説明

鉛検出方法

【課題】固体被検体表面の鉛の迅速かつ簡便な検出方法を提供する。
【解決手段】以下のステップ:(a)固体被検体に、アルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させるステップ、(b)該アルカリ性水溶液に含有されている、又は前記接触後に該アルカリ性水溶液に添加するヨウ化カリウムの存在下で、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にするステップ、及び(c)該基材上での着色を確認するステップを含む、鉛検出方法であって、ステップ(c)において黄色着色が確認されれば被検体に鉛が含まれることが示される方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体被検体に含有される鉛を検出する方法に関する。より詳細には、本発明は、ヨウ化鉛の形成を指標として金属部品に含有される鉛を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州連合(EU)が2000年10月に施行したELV指令によって、廃自動車の処分量を減らすために廃棄物の利用やリサイクルを進めることを目的として、EU市場で登録される乗用車やバス、トラックなどについて2003年7月以降、特定の金属の使用が制限されることとなった。具体的には、鉛、水銀及び6価クロムの使用量は1000ppm以下に、カドミウムの使用量は100ppm以下に制限される。これにより、車載電子部品の一部分(例えば、はんだ、ICチップのめっき部分)への鉛の使用も制限される。また、2006年にEUにより施行されたRoSH指令などの電子機器への特定成分の使用規制によっても、鉛の使用は制限されるに至っている。したがって、特に欧州での販売が検討される製品の部品中での鉛の存在を確認する手段が望まれている。
【0003】
合金中の鉛の検出方法として、特許文献1に記載の方法が提案されている。該文献には、ヨウ化カリウム(KI)と硝酸(HNO)とを混合し、該混合液を被検合金表面に滴下して、所定の色を有する沈殿物を生じるか否かを視認することで、鉛含有合金を識別する方法が提案されている(特許文献1、請求項4及び5)。この方法では、合金表面に溶液を滴下して該溶液中の沈殿の生成を確認する必要があるため、合金表面が濃色を有している場合には沈殿の生成の判別が困難である。
【0004】
いくつかの鉛検出用キットが市販されているが、それらは共存金属(亜鉛、スズなど)の存在により偽陽性を示す、反応時間が長い(十分〜数十分)、コストが高いなどの問題があり、自動車又は電子機器などの製造ライン中でのそれらの使用は現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−24399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、自動車及び電子機器の分野では鉛の使用は制限される傾向にあり、そのような製品に用いられる電子部品での鉛の存在を迅速かつ簡便に検出するための手段を開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明者らは、ヨウ化鉛の生成を指標とする金属表面の鉛の検出方法を開発し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕以下のステップ:
(a)固体被検体に、アルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させるステップ、
(b)該アルカリ性水溶液に含有されている、又は前記接触後に該アルカリ性水溶液に添加するヨウ化カリウムの存在下で、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にするステップ、及び
(c)該基材上での着色を確認するステップ
を含む、鉛検出方法であって、ステップ(c)において黄色着色が確認されれば被検体に鉛が含まれることが示される、上記方法。
【0009】
〔2〕ステップ(b)において、HNO及びHClより選択される酸性水溶液を用いて該アルカリ性水溶液の液性を酸性にする、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記アルカリ性水溶液がアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
【0010】
〔4〕前記基材が、棒状部材又はシート状部材である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の方法。
〔5〕前記基材が、綿棒、濾紙スティック、紙、不織布、及びガーゼからなる群より選択される、上記〔4〕に記載の方法。
【0011】
〔6〕ステップ(a)において、固体被検体に、ヨウ化カリウムを含有するアルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させる、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の方法。
〔7〕前記固体被検体が電子部品である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
〔8〕前記黄色着色を目視により確認する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の方法。
〔9〕アルカリ性水溶液、酸性水溶液、及びヨウ化カリウムを少なくとも含む、鉛検出用キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固体被検体表面の鉛の迅速かつ簡便な検出方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ヨウ化鉛の生成を指標として被検体表面の鉛を検出する方法であって、以下のステップ:
