説明

鉄道車両用連結装置

【課題】車両同士が直線状のレール上に配置されているときも、曲がったレール上に配置されているときにも人手に頼ることなく、安全に連結することができる連結装置を提供する。
【解決手段】連結装置(1)を連結器(2)、弾性変形緩衝器(3)、揺動機構(6)、塑性変形緩衝器(7)、胴受機構(9)、等から構成する。胴受機構(9)は、車両(T)側に固定的に設けられている取付部材(B)に対して回転可能に設けられている回転継手(33)と、この回転継手(33)の一対の接続端部(37、37)に接続されているダンパ(34、34)とから構成する。ダンパ(34、34)他方の端部は、弾性変形緩衝器(3)の所定の部材に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結器と緩衝器とからなる連結装置に関するもので、さらに詳しくは車両側に設けられている支持部と、他の車両に連結される連結器と、該連結器を支持部に対して少なくとも水平方向と鉛直方向とに揺動自在に接続している揺動機構と、非連結状態の連結器を弾性的に水平に保持する胴受機構とからなる連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、一般に複数台の車両が連結器で連結されて運行されているが、連結時には車両間に衝撃が生じる。また、複数台の車両が編成されて走行するときは、編成された複数台の車両は1個の剛体ではなく、多少の遊びのある連結器で接続された一種の伸縮体と見なすことができ、車両間には発停時、加減速時等において衝撃が生じる。このような衝撃は車両に悪影響を与えるばかりでなく、乗り心地を悪くする。そこで、このような衝撃を吸収するために連結器には緩衝器が設けられている。
【0003】
連結器と緩衝器とからなる連結装置50は、従来周知であるので詳しくは説明しないが、図6の平面図に示されているように、前後方向に対して平行な緩衝器枠51を備えている。そして、この枠内において仕切枠52の前方には第1の伴板53が、仕切枠52の後方には第2の伴板54がそれぞれ設けられている。第1の伴板53と仕切枠52との間には、第1のゴム緩衝器55が、仕切枠52と第2の伴板54との間には第2のゴム緩衝器56が、車体に固定されている前後の伴板守により荷重状態で、それぞれ設けられている。このように構成されている緩衝器の前方に、横ピン57hと縦ピン57vとからなる揺動機構57を介して連結器58が接続されている。
【0004】
連結器58が他の車両に連結されていないとき、すなわち非連結状態のときは、連結器58は上記のように横ピン57hにより上下方向に揺動自在に取り付けられているので重力により前方が下がる。そこで、連結器58を支える胴受装置59が車体側に設けられている。連結器58は胴受装置59により支持されてはいるが、水平方向には縦ピン57vにより首振自在であり、連結器58が車体の幅方向の中心線上で停止しているとは限らない。そこで、車両を連結するときは、人手により連結器58を幅方向の中心に位置合わせし、そして車体を近づける方向に移動させて連結している。しかしながら、車体間に作業員が入り位置合わせ作業をするので、車体間に挟まれる危険がある。また、連結装置50の脱着は、連結器58、第1、2のゴム緩衝器55、56および胴受装置59を一体的に行う場合はそれ相応の設備を必要とする。また、これらの部材を個々に脱着する場合は作業に多大の労力と時間を要する。
【0005】
【特許文献1】特開2008−254542号公報
【0006】
上記のような問題を解決した連結装置が特許文献1により提案されている。特許文献1は本出願人の出願に係る特許文献であるが、特許文献1により提案されている連結装置60は、図7の正面図に示されているように、連結器61、塑性変形緩衝器62、紙面に平行方向および垂直方向に揺動する揺動機構63および弾性変形緩衝器64、65等から構成されている。そして、弾性変形緩衝器64、65の枠部材66が図示されない車体に取り付けられている。したがって、連結器61に作用する正負の衝撃は、塑性変形緩衝器62および揺動機構63を介して弾性変形緩衝器64、65に伝わり、この弾性変形緩衝器64、65により緩衝されて車体に伝わる。これにより、連結時あるいは走行時の衝撃は緩衝され、乗客の不快感は緩和される。また、衝突のような大きな衝撃に対しては、塑性変形緩衝器62の構成要素の一部が塑性変形して衝撃が吸収される。
