説明

鉄道車両用非常通報装置および鉄道車両

【課題】ハウリングを防止しつつ、収納カバーの大型化を抑制して収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくすることで、客室内の乗客の乗車スペースを大きく確保できる鉄道車両用非常通報装置および鉄道車両を提供すること。
【解決手段】収納カバー50に収納されるスピーカ30は、平面波の音波が放射される平面状の放射面31を備える板状の平面スピーカで構成される。よって、放射面31を手前にした場合における奥行き寸法を小さくできるので、その分、スピーカ30を収納する収納カバー50の奥行き寸法を小さくできる。また、平面スピーカから放射される平面波の音波は、指向性が強いので、マイク20とスピーカ30とを近接させて配設した場合であってもハウリングの発生を低減できる。よって、収納カバー50の上下方向の寸法が不用意に大きくなることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用非常通報装置および鉄道車両に関し、特に、ハウリングを防止しつつ、収納カバーの大型化を抑制して収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくすることで、客室内の乗客の乗車スペースを大きく確保できる鉄道車両用非常通報装置および鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客が乗車する客室と、乗務員が乗車する乗務員室とを備える鉄道車両には、客室内の乗客が乗務員室内の乗務員と通話するために、客室内の乗客が乗務員室に設置される音声出入力装置を通じて乗務員室内の乗務員と通話するための鉄道車両用非常通報装置が客室内に設置されている。この鉄道車両用非常通報装置は、客室内の乗客によって押圧されることで客室内の乗客と乗務員室内の乗務員とを通話可能な状態とする非常ボタンと、通話可能状態において客室からの音声が入力されるマイクと、そのマイクの上方に並設され通話可能状態において乗務員室からの音声が出力されるスピーカと、そのスピーカにより出力される音声信号およびマイクにより入力される音声信号を制御する制御装置と、非常ボタンを露出させつつ非常ボタン、マイク、スピーカ及び制御装置を収納する収納カバーとを主に備えて構成され、乗客にとって目につきやすく操作しやすい客室の乗降口付近の内壁面に設置される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105635(例えば、段落[0003]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の鉄道車両用非常通報装置に使用されるスピーカは、球面波の音波が放射される円錐形状の放射面(振動板)を備えるコーン型スピーカで構成されているので、上下方向に並設されるスピーカとマイクとを近づけて配設するとハウリングが発生しやすくなるという問題点があった。一方、ハウリングを抑制するためにスピーカとマイクとを上下方向に離間して配設すると、収納カバーが大型化する。その結果、収納カバーが客室の内壁面から大きく張り出し、客室内の乗客の乗車スペースが小さくなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ハウリングを防止しつつ、収納カバーの大型化を抑制して収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくすることで、客室内の乗客の乗車スペースを大きく確保できる鉄道車両用非常通報装置および鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、スピーカは、平面波の音波が放射される放射面を有する平面スピーカで構成されるので、球面波の音波を放射するコーン型スピーカと比べて、音波の指向性を強くすることができる。これにより、ハウリングの発生を抑制しつつ、マイクとスピーカとを近接して配設できるので、収納カバーの上下方向における寸法が不用意に大きくなることを抑制できる。よって、収納カバーの大型化を抑制して収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室内の乗客の乗車スペースを大きく確保できるという効果がある。
【0007】
また、スピーカが板状の平面スピーカで構成されるので、スピーカがコーン型スピーカで構成される場合と比べて、収納カバーの奥行き寸法を小さくできる。よって、収納カバーの大型化を抑制して収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室内の乗客の乗車スペースを大きく確保できるという効果がある。
【0008】
また、マイクとスピーカとを近接して配置してもハウリングの発生を抑制できるので、マイク及びスピーカの配設位置に関する設計の自由度を高めることができるという効果がある。
【0009】
さらに、マイクは、スピーカの放射面から放射される音波の放射経路の外側に位置するので、スピーカから出力される音声がマイクに入力されることを回避でき、ハウリングを防止できるという効果がある。
【0010】
また、平面波の音波は球面波の音波と比べて減衰しにくいので、平面波の音波を放射する放射面を有する平面スピーカを鉄道車両用非常通報装置のスピーカとして採用することにより、鉄道車両用非常通報装置が地下鉄等の大きな騒音が発生する鉄道車両の客室内に設置される場合であっても、客室内の乗客は、スピーカから出力される音声を鮮明に聞き取ることができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、スピーカは、客室の内壁面に対して放射面を傾斜させて配設された状態で収納カバーに収納されるので、スピーカから出力される音声を所望の位置へ向けて出力することができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1又は2に記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、スピーカは、収納カバーが設置される客室の内壁面に対する放射面の傾斜角度が30度以内に設定されるので、スピーカを収納する収納カバーの奥行き寸法が大きくなることを抑制できるという効果がある。その結果、収納カバーの大型化を抑制できるので、収納カバーによって客室の乗客の乗車スペースが小さくなることを抑制できる。
【0013】
請求項4記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、収納カバーが乗降口と窓部との間に位置すると共に座席よりも上方、かつ、荷棚よりも下方に位置する客室の内壁面に設置されるので、客室内の乗客にとって目に付きやすい位置に収納カバーを設置できると共に、収納カバーに収納されるマイク及びスピーカの高さ位置を座席よりも上方、かつ、荷棚よりも下方、即ち、乗客の口元および耳元の高さ位置に近接した位置に配設できる。よって、乗客の口元にマイクを近接して配設しつつ、スピーカの放射面を乗客の耳元へ指向させてスピーカを配設することができるので、乗客は、口元をマイクに近接させた状態のまま、スピーカから出力される音声を聞き取ることができる。これにより、スピーカから出力される音声を聞きながら話す乗客の声がマイクに入力されやすくなる。その結果、乗務員室内の乗務員は、客室内の乗客が話す声を鮮明に聞き取ることができるので、客室内の乗客と乗務員室内の乗務員とがスムーズに会話をすることができるという効果がある。
【0014】
また、スピーカは、放射面を客室の内壁面に対して側方へ傾斜させた状態で配設されるので、収納カバーが座席の上方に設置された場合でも、スピーカからの音声を乗降口側へ向けて出力できる。これにより、客室内の乗客は、スピーカから出力される音声を乗降口側から聞き取ることができるので、座席を避けつつ直立姿勢のままで収納カバー内のマイクに口元を近接させることができる。即ち、座席の上方に設置された収納カバーに対し、その収納カバー内のマイクに客室内の乗客が口元を近接させるために座席の上に乗ったり、体勢を前かがみにすることが不要なので、客室内の乗客は、自然な姿勢のままで乗務員室内の乗務員とスムーズな会話ができる。よって、鉄道車両用非常通報装置の利便性を向上させることができるという効果がある。
【0015】
請求項5記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、スピーカが水平方向に対して放射面を客室の上方へ傾斜させた状態で配設されるので、スピーカから出力される音声を下方から上方へ向けて出力できる。よって、乗客の口元および耳元よりも低い位置に設置された収納カバー内のマイクに対して前かがみになって話す乗客へ向けて音声を出力できる。
【0016】
