説明

鉄道車両用連結器の着脱用作業台車

【課題】連結器の着脱作業を容易に且つ迅速に行い得る鉄道車両用連結器の着脱用作業台車を提供する。
【解決手段】緩衝器12と、連結部14を有する胴部13とからなる車両用連結器11を車両に着脱するための作業台車21であって、台車本体24上に設けられて上面に転動用ボール33が配置された昇降装置26と、転動用ボールに載置されて連結器を支持する受け治具41とから構成し、この受け治具を、緩衝器を支持する前部受け体42と、胴部を支持する後部受け体43と、これら両受け体同士の間隔を調節し得る受け体移動手段44とから構成し、後部受け体を、胴部先端に設けられた連結部を支持する立設部61と、胴部を支持する胴受け梁17を昇降自在に支持する胴受け用リフト装置63とから構成すると共に、この胴受け用リフト装置に設けられる胴受け梁を支持する胴受け板72としてステンレス製板を用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用連結器の着脱用作業台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、車両同士を互いに連結するための連結器が設けられており、当然に、その点検時、交換時などには、その連結器を取り外したり、取り付けたりする作業、すなわち連結器の着脱作業が発生する。
【0003】
ところで、この種の連結器は、その重量が重く、しかも緩衝器と先端に連結具を有する胴部とから構成された比較的長いものであり、しかも、車両下部における作業用スペースが狭く人力だけでは到底無理であるため、従来、例えばフォークリフトが用いられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、連結器をフォークリフトで支持する場合、当然に、連結器の胴部を車両底部に支持するための幅方向に長くされた胴受け梁も一緒に支持する必要があり、車両下部の狭い作業用スペースでの連結器の移動作業および着脱作業が非常に困難となり且つ時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、連結器の着脱作業を容易に且つ迅速に行い得る鉄道車両用連結器の着脱用作業台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の鉄道車両用連結器の着脱用作業台車は、緩衝器と、先端に連結部が設けられた胴部とからなる鉄道車両用連結器を鉄道車両に着脱する際に用いられる作業台車であって、
下部に車輪を有する台車本体と、この台車本体上に設けられるとともに上面に移動案内手段が配置された昇降装置と、上記移動案内手段上に載置されて連結器を支持する受け治具とから構成し、
この受け治具を、緩衝器を支持する緩衝器用受け体と、胴部を支持する胴部用受け体と、これら両受け体同士の間隔を調節し得る受け体移動手段とから構成し、
且つ上記胴部用受け体を、胴部先端に設けられた連結部を支持する連結部支持体と、胴部を鉄道車両側に保持するための胴受け梁を昇降自在に支持する胴受け用リフト装置とから構成するとともに、この胴受け用リフト装置の支持面を、胴受け梁がスライドし得る構成としたものであり、
また上記胴受け用リフト装置に設けられて胴受け梁の支持面を構成する支持部材として平板を用いたものであり、
また上記移動案内手段として、上面に転動用ボールが配置されたものを用いたものであり、
さらに上記昇降装置を前部昇降装置および後部昇降装置とから構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によると、台車本体上に昇降装置を配置するとともに、この昇降装置上に、連結器の緩衝器を載置し得る緩衝器用受け体および胴部側を載置し得る胴部用受け体を配置し、しかも、胴部用受け体に、胴部を鉄道車両側に保持するための胴受け梁を昇降自在に支持する胴受け用リフト装置を設けるとともに、この胴受け用リフト装置の支持面を、胴受け梁がスライドし得る構成としたので、着脱作業時に胴受け梁の幅方向での突出長さを短くすることができ、したがって連結器をそのまま、鉄道車両に設けられた下部フレームにおける設置用スペースすなわち作業用スペース内に案内することができるので、連結器の着脱作業を容易に且つ迅速に行うことができる。
