説明

鉄鋼スラグ用固結防止剤

【課題】貯蔵や輸送過程での鉄鋼スラグの固結を充分に抑制することが可能な鉄鋼スラグ用の固結防止剤を提供する。
【解決手段】カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物を含有する固結防止剤であって、該高分子化合物は、その原料である全単量体に対し、該カルボキシル基を2つ有する単量体を1〜60モル%含み、該カルボキシル基を1つ有する単量体を30〜99モル%含む鉄鋼スラグ用固結防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼スラグ用固結防止剤に関する。より詳しくは、製鉄工程・製鋼工程において発生し、水硬性物質やコンクリート用の細骨材等として有用な鉄鋼スラグの固結防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材の製造過程では、製鉄工程・製鋼工程において、多量の副生成物が発生する。このような副生成物としては、高炉スラグや製鋼スラグが挙げられる。これらの鉄鋼スラグは、シリカ、カルシウム、鉄等を含有しており、セメントの原料、土木用の砂材、道路の路盤材、セメントの代わりの水硬性物質、コンクリート用の細骨材等として使用すると副生成物の再利用として有用である。しかし、鉄鋼スラグは一般に、野積みにされ、圧がかかる状態で放置されるので、貯蔵や輸送過程で固結することが知られている。固結した鉄鋼スラグは粉砕等の処理を必要とするため、このような処理をすることなくコンクリート用原料等に利用できるように、固結を充分に防ぐことが望まれている。
【0003】
スラグ粉末に関し、多水酸基含有物質の水溶液に浸漬処理した後、乾燥させることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。実施例においては、高炉スラグや製鋼スラグの粉砕物を、固結防止剤としてポリアクリル酸で処理することにより、長時間硬化を起こさなくなることが記載されている。また、高炉水砕スラグの固結防止剤に関し、アクリル酸系重合体からなる固結防止剤(例えば、特許文献2参照。)、オレフィンとマレイン酸との共重合体又はこのような共重合体のアルキレンオキサイド付加物等を使用する固結防止剤(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。しかしながら、これらの固結防止剤においては、高炉スラグや製鋼スラグを貯蔵したり輸送したりする場合に固結を充分に抑制し、水硬性物質やコンクリート用の細骨材等として好適な鉄鋼スラグとできるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特公平4−292443号公報(第2−4頁)
【特許文献2】特開2003−160364号公報(第2頁)
【特許文献3】特公昭58−2178号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、貯蔵や輸送過程での鉄鋼スラグの固結を充分に抑制することが可能な鉄鋼スラグ用の固結防止剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鉄鋼スラグの固結防止剤について種々検討したところ、カルボキシル基を有する単量体を共重合して得られる高分子化合物を含有するものとすると、鉄鋼スラグの固結を充分に抑制することを見いだした。そして、このような高分子化合物において、(1)カルボキシル基を2つ有する単量体やカルボキシル基を1つ有する単量体の含有量が特定されたものとしたり、(2)特定のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体を特定量含有するものとしたりすることにより、鉄鋼スラグの固結を充分に抑制できることから、水硬性物質やコンクリート用細骨材等として有用な鉄鋼スラグとすることが可能となることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、(1)の形態の高分子化合物と(2)の形態の高分子化合物とを、鉄鋼スラグの性質に応じて適宜選択して使用することも可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物を含有する固結防止剤であって、上記高分子化合物は、その原料である全単量体に対し、上記カルボキシル基を2つ有する単量体を1〜60モル%含み、上記カルボキシル基を1つ有する単量体を30〜99モル%含む鉄鋼スラグ用固結防止剤である。
【0007】
本発明はまた、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル及び下記一般式(1);
YO(RO)mR (1)
(式中、Yは、炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。R2は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R1Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表す。mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜1000の数を表す。)より選ばれる1種以上の単量体を全単量体組成で1〜95質量%、カルボキシル基及び/またはその塩を含有する単量体を酸型換算で5〜99質量%を必須成分として重合して得られる高分子化合物を含むことを特徴とする鉄鋼スラグ用固結防止剤でもある。なお、本明細書中「(メタ)アリルアルコール」とは、アリルアルコール及びメタリルアルコールを言う。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の固結防止剤は、カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物を含有するものである。
