説明

鉄骨軸組工法の建物

【課題】合理的に床梁を補剛(横座屈を防止)する事ができる鉄骨軸組工法の建物を提供する。
【解決手段】床20(高い剛性を有するデッキプレート21を備える)の端縁20a,20b,20c,20dが、床梁40の上端40aに対して緊結されているため、床20は、床梁40の上端40a側の補剛の機能を持つことができる。一方、補剛梁50は、床梁40の下端40b側を拘束するように床梁40に架け渡されているため、床梁40の下端40b側の補剛の機能を持つことができる。このように、床20と補剛梁50とで床梁40を補剛することによって、補剛梁50の断面を過度に大きくする必要がなくなり、合理的な架構とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨軸組工法の建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、鉄骨の柱や床梁で軸組が構成された鉄骨軸組工法の建物において、鋼製のデッキプレートの上に断熱層と防水層を設けて屋上の床(屋根)を構成することがある。デッキプレートの上の層構成を居住や歩行に適したものに変更することによって室内の床に適用することも可能である。このような床構成の場合、デッキプレートの上にコンクリートを打設して構成した床に比べて軽量なわりに剛性も高いので、床を支持する床梁の間隔を大きくすることができる。
【0003】
一方、鉄骨軸組工法の建物では、床梁の弱軸方向の変形(横座屈)を防止することで床梁の強度(許容しうる荷重)を増大させることができる。そのため、対向する床梁に補剛梁を架け渡すことが行われる。
【0004】
特許文献2には、折版(デッキプレート)床を備えた建物ユニットに、天井梁(床梁)の横座屈を防止する補強梁(補剛梁)を設けたユニット建物の記載がある。この建物では、補強梁によって、水平方向の荷重に対する剛性も増して水平方向の変形(横座屈)を抑制することができ、ユニット建物の全体的な強度を向上できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−268932号公報
【特許文献2】特開平9−317020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の建物にあっては、補強梁のみに横座屈防止部材としての機能を負担させており、高い剛性を有するデッキプレートが有効に活用されていない。従って、従来の建物の構成は合理的な架構とは言えず、合理的に床梁を補剛することが求められていた。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、床が高い剛性を有するデッキプレートを備えている場合に、合理的に床梁を補剛(横座屈を防止)する事ができる鉄骨軸組工法の建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建物は、床梁と、床梁の上端に対して端縁が緊結された金属製のデッキプレートを有する床と、床梁に、当該床梁の下端側を拘束するように架け渡された補剛梁と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る建物によれば、床(高い剛性を有するデッキプレート)の端縁が、床梁の上端に対して緊結されているため、床は、床梁の上端側の補剛の機能を持つことができる。一方、補剛梁は、床梁の下端側を拘束するように床梁に架け渡されているため、床梁の下端側の補剛の機能を持つことができる。このように、床と補剛梁とで床梁を補剛することによって、補剛梁の断面を過度に大きくする必要がなくなり、合理的な架構とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る建物において、補剛梁は、床の波状端縁を支持する床梁に架け渡されたことが好ましい。この構成によれば、床の荷重の大半を負担する波状端縁を支持する床梁に対し、補剛梁が架け渡される。従って、構造的に不利になり座屈が発生しやすい側の床梁を効率よく補剛でき、補剛梁の長さも短くできるので更に合理的な架構とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床が高い剛性を有するデッキプレートを備えている場合に、合理的に床梁を補剛(横座屈を防止)する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る建物の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る床構造の平面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】調整部材を用いない場合の構成を示す図であり、図3に対応する図である。