【0008】
また、胴受け用リフト装置に設けられて胴受け梁の支持面を構成する支持部材として平板を用いることにより、胴受け梁が滑りやすくなって、連結器の着脱作業を容易に且つ迅速に行うことができる。
【0009】
また、受け治具を、緩衝器用受け体および胴部用受け体により構成するとともに、両受け体同士の間隔を調節し得るようにしたので、つまり、緩衝器を支持する緩衝器用受け体と、胴部側を支持する胴部用受け体との間隔を任意に調節することができるので、種々の連結器に対応することができる。
【0010】
また、各受け体を、昇降装置の支持部材に、例えば転動用ボールを有する移動案内手段を介して支持したので、狭い設置用スペースにおいて、連結器の位置の微調整を容易に行うことができ、したがって着脱作業の迅速化を図ることができる。
【0011】
さらに、台車本体に設けられる昇降装置を、前部昇降装置と後部昇降装置とから構成することにより、一方の昇降装置だけを用いて連結器の着脱作業を行うことができる。すなわち、連結器の着脱作業時に、緩衝器と胴部側とを分離して行うような連結器の場合でも、支障なく、着脱作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両用連結器の着脱用作業台車にて着脱が行われる鉄道車両用連結器の概略構成を示す斜視図である。
【図2】同着脱用作業台車の要部側面図である。
【図3】同着脱用作業台車の要部平面図である。
【図4】同着脱用作業台車の要部正面図である。
【図5】同着脱用作業台車における受け治具の側面図である。
【図6】同着脱用作業台車における受け治具の平面図である。
【図7】同着脱用作業台車における受け治具の正面図である。
【図8】同着脱用作業台車の全体側面図である。
【図9】同着脱用作業台車による連結器の着脱作業を説明する概略平面図である。
【図10】連結器の設置スペースを示す鉄道車両の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用連結器の着脱用作業台車を図面に基づき説明する。
まず、鉄道車両用の連結器について図1および図10に基づき簡単に説明する。図1は連結器を示し、図10は鉄道車両の下部フレームの概略構成を示す。
【0014】
図1および図10に示すように、この連結器11は、鉄道車両(以下、車両という)1の下部フレーム2に設けられた車体中央部の設置用スペース(作業用スペースでもある)S内に保持される緩衝器12と、この緩衝器12の一端側に設けられた継手設置部15に配置された球継手を介してその一端部が接続された胴部(本体部ともいう)13と、この胴部13の他端側に設けられた連結部14とから構成されており、所謂、密着連結器と呼ばれている。勿論、連結部14には円錐形状の連結具14aが設けられており、この連結具14aと連結される相手車両の連結具とが係合されて連結が行われる。なお、図1の連結器11は、緩衝器12と胴部13とが一体化(アセンブリ化)されたものを示している。
【0015】
この連結器11を車両1に取り付ける場合、緩衝器12が車両1に、つまり車体の底部に取付具(図示せず)を介して保持されるとともに、胴部13が左右方向の、すなわち横に長い胴受け梁17を介して車体1側に保持される。なお、胴受け梁17の車両1側への取り付けは、ボルトなどの締結具を介して行われる。
【0016】
なお、この連結器11を後述する作業台車に載置する場合、連結器11の緩衝器12の一端側の端板部12aと、同じく緩衝器12の他端側であり球継手の設置部分である継手設置部15と、胴部13の他端側に設けられた連結部14とが作業台車側に載置されて支持される。
【0017】
次に、本発明に係る着脱用作業台車を図2〜図8に基づき説明する。
図2〜図4に示すように、この着脱用作業台車(以下、作業台車という)21は、一端側の下部に操舵兼駆動用車輪22が設けられるとともに他端側の下部に移動用車輪23が設けられた台車本体24と、この台車本体24の一端部に設けられた運転台25と、同じく台車本体24の他端寄りに且つ前後に配置された一対の昇降装置26(26A,26B)とから構成されている。また、上記台車本体24に設けられた運転台25には、上記操舵兼駆動用車輪22および当該車輪22を回転駆動させるための電動機(図示せず)が配置されるとともに、その走行および走行方向を制御するための操作レバー27が設けられている。例えば、操作レバー27を傾動させることにより走行させたりまたはブレーキを作動させたりすることができる。また、操作レバー27を回動させることにより操舵を行うことができる。
