説明

鉱質コルチコイドレセプターモジュレータ

本発明は、構造(I)を有するジフェニルメチルイミダゾール鉱質コルチコイドレセプターモジュレータ化合物、及び心血管系の事象を治療することにおけるその使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)の新規な鉱質コルチコイドレセプターモジュレータに関する。本発明はまた、化合物の調製のための方法、式(I)の1つ以上の化合物を含む医薬組成物、及び特に心血管事象における鉱質コルチコイドレセプターモジュレータとしてのそれらの使用を含む関連態様に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に記載される化合物は、新規な構造的分類の鉱質コルチコイドレセプターモジュレータである。
【0003】
鉱質コルチコイドは、成長、発達及び恒常性の維持におけるその多様な役割により多数の生理学的機能に重大な影響を発揮する。その作用は、鉱質コルチコイドレセプターによって媒介される。内臓組織、例えば、腎臓及び腸では、鉱質コルチコイドレセプターはアルドステロンに応答して、ナトリウム貯留、カリウム排出、及び水分バランスを調節する。アルドステロンレベルの増大、すなわち鉱質コルチコイドレセプターの過剰な刺激は、コーン症候群、一次及び二次の高アルドステロン血症、ナトリウム保持の増大、マグネシウム及びカリウム排出の増大(多尿)、水分保持の増大、高血圧(収縮期単独及び収縮期/拡張期の組み合わせ)、不整脈、心筋線維症、心筋梗塞、バーター症候群、及び過剰なカテコールアミン値に関連する障害を含むいくつかの生理学的障害又は病理学的疾患に関連する(Hadley,M.E.,ENDOCRINOLOGY,第2版、366〜381頁(1988);及びBrillaら、Journal of Molecular and Cellular Cardiology,25(5)、563〜575頁(1993))。さらに、アルドステロン値の上昇はますますうっ血性心不全(CHF)と関連しているとみなされている。CHFでは、心不全は、CHFで見られる血流及び血圧の低下に応答して他の器官におけるホルモン機構を誘発する。特に、腎臓はレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)を活性化し、副腎によるアルドステロン産生の増大を生じ、次にこれが水分及びナトリウムの保持、カリウムの喪失及びさらには浮腫を促進する。歴史的にはアルドステロンはその塩保持効果の結果としてのみCHFの病因に関与すると考えられたが、いくつかの現在の研究では、アルドステロン値の上昇は副腎外の組織及び器官における事象、例えば、心筋及び血管の線維症、直接の血管損傷及び圧受容器機能不全と関係しているとみなされている。Pittら、New Eng.J.Med.,341:709〜717(1999)。これらの知見は特に重要である。なぜなら、アンジオテンシン変換酵素(SCE)インヒビターは、アルドステロン産生を完全に無効にするとかつては考えられ、現在ではアルドステロン産生(心臓及び脈管構造を含む副腎外組織に存在することが示されている。)を一過性にしか抑制しないと考えられているからである。Weber,New Eng.J.Med.,341:753〜755(1999);Fardella及びMiller,Annu.Rev.Nutr.,16:443〜470(1996)。
【0004】
MRを介するCHFにおけるアルドステロン作用の関与は、最近完了したRALES(Randomized Aldactone Evaluation Study)試験で確認された(Pittら、New Eng.J.Med.,341:709〜717(1999)。このRALES試験では、周知の競合的MRアンタゴニストであるAldactone(商標)(スピロノラクトン)を標準的なCHF療法と組み合わせて使用して、進行性のCHFに罹患している患者において、心臓に関連する死亡率を30%まで、かつ入院の頻度を33%まで低下したことが示された。しかし、スピロノラクトン療法はまた、副作用、例えば、胃出血、下痢、高窒素血症、高塩素血症代謝性アシドーシス及び4型尿細管アシドーシス、悪心、女性化乳房、勃起障害、高カリウム血症及び月経不順にも関連している。したがって、鉱質コルチコイドレセプターは、単独で、又は従来のCHF治療、例えば、血管拡張薬(ACEインヒビター)、変力剤(ジゴキシン)、利尿薬又はβ遮断薬と組み合わせるかいずれかでCHF治療の実行可能な標的である。分子、好ましくは、非ステロイド(鉱質コルチコイドレセプターに結合して、副作用を伴うことなくレセプター活性を調節する。)最新の治療法が特に所望される。
【0005】
現在の鉱質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、腎上皮鉱質コルチコイドレセプターの遮断に起因する高カリウム血症によって制限される。鉱質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、高血圧及び心不全の治療に承認されている。非カリウム性鉱質コルチコイドレセプターモジュレータは、現在承認された化合物よりも安全である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hadley,M.E.,ENDOCRINOLOGY,第2版、366〜381頁(1988)
【非特許文献2】Brillaら、Journal of Molecular and Cellular Cardiology,25(5)、563〜575頁(1993)
【非特許文献3】Pittら、New Eng.J.Med.,341:709〜717(1999)
【非特許文献4】Weber,New Eng.J.Med.,341:753〜755(1999);
【非特許文献5】Fardella及びMiller,Annu.Rev.Nutr.,16:443〜470(1996)
【発明の概要】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、鉱質コルチコイドレセプターと関連することが公知の状態の治療を含む、特定の化合物及びその鉱質コルチコイドレセプターモジュレータとしての使用に関する。本発明は式Iの化合物:
【0008】
【化1】