即ち、車いす利用者の利便性を考慮して比較的低い位置にマイク及びスピーカが配設されることがある。このとき、音声が下方から上方へ向けて出力されることで、音声が水平方向へ向けて出力される場合と比べて、鉄道車両用非常通報装置を使用する車いす非利用者は、顔(耳)をより高く位置した状態で、スピーカから出力される音声を聞き取ることができる。よって、車いす非利用者の乗客が、スピーカから出力される音声を聞き取るために、しゃがんだり、大きく前かがみになりながら、鉄道車両用非常通報装置を使用することを回避できるので、身体への負担を軽減できる。従って、車いす利用者および車いす非利用者の双方の利便性を向上させることができるという効果がある。
【0017】
請求項6記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、制御装置は、少なくともマイクが収納される収納カバーに収納されると共にマイク又はスピーカの側方に配設されるので、マイクとスピーカとをより近接させることができる。よって、収納カバーの上下方向における寸法を小さくできるという効果がある。
【0018】
請求項7記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、少なくともマイクが収納された収納カバーが、乗降口と窓部または客室の妻部との間に位置すると共に荷棚よりも下方に位置する客室の内壁面に設置されるので、客室内の乗客にとって目に付きやすい位置に収納カバーを配設できると共に、乗客が口元をマイクに近接させやすくすることができる。その結果、乗客の声がマイクに入力されやすくなるので、乗務員室内の乗務員は、客室内の乗客が話す声を鮮明に聞き取ることができるという効果がある。
【0019】
さらに、スピーカ又は制御装置の少なくとも一方は、収納カバーの外部にあるので、スピーカ又は制御装置の少なくとも一方の収納スペースが不要となる分、収納カバーの大型化を抑制できる。よって、収納カバーの客室の内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室内の乗客の乗車スペースをより大きく確保できるという効果がある。
【0020】
また、収納カバーの外部に設置されるスピーカ又は制御装置の少なくとも一方は、荷棚と同等以上の高さ位置、即ち、乗客の頭上に設置されるので、収納カバーの外部に設置されるスピーカ又は制御装置の少なくとも一方によって、客室内の乗客の乗車スペースが小さくなることを回避できるという効果がある。
【0021】
請求項8記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項7記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、スピーカは、放射面を収納カバーと乗降口との間、即ち、客室内の乗客がマイクに口元を近接させて話すことができる位置へ指向させた状態で設置されるので、乗客は、口元をマイクに近接させた状態のまま、スピーカから出力される音声を聞き取ることができる。これにより、スピーカから出力される音声を聞きながら話す乗客の声がマイクに入力されやすく、乗務員室内の乗務員は、客室内の乗客が話す声を鮮明に聞き取ることができるので、客室内の乗客と乗務員室内の乗務員とがスムーズに会話をすることができるという効果がある。
【0022】
請求項9記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項8記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、スピーカは、客室の天井面に設置されると共に、放射面を客室の床面へ指向させた状態で設置されるので、スピーカからの音声を天井面から床面へ向けて出力できる。よって、鉄道車両用非常通報装置を使用する客室内の乗客は、乗客の身長の高低に関係なく、また、乗客の車いすの使用の有無に関係なく、スピーカから出力される音声を乗客にとって聞き取りやすくできるという効果がある。特に、スピーカとして指向性の強い平面波の音波が放射される平面スピーカが用いられることにより、乗客から離間した位置にスピーカを設置しても、乗客はスピーカから出力される音声を鮮明に聞き取ることができる。
【0023】
請求項10記載の鉄道車両用非常通報装置によれば、請求項1から9のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置の奏する効果に加え、複数のスピーカが放射面をそれぞれ異なる方向へ指向させて配設されるので、収納カバーに対する客室内の乗客の位置によって、スピーカから出力される音声が聞き取りにくくなることを抑制できるという効果がある。
【0024】
請求項11記載の鉄道車両によれば、請求項1から10のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における非常通報装置の収納カバーの正面図であり、(b)は、図1(a)のIb方向視における収納カバーの上面図であり、(c)は、図1(a)のIc方向視における収納カバーの側面図である。
【図2】(a)は、非常通報装置が設置された鉄道車両の模式図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における鉄道車両の断面を模式的に表した模式図である。
【図3】(a)は、第2実施の形態における非常通報装置の収納カバーの正面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb方向視における収納カバーの上面図である。
【図4】(a)は、非常通報装置が設置された鉄道車両の模式図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における鉄道車両の断面を模式的に表した模式図である。
【図5】(a)は、第3実施の形態における非常通報装置の収納カバーの正面図であり、(b)は、図5(a)のVb方向視における収納カバーの側面図である。
【図6】(a)及び(b)は、非常通報装置が設置された鉄道車両の模式図である。
【図7】(a)は、第4実施の形態における非常通報装置の収納カバーの正面図であり、(b)は、図7(a)のVIIb方向視における収納カバーの上面図である。
【図8】(a)は、第5実施の形態における非常通報装置の第1収納カバーの正面図であり、(b)は、第2収納カバーの正面図であり、(c)は、VIIIc方向視における第2収納カバーの側面図である。
【図9】(a)は、非常通報装置が設置された鉄道車両の模式図であり、(b)は、IXb方向視における鉄道車両の模式図である。
【図10】(a)は、第6実施の形態における非常通報装置の第2収納カバーの正面図であり、(b)は、図10(a)のXb方向視における第2収納カバーの側面図である。
【図11】非常通報装置が設置された鉄道車両の模式図である。
【図12】(a)は、変形例における非常通報装置の収納カバーの正面図であり、(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線における収納カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施の形態における非常通報装置100について説明する。図1(a)は、本発明の第1実施の形態における非常通報装置100の収納カバー50の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb方向視における収納カバー50の上面図であり、図1(c)は、図1(a)のIc方向視における収納カバー50の側面図である。なお、図1(a)では、非常ボタン10、マイク20、スピーカ30、制御装置40及びボタン開口部51aが、図1(b)では、マイク20及びスピーカ30が想像線で模式的に図示されている。また、図1(b)及び図1(c)では、収納カバー50が客室2の側壁部2bに設置された状態が図示されている。
【0027】
図1(a)に示すように、非常通報装置100は、鉄道車両1の客室2内の乗客P(図2(a)参照)が、乗務員室に設置され客室2との音声の出入力を行う音声出入力装置(図示せず)を通じて、乗務員室内の乗務員との音声の出入力を行うことにより、乗務員室内の乗務員に非常を通報するための装置である。
【0028】
非常通報装置100は、正面視略矩形状の非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における左側(図1(a)左側)に配設されるマイク20と、そのマイク20の上側(図1(a)上側)に配設されるスピーカ30と、そのスピーカ30の右側であって非常ボタン10の上側に配設される制御装置40と、非常ボタン10を露出させつつマイク20、スピーカ30及び制御装置40を収納する収納カバー50とを主に備えて構成されている。
【0029】
非常ボタン10は、客室2内の乗客Pによって押圧される部位である。マイク20は、客室2内の音声が入力される装置である。スピーカ30は、乗務員室内の音声が出力される装置である。制御装置40は、マイク20に入力される音声信号およびスピーカ30により出力される音声信号を制御する装置である。乗客Pによって非常ボタン10が押圧されると、非常ボタン10が押圧された旨が乗務員室に通報され、乗務員室内の乗務員が応答操作を行うことで、客室2内の乗客Pと乗務員室内の乗務員とが通話可能な状態となる。