【0007】
ところで、弾性変形緩衝器64、65の枠部材66は車体に取り付けられているが、すなわち車体に固定されているが、揺動機構63より前方の塑性変形緩衝器62と連結器61は、揺動機構63により上下方向に揺動自在で、重力により垂れる。また、水平方向にも揺動自在で連結器61が幅方向の中心線上に常に位置するとは限らない。そこで、塑性変形緩衝器62と連結器61を支持し、そして中心線上を指向するように胴受・復芯装置70が設けられている。胴受・復芯装置70は、所定間隔に配置されている一対の弾性装置71(71)からなり、これらの弾性装置71(71)の一方は枠部材66に、そして他方は塑性変形緩衝器62の胴部にピンにより回動自在に取り付けられている。胴受・復芯装置70は、抜き差し自在にバネ付勢された弾性装置71(71)からなっているので、弾性変形緩衝器64、65の緩衝動作には追従し、そして平行に配置されている一対の弾性装置71(71)の復元力により、連結器61は常に中心線上を指向するようになっている。
【0008】
特許文献1により、図8の(ア)、(イ)に示されている連結装置80も提案されている。この連結装置80は、連結器81、塑性変形緩衝器82、弾性変形緩衝器83、84、揺動機構85等から構成されている。揺動機構85に結合されている取付部材86が、図示されない車体に取り付けられるようになっている。この連結装置80には、胴受装置90と、復芯装置95も設けられている。胴受装置90は基端部が揺動機構85の縦ピン87に結合され、先端部が弾性変形緩衝器83の外側まで延びているU字型のアーム91から構成されている。弾性変形緩衝器83の下面には、図8の(ア)には正確には現れていないが、支持梁92が取り付けられている。この支持梁92の両端部がアーム91、91の先端部で吊り下げられている。これにより、弾性変形緩衝器83、84および連結器81の下方への垂れ下がりが防止されている。図8の(イ)に拡大して示されているように、取付部材86からは一対のブラケット88、88が、揺動機構85の方へ延びている。復芯装置95は、これらのブラケット88、88に取り付けられている一対の押部材97、97からなっている。これらの押部材97、97は、弾性変形緩衝器83、84の後方枠体に固定されている中心部材96を両側面からバネの復元力により押圧するようになっている。中心部材96の基端部は、縦ピン87により回動自在に取り付けられ、中心部材96は縦ピン87の位置から所定距離だけ離れた位置において一対の押部材97、97により同等の復元力で押されているので、中心部材96したがって中心部材96に機械的に連なっている連結器81は、中心位置を採ることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、特許文献1により提案されている連結装置60、80にも復芯装置70、95が設けられているので、連結器61、81は常に幅方向の中心線上に位置し、車両同士が直線状に配置されている状態では、換言すると直線のレール上では人手に頼ることなく安全に連結作業を行うことができるという利点を有する。また、連結装置と胴受および復芯装置は一体化されているので、車体への脱着は容易であるという利点も認められる。しかしながら、連結器61、81は復芯装置70、95により常に中心位置を採るので、レールの曲がりの大きい箇所で連結するときは、連結器61、81の頭部をレールが曲がっている角度に強制的に振った状態で連結する必要がある。このような状態にするには復芯しようとする力に抗して連結器61、81を押さえる必要があるが、そうすると作業員が連結器間に、あるいは車体間に挟まれる危険がある。また、特許文献1により提案されている連結装置60、80においては、胴受および復芯装置が比較的大きく連結装置全体が大型化しコスト高にもなっている。
