説明

鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造

【課題】仕口の設計の自由度を大きくする。
【解決手段】第一ウェブプレート50、第二ウェブプレート60、第三ウェブプレート70の上下に、第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、第三外ダイアフラムプレート300を対向して配置して板面を溶接すると共に、スリット104、106、304、304を入れて分割した構成は、例えば鋼管柱の角部で外ダイアフラムプレートを四つに分割する構成やスリットの間にウェブプレートに挿入して溶接する構成と比較し、部品点数(分割数)を少なくすることができる。よって、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。また、梁成の異なる鉄骨梁を含む複数の鉄骨梁を鋼管柱に接合する構成であっても、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造として、鉄骨柱を分断することなく鉄骨柱の外周に上下2枚のダイアフラムを溶接し、このダイアフラムに鉄骨梁端部を接合する外ダイアフラム構造が知られている。
【0003】
このような外ダイアフラム構造において、角形鋼管柱の任意の側面に直交する外ダイアフラムが側面の幅方向で2分割した2枚の分割ダイアフラムで構成され、2枚の分割ダイアフラムで角型鋼管柱の側面に接合される鉛直スチフナーを挟み込んで接合する鋼管柱と鉄骨梁の接合構造が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0004】
しかし、分割ダイアフラムで鉛直スチフナーを挟み込んで接合する構成の場合、外ダイアフラムは鉛直スチフナーの位置毎に分割する必要がある。よって、仕口の設計の自由度が制限される。このため、構造によっては、外ダイアフラムの分割数が増え、その結果、施工性が悪くなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262697号公報
【特許文献2】特開2002−173978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記を考慮し、仕口の設計の自由度を大きくすることができる鉄骨柱と鉄骨梁の接合構造を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、第一の鉄骨梁の端部が接合される第一のウェブプレートと、前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の上端部が接合される第一の外ダイアフラムプレートと、を有し、前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第一のウェブプレートの上端面に沿って形成されたスリットによって分割されていると共に、分割された前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記スリット位置で、夫々前記第一のウェブプレートに接合されている。
【0008】
したがって、第一の外ダイアフラムプレートは第一のウェブプレートの上端面に板面が接合されているので、例えば鉄骨柱の角部で外ダイアフラムプレートを四つに分割する構成やスリットの間にウェブプレートに挿入して溶接する構成と比較し、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。
【0009】
請求項2の発明は、前記鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、前記第一の鉄骨梁と交差する方向に配置され且つ前記第一の鉄骨梁と梁成が異なる第二の鉄骨梁の端部が接合される第二のウェブプレートを有し、前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第二のウェブプレートの上端面に板面が接合されると共に、前記第二の鉄骨梁の上端部が接合され、前記第一の外ダイアフラムプレートと対向して配置され、前記第二のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の下端部が接合される第二の外ダイアフラムプレートと、前記第一の外ダイアフラムプレートと対向し且つ前記第二の外ダイアフラムプレートと上下方向の位置が異なって配置され、前記第一のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第二のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第二の鉄骨梁の下端部が接合される第三の外ダイアフラムプレートと、を備える。
【0010】
したがって、一枚の第一の外ダイアフラムプレートに複数の鉄骨梁が接合される構成であっても、第一の外ダイアフラムプレートの分割数が増えない。よって、第一の外ダイアフラムプレートの分割数が増えることによる施工性の悪化が防止される。
【0011】