【図5】図2に示すV−V線に沿った断面図である。
【図6】デッキプレートの重なりのパターンを示す図である。
【図7】床を省略した床構造の平面図である。
【図8】図1においてBで示す部分の詳細な構成の拡大図である。
【図9】図8に示すIX−IX線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る床構造及び建物の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る建物1の概略構成図である。本実施形態に係る建物1は、所定の平面モジュールM(例えばM=305mm)を有する鉄骨軸組工法による工業化住宅である。建物1は、屋上階に対して本実施形態に係る床構造100が適用されている。建物1の基礎2は格子状に構築された鉄筋コンクリート造の布基礎であり、一階床3を支持するためのH形鋼からなる梁4が適宜架け渡されている。軸組は、角形鋼管からなる柱6とH形鋼からなる梁4とからなり、当該軸組に耐力パネルが適宜付加されている。二階については全ての通り上に梁(大梁)7が存在し、二階床8を支持する為の梁(小梁)9も適宜大梁7に架け渡されている。床構造100を適用することで、屋上階の床梁(屋根梁)40は建物の外周部にのみ存在し、中通りの大梁及び小梁については省略することが可能となる(図1においてAで示される部分を参照)。
【0015】
一階床3及び二階床8は、ALCからなる床パネルで構成されている。外壁12は外周部の梁に沿って立設されたALCパネルからなる。外壁12の上端は屋上階の床(屋根)の仕上面よりも高く突出してパラペットが形成されている。
【0016】
屋上階の床20(=屋根)は、デッキプレート21(波状に折り曲げ加工した鋼板)からなる屋根スラブによって構成されている。また、床20の上には、板状の合成樹脂発泡体からなる断熱材、断熱材を保護する保護板、及び保護板に接着された軟質の塩化ビニールからなる防水シートなどが敷設けられている。
【0017】
図2〜図6を参照して、建物1の床構造100の構造について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、デッキプレート21の波形状が連続する方向を「D1方向」とし、デッキプレート21の山あるいは谷が延びる方向(すなわち平面視においてD1方向と直交する方向)を「D2方向」として説明する。図2〜図5に示すように、建物1の床構造100は、D1方向に連結された複数のデッキプレート21で構成される連結体22を有する(更に、調整部材31を有する場合もある)平面視矩形状の床20と、床20の端縁を支持するように架けられた床梁40A,40B,40C,40Dと、を備えている。床20の四方の端縁20a,20b,20c,20dは、対応する床梁40A,40B,40C,40Dにそれぞれ緊結されている。なお、本実施形態において「緊結」とは、せん断力を伝達しうるように連結することを示す。床20の端縁20a,20b,20c,20dが床梁40A,40B,40C,40Dにそれぞれ緊結されることにより、床20の水平剛性が確保され、容易に剛床仮定を成立させることができる。
【0018】
床梁40A,40B,40C,40Dは、床20の四方を取り囲むように平面視矩形枠状に配置されている。床梁40Aと床梁40Bは、D2方向に対向するように配置されている。床梁40Cと床梁40Dは、D1方向に対向するように配置されている。床梁40A,40B,40C,40Dは、矩形の四隅においてそれぞれの端部が突き合わせられ、互いに緊結されている。床梁40A,40B,40C,40Dは、上フランジ41と、下フランジ42と、上フランジ41と下フランジ42を結合するウェブ43を備えている。
【0019】
デッキプレート21は、平坦な山部24と谷部26、そして山部24と谷部26をつなぐウェブ部27からなり、ウェブ部27は75〜85°程度の傾斜角を有している。デッキプレート21は、高い剛性を確保するために金属製であることが好ましい。デッキプレート21の材質は、具体的には、溶融亜鉛メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ステンレス鋼板などの鋼板が好ましい。山部24と谷部26の波形状のパターンがD1方向に連続することで、一枚のデッキプレート21が構成される。本実施形態では、一枚のデッキプレート21に山部24が三つ形成されるように波形状が連続しているが、連続の回数は特に限定されない。デッキプレート21のD1方向における両端部は、谷部26となっている(一部、ウェブ部27が立ちがっていてもよい)。