したがって、本発明は、直線状のレール上では勿論のこと、曲がったレール上においても、作業員によって連結器が支えられる必要がなく安全に連結することができる連結装置を提供することを目的としている。また、構造がコンパクトで安価な連結装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、車両側に設けられている支持部に対して、揺動機構によって揺動自在に支持されている連結器を、所定の胴受機構によって支持する。胴受機構は車両に固定されている取付部材に水平面内で回転可能に設けられている回転継手と、所定の押圧力を有する一対のダンパとから構成する。回転継手には一対の接続端部を形成し、この左右の接続端部のそれぞれに、一対のダンパの一方の端部を接続する。そして一対のダンパの他方の端部を連結器の下部に接続する。また回転継手は、基準回転位置と他の回転位置を採ることができるように構成し、基準回転位置を採るときは所定の臨界モーメントが作用するまで回転が抑制されるようにし、基準回転位置から所定の範囲の回転角度を採るときは基準回転位置に戻ろうとする復元モーメントが作用するようにする。そして所定の範囲を超える回転角度を採るときは復元モーメントの作用は停止するように構成する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、車両側に設けられている支持部と、他の車両に連結される連結器と、該連結器を前記支持部に対して少なくとも水平方向と鉛直方向とに揺動自在に接続している揺動機構と、非連結状態の前記連結器を弾性的に水平に保持する胴受機構とからなる連結装置であって、前記胴受機構は、前記車両に固定されている取付部材に水平面内で回転可能に設けられている回転継手と、所定の押圧力を有する一対のダンパとから構成され、前記一対のダンパは、それぞれの一方の端部が前記回転継手に形成されている一対の接続端部に接続され、そして他方の端部が前記連結器の下部に接続され、前記回転継手は、前記一対の接続端部が軸方向に対して左右対称に位置する基準回転位置を採るときは所定の臨界モーメントが作用するまで回転が抑制され、前記基準回転位置から所定の範囲の回転角度を採るときは前記基準回転位置に戻ろうとする復元モーメントが作用し、前記所定の範囲を超える回転角度を採るときは前記復元モーメントの作用が停止するようになっていることを特徴とする鉄道車両用連結装置として構成される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連結装置において、前記連結器は、その後端部に第1の緩衝器が設けられ、該第1の緩衝器の後端部が前記揺動機構によって前記支持部に接続されていると共に、前記第1の緩衝器の下部に前記一対のダンパの他方の端部が接続されており、前記車両には第2の緩衝器が固定され、前記支持部は該第2の緩衝器の構成部材であることを特徴とする鉄道車両用連結装置として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の連結装置において、前記第1、2の緩衝器は、いずれか一方が弾性変形により衝撃を吸収する弾性変形緩衝器からなり、他方が塑性変形により衝撃を吸収する塑性変形緩衝器からなることを特徴とする鉄道車両用連結装置として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の連結装置において、前記取付部材には垂直方向に所定の高さの円柱部が形成され、前記回転継手には該円柱部の外径よりわずかに大きい内径の嵌合穴が形成され、前記円柱部に前記嵌合穴が嵌合されるようにして前記回転継手が前記支持部に設けられており、前記円柱部には内部にローラ収納穴が形成され、該ローラ収納穴内にバネとローラとが格納されて、前記ローラが前記バネにより前記円柱部の側面から外方に突き出るように付勢されており、前記嵌合穴の内周面には、所定の位置に窪みが形成され、前記ローラが前記窪みに当接した状態のとき、前記回転継手が前記基準回転位置を採るようになっていることを特徴とする鉄道車両用連結装置として構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によると、車両側に設けられている支持部と、他の車両に連結される連結器と、該連結器を支持部に対して少なくとも水平方向と鉛直方向とに揺動自在に接続している揺動機構と、非連結状態の連結器を弾性的に水平に保持する胴受機構とからなる連結装置として構成され、胴受機構は、車両に固定されている取付部材に水平面内で回転可能に設けられている回転継手と、所定の押圧力を有する一対のダンパとから構成されている。