また、梁成が異なる第一の鉄骨梁と第二の鉄骨梁とが接合される構成であっても、第二及び第三の外ダイアフラムプレートが、それぞれ第一の鉄骨梁又は第二の鉄骨梁が接合されない第一又は第二のウェブプレートには接合されていないので、第二及び第三の外ダイアフラムプレートが第一又は第二のウェブプレートと干渉しない。また、干渉を避けるために第二及び第三の外ダイアフラムプレートを分割する必要がない。
【0012】
請求項3の発明は、鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、第一の鉄骨梁の端部が接合される第一のウェブプレートと、前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の下端部が接合される第一の外ダイアフラムプレートと、を有し、前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第一のウェブプレートの下端面に沿って形成されたスリットによって分割されていると共に、分割された前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記スリット位置で、夫々前記第一のウェブプレートに接合されている。
【0013】
したがって、第一の外ダイアフラムプレートは第一のウェブプレートの下端面に板面が接合されているので、例えば鉄骨柱の角部で外ダイアフラムプレートを四つに分割する構成やスリットの間にウェブプレートに挿入して溶接する構成と比較し、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。
【0014】
請求項4の発明は、前記鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、前記第一の鉄骨梁と交差する方向に配置され且つ前記第一の鉄骨梁と梁成が異なる第二の鉄骨梁の端部が接合される第二のウェブプレートを有し、前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第二のウェブプレートの下端面に板面が接合されると共に、前記第二の鉄骨梁の下端部が接合され、前記第一の外ダイアフラムプレートと対向して配置され、前記第二のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の上端部が接合される第二の外ダイアフラムプレートと、前記第一の外ダイアフラムプレートと対向し且つ前記第二の外ダイアフラムプレートと上下方向の位置が異なって配置され、前記第一のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第二のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第二の鉄骨梁の上端部が接合される第三の外ダイアフラムプレートと、を備える。
【0015】
したがって、一枚の第一の外ダイアフラムプレートに複数の鉄骨梁が接合される構成であっても、第一の外ダイアフラムプレートの分割数が増えない。よって、第一の外ダイアフラムプレープレートの分割数が増えることによる施工性の悪化が防止される。
【0016】
また、梁成が異なる第一の鉄骨梁と第二の鉄骨梁とが接合される構成であっても、第二及び第三の外ダイアフラムプレートが、それぞれ第一の鉄骨梁又は第二の鉄骨梁が接合されない第一又は第二のウェブプレートには接合されていないので、第二及び第三の外ダイアフラムプレートは、第一又は第二のウェブプレートと干渉しない。また、干渉を避けるために第二及び第三の外ダイアフラムプレートを分割する必要がない。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄骨柱と鉄骨梁の接合構造が適用されて接合された鋼管柱と鉄骨梁との仕口の斜視図である。
【図2】鋼管柱にセメントが充填される前の状態における図1の分解斜視図である。
【図3】図1の矢印R方向に見た立面図である。
【図4】図1の矢印S方向に見た立面図である。
【図5】鉄骨梁が接合される前の状態における図3及び図4の5−5線に沿った矢視図である。
【図6】鉄骨梁が接合される前の状態における図3及び図4の6−6線に沿った矢視図である。
【図7】鉄骨梁が接合される前の状態における図3及び図4の7−7線に沿った矢視図である。
【図8】第一外ダイアフラムプレートの下面と第一ウェブプレートとの接合部位を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
図1〜図8を用いて、本発明の実施形態に係る鉄骨柱と鉄骨梁の接合構造が適用されて接合された鉄骨柱と鉄骨梁との仕口(接合部位)を説明する。また、本実施形態では、梁成の異なる鉄骨梁を含む複数の鉄骨梁が鉄骨柱に外ダイアダイアフラム構造で接合された仕口とされている。
【0020】
図1に示すように、鋼管柱10に3つの鉄骨梁20、30、40が接合されている。鋼管柱10は、側面12、14、16、18で構成された水平断面が略四角形状の鋼管とされている。また、本実施形態では、鋼管柱10は、鋼管の内部にコンクリートKが充填されたコンクリート充填鋼管構造(CFT; Concrete Filled Steel Tube)とされている。
