説明

鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペースト

【課題】ソルダーペーストにおいて粉末の微細化の為に適するナノ粒子製造、すなわち、ソルダーペーストに適すると考えられる粒径50nm以上のはんだナノ粒子の製造は困難であった。また、はんだナノ粒子を製造後においても、ソルダーペーストにするまでに酸化、凝集することなく取り扱うことも問題となっていた。本発明はSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストを提供するものである。
【解決手段】DCアークを用いて合成した鉛フリーはんだナノ粒子を用いてソルダーペーストを効率良く製造することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子、特にDCアークを用いて合成した鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ接続、マルチチップモジュール接続、チップサイズパッケージ接続等のIC、LSI等の接合に使用されるソルダーペーストでは粉末の微細化が進んでおり、ナノ粒子への期待も高まっている。ソルダーペーストに用いるはんだ粉末の製造方法としては、はんだ溶湯を噴霧するのが一般的で噴霧の方法としては回転ディスクの遠心力を利用するもの(遠心アトマイズ法)、ガスをはんだ溶湯に噴射し、噴霧するもの(ガスアトマイズ法)、超音波振動を利用するもの(超音波アトマイズ法)があるが、これらの方法でナノ粒子を製造することは不可能である。一方、ナノ粒子の製造方法としては液中還元法、高周波プラズマ法、アーク放電法などがある。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−211155号公報
【特許文献2】特開2004−211156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で挙げたようにナノ粒子の製造方法はいくつかの方法が提案されているが、Sn−Ag−Cu系のはんだナノ粒子の製造方法およびそのはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストの報告はほとんどされておらず、Sn−Ag−Cu系のはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストを製造するには、三元系のはんだナノ粒子の製造が困難である為、特にソルダーペーストに適すると考えられる粒径50nm以上の粒子の製造が困難であるという問題点がある。
【0006】
また、はんだナノ粒子を製造後、ソルダーペーストにするまでに酸化、凝集することなく取り扱うことが困難である為、ソルダーペーストの製造も困難であり、さらに、はんだナノ粒子を効率良く製造することが困難であるため、ソルダーペーストを効率良く製造することも困難であるとした問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするもので、Sn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子、特にDCアークを用いて合成した鉛フリーはんだナノ粒子、三元系のはんだナノ粒子の製造を容易にすることで、はんだナノ粒子を製造後、ソルダーペーストにするまでに酸化、凝集することなく取り扱うことを可能にした。そのため、はんだナノ粒子を効率良く製造することを容易にすること出来、ソルダーペーストを効率良く製造することを可能にした鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストに関するものである。
【0008】
本発明は、Sn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子、特に粒径10nm以上のはんだナノ粒子を使用し、そのはんだナノ粒子を酸化、凝集させることなく、ソルダーペーストを効率良く製造しようとするもので、粒子径が10〜200nmの範囲内にあるSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子を使用することを特徴とするソルダーペーストであり、また、アルゴンと水素の混合ガス雰囲気中でDCアーク放電により得られたSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子を使用することを特徴とするソルダーペーストである。
【0009】
更に、DCアーク放電装置内の循環ガス流量および溶融金属と金属蒸気捕集管の距離を調整することにより、粒径を50nm以上に制御されたはんだナノ粒子を使用することを特徴とするソルダーペーストであり、DCアーク放電装置内で生成したはんだナノ粒子がDCアーク放電装置を大気開放することなく、有機溶剤に浸漬後、回収され、そのはんだナノ粒子を使用することも可能である。
【0010】
そのほか、粒子径が1〜100μmの範囲内にあるはんだ粉と上記のナノ粒子から構成されることを特徴とする鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストに関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、三元系のはんだナノ粒子の製造を容易にし、はんだナノ粒子を製造後、ソルダーペーストにするまでに酸化、凝集することなく取り扱うことが出来る。また、はんだナノ粒子を効率良く製造することを容易にすることで、ソルダーペーストを効率良く製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子、特にDCアークを用いて合成した鉛フリーはんだナノ粒子を使用したソルダーペーストに関するものである。
【0013】
本発明は、はんだSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだに関するものであるが、その他の鉛フリーはんだ、すなわち、Sn,Cu,Ag,Bi,Sb,In,Znから選択された少なくとも一種の金属を含むことも可能であり、具体的には、鉛フリーはんだ粒子を形成するハンダ組成としては、以下を例示できる。