そして一対のダンパは、それぞれの一方の端部が回転継手に形成されている一対の接続端部に接続され、そして他方の端部が連結器の下部に接続されている。従って非連結状態の時、連結器が下方向に重力の作用を受けても、下方において一対のダンパが所定の押圧力で突っ張るので、連結器は水平に保持されることになる。また連結器が左右に首振りして回転継手に対して左右いずれかの方向にずれても連結器は復芯することになる。復芯について詳しく説明すると次のようになる。まず連結器はダンパによって左右から均等に押されるので回転継手に対して均等な位置を採る。ところで本発明によると、回転継手は、一対の接続端部が軸方向に対して左右対称に位置する基準回転位置を採るときは所定の臨界モーメントが作用するまで回転が抑制され、基準回転位置から所定の範囲の回転角度を採るときは基準回転位置に戻ろうとする復元モーメントが作用する。つまり回転継手は基準回転位置に留まろうとし、回転角度が小さいときには基準回転位置に戻る。そうすると、前記したように連結器は回転継手に対して均等な位置を採るので、必然的に連結器は軸方向を指向する。すなわち復芯することになる。このように連結器が復芯するので、直線状に敷設されているレール上において、人手に頼ることなく車両を連結することができる。また、回転継手は所定の範囲を超える回転角度を採るときは復元モーメントの作用は停止するように構成されているので、連結器を左右いずれかの方向にある程度振ると、その状態で停止させることができる。このように左右に振った状態で連結器を停止させることができるので、連結器をレールの曲がりに合わせて保持する必要がなく、曲がったレール上でも人手に頼ることなく車両を連結することができる。以上のように、本発明によると、レールの敷設状態に関係なく、連結作業が終わるまで連結器の先端部を人手により保持する必要がないので、安全に連結できるという効果が得られる。そして、本発明によると、胴受機構は回転継手と一対のダンパとからなるのでシンプルかつコンパクトであり、連結装置を安価に提供することができる。
【0014】
他の発明によると、連結器は、その後端部に第1の緩衝器が設けられ、該第1の緩衝器の後端部が揺動機構によって支持部に接続されていると共に、第1の緩衝器の下部に前記一対のダンパの他方の端部が接続されており、車両には第2の緩衝器が固定され、支持部は該第2の緩衝器の構成部材であるので、第1、2の緩衝器を備えている。これらの緩衝器によって他の車両から受ける衝撃を吸収することができ快適な乗り心地と安全性が得られる。さらに他の発明によると第1、2の緩衝器は、いずれか一方が弾性変形により衝撃を吸収する弾性変形緩衝器からなり、他方が塑性変形により衝撃を吸収する塑性変形緩衝器からなるので、通常の走行時に発生する衝撃は弾性変形緩衝器によって滑らかに吸収して優れた乗り心地が得られることになり、追突等において発生する巨大な衝撃は塑性変形緩衝器によって吸収されて高い安全性が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る連結装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る連結装置の要部を示す図で、その(ア)は要部の正面断面図、その(イ)は胴受機構の平面断面図、その(ウ)は回転継手の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る連結装置を構成しているダンパを示す図で、その(ア)(イ)はダンパの平面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る連結装置の作用を説明する、連結装置の要部の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る連結装置の作用を説明する図で、その(ア)(イ)はそれぞれ胴受機構の平面断面図である。
【図6】従来の、一般的な連結装置の要部を示す平面図である。
【図7】特許文献1に記載の、連結器の要部を一部断面にして示す正面図である。