【0018】
なお、この作業台車21においては、運転台25が設けられている側、つまり操舵兼駆動用車輪22が設けられている側を後方と称するとともに、移動用車輪23が設けられている側を前方と称して説明し、また運転台25から離れた昇降装置を前部昇降装置26(26A)と称し、運転台25に近い昇降装置を後部昇降装置26(26B)と称する(なお、呼び方については、前部と後部とが逆であってもよい)。
【0019】
上記各昇降装置26は、台車本体24の支持部材24a上に配置されたパンタグラフ式の伸縮体31と、支持部材24aと伸縮体31を構成するリンク材31aとに亘って設けられてリンク材31aを押上げ・引下げることにより当該伸縮体31を伸縮させてその上面を昇降させるための昇降手段例えば油圧式シリンダ装置32と、上記伸縮体31に支持されるとともに平面視が長方形にされ且つ上面(表面)に移動案内手段として例えば転動用ボール(ボールキャスターともいう)33が多数(複数)配置された支持部材(支持板でもある)34とから構成されている。なお、各支持部材34の周囲には、被支持物体の落下防止用のガード材35,36が設けられている。
【0020】
したがって、シリンダ装置32を作動させることにより、各支持部材34すなわち転動用ボール33を所定高さ範囲内にて自由に昇降させることができる。なお、このシリンダ装置32の操作ボタンは操作レバー27側に設けられており、通常は、両昇降装置26A,26Bが同調して昇降が行われる。勿論、各昇降装置26を別々に昇降し得るようにもされている。
【0021】
そして、さらに、作業台車21には、連結器11を各昇降装置26に支持させるための受け治具が具備されている。
図5〜図7に示すように、この受け治具41は、緩衝器12側を支持する前部受け体(緩衝器用受け体である)42と、胴部13側を支持する後部受け体(胴部用受け体である)43と、これら両受け体42,43同士の間隔を調節し得る受け体移動手段44とから構成されている。
【0022】
上記前部受け体42は、所定高さの前側立設部51と、この前側立設部51から少し後側に配置された所定高さの後側立設部52と、これら両立設部51,52同士を連結する左右の連結材53とから構成されており、より具体的に言えば、両立設部51,52および連結材53を一枚の鋼板上に配置した構成にされている。そして、前側立設部51の上面には連結器11の端板部12aが載置され、また後側立設部52の上面には連結器11の継手設置部15が載置される。したがって、この後側立設部52の上面には継手設置部15を載置するための載置板54が設けられている。
【0023】
また、上記後部受け体43は、連結部14を載置する連結部支持体としての立設部61と、この立設部61の前側に連設された支持台62上に配置されて胴部13を支持する胴受け梁17を載置するための胴受け用リフト装置63とから構成されている。なお、この後部受け体43は、連結部14と胴受け梁17とを支持するものであり、胴部13そのものを直接に載置していないが、連結部14を介して胴部13を支持していることになるため、胴部13(胴部側)を支持するものとして説明する。
【0024】
上記胴受け用リフト装置63は、それぞれ中間部がピンにより連結されてX字状に形成された左右一対のリンク部材71と、これら両リンク部材71の上面に配置された胴受け梁17の支持部材としてのステンレンス製の平鋼板(平板の一例である)が用いられた胴受け板72と、上記各リンク部材71における各一方のリンク71aの端部同士間に設けられた連結材73を前後方向で移動させることにより両リンク部材71の上面すなわち胴受け板72を昇降させ得る昇降用駆動手段74とから構成されている。なお、上記支持部材としての胴受け板72を、別な言い方をすれば、その支持面は、胴受け梁17をスライド(直線移動および平面での回転移動)させ得るように構成されている、と言うことができる。