上記カルボキシル基を2つ有する単量体としては、不飽和ジカルボン酸であってもよく、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、及び、これらの塩が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、マレイン酸及び/又はその塩が好ましく、カルボキシル基を2つ有する単量体として、マレイン酸及び/又はその塩より構成されてなる形態は、本発明の好ましい形態の1つである。
【0009】
上記カルボキシル基を1つ有する単量体としては、不飽和モノカルボン酸であってもよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸、α−ヒドロキシアクリル酸、及び、これらの塩;下記一般式(2)又は(3)で表されるマレイン酸モノアミド、マレイン酸モノエステル等が好適である。
XOOCCH=CHCO(NR) (2)
XOOCCH=CHCO(OR) (3)
(式中、Xは、水素原子、アルカリ金属、4級アミンを表す。Rは、Cn1n2n3n4n5で表される直鎖構造、分岐構造及び環構造からなる群より選ばれる1種以上を有する基を表す。炭素原子数n1は、1〜30の整数であり、水素原子数n2は、1〜61の整数であり、窒素原子数n3は、0〜15の整数であり、酸素原子数n4は、0〜15の整数であり、硫黄原子数n5は、0〜5の整数である。)。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸及び/又はその塩が好ましく、カルボキシル基を1つ有する単量体として、アクリル酸及び/又はその塩より構成されてなる形態は、本発明の好ましい形態の1つである。
また上記カルボキシル基を2つ有する単量体として、マレイン酸及び/又はその塩より構成されてなり、上記カルボキシル基を1つ有する単量体として、アクリル酸及び/又はその塩より構成されてなる形態も、本発明の好ましい形態の1つである。
【0010】
上記塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミシ塩が好適である。これらの中でも、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0011】
上記高分子化合物に必須として含まれる単量体の割合としては、その原料である全単量体に対し、上記カルボキシル基を2つ有する単量体を1〜60モル%含み、上記カルボキシル基を1つ有する単量体を30〜99モル%含むことが好ましい。カルボキシル基を2つ有する単量体としては、好ましくは1〜50モル%であり、更に好ましくは、40〜50モル%である。また、カルボキシル基を1つ有する単量体としては、好ましくは50〜99モル%であり、更に好ましくは、50〜60モル%である。
上記高分子化合物は、カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られるものであり、これらの単量体に由来するカルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する構成単位と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する構成単位とを必須として含むものである。このような構成単位を含む高分子化合物を含有する固結防止剤は、本発明の好ましい形態の一つである。
なお、上記単量体を(共)重合することで得られる本発明の高分子化合物は、本発明で開示の製法に限定されず、本発明の高分子化合物は、上記単量体由来の構成単位を含むものであれば、鉄鋼スラグ用固結防止剤としての効果を発現できる。上記単量体由来の構成単位とは、重合反応によって、各単量体の重合性2重結合が開いた構造(2重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
【0012】
本発明の固結防止剤はまた、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル及び上記一般式(1)より選ばれる1種以上の単量体(単量体A)と、カルボキシル基及び/またはその塩を含有する単量体(単量体B)とを必須成分として重合して得られる高分子化合物を含むものでもある。
上記単量体Bとしては、前述のカルボキシル基を2つ有する単量体及びカルボキシル基を1つ有する単量体の項で例示した単量体に加えて、これらの塩等カルボキシル基を3つ以上有する単量体であってもよい。これらの中でも、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸及びこれらの塩が好ましい。なお、カルボキシル基の塩としては、前述の塩を用いることができる。
【0013】
上記単量体Aにおいて、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルは、下記一般式(4)で表されるポリアルキレングリコール鎖のうちの、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル構造を有するものである。上記固結防止剤においては、上述の単量体Aを必須成分として、単量体A以外のポリアルキレングリコール鎖を併用することができる。
YCOO(R1O)mR2 (4)
(式中、Y、R2、R1O、及び、mは、上記一般式(1)と同様である。)。
【0014】
上記一般式で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(1)又は不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体(4)において、オキシアルキレン基R1Oの炭素原子数としては、2〜18であるが、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。また、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基、すなわちエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の炭素原子数2〜18のオキシドの中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物におけるこれらのアルキレンオキシドの付加形態としては、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれであってもよい。