【図8】特許文献1に記載の、他の連結器を示す図で、その(ア)はその要部を一部断面にして示す平面図、その(イ)は復芯装置の近傍を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る連結装置1は、概略的には、図1に示されているように、左方から右方に向かって順に示されている密着型の連結器2、この連結器2に固定的に設けられていて弾性的に変形して緩衝する弾性変形緩衝器3、車両T側に設けられている支持部4に対して連結器2と弾性変形緩衝器3とを上下方向および左右方向に揺動自在に接続している揺動機構6、衝突時等に塑性変形して大きな衝撃を吸収する塑性変形緩衝器7、連結器2と弾性変形緩衝器3とを支持していると共にこれらを軸心方向に戻す胴受機構9等からなっている。本実施の形態によると、連結器2は、2つ割り構造の締付金具10により弾性変形緩衝器3の連結軸11に取付け取外し自在に接続されている。したがって、密着型の連結器に代えて半永久型の連結器を選択して取り付けることもできる。
【0017】
図2の(ア)には、連結装置1のうち連結器2を除いた要部が断面で示されている。弾性変形緩衝器3は円筒状のケーシング12からなる。ケーシング12の、図において左方の開放端部には蓋体13が図示されない取付けボルトにより取り外し自在に取り付けられ、右方すなわち後方は所定肉厚の底部14となっている。この底部14から連結器尾端部15が一体的に後方へ延びている。連結器尾端部15は、後述するように、揺動機構6の一部を構成している。ケーシング12内にはピストン17が設けられている。ピストン17は、連結器2の方から蓋体13の透孔を通って延びている連結軸11の後端部に取り付けられている。ケーシング12内の、ピストン17と底部14との間には従来周知の形態をした第1のゴム緩衝器18が、ピストン17と蓋体13との間には第2のゴム緩衝器19がそれぞれ設けられている。したがって、連結軸11に正の加速度すなわち図2の(ア)において右方向の衝撃力が加わると第1のゴム緩衝器18が圧縮され、逆方向の負の衝撃力が加わると第2のゴム緩衝器19が圧縮される。圧縮されることにより緩衝された衝撃力は、ケーシング12の底部14から連結器尾端部15に伝達されることになる。上記の連結軸11、円筒状のケーシング12、第1、2のゴム緩衝器18、19等が弾性変形緩衝器3を構成している。
【0018】
塑性変形緩衝器7は、大きな衝撃により変形する筒状変形部材20と、この筒状変形部材20内に設けられ、前記筒状変形部材20に作用する支持金22とからなっている。筒状変形部材20は、図2の(ア)において左方の大径部23と、この大径部23の後端部からテーパ状に縮径している縮径部24と、縮径部24の後端部から平行に延びている小径部25とからなっている。縮径部24は、他の部分より変形しやすいように薄肉になっている。また、小径部25も後端部より薄肉になっている。支持金22は、その後端部26が略円柱状に形成されて筒状変形部材20の大径部23に嵌められており、先端部が上下の二股に分岐して支持部4、4が形成されている。筒状変形部材20には、車体取付板STが固着されており、この車体取付板STによって連結装置1が車両Tに固定されている。すなわち支持部4、4は、筒状変形部材20、車体取付板STを介して車両Tに設けられている。連結器2と弾性変形緩衝器3とは、この支持部4、4に揺動機構6を介して揺動自在に接続されている。通常の使用状態においては支持部4、4は車両Tに対して位置が変化しないが、衝突等により大きな衝撃力を受けると支持金22はその後端部が筒状変形部材20を塑性変形させながら縮径部24と小径部25とに進入することになるので、このとき支持部4、4も車両に対して相対的にスライドすることになる。
【0019】
揺動機構6は、弾性変形緩衝器3の連結器尾端部15、支持金22の先端の二股状の支持部4、4、球面座29、球面滑り軸受30、支持部4、4に軸受けされている縦ピン31等から構成されている。連結器尾端部15の後端部分は、図2の(ア)に示されているように、二股状の支持部4、4間に位置している。連結器尾端部15の上下の外側面と、二股状の支持部4、4の内側面との間には所定の隙間が開けられている。これにより、連結器2は上下方向に所定範囲内で揺動できる。球面座29を受けている球面滑り軸受30は、連結器尾端部15の方に設けられている。縦ピン31は、前記球面座29に明けられている挿通孔に多少の遊びをもって挿通されている。これにより、連結器2は支持部4、4に対して図2の(ア)において紙面に垂直方向にも紙面に平行方向にも、すなわち水平方向にも上下方向にも揺動自在になっている。また、縦ピン31は球面座29の挿通孔に多少の遊びをもって挿通されているので、連結器尾端部15は上下方向に移動可能である。以上により、揺動機構6が構成されている。
