説明

鉄道車両

【課題】乗客の快適性を損なわず、且つ、乗務員及び乗客に負担を強いることなく荷物の盗難を防止できる鉄道車両を提供する。
【解決手段】鉄道車両1には客室2と荷物室12,13とが設けられ、客室2と荷物室12,13とは仕切壁16,17によって仕切られている。また、鉄道車両1は制御部32を備えている。制御部32は、仕切壁16,17を、客室2から荷物室12,13を見通せる第1の状態と、客室2から荷物室12,13を見通せない第2の状態とに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両として、座席が設置された客室とスーツケース等を収納する荷物室とが仕切壁によって分離された車両が知られている。このような鉄道車両では、乗客は大きな荷物を客室内に持ち込まずに済むため、座席を広々と使うことができる。
【0003】
その一方で、上記鉄道車両では、仕切壁が不透明な化粧板からなることが多く、荷物室が客室から死角になりやすいため、荷物の盗難への対策が必要になる。荷物の盗難を防ぐ技術としては、荷物室をカメラで撮影してその画像を運転席のディスプレイに表示させる装置(例えば特許文献1参照)や、荷物に通信タグを取り付けておき、乗客の携帯端末から荷物追跡開始の制御情報が入力されると通信タグの位置を追跡し管理するシステム(例えば特許文献2参照)等がある。
【特許文献1】特開平8−238976号公報
【特許文献2】特開2005−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、乗務員がディスプレイに注意を払わなくてはならないため、乗務員の負担が大きくなるという問題がある。特許文献2記載の技術では、乗客が自分の荷物に通信タグを取り付けたり、携帯端末から情報の入力をしなければならないため、乗客の負担が大きくなるという問題がある。
【0005】
その他の方法としては、仕切壁そのものを無くすことも考えられる。しかしながら、仕切壁を無くすと、荷物を出し入れする際や乗客乗員が通行する際の騒音が客室に響くため、乗客の快適性が損なわれるおそれがある。また、仕切壁に透明部材を用いることも考えられるが、こうした場合にも、荷物室付近を通行する乗客乗員が常に目に入るために仕切壁付近に座る乗客は落ち着かない気分になる。よって、やはり乗客の快適性を十分に担保することが困難になる。
【0006】
そこで本発明は、乗客の快適性を損なわず、且つ、乗務員及び乗客に負担を強いることなく荷物の盗難を防止できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、客室と、荷物室と、客室と荷物室とを仕切る仕切壁と、を備えた鉄道車両であって、仕切壁を、客室から荷物室を見通せる第1の状態と客室から荷物室を見通せない第2の状態とに切り替える制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
この鉄道車両によれば、仕切壁を客室から荷物室を見通せる状態に切り替えられるので、乗客は客室に居ながらにして荷物室の荷物をチェックできる。よって、荷物に特別なタグ等を取り付けずとも、乗客による荷物の管理が容易にできる。乗客自身による荷物の管理が容易になるので、荷物室の監視に伴う乗務員の負担を減らすことができる。よって、乗務員及び乗客双方に負担を強いることなく荷物の盗難を防止できる。また、仕切壁を客室から荷物室を見通せない状態に切り替えることもできるので、仕切壁付近に座る乗客も、荷物室付近を通行する乗客乗員が常時目に入るということがなくなるため、快適に過ごすことができる。また、仕切壁を備えることで、荷物室の騒音が客室に響くことも防げる。
【0009】
また、本発明の鉄道車両では、荷物室に人が入ったことを検知する人感センサを備え、制御手段は、人感センサによって荷物室に人が入ったことが検知されたときに仕切壁を第2の状態から第1の状態に切り替えると好適である。これにより、荷物室に人が入ったときに、客室から荷物室を見通せるようになるため、荷物室からの盗難を確実に防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の鉄道車両では、荷物室における重量の変化を検知する重量センサを更に備え、制御手段は、重量センサによって荷物室の重量の変化が検知されたときに仕切壁を第2の状態から第1の状態に切り替えると好適である。これにより、荷物室の重量が変化したとき、すなわち荷物室にて荷物の出し入れがあったときに客室から荷物室を見通せるようになるため、荷物室からの盗難を確実に防ぐことができる。
【0011】
