説明

鉱物繊維を含有するシリコーンゴム組成物

【課題】一定の水準が、燃焼の際にケーブルの高い柔軟性を必要とするが、従来のシリコーンゴム組成物ではこれによりセラミックが粉々になり、機能の維持は保証されていなかった。
【解決手段】前記課題を解決するための本発明の対象は、金属酸化物、及び酸化ケイ素、及びケイ素−金属−混合酸化物から選択される無機充填材(F)と、粉砕された鉱物繊維(M)とを含有する、シリコーンゴム組成物(S)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕された鉱物繊維を含有するシリコーンゴム組成物、及びシリコーンゴム組成物からなる成形体及び被覆に関する。
【背景技術】
【0002】
US−A−6387518には、安全ケーブルのための充填されたシリコーンゴムが記載されている。シリコーンゴムは金属酸化物を含有する。シリコーンゴムからなる絶縁体は燃焼の際には燃焼し、及び金属酸化物と電気的に絶縁性であるセラミックを形成する。これによってケーブルの心線間の短絡が妨げられ、及びケーブルの機能の維持は配慮される。
【0003】
DE−A−19717645はセラミック化することが可能な耐炎性組成物を記載し、前記耐炎性組成物はシリコーンゴムと、セラミック化して焼結する充填材とを含有する。
【特許文献1】US−A−6387518
【特許文献2】DE−A−19717645
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定の水準は燃焼の際にケーブルの高い柔軟性を必要とし、これによりセラミックが粉々になり、機能の維持は保証されていない。
【0005】
US−A−6387518は充填材としてのガラス繊維をも述べる。このような充填材はシリコーンゴム中に非常に混和しにくく、かつシリコーンゴムの電気的な絶縁破壊耐性にネガティブな影響をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、金属酸化物、及び酸化ケイ素、及びケイ素−金属−混合酸化物から選択される無機充填材(F)と、粉砕された鉱物繊維(M)とを含有する、シリコーンゴム組成物(S)である。
【0007】
シリコーンゴム組成物(S)は、架橋していない状態において灰化されても、ほぼセラミック化する。架橋したシリコーンゴム組成物(S)は、シリコーンエラストマーの改善された機械的性質、例えば高い引裂強さのみでなく、良好な電気的な特性をも示す。燃焼の際には、無機充填材(F)と、粉砕された鉱物繊維(M)とを有するシリコーンエラストマーの燃焼によって、機械抵抗のあるセラミックが生じ、前記セラミックはなお良好に電気的に絶縁性である。殊にセラミックはあまりもろくなく、というのは、鉄筋コンクリート中の鋼補強材による場合と同様に、ガラス繊維が共にセラミック化し、セラミックを硬化させるからである。
【0008】
粉砕によって、鉱物繊維(M)は問題なくシリコーンゴム組成物(S)中に混和される。
【0009】
更にシリコーンゴム組成物(S)中のこの鉱物繊維(M)は無極性溶媒に対する高い耐性をもたらす。無極性溶媒とは全ての無極性液体を理解してよく、前記無極性溶媒中でシリコーンゴムはその作用の間に膨潤する。無極性溶媒は、例えば鉱油、例えばパラフィン、及び加工された鉱油、例えば燃料、例えばディーゼルオイル、灯油、ガソリンである。
【0010】
定着剤、殊にシランでの繊維の被覆により、無極性溶媒に対する高い耐性は更に強まる。シリコーンゴム中に定着剤がある場合には、同一の効果が生じる。
【0011】
シリコーンゴム組成物(S)はシリコーンゴムへと架橋してよい。例えばシリコーンゴム組成物(S)は過酸化物によりに架橋するか、縮合架橋するか、又は付加架橋してよい。
【0012】
シリコーンゴムとして、例えばEP−A−359251(前記文献は引用によって本発明に組み込まれる)に記載されている、通常の縮合架橋するオルガノポリシロキサン、又は公知の、付加架橋する又は過酸化物により架橋する材料も使用されてよい。
【0013】
有利にはシリコーンゴム組成物(S)は過酸化物により架橋し、かつ有利には次の成分を有する:
一般式I
【0014】
【化1】

[前記式中、
Rは同一又は異なっていてよく、及び場合によって置換された炭化水素基を表し、及び
rは0、1、2又は3であって、及び1.9〜2.1の平均的数値を有する]
の単位からなるオルガノポリシロキサン(A)。
【0015】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基及びアントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;アラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基、及びβ−フェニルエチル基である。
【0016】
置換された炭化水素基Rの例は、ハロゲン化されたアルキル基、例えば3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基及びペルフルオロヘキシルエチル基、ハロゲン化されたアリール基、例えばp−クロロフェニル基及びp−クロロベンジル基である。