【0030】
収納カバー50は、マイク20、スピーカ30及び制御装置40を外部の衝撃から保護する部材であり、正面視における中央下部に形成されるボタン開口部51aと、そのボタン開口部51aを被覆するボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの左側に形成されるマイクカバー部52と、そのマイクカバー部52の上側に形成されるスピーカカバー部53とを備えている。
【0031】
ボタン開口部51aは、非常ボタン10を外部に露出させるための開口であり、正面視略矩形状に形成されている。ボタンカバー51bは、非常ボタン10が誤って押圧されることを防止するための部品であり、板状部材からボタン開口部51aを被覆可能に形成されている。ボタンカバー51bは、ボタン開口部51aの上方に取着される軸部材により揺動可能に軸支されつつボタン開口部51aを被覆しており、ボタンカバー51bを揺動させることでボタン開口部51aから非常ボタン10を露出させることができる。
【0032】
マイクカバー部52は、マイク20を被覆する部位であり、収納カバー50の内部と外部とを連通させるマイク開口部52aを備えている。マイク開口部52aは、客室2内の乗客Pの声をマイク20に入力させやすくするための開口であり、乗客Pがマイク開口部52aに向けて声を発することで、乗客Pの声がマイク20に入力されやすくなり、乗務員室内の乗務員は、客室2からの音声が聞き取りやすくなる。
【0033】
スピーカカバー部53は、スピーカ30を被覆する部位であり、収納カバー50の内部と外部とを連通させるスピーカ開口部53aを備えている。スピーカ開口部53aは、スピーカ30から出力される音声を客室2内の乗客Pに聞き取りやすくさせるための開口であり、乗客Pは、スピーカ開口部53aに耳を向けたり近付けたりすることで、スピーカ30から出力される乗務員室内の乗務員の声が聞き取りやすくなる。
【0034】
図1(b)及び図1(c)に示すように、収納カバー50は、正面視中央部分に位置し、収納カバー50が客室2の内壁面に設置された状態において、後述する客室2の側壁部2bの内壁面に略平行に配設されるカバー平行面50aと、そのカバー平行面50aの左右両側(図1(b)左右両側)に連設され左右両側へ向かうにつれて収納カバー50の奥行き寸法(図1(b)上下方向の寸法)が薄くなるように側壁部2bの内壁面に対して傾斜するカバー傾斜面50bとを備え、ボタン開口部51a(図1(a)参照)がカバー平行面50aに形成されると共に、マイクカバー部52及びスピーカカバー部53はカバー平行面50aの左側(図1(b)左側)に位置するカバー傾斜面50bに形成されている。
【0035】
ここで、スピーカ30について説明する。スピーカ30は、平面波の音波が放射される平面状の放射面31を備える板状の平面スピーカで構成される。よって、スピーカ30が円錐形状の放射面(振動板)を有するコーン型スピーカで構成される場合と比べて、放射面31を手前にした場合における奥行き寸法を小さくできるので、その分、スピーカ30を収納する収納カバー50の奥行き寸法を小さくできる。
【0036】
また、コーン型スピーカは、球面波の音波が放射されるので、スピーカとしてコーン型スピーカを採用する場合には、マイク20とスピーカとを近接して配設するとハウリングが発生しやすくなる。従って、ハウリングの発生を抑制するためにはマイク20とスピーカとを離間して配設する必要があり、収納カバーの上下方向における寸法が大型化していた。また、マイク20とスピーカとの離間寸法が、乗客Pの口元と耳元との離間寸法よりも大きくなるので、スピーカから出力される音声を聞きながら話す乗客Pの口元とマイク20との距離が離間しやすくなる。その結果、乗客Pの声がマイク20に入力されにくく、乗務員室内の乗務員が客室2内の乗客Pの話す声を聞き取りにくくなるので、客室2内の乗客Pと乗務員室内の乗務員とがスムーズに会話をすることが困難であった。
【0037】
これに対し、平面スピーカから放射される平面波の音波は、コーン型スピーカから放射される球面波の音波と比べて、指向性が強いので、マイク20とスピーカ30とを近接させて配設した場合であってもハウリングの発生を低減できる。よって、マイク20とスピーカ30とを近接させつつ非常ボタン10及び制御装置40(図1(a)参照)をマイク20及びスピーカ30の横(図1(a)右側)に配設することで、収納カバー50の上下方向(図1(a)上下方向)の寸法が不用意に大きくなることを抑制できる。このように、マイク20とスピーカ30とを近接して配置してもハウリングの発生を抑制できるので、マイク20及びスピーカ30の配設位置に関する設計の自由度を高めることができる。
【0038】
また、マイク20とスピーカ30との離間寸法を、乗客Pの口と耳との離間寸法に対応して設定することができる。具体的には、マイク20とスピーカ30との離間寸法が2cm以上かつ10cm以下に設定されるのが好ましい。これにより、スピーカ30から出力される音声が聞き取りやすい位置で話す乗客Pの声がマイク20に入力されやすくなる。よって、乗務員室内の乗務員は、客室2内の乗客Pが話す声を鮮明に聞き取ることができる。従って、客室2内の乗客Pと乗務員室内の乗務員とがスムーズに会話をすることができる。
【0039】
さらに、スピーカ30は、放射面31を水平方向へ指向させて配設され、スピーカ30の音波が放射面31に対して垂直な方向を指向して放射されるのに対し、マイク20は、スピーカ30の下側に配設される。これにより、マイク20は、スピーカ30の放射面31から放射される音波の放射経路の外側に位置して配設されるので、スピーカ30から出力される音声がマイク20に入力されることを低減でき、ハウリングを抑制できる。
【0040】
また、平面波の音波は球面波の音波と比べて減衰しにくいので、平面波の音波を放射する放射面31を有する平面スピーカを非常通報装置100のスピーカ30として採用することにより、地下鉄等の騒音が大きい鉄道車両の客室2内であっても、乗客Pはスピーカ30から出力される音声を鮮明に聞き取ることができる。
【0041】
さらに、マイク20及びスピーカ30は、カバー平行面50aの左側に連設されるカバー傾斜面50bに沿って配設されると共に、マイク20及びスピーカ30の放射面31が、それぞれマイク開口部52a及びスピーカ開口部53aに対向している。これにより、乗客Pが非常通報装置100に対して左側に位置した状態で非常通報装置100を使用することで、乗客Pにとってスピーカ30から出力される音声を聞き取りやすくできると共に、乗客Pがマイク20に向けて話しやすくなることで、乗客Pの声がマイク20に入力されやすくなるので、乗客Pの声を乗務員室内の乗務員に対して聞き取りやすくさせることができる。このように、マイク20又はスピーカ30をカバー傾斜面50bに沿って、即ち、客室2の内壁面に設置された状態において、マイク20又はスピーカ30を客室2の内壁面に対して傾斜させた状態で配設することで、スピーカ30から出力される音声を所望の位置へ向けて出力することができる。
【0042】
なお、カバー傾斜面50b、マイク20及びスピーカ30は、収納カバー50が設置される客室2の内壁面に対する傾斜角度が30度以内に設定されるのが好ましい。これにより、収納カバー50の奥行き寸法が大きくなることを抑制できる。
【0043】
次に、図2を参照して、非常通報装置100の使用形態について説明する。図2(a)は、非常通報装置100が設置された鉄道車両1の模式図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における鉄道車両1の断面を模式的に表した模式図である。なお、図2(a)は、客室2内から側壁部2bの内壁面に設置された収納カバー50を正面視した状態が模式的に図示されており、図2(a)では、収納カバー50のマイク開口部52a及びスピーカ開口部53aが模式的に図示されている。
【0044】
図2(a)及び図2(b)に示すように、鉄道車両1は、乗客Pを輸送する車両であり、床面を構成する床部2aと、その床部2aの幅方向(図2(a)紙面手前および奥方向)端部に立設される一対の側壁部2bと、床部2aの長手方向(図2(a)左右方向)端部に立設される一対の妻部(図示せず)と、それら一対の側壁部2b及び一対の妻部の上側(図2(a)上側)端部を連設すると共に天井面を構成する天井部2cと、それら床部2a、一対の側壁部2b、一対の妻部および天井部2cにより形成される内部空間である客室2と、側壁部2bに開口形成される複数の乗降口3と、その乗降口3を開閉する複数の扉4と、複数の扉4の間(即ち、複数の乗降口3の間)の側壁部2bに設置される座席5と、その座席5の上方に設置される窓部6と、その窓部6の上方に設置される荷棚7とを主に備えて構成されている。
【0045】
