説明

鉄鋼スラグからの有用成分の合成方法

【課題】鉄鋼スラグを原料として鉄鋼スラグを構成するCa、Fe、Mnを分離し、それぞれ有用成分として回収する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物の製造方法は、1)鉄鋼スラグを硫酸に溶解させる第1のステップと、2)鉄鋼スラグを溶解させた硫酸から石膏およびシリカを回収する第2のステップと、3)石膏およびシリカを回収した硫酸中の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する第3のステップと、4)その焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のFe酸化物を回収する第4のステップと、5)第4のステップの焙焼物を溶解させた水溶液中の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する第5のステップと、6)その焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のMn酸化物を回収する第6のステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼スラグを原料として鉄鋼スラグを構成するCa、Fe、Mnを分離し、それぞれ有用成分として回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所などでは、高炉スラグや製鋼スラグなどの鉄鋼スラグが副産物として多量に発生している。この鉄鋼スラグを有効利用すべく、これまでに多くの研究がなされており、路盤材、コンクリート用細骨材、高炉水砕スラグ微粉末、土木用材料などの様々な商品が開発されている。しかしながら、鉄鋼生産量が世界規模で年々増加するのにともない、鉄鋼スラグの発生量も年々増加しており、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められている。
【0003】
また、すでに開発されている商品についても、すべての鉄鋼スラグをその商品とすることができるわけではなく、そのスラグが有する性質によっては商品化するのが困難な場合がある。たとえば、未水和石灰を含有する製鋼スラグは、石灰の水和反応によってスラグそのものが膨張および崩壊するため、そのままでは道路用路盤材として利用することはできない。このような理由により、製鋼スラグは、土木工事での仮設材料などの低級な用途に利用されるにとどまっている。また、潜在水硬性を有するスラグについては、スラグを利用した箇所における土工事(掘削、杭および矢板の打設など)を困難にすることが利用上の支障となっている。また、水と接触した場合、スラグ成分が一部溶出し接触した水のpHが高くなるようなスラグについては、降雨や流水などの影響を受ける陸域または水域での利用が困難である。以上の背景から、鉄鋼スラグの上記性質が問題とならない、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められている。
【0004】
鉄鋼スラグの新たな利用方法の一つとして、鉄鋼スラグを石膏の原料として利用する技術が報告されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2には、それぞれステンレススラグまたは製鋼スラグを硫酸に溶解させ;溶解液中に析出した石膏を回収することが記載されている。
【0005】
一方、石膏を製造する技術として、鉄鋼スラグ以外のカルシウム源と硫酸を利用する方法が報告されている(例えば、特許文献3,4参照)。特許文献3には、炭酸カルシウムなどのカルシウム塩を硫酸に添加し;さらに硫酸ナトリウムを添加することで、長軸方向の成長が抑制された石膏の2水和物を製造することが記載されている。特許文献4では、水酸化カルシウムスラリーと硫酸イオン水溶液を反応により石膏の2水和物を形成させ;加圧、加温することによりα型の石膏の半水和物を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−10521号公報
【特許文献2】特開平7−172882号公報
【特許文献3】特開平12−34121号公報
【特許文献4】特開平22−105886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、鉄鋼スラグの新たな利用方法が求められており、鉄鋼スラグの新たな利用方法の一つとして、鉄鋼スラグを石膏の原料として利用する技術が報告されている。しかしながら、特許文献1,2の方法にて回収される石膏の水和物の状態は、2水和物以外に、半水和物および無水和物が含まれる。国内における石膏の消費は、石膏ボードおよびセメントの原料で約9割が該当し、いずれも原料として使用する場合、石膏の水和物の状態は2水和物として供給する必要がある。また、鉄鋼スラグ中にはCa以外にもFe、Mn等の成分も含まれることから、石膏回収後の硫酸溶液中にこれらの成分が含まれているため、特許文献1および2の廃液処理が別途必要である。