【0020】
連結体22は、複数枚のデッキプレート21をD1方向に連結したものである。一のデッキプレート21は、隣り合う他のデッキプレート21と緊結されている。具体的には、隣り合うデッキプレート21同士の一部を重ね合わせ、谷部26の重なり部分においてドリルネジ30にて緊結されている。デッキプレート21単体のピッチ(山のピッチまたは谷のピッチ)はAmm(例えば200mm)に設定されており、連結体22のデッキプレート21同士の連結部におけるピッチもAmmとなるように連結されている。ピッチAmmは平面モジュールMよりも小さく、且つ、平面モジュールMの整数分の1に一致していない。例えば図6に示すように、連結体22のD1方向の長さは、デッキプレート21同士の重なり量を変更することによってAmm単位で調整可能である。連結体22は、D2方向に対向し、波状の断面形状を有する波状端縁22a、及び波状端縁22bを有している。また、連結体22は、D1方向に対向し、直線状に延びる断面形状を有する直線状端縁22c、及び直線状端縁22dを有している。
【0021】
連結体22の波状端縁22a(床20の端縁20aに該当する)は、床梁40Aの上端40a、すなわち上フランジ41の内側片に載置されて、谷部26においてドリルネジ30にて緊結されている。連結体22の波状端縁22b(床20の端縁20bに該当する)は、床梁40Bの上端40a、すなわち上フランジ41の内側片に載置されて、谷部26においてドリルネジ30にて緊結されている。連結体22の直線状端縁22c(床20の端縁20cに該当する)は、床梁40Cの上端40a、すなわち上フランジ41の内側片に載置されて、谷部26においてドリルネジ30にて緊結されている。
【0022】
連結体22の直線状端縁22dと床梁40Dとの緊結方法は、当該直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dとの位置関係によって、緊結手段で直接的に緊結する場合と、調整部材31によって間接的に緊結する場合がある。連結体22の直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dとの位置が一致しない場合は、デッキプレート21の重なり量を増減させることでAmm単位で調整し、それでもなお一致しない場合には調整部材31を用いる。
【0023】
図4に示すように、直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dと位置が一致する場合、連結体22の直線状端縁22dは、床梁40Dの上端40a、すなわち上フランジ41の内側片に載置されて、谷部26においてドリルネジ30にて緊結される。なお、直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dと位置が一致する状態とは、緊結手段によって緊結可能な程度に、谷部26と床梁40Dの上フランジ41とが重なっている状態である。この場合、連結体22の直線状端縁22dが床20の端縁20dに該当する。
【0024】
図3に示すように、直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dと位置が一致しないことにより、直接的に緊結できない場合、連結体22の直線状端縁22dは、調整部材31を介して床梁40Dの上フランジ41の内側片に間接的に緊結される。調整部材31は、クランク状断面を有しており、デッキプレート21の山部24と重なるように平面状に広がる上平板部32と、床梁40Dの上フランジ41と重なるように平面状に広がる下平板部33と、上平板部32と下平板部33とを接続するウェブ部34と、を備えている。D1方向における調整部材31の一端である上平板部32は、連結体22の山部24に載置されてドリルネジ30にて緊結される。D1方向における調整部材31の他端である下平板部33は、床梁40Dの上端40a、すなわち上フランジ41の内側片に載置されてドリルネジ30にて緊結される。この場合、調整部材31の下平板部33が床20の端縁20dに該当する。なお、図2は調整部材31を用いた場合の様子を示している。
【0025】