また、本発明の鉄道車両では、制御手段は、仕切壁を第2の状態から第1の状態に切り替えた後、所定時間が経過したときに仕切壁を第1の状態から第2の状態に切り替えると好適である。この場合、客室から荷物室を見通せる状態を一時的なものとし、通常は客室から荷物室は見通せない状態にすることができるので、仕切壁付近に座る乗客の快適性をより確実に確保できる。
【0012】
また、本発明の鉄道車両では、自車両の現在位置を検出する位置検出手段を更に備え、制御手段は、位置検出手段によって自車両の現在位置が次の停車駅から所定の距離内であることが検出されたときに仕切壁を第2の状態から第1の状態に切り替えると好適である。荷物の盗難は、降車準備をする乗客に紛れて行われることが多いが、本発明によれば、停車駅に着く少し前から次の停車駅に停車するまでの間、客室から荷物室を見通すことが可能になるので、盗難の発生をより確実に防止できる。
【0013】
また、本発明の鉄道車両では、制御手段は、位置検出手段によって自車両の位置が次の停車駅を過ぎたことが検出されたときに仕切壁を第1の状態から第2の状態に切り替えると好適である。この場合、次の停車駅を過ぎると客室から荷物室は見通せない状態にすることができる。よって、客室側から荷物室を見通せる状態を一時的なものとし、通常は客室から荷物室は見通せない状態にすることができるので、仕切壁付近に座る乗客の快適性をより確実に確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乗客の快適性を損なわず、且つ、乗務員及び乗客に負担を強いることなく荷物の盗難を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る鉄道車両の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両を示す図である。図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両1の客室の出入口を示す図である。
【0017】
図1に示すように、鉄道車両1は、鉄道車両1の長手方向に沿って延びる客室2と、客室2の一端に位置する乗降デッキ4とを有している。客室2は、通路5と一対の座席エリア6a,6bとに分けられており、通路5及び座席エリア6a,6bは鉄道車両1の長手方向に沿ってそれぞれ延びている。座席エリア6aと座席エリア6bとは通路5を挟んで位置し、各座席エリア6a,6bには複数の座席8が設置されている。
【0018】
客室2は乗降デッキ4に隣接しており、乗降デッキ4には鉄道車両1の乗降口10a,10bが位置している。客室2と乗降口10a,10bとの間には、乗客の荷物を収納するための荷物室12,13が設けられている。荷物室12,13と乗降口10a,10bとは壁部14,15によって仕切られ、荷物室12,13と客室2とは仕切壁16,17によって仕切られている。壁部14,15と仕切壁16,17とは対向しており、壁部14,15と仕切壁16,17との間には荷物が載置される棚板18が架け渡されている。
【0019】
壁部14,15の仕切壁16,17と対向する面には、荷物室12,13に人が入ったことを検知する人感センサ20,21が設置されている。人感センサ20,21としては、赤外線や超音波等を利用した公知のものを用いることができる。人感センサ20,21は、荷物室12,13に人がいる場合には、後述する制御部32に対して検知信号を出力する。荷物室12,13から人がいなくなると、人感センサ20,21は検知信号の出力を停止する。
【0020】
なお、人感センサ20,21の設置場所は上記に限られず、荷物室12,13にて荷物を出し入れする人を検知する一方で荷物室12,13の前を通過するだけの人については検知しないような場所であればよい。より具体的には、仕切壁16,17の壁部14,15と対向する面や、荷物室12,13の天井が挙げられる。
【0021】
仕切壁16は、透明状態(第1の状態)・不透明状態(第2の状態)に切り替え自在な壁であって、かかる切り替えは後述する制御部32によって行われる。なお、「透明状態」とは、仕切壁16を介して客室2から乗降デッキ4を十分に見通せる状態を指す。一方、「不透明状態」とは、客室2から乗降デッキ4を実質的に見通せない状態を指す。
【0022】
より具体的には、仕切壁16は、2枚のパネル16a,16bを所定の間隔をあけて重ね合わせてなり、パネル16a,16bはそれぞれ、一対の透明ガラス板の間に、液晶分子の配向方向が変わることにより透明性が変化する液晶フィルムを挟んだものである。仕切壁16は制御部32に電気的に接続されており、液晶分子の配向方向は制御部32から受け取った指示信号によって決められる。制御部32から受け取った指示信号が第1の指示信号の場合には、液晶分子は液晶フィルムが透明状態になるような向きに配向される。制御部32から受け取った指示信号が第2の指示信号の場合には、液晶分子は液晶フィルムが不透明状態になるような向きに配向される。このように制御部32からの指示信号に応じて液晶フィルムの透明性が変化するために、仕切壁16は制御部32による透明・不透明の切り替え制御が可能なものになる。
