説明

鉄(III)錯化合物の用途

本発明は、免疫防御および/または脳特性を改善する医薬の製造における、炭水化物またはその誘導体との鉄(III)錯化合物の治療学的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物またはその誘導体、特にデキストリンまたはデキストリンの酸化生成物との鉄(III)錯化合物の、特に免疫防御および/または脳特性を改善する医薬の製造における、新規な治療学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄欠乏症は、世界的な規模で、最も頻度の多い微量元素欠乏症である。それは、発展途上国における乳幼児から青年までの小児に悪影響を与えるばかりでなく、裕福な、先進工業国における非常に数多くの小児にも観察される。たとえば、カナダでは28%のティーンエイジャーに鉄欠乏症の兆候が見られる。
【0003】
免疫不全症候群、特にAIDSの治療の活性成分として、鉄(III)酸化物を使用することは、国際公開第95/35113号で知られている。
【0004】
治療的には、有用な鉄注射製剤およびそれを製造する方法が、独国特許発明第1467980号で知られている。
【0005】
非経口投与に適した鉄(III)−ポリマルトース錯化合物の製造方法は、米国特許第3076798号で知られている。
【0006】
鉄欠乏症の治療または予防における鉄−炭水化物錯化合物の使用については、国際公開第2004037865号で知られている。
【0007】
鉄欠乏症の治療または予防用の水素化デキストリンとの鉄錯化合物については、国際公開第03/087164号で知られている。
【0008】
鉄(III)−プルラン錯化合物および鉄欠乏症の治療または予防におけるそれらの使用については、国際公開第02/46241号で知られている。
【0009】
“New Aspect of Iron Therapy”, Second Ferrum Meeting, Lisbon 1994により、脳の左半球の活性および認知能力は両方とも、個人の鉄の状態に依存することが知られている。この文献でバウムガルトナー(Baumgartner)は、鉄関連貧血により、小児の精神および精神運動の発達が大きく制限されることになるというウォーター(Walter)の研究を記載する。その研究に使用される化合物は、硫酸鉄であった。しかし、硫酸鉄を75日間投与した後、ウォーターは、精神および精神運動の発達のいかなる改善も見出さなかった。
【0010】
バウムガルトナーに記載されている他の研究として、鉄療法による認知能力の顕著な改善を示す。
【0011】
さらに、バウムガルトナーは、免疫機能における鉄の状態の影響を反映する臨床研究も示す。
【0012】
硫酸鉄は、胃腸障害や歯の変色などの不快な投与量依存性2次反応を、比較的頻繁に起こすことが知られている。鉄塩化合物に由来する鉄は、遊離鉄イオンの受動的拡散にさらされる。鉄は、循環系に入ることができ、それによって、2次反応または鉄中毒を起こす。その結果、230mgの鉄/kgでのホワイト系マウスにおけるLD50値も比較的低い。したがって、脳および免疫系の発達で鉄が特に重要な小児を治療する場合、鉄塩化合物の使用は問題である。
【0013】
タッカー(Tucker)の研究である“Iron status and brain function: serum ferritin levels associated with asymmetries of cortical electrophysiology and cognitive performance”(Am.J.Clin.Nutr.1984;39:p105〜113)(これもバウムガルトナーの刊行物に記載されている)には、脳特性はフェリチン値に比例することが示されている。
【0014】
オスキー(Oski)、“Effect of Iron Therapy on Behavior Performance in Nonanemic, Iron-Deficient Infants”, PEDIATRICS 1983; Volume 71; 877〜880では、鉄デキストランを使用する。デキストランが誘発するアナフィラキシーショックを起こす可能性があるので、鉄デキストランの非経口用途は問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、発明者らは、特に乳児および青年を含む小児において、脳特性および免疫防御を改善するのに適した、耐容性がある鉄化合物を容易に発見することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
