説明

鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴

【課題】 鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴において、メッキ処理時のスズ又はスズ合金アノード表面へのビスマスの置換析出を防止する。
【解決手段】 ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプトコハク酸、これらの塩から選ばれた錯化剤を添加した鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴である。特定種のアミノカルボン酸類又はホスホン酸類などを選択添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛フリーである酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴(従って、スズ−ビスマス−鉛合金浴などの鉛を含むスズ−ビスマス系合金メッキ浴は排除される)に関して、アノード表面へのビスマスの置換析出を有効に防止することにより、メッキ浴中のビスマスの過剰な消耗を抑止して、浴組成を安定にできるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体や環境に対する鉛の影響が懸念されるようになり、また、純粋のスズメッキではホイスカー発生の恐れがあることから、鉛を含まないハンダメッキの開発が要望されている。
鉛フリーのハンダとしては、スズ−銀合金やスズ−ビスマス合金などが検討されているが、スズ−銀合金メッキでは、メッキ浴が分解し易くて浴の安定性が低く、コスト高であるうえ、スズ合金のうちでは相対的にホイスカーが発生し易い。
これに対して、スズ−ビスマス合金は、スズ−銀合金に比べてホイスカーは発生し難く、コストも低減できる点で、鉛フリーのハンダの有力候補として注目されている。
【0003】
上記スズ−ビスマス系合金の電気メッキ浴の従来技術としては、特許文献1〜5が挙げられる。
上記特許文献1は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)などの所定のアミノカルボン酸からなる錯化剤と、グルコン酸とを含有し、さらには、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミンなどの界面活性剤及び/又は光沢剤を含有する錫−鉛−ビスマス合金メッキ浴であり(請求の範囲、第5欄第35行〜第6欄第8行)、実施例1〜7には、DTPA、TTHAを含有する錫−鉛−ビスマス合金メッキ浴が記載されている(第3頁〜第5頁)。
【0004】
上記特許文献2は、ビスマスの加水分解的沈殿を抑制する目的で、特定濃度以上のメタンスルホン酸を使用したスズ−ビスマス合金メッキ浴であり、ビスマスイオン源にニトリロトリ酢酸(NTA)やDTPAでキレート化したビスマス化合物を使用できることが記載されている(第4欄第13行〜第15行、第8欄第15行〜第28行、第5頁参照)。
尚、同文献2の実施例には、NTAやDTPAでキレート化したビスマス化合物を用いる具体的な記述はない。
【0005】
特許文献3は、浴の処方の容易性と、広範囲の電流密度域での皮膜外観及びハンダ付け性の改善とを目的として、2−メルカプトベンズイミダソール−S−メタンスルホン酸ナトリウム塩などの特定のベンゾアゾール系スルホン酸化合物を含有したスズ−ビスマス合金を含むスズ合金メッキ浴であり(請求の範囲、段落1、段落4、段落17)、メッキ浴には、EDTA、DTPA、クエン酸、グルコン酸などの錯化剤を含有できることが記載されている(段落41)。
【0006】
上記特許文献4は、スズ−銅系の3元合金において、銅とビスマスなどの第三成分金属と共に、スズを高い組成比で共析することを目的として、ノニオン系などの界面活性剤を含有し、EDTA、NTA、DTPA、TTHA、クエン酸、グルコン酸などの錯化剤を含有可能なスズ−銅−ビスマス合金を含むスズ−銅系合金メッキ浴であり(請求の範囲、段落23、段落36、段落40〜41参照)、実施例6には、両性界面活性剤を含有し、且つ、NTAを含有するスズ−銅−ビスマス合金メッキ浴が記載されている(段落56)。
【0007】
特許文献5には、緻密で良好な皮膜外観を得ることなどを目的として、ノニオン系界面活性剤と共に、アニオン系、カチオン系及び両性の少なくとも一種の界面活性剤を含有するスズ−ビスマス合金メッキ浴が記載されている(請求の範囲、段落1、段落19)。
【0008】
【特許文献1】特許第2819180号公報
【特許文献2】特許第2983548号公報
【特許文献3】特開平10−25595号公報
【特許文献4】特開2001−172791号公報
【特許文献5】特開平8−260186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1はスズ−鉛−ビスマス合金メッキ浴であって、スズとビスマスを含むが、鉛フリーのメッキ浴ではなく、鉛を排除して環境保全に資することを目的とした本発明の趣旨に反する。
また、実際のスズ−ビスマス系合金電気メッキにおいては、コスト低減による生産性の見地からアノードにスズ又はスズ合金を使用するが、ビスマスの電極電位はスズに対して貴であるため、電気メッキに際してアノードを浴に無通電浸漬すると、アノードからスズが溶解するとともに、ビスマスがアノード表面に置換析出するという問題がある。この置換によるビスマスの消耗が進行すると、メッキ浴中のビスマス濃度が低下し、メッキ浴組成が変動して、電析物の合金組成が変わってしまうと共に、コストアップにもつながる。さらには、被メッキ物にビスマスが置換析出した場合、電着皮膜のハンダ濡れ性、接合強度にも悪影響を及ぼす。
【0010】
上記特許文献2並びに5のスズ−ビスマス合金メッキ浴、特許文献3のスズ−ビスマス合金を含むスズ合金メッキ浴、又は特許文献4のスズ−銅−ビスマス合金を含むスズ−銅系合金のメッキ浴にあっては、ビスマスのアノード表面への置換析出の防止を目的とするものではなく、従って、その防止機能を期待することができないか、きわめて不充分である。
【0011】
本発明は鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴において、メッキ処理時のスズ又はスズ合金アノード表面へのビスマスの置換析出を有効に防止して、浴組成を安定化することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記特許文献1〜5に安定剤、錯化剤などとして同列に羅列されている一群の化合物、例えば、EDTA、NTA、DTPA、TTHAなどについて、これらの化合物の含有がアノード表面上へのビスマスの置換析出に及ぼす影響を鋭意研究した結果、アミノカルボン酸類に属する化合物の中でも、DTPA、TTHA、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニンなどの特定種のものは、それ以外のものに対して置換防止機能に明白な差異性があることを突き止めた。