【0020】
本実施の形態に係る胴受機構9について説明する。胴受機構9は、図2の(ア)に側面断面図が、図2の(イ)に上面断面図が示されているように、回転継手33と、所定の押圧力を備えた一対のダンパ34、34とから構成され、連結装置1の下部に設けられている。車体取付板STには所定のブラケットBが形成され、このブラケットBが回転継手33が取り付けられる取付部材になっている。すなわちブラケットBには垂直方向の大径の軸部すなわち円柱部35が固着されており、回転継手33には、この円柱部35よりわずかに径が大きい嵌合穴36が開けられている。そして円柱部35にこの嵌合穴36が嵌合するようにして回転継手33が水平面内で回転可能に設けられている。回転継手33には、左右対称に一対の接続端部37、37が設けられている。これらの接続端部37、37には、後で詳しく説明するダンパ34、34のそれぞれの基端部がピンによって緩やかに軸支されている。従ってダンパ34、34はピンを中心にして水平面に自由に回転できると共に、上下方向にも所定範囲で首振り可能になっている。ダンパ34、34は、所定の間隔をおいて平行になるように、それぞれの先端部が弾性変形緩衝器3のケーシング12の下部の支持板38に接続されている。ダンパ34、34は、連結装置1の軸方向に対して左右対称に配置されており、これによって連結器2は左右のダンパ34、34から均等に力を受けることになる。
【0021】
支持部4の下部の円柱部35には、円柱の側面から中心に向かう所定の深さで有底の穴、すなわちローラ収納穴39が明けられている。このローラ収納穴39は上面から見ると連結装置1の軸線に一致している。ローラ収納穴39には皿バネ40、40、…とローラ41とが収納され、ローラ41は皿バネ40、40、…によって円柱の側面から外方に突き出すように付勢されている。回転継手33の嵌合穴36には、図2の(ウ)に示されているように、窪み42が形成されており、この窪み42は接続端部37、37から等距離に位置している。従ってローラ41が窪み42に当接しているとき、回転継手33は基準回転位置に位置することになる。すなわち接続端部37、37は連結装置1の軸に対して左右対称に配置されることになる。基準回転位置においては、ローラ41が窪み42に所定の力で当接するので回転継手33は回転が規制される。臨界モーメントを超える所定の大きさの回転力が回転継手33に作用するとローラ41が窪み42から押し出されて回転継手33は回転する。しかしながら回転継手33の回転角度が基準回転位置の近傍のときは、完全にローラ41が窪み42から押し出されないので、ローラ41は窪み42に当接しようとする。これによって回転継手33には基準回転位置に戻そうとするモーメントすなわち復元モーメントが作用する。所定の回転角度以上に回転継手が回転するとローラ41は完全に窪み42から押し出されるので復元モーメントは作用せず、回転継手33はその回転位置で安定的に停止させることができる。
【0022】
本実施の形態に係るダンパ34は、図3の(ア)に示されているように、大径のケーシング43と、このケーシング43の内壁に沿ってスライドするシリンダ44と、ケーシング43に設けられているピストンロッド45と、シリンダ44内に充填されているエラストマ等の圧縮性流体もしくは弾性流体からなる充填材46とから構成されている。ピストンロッド45のロッド部47はケーシング43に固着され、ピストン部48はシリンダ44のボア内で所定の隙間を空けるように設けられている。従ってダンパ34が圧縮されて、シリンダ44がケーシング43内に進入すると、図3の(イ)に示されているように、シリンダ44のボア内において相対的にピストン部48が左方に移動して充填材46がピストン部48とボアの隙間から右方に流動することになる。このときロッド部47も符号49で示されている長さだけボア内に進入するが、これによって充填材46の体積が減少する。すなわち充填材46は圧縮される。そうすると充填材46の圧縮力によってシリンダ44には元の位置に戻ろうとする。このようにしてダンパ34に押圧力が発生する。なお、充填材46は初期状態で所定の圧力になるように充填されており、これによって所定の初期押圧力が発生するように調整されている。
