説明

鉤勘合の位置確定機能付き面係合具

【課題】 対向する衣服等の重ね合わせ部の基材に二種類の面ファスナー付き係止片を固着して用い、指先の感覚によるブラインドタッチでこれら係止片の正確な位置確定ができ、より確実な係合ができるようにする。係止片を勘合・押圧する際に、操作性を高め、勘合状態が外れないようにする。
【解決手段】 剛性に富む薄いプラスチック基板に対向して用いる二枚の面ファスナーをそれぞれ固着し、この面ファスナーに近接する位置に穴部を打ち抜きで設けた凹形係合片と、突起部を設けた凸形係止片を形成する。この突起部を基板面から立ち上がる状態にして、引っかかりやすい形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の布地等の二枚の基材に取り付けてそれらの重ね合わせ部において、簡便に固着できる係合具を指先の感覚で確実にかつ容易に位置合わせができるようにする小型面ファスナーに関するもので、プラスチック製基板に面ファスナー部と切り込み部を設けた凹部係合片とプラスチック製基板に面ファスナー部と突起部を設けた凸部係合片とで構成する係合具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚の基材の重なり部において結合する手段として従来から行われているものとして、脱着が容易なものとしてはボタンとボタンホールからなる通常のボタン方式がある。この手法は18世紀の中ごろに英国で開発されたとされている。それより幾分早い時期にボタン状の突起物と細紐で係合する比較的ルーズなボタン紐方式がある。これは18世紀初期に日本でも武士の衣装に実施された手法である。これは結合がルーズであるため主として荷重のかかる縦方向の係合に用いられた。
【0003】
これらの結合手段が開発された後、しばらくして超小型の金属製のスナップホックが実用化された。しかし、位置決めの困難さがあり、普及しなかった。この後、20世紀に至って面ファスナーが開発され、比較的ラフな位置決めでやや大きめのサイズを二枚の基材に固着することで使用可能になる条件で用いられてきている。
【0004】
また日本では近年開発された結合手段として、金属爪形片と太糸の組み合わせでの引っ掛け式である「コハゼ」法がある。これは現在では足袋の踵部の留めにのみ用いられている。この限定的使用は作業の困難さと位置決めの不確実さが問題として残っているためである。具体的には足袋の重ね部において上側の布地端に縫いつけた金属小片を下側の布地端に形成した太糸の係止部を抱き込む形で踵部の布地を固定するが、両者とも小さな部材であり、ブラインドタッチでの位置確認が困難であること、この重ね部の押さえを十分に行わねばならないこと、さらには両者の係合がタイトに行われなければ、使用中に外れる可能性があることが挙げられる。
【0005】
結合素材として最も開発の余地のあるものは面ファスナーである。この素材は不満足ながらも衣服等にも取り付けられている実績がある。この面ファスナーの使用される場面の一つは、位置確定の不確実性が顕在化しない面ファスナー同士の移動距離の短い手袋や胸元上部の係合である。係合のずれが目立ちにくいところでの使用である。これらの場合は比較的小片での使用である。もう一つの場面は、大きく開くかばんの蓋部、および枕カバー等の係合で、この係合ではずれがあってもそれほど目立たない。二枚の基材の重なり部に固着する面ファスナーは一方の面ファスナーが小さい場合でも対向して用いる面ファスナーは1辺が数センチ以上と大きいサイズであることが多い。
【0006】
着たときの感覚が重要で、かつ見栄えが気になる衣服等においては係合の位置ずれが問題になり、面ファスナーを用いにくい状況がある。またこの面ファスナーを衣服等に用いた場合の問題として存在した剥離時のメリメリという耳障りな音の問題があった。しかし、この問題についてはメーカーによる改良が進み、減音面ファスナーとして発売され、解消してきている。この新規素材の押圧による簡便な係合技法の開発が改めて注目されてきている。
【0007】
面ファスナーを取り付けた基材同士を位置確定した上で係合させる方法が米国特許に唯一公開されている。この方法によれば帯状の基板の端部に設けた差込穴と差込突起との関係を用いて先端の位置確定を行ってから近接部分に取り付けた面ファスナーを押圧して基板同士を脱着容易に固着できる。この方法は、基板同士の係合を目的にした発明であること、その基板の先端における挿入固定の作業が困難であることが問題点としてある。開示されている方法では、穴と突起の関係は目視でこれらの位置関係を確認しながら挿入固定を完了させる必要がある。開示されている穴と突起の形状を見ると、溝形状の穴の中央に半円部を設けて溝の一部が広くなっている。この形状には折り曲げた突起の差込固定を容易にする効果はない。罫入れを伴う打ち抜き加工での細い溝のカス落としを容易にするためのものと判断される。