客室2は、乗客Pが乗車するための空間である。乗降口3は、乗客Pが客室2を乗降する際に通過する部位である。扉4は、2つの引戸で構成され、乗降口3を開放する際には、2つの引戸が互いに離間する方向(図2(b)左右方向)へスライドし、2つの引戸は、乗降口3の左右方向(図2(b)左右方向)に位置する側壁部2bの内壁面および外壁面の間に形成される戸袋2b1に収納される。座席5は、乗客Pが着席する部位である。窓部6は、座席5の上方に開口形成される窓枠6aと、窓枠6aに嵌合されるガラス板6bとを備えている。荷棚7は、乗客Pの荷物が積載される部位である。
【0046】
非常通報装置100の収納カバー50は、乗降口3と窓部6との間に位置すると共に、座席5と荷棚7との間の高さに位置する側壁部2bの内壁面に設置される。これにより、乗客Pにとって目に付きやすい位置に収納カバー50を配設できると共に、マイク20及びスピーカ30(図1(c)参照)の配設位置が、直立した状態の乗客P(図2(a)左側の乗客P)の口元および耳元に近い高さとなる位置に収納カバー50を配設できる。よって、客室2内の乗客Pは、スピーカ30から出力される音声を自然な体勢で聞き取ることができると共に、その自然な体勢で話す乗客Pの声がマイク20に入力されやすくなるので、乗務員室内の乗務員は乗客Pの声を鮮明に聞き取ることができる。従って、客室2内の乗客Pと乗務員室内の乗務員とがスムーズに会話をすることができる。
【0047】
ここで、マイク20及びスピーカ30の放射面31(図1(b)参照)が収納カバー50のカバー平行面50aに沿って設置される場合、乗客Pは、スピーカ30からの音声を聞き取るために、収納カバー50のカバー平行面50aに正対して位置する。しかしながら、収納カバー50は、座席5の上方に設置されているので、乗客Pが座席5を避けた位置(即ち、乗客Pが収納カバー50のカバー平行面50aに正対し、収納カバー50から座席5の設置スペース分だけ離間した位置)から直立した状態で話すと、乗客Pと収納カバー50に収納されたマイク20との距離が座席5の設置スペース分だけ離間するため、乗客Pが話す声がマイク20に入力されにくくなる。その結果、乗務員室内の乗務員は客室2内の乗客Pの声を鮮明に聞き取ることができず、乗務員と乗客Pとのスムーズな会話が困難になる。さらに、乗客Pが口元を近接させて話す場合には、乗客Pが前かがみになったり、座席5の上に乗るなどして、乗客Pは直立した状態から体勢を変える必要があり、乗客Pにとって不便である。
【0048】
これに対し、マイク20及びスピーカ30の放射面31が、客室2の側壁部2bの内壁面に対して傾斜された収納カバー50のカバー傾斜面50bに沿って配設されることで、収納カバー50が座席5の上方に設置された場合でも、側壁部2bの内壁面に対して乗降口3が配設される側、即ち、乗客Pがスピーカ開口部53aに正対できてスピーカ30からの音声が聞き取りやすい位置、かつ、座席5を避けつつ直立した状態で収納カバー50のマイク開口部52aに近接できる位置へ、スピーカ30の放射面31を向けて傾斜させることができる。よって、客室2内の乗客Pは、直立した状態から体勢を変えることが不要となり、自然な姿勢のままで非常通報装置100を使用して乗務員室内の乗務員と会話ができるので、非常通報装置100の利便性を向上させることができる。
【0049】
なお、収納カバー50が設置される客室2の側壁部2bには戸袋2b1が形成されるので、収納カバー50を側壁部2bの内壁面から張り出して設置する必要がある。これに対し、非常通報装置100ではスピーカ30が平面スピーカで構成されているので、スピーカ30がコーン型スピーカで構成される場合と比べて、収納カバー50の大型化を抑制して収納カバー50の客室2の側壁部2bの内壁面からの張り出しを小さくできる。よって、客室2内の乗客Pの乗車スペースを大きく確保できる。
【0050】
さらに、カバー傾斜面50b、マイク20及びスピーカ30は、収納カバー50が設置される客室2の側壁部2bの内壁面に対する傾斜角度が30度以内に設定されることで、収納カバー50の奥行き寸法が大きくなることを抑制できるので、その分、収納カバー50が客室2の側壁部2bの内壁面から張り出すことを抑制でき、その結果、客室2内の乗客の乗車スペースを大きく確保できる。
【0051】
また、マイク20とスピーカ30とを近接させつつ非常ボタン10及び制御装置40がマイク20及びスピーカ30の横に配設されるので(図1(a)参照)、収納カバー50の上下方向の寸法を小さくできる。これにより、客室2の内壁面に設置された状態における収納カバー50の下端をより上方に配置できるので、収納カバー50が座席5の上方に設置された場合であっても、座席5に着席している乗客Pが立ち上がる際に、乗客Pの頭を収納カバー50にぶつける危険性を低減させることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、客室2内の乗客Pが非常通報装置100を使用する場合について説明しているが、客室2内の乗務員が非常通報装置100を使用してもよい。
【0053】
次に、図3及び図4を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、制御装置40が収納カバー50に収納されるのに対し、第2実施の形態では、制御装置40を収納カバー250の外部に設置することで、収納カバー250の左右方向における寸法を小さくして収納カバー250の小型化を図っている。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
まず、図3を参照して、第2実施の形態における非常通報装置200について説明する。図3(a)は、第2実施の形態における非常通報装置200の収納カバー250の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb方向視における収納カバー250の上面図である。なお、図3(a)では、非常ボタン10、マイク20、スピーカ30及びボタン開口部51aが、図3(b)では、マイク20及びスピーカ30が想像線で模式的に図示されている。また、図3(b)では、収納カバー250が客室2の側壁部2bに設置された状態が図示されている。
【0055】
図3(a)に示すように、非常通報装置200は、非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における左側(図3(a)左側)に配設されるマイク20と、そのマイク20の上側(図3(a)上側)に配設されるスピーカ30と、非常ボタン10を露出させつつ非常ボタン10、マイク20及びスピーカ30が収納される収納カバー250と、その収納カバー250の外部に設置される制御装置40(図4(a)参照)とを備えている。
【0056】
収納カバー250は、マイク20及びスピーカ30を外部の衝撃から保護する部材であり、ボタン開口部51aと、ボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの左側に形成されるマイクカバー部52と、そのマイクカバー部52の上側に形成されるスピーカカバー部53とを備えている。
【0057】
図3(b)に示すように、収納カバー250は、正面視右側に位置し収納カバー250が設置される客室2の側壁部2bの内壁面に略平行となるカバー平行面50aと、そのカバー平行面50aに左側(図3(b)左側)で連設され左側へ向かうにつれて収納カバー250の奥行き寸法(図3(b)上下方向の寸法)が薄くなるように側壁部2bの内壁面に対して傾斜するカバー傾斜面250bとを備え、ボタン開口部51aがカバー平行面50aに形成されると共に、マイクカバー部52及びスピーカカバー部53がカバー傾斜面250bに形成されている。
【0058】
次に、図4を参照して、非常通報装置200の使用形態について説明する。図4(a)は、非常通報装置200が設置された鉄道車両201の模式図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における鉄道車両201の断面を模式的に図示した模式図である。なお、図4(a)は、客室2内から側壁部2bの内壁面に設置された収納カバー250を正面視した状態が図示されており、図4(a)では、制御装置40、収納カバー250のマイク開口部52a及びスピーカ開口部53aが模式的に図示されている。
【0059】
図4(a)及び図4(b)に示すように、収納カバー250は、乗降口3と窓部6との間に位置すると共に、座席5と荷棚7との間の高さに位置する側壁部2bの内壁面に設置される。また、制御装置40は、客室2に対して天井面2cの裏側(図4(a)上側)に配設されている。このように、制御装置40は、収納カバー250の外部であって、客室2の外部である天井部2cの裏側に設置されているので、客室2内の乗客Pの乗車スペースが制御装置40の設置スペース確保のために小さくなることを回避できる。
【0060】
さらに、収納カバー250には制御装置40を収納するためのスペースが不要となるので、その分、左右方向(図4(b)左右方向)における寸法を小さくして収納カバー250の小型化を図ることができる。よって、収納カバー250が客室2の内壁面に設置された状態において、収納カバー250が座席5の上方に配設される部分を小さくできる。従って、座席5に着席している乗客Pが立ち上がる際に、乗客Pの頭を収納カバー250にぶつけることを確実に低減させることができる。