さらに、特許文献3記載の方法では、溶液同士を混合するため反応槽が大型化し、初期の設備投資費用が大きくなる等の課題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、鉄鋼スラグを原料としてCaを2水和物の状態で、FeおよびMnを酸化物または水酸化物として、初期投資費用を低減した設備にて回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鉄鋼スラグを硫酸に溶解させる際の条件に関し、硫酸濃度および溶解時の温度を任意とすることで石膏を2水和物の状態で回収できること、および焙焼またはpH調整によりFe、Mnを回収できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物の製造方法に関する。
[1]1.5〜10mol/Lの硫酸を用い、液温50〜100℃にて鉄鋼スラグを溶解させるステップと、前記鉄鋼スラグを溶解と同時に析出する石膏およびシリカを回収するステップと、前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する、鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
[2]前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する方法が、水分蒸発を行うステップと、水分蒸発後、焙焼によりFeの硫酸塩を水に不溶性の酸化物とし、水に浸出後、水に不溶のFeの酸化物として分離回収するステップと、前記Feの酸化物を分離回収した際のろ液中の水分蒸発後、焙焼によりMnの硫酸塩を酸化物とするステップを含む、[1]記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法
[3]前記Feの硫酸塩を酸化物とする焙焼温度が400〜700℃であり、前期Mnの硫酸塩を酸化物とする焙焼温度が750〜800℃である、[1]または[2]記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
[4]前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する方法が、アルカリ水溶液によりpH調整することにより沈殿するFeの水酸化物を分離回収するステップと、さらにアルカリ水溶液によりpH調整し、沈殿するMnの水酸化物を分離回収するステップを含む、[1]記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
[5]前記アルカリ水溶液によりFeを水酸化物として沈殿させるpHが3〜5であり、Mnを水酸化物として沈殿させるpHが7〜9である、[1]または[4]記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として、石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物を製造することができる。したがって、本発明によれば、鉄鋼スラグの新たな利用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスラグからの有用成分の合成方法は、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物を製造する方法である。本明細書において「鉄鋼スラグ」とは、鉄鋼製造工程において副産物として発生するスラグを意味する。鉄鋼スラグの例には、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグおよび製鋼スラグが含まれる。
【0013】
本発明の石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物の製造方法は、1)鉄鋼スラグを硫酸に溶解させる第1のステップと、2)鉄鋼スラグを溶解させた硫酸から石膏およびシリカを回収する第2のステップと、3)石膏およびシリカを回収した硫酸中の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する第3のステップと、4)その焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のFe酸化物を回収する第4のステップと、5)第4のステップの焙焼物を溶解させた水溶液中の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する第5のステップと、6)その焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のMn酸化物を回収する第6のステップを有する。本発明の製造方法は、Fe、Mnの回収方法として、前期の第2ステップ後、7)任意のpHに調整し、析出するFeの水酸化物を回収する第7ステップと、8)さらにその後、任意のpHに調整し、析出するMnの水酸化物を回収する第8のステップとしてもよい。