【0008】
この発明の後は世界的にも結合の確実さと操作の容易さ、および位置確定の容易さを兼ね備えたユニバーサルデザイン的な係合手段は出現していない。
近年に至って世界的な傾向であるが、高齢者の増加に伴って(視覚障害者を含む身障者も対象になる)指先の不自由な人の衣服の前立ての結合を容易にしてほしいというユニバーサルデザイン的要求が生じている。この要求に基づいて各種の開発が行われている。
このような技術開発の停滞状況において、加工コストの高価になるジッパーが注目されているが、前立ての下端部でのチャック固定部の挿入が困難であり続け、根本的な解決には至っていない。また最近、開発商品のニュースが流れたが、これは2010年9月にイオンから新しい衣類の留め手段を取り付けたカーディガンとして発売された。これは従来からあるボタン方式ではあるが、ボタンホールを斜めに配置して留めの作業性を改善したものであった。このようにユニバーサルデザイン的結合手段の開発が希求されている。
【0009】
【特許文献1】 米国特許3873051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、衣服の前立てのように目視で位置関係を正確に確認できないところでの基材の重合を確実に、かつ簡便に行えるようにする、勘合による位置確定機能付き小型面ファスナーの提供を目的とする。具体的にはプラスチック薄板の基板を打ち抜いた小型の凹形係止片と凸形係止片に係合手段として面ファスナーを固着し、これに近接する部分に穴または突起の勘合手段を別個に形成しておき、ラフなブラインドタッチによる挿入による位置確定ができるようにする。この勘合状態を保持しながら両係止片を平行に押圧することで、二枚の基材の脱着を正確にかつ簡便に行える面ファスナー付きの小型係合具、およびその製造方法を提供するものである。
日本を含む先進国、および新興国において高齢化社会が進展し、特に日本においては65歳以上の高齢者の占める割合が23%を越えてきている。このような社会にあって指先の細かい操作が不自由になった人、視覚障害者等の障害者が用いる衣服には、ボタン、ジッパーに代わる安価でかつ簡便な操作によって正確な位置での基材の係合が可能になる面ファスナー応用品の開発が急務になっている。特に介護の分野では社会的ともいえるニーズがある。
【0011】
2010年現在、一般家庭および介護老人施設等で、面ファスナーを衣服に取り付けて脱着することが行われている。「丸型マジック」と称して直径22mmの丸型に打ち抜いた対の面ファスナーがセットされて販売されている。これを衣服に取り付けた場合、両方の面ファスナーの位置確認は指先確認が不十分な、いわば適当にラフに確認を行って押圧している。柔らかい面ファスナーの取り付け位置を指先で確認できるように、目印として衣服の表地の上に飾りボタンを取り付けることも一般的に行われる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するもので、係合の位置確定機能付き面係合具である。
ここでは係合手段として面ファスナーを用いる場合を主に説明する。面係合具の位置合わせに関する技術として開示されている米国特許の手段は、先述した問題点としてあげたように、衣服に用いた場合には従来から行われているボタン式と同様、正確な目視による位置確認が前提となるものである。衣服の場合には、目の真下での操作になり、この位置関係の正確な確認は困難になる。それに加えて、基材に穴あけ加工は実際上不可能であるという制約がある。
下記の発明内容の面係合具を用いることで、片手でも二枚の基材を押さえながらの正確な重ね位置でのブラインドタッチによる係合ができる。
【0013】