【0061】
次に、図5及び図6を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、制御装置40が収納カバー50に収納されるのに対し、第3実施の形態では、制御装置40を収納カバー350の外部に設置することで、収納カバー350の上下方向における寸法を小さくして収納カバー350の小型化を図っている。なお、上記各実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
まず、図5を参照して、第3実施の形態における非常通報装置300について説明する。図5(a)は、第3実施の形態における非常通報装置300の収納カバー350の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb方向視における収納カバー350の側面図である。なお、図5(a)では、非常ボタン10、マイク20、スピーカ30及びボタン開口部51aが、図5(b)では、マイク20及びスピーカ30が想像線で模式的に図示されている。また、図5(b)では、収納カバー350が客室2の側壁部2bに設置された状態が図示されている。
【0063】
図5(a)に示すように、非常通報装置300は、非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における左側(図5(a)左側)に配設されるマイク20と、そのマイク20及び非常ボタン10の上側(図5(a)上側)に配設されるスピーカ30と、非常ボタン10を露出させつつマイク20及びスピーカ30を収納する収納カバー350と、その収納カバー350の外部に設置される制御装置40(図4(a)参照)とを備えている。なお、第3実施の形態における制御装置40の設置位置は第2実施の形態における制御装置40と同等であるため、その説明を省略する。
【0064】
収納カバー350は、マイク20及びスピーカ30を外部の衝撃から保護する部材であり、ボタン開口部51aと、ボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの左側に形成されるマイクカバー部52と、そのマイクカバー部52及びボタン開口部51の上側に形成されるスピーカカバー部53とを備えている。
【0065】
図5(b)に示すように、収納カバー350は、正面視下方に位置し収納カバー350が設置される客室2の側壁部2bの内壁面に略平行となるカバー平行面350aと、そのカバー平行面350aに上側(図5(b)上側)で連設され上側へ向かうにつれて収納カバー350の奥行き寸法(図5(b)左右方向の寸法)が薄くなるように側壁部2bの内壁面に対して傾斜するカバー傾斜面350bとを備え、ボタン開口部51a及びマイクカバー部52がカバー平行面350aに形成されると共に、スピーカカバー部53はカバー傾斜面350bに形成されている。
【0066】
なお、マイク20とスピーカ30との離間寸法は、乗客Pの口と耳との離間寸法よりも小さく設定される。具体的には、マイク20とスピーカ30との離間寸法が2cm未満に設定されるのが好ましい。
【0067】
さらに、マイク20は、カバー平行面350aに沿って配設されると共にマイク開口部52aに対向している。また、スピーカ30は、カバー傾斜面350bに沿って配設されると共にスピーカ30の放射面31がスピーカ開口部53aに対抗している。これにより、収納カバー350が客室2の側壁部2bの内壁面に設置された状態において、スピーカ30は水平方向に対して放射面31を上方へ傾斜させた状態で配置される。よって、乗客P(図6(a)参照)の口元および耳元よりも低い位置に設置された収納カバー350内のマイク20に対して話す乗客Pへ向けて音声を出力できる。このように、スピーカ30をカバー傾斜面350bに沿って、即ち、客室2の内壁面に設置された状態において、スピーカ30を客室2の側壁部2bの内壁面に対して傾斜させた状態で配設することで、スピーカ30から出力される音声を所望の位置へ向けて出力することができる。
【0068】
また、マイク20がカバー平行面350aに形成されるマイクカバー部52に沿って配設されると共に、スピーカ30が放射面31をカバー傾斜面350bに形成されるスピーカカバー部53に沿って配設されているので、マイク20は、スピーカ30の放射面31から放射される音波の放射経路の外側に位置し、スピーカ30の放射面31がマイク20に対して離間する方向を指向する。よって、スピーカ30から出力される音声がマイク20に入力されることを確実に低減できるので、ハウリングを確実に抑制できる。
【0069】
次に、図6を参照して、非常通報装置300の使用形態について説明する。図6(a)及び図6(b)は、非常通報装置300が設置された鉄道車両301の模式図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、客室2内から側壁部2bの内壁面に設置された収納カバー350を側面視した状態が模式的に図示されている。また、図6(a)では、車いす利用者の乗客Pが図示されると共に、図6(b)では、車いす非利用者の乗客Pが図示されている。
【0070】
図6(a)に示すように、非常通報装置300は、乗降口3(図2(a)参照)と妻部(図示せず)との間に設けられた車いす利用者向けの乗車スペースに設置されており、車いす利用者が利用できるように、マイク開口部52aが車いす利用者の口元に近い高さとなる位置に収納カバー350が配設されている。
【0071】
図6(b)に示すように、車いす利用者向けに設置された非常通報装置300は、車いす非利用者の乗客Pが使用することも考えられる。この場合、マイク20及びスピーカ30(図5(a)参照)が収納される収納カバー350に対し、車いす非利用者の乗客Pは前かがみになり、収納カバー350内のマイク20に向かって話す必要がある。
【0072】
ここで、スピーカ30は平面スピーカで構成されており、放射面31(図5(b)参照)から放射される音波の指向性が強いので、スピーカ30の放射面31が水平方向を指向して配設されている場合、スピーカ30から出力される音声を聞き取るため、乗客Pはしゃがんだり、大きく前かがみになるなどして、スピーカ30が配設される高さ位置まで乗客Pの耳元を移動させる必要がある。
【0073】
これに対し、収納カバー350内のスピーカ30は、水平方向に対して放射面31を上方へ傾斜させた状態で配置され、スピーカ30からの音声が収納カバー350から上方へ向けて出力されるので、車いす非利用者の乗客Pは、収納カバー350が設置される高さ位置よりも顔(耳)の位置を高くした状態でスピーカ30から出力される音声を聞き取ることができる。よって、車いす非利用者の乗客Pが、スピーカ30から出力される音声を聞き取るために、しゃがんだり、大きく前かがみになりながら、非常通報装置300を使用することを回避できるので、身体への負担を軽減できる。従って、車いす利用者および車いす非利用者の双方の乗客Pの利便性を向上させることができる。
【0074】
なお、収納カバー350内では、マイク20とスピーカ30との離間寸法を乗客Pの口と耳との離間寸法よりも小さく設定しつつスピーカ30からの音声が上方へ向けて出力されるので、口元をマイク開口部52a(図5(a)参照)に近接させて話す車いす利用者の乗客Pの耳元へ向けて音声を出力することができる。即ち、スピーカ30の放射面31が上方へ向けて傾斜されることによってスピーカ30からの音声が車いす利用者の乗客Pの耳元よりも上方へ向けて出力されることを防止できる。よって、車いす利用者の乗客Pにとってスピーカ30から出力される音声が聞き取りにくくなることを回避できる。
【0075】
また、制御装置40(図4(a)参照)は、収納カバー350の外部に設置されるので、収納カバー350には制御装置40を収納するためのスペースが不要となり、その分、上下方向(図6(a)上下方向)における寸法を小さくして収納カバー350の小型化を図ることができる。よって、収納カバー350の大型化を抑制して収納カバー350の客室2の側壁部2bの内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室2内の乗客Pの乗車スペースを大きく確保できる。
【0076】
次に、図7を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、収納カバー50内に1つのマイク20及びスピーカ30が配設されるのに対し、第4実施の形態では、収納カバー450内に2つのマイク20及びスピーカ30が配設される。なお、上記各実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図7(a)は、第4実施の形態における非常通報装置400の収納カバー450の正面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb方向視における収納カバー450の上面図である。なお、図7(a)では、非常ボタン10、マイク20、スピーカ30及びボタン開口部51aが、図7(b)では、マイク20及びスピーカ30が想像線で模式的に図示されている。また、図7(b)では、収納カバー450が客室2の側壁部2bに設置された状態が図示されている。