研究において、彼らは、炭水化物、特にポリマルトース(マルトデキストリン)との鉄(III)錯化合物が、特に耐容性があり、高い患者適合性を持ち、免疫防御および/または脳特性において顕著な改善を引き起こすことを実証した。また、たとえ鉄(III)−ポリマルトース錯化合物が、フェリチン値におけるゆっくりした増加に終わるとしても、免疫防御および/または脳特性における早期の顕著な改善が見出されるという事実は驚きである。この結果に基づいて、彼らは本発明を完成した。したがって、本発明は、免疫防御および/または脳特性を改善する医薬の製造における、炭水化物またはその誘導体との鉄(III)錯化合物の使用に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の範囲内の免疫防御における改善とは、免疫応答における顕著な改善を意味する。たとえば、MTT法を使用するフィトヘマグルチニン(PHA)へのリンパ球反応における顕著な改善、好中球を用いるニトロブルーテトラゾリウム試験(MBT)における改善、比濁法により測定される好中球の殺菌能(PCA)の改善、たとえば、簡易染色法によるBDフローサイトメータを用いて計測する、CD3、CD4、CD8およびCD56のようなモノクローナル抗体における、および/または麻疹、H.インフルエンザおよび破傷風に対する抗体応答における改善である。
【0018】
本発明の範囲内の脳特性の改善としては、特に、認識機能および情動行動における改善が挙げられ、たとえば、短期記憶テスト(STM)、長期記憶テスト(LTM)、ラーベン漸進性マトリシーズ検査、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)および/または情動係数(バロンEQ−i、YVテスト;若年型)における改善で表される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従って使用することができる炭水化物との鉄(III)錯化合物として、好ましくは、炭水化物が、デキストランおよびその誘導体、デキストリンおよびその誘導体、またプルラン、オリゴマーおよび/またはその誘導体からなる群から選択されるものが挙げられる。特に好ましいものとして、デキストリンまたはその酸化生成物との鉄(III)錯化合物が挙げられる。本発明による鉄(III)錯化合物の製剤の例として、たとえば、始めに記載した独国特許発明第1467980号、国際公開第04037865号、米国特許第3076798号、国際公開第03/087164号および国際公開第02/46241号の特許明細書に見出され、これらの開示の全体、特に、製造方法に関連する記載は、本明細書に組み込まれる。本明細書に従って好ましく使用される用語「デキストリン」は、D‐グルコース単位の種々の低重合体および高重合体の総称であり、テンプンの不完全な加水分解の間に形成する。また、これらは、砂糖の重合によっても製造することができる(たとえば、国際公開第02083739号、米国特許出願公開第20030044513号、米国特許第3766165号参照)。デキストリンとして、マルトデキストリンまたはポリマルトースが挙げられ、これらは、トウモロコシまたはジャガイモデンプンのアルファ−アミラーゼによる酵素による切断によって製造され、DE値(デキストロース当量)によって表される、加水分解度で特徴付けられる。また、ポリマルトースは、デキストリンの酸加水分解により、本発明に従って得ることもできる。本発明に従って使用することができる鉄(III)錯化合物の製造は、一般的に、鉄(II)または鉄(III)塩、特に塩化鉄(III)を、デキストリン特に、ポリマルトースまたはデキストリンの酸化生成物と、アルカリ性水溶液(pH>7)中で反応させ、次いで進めることによって行う。弱酸性のpH領域においても製造することができる。しかし、アルカリpH値、たとえば、>10が好ましい。
【0020】
pH値は、ゆっくりまたは漸進的に増やすのが好ましく、これは、たとえば最初弱塩基を加え、たとえば約pH3にすることによって達成することができ、さらに、中性化を強塩基で行うことができる。適切な弱塩基として、たとえば、ナトリウム炭酸塩または炭酸水素塩およびカリウム炭酸塩または炭酸水素塩のようなアルカリまたはアルカリ土類炭酸塩および炭酸水素塩、あるいはアニモニアがある。強塩基の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムのようなアルカリまたはアルカリ土類水酸化物が挙げられる。
【0021】
反応は、加熱することにより促進することができる。たとえば、温度として、ほぼ15℃から沸点程度までの範囲を使用することができる。温度は漸進的に上昇することが好ましい。たとえば、先ず、約15〜70℃までの加熱を行い、次いで温度を漸進的に沸点まで上昇することができる。
【0022】
反応時間は、たとえば、ほぼ15分から数時間程度までの範囲であり、たとえば20分〜4時間、たとえば25〜70分、たとえば30〜60分である。
【0023】
反応が行われた時、得られた溶液を室温まで冷却することができ、たとえば、場合によっては希釈し、場合によってはろ過することができる。冷却後、pH値を、酸または塩基の添加によって、中性またはわずかに低く、たとえば、5〜7の値に調整することができる。挙げられる塩基の例として、前記反応に関して記載した塩基を挙げることができる。酸として、たとえば、塩酸および硫酸が挙げられる。得られた溶液は、精製し、医薬の製造において直接使用することができる。しかし、たとえば、アルコール、たとえばエタノールのようなアルカノールによる沈殿によって、溶液から鉄(III)錯化合物を単離することも可能である。単離は、噴霧乾燥によって行うこともできる。精製は、特に塩の除去のために、従来の方法で行うことができる。これは、たとえば、逆浸透圧法によって実行することができ、そのような逆浸透圧は、たとえば、噴霧乾燥の前、あるいは生成物を医薬に直接使用する前に行うことができる。