請求項1に係る発明は、二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凸形係止片であって、前記基材から立ち上がっている突起部と凸側面係合手段を有する凸形係止片と、該基材の重なり部で該凸形係止片に対向して用いる、該突起部と勘合する受け部と該凸形係止片の該凸側面係合手段と係合する凹側面係合手段を有する凹形係止片と、を有していることを特徴とする位置確定機能付き面係合具に関する。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記凸形係止片の前記突起部と前記凹形係止片の前記受け部とが勘合している状態において、前記凸形係止片における該凸側面係合手段と前記突起部の並び順と、前記凹形係止片における該凹側面係合手段と前記受け部の並び順と、が合致していることを特徴とする請求項1に記載の位置確定機能付き面係合具に関する。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記凸形係止片の前記突起部は、前記受け部と引っかかる鉤形状に形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置確定機能付き面係合具に関する。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記突起部は凸側基板に設けられ、前記受け部は凹側基板に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置確定機能付き面係合具に関する。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記凸形係止片の前記突起部は、該凸形係止片の前記凸側基板面から15度乃至150度に立ち上がって設けられていることを特徴とする請求項4に記載の位置確定機能付き面係合具に関する。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記凸形係止片の前記突起部は、該凸形係止片の前記凸側基板面から湾曲して立ち上がって設けられていることを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の位置確定機能付き面係合具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、二種類の係止片を用いて構成するものである。一つは凹形係止片(1)で、前記プラスチック基板(5)に面係合手段の代表である面ファスナー(2)を固着し、この面ファスナーに近接した部分に自動的に位置確定できる形状の受け部としての切り欠け部(3)を設けた凹形係止片に形成する。この切り込み部は上縁と下縁からなるもので任意形状にすることができる。本発明の実施例では切り込み穴の上縁はカーブ状、下縁(4)は直線にしたものを代表させている。この切り込み穴部の下縁部は係合操作の際に外れ防止のバーとして機能する。
もう一つの係止片は凸形係止片(6)で、この凹形係止片と対向して用いるこの凸形係止片は、前記面ファスナーと係合する機能のある面ファスナーをプラスチック基板に固着し、これに近接する部分に上記受け部としての切り欠け部と挿入することで自動的に勘合する種々の形状の突起(7)を設けた凸形係止片で構成する。
【0020】
二種類の係止片を用いて構成する位置確定機能付き面係合具は、突起部を切り欠けの穴部に挿入し、さらに穴部の周縁と当接させた後、一方の係止片を回転・移動させて面ファスナー同士を押圧し、係合に及ぶものである。したがって、凸形係止片における該面係合手段と突起部の並びの軸方向と、前記凹形係止片における該面係合手段と受け部の並びの軸方向とが合致していることは、スムースな回転の必須条件になる。
固着させている面ファスナーが用いる面積で有効に機能するには、ずれなく対面して係合するように設計する。ちなみに固着する面ファスナーは、突起数に関係なく基板面に1個または複数個を任意に用いることができる。
【0021】
これら凹部係止片と凸形係止片を重合して係合しておきたい二枚の基材の端部に固着しておき、広げた状態の基材同士をラフな勘合部での挿入による自動位置確定によって、これに続く押圧によってずれの生じない係合を完成させるものである。
この勘合は、プラスチック基板に形成される突起部とプラスチック基板に形成される切り欠け部で行われるが、勘合しやすいように、かつ押圧操作中に外れることを確実に防止できるように、突起部を平面の基板面から立ち上がった状態に設ける。
【0022】
