鉄骨切断装置
【課題】構造物（建物）の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置を提供する。
【解決手段】クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられている。両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている。スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行う。
【解決手段】クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられている。両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている。スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、構造物（建物）の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
構造物の鉄骨を切断し解体する際には、解体する鉄骨をクレーンで吊り下げ支持しつつ、切断装置を持った作業員が前記鉄骨上に上り切断するのが一般的であり、作業員の移動に時間が掛かり作業効率が悪く、しかも高所作業のため危険性が高い問題を有していた。
【０００３】
そのため、安全な場所から遠隔操作により鉄骨を切断できる構成の切断装置が開発され特許出願されている。例えば、特許文献１、２には、建設機械などのアームに取り付けられた鉄骨切断装置が開示されており、同鉄骨切断装置は鉄骨クランプと切断具を有し、作業員が安全な場所から遠隔操作して鉄骨クランプで切断する鉄骨を支持しつつ、切断具（切断用トーチ）で切断できる構成とされている。
【特許文献１】特開平６−３１３３６５号公報
【特許文献２】特開２００５−２６８８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記特許文献１、２の鉄骨切断装置は、安全な場所から遠隔操作により鉄骨を切断できる構成とされているので、作業員が鉄骨上に上がる必要がなく、作業の効率性と安全性の向上が期待できる。しかし、鉄骨の軸方向に間隔を開けて切断具を配置する技術的思想がない、即ち切断具は一つしかない。つまり、鉄骨を解体するためには、同鉄骨の両側を切断する必要があるが、鉄骨の両側を一度に切断できる構成とされていないので、作業効率の更なる向上を図れる余地が残されている。
【０００５】
本発明の目的は、軸方向に間隔を開けて切断具を有し、同切断具を鉄骨の軸方向、横断方向、高さ方向に予め前記鉄骨の寸法等が入力された制御装置を用いて、又は手動により遠隔操作する構成とし、安全な場所から鉄骨を切断できるだけでなく、作業効率の飛躍的な向上を図れる鉄骨切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項１に記載した発明に係る鉄骨切断装置は、
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする。
【０００７】
請求項２に記載した発明に係る鉄骨切断装置は、
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
建設機械などのアームに支持される本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする。
【０００８】
請求項３記載の発明は、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置において、
鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有することを特徴とする。
【０００９】
請求項４記載の発明は、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置において、
移動手段は、鉄骨の側方において同鉄骨の高さ方向に十分な長さを有する走行レールが配置されており、同走行レールの上端部はスライドフレームに連結されていること、
走行レールに、同走行レールに沿って鉄骨の高さ方向に移動可能な構成で走行ブロックが設けられていること、
走行ブロックに、鉄骨の横断方向に移動可能な構成でアームが設けられており、同アームの先端に切断具が取り付けられていることを特徴とする。
【００１０】
請求項５記載の発明は、請求項１〜４のいずれか一に記載した鉄骨切断装置において、
切断具は切断用トーチと着火手段から成り、