即ち、DTPA、TTHA、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニンなどより選ばれた特定種のアミノカルボン酸類では、この置換析出の防止効果が特異的に大きく、これら以外のアミノカルボン酸類に対して顕著な優位性を示し、メッキ浴のビスマス組成が安定化すること、また、ビスマスの置換析出を防止し、且つ、電気メッキによりビスマスを良好に電析させるためには、これら特定種を適正範囲の濃度で添加することが重要であることを見い出した。さらには、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類又はメルカプトカルボン酸類に属する化合物のなかでも、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、メルカプトコハク酸などの特定種のものも、上記特定種のアミノカルボン酸類と同様にビスマスの置換防止機能に優れることを見い出して、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明1は、可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有する酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴において、
ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプトコハク酸、これらの塩から選ばれた錯化剤の少なくとも一種をビスマスイオンに対して1.5〜12倍モル添加して、スズ又はスズ合金製のアノード表面上へのビスマスの置換析出を防止することを特徴とする鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴である。
【0014】
本発明2は、上記本発明1において、さらに、界面活性剤、半光沢剤、光沢剤、平滑剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤及び酸化防止剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴である。
【0015】
本発明3は、アノードとカソードを鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金メッキ浴中に浸漬し、スズ又はスズ合金をアノードとし、被メッキ物をカソードとして電気メッキを行うに際して、
可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有し、さらに、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプトコハク酸、これらの塩から選ばれた錯化剤の少なくとも一種をビスマスイオンに対して1.5〜12倍モル添加したスズ−ビスマス系合金メッキ浴を用いることにより、アノード表面上にビスマスが置換析出するのを防止するようにしたことを特徴とする鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ方法である。
【0016】
本発明4は、上記本発明1又は2の酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴を用いて、素地上に鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金皮膜を形成した電子部品である。
【発明の効果】
【0017】
上記特許文献1〜6には、各種のアミノカルボン酸類などの錯化作用をする化合物が列挙されているが、後述の試験例にも示すように、適正な選択種ではない通常のアミノカルボン酸類をメッキ浴に含有させてもスズ又はスズ合金アノード表面上へのビスマスの置換析出を有効に防止することはできない。
また、ビスマスイオンに対して本発明の錯化剤を所定濃度で添加しなければ、スズ又はスズ合金アノード表面上へのビスマスの置換析出を有効に防止し、且つ、被メッキ物上にビスマスを必要量電析させることはできない。ちなみに、前記特許文献1〜6には、ビスマスイオンに対する錯化剤の量的な開示は全くなく、当該ビスマスの置換析出の防止や被メッキ物上へのビスマスの良好な電析の観点からの錯化剤濃度への示唆もない。
これに対して、本発明では、スズ−ビスマス系合金浴に、DTPA、TTHA、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸などより選ばれた特定種のアミノカルボン酸類、或は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタン三カルボン酸、メルカプトコハク酸などより選ばれた特定種のポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類又はメルカプトカルボン酸類を所定濃度で添加するので、スズ又はスズ合金製のアノード表面へのビスマスの置換析出を有効に防止できる。このため、電気メッキに際して、メッキ浴中のビスマスの過剰な消耗をなくし、メッキ浴組成の変動を抑えて安定化させることができ、もって、緻密性、平滑性などに優れた色調ムラのない良好な外観のスズ−ビスマス系合金の電着皮膜が得られる。
また、アノード表面へのビスマスの置換析出を有効に防止できるため、メッキ操作のたびにアノードを洗浄する手間が要らず、メッキ操作を簡便化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、第一に、DTPA、TTHA、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、メルカプトコハク酸などより選ばれた特定種のアミノカルボン酸類、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類、メルカプトカルボン酸類を錯化剤として含有する鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴であり、第二に、この電気メッキ浴を用いることにより、アノード表面上にビスマスが置換析出することを防止する鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ方法であり、第三に、このメッキ浴により素地上にスズ−ビスマス系合金皮膜を形成した電子部品である。
尚、本発明の鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴又はメッキ方法では、生産性の見地から、アノードは、白金などの不溶性材料ではなく、スズ又はスズ合金を材質とする(従って、ビスマスの置換析出の防止が課題となる)。
【0019】
本発明の対象となるスズ−ビスマス系合金は、スズ−ビスマス合金の2元合金に限らず、スズ−ビスマス−銀合金、スズ−ビスマス−銅合金、スズ−ビスマス−インジウム合金、スズ−ビスマス−亜鉛合金、スズ−ビスマス−ニッケル合金、スズ−ビスマス−コバルト合金、スズ−ビスマス−アンチモン合金などの3元合金、或は、スズとビスマスを含むその他の多元合金を含むが、鉛フリーであるためにスズ−ビスマス−鉛合金は排除される。
メッキ浴中では、スズ、ビスマスなどの金属供給源は酸性、中性又はアルカリ性の水に溶解する金属化合物として浴の種類に応じて任意の形態で含有され、一般には金属の可溶性塩の形態をとる。
そこで、スズ−ビスマス合金電気メッキ浴(2元合金浴)の基本組成を述べると、可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、ベース酸から構成される。
上記可溶性第一スズ塩としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、p−フェノールスルホン酸などの有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、スルホコハク酸第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズなどが挙げられる。
前記可溶性ビスマス塩としては、上記有機スルホン酸のビスマス塩、スルホコハク酸のビスマス塩、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマスなどが挙げられる。