なお、直線状端縁22dの谷部26と床梁40Dと位置が一致しない状態とは、緊結手段によって緊結可能な程度に、谷部26と床梁40Dの上フランジ41とが重なっていない状態である。例えば、図3に示すように、谷部26と床梁40Dの上フランジ41との間に寸法Lの空隙が形成される場合である。あるいは、空隙が形成されないとしても、谷部26と上フランジ41が僅かに接触するだけで、緊結できる程度に重なっていないような場合である。直線状端縁22dの谷部26が床梁40Dと位置が一致しないことで形成される、谷部26と床梁40Dとの間の寸法Lは、デッキプレート21同士の重なりの調整により、所定の数値よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。デッキプレート21同士の重なりを調整し、直線状端縁22dと床梁40Dとの間を所定の数値以下とすることで、単一(一種類)の調整部材31を用いて連結体22の直線状端縁22dを床梁40Dに対して間接的に緊結することができ、制定、製造すべき調整部材31の品種を減らすことができる。
【0026】
上記構成により、床20の水平剛性が確保されて、せん断力が確実に伝達され、床20の変形を防止することができる。また、床20は、床梁40の上端の弱軸方向の変位を拘束するように、床梁40に緊結されている。床梁40の上端である上フランジ41が、高い剛性を有するデッキプレート21で構成される床20に緊結されているので、床梁40の上端側の座屈が防止される。なお、上述の実施形態では床梁40と床20とを緊結するための緊結手段、及びデッキプレート21同士を緊結するための緊結手段としてドリルネジ30を例示したが、例えば、リベットなどを用いてもよい。
【0027】
次に、図7〜図9を参照して、建物1の床構造100の構成について更に詳細に説明する。図7では、床20が省略されている。図7〜図9に示すように、四方の床梁40A,40B,40C,40Dで囲まれる領域には、床梁を補剛する補剛梁50と、補剛梁50に支持された野縁受け70と、野縁受け70に支持された野縁80と、が設けられている。
【0028】
補剛梁50は、互いに対向する床梁40に架け渡されたH形鋼であり、両端がジョイント金物60によって各床梁40に接合されている。補剛梁50には、床梁40よりも梁成の小さいH形鋼が用いられている。具体的に、補剛梁50は、床20の連結体22の波状端縁22aを支持する床梁40Aと、波状端縁22bを支持する床梁40Bに架け渡されている。補剛梁50は、D1方向において所定値以下の間隔となるように、複数本架け渡されている。補剛梁50は、床梁40の上フランジ41と下フランジ42の間、すなわち床梁40の上端40aと下端40bとの間であって、上端40a寄りの位置に、補剛梁50の上フランジが、床梁40の上フランジ41より僅かに低くなるように配置されている。前述の床20が床梁40の上端40a側の弱軸方向の変位を拘束するのに対し、補剛梁50は、床梁40の下端40b側の弱軸方向の変位を拘束するように接合されている。
【0029】
ジョイント金物60は、補剛梁50と結合される補剛梁用結合部61と、床梁40と結合される床梁用結合部63と、補剛梁用結合部61の基端部から床梁40のウェブ43に沿って下方へ延びるリブ部64と、を備えている。補剛梁用結合部61は、補剛梁50の上フランジと下フランジとの間に配置され、補剛梁50のウェブと重ね合わされてボルト66によって補剛梁50と結合される。補剛梁用結合部61は、床梁40の上端40a寄りの位置に配置されている。
【0030】
床梁用結合部63は、床梁40の上フランジ41と下フランジ42との間に配置され、床梁40のウェブ43と重ね合わされてボルト66によって床梁40と結合される。床梁用結合部63の上端は補剛梁用結合部61の上端と一致している。床梁用結合部63の下端は補剛梁用結合部61の下端よりも下方まで延びており、床梁40の下端40b寄りの位置まで延びている。ボルト66により床梁用結合部63と床梁40のウェブ43とを結合する結合部分は、上下方向に複数箇所(図8、9では三箇所)設けられており、補剛梁50よりも下方側の位置にも設けられている。リブ部64は、その下端が床梁用結合部63の下端と一致するように、補剛梁用結合部61より下方へ延びている。リブ部64の縁部64aは、床梁40の下フランジ42の先端42aよりも外側に突出しないように構成されている。
【0031】