【0014】
1)第1のステップでは、鉄鋼スラグを硫酸に溶解させる。原料とする鉄鋼スラグの種類は、特に限定されず、例えば、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグおよび製鋼スラグが含まれる。製鋼スラグの組成(ICP分析およびXRD分析の結果)の一例を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
鉄鋼スラグの大きさ(粒径)は、硫酸に溶解しうる大きさであれば特に限定されない。たとえば、鉄鋼スラグの平均粒径は10〜20mm程度であればよい。鉄鋼スラグの溶解性を向上させる観点からは、鉄鋼スラグの比表面積を大きくする、すなわち鉄鋼スラグの粒径を小さくすることが好ましい。たとえば、予め平均粒径0.1mm程度に粉砕した鉄鋼スラグを原料としてもよい。溶解させる鉄鋼スラグの量は、硫酸の濃度に応じて適宜決定する。たとえば、硫酸の濃度が3mol/Lの場合、硫酸1Lに対して鉄鋼スラグを200g程度まで溶解させることができる。
【0017】
本発明の製造方法は、鉄鋼スラグに含まれる各成分を硫酸に浸出させることを一つの特徴とする。鉄鋼スラグに含まれる成分のうち、SiOおよびAlを除くほとんどの成分を硫酸に浸出させることができる。鉄鋼スラグ中のケイ酸塩は硫酸溶解後、ケイ酸イオンとなるが、直後に脱水縮合を繰り返し、シリカとして析出する。このため、鉄鋼スラグの硫酸溶解における析出物は石膏およびシリカである。シリカの含有率は10%未満であり、石膏ボードおよびセメント原料への適用には問題のない水準である。また、硫酸は他の酸に比べて安価である。さらに、鉄鋼スラグを溶解させる硫酸は廃硫酸を使用することも可能である。硫酸濃度が濃い程、硫酸の容量を少なくできるため設備の大型化を抑制できるが、鉄鋼スラグの溶解時に析出する石膏の水和物が無水物になりやすい。このため、硫酸の濃度を10mol/L未満とすることが好ましい。なお、硫酸濃度の下限は1.5mol/L未満とすることが好ましい。硫酸濃度が1.5mol/L未満になった場合、使用する硫酸水溶液の容量が多く、設備の大型化となる以外にも反応時間が長期化するため好ましくない。
【0018】
本発明者の予備実験では、1〜10mol/Lの硫酸に平均粒径10mmの製鋼スラグ100gを加え(鉄鋼スラグ成分を全て溶解できる量)、50〜100℃でスターラー(500rpm)を用いて5〜60分間攪拌したところ、硫酸の濃度、液温、浸出時間を調整しても60%以上のスラグが残存してしまい、スラグを十分に溶解させることができなかった。そこで、本発明者は、スラグの溶解性を高める手段について検討したところ、攪拌強度を高めるか、またはスラグの平均粒径を小さくする(比表面積を大きくする)と、90%以上のスラグを溶解させうることを見出した。したがって、鉄鋼スラグを硫酸に溶解させる際には、攪拌強度を高めるか、スラグの平均粒径を小さくすることが好ましい。
【0019】
攪拌強度を高めるには、撹拌速度を速める等して攪拌すればよい。また、スラグの平均粒径を小さくするには、公知の粉砕装置を用いて粒径が0.1mm程度となるまで粉砕すればよい。たとえば、平均粒径10〜20mm程度の鉄鋼スラグを原料とする場合は、ホモジナイザーのような高速撹拌することで(例えば2500rpm程度で攪拌)、20分程度で95%以上のスラグを溶解させることができる。また、平均粒径0.1mm程度の鉄鋼スラグ粉砕物を原料とする場合は、スターラーのようなマイルドな攪拌でも(例えば500rpm程度で攪拌)、5分程度で90%以上のスラグを溶解させることができる。
【0020】
鉄鋼スラグがある程度硫酸に溶解すると、析出する石膏およびシリカがスラグの表面に付着し、スラグの浸出を阻害してしまう。しかし、攪拌強度を高めることで、スラグ同士が衝突して表面に付着した石膏およびシリカが脱離するため、スラグを継続して浸出させることができるようになると推測される。また、スラグの平均粒径を小さくして、スラグの比表面積を大きくすることで、スラグ表面全体が石膏およびシリカに被覆されることを抑制できるため、スラグを継続して浸出させることができるようになると推測される。
【0021】
鉄鋼スラグを硫酸に溶解させるときの液温は、50〜100℃とすることが好ましい。100℃を超過した場合、析出する石膏の水和物が無水物になりやすく、50℃未満では、鉄鋼スラグの溶解速度が遅く工業化が成り立たないためである。溶解時間は撹拌方法、鉄鋼スラグ粒径により異なるが、工業的に製造する場合、60分以内になるように撹拌方法および鉄鋼スラグ粒系を調整することが好ましい。
【0022】