【0025】
この昇降用駆動手段74は、左右における一方のリンク71aの端部同士間に設けられた連結材73の中間部に設けられたナット部材75と、上記立設部61を挿通されるとともに前端部が上記ナット部材75のめねじ部に螺挿されたおねじ部材(ねじ棒ともいえる)76と、このおねじ部材76の後端部に取り付けられて当該おねじ部材76を回転させる取外し式のハンドル77とから構成されている。
【0026】
なお、左右のリンク部材71における各リンク71aの前側端部は、胴受け板72の下面前部および支持台62の上面前部にそれぞれピン78を介して連結されるとともに各リンク71aの後側端部にはガイドローラ79が設けられて、胴受け板72の下面および支持台62の上面に沿って移動し得るように構成されている。
【0027】
したがって、ハンドル77によりおねじ部材76を回転させて左右におけるリンク部材71の開き角度を調節することにより、胴受け板72の高さを所定高さ範囲内にて自由に調節することができる。
【0028】
なお、上記胴受け板72を構成する平鋼板、つまり平板としては、上述したように、ステンレス製のものが用いられており、胴受け梁17が載置された場合に、当該胴受け梁17を滑らせて、その姿勢を容易に変更し得るように考慮されている。勿論、ステンレス製板の替わりに、通常の一般構造用圧延鋼板や、アルミニウム板などを用いることもでき、その他、硬質ゴム製の平板を用いてもよい。
【0029】
さらに、上記受け体移動手段44は、前部受け体42および後部受け体43の両側面に設けられた筒状の保持部材81,82と、左右におけるこれら前後の保持部材81,82に前後端部が挿入された左右一対のスライド用ロッド部材83と、上記保持部材81,82およびその近傍位置に設けられた上記ロッド部材83に対する固定具(例えば、ピンなど)84,85とから構成されている。
【0030】
したがって、一方の固定具84(または85)を解放した状態で、一方の支持部材34の転動用ボール33上に載置された両受け体42,43のうち、一方を前後方向で移動させて、両受け体42,43同士の間隔(距離)を調節することにより、連結器11の載置部(端板部12a、継手設置部15、連結部14)が前側立設部51、後側立設部52および立設部61上に位置するようにした後、固定具84(または85)にて固定すれば、連結器11を支持(載置)し得る状態にすることができる。
【0031】
勿論、少なくとも、上記前部受け体42および後部受け体43の幅は、車両1の下部フレーム2の車体中央部に形成された連結器11の設置用スペースS内に入るような寸法に、つまり、設置用スペースSの幅bよりも狭くされている。
【0032】
次に、上記作業台車21を用いて連結器11を車両1に取り付ける作業について説明する。
まず、作業台車21における前部昇降装置26Aおよび後部昇降装置26B上に、前部受け体42および後部受け体43をそれぞれ載せた後、上述したような手順にて、両受け体42,43同士の間隔を作業対象である連結器11の種類、つまり大きさに合わせて調節する。なお、この調節作業は、作業台車21に載せる前にしておいてもよい。
【0033】
次に、ハンドル77により胴受け用リフト装置63のおねじ部材76を回転させて胴受け板72を上昇させ、当該連結器11の胴受け梁17を支持し得るような高さにする。なお、各昇降装置26の支持部材34はそれぞれ下降されている。
【0034】
次に、フォークリフトなどにより、両受け体42,43上に連結器11および胴受け梁17を載置する。このとき、前部受け体42の前側立設部51には緩衝器12の端板部12aが載置されるとともに後側立設部52には継手設置部15が載置され、また後部受け体43の立設部61には連結部14が載置されるとともに胴受け板72には胴受け梁17が載置された状態になっている。
【0035】
さらに、上記胴受け板72に載置された胴受け梁17の姿勢は、図9に示すように、水平面内での姿勢が前後方向の軸心に対する傾斜角度が鋭角となるように、より具体的に言うと、胴受け梁17の左右における両端部が車両1の下部フレーム2における設置用スペースS内に収まるように斜めの姿勢にされている。図9の仮想線は、斜めにしない通常の取付状態での胴受け梁17の姿勢を示しており、このような場合には、作業台車1にて、連結器11を下部フレーム2における設置用スペースS内に導くことはできない。なお、図9には、胴受け梁17だけを載置した場合を示している。