(a)固体被検体に、アルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させるステップ、
(b)該アルカリ性水溶液に含有されている、又は前記接触後に該アルカリ性水溶液に添加するヨウ化カリウムの存在下で、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にするステップ、及び
(c)該基材上での着色を確認するステップ
を含み、ステップ(c)において黄色着色が確認されれば被検体に鉛が含まれることが示される方法に関する。
【0015】
本発明においては、第1に、アルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を固体被検体に接触させる。当該技術分野では周知のように、鉛は他の金属に比較してアルカリ性水溶液に溶解し易い。したがって、このステップにおいて、被検体に鉛以外の金属が含まれていたとしても、基材に含浸又は塗布したアルカリ性水溶液には鉛のみが特異的に溶出される。このステップの時点で、上記アルカリ性水溶液中に、ヨウ化カリウムが含まれていてもよいが、含まれていなくてもよい。
【0016】
アルカリ性水溶液としては、通常、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液が用いられる。水溶液中のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の濃度は、被検体表面において鉛が溶解する限り特に制限されないが、通常0.1〜2N、好ましくは0.5〜1.5N、さらに好ましくは0.8〜1.2N、特に好ましくは1Nである。
【0017】
上記のとおり、基材を固体被検体に接触させる時点で、アルカリ性水溶液にヨウ化カリウムが含まれていてもよい。この場合、予めアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液を調製してこれを基材に含浸させるか、又は塗布することが考えられる。アルカリ性ヨウ化カリウム水溶液中のヨウ化カリウム濃度は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%、最も好ましくは5重量%である。予めアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液を調製する場合、該水溶液は使用の直前に調製する必要はなく、調製後1週間程度は安定である。あるいは、ヨウ化カリウムを含まないアルカリ性水溶液を含浸又は塗布した基材に、被検体との接触の前に水溶液又は固体の形態でヨウ化カリウムを添加してもよい。水溶液としてヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ化カリウムの濃度は好ましくは2〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。
【0018】
基材を固体被検体に接触させる時点でアルカリ性水溶液にヨウ化カリウムが含まれない場合、接触後の基材に水溶液又は固体の形態でヨウ化カリウムを添加する。水溶液としてヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ化カリウムの濃度は好ましくは2〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0019】
どちらの場合にも、好ましくは、最終的に基材にヨウ化カリウムを3〜10重量%程度含むアルカリ性水溶液が含浸されているようにする。
【0020】
次に、該アルカリ性水溶液に含有されている、又は前記接触後に該アルカリ性水溶液に添加するヨウ化カリウムの存在下で、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にする。酸性化は、好適には基材に酸性水溶液を添加することにより行うが、他の手段を用いてもよい。酸性水溶液を用いる場合、当該酸性水溶液としては強酸が好ましく、具体的には硝酸(HNO)又は塩酸(HCl)が挙げられる。水溶液中の酸の濃度は、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にすることができる限り特に制限されないが、通常0.1〜2N、好ましくは0.5〜1.5N、さらに好ましくは0.8〜1.2N、特に好ましくは1Nである。
【0021】
続いて、該基材上での着色を確認し、ここで黄色着色が確認されれば被検体に鉛が含まれることが示される。黄色着色はヨウ化鉛(PbI)の形成によるものであると考えられる。
【0022】
上記の酸性化ステップによりヨウ化カリウムが酸性環境下に置かれるようになると、長時間の放置により、おそらくヨウ素の析出のために溶液が黄色を帯びてくる。したがって、本発明の方法では、酸性化ステップと着色の確認ステップとの間の時間的間隔は短い方がよい。酸性化ステップから確認ステップまでの時間は、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内、最も好ましくは1分以内である。
【0023】
最後のステップでの着色の確認を容易にするために、用いる基材は白色又は黄色着色が明瞭に判別できる色(例えば、薄い青色など)であることが好ましい。
着色の判定は、目視で行なうことができ、また、色差計などを用いて行なってもよい。
【0024】