【0020】
また、スズ−ビスマス−銀合金などの3元合金電気メッキ浴の場合では、銀、銅、インジウムなどの各可溶性塩がさらに含有される。
上記可溶性銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、硝酸銀、酸化銀、スルホコハク酸銀、上記有機スルホン酸の銀塩、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀などが挙げられる。
上記可溶性銅化合物としては、上記有機スルホン酸の銅塩、硫酸銅、塩化銅、酸化銅、炭酸銅、酢酸銅、ピロリン酸銅、シュウ酸銅などが挙げられる。
上記可溶性インジウム塩としては、スルファミン酸インジウム、硫酸インジウム、ホウフッ化インジウム、酸化インジウム、メタンスルホン酸インジウム、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸インジウムなどが挙げられる。
亜鉛の可溶性塩としては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ピロリン酸亜鉛、シアン化亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、2−ヒドロキシエタンスルホン酸亜鉛、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸亜鉛などが挙げられる。
ニッケルの可溶性塩としては、硫酸ニッケル、ギ酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、ホウフッ化ニッケル、酢酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ニッケルなどが挙げられる。
コバルトの可溶性塩としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、ホウフッ化コバルト、メタンスルホン酸コバルト、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸コバルトなどが挙げられる。
アンチモンの可溶性塩としては、ホウフッ化アンチモン、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム、ピロアンチモン酸カリウム、酒石酸アンチモン、メタンスルホン酸アンチモン、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸アンチモンなどが挙げられる。
上記可溶性金属塩は夫々単用又は併用でき、メッキ浴に対する当該可溶性塩の浴中の総濃度は金属塩換算で0.05〜300g/L、好ましくは10〜180g/Lである。また、スズとその他の金属の混合割合は、所望するスズ合金めっき皮膜の組成比に応じて適宜決定される。
具体的には、可溶性第一スズ塩の含有量は1〜290g/Lが適当であり、好ましくは5〜200g/Lである。
また、可溶性ビスマス塩の含有量は0.05〜50g/Lが適当であり、好ましくは0.5〜20g/Lである。
可溶性銅塩の含有量は0.01〜30g/Lが適当であり、好ましくは0.05〜5g/Lである。
可溶性銀塩の含有量は0.01〜10g/Lで適当であり、好ましくは0.05〜5g/Lである。
【0021】
上記ベース酸としては、有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸が挙げられ、これらの塩を使用することもできる。これらの酸は単用又は併用でき、酸の含有量は5〜400g/Lであり、好ましくは20〜300g/Lである。
【0022】
上記ベース酸の中では、スズの溶解性や排水処理の容易性の点で有機スルホン酸が好ましい。
当該有機スルホン酸は、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸などであり、アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜11)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0023】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸(イセチオン酸)、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸(2−プロパノールスルホン酸)、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0024】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸などであり、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸などが挙げられる。
上記有機スルホン酸では、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸などが好ましい。
【0025】
上記脂肪族カルボン酸としてはC1〜C6のカルボン酸が使用でき、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0026】
本発明の酸性スズ−ビスマス合金系電気メッキ浴には、スズ又はスズ合金アノード表面へのビスマスの置換析出を有効に防止し、メッキ浴組成の安定化によって優れた外観のメッキ皮膜を形成する見地から、特定種のアミノカルボン酸類、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類又はメルカプトカルボン酸類から選ばれた錯化剤を添加することが必要である。
上記特定種のアミノカルボン酸類、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類又はメルカプトカルボン酸類は、DTPA、TTHA、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプコハク酸、或はこれらの塩である。
上記錯化剤は錯化作用を奏する化合物のうちから選択された特定範囲のものであり、例えば、前記特許文献に記載されたEDTA、NTAは、DTPA、TTHAと同じアミノカルボン酸類に属するが、本発明の錯化剤から外れ、グルコン酸、酒石酸、クエン酸などのオキシカルボン酸も外れる。
上記特定種のアミノカルボン酸、ポリホスホン酸、ホスホノポリカルボン酸又はメルカプトカルボン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの塩が挙げられる。
上記錯化剤は単用又は併用できるが、上述の通り、スズ又はスズ合金アノード表面へのビスマスの置換析出を防止し、且つ、ビスマスを電析させるためには、錯化剤の含有量はビスマスイオンに対して1.5〜12倍モルであることが必要である。好ましい含有量はビスマスイオンに対して2.5〜10倍モル、より好ましくは3.0〜6倍モルである。錯化剤の含有量が1.5倍モルより少ないとアノード表面上へのビスマスの置換析出を有効に防止できず、一方、12倍モルより多いと電気メッキした際にビスマスが円滑に電析せず、スズ−ビスマス系合金メッキ皮膜を形成できない。
【0027】
また、酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴に、上記特定種のアミノカルボン酸類、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類、又はメルカプトカルボン酸類を加えたうえで、さらに、所定のHLB又は曇点を有する特定種のノニオン系界面活性剤の少なくとも一種を添加すると、アノード表面へのビスマスの置換析出を防止する効果が促進される。