床梁用結合部63の一部とリブ部64により、補剛梁用結合部61から下方へ屈曲する屈曲部62が構成されている。この屈曲部62は、床梁40幅方向における内側の領域におさまるように、下方へ屈曲している。すなわち、ジョイント金物60のうち、補剛梁用結合部61よりも下側に位置する部分は、床梁40の下フランジ42の先端42aよりもウェブ43側の領域におさまるように(上フランジ41の先端と下フランジ42の先端とを仮想線で結んだとき、屈曲部62がその仮想線よりも外側に突出しないように)構成されている。これによって、屈曲部62(リブ部64)が内装壁82や天井ボード81と干渉することを防止することができる。従って、床梁40の下フランジ42の先端42aに沿って内装壁82を設置したとしても、ジョイント金物60が内装壁82や天井ボード81と干渉したり、内装壁82や天井ボード81の表面から突出したりすることを防止できる。
【0032】
屈曲部62の下端62a(すなわち床梁用結合部63とリブ部64の下端)は、床梁40の下端40b寄りの位置まで延び、ボルト66にて結合されている。屈曲部62の下端62aは、床梁40の下フランジ42から離れていてもよいが、下フランジ42と接触する位置まで延びていてもよい。更に、下フランジ42にまで及ぶ屈曲部62の下端62aに、下フランジ42と重ね合わされるような固定片を設け、当該固定片と下フランジ42とをボルトで固定してもよい。補剛梁50を床梁40に接合するジョイント金物60が、床梁40の下端40b寄りの位置まで下方に屈曲しているため、床梁40の下端側の部分の座屈を防止することができる。
【0033】
このようなジョイント金物60を用いることで、補剛梁50は、床梁40の下端40b側を拘束することができる。ここで、「下端40b側を拘束」とは、補剛梁50が床梁40の上端40a(上フランジ41)を除く位置で拘束されることを示す。ジョイント金物60では、複数箇所で床梁40と結合されているが、上端40aを除く少なくとも一箇所で結合されていてもよい。
【0034】
補剛梁50の下フランジにはボルト孔が所定のピッチで穿設され、当該ボルト孔に吊り木71がボルト締めされている。この吊り木71によって野縁受け70が支持されている。野縁受け70は、補剛梁50と平行にD2方向に延びている。この野縁受け70の下面には、野縁80が固定されている。野縁80は、野縁受け70と直交するようにD1方向に延びており、所定間隔で複数本並べられている。野縁80の両端は、際野縁83で受けられている。野縁80の下面には、天井ボード81が固定されている。天井ボード81は、床梁40の下端40bよりも高い位置であって、補剛梁50の下端に近い高さに設定される。このように、本実施形態に係る建物1では、天井ボード81の高さを床梁40の下端40bよりも高い位置に設定することができ、そのような高さ設定としても、補剛梁50やジョイント金物60が、天井ボード81や内装壁82の表面から突出することがない。すなわち、広い室内空間を確保することができる。
【0035】
床20より上方に延びるパラペットの裏面から上端面に沿って、防水シートを接着するためのL字断面の防水鋼板84が取り付けられている。
【0036】
次に、本実施形態に係る建物1、及び床構造100の作用・効果について説明する。
【0037】
本実施形態に係る床構造100は、少なくともD1方向に連結された複数のデッキプレート21で構成される連結体22を有する平面視矩形状の床20と、床20の端縁20a,20b,20c,20dを支持するように架けられた4本の床梁40A,40B,40C,40Dと、を備えている。また、一のデッキプレート21は、隣り合う他のデッキプレート21と緊結され、床20の四方の端縁20a,20b,20c,20dは、床梁40A,40B,40C,40Dにそれぞれ緊結されている。このような構成によって、床20の水平剛性が確保され、容易に剛床仮定が成立する床構造とすることができる。
【0038】
本実施形態に係る建物1は、床梁40と、床梁40の上端40aに対して端縁20a,20b,20c,20dが緊結された金属製のデッキプレート21を有する床20と、床梁40に、当該床梁40の下端40b側を拘束するように架け渡された補剛梁50と、を備えている。この構成によれば、床20(高い剛性を有するデッキプレート21を備える)の端縁20a,20b,20c,20dが、床梁40の上端40aに対して緊結されているため、床20は、床梁40の上端40a側の補剛の機能を持つことができる。一方、補剛梁50は、床梁40の下端40b側を拘束するように床梁40に架け渡されているため、床梁40の下端40b側の補剛の機能を持つことができる。このように、床20と補剛梁50とで床梁40を補剛することによって、補剛梁50の断面を過度に大きくする必要がなくなり、合理的な架構とすることができる。
【0039】