以下本発明の代表的な位置確定機能付き小型面ファスナーの形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る面ファスナーを両面粘着テープ等でプラスチック基板に固着し、その近傍に切り欠け穴を形成した凹形係止片と、該係止片に対向して用いる、立ち上がった状態に突起部を設けた凸形係止片をそれぞれセットにして示している。図1から図4にその1、その2、その3、その4として4種類の面係合具の平面図を示している。ここで用いる切り欠けには湾形状の穴と閉鎖の穴形状が含まれる。
【0023】
その1の図1右図は、立ち上がって角度を有する突起1個を備えた凸形係止片である。左図はこの平板から飛び出た突起を収納し、勘合する切り欠け部を1個設けた凹形係止片である。
その2の図2は、その1の形態に類似する係合具で、突起の設ける位置が反対側になるタイプである。
その3の図3は、立ち上がっている基板端部の突起部がコ字形に形成される係合具で、勘合する穴部の下縁部を突起部が回転しやすいように細バー状にしたタイプである。
その4の図4は、立ち上がっている基板端部の突起部がコ字形に形成される係合具で、この突起部を2個有しているタイプである。勘合する穴部も2個で、その下縁部は細バー状である。
【0024】
図5から図8は、上記4種類の係合具の勘合操作を両係止片の断面図で模式的に示すものである。立ち上がっている突起部と穴部の関係において、突起部の挿入方法と係止片の回転・押圧の方向がポイントになる。この回転・押圧方向には面ファスナーの取り付けが基板のどちらの面になるかが関与している。
【0025】
図5は2枚の基材の端部に両係止片を取り付け、面ファスナー部を指で把持して、立ち上がった突起部を穴部付近で移動させ、指先感覚で挿入と勘合を確認した後、把持している指は離しながら、2枚の係止片を押圧・重合する。実際には面ファスナー部を強く押す。
この勘合は突起部を穴部の下縁(4)に突き当てて当接させ、プラスチック片同士の当たりを感知して勘合状態を確認する。
【0026】
係止片の詳細な構成について説明する。本発明は両係止片の勘合がより確実に行われ、かつ楽な操作で行われるようにする目的で達成できたものである。図1と図2に示す突起部の形状断面がL字形になる直線的形状は、勘合の引っ掛かりを確実にするためには鉤状に設ける場合の代表的形状である。この凸形係止片に形成する立ち上がる突起は、打ち抜きで形成する基板の突起にする部分を加熱処理しながら、冶具を用いて平板から飛び出るようにプレス成形することで曲げた形状を得られる。
この突起に形成する折り曲げ部分の根元に、部分的に切れ目(8)を入れるかする工夫を加えると、罫線効果を得ることができ、小さな部分でも軽い熱プレス成形で比較的簡単に角度をつけた形状的にすることができる。コ字形状またはU字形状にするには、複雑な二段階曲げの機構を有する冶具を使用する。
【0027】
図3と図4に示すようなアール部を含むU字状の形状の突起、または前述のL字形突起との中間的な「く字状」または「コ字状」突起は係止片の勘合と回転をより確実にするものである。これらの突起形状は基板面に対して、突起部全体を曲げて均一平面を有するように突起部を形成するものである。
これら突起部は、1個でも複数個でも良い。これに対応する穴部はこれに対応する個数、または連通の穴にして少ない個数にしても良い。また突起部は、厚みのある棒状の突起であってもよく、また所定幅を有する板状であっても良い。前者は厚みを調整できるインジェクション成形の場合に適する形状になる。成型による自在な湾曲形状の例を図9に示す。この成型法を採用すると、突起部の根元は直線的に角度を持って立ち上がり、その先端に小さくアールを設けるような請求項5と6の組み合わせ的な複雑な形状にもすることができる。
【0028】
また、この突起部の曲げ角度は、求める勘合の程度によって設定が異なる。この角度は、凸形係止片の基板面から立ち上がって勘合する側の角度として、15度乃至150度に設ける。好ましくは45度乃至120度の範囲になる。
図2に示すような反りやすい係止片の場合は、勘合する切り欠け穴部の下縁に対して、30度乃至45度になる鋭角の突起でも、係止片同士の押し付け合いの反りを利用すると、勘合は実際にはやりやすい状態になる。
【0029】
突起部の受け部としての切り欠け穴の下縁部について説明する。図1と図2の突起は基板の中央部付近に形成され、穴部に対する突起部の挿入と勘合の方向と面ファスナーの押圧方向が同一になっている。そして面ファスナーの基板への固着は最初から向かい合っている。したがって、後者の押圧する凸形係止片の動きに伴う回転の角度は、勘合の際に指先で係合片の面ファスナー部を把持して、これを挿入のために開く角度になり、僅かである。
