説明

鉱石入りジェルとその製造方法

【課題】鉱石の粉末の粒子が集合して岩盤状になるようなことを好適に防止でき、鉱石の粉末全体としての表面積が制限されることがなく、鉱石の粉末が本来有する機能や特性を十分に発揮しうるような鉱石入りジェルとその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】鉱石入りジェルの特徴は、鉱石の粉末と、ジェルとを含有することである。また鉱石入りジェルの製造方法の特徴は、鉱石の粉末をジェルに混合して製造することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石入りジェルとその製造方法、さらに詳しくは、鉱石の粉末をゲル状物質に含有させ、寝具用シートや座布団等のシート状物、その他、人の身体に接触する製品等に適用され、ダニ忌避、空気浄化、化学物質除去、消臭、抗菌等の効果を奏する鉱石入りジェルと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱石の粉末を含有させた寝具用シート等のシート状物に関する技術として、たとえば下記特許文献1乃至4のような特許出願がなされている。
【0003】
特許文献1に係る発明は、当該特許文献1の請求項1に記載されているように、「珪酸アルミニウムの粉末と、酸化チタン含有セラミックスの粉末と、遠赤外線放射性鉱石の粉末と、アクリル酸樹脂とを、水を介して繊維製品に含浸させた脱臭機能付き繊維製品。」に関するものであり、当該特許文献1の請求項2には、前記繊維製品がシート状であることが記載されている。
【0004】
また特許文献2に係る発明は、当該特許文献1の請求項1に記載されているように、「寝具やウエストベルトの基材となるシートにトルマリン鉱石の樹脂成形ペレットを充填することを特徴とするトルマリンシート。」に関するものである。
【0005】
さらに特許文献3に係る発明は、当該特許文献3の請求項1に記載されているように、「少なくとも植物自体又はその加工材の粉末と、遠赤外線を放射する物質の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを所定の配合割合にて混合したものを、加熱溶融して成形したことを特徴とする成形材。」に関するものであり、当該特許文献3の請求項7には、前記成形材がシート状に成形されていることが記載されている。
【0006】
さらに特許文献4に係る発明は、当該特許文献4の請求項1に記載されているように、「SiO2やCe23を主成分とし、トリウム系鉱石粉末とマイナス電子発生天然鉱石粉末と磁気元素粉末と遠赤外線鉱石粉末などをウレタン樹脂やポリ塩化ビニール樹脂に調整配合して、離型紙に5〜30μmのコーティングフイルムを形成し、使用目的の繊維体等を接着剤により、ウエット−ラミネーションやドライ−ラミネーション又は、セミドライ−ラミネーション工法で圧着加工し、熱処理を加えながら熟成したことを特徴とする片面及び両面ウレタンマイナス電子コーティングシート。」に関するものである。
【0007】
しかしながら、上記のような鉱石の粉末を含有させたシート状物は、一般に鉱石の粉末の粒子が集合して岩盤状になり易く、鉱石の粉末全体としての表面積が制限されることとなり、その結果、鉱石の粉末が本来有する機能や特性が十分に発揮されないという問題点があった。そして、上記従来の特許文献1乃至4に係る発明では、このような問題点を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−266235号公報
【特許文献2】特開2001−329418号公報
【特許文献3】特開平11−48303号公報
【特許文献4】実用新案登録第3110349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、鉱石の粉末の粒子が集合して岩盤状になるようなことを好適に防止でき、鉱石の粉末全体としての表面積が制限されることがなく、鉱石の粉末が本来有する機能や特性を十分に発揮しうるような鉱石入りジェルとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、鉱石の粉末と、ジェルとを含有することを特徴とする鉱石入りジェルを提供するものである。また本発明は、鉱石の粉末をジェルに混合して製造することを特徴とする鉱石入りジェルの製造方法を提供するものである。