【0015】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(1)、又は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体(4)としては、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として有するものが好ましい。より好ましくは、全オキシアルキレン基中50モル%以上がオキシエチレン基であることであり、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、95モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。一般式(1)又は(4)において、オキシアルキレン基の平均付加モル数mとしては、1〜1000であるが、好ましくは2〜500、より好ましくは5〜500、更に好ましくは10〜500、特に好ましくは15〜500、最も好ましくは20〜300である。平均付加モル数が1未満であると、得られる重合体の親水性が低下して分散性能が低下するおそれがあり、1000を超えると、共重合反応性が低下するおそれがある。
【0016】
上記一般式(1)又は(4)において、R2は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基であればよく、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素原子数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられる。炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、R2が炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12が更に好ましく、1〜4が特に好ましく、また、R2が水素原子の場合が最も好ましい。
【0017】
上記一般式(1)又は(4)において、Yで示されるアルケニル基の炭素原子数としては、2〜8であるが、3〜8が好ましく、3〜5がより好ましい。このようなアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等が挙げられる。これらの中でも、アリル基、イソプロペニル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましい。
【0018】
上記一般式(1)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体は、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜1000モル付加して製造することができる。例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体等を含む3−メチル−3−ブテン−1−オールのアルキレンオキシド付加物;アリルアルコールにエチレンオキサイドを付加してなるポリエチレングリコールモノエテニルエーテル単量体等を含むアリルアルコールのアルキレンオキシド付加物等が好適であり、具体的には、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、3−メチル−3−ブテン−1−オールのアルキレンオキシド付加物及びアリルアルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0019】
上記一般式(4)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体は、例えばアクリル酸やメタクリル酸にアルキレンオキシドを1〜1000モル付加して製造することができる。具体的には、ポリエチレングリコールモノメタアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル等を含む(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル等のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸のポリアルキレングリコールエステルが好ましい。
このように、上記ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、メタクリル酸のポリアルキレングリコールエステル、3−メチル−3−ブテン−1−オールのアルキレンオキシド付加物及びアリルアルコールのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる1種以上の単量体より構成されてなる形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0020】
上記一般式(1)又は(4)で表されるポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の中でも、エチレンオキサイド換算で5モル以上、100モル以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、入手が容易であり、また、重合性の点から好ましい。より好ましくは、エチレンオキサイド換算で10モル以上、また、100モル以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体である。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル及び上記一般式(1)より選ばれる1種以上の単量体(単量体A)と、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体(単量体B)とを重合して得られる高分子化合物を構成する単量体の割合としては、全単量体に対し、単量体Aを1〜95質量%含み、単量体Bを酸型換算で5〜99質量%含むことが好ましい。より好ましくは単量体Bを酸型換算で10〜99質量%含むことであり、更に好ましくは単量体Bを酸型換算で20〜99質量%含むことである。