【0078】
図7(a)及び図7(b)に示すように、非常通報装置400は、非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における左右両側(図7(a)左右両側)にそれぞれ配設される2つのマイク20と、それらマイク20の上側(図7(a)上側)にそれぞれ配設される2つのスピーカ30と、非常ボタン10を露出させつつ2つのマイク20及び2つのスピーカ30を収納する収納カバー450と、その収納カバー450の外部に設置される制御装置40(図4(a)参照)とを備えている。なお、第4実施の形態における制御装置40の設置位置は第2実施の形態における制御装置40と同等であるため、その説明を省略する。
【0079】
収納カバー450は、マイク20及びスピーカ30を外部の衝撃から保護する部材であり、ボタン開口部51aと、ボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの左右両側にそれぞれ形成される2つのマイクカバー部52と、それら2つのマイクカバー部52の上側にそれぞれ形成される2つのスピーカカバー部53とを備えている。
【0080】
収納カバー450は、正面視中央部分に位置し収納カバー450の設置時において、客室2の側壁部2bの内壁面に略平行に配設されるカバー平行面450aと、そのカバー平行面450aの左右両側(図7(b)左右両側)に連設され左右両側へ向かうにつれて収納カバー450の奥行き寸法(図7(b)上下方向の寸法)が薄くなるように側壁部2bの内壁面に対して傾斜するカバー傾斜面450bとを備え、ボタン開口部51aがカバー平行面450aに形成されると共に、マイクカバー部52及びスピーカカバー部53はカバー平行面450aの左右両側(図7(a)左右両側)に位置するカバー傾斜面450bにそれぞれ形成されている。
【0081】
さらに、マイク20及びスピーカ30は、正面視における収納カバー450の左右両側のカバー傾斜面450bに沿って配設されると共に、マイク20及びスピーカ30の放射面31が、それぞれマイク開口部52a及びスピ−カ開口部53aに対向している。これにより、乗客P(図2(a)参照)が収納カバー450に対して左側または右側に位置した状態で非常通報装置400を使用することで、乗客Pにとってスピーカ30から出力される音声を聞き取りやすくできると共に、乗客Pがマイク開口部52aに向けて話しかけやすくなることで、乗務員室内の乗務員にとって乗客Pの声を聞き取りやすくできる。また、スピーカ30をカバー傾斜面450bに沿って、即ち、客室2の内壁面に設置された状態において、スピーカ30を客室2の内壁面に対して傾斜させた状態で配設することで、スピーカ30から出力される音声を所望の位置へ向けて出力することができる。
【0082】
また、2つのマイク20及び2つのスピーカ30が、2つのマイク20及び2つのスピーカ30の放射面31を傾斜方向の異なる左右両側のカバー傾斜面450bに沿って配設されるので、各マイク20及びスピーカ30の放射面31をそれぞれ異なる方向へ指向させて配設することができる。
【0083】
例えば、車いす利用者向けの乗車スペースに設置される場合のように、収納カバーの周辺に座席5が配設されない位置に非常通報装置を設置する場合、収納カバーに対する想定できる乗客Pの乗車位置は一方向に限定されない。即ち、乗客Pが収納カバーに対して多方向から近接可能であるにもかかわらず、収納カバー内のマイク20及びスピーカ30の放射面31が一方向を指向して配設されていると、非常通報装置を使用しようとする乗客Pは、マイク20及びスピーカ30の放射面31が指向する一方向に正対するために移動する必要がある。
【0084】
これに対し、収納カバー450には2つのマイク20及び2つのスピーカ30が収納されており、各マイク20及びスピーカ30の放射面31が異なる方向を指向させて配置されるので、収納カバー450に対する客室2内の乗客Pの乗車位置によってスピーカ30から出力される音声が聞き取りにくくなることを抑制できる。即ち、指向性が強い平面波の音波が放射される平面スピーカをスピーカ30として採用したとしても、放射面31がそれぞれ異なる方向を指向する2つのスピーカ30を備えることで、スピーカ30から出力される音声が鮮明に聞き取れる範囲を広範囲にすることができる。
【0085】
次に、図8及び図9を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態では、マイク20、スピーカ30及び制御装置40が1つの収納カバー50に収納されるのに対し、第5実施の形態では、マイク20が第1収納カバー550に収納されると共に、スピーカ30及び制御装置40が第1収納カバー550の外部であって、天井部2cの裏側に設置される。なお、上記各実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
まず、図8を参照して、第1収納カバー550及び第2収納カバー560について説明する。図8(a)は、第5実施の形態における非常通報装置500の第1収納カバー550の正面図であり、図8(b)は、非常通報装置500の第2収納カバー560の正面図であり、図8(c)は、図8(b)のVIIIc方向視における第2収納カバー560の側面図である。なお、図8(a)では、非常ボタン10、マイク20及びボタン開口部51aが、図8(b)及び図8(c)では、スピーカ30及び制御装置40が想像線で模式的に図示されている。また、図8(c)では、第2収納カバー560が客室2の天井部2cに設置された状態が図示されている。
【0087】
図8(a)から図8(c)に示すように、非常通報装置500は、非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における上側(図8(a)上側)に配設されるマイク20と、非常ボタン10を露出させつつ非常ボタン10及びマイク20が収納される第1収納カバー550と、その第1収納カバー550の外部に設けられる第2収納カバー560と、その第2収納カバー560に収納されるスピーカ30と、そのスピーカ30と共に第2収納カバー560に収納される制御装置40とを備えている。
【0088】
第1収納カバー550は、マイク20を外部の衝撃から保護する略直方体形状の部材であり、ボタン開口部51aと、ボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの上側に形成されるマイクカバー部52とを備えている。
【0089】
第2収納カバー560は、スピーカ30及び制御装置40を外部の衝撃から保護する部材であり、スピーカ30の放射面31を被覆するスピーカカバー部563と、そのスピーカカバー部563に開口形成されると共に第2収納カバー560の内部と外部とを連通させるスピーカ開口部563aとを備えている。スピーカ開口部563aは、スピーカ30から出力される音声を客室2内の乗客P(図9(a)参照)に聞き取りやすくさせるための開口であり、乗客Pは、スピーカ開口部563aに耳を向けたりすることで、スピーカ30から出力される乗務員室内の乗務員の声が聞き取りやすくなる。
【0090】
第2収納カバー560内において、スピーカ30は、放射面31をスピーカ開口部563aに対向させて配設されると共に、制御装置40は、スピーカ30に対してスピーカ開口部563aの反対側(図8(c)上側)に配設される。
【0091】
第2収納カバー560は、客室2の天井部2cに形成される開口からスピーカ開口部563aを露出させつつ、スピーカ30及び制御装置40が客室2に対する天井部2cの裏側(図8(c)上側)に収納された状態で客室2内の内壁面に設置される。このように、スピーカ30及び制御装置40は、客室2の外部である天井面2cの裏側に収納されているので、スピーカ30及び制御装置40の設置スペースを確保することで客室2内の乗客Pの乗車スペースが小さくなることを回避できる。
【0092】
よって、スピーカ30及び制御装置40を第1収納カバー550の外部に設置できるので、乗客Pの乗車スペースに設置する第1収納カバー550の小型化を図ることができる。従って、第1収納カバー550が客室2の内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室2内の乗客の乗車スペースを大きく確保できる。
【0093】
次に、図9を参照して、非常通報装置500の使用形態について説明する。図9(a)は、非常通報装置500が設置された鉄道車両501の模式図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb方向視における鉄道車両501の模式図である。なお、図9(a)は、客室2内から側壁部2bの内壁面に設置された第1収納カバー550を正面視した状態が図示されており、第1収納カバー550のマイク開口部52aが模式的に図示されている。