【0021】
鉄骨梁20は鋼管柱10の側面14側に接合され、鉄骨梁30は鋼管柱10の側面12側に接合され、鉄骨梁40は、鋼管柱10の側面16側に接合されている。
【0022】
なお、鉄骨梁30及び鉄骨梁40の長手方向をX方向とし、鉄骨梁20の長手方向をY方向とする。また、鋼管柱10の軸方向(長手方向)、すなわち鉛直方向をZ方向とする。また、平面視において、鋼管柱10の軸心Gに向かう方向を内側方向とし、反対方向(軸心Gから離れる方向)を外側方向とする。また、平面視において、X方向とY方向とは直交する。
【0023】
本実施形態では、鉄骨梁20、30、40は、断面がH形状のH形鋼とされている。すなわち、鉄骨梁20、30、40は、上側のフランジ22、32、42と、下側のフランジ24、34、44と、ウェブ26、36、46と、で構成されている。
【0024】
X方向に沿って配置された鉄骨梁30と鉄骨梁40とは梁成が同じH形鋼であるが、Y方向に沿って配置された鉄骨梁20は、鉄骨梁30、40よりも梁成が短いH形鋼となっている(図4も参照)。なお、「梁成」とは梁断面における下端から上端までの長さとされている。
【0025】
図1〜図4に示すように、鋼管柱10の側面12、14、16には、それぞれ第一ウェブプレート50、第二ウェブプレート60、第三ウェブプレート70(図3)が溶接接合されている。
【0026】
図1、図2、図4に示すように、第一ウェブプレート50は、Y方向を面外方向として配置され、軸方向(Z方向)に沿って側端面50Aが鋼管柱10の側面14に溶接接合されている。図1〜図3に示すように、第二ウェブプレート60は、X方向を面外方向として配置され、軸方向(Z方向)に沿って側端面60Aが鋼管柱10の側面12に溶接接合されている。図3に示すように、第三ウェブプレート70は、X方向を面外方向として配置され、軸方向(Z方向)に沿って側端面70Aが鋼管柱10の側面16に溶接接合されている。
【0027】
図3、図4に示すように、第一ウェブプレート50の上端面50U、第二ウェブプレート60の上端面60U、及び第三ウェブプレート70の上端面70Uの、Z方向の位置は同じとされている。
【0028】
鉄骨梁30と鉄骨梁40とは梁成が同じであるので、第二ウェブプレート60の下端面60L及び第三ウェブプレート70の下端面70LのZ方向の位置は同じとされている。しかし、鉄骨梁20は、鉄骨梁30、40よりも梁成が短いので、これに応じて第一ウェブプレート50の下端面50Lは、第二ウェブプレート60の下端面60L及び第三ウェブプレート70の下端面70LよりもZ方向の位置が上側に位置する。
【0029】
図1〜図4に示すように、鋼管柱10の外周面10A(側面12、14、16、18)には、それぞれ第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、第三外ダイアフラムプレート300が溶接接合されている。
【0030】
第一外ダイアフラムプレート100は、第一ウェブプレート50の上端面50U、第二ウェブプレート60の上端面60U、及び第三ウェブプレート70の上端面70Uの上に配置され、夫々隅肉溶接されている(図8の隅肉溶接Mを参照)。
【0031】
図5に示すように、第一外ダイアフラムプレート100は、平面視において、略三角形状とされ、中央部分に鋼管柱10の断面外径(外周面10A)と略同形状の孔部102が形成されている。そして、この孔部102の全周に亘って鋼管柱10の外周面10A(側面12、14、16、18)と隅肉溶接されている。つまり、鋼管柱10に溶接接合される部位が孔部102とされている。なお、後述するように、第一外ダイアフラムプレート100は、スリット104、106によって分割プレート110と分割プレート120とに分割されているので、孔部102は正確には「孔」ではなく、スリット104、106部分で隙間があいている。
【0032】
第一外ダイアフラムプレート100は、第一ウェブプレート50の上端面50Uに沿って形成されたスリット104とスリット106とによって、同形状の分割プレート110と分割プレート120とに分割されている。言い換えると、第一外ダイアフラムプレート100は、分割プレート110と分割プレート120とで構成さている。
【0033】
分割プレート110、120は、内側に凹部112、122が形成され、凹部112、122が鋼管柱10の外周面10Aに隅肉溶接されている。なお、凹部112、122が、前述した孔部102を構成する。しかし、前述したように、鋼管柱10に溶接接合された状態では、スリット104、106部分で隙間があいている。
【0034】
図8に示すように、第一外ダイアフラムプレート100の下面(下側の板面)100Lは、スリット104の両側がそれぞれ第一ウェブプレート50の上端面50Uに、隅肉溶接Mで接合されている。
【0035】
図1、図2、図4に示すように、第二外ダイアフラムプレート200は、第一ウェブプレート50の下に、第一外ダイアフラムプレート100と上下方向に対向して配置されている。そして、第二外ダイアフラムプレート200の上面(上側の板面)200Uが第一ウェブプレート50の下端面50Lに隅肉溶接されている。