基材の材質は、液体を含浸又は吸収でき、上記のアルカリ性水溶液とともに使用することが可能なものであれば特に制限されないが、好ましくは、セルロース系繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、その他のポリマー系繊維(ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸グリコール、ポリエチレン・ビニルアセテート、ポリエチレン・ビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンビニルアルコール・ポリ乳酸ブレンド、ポリメタクリル酸メチル・アクリロニトリルブレンド、ポリアニリン・ポリエチレンオキシドブレンド、ポリアニリン・ポリスチレンブレンド、ポリビニルアルコール・シリカ複合体、ナイロン6・モンモリロナイト複合体、ポリアクリロニトリル・酸化チタン複合体、ポリカプロラクトン・炭酸カルシウム複合体、ポリカプロラクトン・カーボンナノチューブ複合体など)、若しくはこれらの混紡繊維、又は超微細発泡ポリエチレン、オレフィン系気孔スポンジ、ポリウレタン系発泡スポンジなどである。特に好ましい基材の材質は、セルロース系繊維である。基材の形状は、被検体からそれに含まれる成分を擦り取るのに必要な強度を有するもので、操作の容易さから細長い形状のもの、例えば、棒状部材又はシート状部材が好ましい。ICチップのはんだ部分などの微細な部分への適用も可能な尖った先端を有するものがより好ましい。例えば、綿棒、濾紙スティック、紙、細長く成形した不織布、及びガーゼなどが考えられる。
【0025】
本発明の方法の対象となる固体被検体は、鉛の存在を検出する必要があるいかなる製品又は部品でもよい。典型的には、固体被検体は金属からできた部分を含む自動車又は電子機器部品、特には電子部品、具体的にははんだ部分又はICチップの足のめっき部分である。
【0026】
合金中の鉛を検出するための従来技術(特開2005−24399)では、ヨウ化カリウムと硝酸との混合液を鑑別対象の表面に直接滴下して、所定の沈殿物の形成の有無から鉛の存在を検出する。
【0027】
この方法では、第1に、酸性のヨウ化カリウム溶液は、鉛のみならず銅又はビスマスの存在によっても着色するため、これらの金属の混入による偽陽性を避けることができない。第2に、鑑別対象の表面での沈殿物の形成を判別しなければならないため、金属色などの濃色を有する対象では判別が困難である。第3に、溶液を被検体に直接滴下する手順が含まれるので、微細な部品の一部分(例えば電子部品のはんだ、ICチップの足など)には適用することができない。また、ヨウ化カリウムと硝酸の混合液は、鉛などの金属との接触がなくとも時間が経てば着色してしまうので、用いる溶液を用時調製しなければならない。
【0028】
それと比較して、本発明では、上記のようにアルカリ性水溶液で鉛を特異的に溶出させるので、他の金属による影響はない。また、被検体中の成分を基材で擦り取り、基材上で着色を判定するので、基材の色を適切なものとすれば、被検体の有する色によって判定が困難になることはない。本発明では被検体に溶液を直接滴下する必要がないため、微細な部品の一部分にも適用可能である。さらに、本発明で用いるアルカリ性水溶液、ヨウ化カリウム、及び必要な場合には酸性水溶液は、被検体中の金属との接触なしに着色することはないので、用時調製する必要はない。本発明者らは、アルカリ性ヨウ化カリウム水溶液とした場合にも、該溶液は少なくとも1週間は着色がなく安定であることを確認している。したがって、この場合も、溶液を用時調製する必要はない。
【0029】
電子部品などを対象とした鉛検出キットが市販されている。そのようなものとしては、サンハヤト株式会社から供給されているピービーチェッカー(登録商標)、及び株式会社エスシーエスから供給されている鉛フリーチェッカーが挙げられる。
【0030】
上記のピービーチェッカー(登録商標)では、キシレノールオレンジを用いて鉛の存在による呈色を判定する。この製品も、上記の特許出願の方法と同様に、被検体に直接溶液を滴下する手順を含む。したがって、小型の部品の一部分には適用することができない。また、キシレノールオレンジの性質により、亜鉛の存在によっても鉛と同様の呈色が起こり、スズの存在によっても着色が生じる。したがって、亜鉛又はスズの存在による偽陽性を避けることができない。また、大部分が水で構成されているほぼ中性の溶液を用いて鉛を溶出するため、呈色までに20分間以上の時間がかかり、製造ラインなどで大量の製品に適用するのは現実的ではない。それと比較して、本発明では酸性化ステップの後ただちに呈色が起こるので、判定に要する時間は当該製品よりも顕著に短い。さらに、キシレノールオレンジは、本発明で用いる試薬よりもコストが高い。
【0031】
上記の鉛フリーチェッカーでは、棒状に成形した不織布のような基材に試薬(おそらくはロジゾン酸)を含浸させ、該基材で被検体を擦過して、被検体中の鉛を検出する。この製品では、上記の特許文献中の方法及びピービーチェッカー(登録商標)とは異なり、試薬を含浸させた基材で被検体を擦る手順により試料を採取するので、溶液を直接滴下することによる問題はなく、小型の部品にも適用することができる。しかしながら、この製品の基材部分の直径は約1cmであるので、電子部品のはんだ部分やICチップの足のめっき部分などの微細な部分への適用は困難である。それと比較して、本発明では基材の形状は自由に選択できるので、本発明の方法において先端を尖らせた綿棒や不織布などを基材として用いることにより、数mmの範囲でも判定を行なうことができる。さらに、キシレノールオレンジと同様、ロジゾン酸は、本発明で用いる試薬よりもはるかにコストが高い。
【0032】
本発明の方法は、半定量的に用いることができる。その目的では、基材のサイズ、含浸させる溶液(及び試薬)の量、擦過の圧力、酸性化ステップから判定までの時間などのパラメータを一定に保つ必要がある。これらのパラメータを一定にするためには、本発明の方法を自動化することが望ましい。自動化は、当業者には明確なロボット化の技術を用いて行うことができる。上記のようなパラメータを一定にし、着色の検出を色差計を用いて検出し、標準物質で検量線を作製することで、被検体に含まれる鉛の量(濃度)を一定の精度まで定量することができる。
【0033】
本発明は、さらに、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、及びヨウ化カリウムを少なくとも含む、本発明の方法を行なうための鉛検出キットにも関する。本発明のキットには、本発明の方法を実施するための説明を記載した取り扱い説明書をさらに含めることができる。好適なアルカリ性水溶液及び酸性水溶液は上記のとおりである。また、ヨウ化カリウムは水溶液又は固体の形態で含めることができる。