2)第2のステップでは、鉄鋼スラグを溶解させた硫酸から石膏の2水和物およびシリカを回収する。回収方法は特に限定されず、例えば、鉄鋼スラグを溶解させた硫酸をろ過すればよい。
【0023】
3)第3のステップでは、石膏の2水和物およびシリカを回収した硫酸中の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する。水分の蒸発方法はとくに限定されず、例えば、石膏およびシリカを回収した硫酸を減圧濃縮装置やスプレードライを用いればよい。
【0024】
水分蒸発後の粉末を焙焼する方法は、とくに限定されず、ロータリーキルン等を用いればよい。焙焼温度を400℃〜700℃とし、焙焼時間を1時間程度とすることが好ましい。400℃未満では硫酸鉄から酸化鉄への変化に長時間を要し、700℃を超過した場合、硫酸マンガンも一部酸化物となる可能性があり、回収される酸化鉄の純度が低下し、好ましくない。
【0025】
4)第4ステップでは焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のFe酸化物を回収する。焙焼物を溶解させるための、水の量はとくに限定されないが、次工程の水分蒸発を考慮し、焙焼物10g当り、水10g以下とすることが好ましい。水への浸出時間はスターラーのような簡易撹拌(500rpm程度の撹拌)で10分程度とすればよい。
水浸出液中の酸化鉄は、ろ過により回収すればよい。
【0026】
5)第5のステップでは、第4のステップの焙焼物溶解溶液の水分を蒸発させ、得られる粉末を焙焼する。水分の蒸発は、第3のステップと同様に行う。
焙焼も第3ステップと同様に行い、焙焼温度750〜800℃とし、焙焼時間を1時間程度とすることが好ましい。焙焼温度750℃未満では硫酸マンガンから酸化マンガンへの変化が十分起こらず、800℃を超過する場合、硫酸マグネシウムも酸化物になるため回収される酸化マンガンの純度が低下し、好ましくない。
【0027】
6)第6のステップでは、第5のステップで得られた焙焼物を水に溶解させ、水に不溶のMn酸化物を回収する。回収方法は第4のステップの酸化鉄の回収方法と同様である。
【0028】
7)第7のステップでは、第2ステップの後、pH調整により析出するFeの水酸化物を回収する。pHの調整には、アルカリ水溶液であればとくに限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水などが使用できる。
【0029】
Feの水酸化物を析出させるためには、pHを3〜5に調整することが好ましい。pH3未満では、溶液中のFeイオンが完全に水酸化物として沈殿せず、pH5を超過した場合、Mn成分も沈殿するため、回収する水酸化鉄の純度が低下するためである。
析出した水酸化鉄の回収は、ろ過により行えばよい。
【0030】
8)第8のステップでは、第7ステップのろ過後、pHに調整し、析出するMnの水酸化物を回収する。pHの調整は第7ステップで使用したアルカリ水溶液が使用できる。
【0031】
Mnの水酸化物を析出させるためには、pHを7〜9とすることが好ましい。pH7未満では、溶液中のMnイオンが完全に水酸化物として沈殿せず、pH9を超過した場合、Mg成分も沈殿するため、回収する水酸化マンガンの純度が低下するためである。
析出した水酸化マンガンの回収は、ろ過により行えばよい。
【0032】
以上の手順により、鉄鋼スラグの性質(未水和石灰の有無、潜在水硬性の有無、pH)に関わらず、各種鉄鋼スラグを原料とすることができる。したがって、本発明によれば、未水和石灰を含有する製鋼スラグを原料としても有用な石膏の2水和物およびFe、Mnの酸化物または水酸化物を製造することができる。このように、本発明によれば、鉄鋼スラグの新たな利用方法を提供することができる。
【0033】
本発明の製造方法により製造された石膏の2水和物は、石膏ボードまたはセメントとして利用できる。また、酸化鉄、水酸化鉄は高炉原料として、酸化マンガン、水酸化マンガンは製鋼原料または二次電池用のマンガン原料としての利用が考えられる。
【0034】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0035】
[石膏の回収]
粉砕装置を用いて平均粒径が0.1mm程度となるまで粉砕した製鋼スラグ100gを表2に示す条件の1.5〜10mol/L硫酸に加え、スターラー(500rpm)で攪拌して、製鋼スラグを溶解させた。この時の液温度を50〜100℃に制御し、製鋼スラグの溶解時間は30分間実施した。溶解時の析出物を吸引ろ過により回収した。吸引ろ過により回収した析出物を100mLの純水で3回洗浄した。洗浄後の析出物のICP分析の結果および石膏の2水和物比率を表3に示す。また、石膏の2水和物の比率は、析出物50gを40℃雰囲気下において重量変化がなくなるまで設置した後、230℃に調整した電気炉で45分間加熱前後の重量差から算出した。なお、比較として上記の範囲外の条件についても結果を表2および3に示す。