【0030】
これに対して、図3と図4の勘合は立ち上がった基板端部の突起部を穴部に挿入し、穴の周縁部に突き当てて勘合に至った後に比較的大きく凸形係止片を回転しなければならない。このやや大きい反転回転によって面ファスナー同士を押圧・係合できる。この理由は図5と図6に示すように面ファスナー同士が勘合時に向き合っていないからである。
また、この場合の突起形状は湾曲していて、この反転回転をスムースに行うためには、突起部が当たる穴部の下縁部が狭い細バー状になっていなければならない。2mmまたは3mm程度であれば、薄板を打ち抜きで仕上げられる。そして、この湾曲突起部は細バーの幅以上の間隔を保つように形成されている必要がある。
凸形係止片の回転をなめらかに行うには、細バーを角状にするよりも丸棒状にする方が好ましい。直径は1〜4mmにするが、係止片全体の耐洗濯性等の強度を考慮すると、3〜4mmの径が適する。このバー形状にする場合は、インジェクション成型で両係止片の全体を一体成型する製作になる。
【0031】
上記のように突起を基板面より立ち上がった状態にすることで、滑りやすいプラスチック素材を用いた勘合であっても、勘合位置の確定および回転・押圧の操作中に突起部を外れにくい状態にすることができる。
この外れにくさを補助する設計技法として、勘合に関係する基板のエッジを粗く、ギザギザに仕上げる方法がある。打ち抜きで製作する係止片であれば、打ち抜き型の切れ刃を先端が波形状の波刃を用いる。
【0032】
次に係止片の材料とサイズについて説明する。図1に示すような係止片は全体がしなることが、勘合の操作性向上に関与するため、プラスチック材料のポリプロピレンの薄板がコストパフォーマンスの点で優れる。同材料の0.5mmまたは0.75mmの厚さを有するシートが適度なしなりと縫製、打ち抜き加工性の点で好適である。
サイズは図1の形状の場合、1穴方式では凹形係止片は40mm×70mm、凸形係止片の方は40mm×90mm程度で、2穴方式の設計では凹形係止片は75mm×70mm、凸形係止片の方は75mm×90mm程度である。
【0033】
立ち上がる突起部の打ち抜き形状は、図1では台形として示しているが、半円でもよい。先端部は切り欠け部に挿入しやすいように根元より狭くなっている形状が適する。台形の場合で根元寸法は20mm乃至25mm付近で、立ち上がる高さ寸法は10mm程度となる。
【0034】
図1では打ち抜き製造を前提とした形状として示しているが、インジェクション成形であれば、基板としての平板に穴が生じない状態で種々の形状で任意に突起を設けることができる。
【0035】
次に両係止片の勘合操作を説明する。凹形係止片より長くした凸形係止片の面ファスナーの反対側のスペースは、凸形係止片のスペース部を指先で反らせて凹形係止片を押さえつけるために用いる。この状態にすると、突起部と切り欠け穴の勘合がやりやすくなる。係合する面ファスナー同士の距離をとることができることの効果である。そして、立体突起の先端が挿入しやすくなる。
この効果をより大きくするには、面ファスナーと突起部の距離および切り欠け部との距離をそれぞれ15mm乃至30mmにする。これによって凸形係止片の面ファスナーを指先で把持した状態を楽に保てるようになる。これは服の首下の前たて部での窮屈な場所での係合において効果を発揮する。
【0036】
図3は凸形係止片の基板から立体的に立ち上がって飛び出る突起部が、曲面を持って形成されているタイプの突起部を示す。面ファスナー同士の押圧動作に入る際に、より外れにくくするための曲面形状である。いわゆるフック形状で、突起の先端にターン部を設けたものを含む。これに対応する切り欠け部形状、および凹形係止片の全体形状の図は割愛する。この曲面形状は求める引っ掛かり状態、その他の条件を加味して任意の形状に設計することができる。
【0037】
図4は両係止片を基材に実際に取り付けた場合の留め具としての係合作業工程図である。この図は係止片の形状を単純化して、服地等の基材端部の重なり部において、両係止片がどのように勘合するかを模式的に示している図である。したがって、図4の突起部は本発明の立ち上がった形状の突起部としては示していない。