【0009】
及び薬学的に許容されるその塩、又はその光学的異性体を包含し、式中、Zは
1)アリール環、
2)ヘテロアリール環、(このヘテロアリール環に対する結合点が炭素原子であり、かつこのヘテロアリール環が:
a)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する5員の不飽和単環式環、
b)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する6員の不飽和単環式環、
c)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する8員、9員若しくは10員の不飽和二環式環、からなる群より選択される。)並びに
3)N、O及びSからなる群より選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子の環原子を有する4〜6員の飽和複素環式環(この複素環式環への結合点は炭素原子である。)
からなる群より選択され;
このアリール、ヘテロアリール、飽和複素環式環が置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、又はRから独立して選択される基で四置換されており、ここで、任意の安定なS若しくはNヘテロアリール若しくは複素環式環の原子は置換されていないか、又はオキソで置換され、ヘテロアリール環R置換基は1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在し、
及びRは、水素及びC−Cアルキルからなる群より選択されるか、又はR及びRはそれらが結合される炭素原子と一緒になって、1位及び2位で置換されているベンゾイミダゾール環を形成し;
及びRは、水素、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH及びCNからなる群より選択され;
は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、NO、NH、CF、SCF、NHC(O)R、OH、CN、NR、CONR、CORa、C(O)0−2、SONRからなる群より選択され、ここでR及びRは独立して水素及びC−Cアルキルからなる群より選択されるか、又はR及びRはそれらが結合されるN原子と一緒になって、N原子及びN、O及びSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む3〜8員の環を形成し;
及びRは独立して水素及びC−Cアルキルからなる群より選択され;

1)アリール環、
2)ヘテロアリール環、(このヘテロアリール環に対する結合点が炭素原子であり、かつこのヘテロアリール環が:
a)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する5員の不飽和単環式環、
b)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する6員の不飽和単環式環、及び
c)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する8員、9員若しくは10員の不飽和二環式環、からなる群より選択される。)並びに
3)C−Cアルキル
からなる群より選択され;
該アリール環、ヘテロアリール環及びC−Cアルキルが置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、Rから独立して選択される基で四置換されており、ここで任意の安定なS又はNヘテロアリール環原子が置換されていないか、又はオキソで置換されており、該ヘテロアリール環R置換基が、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在し、
はC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN及びハロゲンからなる群より独立して選択される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な記載)
上記の式Iの化合物、及び薬学的に許容されるその塩は、鉱質コルチコイドレセプターモジュレータである。この化合物は、鉱質コルチコイドレセプターを調節するため、及び高血圧のような状態を治療するために有用である。
【0011】
一実施態様では、Zは、アリール環及び1又は2個のヘテロ原子環原子を有する9員の不飽和ヘテロアリール二環式環からなる群より選択され、ここでこのヘテロ原子はOであり、このアリール又はヘテロアリール二環式環は置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、又はRから独立して選択される基で四置換され、このヘテロアリール環R置換基は、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在し、かつ全ての他の変数は以前に規定されたとおりである。本実施態様の好ましい群では、Rは、CH、OCH、ハロゲン、NO、NH、CF、SCF、Cl、Br、I及びNHC(O)Rからなる群より選択され、かつ全ての他の変数は、以前に規定のとおりである。この実施態様のさらに好ましい群では、Rはアリールであって、置換されていないか、CH若しくはClで一置換されているか、又はCH及びClからなる群より選択される置換基で独立して二置換されており、かつ全ての他の変数は、以前に規定のとおりである。本実施態様のさらに好ましい基では、Zは
【0012】
【化2】