所定のHLB又は曇点を有する特定種のノニオン系界面活性剤は、次の(a)〜(j)の通りである。
(a)HLBが7.3〜15.6のジスチレン化フェノールポリアルコキシレート
(b)HLBが7.8〜15.3のトリスチレン化フェノールポリアルコキシレート
(c)HLBが8.2〜15.6のジスチレン化クレゾールポリアルコキシレート
(d)HLBが7.7〜15.2のトリスチレン化クレゾールポリアルコキシレート
(e)HLBが3.8〜16.2のドデシルアミンポリアルコキシレート
(f)HLBが3.4〜16.1のテトラデシルアミンポリアルコキシレート
(g)HLBが3.1〜15.7のヘキサデシルアミンポリアルコキシレート
(h)HLBが2.8〜15.3のオクタデシルアミンポリアルコキシレート
(i)HLBが2.8〜15.4のcis−9−オクタデセニルアミンポリアルコキシレート
(j)曇点が15℃〜30℃であるエチレンジアミンのポリアルコキシレート
上記ノニオン系界面活性剤(a)〜(j)は共にアルキレンオキシド付加物であり、付加するアルキレンオキシドとしてはC2〜C4アルキレンオキシドが適しており、好ましくはエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)である。
【0028】
一般に、EOの付加数が増すと親水性が増してHLBは増大し、POの付加数が増すと親油性が増してHLBは減少する。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLBは、通常、HLB=E/5(E:エチレンオキシドの重量分率(%))で表すことができる。従って、ノニオン系界面活性剤(a)〜(i)では、水系での乳化作用などを有効に確保する見地から、上記計算式に準拠しながら、EOとPOの付加数、或は、スチレン基の付加数を調整することにより、所定領域のHLBに調整することができる。
また、ノニオン系界面活性剤にあっては、その種類が特定されると、HLBが所望の範囲内に指定された相当品を製造会社から入手することはそれほど困難ではない。
そこで、上記特定種ごとの具体例を個別的に列挙すると、例えば、ジスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO4モル)はHLB=7.3〜15.6の特定領域に属し、ジスチレン化クレゾールポリエトキシレート(EO12モル)はHLB=8.2〜15.6の特定領域に属する。また、ドデシルアミンポリエトキシレート(EO20モル)はHLB=3.8〜16.2の特定領域に属し、オクタデシルアミンポリエトキシレート(EO10モル)はHLB=2.8〜15.3の特定領域に属する。
【0029】
一方、EOの付加数が増すと曇点は高くなり、EO鎖が一定の場合には、POなどの親油基が大きくなると曇点は低くなるため、上記ノニオン系界面活性剤(j)では、親水性のEOと親油性のPOの付加数により曇点の範囲を適正に調整して、低温溶解性が確保される。この界面活性剤(j)としては、次の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
H(B)Y−(A)X (A)X−(B)Y
| |
N−CH2CH2−N …(1)
| |
H(B)Y−(A)X (A)X−(B)Y
(式(1)中、A、Bはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基のいずれかである;X、Yは夫々1〜100の整数である)
そして、上記一般式(1)に属する化合物の具体例としては、エチレンジアミンポリプロポキシレート(P050モル)・ポリエトキシレート(EO5モル)が挙げられるが、当該化合物の曇点は15〜30℃の特定領域に属する。
ちなみに、ノニオン系界面活性剤にあっては、その種類が特定されると、上記HLBと同様に、曇点が所望の範囲内に指定された相当品を製造会社から入手することはそれほど困難でない。
上記ノニオン系界面活性剤(a)〜(j)は単用又は併用でき、メッキ浴に対する含有量はビスマス量の3〜300重量%が適当であり、好ましくは10〜100重量%である。
【0030】
本発明では、鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴に上記ノニオン系界面活性剤を含有すると、アノードでのビスマスの置換析出の防止を促進することに寄与するが、この場合においては、他種のノニオン系界面活性剤やノニオン系以外の両性、アニオン、カチオンなどの界面活性剤が共存しても差し支えない(本発明2参照)。
これらの特定種以外の界面活性剤を添加すると、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性、均一電着性などの改善のために寄与する。
当該界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性などの各種界面活性剤を単用又は併用でき、その添加量はメッキ浴に対して0.01〜100g/L程度が適し、0.1〜50g/L程度が好ましい。
【0031】
上記ノニオン性界面活性剤は、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、クミルフェノール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、アルキレンジアミン、C1〜C22脂肪族アミド、スルホンアミド、りん酸、多価アルコール、グルコシド等にエチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)から選ばれた少なくとも一種のアルキレンオキシドを2〜300モル付加縮合したアルキレンオキシド付加物である。
従って、上記アルカノール、フェノール、ナフトールなどのEO単独の付加物、PO単独の付加物、或は、EOとPOが共存した付加物のいずれでも良い。具体的には、α−ナフトール又はβ−ナフトールのエチレンオキシド付加物(即ち、α−ナフトールポリエトキシレートなど)が好ましい。
【0032】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、cis−9−オクタデセノール、ドコサノールなどが挙げられる。
【0033】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。
【0034】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるC1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−オクタデシルフェノールなどが挙げられる。
【0035】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるC1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。
【0036】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるC1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。Mは、H又はアルカリ金属を示す。)
【0037】
上記アルキレンオキシドを付加縮合させるソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、具体的には、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0038】