このように、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル及び上記一般式(1)より選ばれる1種以上の単量体を全単量体組成で1〜95質量%、カルボキシル基及び/またはその塩を含有する単量体を酸型換算で5〜99質量%を必須成分として重合して得られる高分子化合物を含むことを特徴とする鉄鋼スラグ用固結防止剤もまた、本発明の一つである。
なお、上記単量体を(共)重合することで得られる本発明の高分子化合物は、本発明で開示の製法に限定されず、本発明の高分子化合物は、上記単量体由来の構成単位を含むものであれば、鉄鋼スラグ用固結防止剤としての効果を発現できる。上記単量体由来の構成単位とは、重合反応によって、各単量体の重合性2重結合が開いた構造(2重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
【0022】
本発明の鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物は、(1)カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物、及び、(2)特定のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体とを重合して得られる高分子化合物の2種の形態を含むことから、(1)の形態の高分子化合物と(2)の形態の高分子化合物とを、鉄鋼スラグの性質に応じて適宜選択して使用することも可能となる。特に(2)の形態の高分子化合物は、耐塩性に対する向上効果があることから、水硬性物質のカルシウム濃度が高い場合等に有用である。
以降、(1)の形態の高分子化合物及び(2)の形態の高分子化合物の両者を含めて、鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物、又は、高分子化合物という。
【0023】
上記鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物は、上記単量体の他に、これらの単量体と共重合可能な共重合性単量体とを共重合させた化合物であってもよい。
上記共重合性単量体としては、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する重合性単量体及びこれらの塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基を有する単量体;ビニルフェノール等の石炭酸系単量体等の酸基を有する単量体及びこれらの塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸アミノエチル等の炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基含有単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性を有する(メタ)アクリルアミド系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等の加水分解性を有する基がケイ素原子に直結しているシラン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン等のアジリジン基を有する単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基を有する単量体;(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリルアミド;ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート等の分子内に不飽和基を複数有する多官能アリル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを有する重合性単量体が好適である。
【0024】
上記他の共重合性単量体の含有量としては、上述した単量体の全単量体中における割合を満足していればよく、(1)カルボキシル基を2つ有する単量体と、カルボキシル基を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物については、他の共重合性単量体の含有量が、0〜30モル%、及び、(2)特定のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体とを重合して得られる高分子化合物については、他の共重合性単量体の含有量が、0〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
【0025】
上記単量体を(共)重合する際には、分子量の調節を目的として、連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の連鎖移動係数の高い化合物等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量としては、単量体1モルに対し、0.005〜0.15モルとすることが好ましい。
【0026】
上記単量体を(共)重合する方法としては、従来公知の種々の重合法、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。これらの中でも、重合コスト(生産コスト)の低減及び安全性等の観点から、水溶液重合法が好ましい。
【0027】