【0023】
上記実施の形態の作用について説明する。車両Tの連結器2と他の車両の連結器を連結している連結状態において、連結器2に作用する衝撃、走行時の加減速による正負の衝撃等は弾性変形緩衝器3に伝達し、この弾性変形緩衝器3により緩衝されて支持部4、4から車体Tに伝達する。これにより連結時、走行時等に生じる衝撃は吸収され、乗客の不快感は緩和される。また、衝突のような大きな衝撃に対しては、支持金22が塑性変形緩衝器7の筒状変形部材20内に入り込む。これにより筒状変形部材20は塑性変形し、そのエネルギにより衝撃が吸収され、事故時等のダメージが低減される。
【0024】
連結器2を他の車両の連結器から切り離して非連結状態にする。このとき、図4に示されているように、連結器2と弾性変形緩衝器3は重力の作用により下向きに力を受けて落下しようとする。そうすると胴受機構9のダンパ34、34も下方向に振れるが、ダンパ34、34の基端部は回転継手33の接続端部37、37に軸支されて移動が規制されている。そうするとダンパ34、34が圧縮されて、押圧力が大きくなる。大きくなった押圧力によって連結器2と弾性変形緩衝器3は上方向に押し戻される。実際には前記したように所定の初期押圧力がダンパ34、34に付加されている。従って非連結状態において、連結器2と弾性変形緩衝器3は落下することなく水平状態で維持されることになる。
【0025】
非連結状態において、連結器2が水平方向すなわち左右に首振りしたときの作用を説明する。図5の(ア)に示されているように、回転継手33が基準回転位置にあるとき、連結器2と弾性変形緩衝器3が左右に首振りすると、弾性変形緩衝器3に固定されている支持板38は回転するが、回転継手33の接続端部37、37は位置が変化しないので、一方のダンパ34と他方のダンパ34の圧縮量が異なることになる。図5の(ア)においては図の下方のダンパ34の方が上方のダンパ34よりも圧縮量が大きい。そうすると下方のダンパ34からより大きな押圧力を受けることになり、連結器2と弾性変形緩衝器3は軸方向に向かうように押し戻される。すなわち連結器2は復芯する。レールが直線状になっている場所では、連結器2は軸方向に整合するので人手を介することなく他の車両の連結器と連結することができる。
【0026】
連結器2に大きな横方向の力を作用させると、回転継手33に臨界モーメントを超えるモーメントが作用して、図5の(イ)に示されているように、ローラ41が後退して回転継手33が回転する。回転角度が小さい場合には、前記したように回転継手33に復元モーメントが作用して基準回転位置に戻ってしまうが、回転角度が所定の範囲を超えると、回転継手33は安定的に停止する。連結器2は、ダンパ34、34から押圧力を受けるので、回転継ぎ手33の接続端部37、37に対して均等な位置に配置する。つまり回転継手33の回転角度を調整すると連結器2は車両Tに対して所望の角度で安定的に停止させることができる。レールが所定の角度で曲がっている場所においても、連結器2を人手で支持することなく所望の角度で停止させることができるので、安全に他の車両と連結することができる。
【0027】
本発明は上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、緩衝器3、7について変形が可能である。本実施の形態においては、弾性変形緩衝器3は連結器2に固定され、塑性変形緩衝器7は支持部4側に設けられているが、連結器2に塑性変形緩衝器を固定するようにし、支持部4に弾性変形緩衝器を設けるようにしてもよい。さらには弾性変形緩衝器3または塑性変形緩衝器7のいずれか一方の緩衝器だけを設けるようにしてもよいし、両方の緩衝器3、7を省略して緩衝器のない連結装置として構成することもできる。この場合、胴受機構9のダンパ34、34の一方の端部は連結器2の所定の部材に接続するようにする。また、ダンパ34についても変形が可能である。本実施の形態においてはダンパ34内にエラストマ等の充填材が充填され、これが圧縮されて押圧力が発生するようになっているが、ダンパ内にバネ等の弾性部材を設けるようにしてもダンパが圧縮されると圧縮量に応じて押圧力が発生することになる。