アルキレンオキシドを付加縮合させるC1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などのアミドが挙げられる。
【0039】
カチオン性界面活性剤としては、下記一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩、下記一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2及びR3は同一又は異なるC1〜C20アルキル、R4はC1〜C10アルキル又はベンジルを示す。)
6−(C64N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0040】
上記塩の形態のカチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルドデシルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0041】
上記アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。
上記アルキル硫酸塩としては、ドデシル硫酸ナトリウム、cis−9−オクタデセニル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO12)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
上記アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0042】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸類などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化又はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0043】
代表的なカルボキシベタイン又はイミダゾリンベタインとしては、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、テトラデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オクタデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。硫酸化又はスルホン酸化付加物としては、エトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0044】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
上記アミノカルボン酸類としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ドデシルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩等が挙げられる。
【0046】
本発明2に示すように、酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴には、さらに必要に応じて、半光沢剤、光沢剤、平滑剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤、酸化防止剤、消泡剤などの各種添加剤を含有することができる。
上記酸化防止剤は浴中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシナフタレンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0047】
上記平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N−(3−ヒドロキシブチリデン)−p−スルファニル酸、N−ブチリデンスルファニル酸、N−シンナモイリデンスルファニル酸、2,4−ジアミノ−6−(2′−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−エチル−4−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0048】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、上記平滑剤とも多少重複するが、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリリデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メルカプトベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾールチオ酢酸等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0049】
上記錯化剤はビスマスに作用してビスマスと共にスズを円滑に共析化するとともに、ビスマス以外の金属、例えば、銅、銀の浴中への溶解を安定促進するためのものである。
上記錯化剤は、具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、乳酸、これらの塩、エチレンジアミン、EDTA、NTA、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ロッシェル塩、チオ尿素又はその誘導体、脂肪族スルフィド系化合物などが挙げられる。
【0050】
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0051】
本発明のメッキ浴では、上記各種添加剤の含有濃度は、バレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキ等の使用方法に応じて、適宜選択すれば良い。
本発明のメッキ浴を用いて電気メッキを行う場合、浴温は0℃程度以上が好ましく、10〜50℃程度がより好ましい。陰極電流密度は0.01〜150A/dm2程度が好ましく、0.1〜30A/dm2程度がより好ましい。
【0052】
本発明3は、本発明1又は2の鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金メッキ浴を用いて電気メッキする方法であり、アノードとカソードを当該スズ−ビスマス系合金メッキ浴中に浸漬し、スズ又はスズ合金をアノードとし、被メッキ物をカソードとして電気メッキを行うに際して、前記特定種のアミノカルボン酸類などの錯化剤を必須成分とするスズ−ビスマス系合金メッキ浴を用いることにより、アノード表面上にビスマスが置換析出するのを防止するようにした鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ方法である。
【0053】
本発明の酸性スズ−ビスマス系合金メッキ浴を用いた電気メッキ方法は、特に、電気部品又は電子部品を被メッキ物とした場合に、ハンダ付け性に優れたメッキ皮膜を形成でき、安全性にも優れていることから有用性が高い。
この被メッキ物としての電気部品又は電子部品には特に限定はないが、その具体例としては、半導体デバイス、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、IC、コネクタ、スイッチ、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、リード線などが挙げられる(本発明4参照)。
