斜している。
このような側構連結部材100の形状は、例えば、上述した棚Rとの干渉を避けることを考慮して設定される。
また、図3に示すように、側構連結部材100は、上方から見た平面形はほぼ直線状とされ、枕木方向に沿って配置されている。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、吊手棒受60によって屋根構10に固定された前後吊手棒50と、側構20の戸袋内柱24とを連結することによって、屋根構10−灯具受40−吊手棒受60−前後吊手棒50−側構連結部材100−戸袋内柱24−幕板受20a−屋根構10が順次連結され、屋根構10と側構20との相対角度変化を拘束するトラス構造類似の構造体が形成される。また、このような構造体は、屋根構10及び側構20の面外変形を拘束する効果も有する。これによって、車体1の剛性が向上し、振動の抑制による乗り心地の改善や衝突安全性の向上を図ることができる。
ここで、側構連結部材100以外の各要素は、一般的な鉄道車両用車体であれば通常設けられているものであることから、第1実施形態においては、簡素な構成の側構連結部材100を設けることによって、上述した効果を得ることができ、既存の車両であっても小規模な設計変更、施工等によって、車両の質量、コストをほとんど増加させることなく効果的に車体剛性を向上することができる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第2実施形態について説明する。なお、以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0031】
第2実施形態の車体1Bは、図7に示すように前後吊手棒50の両端部を除いた吊手棒受60の車両前後方向における位置を、戸袋内柱24と揃えて配置し、側構連結部材100の枕木方向内側における端部を、吊手棒受け60の下端部近傍に直接結合したものである。
【0032】
図8に示すように、側構連結部材100の吊手棒側端部101は、第2実施形態においては、ほぼ水平に配置され、吊手棒受60側の端部は、吊手棒受60に設けられた図示しない係合穴部に挿入された状態で吊手棒受60に固定されている。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、側構連結部材100からの入力が前後吊手棒50を経由せず直接吊手棒受60に入力されることによって、車体の剛性をよりいっそう効果的に向上することができる。
【0033】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第3実施形態について説明する。
図9、図10に示すように、第3実施形態の車体1Cは、第1実施形態の車体1における横吊手棒71,72を設けていないものである。
第3実施形態のように横吊手棒71,72を設けない場合であっても、側構連結部材100を設けることによって、屋根構10と側構20との角度変化を拘束することができ、第1実施形態と実質的に同様の効果を得ることができる。また、車内の通路部分に吊手棒を設けないことによって、通路上の乗客の行き来を妨げずかつ開放感を向上することができる。
【0034】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第4実施形態について説明する。
図11に示すように、第4実施形態の車体1Dは、第1実施形態の側構連結部材100に代えて、以下説明する側構連結部材100Dを備えている。
側構連結部材100Dは、枕木方向に沿って直線状に延びた丸パイプ状の部材である。側構連結部材100Dの吊手棒50側の端部は、T字ジョイントJを介して吊手棒50に接続されている。また、側構連結部材100Dの側構20側の端部は、戸袋内柱24における傾斜部24aまたは非傾斜部の上端部に接続されている。
以上説明した第4実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加え、側構連結部材100Dの曲げ加工を行う必要がないので、施工に要する工数及びコストを低減することができる。また、側構連結部材100Dに吊手を設けて、これを吊手棒として活用することもできる。
【0035】
<第5実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第5実施形態について説明する。
図12に示すように、第5実施形態の車体1Eは、第1実施形態の側構連結部材100に代えて、以下説明する側構連結部材100Eを備えている。
側構連結部材100Eは、丸パイプ状の部材を曲げ加工することによって、吊手棒側端部101E、側構側端部102E、中間部103Eを一体に形成したものである。
【0036】
吊手棒側端部101Eは、T字ジョイントJを介して前後吊手棒50に接続され、前後吊手棒50から側構20側へ水平に延びている。
側構側端部102Eは、戸袋内柱24における傾斜部24aよりも下側の非傾斜部における上端部近傍に接続され、ここから前後吊手棒50側へ水平に延びている。側構側端部102Eは、吊手棒側端部101Eよりも低い位置に配置されている。
中間部103Eは、吊手棒側端部101Eと側構側端部102Eとを連結する部分であって、吊手棒側端部101E側が高くなるように傾斜して配置されている。
以上説明した第5実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0037】
<第6実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第6実施形態について説明する。
図13に示すように、第6実施形態の車体1Fにおいては、第1実施形態の構成に加えて、側構20の窓開口23上部に設けられた柱状部材26にも側構連結部材100Fを接続している。
【0038】
側構連結部材100Fは、戸袋内柱24に接続される側構連結部材100と実質的に同様の構成を備えている。
一方、図14に示すように、車室内に露出している戸袋内柱24と異なり、柱状部材26は、パネル状の内装材27(図13では図示を省略)によってカバーされており、柱状部材26と内装材27との間には、間隙が設けられている。