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
[焙焼によるFe、Mnの回収]
前記試験No.6の析出物回収後の溶液をスプレードライにより、水分を蒸発させ、粉末39gを得た。得られた粉末39gをロータリーキルンにて400〜700℃で1時間加熱した。加熱後、純水40mLに添加し、10分間スターラー(500rpm)で撹拌した。溶液中の不溶解分を吸引ろ過により回収し、純水50mLで3回洗浄した。洗浄後の回収物のICP分析結果を表4に示す。なお、比較として上記の範囲外の条件についても結果を表4に示す。

【0039】
【表4】

【0040】
前記試験No.13の不溶解物回収後の溶液をスプレードライにより、水分を蒸発させ、粉末16gを得た。得られた粉末16gをロータリーキルンにて750〜800℃で1時間加熱した。加熱後、純水20mLに添加し、10分間スターラー(500rpm)で撹拌した。溶液中の不溶解分を吸引ろ過により回収し、純水50mLで3回洗浄した。洗浄後の回収物のICP分析結果を表5に示す。なお、比較として上記の範囲外の条件についても結果を表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
[pH調整によるFe、Mnの回収]
前記試験No.6の析出物回収後の溶液を1mol/LのNaOH水溶液を用い、pH3〜5に調整した。pH調整時に析出する成分を吸引ろ過により回収し、純水50mLで3回洗浄した。洗浄後の回収物のICP分析結果を表6に示す。なお、比較として上記の範囲外の条件についても結果を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
前記試験No.21の析出物回収後の溶液を1mol/LのNaOH水溶液を用い、pH7〜9に調整した。pH調整時に析出する成分を吸引ろ過により回収し、純水50mLで3回洗浄した。洗浄後の回収物のICP分析結果を表7に示す。なお、比較として上記の範囲外の条件についても結果を表7に示す。
【0045】
【表7】



【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグを原料として石膏ボードまたはセメントとして利用できる石膏の2水和物、製鋼原料として利用できる酸化鉄、水酸化鉄、および製鋼原料または二次電池用のマンガン原料に利用できる酸化マンガン、水酸化マンガンを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5〜10mol/Lの硫酸を用い、液温50〜100℃にて鉄鋼スラグを溶解させるステップと、前記鉄鋼スラグを溶解と同時に析出する石膏およびシリカを回収するステップと、前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する、鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
【請求項2】
前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する方法が、水分蒸発を行うステップと、水分蒸発後、焙焼によりFeの硫酸塩を水に不溶性の酸化物とし、水に浸出後、水に不溶のFeの酸化物として分離回収するステップと、前記Feの酸化物を分離回収した際のろ液中の水分蒸発後、焙焼によりMnの硫酸塩を酸化物とするステップを含む、請求項1記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
【請求項3】
前記Feの硫酸塩を酸化物とする焙焼温度が400〜700℃であり、前期Mnの硫酸塩を酸化物とする焙焼温度が750〜800℃である、請求項1記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
【請求項4】
前記石膏およびシリカ回収後の溶液からFe、Mnを回収する方法が、アルカリ水溶液によりpH調整することにより沈殿するFeの水酸化物を分離回収するステップと、さらにアルカリ水溶液によりpH調整し、沈殿するMnの水酸化物を分離回収するステップを含む、請求項1記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。
【請求項5】
前記アルカリ水溶液によりFeを水酸化物として沈殿させるpHが3〜5であり、Mnを水酸化物として沈殿させるpHが7〜9である、請求項1記載の鉄鋼スラグからの有用成分の回収方法。


【公開番号】特開2012−193422(P2012−193422A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58849(P2011−58849)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】