【0036】
図1、図2、図4、図6に示すように、第二外ダイアフラムプレート200の内側には、凹部204が形成され、この凹部204が鋼管柱10の側面12、14、16に隅肉溶接されている。図6に示すように、第二外ダイアフラムプレート200のY方向の内側端部200A,200Bは、第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70には溶接されていない。なお、図6では、第二外ダイアフラムプレート200の内側端部200A,200Bと、第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70と、は接触していないが(隙間があるが)、接触していてもよい。
【0037】
図1、図2、図4に示すように、第二外ダイアフラムプレート200は、第一ウェブプレート50の下に、第一外ダイアフラムプレート100と上下方向に対向して配置されている。そして、第二外ダイアフラムプレート200の上面(上側の板面)200Uが第一ウェブプレート50の下端面50Lに隅肉溶接されている。
【0038】
図1〜図3に示すように、第三外ダイアフラムプレート300は、第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70の下に、第一外ダイアフラムプレート100と上下方向に対向して配置されている。そして、第三外ダイアフラムプレート300の上面(上側の板面)300Uが、第二ウェブプレート60の下端面60L及び第三ウェブプレート70の下端面70Lと、夫々隅肉溶接されている。
【0039】
図7に示すように、第三外ダイアフラムプレート300は、平面視において、中央部分に鋼管柱10の断面外径(外周面10A)と略同形状の孔部302が形成されている。そして、この孔部302の全周に亘って鋼管柱10の外周面10A(側面12、14、16、18)と隅肉溶接されている。つまり、鋼管柱10に溶接接合される部位が孔部302とされている。なお、後述するように、第三外ダイアフラムプレート300は、スリット304、306によって分割プレート310と分割プレート320とに分割されているので、孔部302は正確には「孔」ではなく、スリット104、106部分で隙間があいている。
【0040】
第三外ダイアフラムプレート300は、第一ウェブプレート50に沿って形成されたスリット304とスリット306とによって同形状の分割プレート310と分割プレート320とに分割されている。言い換えると、第三外ダイアフラムプレート300は、分割プレート310と分割プレート320とで構成さている。なお、本実施形態においては、分割プレート310、320と第二外ダイアフラムプレート200とは、略同形状とされている。
【0041】
分割プレート310、320は、内側に凹部312、322が形成され、凹部312、322が鋼管柱10の外周面10Aに隅肉溶接されている。なお、凹部312、322が、前述した孔部302を構成する。しかし、前述したように、鋼管柱10に溶接接合された状態では、スリット304、306部分で隙間があいている。
【0042】
ここまで説明したように、第一ウェブプレート50の上下方向に(Z方向)に対向して配置された第一外ダイアフラムプレート100及び第二外ダイアフラムプレート200は、下面100L及び上面200Uが、第一ウェブプレート50の上端面50U及び下端面50Lに接合されると共に、鋼管柱10の外周面10Aに溶接されている。
【0043】
第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70の上下方向に対向して配置された第一外ダイアフラムプレート100及び第三外ダイアフラムプレート300は、下面100L及び上面200Uが、第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70の上端面60U,70U及び下端面60L,70Lに溶接されると共に、鋼管柱10の外周面10Aに溶接されている。
【0044】
そして、図1〜図4に示すように、鉄骨梁20は、ウェブ26が第一ウェブプレート50と接合プレート502を介してボルト接合され、上側のフランジ22が第一外ダイアフラムプレート100と接合プレート504、506を介してボルト接合され、下側のフランジ24が第二外ダイアフラムプレート200に接合プレート504、506を介してボルト接合されることで、鋼管柱10に接合されている。
【0045】
なお、第一外ダイアフラムプレート100のスリット104の上に接合プレート506が配置されて、鉄骨梁20の上側のフランジ22とボルト接合されている。つまり、第一外ダイアフラムプレート100を構成する分割プレート110と分割プレートの両方に跨って接合プレート506が配置され、ボルト接合されている(図1参照)。
【0046】
また、鉄骨梁30は、ウェブ36が第二ウェブプレート60と接合プレート502を介してボルト接合され、上側のフランジ32が第一外ダイアフラムプレート100(の分割プレート110)と接合プレート504、506を介してボルト接合され、下側のフランジ34が第三外ダイアフラムプレート300(の分割プレート310)に接合プレート504、506を介してボルト接合されることで、鋼管柱10に接合されている。