この図では、凸形係止片の面ファスナー側を把持して体側に留め置いた凹形係止片の穴部に先の凸形係止片の突起を勘合する方式を示している。これとは反対に、凹形係止片の面ファスナー側を把持して、凸形係止片の突起部に対する勘合操作に入る方式も採用できる(図示なし)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る面係合具(その1)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状を示す平面図である。突起部は鋭角に立ち上げて形成してある。
【図2】本発明に係る面係合具(その2)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状を示す平面図である。突起部は鈍角に立ち上げて形成してある。
【図3】本発明に係る面係合具(その3)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状を示す平面図である。U字突起部は1個。
【図4】本発明に係る面係合具(その4)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状を示す平面図である。L字の突起部は2個。
【図5】本発明に係る面係合具(その1)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状での勘合操作を示す断面図である。
【図6】本発明に係る面係合具(その2)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状での勘合操作を示す断面図である。
【図7】本発明に係る面係合具(その3)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状での勘合操作を示す断面図である。
【図8】本発明に係る面係合具(その4)の凹形係止片と凸形係止片の基本形状での勘合操作を示す断面図である。
【図9】凸形係止片の突起部を湾曲形状に立ち上げて形成した二種類の突起図で、基板内の断面図である。
【図10】両係止片の勘合・押圧の作業工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 凹形係止片
2 面ファスナー
3 切り欠け部
4 切り欠け部の下縁部
5 基板
6 凸形係止片
7 立ち上がる突起部
8 罫線(切れ目)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の基材の重なり部の一方に固着して用いる凸形係止片であって、前記基材から立ち上がっている突起部と凸側面係合手段を有する凸形係止片と、該基材の重なり部で該凸形係止片に対向して用いる、該突起部と勘合する受け部と該凸形係止片の該凸側面係合手段と係合する凹側面係合手段を有する凹形係止片と、を有していることを特徴とする位置確定機能付き面係合具。
【請求項2】
前記凸形係止片の前記突起部と前記凹形係止片の前記受け部とが勘合している状態において、前記凸形係止片における該凸側面係合手段と前記突起部の並び順と、前記凹形係止片における該凹側面係合手段と前記受け部の並び順と、が合致していることを特徴とする請求項1に記載の位置確定機能付き面係合具。
【請求項3】
前記凸形係止片の前記突起部は、前記受け部と引っかかる鉤形状に形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置確定機能付き面係合具。
【請求項4】
前記突起部は凸側基板に設けられ、前記受け部は凹側基板に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置確定機能付き面係合具。
【請求項5】
前記凸形係止片の前記突起部は、該凸形係止片の前記凸側基板面から15度乃至150度に立ち上がって設けられていることを特徴とする請求項4に記載の位置確定機能付き面係合具。
【請求項6】
前記凸形係止片の前記突起部は、該凸形係止片の前記凸側基板面から湾曲して立ち上がって設けられていることを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の位置確定機能付き面係合具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52210(P2013−52210A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206594(P2011−206594)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(503356967)
【Fターム(参考)】