また、メッキ皮膜の膜厚についても特に制限はないが、通常、1〜20μm程度が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴の実施例、当該メッキ浴を用いて電気メッキする際の浴組成、特にビスマス濃度の観察試験例、同様に電気メッキする際のアノード表面でのビスマス置換析出の防止評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0055】
《スズ−ビスマス電気合金メッキ浴の実施例》
下記の実施例1〜24のうち、実施例3はスズ−ビスマス−銀合金メッキ浴の例、実施例5はスズ−ビスマス−銅合金メッキ浴の例、その他の実施例はすべてスズ−ビスマス合金メッキ浴の例である。実施例6は本発明の特定種の錯化剤を併用した例、実施例3と実施例5と実施例12〜13は共に本発明の特定種の錯化剤と本発明以外の錯化機能のある化合物の併用例、その他の実施例はすべて本発明の特定種の錯化剤の単用例である。実施例23は錯化剤をビスマスイオンに対して適正濃度範囲の下限(1.5倍モル)で添加した例である。
一方、下記の比較例1と比較例4は本発明の特定種の錯化剤を使用しないブランク例であり、比較例2〜3と比較例5〜6は本発明の特定種以外のアミノカルボン酸類であるEDTA、NTA、IDAを錯化剤に使用した例であり、比較例7は本発明以外の錯化作用のあるオキシカルボン酸類を使用した例である。また、比較例8は本発明の特定種の錯化剤を本発明の適正濃度範囲の下限(1.5倍モル)より少なく添加した例である。
尚、図1の最左欄には、各実施例及び比較例でのビスマスイオンに対する錯化剤の濃度(単位:倍モル)を表記した。
【0056】
(1)実施例1
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 9.4g/L
【0057】
(2)実施例2
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸・五アンモニウム塩 27.5g/L
【0058】
(3)実施例3
下記の組成でスズ−ビスマス−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 37.6g/L
3,6−ジチアー1,8−オクタンジオール 12g/L
【0059】
(4)実施例4
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸 75.7g/L
【0060】
(5)実施例5
下記の組成でスズ−ビスマス−銅合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸・六カリウム塩 83.7g/L
3,6−ジチアー1,8−オクタンジオール 15g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO15モル) 2g/L
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.2g/L
【0061】
(6)実施例6
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 45.2g/L
トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸 37.9g/L
【0062】
(7)実施例7
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
β-ナフトールポリエトキシレート(EO10モル) 5g/L
【0063】
(8)実施例8
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO15モル) 5g/L
【0064】
(9)実施例9
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO8モル) 5g/L
【0065】
(10)実施例10
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO17.5モル) 12g/L
ナフタレンスルホン酸 1g/L
【0066】
(11)実施例11
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
ポリプロポキシレート(PO50モル)
−ポリエトキシレート(EO8モル)ブロックコポリマー 7g/L
【0067】
(12)実施例12
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 52.7g/L
クエン酸一水和物 16.1g/L
【0068】
(13)実施例13
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸 66.3g/L
グルコン酸ナトリウム 16.9g/L
【0069】
(14)実施例14
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15モル) 5g/L
ヒドロキノン 1g/L
メタクリル酸 0.5g/L
ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.8g/L
【0070】
(15)実施例15
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 12g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 79.1g/L
α-ナフトールポリエトキシレート(EO12モル) 5g/L
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.3g/L
アクリル酸 0.5g/L
ドデシルジメチルエチルアンモニウムクロリド 0.2g/L
【0071】
(16)実施例16
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸・三ナトリウム塩 9.9g/L
【0072】
(17)実施例17
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸 10.1g/L
【0073】
(18)実施例18
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸 7.2g/L
【0074】
(19)実施例19
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ヒドロキシエチリデンジホスホン酸 5.9g/L
【0075】
(20)実施例20
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ホスホノブタントリカルボン酸 7.8g/L
【0076】
(21)実施例21
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸 7.2g/L
【0077】
(22)実施例22
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン 5.9g/L
【0078】
(23)実施例23
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 5.7g/L
【0079】
(24)実施例24
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
メルカプトコハク酸 4.3g/L
【0080】
(25)比較例1
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
【0081】
(26)比較例2