切断用トーチに鉄骨との間隔等を測定するセンサーが設置されており、同切断用トーチ及び着火手段は、前記センサーの測定データに基づき制御装置を用いて遠隔操作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
本発明に係る鉄骨切断装置は、軸方向に間隔を開けて切断具を有し、同切断具を鉄骨の軸方向、横断方向、高さ方向に予め前記鉄骨の寸法等が入力された制御装置を用いて、又は手動により遠隔操作する構成としたので、作業員は安全な場所から全ての切断作業を遠隔操作でき、安全性が高い。
【００１２】
また、軸方向に間隔を開けて切断具が配置されているので、鉄骨を一度に切断し解体することができ、作業効率が極めて高い。特に、請求項２に係る鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有するので、迅速に鉄骨を切断することができ、更に作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
クレーンによって吊り下げられる本体フレームには、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられている。両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている。スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は遠隔操作により行う。
【実施例１】
【００１４】
請求項１〜４に係る鉄骨切断装置の実施例を、図１〜図４に基づいて説明する。この鉄骨切断装置１は、構造物の鉄骨（即ち、Ｈ型鋼梁又はＩ型鋼梁）２を切断し解体する際に好適に採用される。
【００１５】
本実施例の鉄骨切断装置１は、クレーン３によって吊り下げられる本体フレーム４に、相反する向きに突き出したスライドフレーム５、５が軸方向に伸縮可能な構成で設けられている（図１を参照）。
【００１６】
本体フレーム４の上面部には、吊り下げワイヤー６が連結された治具７が設けられており、前記吊り下げワイヤー６にクレーン３が引っ掛けられ鉄骨切断装置１全体が吊り下げられる。この本体フレーム４は鞘管構造とされており、両端部に差し込まれたスライドフレーム５、５がそれぞれ駆動装置（図示を省略）によって伸縮する構成とされている。すなわち、図示は省略するが、駆動装置のモータでスライドフレーム５の側面に形成されたラックに駆動力を与え、同スライドフレーム５を本体フレーム４から出し入れする構成とされている。
【００１７】
本体フレーム４の下面部には、軸方向に間隔を開けて鉄骨２を支持する鉄骨クランプ８、８が設けられている。鉄骨クランプ８は、通例のクランプ機構と略同様の構成とされており、上下の固定腕（図示を省略）で鉄骨２の上フランジ２ａが挟み込まれる。
【００１８】
両スライドフレーム５、５は、切断時に荷重が加わって鉄骨切断装置１が下方に移動して切断用トーチ１２を破損しないように先端部に支持脚９が一体化されている。このスライドフレーム５、５に切断具１０の移動手段１１が設けられており、前記切断具１０は移動手段１１で鉄骨２の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている（図２及び図３を参照）。
【００１９】
具体的に云うと、本実施例の鉄骨切断装置１は、鉄骨２の上フランジ２ａを切断する切断具１０ａと、ウエブ２ｂを切断する切断具１０ｂと、下フランジ２ｃを切断する切断具１０ｃとを有する（請求項２記載の発明）。各々の切断具１０ａ、１０ｂ、１０ｃは、通例のガス切断具と同様の構成とされており、切断用トーチ１２と着火手段である点火用バーナ１３から成り、例えば本体フレーム４の内部空隙に収容されたガスボンベ（図示を省略）から切断トーチ１２にガスが供給され、点火用バーナ１３によって着火され鉄骨２を切断できる状態とされる（図４を参照）。ちなみに、詳細は後述するが、各々の切断用トーチ１２に鉄骨２との間隔等を測定するセンサー（図示は省略）が設置されている。
【００２０】
移動手段１１は、鉄骨２の側方において同鉄骨２の高さ方向（鉛直方向）に十分な長さＬを有する走行レール１４が配置されている。この走行レール１４は略全ての規格の鉄骨高さより長い帯状に形成されており、鉄骨２の側方において鉛直方向に配置されるように、上端部がスライドフレーム５の先端部に連結された逆Ｌ字部材１５の鉛直部分１５ａに接合されている（図２及び図３を参照）。
【００２１】