【0017】
基Rの更なる例は、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基及び1−プロピニル基である。
【0018】
有利には、基Rは水素原子及び1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、殊に有利にはメチル基、フェニル基又はビニル基である。
【0019】
有利には、オルガノポリシロキサン(A)に含有されるSi原子の、少なくとも70モル%、殊に少なくとも90モル%に、アルキル基、殊にメチル基が結合している。オルガノポリシロキサンはSi結合メチル基及び/又は3,3,3−トリフルオロプロピル基の他に、更にSi結合ビニル基及び/又はフェニル基を含有し、後者は有利には0.001〜30モル%の量である。
【0020】
有利には、オルガノポリシロキサン(A)は主に、殊に少なくとも95モル%までのジオルガノシロキサン単位からなる。オルガノポリシロキサンの末端残基は、トリアルキルシロキシ残基、殊にトリメチルシロキシ基、又はジメチルビニルシロキシ基であってよい;しかしこのアルキル残基の1つ又は複数は、ヒドロキシ残基又はアルコキシ残基、例えばメトキシ基又はエトキシ基によって置換されていてもよい。
【0021】
オルガノポリシロキサン(A)は、液体又は高粘性の物質であってよい。有利には、オルガノポリシロキサン(A)は、25℃で10〜10mm/sの粘性を有する。
【0022】
特にシリコーンゴム材料の架橋剤として、過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシド、及び2,5−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン並びに前記過酸化物の混合物が使用され、その際ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド及び2,5−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンが有利である。
【0023】
更に、架橋剤として有利には、1:0.4〜0.5:1の割合の、有利には1:0.4の割合の、ビス−(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド(PMBP)と、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ第三ブチルペルオキシド(DHBP)とからなる混合物を使用する。
【0024】
添加物として使用されてよい可塑剤のための例は、25℃で最大1000mm/sの粘性を有する、トリメチルシリル基又はヒドロキシ基末端ポリジメチルシロキサン、又はジフェニルシランジオールでもある。
【0025】
添加物として使用されてよい熱安定化剤のための例は、遷移金属脂肪酸塩、例えば鉄オクトアート、遷移金属シラノラート、例えば鉄シラノラート、並びにCer(IV)化合物、前記金属の酸化物及び水酸化物、カーボンブラックである。
【0026】
無機充填材(F)は、補強性又は非補強性であってよい。
【0027】
補強性充填材(F)の例は、少なくとも50m/gのBET表面積を有する、熱分解ケイ酸又は沈殿ケイ酸である。
【0028】
前述のケイ酸充填材は親水的な特性を有するか又は公知の方法によって疎水化されていてよい。これに関して例えばUS−A−5057151が参照される。一般には次に、そのつどシリコーンゴム組成物(S)の総質量に対して、ヘキサメチルジシラザン及び/又はジビニルテトラメチルジシラザン1〜20質量%と、水0.5〜5質量%での疎水化が行われ、その際有利には適した混合装置、例えばニーダー又はインターナルミキサー中で、親水性のケイ酸を徐々に材料中に混和する前に、既に装入したオルガノポリシロキサン(A)にこれらの試薬を添加する。
【0029】
非補強性の充填材(F)の例は、石英粉末、けいそう土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、又は酸化亜鉛、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セッコウ、ほうろう、ガラスフリット、はんだガラス及び粘土である。これらの充填剤(F)のBET表面積は有利には50m/gより小さい。
【0030】
有利にはセラミック化する充填材(F)は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、及び二酸化ケイ素、及び加熱の際に酸化物を生じる、金属、マグネシウム、アルミニウム、スズ、カルシウム、チタン及びバリウムと、ケイ素との化合物、殊に前記化合物の水酸化物、ホウ酸及びホウ酸亜鉛から選択される。
【0031】
シリコーンゴム組成物(S)は、無機充填材(F)を有利には10〜80質量%、殊に有利には20〜60質量%含有する。
【0032】
有利には、セラミック化するシリコーンゴム組成物(S)は白金化合物を含有する。
【0033】