第6実施形態においては、柱状部材26と内装材27との間に、これらの間を連結して側構連結部材100Fと柱状部材26との間の荷重伝達を可能とする接続部材28が設けられている。
接続部材28は、水平方向に延びた円柱状の部材の両端部に、外径側へつば状に張り出したフランジ部をそれぞれ形成したものである。このフランジ部は、それぞれ柱状部材26及び内装材27に当接した状態で固定される。
【0039】
側構連結部材100Fの側構20側の端部には、ジョイント29が設けられている。ジョイント29は、側構連結部材100Fの端部が挿入される円筒状の部材の側構20側の端部に、外径側につば状に張り出したフランジ部を形成したものである。
ジョイント29のフランジ部は、内装材27を挟んだ状態で、接続部材28のフランジ部に固定される。
以上説明した第6実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果に加えて、内装材27によってカバーされた柱状部材26にも側構連結部材100Fを接続することによって、車体1Fの剛性をよりいっそう向上することができる。そして、この接続箇所に接続部材28を設けたことによって、例えば内装材をカットする等の煩雑な加工を行うことなく側構連結部材100Fを柱状部材26に強固に接続し、効率よく荷重伝達を行うことができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
車体を構成する各部材の形状、材質、製法、構造等は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。例えば、吊手棒及び吊手棒受の本数、配置等は適宜変更することができる。
また、各実施形態では側構連結部材はいずれも丸パイプ状の部材を用いて形成しているが、これに限らず、他の材質や製法としてもよい。例えば、アルミニウム系合金の鋳物や押し出し材等を用いてもよい。また、複数の部材を組み立てて側構連結部材を構成してもよい。さらに、側構連結部材の本数や配置、側構側の接続箇所等も特に限定されない。
【符号の説明】
【0041】
1,1B,1C,1D,1E,1F 鉄道車両用車体
10 屋根構
11 屋根外板 12 垂木
20 側構 20a 幕板受
21 外板 22 ドア開口
23 窓開口 24 戸袋内柱
24a 傾斜部 25 戸尻柱
25a 傾斜部 26 柱状部材
27 内装材 28 接続部材
29 ジョイント 30 床構
40 灯具受け 50 前後吊手棒
60 吊手棒受け 71,72 横吊手棒
90 妻構
100,100D,100E,100F 側構連結部材
101,101E 吊手棒側端部
102,102E 側構側端部
103,103E 中間部
D ダクト S 吊手
R 棚 J T字ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、
前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、
前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、
前記側構の上部と前記吊手棒受とを連結する側構連結部材と
を備えることを特徴とする鉄道車両用車体。
【請求項2】
屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、
前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、
前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、
前記側構の上部と前記吊手棒とを連結する側構連結部材と
を備えることを特徴とする鉄道車両用車体。
【請求項3】
前記吊手棒は枕木方向に離間して複数設けられ、
複数の前記吊手棒の間を連結するとともに枕木方向にほぼ沿って延びた吊手棒連結部材を備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用車体。
【請求項4】
前記側構連結部材と前記吊手棒連結部材とを車両前後方向にオフセットして配置したこと
を特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用車体。
【請求項5】
前記側構連結部材と前記吊手棒連結部材とを車両前後方向におけるほぼ同じ位置に配置したこと
を特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用車体。
【請求項6】
前記側構連結部材の前記側構側の端部は、側構に沿って延びた柱状部材に接続されること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の鉄道車両用車体。
【請求項7】
前記柱状部材は戸袋に沿って上下方向に延びた戸袋柱であること
を特徴とする請求項6に記載の鉄道車両用車体。
【請求項8】
前記側構連結部材の前記側構側の端部は、前記柱状部材と該柱状部材に隣接する内装材との間にわたして設けられた接続部材を介して前記柱状部材に接続されること
を特徴とする請求項6又は請求項7に記載の鉄道車両用車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−111114(P2011−111114A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271528(P2009−271528)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年8月2日 社団法人 日本機械学会発行の「Dynamics and Design Conference 2009 機械力学・計測制御部門講演会講演論文アブストラクト集 通計番号:No.09−23」に発表
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)