走行レール１４には、同走行レール１４に沿って鉛直方向に移動可能な構成で走行ブロック１６が設けられている。この走行ブロック１６はＬ字形状に形成されており、一片に前記走行ブロック１６を移動させるための駆動装置１７が設けられている（図４を参照）。駆動装置１７は、走行レール１４を両側方から複数の移動ローラ１８…で挟み込み、同移動ローラ１８…にモータ１９で駆動力を与え、走行ブロック１６全体を走行レール１４に沿って移動させる構成とされている（図３及び図４を参照）。
【００２２】
走行ブロック１６の他片には、鉄骨２の横断方向に移動可能な構成でアーム２０が設けられており、このアーム２０の先端に切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）が取り付けられている。すなわち、走行ブロック１６の他片に駆動装置２１が設けられており、同駆動装置２１のモータ２２でアーム２０の側面に形成されたラック（図示を省略）に駆動力を与え、同アーム２０を水平方向に移動させる構成とされている（請求項３記載の発明）。
【００２３】
スライドフレーム５の伸縮、及び鉄骨クランプ８による鉄骨２の支持、並びに切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）の移動は、予め切断する鉄骨２の寸法等が入力された制御装置（図示を省略）を用いて遠隔操作される。具体的には、入力された鉄骨２の長さデータに基づき、スライドフレーム５を伸縮する第１工程と、入力された鉄骨２の断面データに基づき、鉄骨２の上フランジ２ａを鉄骨クランプ８で挟み込む第２工程と、同じく入力された鉄骨２の断面データに基づき、各々の切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）が鉄骨２の切断開始位置まで到達し、且つ同鉄骨２の上フランジ２ａ（ウエブ２ｂ、下フランジ２ｃ）との間隔が所定の間隔（切断するに良好な間隔）となるように、センサーで測定しながら駆動装置１７、２１を制御し、切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）を移動させる第３工程と、移動させた後に切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）の切断用トーチ１２を着火して、やはり入力された鉄骨２の断面データに基づき、センサーで鉄骨２の上フランジ２ａ（ウエブ２ｂ、下フランジ２ｃ）との間隔を測定しながら駆動装置１７、２１を制御し、切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）を移動させて鉄骨２を切断し、その後、切断用トーチ１２を消火する第４工程とが、制御装置にプログラムされており、作業員は安全な場所から上記構成の鉄骨切断装置１を切断する鉄骨２の上方にクレーン３で釣り込み、制御装置の作業開始ボタンを押すだけで、全ての切断工程が実施される。つまり、作業員は安全な場所から全ての切断作業を遠隔操作できるので、安全性が高い。
【００２４】
また、上記構成の鉄骨切断装置１は、軸方向に間隔を開けて切断具１０、１０が配置されているため、鉄骨２を一度に切断し解体することができ、作業効率が極めて高い。特に、本実施例の鉄骨切断装置１は、鉄骨２の上フランジ２ａを切断する切断具１０ａと、ウエブ２ｂを切断する切断具１０ｂと、下フランジ２ｃを切断する切断具１０ｃとを有するため、迅速に鉄骨２を切断することができ、更に作業効率の向上を図ることができる。
【００２５】
なお、切断用トーチ１２はサーボモータ等によって回転可能に支持され、同サーボモータ等を制御装置によって制御し、切断用トーチ１２の角度を制御する構成とされていると、好都合である。
【実施例２】
【００２６】
上記実施例１の鉄骨切断装置１は、クレーン３によって吊り下げ支持される構成とされているが、図５に示すように建設機械２３のアーム２４に連結され支持される構成でも良い（請求項５記載の発明）。すなわち、本体フレーム４に形成されたアタッチメント（図示を省略）が、アーム２４の先端に回転可能にピン連結されている。
ちなみに、鉄骨切断装置１を建設機械２３のアーム２４に連結し、同鉄骨切断装置１で比較的低い位置の鉄骨２を切断する場合は、手動で遠隔操作することもできる。
【実施例３】
【００２７】
上記実施例１の鉄骨切断装置１等は、切断具１０がガス切断具で構成されているが、プラズマ切断具やレーザー切断具等で構成されても良い。
【実施例４】
【００２８】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】実施例１の鉄骨切断装置を示した正面図である。
【図２】実施例１の鉄骨切断装置を示した側面図である。
【図３】移動手段と切断具の構成を詳細に示した側面図である。
【図４】移動手段と切断具の構成を詳細に示した平面図である。