【0023】
仕切壁17は、2枚のパネル17a,17bを所定の隙間をあけて重ね合わせてなる。パネル17a,17bは、パネル16a,16bと同様の構成を有している。そのため、仕切壁17もまた、後述する制御部32によって透明状態・不透明状態に切り替えられる。
【0024】
客室2の通路5と乗降デッキ4とは片引戸タイプの客室用扉22で仕切られ、客室用扉22は、仕切壁16のパネル16aと同様のパネル(図示せず)で構成されている。客室用扉22のパネルは中央部がくり抜かれており、当該中央部に透明ガラス板28が嵌め込まれている(図2参照)。
【0025】
図2に示すように、鉄道車両1は制御部(制御手段)32を備えている。制御部32は、人感センサ20,21によって荷物室12,13における人の出入りを検知されたときに仕切壁16,17及び客室用扉22を透明状態・不透明状態に切り替える。
【0026】
より具体的には、制御部32は、人感センサ20,21、仕切壁16,17、及び客室用扉22に電気的に接続されている。制御部32は、人感センサ20,21のいずれか少なくとも一方から検知信号を受け取ると、検知信号を受け取っている間は、仕切壁16,17及び客室用扉22に対してこれらを透明状態にするための第1の指示信号を出力する。人感センサ20,21のいずれからも検知信号を受け取っていない状態では、制御部32は、仕切壁16,17及び客室用扉22に対してこれらを不透明状態にするための第2の切替信号を出力する。
【0027】
続いて、上述した鉄道車両1における動作を説明する。
【0028】
図2に示すように、荷物室12,13内に乗客がいない場合、人感センサ20,21は人を検知しないため、制御部32に対して検知信号を出力しない。制御部32は、検知信号を受け取っていない時は、仕切壁16,17及び客室用扉22に対して第2の指示信号を出力し続ける。これにより仕切壁16,17は不透明状態となり、客室用扉22は透明ガラス板28が嵌め込まれた中央部分を除いて不透明状態になる。そのため、荷物室12,13内に乗客がいないときは、客室2から荷物室12,13は見通すことができない。
【0029】
図3に示すように、荷物室12に乗客が入ってきた場合には、人感センサ20がこれを検知し制御部32に対して検知信号を出力する。検知信号を受け取った制御部32は、仕切壁16,17及び客室用扉22に送る指示信号を、第2の指示信号から第1の指示信号に切り替える。指示信号が第2の指示信号から第1の指示信号に変わったことにより、仕切壁16,17及び客室用扉22は不透明状態から透明状態に切り替えられる。
【0030】
人感センサ20は、荷物室12に人がいる間は、制御部32に対して検知信号を出力し続ける。そして制御部32は、人感センサ20から検知信号を受け取っている間は、仕切壁16,17及び客室用扉22に対して第1の指示信号を出力し続ける。仕切壁16,17及び客室用扉22は、制御部32から第1の指示信号を受け取っている間は、透明状態を維持する。したがって、荷物室12に人が入ってから出て行くまでの間は、客室2から荷物室12,13を見通すことができ、荷物室12から荷物を出そうとする乗客や自分の荷物の安全を座席8に居ながら視認することができる。
【0031】
その後、荷物室12から人がいなくなると、人感センサ20から制御部32に対する検知信号の出力が停止する。これにより検知信号が受け取れなくなった制御部32は、仕切壁16,17及び客室用扉22に送る指示信号を、第1の指示信号から第2の指示信号に切り替える。指示信号が第1の指示信号から第2の指示信号に変わったことにより、仕切壁16,17及び客室用扉22は透明状態から不透明状態に切り替えられる。制御部32は、人感センサ20から再び検知信号を受け取るまで、第2の指示信号を出力し続ける。したがって、荷物室12から人が出て行った後は、荷物室12,13に再び人が入ってくるまで、客室2から荷物室12,13は見通すことができなくなる。
【0032】
上述したように、本実施形態の鉄道車両1によれば、客室2と荷物室12,13とを仕切る仕切壁16,17を制御部32の制御によって透明状態にすることができるため、客室2から荷物室12,13の様子を見ることができる。よって、乗客は客室2に居ながらにして荷物室12,13に置いた荷物をチェックできるため、荷物に特別なタグ等を取り付る必要がなくなる。また、乗客自身による荷物の管理が容易になるため、乗務員が荷物室12を監視する必要がなくなる。よって、乗務員及び乗客双方に負担を強いることなく荷物の盗難を防止できる。