【0047】
また、鉄骨梁40は、ウェブ46が第三ウェブプレート70と接合プレート502を介してボルト接合され、上側のフランジ42が第一外ダイアフラムプレート100(の分割プレート120)と接合プレート504、506を介してボルト接合され、下側のフランジ44が第三外ダイアフラムプレート300(の分割プレート320)に接合プレート504、506を介してボルト接合されることで、鋼管柱10に接合されている。
【0048】
なお、本実施形態では、各ボルト接合は、高力ボルト接合(高力ボルト摩擦接合)によって接合されている。
【0049】
つぎに、本実施形態における鋼管柱10に鉄骨梁20、30、40を接合する施工方法の一例を以下に説明する。
【0050】
まず、鋼管柱10の側面12、14、16に第一ウェブプレート50、第二ウェブプレート60、第三ウェブプレート70を溶接接合する。
つぎに、第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、第三外ダイアフラムプレート300を溶接接合する。なお、第一外ダイアフラムプレート100(分割プレート110、120)を溶接接合する際には、第一ダイアフラムプレート100(分割プレート110、120)を第一ウェブプレート50上端面50U、第二ウェブプレート60の上端面60U、及び第三ウェブプレート70の上端面70Uに仮置きした状態で行なう。
つぎに、鉄骨梁20、30、40を、接合プレート502、504、506を介して、第一ウェブプレート50、第二ウェブプレート60、第三ウェブプレート70、第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、第三外ダイアフラムプレート300とボルト接合する。
そして、鋼管柱10の中にコンクリートK(図1参照)を充填する。
【0051】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
ここで、例えば、一枚の外ダイアフラムの中央部に孔を形成し、この孔を鋼管柱に通して溶接する構成の場合、施工時に柱端部から外ダイアフラムの孔に鋼管柱を通して所定の位置に設置する手間がかかる。更に、外ダイアフラムの孔と柱の間の隙間を高い精度で管理する必要となる。
また、鋼管柱の角部で外ダイアフラムプレートを四つに分割し、鋼管柱の45°方向で突合せ溶接される構成の場合、施工性は向上するが、応力(歪)が最も集中する箇所となる鋼管柱の角部近傍に溶接部が存在することになり、溶接部での早期破断が懸念される。
また、外ダイアフラムのスリットにウェブプレート挿入して(挟んで)溶接する構成の場合は、外ダイアフラムプレートはウェブプレート毎に分割する必要がある。更に、外ダイアフラムプレートのスリットの幅を高い精度で管理する必要がある。
【0053】
これに対して、本実施形態では、第一ウェブプレート50、第二ウェブプレート60、第三ウェブプレート70の、それぞれ上下に、第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、及び第三外ダイアフラムプレート300を、夫々上下方向に対向して配置し、板面(下面又は上面)を溶接し、スリット104、106、304、306を入れて分割した構成である。
【0054】
したがって、スリットの幅を高い精度で管理する必要がない。更に、施工時にスリットの幅を調整して誤差を吸収することができる。また、例えば鋼管柱の角部で外ダイアフラムプレートを四つに分割する構成や外ダイアフラムのスリットにウェブプレート挿入して(挟んで)溶接する構成と比較し、部品点数(分割数)を少なくすることができる。
【0055】
よって、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。また、切断などの加工数が削減されると共に、鉄骨柱と外ダイアフラムの組立ての際に手間が低減されるので、施工性が向上する。また、本実施形態の梁成の異なる鉄骨梁を含む複数の鉄骨梁を鋼管柱に接合する構成であっても、仕口の設計の自由度を大きくすることができる。
【0056】
また、第一外ダイアフラムプレート100(分割プレート110、120)を施工する際に、第一ダイアフラムプレート100(分割プレート110、120)を第一ウェブプレート50上端面50U、第二ウェブプレート60の上端面60U、及び第三ウェブプレート70の上端面70Uに仮置きすることができる。よって、例えば、外ダイアフラムのスリットにウェブプレート挿入して(挟んで)溶接する構成と比較し、施工性がよい。
【0057】
また、第一外ダイアフラムプレート100は、第一ウェブプレート50の上端面50Uに沿って形成されたスリット104によって分割されていると共に、分割された分割プレート110、120の夫々が、スリット104位置で、第一ウェブプレート50に接合されている。また、分割プレート110、120は接合プレート506で連結されている。
【0058】