【図５】実施例２の鉄骨切断装置を示した正面図である。
【符号の説明】
【００３０】
１ 鉄骨切断装置
２ 切断する鉄骨
２ａ 上フランジ
２ｂ ウエブ
２ｃ 下フランジ
３ クレーン
４ 本体フレーム
５ スライドフレーム
８ 鉄骨クランプ
１０ａ、１０ｂ、１０ｃ 切断具
１１ 移動手段
１２ 切断用トーチ
１３ 点火用バーナ（着火手段）
１４ 走行レール
１６ 走行ブロック
２０ アーム
２３ 建設機械
２４ 建設機械のアーム
【技術分野】
【０００１】
この発明は、構造物（建物）の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
構造物の鉄骨を切断し解体する際には、解体する鉄骨をクレーンで吊り下げ支持しつつ、切断装置を持った作業員が前記鉄骨上に上り切断するのが一般的であり、作業員の移動に時間が掛かり作業効率が悪く、しかも高所作業のため危険性が高い問題を有していた。
【０００３】
そのため、安全な場所から遠隔操作により鉄骨を切断できる構成の切断装置が開発され特許出願されている。例えば、特許文献１、２には、建設機械などのアームに取り付けられた鉄骨切断装置が開示されており、同鉄骨切断装置は鉄骨クランプと切断具を有し、作業員が安全な場所から遠隔操作して鉄骨クランプで切断する鉄骨を支持しつつ、切断具（切断用トーチ）で切断できる構成とされている。
【特許文献１】特開平６−３１３３６５号公報
【特許文献２】特開２００５−２６８８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記特許文献１、２の鉄骨切断装置は、安全な場所から遠隔操作により鉄骨を切断できる構成とされているので、作業員が鉄骨上に上がる必要がなく、作業の効率性と安全性の向上が期待できる。しかし、鉄骨の軸方向に間隔を開けて切断具を配置する技術的思想がない、即ち切断具は一つしかない。つまり、鉄骨を解体するためには、同鉄骨の両側を切断する必要があるが、鉄骨の両側を一度に切断できる構成とされていないので、作業効率の更なる向上を図れる余地が残されている。
【０００５】
本発明の目的は、軸方向に間隔を開けて切断具を有し、同切断具を鉄骨の軸方向、横断方向、高さ方向に予め前記鉄骨の寸法等が入力された制御装置を用いて、又は手動により遠隔操作する構成とし、安全な場所から鉄骨を切断できるだけでなく、作業効率の飛躍的な向上を図れる鉄骨切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項１に記載した発明に係る鉄骨切断装置は、
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする。
【０００７】
請求項２に記載した発明に係る鉄骨切断装置は、
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
建設機械などのアームに支持される本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする。
【０００８】
請求項３記載の発明は、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置において、
鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有することを特徴とする。
【０００９】
請求項４記載の発明は、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置において、
移動手段は、鉄骨の側方において同鉄骨の高さ方向に十分な長さを有する走行レールが配置されており、同走行レールの上端部はスライドフレームに連結されていること、
走行レールに、同走行レールに沿って鉄骨の高さ方向に移動可能な構成で走行ブロックが設けられていること、
走行ブロックに、鉄骨の横断方向に移動可能な構成でアームが設けられており、同アームの先端に切断具が取り付けられていることを特徴とする。
【００１０】
請求項５記載の発明は、請求項１〜４のいずれか一に記載した鉄骨切断装置において、
切断具は切断用トーチと着火手段から成り、
切断用トーチに鉄骨との間隔等を測定するセンサーが設置されており、同切断用トーチ及び着火手段は、前記センサーの測定データに基づき制御装置を用いて遠隔操作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
本発明に係る鉄骨切断装置は、軸方向に間隔を開けて切断具を有し、同切断具を鉄骨の軸方向、横断方向、高さ方向に予め前記鉄骨の寸法等が入力された制御装置を用いて、又は手動により遠隔操作する構成としたので、作業員は安全な場所から全ての切断作業を遠隔操作でき、安全性が高い。