【0033】
更に本実施形態では、仕切壁16,17を、制御部32の制御によって不透明状態に切り替えることもできる。よって、荷物室12に人が出入りしない限りは、仕切壁16,17を不透明状態にしておくことが可能になる。これにより、仕切壁16,17付近の座席8に座る乗客は、荷物室12の横を通行する乗客乗員が常に目に入るということがなくなるため、快適に過ごすことができる。また、仕切壁16,17を備えることで、荷物室12の騒音が客室に響くことも防げる。
【0034】
また本実施形態では、人感センサ20によって荷物室12,13に人が入ったことが検知されると、制御部32が仕切壁16,17及び客室用扉22を透明状態に切り替える。これにより、荷物室12,13に人が入ったときに客室2から荷物室12,13を見通せるようになるため、荷物室12,13からの盗難を確実に防ぐことができる。
【0035】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両40の客室の出入口を示す図である。
【0036】
本実施形態では、第1実施形態における人感センサ20,21の代わりに位置検出センサ(位置検出手段)42を備えている。位置検出センサ42は鉄道車両1の現在位置を検出するものであって、位置検出センサ42としては速度発電機やGPSシステムといった公知の技術を適用することができる。位置検出センサ42は、鉄道車両1の現在位置を検出すると、当該位置を示す位置情報を制御部32に出力する。位置検出センサ42は、所定の時間間隔で鉄道車両1の現在位置を検出し、検出の都度、位置情報を制御部32に出力する。
【0037】
制御部32は、位置検出センサ42から位置情報を逐次受け取る。制御部32は、受け取った位置情報に基づき、鉄道車両1の現在位置が次の停車駅から所定の距離内であるか否かを判断する。また、当該次の停車駅を過ぎたか否かについても判断する。なお、「次の停車駅から所定の距離内である」とは、例えば次の停車駅から10km内であることを指す。
【0038】
制御部32は、鉄道車両1の現在位置が次の停車駅から所定の距離以上離れていると判断した場合には、仕切壁16,17及び客室用扉22に対してこれらを不透明状態にするための第2の指示信号を出力する。一方、鉄道車両1の現在位置が次の停車駅から所定の距離内であると判断した場合には、仕切壁16,17及び客室用扉22に対してこれらを透明状態にするための第1の指示信号を出力する。制御部32は、かかる停車駅を過ぎると、第1の指示信号に代わって第2の指示信号を出力する。制御部32は、次の位置情報を受け取るまでは、直前に出力した指示信号を出力し続ける。
【0039】
続いて、上述した鉄道車両40における動作を説明する。
【0040】
まず、鉄道車両40が次の停車駅から遠く離れた場所を進行している状態を考える。制御部32は、位置検出センサ42によって出力された位置情報に基づき、鉄道車両40が次の停車駅から所定の距離以上離れているか否かを判断する。この場合は次の停車駅から所定の距離以上離れていると判断し、仕切壁16,17及び客室用扉22に対して第2の指示信号を出力する。これにより仕切壁16,17は不透明状態になり、客室用扉22は透明ガラス板28が嵌め込まれた中央部分を除いて不透明状態になる。そのため、客室2から荷物室12,13は見通すことができない。
【0041】
制御部32は、鉄道車両40が次の停車駅から所定の距離に到達したと判断するまでは、第2の指示信号を出力し続けることになる。そのため、次の停車駅が近くなるまでの間、客室2から荷物室12,13は見通すことができない。
【0042】
次に、鉄道車両1が次の停車駅に近づいた状態を考える。制御部32は、位置検出センサ42によって出力された位置情報に基づき、鉄道車両40が次の停車駅から所定の距離以上離れているか否かを判断する。この場合は次の停車駅から所定の距離内になったと判断し、仕切壁16,17及び客室用扉22に送る指示信号を、第2の指示信号から第1の指示信号に切り替える。指示信号が第2の指示信号から第1の指示信号に変わったことにより、仕切壁16,17及び客室用扉22は不透明状態から透明状態に切り替えられる。したがって、次の停車駅が近くなると、客室2から荷物室12,13を見通すことが可能になり、荷物室12から荷物を出そうとする乗客や自分の荷物の安全を座席8に居ながら視認することができる。
【0043】
制御部32は、鉄道車両40が次の停車駅を過ぎたと判断するまでは、第1の指示信号を出力し続ける。そのため、次の停車駅が近くなってから当該駅を出発するまでの間、客室2から荷物室12,13を見通すことができる。
【0044】