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム・二水和物 6.25g/L
【0082】
(27)比較例3
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ニトリロトリ酢酸三ナトリウム・一水和物 4.6g/L
【0083】
(28)比較例4
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15モル) 5g/L
【0084】
(29)比較例5
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム・二水和物 8.9g/L
【0085】
(30)比較例6
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
イミノ二酢酸 2.25g/L
【0086】
(31)比較例7
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 9g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
クエン酸・一水和物 3.6g/L
【0087】
(32)比較例8
下記の組成でスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸スズ(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 3.76g/L
【0088】
そこで、上記実施例1〜24及び比較例1〜8の各スズ−ビスマス合金メッキ浴にスズアノードを浸漬して、スズアノード上でのビスマスの置換析出の防止度合とメッキ浴組成の安定性について、評価試験を行った。
《メッキ浴にアノードを浸漬した場合のアノード上での置換析出防止性とメッキ浴組成の安定性の評価試験例A》
50℃に加温した実施例1〜24及び比較例1〜8の各スズ−ビスマス合金メッキ浴100mLにスズ極板(60mm×20mm)を2時間無撹拌下にて浸漬した後、スズアノードの外観を目視観察するとともに、当該2時間経過時点でのメッキ浴中のビスマス濃度を原子吸光分析法にて測定し、初期ビスマス濃度に対する残留率に換算表示した。
尚、実施例11については、メッキ浴温25℃にて試験した。
【0089】
図1はその結果である。
同図1によると、本発明の錯化剤を含まないブランク例の比較例1では、スズアノードはビスマスの置換析出により真黒色に変色し、同じくブランク例の比較例4では、ビスマスの置換析出はアノードの広い部分に及んで黒変し、アノードの一部だけが金属光沢を保持していた。
また、本発明の特定種の錯化剤とは異なるアミノカルボン酸類又はオキシカルボン酸類を添加した比較例2〜3(EDTA、NTA)、比較例5〜7(EDTA、IDA、クエン酸類)では、アノードの広い部分は金属光沢を保持していたが、一部にビスマスの置換析出が認められ、黒色に変じていた。2時間経過後のメッキ浴中のビスマス残留率は比較例1と比較例4では23〜27%しかなく、ビスマスが置換析出により急速に消耗されていることを裏付けた。さらに、比較例2〜3、比較例5〜7でも41〜61%の残留率にとどまった。そして、本発明の特定種の錯化剤を使用したが、その含有量がビスマスイオンに対して1.5倍モルより少ない比較例8では、アノード表面の一部が黒色に変じていた。ビスマス残留率が68%であることが、この点を裏付けていた。
これに対して、実施例1〜24では、ビスマスの置換析出は良好に防止され、アノードはスズの全面金属光沢を保持していた。この点は、実施例1〜24における2時間経過後のメッキ浴中のビスマス残留率が、74〜95%の高い割合を示したことからも裏付けられる。
【0090】
当該実施例1〜24について詳述すると、DTPA及び/又はTTHAを添加した実施例1〜15では浴中のビスマスの残留率が高く、アノードでのビスマスの置換析出を防止する能力に優れることが認められる。当該DTPA、TTHA以外の特定種のアミノカルボン酸類であるHEDTA、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、或は、特定種のポリホスホン酸やホスホノポリカルボン酸であるヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、メルカプトコハク酸などを添加した実施例16〜22、24では、上記実施例1〜15に準じるビスマス残留率を示し、ビスマスの置換析出の防止効果が有効に働いたことが確認された。尚、ビスマスイオンに対する錯化剤の濃度が本発明の適正範囲の下限(1.5倍モル)である実施例23においても、ビスマス残留率は高水準を保持した。
このように、実施例の大部分を占めるスズ−ビスマスの2元合金メッキ浴では、浴中のビスマス残留率を高く保持して、アノードでのビスマスの置換析出を有効に防止できるが、スズ−ビスマス−銀合金メッキ浴(実施例3)、スズ−ビスマス−銅合金メッキ浴(実施例5)に見るように、スズとビスマスの3元合金メッキ浴にあっても、本発明の特定種の錯化剤を添加すると、93〜94%の高いビスマス残留率で裏付けられる通り、ビスマスの置換析出防止に優れた効果を発揮することが明らかになった。
【0091】
以上のように、実施例1〜24を比較例1又は4に対比すると、スズ−ビスマス合金電気メッキ浴において、スズ又はスズ合金アノードでのビスマスの置換析出を有効に防止するには、本発明の特定種の錯化剤をメッキ浴に添加することが重要である点が明らかになった。
また、実施例1〜24を比較例2〜3又は比較的5〜7に対比すると、錯化作用のある化合物であっても、EDTA、NTA、IDA、クエン酸類をスズ−ビスマス合金電気メッキ浴に添加した場合には、スズ又はスズ合金アノードでのビスマスの置換析出を防止する機能は充分には期待できず、従って、その置換析出を有効に防止するためには、特定種のアミノカルボン酸類、ポリホスホン酸類、ホスホノポリカルボン酸類、或はメルカプトカルボン酸類を選択することが必要である点が明らかになった。
さらに、実施例1〜24を比較例8に対比すると、本発明の特定種の錯化剤をメッキ浴に添加する場合でも、スズアノード上での置換析出の防止には錯化剤を特定濃度以上で使用することが必要であることが明らかになった。
このように、特定種のアミノカルボン酸類などの錯化剤を含有する実施例では、スズ又はスズ合金アノードを浴に浸漬しても、アノードでのビスマスの置換析出を有効に防止でき、メッキ浴の組成を安定化できた。そして、当該実施例のメッキ浴を用いてスズ−ビスマス系合金電気メッキを行うと、優れた外観のメッキ皮膜を得ることができた。この点を、例えば、上記実施例5に代表させて説明すると、電気メッキにより当該実施例5のメッキ浴から得られたスズ−ビスマス合金の電着皮膜は緻密性、平滑性などに優れ、色調ムラのない良好なメッキ外観を呈した。
【0092】
次いで、錯化剤を除いたメッキ浴の組成が共通であり、ビスマスイオンに対する錯化剤の含有量が異なるスズ−ビスマス合金メッキ浴を用いて電気メッキを行った場合に、得られる電着皮膜の組成を調べた。
《錯化剤を濃度変化させた際の電気メッキにより浴から得られた電着皮膜の組成の評価試験例B》
先ず、下記に示す通り、メッキ浴の成分のうち、ビスマスイオンに対する錯化剤の含有量だけがXg/Lであるスズ−ビスマス合金電気メッキ浴を仮想した。そして、この錯化剤濃度を本発明の適正範囲の内・外で特定化して、下記の実施例25並びに比較例9を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
ジスチレン化クレゾールポリエトキシレート(HLB13.6) 4g/L
ノニルフェノールポリエトキシレート(HLB15) 4g/L
ジペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム 1g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 Xg/L
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.3g/L
ハイドロキノン 0.8g/L
【0093】
(1)実施例25
上記仮想メッキ浴の錯化剤の含有量(Xg/L)を4.7g/Lとして、スズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。この場合、錯化剤の濃度はビスマスイオンに対して5倍モルであった。
【0094】
(2)比較例9
上記仮想メッキ浴の錯化剤の含有量を14.1g/Lとして、スズ−ビスマス合金電気メッキ浴を建浴した。この場合、錯化剤の濃度はビスマスイオンに対して15倍モルであった。
【0095】
そこで、上記実施例25並びに比較例9の各スズ−ビスマス合金電気メッキ浴を用いて下記の条件で電気メッキを行い、得られた電着皮膜のビスマス組成を調べた。
[電気メッキの条件]
陰極電流密度:2A/dm2
浴温:25℃
撹拌:カソードロッカー(1m/分)
メッキ時間:10分間
【0096】
その結果、実施例25のメッキ浴から得られた電着皮膜のビスマス組成は2.0重量%であり、当該皮膜は均一なマット状の緻密な外観を呈した。
これに対して、比較例9の浴から得られた電着皮膜のビスマス組成は0重量%であり、スズ−ビスマス合金皮膜は形成できず、スズ皮膜しか得られなかった。
以上のことに鑑みると、スズ又はスズ合金アノード上でのビスマスの置換析出を有効に防止するためには、本発明の特定種の錯化剤を選択することが重要であるが、これに加えて、電気メッキを行った場合にビスマスを円滑に電析させる(スズ−ビスマス系合金皮膜を形成する)ためには、この特定種の錯化剤の選択だけでは充分でなく、ビスマスイオンに対して錯化剤を特定濃度を越えずに抑制的に添加することが必要である点が明らかになった。
【0097】
最後に、本発明の錯化剤に加えて、前記所定のHLB又は曇点を有する特定種のノニオン系界面活性剤をメッキ浴に併用添加した場合に、スズアノード上でのビスマスの置換析出防止効果がどのように変化するのかを評価した。
《特定種のノニオン系界面活性剤を併用添加した場合のアノード上での置換析出防止性の評価試験例C》
先ず、前記実施例1を基本組成として、これに特定種のノニオン系界面活性剤を併用添加して新たなスズ−ビスマス合金電気メッキ浴(実施例26〜27)を夫々建浴した。
【0098】
(1)実施例26
下記の組成でスズ−ビスマス電気合金メッキを建浴した。
メタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸スズ(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジスチレン化クレゾールポリエトキシレート(HLB13.6モル) 2g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 11.3g/L
【0099】
(2)実施例27
下記の組成でスズ−ビスマス電気合金メッキを建浴した。
メタンスルホン酸スズ(Sn2+として) 18g/L
メタンスルホン酸スズ(Bi3+として) 2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
エチレンジアミンポリプロポキシレート
−ポリエトキシレート(曇点18℃) 4g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(HLB15.5) 2g/L
ジエチレントリアミンペンタ酢酸 11.3g/L
【0100】
そして、実施例26〜27の各メッキ浴を用いて、前記評価試験Aと同様の条件でスズアノードのメッキ浴への浸漬試験(従って、浸漬時間は2時間)を行ったところ、図1の試験結果を得た。
即ち、メッキ浴でのビスマスイオンの残留率は、錯化剤のみを使用した実施例1では87%であったが、所定のHLBを有する特定種のノニオン系界面活性剤を併用した実施例26では98%に増大していた。所定の曇点を有する特定種のノニオン系界面活性剤を併用した実施例27でも同様の高い数値(98%)を示した。また、実施例26〜27では、共にアノード外観はビスマスの置換がないことから全面金属光沢を呈した。
従って、スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴においては、本発明の錯化剤に加えて、特定種のノニオン系界面活性剤を併用添加すると、スズアノード上でのビスマスの置換析出防止効果がさらに強化されることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第一に、実施例1〜24及び比較例1〜8の各スズ−ビスマス系合金メッキ浴にスズアノードを所定時間に亘り浸漬した場合のスズアノードの外観と浴のビスマス残留率の評価試験結果、第二に、本発明の錯化剤に所定のHLB又は曇点を有する特定種のノニオン系界面活性剤を併用添加した実施例26〜27の浴にスズアノードを浸漬した場合の同外観とビスマス残留率の評価試験結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有する酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴において、
ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプトコハク酸、これらの塩から選ばれた錯化剤の少なくとも一種をビスマスイオンに対して1.5〜12倍モル添加して、スズ又はスズ合金製のアノード表面上へのビスマスの置換析出を防止することを特徴とする鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴。
【請求項2】
さらに、界面活性剤、半光沢剤、光沢剤、平滑剤、補助錯化剤、隠蔽錯化剤及び酸化防止剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーの酸性スズ−ビスマス合金系電気メッキ浴。
【請求項3】
アノードとカソードを鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金メッキ浴中に浸漬し、スズ又はスズ合金をアノードとし、被メッキ物をカソードとして電気メッキを行うに際して、 可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有し、さらに、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、メルカプトコハク酸、これらの塩から選ばれた錯化剤の少なくとも一種をビスマスイオンに対して1.5〜12倍モル添加したスズ−ビスマス系合金メッキ浴を用いることにより、アノード表面上にビスマスが置換析出するのを防止するようにしたことを特徴とする鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の酸性スズ−ビスマス系合金電気メッキ浴を用いて、素地上に鉛フリーの酸性スズ−ビスマス系合金皮膜を形成した電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−117980(P2006−117980A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305204(P2004−305204)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】