上記重合に用いられる重合開始剤としては、熱又は酸化還元反応によって分解し、ラジカル分子を発生させる化合物であればよい。また、水溶液重合法により重合を行う場合には、水溶性を備えた重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;過酸化水素及びアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びロンガリット、過硫酸カリウム及び金属塩、過硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸ナトリウム及び金属塩等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量としては、単量体の組成や重合条件等に応じて適宜設定すればよい。
【0028】
上記重合における反応温度や反応時間等の重合条件としては、単量体の組成や、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、反応温度としては、0〜150℃とすることが好ましく、40〜105℃とすることがより好ましい。また、反応時間としては、3〜15時間程度が好適である。水溶液重合法により重合を行う場合における単量体の反応系への供給方法としては、一括添加法、分割添加法、成分滴下法、パワーフィード法、多段滴下法により行うことができる。また、重合は常圧下、減圧下、加圧下の何れで行ってもよい。
【0029】
上記高分子化合物の製造において、水溶液重合法を採用した場合に得られる高分子化合物水溶液中に含まれる、高分子化合物を含む不揮発分の濃度としては、70質量%以下であることが好ましい。70質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎるおそれがある。
【0030】
本発明における鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物としては、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、分散剤としての作用が低下するおそれがある。1000000を超えると、高分子化合物の粘度が高くなり過ぎて分散剤としての作用が充分に発揮されるように添加しにくいものとなるおそれがある。より好ましくは、3000以上であり、また、100000以下である。
上記鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物の1形態であるカルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物は、効果発現の機構は充分に明らかになっていないが、分散安定化することによりスラグの固結を抑制すると考えられるので、従来の固結防止剤に含まれるアクリル酸系重合体に比べて低分子量でその作用効果を発揮するようである。
なお、本明細書中、重量平均分子量は、以下の測定条件で測定される値である。
【0031】
(重量平均分子量測定条件)
カラム:水系GPCカラム「GF−7MHQ」(商品名、昭和電工社製)1本
キャリア液:リン酸水素二ナトリウム十二水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム二水和物46.2gに超純水を加えて全量を5000gとする。
水溶液流速:0.5ml/min
ポンプ:「L−7110」(商品名、日立製作所社製)
検出器:紫外線(UV)検出器「L−7400」(商品名、日立製作所社製)、波長214nm
分子量標準サンプル:ポリアクリル酸ナトリウム(創和科学社より入手可能な重量平均分子量1300〜1360000のポリアクリル酸ナトリウム)
分析サンプルは、高分子化合物が固形分で0.1質量%となるように上記キャリア液で希釈することにより調整する。
ただし、上記測定条件で測定ができない高分子化合物については、以下の測定条件を適用する。
機種:Waters LCM1
キャリア液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調節した水溶液
流速:0.8ml/min
カラム:水系GPCカラム「TSKgel GuardColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL」(東ソー社製)
カラム温度:35℃
検出器:Waters 410 示差屈折検出器
分子量標準サンプル:ポリエチレングリコール
分析サンプルは、高分子化合物が固形分で0.1%となるように上記キャリア液で希釈することにより調製する。
【0032】
本発明で用いる鉄鋼スラグとしては、高炉スラグ、電気炉スラグであってもよく、高炉水砕スラグであってもよい。また、水硬性を示すものであれば好適に用いることができ、これらの中でも、高炉スラグ及び/又は電気炉スラグが好ましい。鉄鋼スラグが、高炉スラグ及び/又は電気炉スラグを含む鉄鋼スラグ用固結防止剤もまた、本発明の好ましい形態の一つである。これらのスラグは、水硬性物質やコンクリート用の細骨材等として有用なものである。
本発明の鉄鋼スラグ用固結防止剤は、貯蔵や輸送過程での鉄鋼スラグの固結を充分に抑制することが可能であるので、固結が進行しやすいスラグに対して特に有効なものである。
【0033】
本発明の鉄鋼スラグ用固結防止剤により上記鉄鋼スラグの固結を防止する際の使用量としては、鉄鋼スラグの固結性(種類)や、鉄鋼スラグ用固結防止剤に含まれる高分子化合物の種類等に応じて適宜設定すればよいが、鉄鋼スラグ100重量部に対して高分子化合物が0.001重量部以上となるようにすることが好ましく、また、2重量部以下となるようにすることが好ましい。0.001重量部未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができなくなるおそれがあり、2重量部を超えると、鉄鋼スラグに対する鉄鋼スラグ用固結防止剤の添加量が多くなりすぎ、高価になる等の問題が生じるおそれがある。より好ましくは、鉄鋼スラグ100重量部に対する高分子化合物が0.005重量部以上となるようにすることであり、また、1重量部以下となるようにすることである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の鉄鋼スラグ用固結防止剤は、上述のような構成であるので、貯蔵や輸送過程での鉄鋼スラグの固結を充分に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0036】