【００１２】
また、軸方向に間隔を開けて切断具が配置されているので、鉄骨を一度に切断し解体することができ、作業効率が極めて高い。特に、請求項２に係る鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有するので、迅速に鉄骨を切断することができ、更に作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
クレーンによって吊り下げられる本体フレームには、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられている。両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている。スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は遠隔操作により行う。
【実施例１】
【００１４】
請求項１〜４に係る鉄骨切断装置の実施例を、図１〜図４に基づいて説明する。この鉄骨切断装置１は、構造物の鉄骨（即ち、Ｈ型鋼梁又はＩ型鋼梁）２を切断し解体する際に好適に採用される。
【００１５】
本実施例の鉄骨切断装置１は、クレーン３によって吊り下げられる本体フレーム４に、相反する向きに突き出したスライドフレーム５、５が軸方向に伸縮可能な構成で設けられている（図１を参照）。
【００１６】
本体フレーム４の上面部には、吊り下げワイヤー６が連結された治具７が設けられており、前記吊り下げワイヤー６にクレーン３が引っ掛けられ鉄骨切断装置１全体が吊り下げられる。この本体フレーム４は鞘管構造とされており、両端部に差し込まれたスライドフレーム５、５がそれぞれ駆動装置（図示を省略）によって伸縮する構成とされている。すなわち、図示は省略するが、駆動装置のモータでスライドフレーム５の側面に形成されたラックに駆動力を与え、同スライドフレーム５を本体フレーム４から出し入れする構成とされている。
【００１７】
本体フレーム４の下面部には、軸方向に間隔を開けて鉄骨２を支持する鉄骨クランプ８、８が設けられている。鉄骨クランプ８は、通例のクランプ機構と略同様の構成とされており、上下の固定腕（図示を省略）で鉄骨２の上フランジ２ａが挟み込まれる。
【００１８】
両スライドフレーム５、５は、切断時に荷重が加わって鉄骨切断装置１が下方に移動して切断用トーチ１２を破損しないように先端部に支持脚９が一体化されている。このスライドフレーム５、５に切断具１０の移動手段１１が設けられており、前記切断具１０は移動手段１１で鉄骨２の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされている（図２及び図３を参照）。
【００１９】
具体的に云うと、本実施例の鉄骨切断装置１は、鉄骨２の上フランジ２ａを切断する切断具１０ａと、ウエブ２ｂを切断する切断具１０ｂと、下フランジ２ｃを切断する切断具１０ｃとを有する（請求項２記載の発明）。各々の切断具１０ａ、１０ｂ、１０ｃは、通例のガス切断具と同様の構成とされており、切断用トーチ１２と着火手段である点火用バーナ１３から成り、例えば本体フレーム４の内部空隙に収容されたガスボンベ（図示を省略）から切断トーチ１２にガスが供給され、点火用バーナ１３によって着火され鉄骨２を切断できる状態とされる（図４を参照）。ちなみに、詳細は後述するが、各々の切断用トーチ１２に鉄骨２との間隔等を測定するセンサー（図示は省略）が設置されている。
【００２０】
移動手段１１は、鉄骨２の側方において同鉄骨２の高さ方向（鉛直方向）に十分な長さＬを有する走行レール１４が配置されている。この走行レール１４は略全ての規格の鉄骨高さより長い帯状に形成されており、鉄骨２の側方において鉛直方向に配置されるように、上端部がスライドフレーム５の先端部に連結された逆Ｌ字部材１５の鉛直部分１５ａに接合されている（図２及び図３を参照）。
【００２１】
走行レール１４には、同走行レール１４に沿って鉛直方向に移動可能な構成で走行ブロック１６が設けられている。この走行ブロック１６はＬ字形状に形成されており、一片に前記走行ブロック１６を移動させるための駆動装置１７が設けられている（図４を参照）。駆動装置１７は、走行レール１４を両側方から複数の移動ローラ１８…で挟み込み、同移動ローラ１８…にモータ１９で駆動力を与え、走行ブロック１６全体を走行レール１４に沿って移動させる構成とされている（図３及び図４を参照）。
【００２２】