【0094】
図9(a)及び図9(b)に示すように、第1収納カバー550は、乗降口3と妻部(図9(a)左側、図示せず)との間に設けられた車いす利用者向けの乗車スペースに設置されており、車いす利用者が利用できるように、マイク開口部52aが車いす利用者の口元に近接した高さとなる位置に第1収納カバー550が配設されている。なお、第1収納カバー550は、車いす利用者向けの乗車スペースの内壁面に設置される手すり8に近接した位置、例えば、手すり8の上方や手すり8と乗降口3との間などに位置する側壁部2bの内壁面に設置するのが好ましい。これにより、車いす利用者の乗客Pは手すり8に捕まりながら非常通報装置500を使用できるので、車いす利用者の乗客Pの非常通報装置500の利便性を向上させることができる。
【0095】
第2収納カバー560は、スピーカ開口部563aを露出させつつ床部2aへ指向させた状態で、客室2に対する天井部2cの裏側(図9(a)上側)に配設される。このとき、第2収納カバー560は、第1収納カバー550と妻部との間であって、妻部よりも第1収納カバー550へ近接した位置、即ち、第1収納カバー550内に収納されたマイク20(図8(a)参照)に向かって話す際における乗客Pの乗車位置として想定される位置へスピーカ開口部563aを指向させて設置される。これにより、スピーカ30(図8(b)参照)からの音声は天井部2cから乗客Pが位置する床部2aへ向けて出力されるので、非常通報装置500を使用する客室2内の乗客Pは、乗客Pの身長の高低に関係なく、また、乗客Pの車いすの使用有無に関係なく、スピーカ30から出力される音声を鮮明に聞き取ることができる。
【0096】
特に、スピーカ30として指向性の強い平面波の音波が放射される平面スピーカが用いられており、平面波の音波は球面波の音波よりも減衰しにくいので、乗客Pと離間した位置にスピーカ30を設置しても、乗客Pはスピーカ30から出力される音声を鮮明に聞き取ることができる。
【0097】
次に、図10及び図11を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態では、マイク20、スピーカ30及び制御装置40が1つの収納カバー50に収納されるのに対し、第6実施の形態では、マイク20が第1収納カバー550に収納されると共に、スピーカ30及び制御装置40が第1収納カバー550の外部であって、荷棚7と同等または荷棚7よりも高い位置に設置される。なお、上記各実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
まず、図10を参照して、第2収納カバー660について説明する。図10(a)は、第6実施の形態における非常通報装置600の第2収納カバー660の正面図であり、図10(b)は、図10(a)のXb方向視における第2収納カバー660の側面図である。なお、図10(a)及び図10(b)では、スピーカ30が想像線で模式的に図示されている。また、図10(b)では、第2収納カバー660が客室2の側壁部2bに設置された状態が図示されている。
【0099】
図10(a)及び図10(b)に示すように、非常通報装置600は、非常ボタン10と、マイク20と、第1収納カバー550(図8(a)参照)と、その第1収納カバー550の外部に設けられる第2収納カバー660と、その第2収納カバー660に収納されるスピーカ30と、第1収納カバー550及び第2収納カバー660の外部に設置される制御装置40(図11参照)とを備えている。なお、第6実施の形態における制御装置40の設置位置は第2実施の形態における制御装置40と同等であるため、その説明を省略する。
【0100】
第2収納カバー660は、スピーカ30を外部の衝撃から保護する部材であり、スピーカ30の放射面31を被覆するスピーカカバー部663と、そのスピーカカバー部663に開口形成されると共に第2収納カバー660の内部および外部を連通させるスピーカ開口部663aとを備えている。
【0101】
スピーカカバー部663は、第2収納カバー660が客室2の側壁部2bの内壁面に設置された状態において、水平方向に対して下方を指向するように形成されている。これにより、スピーカ30の放射面31が水平方向に対して下方(図10(b)下方向)を指向して配設されるので、スピーカ30からの音声は上方から下方へ向けて出力される。
【0102】
スピーカ開口部663aは、スピーカ30から出力される音声を客室2内の乗客Pに聞き取りやすくさせるための開口であり、乗客Pは、スピーカ開口部663aに耳を向けたりすることで、スピーカ30から出力される乗務員室内の乗務員の声が聞き取りやすくなる。
【0103】
次に、図11を参照して、非常通報装置600の使用形態について説明する。図11は、非常通報装置600が設置された鉄道車両601の模式図である。なお、図11は、客室2内から側壁部2bの内壁面に設置された第1収納カバー550を正面視した状態が図示されており、第1収納カバー550のマイク開口部52a及び第2収納カバー660のスピーカ開口部663aが模式的に図示されている。
【0104】
図11に示すように、第1収納カバー550は、乗降口3と客室2の妻部(図11左側、図示せず)との間に設けられた車いす利用者向けの乗車スペースに設置されており、車いす利用者が利用できるように、マイク開口部52aが車いす利用者の口元に近い高さとなる位置に第1収納カバー550が配設されている。
【0105】
第2収納カバー660は、第1収納カバー550と乗降口3との間に位置すると共に、荷棚7と同等の高さに位置する側壁部2bの内壁面に設置されている。よって、スピーカ30(図10(a)参照)は、乗客Pの頭上に設置されるので、スピーカ30が収納される第2収納カバー660の設置スペースを確保することで客室2内の乗客Pの乗車スペースが小さくなることを回避できる。
【0106】
また、第2収納カバー660は、第2収納カバー660の正面視における左側(図11左側)が右側よりも上方に位置した状態で客室2の側壁部2bの内壁面に設置されている。これにより、スピーカ30は、第1収納カバー550と客室2の妻部との間であって、客室2の妻部よりも第1収納カバー550に近接した位置、即ち、第1収納カバー550内に収納されたマイク20に向かって話す際における乗客Pの乗車位置として想定される位置へスピーカ開口部663aを指向させて設置される。これにより、スピーカ30からの音声は乗客Pの乗車位置へ向けて出力されるので、スピーカ30から出力される音声を乗客Pによって聞き取りやすくできる。
【0107】
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0108】
例えば、上記各実施の形態で説明した収納カバー50,250,350,450、第1収納カバー550及び第2収納カバー560,660の設置位置は一例であり、他の位置に設置することは当然可能である。
【0109】
さらに、上記各実施の形態で説明した各構成を、他の実施の形態で説明した各構成と入れ替えてもよく、また、各実施の形態で説明した各構成に、他の実施の形態で説明した各構成を組み合わせたり、追加したりしてもよい。例えば、第1実施の形態で説明した非常通報装置100を、第5及び第6実施の形態で説明した非常通報装置500,600が設置された乗降口3と客室2の妻部との間に設けられた車いす利用者向けの乗車スペースに設置してもよい。
【0110】
また、第4実施の形態では、収納カバー450内に2つのマイク20及び2つのスピーカ30が収納される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、マイク20及びスピーカ30を3つ以上収納してもよい。この場合、マイク20又はスピーカ30の個数に応じてマイク開口部52a及びスピーカ開口部53aを設けてもよく、2つ以上のマイク20又はスピーカ30に1つのマイク開口部52a又はスピーカ開口部53aを設けてもよい。
【0111】
さらに、上記各実施の形態では、非常通報装置100,200,300,400,500,600が、マイク20及びスピーカ30を同数ずつ備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、マイク20及びスピーカ30はそれぞれ少なくとも1つ以上備えていれば良く、マイク20の数とスピーカ30の数とが異なっていてもよい。
【0112】
また、上記第1及び第2実施の形態では、収納カバー50,250が客室2の側壁部2bの内壁面に設置された状態において、スピーカ30を客室2の内壁面に対して傾斜させた状態で配設することで、スピーカ30から出力される音声を所望の位置へ向けて出力する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スピーカ30を客室2の内壁面に沿って配設しつつ、スピーカ30の放射面31から放射される音波を収納カバーの内部に設けられた板状部材で反射させ、音波の放射方向を変えることで、スピーカ30から出力される音声を所望の位置へ出力させてもよい。以下において、この変形例における収納カバーについて、図12を参照して説明する。