【0034】
本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
基本的方法
試薬
ヨウ化カリウム含有1N水酸化ナトリウム水溶液は、固体の水酸化ナトリウムを1Nで純水に溶解し、これに固体のヨウ化カリウムを溶解することにより調製した。このアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液は、調製後少なくとも1週間は室温で無色のままであった。1N硝酸は、固体のHNOを1Nで純水に溶解することにより作製した。
【0036】
試験方法
上記のアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液を、市販の綿棒(白色)に数滴含浸させ、この綿棒で試料を約10秒間擦り、続いて綿棒に1N硝酸を数滴滴下した後、1分以内に目視により着色を判定した。
【0037】
結果
30%Pb含有はんだ(Sn:64%、Pb:34%、Ag:2%)を被検体として本発明の方法を実施した。ヨウ化カリウム濃度0.1重量%、1重量%、5重量%、10重量%及び20重量%のアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液をそれぞれ用いた。ヨウ化カリウム濃度5重量%以上では綿棒が強い黄色に着色したことが確認できた。
【0038】
1N硝酸は、アルカリ性ヨウ化カリウム水溶液(1N水酸化ナトリウム含有)よりも多く綿棒に滴下する必要があった。
【0039】
対照実験として、上記のアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液及び1N硝酸を被検体に直接滴下して、着色を判定した。この場合、目視では着色は確認できなかった。したがって、本発明の方法では、基材を用いて被検体表面を物理的に擦ることで試料を採取することが必要であることが示唆された。
【0040】
検出下限
方法
5重量%ヨウ化カリウム含有1N水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液として用いて、上記と同様に試験を行なった。用いた被検体は以下の通りである。
【0041】
試料A Pb含有率:60% Sn:39%、Ag:1%
試料B Pb含有率:34% Sn:65%、Ag:1%
試料C Pb含有率:10% Sn:90%(ソルダーコート社製)
試料D Pb含有率: 5% Sn:95%(ソルダーコート社製)
試料E Pb含有率: 1% Sn:99%(ソルダーコート社製)
【0042】
結果
上記の試料を被検体とした試験では、試料Aでは綿棒が非常に強い黄色に着色し、試料Bでは濃い黄色、試料Cでは薄い黄色に着色した。試料D及び試料Eでは、着色は確認できなかった。
【0043】
このことから、スズ及び鉛から主に構成される被検体では、本発明の方法の検出限界は鉛10%であると結論づけることができた。
【0044】
実試料を用いた試験
方法
5重量%ヨウ化カリウム含有1N水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性ヨウ化カリウム水溶液として用いて、ICチップの足のめっき部分を被検体として上記と同様に試験を行なった。
【0045】
結果
10%鉛含有製品では、綿棒が薄い黄色に着色した。鉛不含製品では、着色は確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、自動車、電子機器などの製造をはじめとする工業分野において有用性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a)固体被検体に、アルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させるステップ、
(b)該アルカリ性水溶液に含有されている、又は前記接触後に該アルカリ性水溶液に添加するヨウ化カリウムの存在下で、ヨウ化カリウム含有アルカリ性水溶液の液性を酸性にするステップ、及び
(c)該基材上での着色を確認するステップ
を含む、鉛検出方法であって、ステップ(c)において黄色着色が確認されれば被検体に鉛が含まれることが示される、上記方法。
【請求項2】
ステップ(b)において、HNO及びHClより選択される酸性水溶液を用いて該アルカリ性水溶液の液性を酸性にする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ性水溶液がアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、棒状部材又はシート状部材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、綿棒、濾紙スティック、紙、不織布、及びガーゼからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)において、固体被検体に、ヨウ化カリウムを含有するアルカリ性水溶液を含浸させたか又は塗布した基材を接触させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体被検体が電子部品である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記黄色着色を目視により確認する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アルカリ性水溶液、酸性水溶液、及びヨウ化カリウムを少なくとも含む、鉛検出用キット。

【公開番号】特開2010−271141(P2010−271141A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122370(P2009−122370)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】