【0036】
この状態で、操作レバー27を操作して、当該作業台車21を車両1の下部フレーム2における設置用スペースS内に案内(移動)させる。
そして、連結器11すなわち緩衝器12および胴部13が所定の取付位置下方に案内されると、両昇降装置26A,26Bを作動させて受け治具41を上昇させ、緩衝器12および胴部13をそれぞれの取付位置に移動させる。この上昇時にまたは上昇後に、胴受け梁17が、車両1の幅方向に沿うように、つまり斜めから本来の車両1の幅方向に沿う取付姿勢に戻される。
【0037】
なお、連結器11の案内に際し、その受け治具41は転動用ボール33を介して各昇降装置26側に載置されているので、容易に、連結器11を、その取付位置にくるように微調整することができる。
【0038】
この状態で、連結器11の緩衝器12および胴受け梁17を取付具およびボルトなどの締結具により車両1側に固定して保持させればよい。
また、連結器11を車両1から取り外す場合には、車両1に取り付けられている連結器11の位置まで、作業台車21を移動させる。勿論、このとき、受け治具41における両受け体42,43同士の間隔は、連結器11における端板部12a、継手設置部15および連結部14に対応するように調節されている。
【0039】
次に、各昇降装置26を作動させて、連結器11の受け治具41を上昇させて、前部受け体42および後部受け体43にて連結器11の載置部を支持させるとともに、胴受け板72についても上昇させて胴受け梁17を支持させる。
【0040】
そして、連結器11を保持している取付具および締結具を取り外して、当該連結器11および胴受け梁17を完全に受け治具41側に支持させた後、各昇降装置26を下降させて作業台車21を下部フレーム2の設置用スペースSから外側に移動させれば、容易に且つ迅速に、連結器11を取り外すことができる。
【0041】
このように、台車本体24上に前部昇降装置26Aおよび後部昇降装置26Bを配置するとともに、これら両昇降装置26A,26B上に、連結器11の緩衝器12を支持する前部受け体42および胴部13側を支持する後部受け体43を配置し、しかも、後部受け体43に、胴部13を車両1側に保持させるための胴受け梁17を昇降自在に支持する胴受け用リフト装置63を設けるとともに、この胴受け用リフト装置63に設けられる胴受け梁17の支持部材として平鋼板よりなる胴受け板72を用いることにより、胴受け梁17をその表面にて斜めに滑らせ得るようにしたので、着脱作業時に胴受け梁17の幅方向での突出長さを短くすることができ、したがって連結器11を、台車本体24に載せたまま、車両1の下部フレーム2における設置用スペースSまで案内することができるので、連結器11の取付けおよび取外し作業、すなわち着脱作業を容易に且つ迅速に行うことができる。
【0042】
また、受け治具41を、前部受け体42および後部受け体43により構成するとともに、両受け体42,43同士の間隔を調節し得るようにしたので、つまり、緩衝器12を支持する前部受け体42と、胴部13側を支持する後部受け体43との間隔を任意に調節することができるので、種々の連結器に対応することができる。
【0043】
また、連結器11を支持する前部受け体42および後部受け体43を、台車本体24に配置された前部昇降装置26Aおよび後部昇降装置26Bにそれぞれ載置するようにしたので、これら両受け体42,43自身の構成を簡単にすることができる。言い換えれば、各受け体42,43に、連結器11を支持し得る支持面を有するような構成にするだけでよく、したがってその支持構成部材をコンパクトに、つまり幅を狭くすることができるので、連結器11を、車両1の下部フレーム2における設置用スペースSに、容易に案内することができる。
【0044】
また、各受け体42,43を、各昇降装置26A,26Bの支持部材34上に転動用ボール33を介して支持したので、狭い設置用スペースSでの、連結器11の取付位置の微調整を容易に行うことができ、したがって着脱作業の迅速化を図ることができる。