実施例1
攪拌機およびコンデンサーを備えた容器(SUS316製)に、イオン交換水355部、カルボキシル基含有単量体としての無水マレイン酸98部および中和剤としての水酸化ナトリウム80部を仕込んで中和させ、攪拌下、系の沸点(100℃)まで昇温した。
続いて、上記容器内に、カルボキシル基含有単量体としての40%アクリル酸水溶液180部、並びに、重合開始剤としての10%過硫酸ナトリウム水溶液100部および14%過酸化水素水溶液100部を滴下した。上記40%アクリル酸水溶液、10%過硫酸ナトリウム水溶液100部、14%過酸化水素水溶液は、それぞれ別々の滴下口より4時間かけて滴下した。滴下時間中、反応温度は系の沸点を維持した。滴下終了後、同温度に60分間保持した後、中和剤としての49%水酸化ナトリウム水溶液57部を60分間かけて滴下することにより、重合体水溶液(固結防止剤1)を得た。このようにして得られた重合体水溶液中の重合体(高分子化合物1)の数平均分子量、重量平均分子量を測定したところ、それぞれ1200、5900であった。
【0037】
高分子化合物1を固形分換算で0.5部採取し、56.1部に希釈した(希釈液1)。
表1の粒度分布に調整した高炉スラグ500部に、希釈液1の56.1部をスプレーし、薬さじでよく混合した。該高炉スラグをポリプロピレン製ふたつき容器に挿入した後、さらにボールミルの架台を使用し、10分程度混合した。該高炉スラグを内径8cmの容器に移し替え、表面を平らにならし、100g/cmの過重をかけ、60℃の恒温室に24時間静置した。
【0038】
【表1】

【0039】
静置後、内容物を取り出し、軽度の固結をほぐす目的で、高さ2mからステンレス製のバットに一回落下させた。そのまま80℃のオーブンで、1時間乾燥し、篩い分けを行った。5mm以上の粒度割合を比較し、固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例2
攪拌機およびコンデンサーを備えた容器(SUS316製)に、無水マレイン酸196部、イオン交換水110.7部、水酸化ナトリウム48%水溶液333.3部を仕込み、攪拌下、系の沸点まで昇温した。続いて、上記容器内に、カルボキシル基含有単量体としての60%アクリル酸水溶液560.78部、並びに、重合開始剤としての10%過硫酸ナトリウム水溶液200部および35%過酸化水素水6.65部を滴下した。上記60%アクリル酸水溶液、10%過硫酸ナトリウム水溶液、35%過酸化水素水は、それぞれ別々の滴下口より滴下した。60%アクリル酸水溶液および10%過硫酸ナトリウム水溶液は150分間で滴下した。35%過酸化水素水は120分間で滴下した。その後、上記セパラブルフラスコ内の反応溶液のpHが8.0になるように水酸化ナトリウム48%水溶液を添加、混合することにより、重合体水溶液(固結防止剤2)を得た。このようにして得られた重合体水溶液中の重合体(高分子化合物2)の数平均分子量を測定したところ、数平均分子量は4000、重量平均分子量は46400であった。
【0042】
高分子化合物2を固形分換算で0.5部採取し、56.1部に希釈した(希釈液2)。
希釈液1の56.1部に変えて、希釈液2を56.1部使用する他は、実施例1と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0043】
実施例3
高分子化合物1を固形分換算で0.15部採取し、56.1部に希釈した(希釈液3)。
希釈液1の56.1部に変えて、希釈液3を56.1部使用する他は、実施例1と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0044】
比較例1
重量平均分子量15000のポリアクリル酸ナトリウム(シグマアルドリッチジャパン株式会社より入手)0.5部を55.6部の水に溶解し、希釈液4を得た。
希釈液1の56.1部に変えて、希釈液4を56.1部使用する他は、実施例1と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0045】
比較例2
重量平均分子量12000のマレイン酸とポリオレフィンの共重合体のナトリウム塩(シグマアルドリッチジャパン株式会社より入手)0.5部を55.6部の水に溶解し、希釈液5を得た。希釈液1の56.1部に変えて、希釈液5を56.1部使用する他は、実施例1と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0046】
比較例3
希釈液1の56.1部の変わりに、水を55.6部使用する他は、実施例1と同様にして固結防止性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0047】
実施例4
温度計、攪拌機、コンデンサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水72.26部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール(本発明における単量体Aに属する単量体)127.74部を仕込み、65℃に昇温した後、30%過酸化水素水溶液0.38部を添加し、アクリル酸(本発明における単量体Bに属する単量体)7.92部を3時間、メルカプトプロピオン酸0.35部を3時間、L−アスコルビン酸 の2.1%水溶液6.99部を3.5時間かけて滴下した。その後、60分65℃に維持して反応を完結させた。温度を50℃に降温し、5.0%水酸化ナトリウム水溶液79.12部で中和し、重量平均分子量25000の重合体水溶液(固結防止剤3)を得た。
【0048】
固結防止剤3を固形分換算で0.5部採取し、56.1部に希釈した(希釈液6)。
表1の粒度分布に調整した高炉スラグ500部に、希釈液6の56.1部をスプレーし、薬さじでよく混合した。該高炉スラグをポリプロピレン製ふたつき容器に挿入した後、さらにボールミルの架台を使用し、10分程度混合した。該高炉スラグを内径8cmの容器に移し替え、表面を平らにならし、100g/cmの過重をかけ、60℃の恒温室に24時間静置した。