よって、第一外ダイアフラムプレート100に均一に応力がかかると共にスリット104の開きが抑制又は防止される。
【0059】
また、梁成が異なる鉄骨梁20と鉄骨梁30、40とが接合される構成であっても、第二外ダイアフラムプレート200は、鉄骨梁20が接合されない第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70には接合されていない。よって、第二外ダイアフラムプレート200は、第二ウェブプレート60及び第三ウェブプレート70と干渉しない。或いは、干渉を避けるために第二外ダイアフラムプレート200を分割する必要がない。
【0060】
なお、第一外ダイアフラムプレート100、第二外ダイアフラムプレート200、第三外ダイアフラムプレート300は、接合される鉄骨梁20、30、40の鋼管柱10の側面12、14、16に主に応力が伝達される構成とされている。
【0061】
よって、第一外ダイアフラムプレート100は、鋼管柱10の側面12、14、16に接合されていればよい。第二外ダイアフラムプレート200は、鋼管柱10の側面12に接合されていればよい。同様に第三外ダイアフラムプレート300は、鋼管柱10の側面14、16に接合されていればよい。
【0062】
<バリエーション>
つぎに、本実施形態のバリエーションについて説明する。
【0063】
本実施形態では、第一外ダイアフラムプレート100が三つのプレートの最上部に配置された構成であったが、これに限定されない。第一外ダイアフラムプレート100が三つのプレートの最下部に配置された構成であってもよい。つまり、本実施形態が上下逆の構成であってもよい。
【0064】
本実施形態では、鉄骨梁20の梁成が、鉄骨梁30及び鉄骨梁40の梁成よりも小さい構成であったが、これに限定されない。鉄骨梁20の梁成が、鉄骨梁30及び鉄骨梁40の梁成よりも大きい構成であってもよい。なお、この場合は、第三ウェブプレート300のスリット304に第二ウェブプレート60が挿入された構成となる。但し、第三ウェブプレート300と第二ウェブプレート60とは接合されない。
【0065】
また、鉄骨梁30が、鉄骨梁20、40の梁成よりも大きい又は小さい構成であってもよい。
【0066】
本実施形態では、三つの鉄骨梁20、30、40を鋼管柱10に接合する構成であったが、これに限定されない。二つの鉄骨梁を鋼管柱に接合する構成であってもよい。或いは、四つの鉄骨梁を接合する構成であってもよい。
【0067】
<その他>
本発明は上記実施形態に限定されない。
【0068】
例えば、上記実施形態では、鋼管柱10は断面略四角形状の鋼管であったが、これに限定されない。断面が三角形や五角形以上の多角形状の鋼管であってもよいし、断面が円形の円柱であってもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施形態では、鋼管の内部にコンクリートを充填するコンクリート充填鋼管構造(CFT; Concrete Filled Steel Tube)に適用したが、これに限定されない。例えば、鉄骨造(S造)にも適用することができる。
【0070】
また、例えば、上記実施形態では、鉄骨梁は、断面がH形状のH形鋼とされていたが、これに限定されない。他の形状の形鋼や形鋼以外の鉄骨柱であってもよい。
【0071】
また、例えば、上記実施形態では、各溶接部位は隅肉溶接(図8の隅肉溶接Mを参照)によって溶接されていたが、これに限定されない。各溶接部位の溶接仕様は各溶接部位の応力状態等に応じて適宜決定すればよい。例えば、隅肉溶接に加えて、突合せ溶接や部分溶け込み溶接等を適用してもよい。
【0072】
また、例えば、上記実施形態では、鉄骨梁は、ウェブプレート及び外ダイアフラムプレートに接合プレートを介してボルト接合されていたが、これに限定されない。接合プレートが溶接接合された構成であってもよい。或いは、鉄骨梁がウェブプレート及び外ダイアフラムプレートに直接溶接接合されていてもよい。
【0073】
なお、スリット部分が溶接され実質的に一枚構成の外ダイアフラムプレートは本願発明に含まれないが、実質的に一体構成とならない程度に弱くスリット部分が溶接された構成は本願発明に含まれる。例えば、仮置きや位置決め等の目的でスリット部分の一部のみを溶接した構成は本願構成に含まれる。
【0074】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。上述の実施形態及びバリエーションは、適宜、組み合わされて実施可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10 鋼管柱(鉄骨柱)
10A 外周面
20 鉄骨梁
22 フランジ(上端部)
24 フランジ(下端部)
30 鉄骨梁
32 フランジ(上端部)
34 フランジ(下端部)
40 鉄骨梁
42 フランジ(上端部)
44 フランジ(下端部)
50 第一ウェブプレート
50A 端面
50U 上端面
50L 下端面
60 第二ウェブプレート
60A 端面
60U 上端面
60L 下端面
70 第三ウェブプレート
70A 端面
70U 上端面
70L 下端面
100 第一外ダイアフラムプレート
104 スリット
106 スリット