【0013】
からなる群より選択され、かつ全ての他の変数は、以前に規定のとおりである。
【0014】
別の実施態様では、R及びRは、水素及びCHからなる群より選択されるか、又はR及びRはそれらが結合される炭素原子と一緒になって、1位及び2位で置換されているベンゾイミダゾール環を形成する。
【0015】
別の実施態様では、R及びRは水素である。
【0016】
別の実施態様では、Rは水素及びCHからなる群より選択される。
【0017】
式Iの化合物、及び薬学的に許容されるその塩の具体的な例としては、
2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−[1−(3−ヨードフェニル)エチル]−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(4−メトキシベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−[3−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−{3−[(トリフルオロメチル)チオ]ベンジル}−1H−イミダゾール、
1−{1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−ヨードベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−メチルベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−ニトロベンジル)−1H−イミダゾール、
3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}アニリン、
1−[1−(3,5−ジクロロフェニル)エチル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−(5−ブロモ−2−メトキシベンジル)−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−[(6−クロロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)メチル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
N−(3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}フェニル)−3,5−ジメトキシベンズアミド、
3,5−ジクロロ−N−(3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}フェニル)ベンズアミド、
1−ベンジル−2−(ジフェニルメチル)−4,5−ジメチル−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール、
1−ベンジル−2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール及び
2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−ベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0018】
本発明はまた、薬学的に許容される担体及び式Iの化合物又はその薬学的に許容される結晶型若しくは水和物を含む医薬製剤を包含する。好ましい実施態様は、さらに第二の剤を含んでいる、式Iの化合物の医薬組成物である。
【0019】
本発明の化合物は、不斉中心、例えば、1つの不斉中心(2つの立体異性体(R)及び(S)を提供する。)を有しても、又は2つの不斉中心(最大4つの立体異性体(R,R)、(S,S)、(R,S)及び(S,R)を提供する。)を有してもよい。本発明は、全ての光学異性体及びその混合物を含む。別段の記載がない限り、1つの異性体に対する言及は、任意の可能性のある異性体にあてはまる。異性体成分が特定されないときは常に、全ての可能な異性体を包含する。
【0020】
Ac アセチル
nBuLi n−ブチルチリウム
DMF ジメチルホルムアミド
EtOH エタノール
LMRS 低解像度質量分析法
Me メチル
NMR 核磁気共鳴
Pd/C パラジウム/炭素触媒
THF テトラヒドロフラン
【0021】
本発明の方法の実施態様は、患者に投与される式Iの化合物が、上記の化合物の実施態様、分類及び小分類で規定されるとおりである実施態様を包含する。
【0022】
本明細書において用いる場合、注記する場合を除き、「アルキル」とは、分枝鎖及び直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとし、かつ環状基シクロアルキル(特定数の炭素原子を有する全ての立体異性体を含む)を含むものとする。「シクロアルキル」という用語は、ヘテロ原子を含まない炭素環を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。アルキル基に通常用いられる略語が本明細書を通じて用いられ、例えば、メチルは、メチルは、「Me」又はCHを含む従来の略語、又は所定の末端基なしの伸長された結合である記号、例えば
【0023】
【化3】