【0024】
得られた鉄(III)錯化合物は、たとえば、鉄含有率が10〜40%重量/重量、特に20〜35%重量/重量である。これらは、一般的に、容易に水に溶解する。これらから、鉄含有率が、たとえば、1%重量/容積〜10%重量/容積の中性水溶液を製造することができる。そのような溶液は、熱的に殺菌することができる。
【0025】
鉄(III)−ポリマルトース錯化合物の製造に関しては、米国特許第3076798号を参照のこと。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯化合物を使用する。鉄(III)−ポリマルトース錯化合物は、好ましくは、分子量が20,000〜500,000ダルトンの範囲であり、好ましい実施形態は30,000〜80,000ダルトン(たとえば、ガイザー(Geisser)ら、医薬品研究((Arzneim.Forsch/Drug Res.)、42(11),12,p1439~1452(1992年),第2.2.5段落に記載されているように、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定)である。特に好ましい水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯化合物は、ヴィフオール社(Vifor AG)、スイスからMaltofer(登録商標)として市販されている。さらに好ましい実施形態では、1以上のマルトデキストリンの酸化生成物との鉄(III)錯化合物を使用する。これは、たとえば、鉄(III)塩水溶液、および1以上のマルトデキストリンを、次亜塩素酸水溶液を用いて、アルカリ範囲のpH値で酸化した生成物の水溶液から得られ、デキストロース当量が5〜37のマルトデキストリンを使用し、複数のマルトデキストリンの混合物を使用する場合、該混合物のデキストロース当量は5〜37であり、混合物中に含まれる個々のマルトデキストリンのデキストロース当量は2〜40である。そのようにして得られた錯化合物の重量平均分子量Mwは、たとえば、30kDa〜500kDaであり、好ましくは80〜350kDaであり、特に好ましくは300kDaまで(たとえば、ガイザーら、医薬品研究、42(11), 12, p1439〜1452 (1992年),第2.2.5段落に記載されているように、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定)である。この点に関し、たとえば、国際公開第2004037865号を参照し、その開示の全内容は本願に組み込まれる。
【0027】
水素化デキストリンとの鉄錯化合物の製造に関しては、国際公開第03/087164号を参照のこと。
【0028】
鉄(III)−プルラン錯化合物の製造に関しては、国際公開第02/46241号を参照のこと。
【0029】
本発明に従って使用される水酸化鉄(III)錯化合物は、経口投与するのが好ましい。しかし、原理上は、それらを、静脈内投与あるいは筋肉内投与のように、非経口的に投与することもできる。1日の経口投与量としては、たとえば、鉄を10〜500mg/日の使用が挙げられる。投与は、ヘモグロビン値、トランスフェリチン飽和度およびフェリチン値によって反映される、患者の鉄状態に改善が見られるまで数ヶ月の期間、躊躇することなく続けることができる。経口投与は、錠剤、カプセル、水溶液または乳濁液の形態、顆粒剤、カプセル、ゲルの状態、または分包剤の形態で行われるのが好ましい。溶液または乳濁液は、特に小児に投与する場合、シロップ剤、ジュース剤または点滴剤の形態で投与するのが好ましい。この目的を達成するため、水酸化鉄(III)−デキストリン錯化合物を、従来の医薬担体および補助剤とともに、適切な投与の形態とすることができる。このため、従来の結合剤または滑走剤、希釈剤、崩壊剤などを使用することができる。
【0030】
本発明における使用は、小児、青少年および成人で行うことができる。小児を治療するための医薬の製造において行うのが好ましい。小児は、乳児および青年または青少年を含む。
【0031】
本発明による使用は、特に、たとえばフィトヘマグルチニンに対するリンパ球反応によって測定される、好中球レベル、抗体レベルおよび/またはリンパ球機能を改善することによって、進める。
【0032】
本発明による使用は、鉄欠乏症貧血を患うまたは貧血のない鉄欠乏症を患う患者、および鉄欠乏症貧血あるいは鉄欠乏症のない患者を、好ましくは鉄欠乏症を患う患者を治療するために、貢献することができる。この分類は、患者の年齢および性別に依存し、人によって変化してもよい。分類は、たとえば、ヘモグロビン値およびトランスフェリチン飽和度の値(%)によって行うことができる。フローサイトメトリー(測光):シアン−ヘモグロビン法により測定したヘモグロビンの参考値が、たとえば、シャリテ(Charite, Institut fur Laboratoriumsmedizin und Pathobiochemie)(http://www.charite.de/ilp/routine/