【0011】
鉱石としては、たとえば平津長石を用いることができる。また、鉱石の粉末の粒度は、1〜40μmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述のように、鉱石の粉末とジェルとを含有するものであるため、鉱石の粉末はジェル中で浮遊した状態となり、従って鉱石の粉末の粒子が集合して岩盤状になるようなことがなく、鉱石の粉末全体としての表面積が制限されることを好適に防止することができ、その結果、鉱石の粉末が本来有する機能や特性を十分に発揮することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鉱石入りジェルは、上述のように、鉱石の粉末と、ジェルとを含有するものである。
【0014】
鉱石の種類は特に限定されるものではないが、たとえば平津長石、トルマリン鉱石、竜王石、医王石、角モン石、麦飯石、黒曜石等を使用することができる。これらのうちでも、平津長石を用いるのが好ましい。
【0015】
尚、平津長石の組成の一例は、次のとおりである。
【0016】
成分 含有量(重量%)
Si 26.5%
SiO2 56.8%
Mg 0.07%
K 2.7%
2O 3.2%
Fe 3.8%
MgO 0.12%
Al 15.3%
Al23 28.8%
Fe23 5.4%
Ca 5.68%
【0017】
また、上記組成の平津長石に代えて、次の組成の平津長石を使用することも可能である。
【0018】
成分 含有量(重量%)
SiO2 66.15%
Al23 19.37%
Fe23 0.06%
CaO 0.25%
MgO 0.07%
2O 6.95%
Na2O 6.00%
【0019】
また鉱石の粉末の粒度は特に限定されるものではないが、1〜40μmであることが望ましい。さらに、鉱石の粉末の表面積も特に限定されないが、BET比表面積で、1.0〜1.4m2/g程度のものを用いるのが望ましい。
【0020】
一方、ジェルの種類も特に限定されるのではないが、たとえば炭素数8〜20の高級脂肪酸のカリウム塩の1種又は2種以上の混合物を主成分とする組成物を全体の15〜40重量%の割合で含有するとともに、水を含有する基剤組成物のようなものを使用することができる。このような基剤組成物は、上記高級脂肪酸のカリウム塩の種類とその含有割合によって実質的に決定される所定温度範囲内で半固状又は固状であり、該所定温度範囲以下に冷却されると液状になるような性質を有するものである。
【0021】
上記高級脂肪酸としては、飽和直鎖脂肪酸、不飽和直鎖脂肪酸、飽和ヒドロキシ脂肪酸、又はイソ酸のようなものを用いることができる。また、上記高級脂肪酸のカリウム塩に代えて、高級脂肪酸のナトリウム塩、アンモニウム塩のようなものを用いることも可能である。さらに、上記基剤組成物には、防腐剤や殺菌剤を含有させることも可能である。
【0022】
このようなジェルとしての基剤組成物は、脱イオン蒸留水に、市販の炭素数8〜20の高級脂肪酸のカリウム塩を所定量添加して約80℃に加温し、続いて攪拌しながら溶解した後、脱イオン蒸留水を加えることで調製することができる。
【0023】
上記高級脂肪酸のカリウム塩としては、たとえば炭素数が8〜20のものを用いるのができ、より具体的には、カプリル酸カリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、アラキジン酸カリウムに代表される飽和直鎖脂肪酸のカリウム塩、ミリストオレイン酸カリウム、パルミトオレイン酸カリウム、オレイン酸カリウム、エライジン酸カリウム、エイコセン酸カリウム、リノール酸カリウム、リノレン酸カリウム、エイコサジエン酸カリウム、エイコサトリエン酸カリウム、アラキドン酸カリウム等に代表される不飽和直鎖脂肪酸のカリウム塩、ヒドロキシドデカン酸カリウム、ヒドロキシテトラデカン酸カリウム、ヒドロキシヘキサデカン酸カリウム、ヒドロキシエイコ酸カリウム等に代表される飽和ヒドロキシ脂肪酸のカリウム塩、リシンオレイン酸カリウム等に代表される不飽和ヒドロキシ脂肪酸のカリウム塩、イソラウリン酸カリウム、イソミリスチン酸カリウム、イソパルミチン酸カリウム、イソステアリン酸カリウム、イソアラキジン酸カリウム等に代表されるイソ酸のカリウム塩などが例示される。