2元系合金: 95.3Ag/4.7Bi等のAg−Bi系、66Ag/34Li等のAg−Li系、3Ag/97In等のAg−In系、67Ag/33Te等のAg−Te系、97.2Ag/2.8Tl等のAg−Tl系、45.6Ag/54.4Zn等のAg−Zn系、80Au/20Sn等のAu−Sn系、52.7Bi/47.3In系のBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48Sn等のIn−Sn系、8.1Bi/91.9Zn等のBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58Bi等のSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5Ag等のSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70Zn等のSn−Zn系、99.3Sn/0.7Cu等のSn−Cu系、95Sn/5Sb等のSn−Sb系
3元系合金: 95.5Sn/3.5Ag/1In等のSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10In等のSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cu等のSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0Ag等のSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0Bi等のSn−Zn−Bi系
その他:
Sn/Ag/Cu/Bi
【0014】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
【実施例】
【0015】
実施例1
Sn−3.0Ag−0.5Cuの鉛フリーはんだを大気圧アルゴン−水素アークにより、溶融、蒸発させ、Sn−Ag−Cuはんだナノ粒子を合成した。この時、アーク電流は200A、アーク電圧は20−40Vとした。また、装置内の循環ガス流量は150NL/min、溶融金属と金属捕集管との距離は10mmとした。合成終了後、フィルターで捕集されたはんだナノ粒子は装置を大気開放することなく、装置内に設けられた有機溶剤の満たされた回収用容器内に移した。その後、装置を大気開放し、有機溶剤に浸漬したはんだナノ粒子を容器ごと取り出した。
【0016】
得られたはんだナノ粒子は凝集することなく、有機溶剤中に分散された状態であり、透過型電子顕微鏡で観察したところ、個数平均径は100nmであった。また、このはんだナノ粒子が分散してある有機溶剤をヘキシルカルビトールで置換後、固形分を調整し、はんだナノ粒子とヘキシルカルビトールの重量が90:1のはんだナノ粒子分散体を得た。また、水添ロジン55g、アジピン酸2.0g、水添ヒマシ油6.0g、ヘキシルカルビトール27gを配合し、フラックス90gを作製した。はんだナノ粒子分散体910gとフラックス90gを混合することで、ナノ粒子ソルダーペースト1000gを得た。
【0017】
このソルダーペーストは滑らかで、はんだナノ粒子が凝集することもなく、銅板に印刷し、リフロー炉により、流したところ、はんだナノ粒子は溶融し、金属光沢を有し、良好なはんだ付性を示した。
【0018】
実施例2
平均径6μmのSn−3.0Ag−0.5Cu粉末900gと水添ロジン55g、アジピン酸2.0g、水添ヒマシ油6.0g、ヘキシルカルビトール37gを配合したフラックス100gを混合し、1000gのソルダーペーストを作製した。このソルダーペースト900gに実施例1のナノ粒子ソルダーペースト100gを混合し、一部ナノ粒子のソルダーペースト1000gを作成した。このソルダーペーストはナノ粒子を含まないソルダーペーストと比較して、優れた印刷性および保存安定性を示した。
【0019】
比較例1
金属捕集管を取り付けない以外は実施例と同じ条件ではんだナノ粒子を合成した。実施例1と同様にはんだナノ粒子をTEMで観察したところ、個数平均径は30nmであった。また実施例1と同じ方法、配合でソルダーペーストを作製したところ、状態は滑らかなものの、銅板に印刷し、リフロー炉に流すと、はんだナノ粒子はほとんど溶融しなかった。
【0020】
比較例2
回収用容器内に有機溶剤が満たされていない以外は実施例と同じ条件ではんだナノ粒子を合成した。回収容器内のはんだナノ粒子は装置を大気開放後、酸化を防止するために、ヘキシルカルビトールに浸漬した。実施例1と同様にはんだナノ粒子をTEMで観察したところ、個数平均径は100nmであった。実施例と方法、配合でソルダーペーストを作製したところ、状態は滑らかなものの、銅板に印刷し、リフロー炉に流すと、はんだナノ粒子はほとんど溶融しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が10〜200nmの範囲内にあるSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子を使用することを特徴とするソルダーペースト
【請求項2】
アルゴンと水素の混合ガス雰囲気中でDCアーク放電により得られたSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだナノ粒子を使用することを特徴とする請求項1に記載のソルダーペースト
【請求項3】
DCアーク放電装置内の循環ガス流量および溶融金属と金属蒸気捕集管の距離を調整することにより、粒径を50nm以上に制御されたはんだナノ粒子を使用することを特徴とする請求項1〜2に記載のソルダーペースト
【請求項4】
DCアーク放電装置内で生成したはんだナノ粒子がDCアーク放電装置を大気開放することなく、有機溶剤に浸漬後、回収され、そのはんだナノ粒子を使用することを特徴とする請求項1〜3に記載のソルダーペースト
【請求項5】
粒子径が1〜100μmの範囲内にあるはんだ粉と請求項1〜4に記載のナノ粒子から構成されることを特徴とするソルダーペースト

【公開番号】特開2011−104649(P2011−104649A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275896(P2009−275896)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】