鉄道車両1が更に進行して駅に停車し、当該駅を出発した状態を考える。この場合、制御部32は、位置検出センサ42から出力された位置情報に基づき、鉄道車両1の現在位置が停車駅を過ぎたと判断する。制御部32は、仕切壁16,17及び客室用扉22に送る指示信号を、第1の指示信号から第2の指示信号に切り替える。指示信号が第1の指示信号から第2の指示信号に変わったことにより、仕切壁16,17及び客室用扉22は透明状態から不透明状態に切り替えられる。したがって、駅を出発した後は、客室2から荷物室12,13は見通すことができなくなる。
【0045】
制御部32は、鉄道車両40が次の停車駅から所定の距離に到達したと判断するまでは、第2の指示信号を出力し続けることになる。そのため、駅を出発してからその次の停車駅が近づくまでの間は、客室2から荷物室12,13は見通すことができなくなる。
【0046】
上述したように、本実施形態によれば、次の停車駅が近くなってから当該駅を出発するまでの間は、客室2から荷物室12,13を見通すことが可能になる。荷物の盗難は、車両走行中よりも駅に停車している間や停車間際に多く発生する。すなわち、車両走行中は、荷物の車外への持ち出しが不可能であることから盗難は生じにくい。一方、車両の停車間際は降車準備をする人に紛れて荷物を取り出しやすいこと、および、車両の停車中はすぐにホームに降りられることから、それぞれ盗難が生じやすい。そこで本実施形態のように、駅に停車している間や停車間際については、仕切壁16,17及び客室用扉22を透明にし客室2から荷物室12,13をチェックできるようにすれば、荷物の盗難をより確実に防ぐことが可能になる。
【0047】
また、駅に停車している間や停車間際を除く時間帯では、客室2から荷物室12,13を見通せない状態にすることができる。客室2から荷物室12,13を見通せる状態を盗難が起こりやすいタイミングに限定し、それ以外のときは見通せない状態にすることができるので、仕切壁16,17付近に座る乗客の快適性をより確実に確保できる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。
【0049】
例えば、客室用扉22は片引戸タイプに限られず、両開きの引戸であってもよい。また、客室用扉22はなくてもよい。
【0050】
また、仕切壁16,17及び客室用扉22には液晶フィルムが用いられているが、仕切壁16,17及び客室用扉22はこれに限られず、例えば透明パネルと可動式の不透明部材(例えば遮光カーテン)とを用いたものであってもよい。この場合の仕切壁16,17及び客室用扉22は、制御部32の制御に応じて、不透明部材が透明パネルを覆っている状態・覆っていない状態に切り替わる。
【0051】
その他、仕切壁16,17及び客室用扉22はハーフミラーを用いたものであってもよい。この場合、鉄道車両は、仕切壁16,17及び客室用扉22に光を照射すると共に制御部32によって制御可能な照明装置を更に備える。制御部32が照明装置に対して第1の指示信号を出力すると、照明装置による光の照射が停止され、仕切壁16,17及び客室用扉22は実質的に透明になる。制御部32が照明装置に対して第2の指示信号を出力すると、照明装置から光が照射され、仕切壁16,17及び客室用扉22はミラーとして機能する。
【0052】
また、仕切壁16,17及び客室用扉22はいずれも透明・不透明状態の切り替えが可能であるとしたが、仕切壁16,17のみが透明・不透明状態の切り替え可能であって客室用扉22は不透明な化粧板等で構成されている、としてもよい。
【0053】
また、仕切壁16,17及び客室用扉22は制御部32の制御により透明状態・不透明状態に切り替わるとしたが、緊急時等を考慮すると、手動による切り替えも可能であることが好ましい。
【0054】
また、第1実施形態では人感センサ20,21を用いたが、荷物室12,13における荷物の出し入れを検知できるのであれば、その検知手段は人感センサ20,21に限られない。例えば、重さの変化を検知する重量センサを荷物室12,13の各棚板18に設置するとしてもよい。棚板18に加わる重量は、荷物の載置及び取り出し時に変化する。この変化を重量センサに検知させ、重量センサから検知信号を出力させるとすれば、荷物室12,13における荷物の出し入れがあったときに、仕切壁16,17及び客室用扉22を不透明状態から透明状態に切り替えることが可能になる。
【0055】
ところで上記のように重量センサを用いる場合、制御部32は、仕切壁16,17及び客室用扉22を不透明状態から透明状態に切り替えた後、所定時間のあいだは仕切壁16,17及び客室用扉22を透明状態にさせておくことが好ましい。より具体的には、制御部32は、重量センサから検知信号を受け取ると、仕切壁16,17及び客室用扉22に対して所定時間のあいだ第1の指示信号を出力する。所定時間経過後は、第1の指示信号に代わって第2の信号を出力する。