走行ブロック１６の他片には、鉄骨２の横断方向に移動可能な構成でアーム２０が設けられており、このアーム２０の先端に切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）が取り付けられている。すなわち、走行ブロック１６の他片に駆動装置２１が設けられており、同駆動装置２１のモータ２２でアーム２０の側面に形成されたラック（図示を省略）に駆動力を与え、同アーム２０を水平方向に移動させる構成とされている（請求項３記載の発明）。
【００２３】
スライドフレーム５の伸縮、及び鉄骨クランプ８による鉄骨２の支持、並びに切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）の移動は、予め切断する鉄骨２の寸法等が入力された制御装置（図示を省略）を用いて遠隔操作される。具体的には、入力された鉄骨２の長さデータに基づき、スライドフレーム５を伸縮する第１工程と、入力された鉄骨２の断面データに基づき、鉄骨２の上フランジ２ａを鉄骨クランプ８で挟み込む第２工程と、同じく入力された鉄骨２の断面データに基づき、各々の切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）が鉄骨２の切断開始位置まで到達し、且つ同鉄骨２の上フランジ２ａ（ウエブ２ｂ、下フランジ２ｃ）との間隔が所定の間隔（切断するに良好な間隔）となるように、センサーで測定しながら駆動装置１７、２１を制御し、切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）を移動させる第３工程と、移動させた後に切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）の切断用トーチ１２を着火して、やはり入力された鉄骨２の断面データに基づき、センサーで鉄骨２の上フランジ２ａ（ウエブ２ｂ、下フランジ２ｃ）との間隔を測定しながら駆動装置１７、２１を制御し、切断具１０ａ（１０ｂ、１０ｃ）を移動させて鉄骨２を切断し、その後、切断用トーチ１２を消火する第４工程とが、制御装置にプログラムされており、作業員は安全な場所から上記構成の鉄骨切断装置１を切断する鉄骨２の上方にクレーン３で釣り込み、制御装置の作業開始ボタンを押すだけで、全ての切断工程が実施される。つまり、作業員は安全な場所から全ての切断作業を遠隔操作できるので、安全性が高い。
【００２４】
また、上記構成の鉄骨切断装置１は、軸方向に間隔を開けて切断具１０、１０が配置されているため、鉄骨２を一度に切断し解体することができ、作業効率が極めて高い。特に、本実施例の鉄骨切断装置１は、鉄骨２の上フランジ２ａを切断する切断具１０ａと、ウエブ２ｂを切断する切断具１０ｂと、下フランジ２ｃを切断する切断具１０ｃとを有するため、迅速に鉄骨２を切断することができ、更に作業効率の向上を図ることができる。
【００２５】
なお、切断用トーチ１２はサーボモータ等によって回転可能に支持され、同サーボモータ等を制御装置によって制御し、切断用トーチ１２の角度を制御する構成とされていると、好都合である。
【実施例２】
【００２６】
上記実施例１の鉄骨切断装置１は、クレーン３によって吊り下げ支持される構成とされているが、図５に示すように建設機械２３のアーム２４に連結され支持される構成でも良い（請求項５記載の発明）。すなわち、本体フレーム４に形成されたアタッチメント（図示を省略）が、アーム２４の先端に回転可能にピン連結されている。
ちなみに、鉄骨切断装置１を建設機械２３のアーム２４に連結し、同鉄骨切断装置１で比較的低い位置の鉄骨２を切断する場合は、手動で遠隔操作することもできる。
【実施例３】
【００２７】
上記実施例１の鉄骨切断装置１等は、切断具１０がガス切断具で構成されているが、プラズマ切断具やレーザー切断具等で構成されても良い。
【実施例４】
【００２８】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】実施例１の鉄骨切断装置を示した正面図である。
【図２】実施例１の鉄骨切断装置を示した側面図である。
【図３】移動手段と切断具の構成を詳細に示した側面図である。
【図４】移動手段と切断具の構成を詳細に示した平面図である。
【図５】実施例２の鉄骨切断装置を示した正面図である。
【符号の説明】
【００３０】
１ 鉄骨切断装置
２ 切断する鉄骨
２ａ 上フランジ
２ｂ ウエブ
２ｃ 下フランジ
３ クレーン
４ 本体フレーム
５ スライドフレーム
８ 鉄骨クランプ
１０ａ、１０ｂ、１０ｃ 切断具
１１ 移動手段
１２ 切断用トーチ
１３ 点火用バーナ（着火手段）
１４ 走行レール
１６ 走行ブロック
２０ アーム
２３ 建設機械
２４ 建設機械のアーム
【特許請求の範囲】
【請求項１】