また、補剛梁50は、床20の波状端縁22a,22bを支持する床梁40A,40Bに架け渡されている。このように、床20の荷重の大半を負担する波状端縁22a,22bを支持する床梁40A,40Bに対し、補剛梁50が架け渡される。従って、構造的に不利になり座屈が発生しやすい側の床梁である床梁40A,40Bを効率よく補剛でき、補剛梁50の長さも短くできるので更に合理的な架構とすることができる。
【0040】
本実施形態に係る建物1では、ジョイント金物60は、床梁40の幅方向における内側の領域(下フランジ42の先端42aよりウェブ43側の領域)におさまるように下方に屈曲する屈曲部62を有している。補剛梁50は、床梁40の上端40a寄りに位置すると共に、床梁40の下端40bの弱軸方向の変位を拘束するように、ジョイント金物60を介して床梁40に接合されている。このような構成によれば、補剛梁50が床梁40の上端40a寄りの高い位置に架け渡されているため、天井の高さを高くしても、補剛梁50の部分だけが突出してしまうことを防止できる。また、ジョイント金物60が床梁40の幅方向における内側の領域から突出しない構成となっているため、天井の高さを高くしても、ジョイント金物60の屈曲部62の部分だけが内装壁の仕上がり面から突出してしまうことを防止できる。従って、突出部のない高い天井が確保された室内空間を形成することができる。また、高い剛性を有するデッキプレート21を備えた床20の端縁20a,20b,20c,20dと床梁40の上端40aとを緊結させることで、床20は、床梁40の上端40a側の補剛の機能を持つことができる。一方、補剛梁50は床梁40の下端40b側の補剛の機能を持つことができる。このように、床20と補剛梁50とで床梁40を補剛することによって、補剛梁50の断面を過度に大きくする必要がなくなり、更に天井を高くすることができる。
【0041】
また、床20は、4辺において、それぞれの床梁40A,40B,40C,40Dの上端40aに緊結されている。この構成によれば、デッキプレート21を備えた床20がせん断力を伝達しうるので、剛床仮定を成立させるために水平ブレースを架け渡す必要がなく、高い天井高を更に形成し易くすることができる。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態は一例に過ぎず、梁、柱、補剛梁、野縁などの各材料の種類や大きさや本数や組み方等は発明の趣旨の範囲内で適宜変更してもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、デッキプレート21の波形状が連続するD1方向のみにデッキプレート21が連結されており、D2方向に対向する床梁40Aと床梁40Bとの間の寸法は一枚分のデッキプレート21の長さに対応する大きさとなっていたが、床梁40A,40Bの間の寸法を大きくし、D2方向に対してもデッキプレート21が連結される構成としてもよい。この場合、一のデッキプレート21の波状端縁と他のデッキプレート21の波状端縁とを一部重ね合わせて連結する。
【0044】
また、上述の実施形態においては、より好ましい例として、床20の四方の端縁が床梁40A,40B,40C,40Dに緊結されていたが、床20は、波状端縁を支持する床梁40A,40Bのみに緊結されていてもよい。
【0045】
また、補剛梁50が、床梁40の下端40b側を拘束するように架け渡されていればよく、補剛梁50と床梁40との接合方法は、上述のようなジョイント金物を用いた方法に限られない。
【符号の説明】
【0046】
1…建物、20…床、21…デッキプレート、22…連結体、22a…波状端縁、22b…波状端縁、22c…直線状端縁、22d…直線状端縁、24…山部、26…谷部、30…ドリルネジ、31…調整部材、40…床梁、50…補剛梁、60…ジョイント金物、62…屈曲部、100…床構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床梁と、
前記床梁の上端に対して端縁が緊結された金属製のデッキプレートを有する床と、
前記床梁に、当該床梁の下端側を拘束するように架け渡された補剛梁と、を備えることを特徴とする鉄骨軸組工法の建物。
【請求項2】
前記補剛梁は、前記床の波状端縁を支持する前記床梁に架け渡されたことを特徴とする請求項1記載の鉄骨軸組工法の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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