シリコーンゴムは有利には、白金錯体を含有してよく、前記白金錯体は少なくとも1つの不飽和残基を有し、例えば、有利には白金−オレフィン−錯体、白金−アルデヒド−錯体、白金−ケトン−錯体、白金−ビニルシロキサン−錯体、検出可能な有機ハロゲンの含有量を有する又は有しない白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金−ノルボルナジエン−メチルアセトナート錯体、ビス(ガンマピコリン)−白金ジクロリド、トリメチレンジピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)ジクロリド、四塩化白金と、オレフィンと、第一アミン又は第二アミン、又は第一及び第二アミンとの反応生成物、1−オクテンに溶解された四塩化白金とsec−ブチルアミンとからの反応生成物、その際白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が殊に有利である。前記白金錯体を5〜200ppm、有利には10〜100ppmの量において添加し、その際量は純粋な白金に対する。白金錯体の混合物を使用してもよい。
【0034】
粉砕された鉱物繊維(M)は有利にはセラミック繊維又はガラス繊維であってよい。
【0035】
セラミック繊維(M)の例は、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、スラグ繊維、ロックウール、ガラス繊維;殊にガラス繊維又はロックウールである。セラミック化する組成物のためにはガラス繊維は有利には導電性イオンの低い含有量を有する。
【0036】
粉砕によって鉱物繊維(M)は有利には平均30〜500μm長になる。粉砕された鉱物繊維(M)はとりわけ100〜300μmの平均の長さを有する。鉱物繊維(M)の平均の直径は有利には0.1〜20μmである。
【0037】
ケーブルの製造のためには有利にはアルカリ不含の、又はアルカリの少ない鉱物繊維(M)が使用される。
【0038】
シリコーンゴム組成物(S)のそのつどの成分は、そのつど前記の成分の1種類、同様に前記の成分の、すくなくとも2つの異なる種類からなる混合物であってもよい。
【0039】
本発明の更なる対象は、シリコーンゴム組成物(S)からなる成形体及び被覆、並びに架橋した成形体及び被覆である。有利な被覆は織布被覆である。有利な成形体は例えば電気的導体を囲む絶縁カバー、保護カバー及び外部コート並びに、燃焼保護に用いられる形材、例えば建築形材である。
【0040】
前述の式の全ての記号は、そのつど相互に独立してその意味を示す。
【0041】
記述がなければ、次の実施例において全ての量の記載及びパーセントの記載は質量に関し、全ての圧力は0.10MPa(abs.)及び全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0042】
実施例1:
耐溶媒性の向上に関して、10mmの直径を有する6mm厚さのタブレットの、23℃で7日間ディーゼルオイル中での貯蔵後の体積増加が測定された:
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2:
耐溶媒性の向上に関して、10mmの直径を有する6mm厚さのタブレットの、23℃で7日間ディーゼルオイル中での貯蔵後の体積増加が測定された:
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物、及び酸化ケイ素、及びケイ素−金属−混合酸化物から選択される無機充填材(F)と、粉砕された鉱物繊維(M)とを含有する、シリコーンゴム組成物(S)。
【請求項2】
過酸化物により架橋するか、縮合架橋するか、又は付加架橋する、請求項1記載のシリコーンゴム組成物(S)。
【請求項3】
無機充填材(F)は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン、及び酸化バリウムから選択される、請求項1及び2記載のシリコーンゴム組成物(S)。
【請求項4】
粉砕された鉱物繊維(M)は、セラミック繊維及びガラス繊維から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物(S)。
【請求項5】
鉱物繊維(M)は、平均30〜500μm長である、請求項1から4までのいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物(S)。
【請求項6】
請求項1記載のシリコーンゴム組成物(S)からなる成形体及び被覆。

【公開番号】特開2006−57092(P2006−57092A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236797(P2005−236797)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(390008969)ワツカー−ケミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker−Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, BRD
【Fターム(参考)】