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする、鉄骨切断装置。
【請求項２】
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
建設機械などのアームに支持される本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする、鉄骨切断装置。
【請求項３】
鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有することを特徴とする、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置。
【請求項４】
移動手段は、鉄骨の側方において同鉄骨の高さ方向に十分な長さを有する走行レールが配置されており、同走行レールの上端部はスライドフレームに連結されていること、
走行レールに、同走行レールに沿って鉄骨の高さ方向に移動可能な構成で走行ブロックが設けられていること、
走行ブロックに、鉄骨の横断方向に移動可能な構成でアームが設けられており、同アームの先端に切断具が取り付けられていることを特徴とする、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置。
【請求項５】
切断具は切断用トーチと着火手段から成り、
切断用トーチに鉄骨との間隔等を測定するセンサーが設置されており、同切断用トーチ及び着火手段は、前記センサーの測定データに基づき制御装置を用いて遠隔操作されることを特徴とする、請求項１〜４のいずれか一に記載した鉄骨切断装置。
【請求項１】
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
クレーンによって吊り下げられる本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする、鉄骨切断装置。
【請求項２】
構造物の鉄骨を切断し解体する際に用いられる鉄骨切断装置であって、
建設機械などのアームに支持される本体フレームに、相反する向きに突き出したスライドフレームが軸方向に伸縮可能な構成で設けられており、軸方向に間隔を開けて、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプが設けられていること、
前記の両スライドフレームに切断具の移動手段が設けられており、前記切断具は移動手段で鉄骨の横断方向、高さ方向に移動可能な構成とされていること、
スライドフレームの伸縮、及び鉄骨クランプによる鉄骨の支持、並びに切断具の移動は、遠隔操作により行うことを特徴とする、鉄骨切断装置。
【請求項３】
鉄骨切断装置は、鉄骨の上フランジを切断する切断具と、ウエブを切断する切断具と、下フランジを切断する切断具とを有することを特徴とする、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置。
【請求項４】
移動手段は、鉄骨の側方において同鉄骨の高さ方向に十分な長さを有する走行レールが配置されており、同走行レールの上端部はスライドフレームに連結されていること、
走行レールに、同走行レールに沿って鉄骨の高さ方向に移動可能な構成で走行ブロックが設けられていること、
走行ブロックに、鉄骨の横断方向に移動可能な構成でアームが設けられており、同アームの先端に切断具が取り付けられていることを特徴とする、請求項１又は２に記載した鉄骨切断装置。
【請求項５】
切断具は切断用トーチと着火手段から成り、
切断用トーチに鉄骨との間隔等を測定するセンサーが設置されており、同切断用トーチ及び着火手段は、前記センサーの測定データに基づき制御装置を用いて遠隔操作されることを特徴とする、請求項１〜４のいずれか一に記載した鉄骨切断装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００７−１４６５７１（Ｐ２００７−１４６５７１Ａ）
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３４５０５８（Ｐ２００５−３４５０５８）
【出願日】平成１７年１１月３０日（２００５．１１．３０）
【出願人】（０００００３６２１）株式会社竹中工務店 (1,669)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月３０日（２００５．１１．３０）
【出願人】（０００００３６２１）株式会社竹中工務店 (1,669)
【Ｆターム（参考）】
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