静置後、内容物を取り出し、軽度の固結をほぐす目的で、高さ2mからステンレス製のバットに一回落下させた。そのまま80℃のオーブンで、1時間乾燥し、篩い分けを行った。5mm以上の粒度割合を比較し、固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例5
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製の反応容器に、イオン交換水1291部と、ポリアルキレングリコール鎖含有モノマーとしての、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均50モル付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルモノマー(本発明における単量体Aに属する単量体)1812部と、酸基含有モノマーとしての無水マレイン酸(本発明における単量体Bに属する単量体)188部とを仕込み、反応溶液とした。次いで、この反応溶液を60℃に昇温した。
続いて、この反応溶液に、重合開始剤としての、「NC−32W」(商品名;日宝化学社製、2,2’−アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩の87%濃度品)の15%水溶液50部を加えて7時間攪拌し、さらに温度を80℃まで上昇した後、1時間攪拌して重合反応を完結させた。
その後、この反応溶液を30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して不揮発分の濃度が43.2%であるポリマー水溶液(固結防止剤4)を得た。固結防止剤4に含まれる高分子化合物の重量平均分子量は23800であった。
【0051】
固結防止剤4を固形分換算で0.5部採取し、56.1部に希釈した(希釈液7)。
希釈液6の56.1部に変えて、希釈液7を56.1部使用する他は、実施例4と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0052】
実施例6
固結防止剤3を固形分換算で0.15部採取し、56.1部に希釈した(希釈液8)。
希釈液6の56.1部に変えて、希釈液8を56.1部使用する他は、実施例4と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0053】
比較例1
重量平均分子量15000のポリアクリル酸ナトリウム(シグマアルドリッチジャパン株式会社より入手)0.5部を55.6部の水に溶解し、希釈液4を得た。
希釈液6の56.1部に変えて、希釈液4を56.1部使用する他は、実施例4と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0054】
比較例2
重量平均分子量12000のマレイン酸とポリオレフィンの共重合体のナトリウム塩(シグマアルドリッチジャパン株式会社より入手)0.5部を55.6部の水に溶解し、希釈液5を得た。希釈液6の56.1部に変えて、希釈液5を56.1部使用する他は、実施例4と同様にして、固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0055】
比較例3
希釈液6の56.1部の変わりに、水を55.6部使用する他は、実施例4と同様にして固結防止性能を評価した。この結果を表3に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基及び/又はその塩を2つ有する単量体と、カルボキシル基及び/又はその塩を1つ有する単量体とを共重合して得られる高分子化合物を含有する固結防止剤であって、
該高分子化合物は、その原料である全単量体に対し、該カルボキシル基を2つ有する単量体を1〜60モル%含み、該カルボキシル基を1つ有する単量体を30〜99モル%含む
ことを特徴とする鉄鋼スラグ用固結防止剤。
【請求項2】
前記カルボキシル基を2つ有する単量体は、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸及びこれらの塩より構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグ用固結防止剤。
【請求項3】
前記カルボキシル基を1つ有する単量体は、アクリル酸及び/又はその塩より構成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鋼スラグ用固結防止剤。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル及び下記一般式(1);
YO(RO)mR (1)
(式中、Yは、炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。R2は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R1Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表す。mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜1000の数を表す。)より選ばれる1種以上の単量体を全単量体組成で1〜95質量%、カルボキシル基及び/またはその塩を含有する単量体を酸型換算で5〜99質量%を必須成分として重合して得られる高分子化合物を含むことを特徴とする鉄鋼スラグ用固結防止剤。
【請求項5】
前記鉄鋼スラグは、高炉スラグ及び/又は電気炉スラグを含むことを特徴とする請求項1〜4に記載の鉄鋼スラグ用固結防止剤。

【公開番号】特開2006−137621(P2006−137621A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326439(P2004−326439)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】