200 第二外ダイアフラムプレート
300 第三外ダイアフラムプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、第一の鉄骨梁の端部が接合される第一のウェブプレートと、
前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の上端部が接合される第一の外ダイアフラムプレートと、
を有し、
前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第一のウェブプレートの上端面に沿って形成されたスリットによって分割されていると共に、
分割された前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記スリット位置で、夫々前記第一のウェブプレートに接合されている、
鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。
【請求項2】
前記鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、前記第一の鉄骨梁と交差する方向に配置され且つ前記第一の鉄骨梁と梁成が異なる第二の鉄骨梁の端部が接合される第二のウェブプレートを有し、
前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第二のウェブプレートの上端面に板面が接合されると共に、前記第二の鉄骨梁の上端部が接合され、
前記第一の外ダイアフラムプレートと対向して配置され、前記第二のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の下端部が接合される第二の外ダイアフラムプレートと、
前記第一の外ダイアフラムプレートと対向し且つ前記第二の外ダイアフラムプレートと上下方向の位置が異なって配置され、前記第一のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第二のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第二の鉄骨梁の下端部が接合される第三の外ダイアフラムプレートと、
を備える請求項1に記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。
【請求項3】
鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、第一の鉄骨梁の端部が接合される第一のウェブプレートと、
前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの下端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の下端部が接合される第一の外ダイアフラムプレートと、
を有し、
前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第一のウェブプレートの下端面に沿って形成されたスリットによって分割されていると共に、
分割された前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記スリット位置で、夫々前記第一のウェブプレートに接合されている、
鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。
【請求項4】
前記鉄骨柱の外周面に前記鉄骨柱の軸方向に沿って端面が接合され、前記第一の鉄骨梁と交差する方向に配置され且つ前記第一の鉄骨梁と梁成が異なる第二の鉄骨梁の端部が接合される第二のウェブプレートを有し、
前記第一の外ダイアフラムプレートは、前記第二のウェブプレートの下端面に板面が接合されると共に、前記第二の鉄骨梁の下端部が接合され、
前記第一の外ダイアフラムプレートと対向して配置され、前記第二のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第一のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第一の鉄骨梁の上端部が接合される第二の外ダイアフラムプレートと、
前記第一の外ダイアフラムプレートと対向し且つ前記第二の外ダイアフラムプレートと上下方向の位置が異なって配置され、前記第一のウェブプレートに接合されることなく前記鉄骨柱の前記外周面に端面が突き当てられて前記外周面に接合されると共に、前記第二のウェブプレートの上端面に板面が接合され、前記第二の鉄骨梁の上端部が接合される第三の外ダイアフラムプレートと、
を備える請求項3に記載の鉄骨柱と鉄骨梁との接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72575(P2012−72575A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216900(P2010−216900)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】