【符号の説明】
【0028】
1 連結装置 2 連結器
3 弾性変形緩衝器 4 支持部
6 揺動機構 7 塑性変形緩衝器
9 胴受機構 12 ケーシング
15 連結器尾端部 17 ピストン
18 第1のゴム緩衝器 19 第2のゴム緩衝器
20 筒状変形部材 22 支持金
29 球面座 30 球面滑り軸受
31 縦ピン 33 回転継手
34 ダンパ 35 円柱部
36 嵌合穴 37 接続端部
38 支持板 39 ローラ収納穴
40 皿バネ 41 ローラ
42 窪み 43 ケーシング
44 シリンダ 45 ピストンロッド
46 充填材 47 ロッド部
48 ピストン部
T 車両 ST 車体取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側に設けられている支持部と、他の車両に連結される連結器と、該連結器を前記支持部に対して少なくとも水平方向と鉛直方向とに揺動自在に接続している揺動機構と、非連結状態の前記連結器を弾性的に水平に保持する胴受機構とからなる連結装置であって、
前記胴受機構は、前記車両に固定されている取付部材に水平面内で回転可能に設けられている回転継手と、所定の押圧力を有する一対のダンパとから構成され、
前記一対のダンパは、それぞれの一方の端部が前記回転継手に形成されている一対の接続端部に接続され、そして他方の端部が前記連結器の下部に接続され、
前記回転継手は、前記一対の接続端部が軸方向に対して左右対称に位置する基準回転位置を採るときは所定の臨界モーメントが作用するまで回転が抑制され、前記基準回転位置から所定の範囲の回転角度を採るときは前記基準回転位置に戻ろうとする復元モーメントが作用し、前記所定の範囲を超える回転角度を採るときは前記復元モーメントの作用が停止するようになっていることを特徴とする鉄道車両用連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連結装置において、前記連結器は、その後端部に第1の緩衝器が設けられ、該第1の緩衝器の後端部が前記揺動機構によって前記支持部に接続されていると共に、前記第1の緩衝器の下部に前記一対のダンパの他方の端部が接続されており、
前記車両には第2の緩衝器が固定され、前記支持部は該第2の緩衝器の構成部材であることを特徴とする鉄道車両用連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載の連結装置において、前記第1、2の緩衝器は、いずれか一方が弾性変形により衝撃を吸収する弾性変形緩衝器からなり、他方が塑性変形により衝撃を吸収する塑性変形緩衝器からなることを特徴とする鉄道車両用連結装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の連結装置において、前記取付部材には垂直方向に所定の高さの円柱部が形成され、前記回転継手には該円柱部の外径よりわずかに大きい内径の嵌合穴が形成され、前記円柱部に前記嵌合穴が嵌合されるようにして前記回転継手が前記支持部に設けられており、
前記円柱部には内部にローラ収納穴が形成され、該ローラ収納穴内にバネとローラとが格納されて、前記ローラが前記バネにより前記円柱部の側面から外方に突き出るように付勢されており、
前記嵌合穴の内周面には、所定の位置に窪みが形成され、
前記ローラが前記窪みに当接した状態のとき、前記回転継手が前記基準回転位置を採るようになっていることを特徴とする鉄道車両用連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86652(P2013−86652A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228815(P2011−228815)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)