【0024】
によって示されてもよく、エチルは、「Et」又はCHCHによって示されてもよく、プロピルは「Pr」又はCHCHCHによって示されてもよく、ブチルは「Bu」又はCHCHCHCHによって示されてもよいなど。例えば「C1−6アルキル」(又は「C−Cアルキル」)とは特定の炭素原子数を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基(全異性体を含む)を意味する。C1−6アルキルは全てのヘキシルアルキル及びペンチルアルキル異性体、並びにn−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル及びメチルを含む。「C1−4アルキル」とはn−、イソ−、sec−及びt−ブチル、n−及びイソプロピル、エチル及びメチルを意味する。「アルキレン」という用語は特定の炭素原子数を有し、かつ2つの末端鎖結合を有する、分枝鎖及び直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基(全ての異性体を含む)を指す。説明のために「非置換A−Cアルキレン−B」という用語は、A−CH−CH−CH−CH−Bである。「アルコキシ」という用語は、酸素架橋を介して結合した、示した数の炭素原子の線状又は分枝アルキル基を表す。「アルカノール」という用語は、変数Rの定義において、少なくとも1つのヒドロキシル置換基、例えば、エタノールを有する示された数の炭素原子の直鎖又は分枝したアルキル基であって、アルカンジオール及びアルカントリオールを含み、かつ炭素間の結合によってシクロアルキル環に結合される。
【0025】
注記される場合を除き本明細書において用いる場合、「アリール」とは、芳香族単環式及び多環式炭素環系を指し、ここでこの多環系中の個々の炭素環は、縮合しているか又は単結合によってお互いに結合されている。適切なアリール基としては、フェニル、ナフチル及びビフェニルエニルが挙げられる。
【0026】
「複素環」(及び「複素環式」、「ヘテロシクリル」などのその変形)という用語は、広義には、(i)安定な4〜8員の飽和若しくは不飽和単環式環、又は(ii)安定な7〜12員の二環式環構造を指しており、ここで、(ii)の各環は、他の環(単数又は複数)とは独立しているか、又は縮合しており、各環は飽和又は不飽和であり、単環式環又は二環式環構造は、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子(例えば、1〜6個のヘテロ原子、又は1〜4個のヘテロ原子)と残りの炭素原子とを含む(単環式環は、典型的には、少なくとも1個の炭素原子を含み、環構造は、典型的には、少なくとも2個の炭素原子を含む);窒素及び硫黄ヘテロ原子の任意の1個以上が酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子の任意の1個以上は第四級であってもよい。別段の記載がない限り、複素環は、任意のヘテロ原子又は炭素原子において結合し得、ただし結合によって安定な構造が生成されることが前提である。別段の記載がない限り、複素環が置換基を有するときには、この置換基は、ヘテロ原子でも炭素原子でも環中の任意の原子と結合してもよく、ただし安定な化学構造が生成されることが前提であることを理解のこと。飽和された複素環はサブセットの複素環を形成し;すなわち、「飽和複素環」という用語は一般に、上で定義されるような複素環を指し、ここでは環構造全体が(単環式であっても多環式であっても)飽和されている。「飽和複素環」とは、炭素原子とN、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子とからなる、4〜8員の飽和単環、又は安定な7〜12員の二環式環構造を指す。代表例としては、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル及びテトラヒドロフリル(又はテトラヒドロフラニル)が挙げられる。複素環式芳香族基は、複素環の別のサブセットを形成する;すなわち、「複素環式芳香族基」(又は「ヘテロアリール」)という用語は、一般に、(単環式でも、多環式でも)環構造全体が芳香族環構造である上記の複素環を指す。「芳香族複素環」という用語は、炭素原子と、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子とからなる、5若しくは6員の単環式芳香環、又は7〜12員の二環式環を指す。少なくとも1個の窒素原子を含む置換ヘテロアリール環(例えば、ピリジン)の場合には、かかる置換は、N酸化物生成を生じ得る置換であってもよい。芳香族複素環の代表例としては、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル(又はチオフェニル)、チアゾリル、フラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル及びチアジアゾリルが挙げられる。
【0027】
二環式複素環の代表例としては、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、イソインドリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、クロマニル、イソクロマニル、テトラヒドロキノリニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−ジオキシニル(すなわち、
【0028】
【化4】