parameter.html)に挙げられている。
【0033】
鉄欠乏症のない患者におけるトランスフェリチン飽和度は、一般的に、>16%である。
【0034】
M.ウィック(M.Wick),W.ピンゲラ(W.Pinggera),P.レーマン(P.Lehmann)、Eisenstoffwechsel-Diagnostik und Therapien der Anamien,4.,増幅版、スプリンガー出版(Springer Verlag)ウィーン、1998年によれば、鉄欠乏症の全ての形態を、検体化学的に検出することができる。フェリチン濃度の低下は、一般的に、補償作用、すなわち、高トランスフェリンと低トランスフェリチン飽和度とによって達成する。
【0035】
驚いたことに、免疫防御および/または脳特性の改善が、本発明によって、鉄状態に関して正常な血液検査の結果を有する患者においても、達成された。
【0036】
本発明の作用機序を、説明し、以下の実施例によって実証する。
【実施例】
【0037】
357.0mgの水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯化合物を含む(100mgの鉄に相当する)、フィルムが被覆された錠剤(1錠当たり620mg)(Maltofer(登録商標))を使用して、プラセボ群と比較した、鉄欠乏症を患い、貧血も患うあるいは貧血はない青年における、経口鉄補給の単一施設試験を行った。
【0038】
比較実験の目的は、鉄欠乏症貧血を患う青年、鉄欠乏症を患う青年、鉄欠乏症および貧血のない青年(鉄補給)と、さらに鉄欠乏症および貧血のないグループ(プラセボ群)の4つのグループにおいて、経口的に投与された水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯化合物(1日当たり100mgの鉄およびプラセボ、1週当たり6日間を8ヶ月)の免疫応答、血液学的状態、認識機能および行動機能への効果を検討することであった。
【0039】
この目的を達成するため、500人の見かけ上健康な、年齢が15歳と18歳の間の男女を無作為に選び、複数の血液学的基準を使用して、以下のグループに分けた。
【0040】
【表1】

【0041】
各グループは、30人の被験者で構成され、合計で120人の被験者であった。被験者を、前記4つのグループ(NP、NS、IDおよびIDA)に分けた。
【0042】
試験プロセス:
血液学的評価
静脈血を、120人の被験者全員から、真空試験管を使用して取り、血液パラメータの全てをシスマックス血液検査で分析した。血清を血液サンプルから分離し、−20℃で保存した。血清サンプルを、標準的な方法(NIN−マニュアル1983)によって、SFe測定およびTIBC測定を行った。TSをSFeおよびTIBCから計算し、パーセントで表した。血清フェリチン分析を、「酵素結合免疫測定法」(ELISA)を使用して行った。
【0043】
血清中葉酸およびシアナコバラミン(B12)を標準法により測定した。
【0044】
免疫応答:
好中球およびリンパ球を、一段式倍密度勾配法により新鮮な血液サンプルから分離し、以下の免疫測定を、120人の被験者全員に対して行った。
−MTT法を使用するフィトヘマグルチニン(PHA)へのリンパ球反応;
−好中球を使用するニトロブルーテトラゾリウム試験(MBT);
−比濁法によって測定する好中球(BCA)の殺菌能
【0045】
全血の新鮮なサンプルを使用して、モノクローナル抗体CD3、CD4、CD8およびCD56の数を、淡色染色法によって、BDフローサイトメータを使用して計測し、120人の被験者全員に対するパーセントで表した。
【0046】
120人の被験者全員から得た血清サンプルを使用して、以下の試験を行った。
−麻疹、インフルエンザウィルスおよび破傷風に対する抗体応答;
−半定量的方法を使用するC−反応性タンパク質
【0047】
認識機能および情動行動
120人の被験者の認識機能および情動行動を、最も頻繁に使用される試験に従って、および確立した方法に従って測定した。
1.短期記憶テスト(STM)
2.長期記憶テスト(LTM)
3.ラーベン漸進性マトリシーズ(RPM)
4.ウェクスラー成人知能検査(WAIS)
5.情動係数(バロンEQ−i;YVテスト;若年型)
【0048】
学校における成績の評価
120人の被験者の学校における成績を、学校の学力試験によって個々に確認した。
【0049】
身体測定の評価、健康診断、尿検査および検便を標準方法によって行った。
【0050】
統計学的評価:
継続する時間でのパラメータの平均値の比較によって、治療の効果の実態がわかる。評価の特性は、反復測定を必要とすることを意味した。各パラメータに関し、3組の観察を行い、これらは全て相関性が見られた。したがって反復測定試験は適切な方法で、統計的分析を、SPSSソフトウェアを使用して行った。方法は、グループ間の継続期間(時点)のパラメータ値の有意性および、もし存在する場合は、継続期間とグループとの間の相互作用を試験する。異なるグループの間で複数の比較を、LSD(最小有意識別試験)を補助として、反復測定試験により自動的に行った。