【0056】
重量の変化は一瞬であるため、重量センサによる検知も一瞬である。重量センサが検知している間しか仕切壁16,17及び客室用扉22を透明状態にしないとすると、客室2から荷物室12,13をチェックできる時間は極度に短くなり、盗難防止の効果が薄れてしまう。重量センサによる検知後もしばらくは透明状態にさせることで、荷物室12から荷物を出そうとする乗客を十分に視認でき、盗難をより確実に防止できる。また、所定時間が経過すると不透明状態に切り替わるので、客室2から荷物室12,13を見通せる状態を一時的なものとし、通常は客室2側から荷物室12,13は見通せない状態にすることができる。よって、仕切壁16,17近くの座席8にいる乗客の快適性をより確実に確保できる。
【0057】
また、第1実施形態において、人感センサ20は、荷物室12に人がいる間は検知信号を出力し続けるとしたが、荷物室12に人が入ってきた瞬間のみ検知信号を出力するとしてもよい。この場合、制御部32は、人感センサ20から検知信号を受け取ると、仕切壁16,17及び客室用扉22に対して所定時間のあいだ第1の指示信号を出力する。所定時間経過後は、第1の指示信号に代わって第2の信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る鉄道車両の客室の出入口を示す図であって、仕切壁及び客室用扉が不透明状態の場合を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る鉄道車両の客室の出入口を示す図であって、仕切壁及び客室用扉が透明状態の場合を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る鉄道車両の客室の出入口を示す図であって、仕切壁及び客室用扉が不透明状態の場合を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,40…鉄道車両、2…客室、4…乗降デッキ、5…通路、6a,6b…座席エリア、8…座席、10a,10b…乗降口、12,13…荷物室、14,15…壁部、16,17…仕切壁、16a,16b,17a,17b…パネル、18…棚板、20,21…人感センサ、22…客室用扉、32…制御部、42…位置検出センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室と、荷物室と、前記客室と前記荷物室とを仕切る仕切壁と、を備えた鉄道車両であって、
前記仕切壁を、前記客室から前記荷物室を見通せる第1の状態と前記客室から前記荷物室を見通せない第2の状態とに切り替える制御手段を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記荷物室に人が入ったことを検知する人感センサを備え、
前記制御手段は、前記人感センサによって前記荷物室に人が入ったことが検知されたときに前記仕切壁を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記荷物室における重量の変化を検知する重量センサを更に備え、
前記制御手段は、前記重量センサによって前記荷物室の重量の変化が検知されたときに前記仕切壁を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記制御手段は、前記仕切壁を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えた後、所定時間が経過したときに前記仕切壁を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の鉄道車両。
【請求項5】
自車両の現在位置を検出する位置検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記位置検出手段によって前記自車両の現在位置が次の停車駅から所定の距離内であることが検出されたときに前記仕切壁を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記制御手段は、前記位置検出手段によって前記自車両の位置が前記次の停車駅を過ぎたことが検出されたときに前記仕切壁を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−95156(P2010−95156A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267771(P2008−267771)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)