【0024】
尚、本発明における「ジェル」とは、半固形状、ゲル状、ゼリー状等のものを広く含むことを意味する。
【0025】
そして、本発明の鉱石入りジェルは、上記のようなジェルに、上記のような鉱石の粉末を混合することによって製造することができる。
【0026】
このような鉱石入りジェルを製造するに際し、鉱石の粉末を直接ジェルに添加することも可能であり、またジェルが未だ半固形の状態ではなく、流動性を有したゾルの状態のときに鉱石の粉末を添加することも可能である。
【0027】
また、ジェルと鉱物粉末との配合比は特に限定されないが、ジェルに対して5〜30重量%の鉱物粉末を配合するのが望ましい。
【0028】
このような鉱石入りジェルは、たとえばシート状に成形することができる。成形されるシートの厚みは特に限定されるものではないが、たとえば3〜6mm程度の厚さのものとすることができる。
【0029】
本発明の鉱石入りジェルのシート状成形物は、たとえば布団等の寝具用として使用することができる。一般に、就寝時においては、布団と身体との間に炭酸ガス等が滞留し、これが身体に必ずしも良好な影響を与えないが、布団等の寝具用シートとして上記のような鉱石入りジェルのシート状成形物を用いる場合、特に鉱石の粉末が平津長石の粉末である場合には、平津長石の空気浄化作用が生じ、清涼感や疲労回復等の効果をもたらすことができる。
【0030】
特に、鉱石粉末をジェルに混入することで、鉱石粉末が岩盤状にならず、常にジェル中で鉱石粉末が浮遊した状態となるので、鉱石粉末の表面積が維持されることとなり、たとえば鉱石粉末が平津長石の粉末である場合には、平津長石の空気浄化作用が好適に発揮されることとなるのである。
【0031】
また、寝具用以外に、たとえば座布団、腹巻、サポーター、枕等用として使用することもできる。いずれにしても、上記のようなジェルに鉱石粉末を含有させたものであるので、柔軟な板状に成形することができ、身体に接触させる際に怪我等を生じさせるおそれもない。
【0032】
尚、上記寝具等の家庭用として使用する場合、持ち運び等の便宜のため、5kg以下の重量とすることが望ましい。
【0033】
また、本発明の鉱石入りジェルのシート状成形物は、乗用車のシート等に適用することもでき、その場合には、車内の消臭、車内の空気浄化等に寄与するとともに、保温効果等も生じさせる。
【0034】
さらに、本発明の鉱石入りジェルは、上記のようなシート状以外の形態、たとえばブロック状のような形態に成形することもできる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0036】
(実施例1)
本実施例では、鉱石入りジェルを、寝具用シートに適用する場合の実施例である。鉱石粉末としては、上記平津長石の粉末を用いた。平津長石の粉末は、BET比表面積が1.2m2/gのものを用いた。
【0037】
また、ジェルとしては、脱イオン蒸留水に、カプリル酸カリウムを添加して約80℃に加温し、続いて攪拌しながら溶解した後、脱イオン蒸留水を加えることで調製したものを用いた。
【0038】
上記のような平津長石の粉末720gを上記のようなジェル4080gに混合して全量を4800gとし(平津長石の粉末の含有量15重量%)、シート状に成形するとともに、幅70cm、長さ150cmの寝具シートを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石の粉末と、ジェルとを含有することを特徴とする鉱石入りジェル。
【請求項2】
鉱石が平津長石である請求項1記載の鉱石入りジェル。
【請求項3】
鉱石の粉末の粒度が、1〜40μmである請求項1又は2記載の鉱石入りジェル。
【請求項4】
鉱石の粉末をジェルに混合して製造することを特徴とする鉱石入りジェルの製造方法。

【公開番号】特開2011−10764(P2011−10764A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156216(P2009−156216)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(394005188)
【Fターム(参考)】