【0051】
結果
有利な効果が、行った全ての試験、すなわち、血液学的状態、免疫状態、認識機能および情動行動に関して見出された。
【0052】
鉄製剤を与えられた全グループ、すなわち、貧血を伴う鉄欠乏症のグループ(IDA)または貧血のない鉄欠乏症のグループ(ID)および正常な血液で、補給を受けたグループ(NS)において、鉄関連血液学的パラメータに関し、有意な増加が、ベースラインから4ヶ月まで、および再び補給の4ヶ月から8ヶ月までに見出された。
【0053】
補給を受けた3つのグループ(IDA、ID、NS)において、フィトヘマグルチニンに対するリンパ球反応、好中球アッセイによる細菌殺菌、ニトロブルーテトラゾリウム試験および麻疹およびヘモフィルス・インフルエンザに対する抗体の濃度に関し、0〜4ヶ月および4〜8ヶ月の期間、有意な増加があった。破傷風に対する抗体に関し、ベースラインと8ヶ月との間の差は、これらの3つのグループでは、有意であった。
【0054】
認知能力は、ベースラインから4ヶ月、および4から8ヶ月の間、EQを除いて、SATを含む全ての試験で改善した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
血液的、免疫的および認識機能におけるこれらの増加は、重要な臨床的有意性を有する。水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯化合物の規則的な投与により、免疫防御および脳特性を改善することができ、社会に対して、大きな利点を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫防御および/または脳特性を改善する医薬の製造における、炭水化物またはその誘導体との鉄(III)錯化合物の使用。
【請求項2】
炭水化物が、デキストランおよびその誘導体、デキストリンおよびその誘導体、ならびにプルラン、オリゴマーおよび/またはその誘導体からなる群から選択される請求項1記載の使用。
【請求項3】
炭水化物が、酸化または水素化デキストリンから選択される請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
鉄(III)錯化合物が、鉄(III)−ポリマルトース錯化合物である請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
鉄(III)−ポリマルトース錯化合物の分子量が、20,000〜500,000ダルトンの範囲である請求項4記載の使用。
【請求項6】
鉄(III)錯化合物が、1以上のマルトデキストリンの酸化生成物との鉄(III)錯化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
鉄(III)錯化合物が、鉄(III)塩水溶液と、1以上のマルトデキストリンの次亜塩素酸塩溶液とのアルカリ範囲内のpH値での酸化による生成物の水溶液とから得られる水溶性鉄−炭水化物錯化合物であり、デキストロース当量が5〜37のマルトデキストリンを使用し、かつ複数のマルトデキストリンの混合物を使用する場合、該混合物のデキストロース当量は5〜37であり、前記混合物に含まれる個々のマルトデキストリンのデキストロース当量は2〜40である請求項6記載の使用。
【請求項8】
経口または非経口投与用の医薬の製造における請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
小児、青少年または成人を治療するための医薬の製造における請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
医薬が、錠剤、水溶液あるいは乳濁液の形態、顆粒剤、カプセルあるいはゲルの形態、または分包剤の形態で存在する請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
フィトヘマグルチニンに対するリンパ球反応により測定される、好中球レベル、抗体レベルおよび/またはリンパ球機能を改善するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
鉄欠乏症貧血、貧血のない鉄欠乏症を患う患者、および鉄欠乏症貧血あるいは鉄欠乏のない患者を治療するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。


【公表番号】特表2008−530049(P2008−530049A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554530(P2007−554530)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050276
【国際公開番号】WO2006/084782
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507268503)ビフォー(インターナショナル)エージー (3)
【Fターム(参考)】