【0045】
さらに、台車本体24に、前部昇降装置26Aおよび後部昇降装置26Bを配置したので、一方の昇降装置26A(または26B)だけを用いて連結器11の着脱作業を行うことができる。すなわち、連結器11の着脱作業時に、緩衝器12と胴部13側とを分離して行うような連結器11の場合でも、支障なく、着脱作業を行うことができる。
【0046】
ところで、上述したように、上記実施の形態においては、連結器11として、球継手を用いたものについて説明したが、十字継手を用いたものであってもよい。
この十字継手を用いた連結器を取り扱う場合には、その継手設置部に設けられている十字継手用の穴を介して位置決めおよびずれ防止が行われる。すなわち、載置板54の裏面には、十字継手用の穴に対して挿脱自在な係合突起(図5および図6の破線にて示す)55が設けられており、この係合突起55を利用する場合には、図5の仮想線にて示すように、左右の把手部54aを持って上下逆に設置して係合突起55が上向き姿勢となるようにすればよい。
【0047】
したがって、この着脱用作業台車は、球継手式および十字継手式の連結器の着脱作業に適用することができ、言い換えれば、新幹線用の連結器だけでなく、在来線用の連結器にも、柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0048】
S 設置用スペース
1 鉄道車両
2 下部フレーム
11 連結器
12 緩衝器
12a 端板部
13 胴部
14 連結部
14a 連結具
15 継手設置部
17 胴受け梁
21 着脱用作業台車
24 台車本体
26 昇降装置
26A 前部昇降装置
26B 後部昇降装置
31 伸縮体
32 シリンダ装置
33 転動用ボール
34 支持部材
41 受け治具
42 前部受け体
43 後部受け体
44 受け体移動手段
51 前側立設部
52 後側立設部
54 載置板
61 立設部
63 胴受け用リフト装置
71 リンク部材
72 胴受け板
74 昇降用駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器と、先端に連結部が設けられた胴部とからなる鉄道車両用連結器を鉄道車両に着脱する際に用いられる作業台車であって、
下部に車輪を有する台車本体と、この台車本体上に設けられるとともに上面に移動案内手段が配置された昇降装置と、上記移動案内手段上に載置されて連結器を支持する受け治具とから構成し、
この受け治具を、緩衝器を支持する緩衝器用受け体と、胴部を支持する胴部用受け体と、これら両受け体同士の間隔を調節し得る受け体移動手段とから構成し、
且つ上記胴部用受け体を、胴部先端に設けられた連結部を支持する連結部支持体と、胴部を鉄道車両側に保持するための胴受け梁を昇降自在に支持する胴受け用リフト装置とから構成するとともに、この胴受け用リフト装置の支持面を、胴受け梁がスライドし得る構成としたことを特徴とする鉄道車両用連結器の着脱用作業台車。
【請求項2】
胴受け用リフト装置に設けられて胴受け梁の支持面を構成する支持部材として平板を用いたことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用連結器の着脱用作業台車。
【請求項3】
移動案内手段として、上面に転動用ボールが配置されたものを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用連結器の着脱用作業台車。
【請求項4】
昇降装置を前部昇降装置および後部昇降装置とから構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鉄道車両用連結器の着脱用作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246017(P2011−246017A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122163(P2010−122163)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(592244376)住友金属テクノロジー株式会社 (43)