【0113】
図12(a)は、変形例における非常通報装置700の収納カバー750の正面図であり、図12(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線における収納カバー750の断面図である。なお、図12(a)では、非常ボタン10、マイク20、スピーカ30及びボタン開口部51aが想像線で模式的に図示されている。また、図12(b)では、収納カバー750が客室2の側壁部2b(図2(a)参照)に設置された状態が図示されている。
【0114】
図12(a)及び図12(b)に示すように、非常通報装置700は、非常ボタン10と、その非常ボタン10の正面視における左側(図12(a)左側)に配設されるマイク20と、そのマイク20及び非常ボタン10の上方に配設されるスピーカ30と、非常ボタン10を露出させつつ非常ボタン10、マイク20及びスピーカ30を収納する収納カバー750と、その収納カバー750の外部に設置される制御装置40(図4(a)参照)とを備えている。なお、制御装置40の設置位置は第2実施の形態における制御装置40と同等であるため、その説明を省略する。
【0115】
収納カバー750は、マイク20及びスピーカ30を外部の衝撃から保護する部材であり、収納カバー750が客室2の内壁面に設置された状態において、マイク20及びスピーカ30は、客室2の側壁部2bの内壁面に沿って配設されている。
【0116】
また、収納カバー750は、ボタン開口部51aと、ボタンカバー51bと、ボタン開口部51aの左側に形成されるマイクカバー部52と、そのマイクカバー部52の上側に形成されるスピーカカバー部753とを備えている。
【0117】
スピーカカバー部753は、スピーカ30を被覆する部位であり、正面視略矩形状の開口を有するスピーカ開口部753aと、そのスピーカ開口部753aの開口の内壁面のうちの一面に連設される反射板753bとを備えている。
【0118】
スピーカ開口部753aは、収納カバー750の内部と外部とを連通させる部位であり、スピーカカバー部753の板厚方向に対して所定の角度で傾斜させつつ複数の開口が穿設されている。反射板753bは、スピーカカバー部753の内壁面から収納カバー750の内部へ向けて所定の角度で傾斜させつつ立設される板状の部材である。また、反射板753bは、スピーカ開口部753aの開口の幅方向一側(図12(b)右側)の内周面に連設されると共に、反射板753bが連設される開口に対して離間する側(図12(b)右側)へ向けて傾斜している。
【0119】
次に、スピーカ30の放射面31から放射される音波の放射方向について説明する。スピーカ30の放射面31から放射される音波は、放射面31に対して垂直方向に直進するので、所定時間経過後、反射板753bに衝突する。このとき、音波は反射板753bに衝突することで屈折し、音波の放射方向はスピーカ開口部753aが形成される方向へ向けられる。
【0120】
これにより、スピーカ30が客室2の側壁部2bの内壁面に沿って配設された場合であっても、スピーカ30からの音声を客室2の内壁面に対して傾斜した方向へ向けて出力することができる。この場合、スピーカ30を客室2の内壁面に対して傾斜させることが不要なので、スピーカ30を収納する収納カバー750の奥行き寸法(図12(b)上下方向寸法)が大きくなることを抑制できる。よって、収納カバー750の大型化を抑制して収納カバー750の客室2の内壁面からの張り出しを小さくできるので、客室2内の乗客P(図4(a)参照)の乗車スペースを大きく確保できる。
【符号の説明】
【0121】
100,200,300,400,500,600,700 非常通報装置(鉄道車両非常通報装置)
1,201,301,501,601 鉄道車両
2 客室
2a 床部(床面を構成する部材)
2b 側壁部(内壁面を構成する部材)
2c 天井部(天井面を構成する部材)
3 乗降口
4 扉
5 座席
6 窓部
6a 窓枠
6b ガラス板
7 荷棚
20 マイク
30 スピーカ
31 放射面
40 制御装置
50,250,350,450,750 収納カバー
550 第1収納カバー(収納カバー)
P 乗客

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が乗車する客室と、乗務員が乗車する乗務員室とを備える鉄道車両の前記客室に設置され、前記乗務員室に設置され前記客室と音声の出入力を行う音声出入力装置を通じて前記乗務員室との音声の出入力を行う鉄道車両用非常通報装置であって、
スピーカと、マイクと、そのマイクから入力される音声信号および前記スピーカにより出力される音声信号を制御する制御装置と、少なくとも前記マイクを収納すると共に前記客室の内壁面に設置される収納カバーとを備え、前記乗務員室の前記音声出入力装置から入力される音声信号を前記制御装置の制御によって前記客室の前記スピーカから出力し、前記客室の前記マイクに入力される音声信号を前記制御装置の制御によって前記乗務員室の前記音声出入力装置に出力する鉄道車両用非常通報装置において、
前記スピーカは、平面波の音波が放射される平面状の放射面を備える板状の平面スピーカで構成され、
前記マイクは、前記スピーカの前記放射面から放射される音波の放射経路の外側に配設されることを特徴とする鉄道車両用非常通報装置。
【請求項2】
前記スピーカは、前記収納カバーに収納されると共に、前記客室の内壁面に対して前記放射面を傾斜させた状態で配設されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項3】
前記スピーカは、前記客室の内壁面に対する前記放射面の傾斜角度が30度以内に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項4】
前記客室は、前記乗客が乗降するために開口される複数の乗降口と、その乗降口を開閉する引戸として構成される複数の扉と、その複数の扉の間に設置され前記乗客が着席する座席と、その座席の上方で開口する窓枠およびその窓枠に嵌合されるガラス板を有する窓部と、その窓部の上方に設置され荷物が積載される荷棚とを備え、
前記収納カバーは、前記乗降口と前記窓部との間に位置すると共に前記座席よりも上方、かつ、前記荷棚よりも下方に位置する前記客室の内壁面に設置され、
前記スピーカは、前記客室の内壁面に対して前記放射面を側方へ傾斜させた状態で配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項5】
前記スピーカは、水平方向に対して前記放射面を前記客室の上方へ傾斜させた状態で配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記収納カバーに収納されると共に前記マイク又は前記スピーカの側方に配設されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項7】
前記客室は、前記乗客が乗降するために開口される複数の乗降口と、その乗降口を開閉する引戸として構成される複数の扉と、その複数の扉の間に設置され前記乗客が着席する座席と、その座席の上方で開口する窓枠およびその窓枠に嵌合されるガラス板を有する窓部と、その窓部の上方に設置され荷物が積載される荷棚とを備え、
前記収納カバーは、前記乗降口と前記窓部または前記客室の妻部との間に位置すると共に前記荷棚よりも下方に位置する前記客室の内壁面に設置され、
前記スピーカ又は前記制御装置の少なくとも一方は、前記収納カバーの外部であって前記荷棚と同等以上の高さ位置に設置されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項8】
前記スピーカは、前記収納カバーの外部であって前記荷棚と同等以上の高さ位置に配設されると共に、前記放射面を前記収納カバーと前記乗降口との間へ指向させた状態で設置されることを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項9】
前記スピーカは、前記客室の天井面に配設されると共に、前記放射面を前記客室の床面へ指向させた状態で設置されることを特徴とする請求項8記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項10】
前記スピーカを複数備え、
それら複数のスピーカが、前記放射面をそれぞれ異なる方向へ指向させて配設されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の鉄道車両用非常通報装置を備える鉄道車両。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−240536(P2012−240536A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111780(P2011−111780)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】