【0029】
イミダゾ(2,1−b)(1,3)チアゾール、(すなわち、
【0030】
【化5】

【0031】
及びベンゾ−1,3−ジオキソリル(すなわち、
【0032】
【化6】

【0033】
が挙げられる。本明細書のある状況においては、
【0034】
【化7】

【0035】
は、2個の隣接炭素原子に結合したメチレンジオキシを置換基として有するフェニルとも代わりに称される。
【0036】
特に「置換されていない」又は「置換されている」と限定して別段注記しない限り、既定の基は置換されていないか又は置換されている。用語、例えば、「置換C3−8シクロアルキル」、「置換アリール」及び「置換複素環」は化合物の静止に対する結合点に加えて1〜3個の置換基を含む環状基を含むものとする。好ましくはこの置換基は、限定されるわけではないが、ハロ、C−C20アルキル、CF、NH、NH(C−Cアルキル)、NO、オキソ、CN、N、−OH、−O(C−Cアルキル)、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、(C−Cアルキル)S(O)0−2−、アリールS(O)0−2−、(C−Cアルキル)S(O)0−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)NH−、HN−C(NH)−、−O(C−Cアルキル)CF、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)−、(C−Cアルキル)O(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)C(O)1−2(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ハロ−アリール、ハロ−アラルキル、ハロ−複素環、ハロ−ヘテロシクリルアルキル、シアノ−アリール、シアノ−アラルキル、シアノ−複素環及びシアノ−ヘテロシクリルアルキルを含む基から選択される。
【0037】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)という用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す(フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及びヨード(I)と言う場合もある。)。
【0038】
本発明の化合物を示す任意の構成又は任意の式で2回以上任意の変数が出現する場合、各々の出現に対するその定義は、その定義とは他のあらゆる出現で独立している。また、置換及び/又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。
【0039】
薬学的に許容される塩としては金属(無機)塩と有機塩の両者が挙げられ;その一覧はRemington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1418頁(1985)に記載されている。当業者に周知のとおり、適切な塩形態は物理的及び化学的安定性、流動性、吸湿性並びに溶解度に基づいて選択される。当業者に自明のとおり、医薬的に許容される塩としては限定されるわけではないが、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩及び硝酸塩)又は有機酸塩(例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、琥珀酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩若しくはパモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩)が挙げられる。同様に、薬学的に許容されるカチオンとしては限定されるわけではないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウム(特に第2級アミンをもつアンモニウム塩)が挙げられる。上記理由で好ましい本発明の塩としてはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。式Iの化合物の結晶型、水和物及び溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0040】
式Iの化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与されてもよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の有効性を保持し、かつ生物学的にもそれ以外でも望ましい塩をいう(例えば、そのレシピエントに対して毒性がなく、その他の有害性もない)。適切な塩としては、例えば、本発明の化合物の溶液を、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、又は安息香酸などの薬学的に許容される酸の溶液と混合して形成することができる酸付加塩が挙げられる。本発明で使用される特定の化合物は、酸性基(例えば、−COOH又はフェノール基)を担持してもよく、その場合には、薬学的に許容されるその適切な塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム又はマグネシウム塩)、及び第四級アンモニウム塩などの適切な有機リガンドと形成された塩が挙げられる。また、酸基(−COOH)又はアルコール基が存在する場合には、薬学的に許容されるエステルを使用して、化合物の溶解性又は加水分解の特徴を改変してもよい。
【0041】
本発明は、高血圧、うっ血性心不全、肺性高血圧、収縮期高血圧、腎機能不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心線維症、心筋虚血、血管炎症、血管性認知症、心筋症、糸球体腎炎、腎疝痛、糖尿病から生じる合併症、例えば、腎症、血管障害及び神経障害、筋変性障害、メタボリック・シンドローム、緑内障、眼内圧上昇、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後再狭窄、血管手術及び心臓手術後の合併症、勃起障害、高アルドステロン症、肺線維症、強皮症、不安、認知障害、免疫抑制剤での治療の合併症、並びにレニンアンジオテンシン系に関することが公知の他の疾患に関連する疾患の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、ヒト及び動物に対して上記のような化合物を投与することを包含する。
【0042】
別の実施態様では、本発明は、高血圧、うっ血性心不全、肺性高血圧、黄斑変性障害、メタボリック・シンドローム、眼内圧、緑内障、アテローム性動脈硬化症、メタボリック・シンドローム、及び糖尿病から生じる合併症、例えば、腎症、血管障害及び神経障害に関連する疾患を治療及び/又は予防するための方法に関連する。
【0043】
本発明はまた、上述の疾患の治療及び/又は予防のための医薬の調製のための式(I)の化合物の使用に関する。
【0044】
式(I)の化合物又は上述の医薬組成物はまた、他の薬理学的に活性な化合物、例えば、降圧性又は抗炎症性の化合物であって、ACEインヒビター、中性エンドペプチダーゼインヒビター、アンジオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、レニンインヒビター、エンドセリンレセプターアンタゴニスト、血管拡張薬、カルシウムチャネルアンタゴニスト、カリウム活性化剤、利尿薬、交感神経遮断薬、βアドレナリンアンタゴニスト、αアドレナリンアンタゴニスト、他の鉱質コルチコイドレセプターモジュレータ、グルココルチコイド、グルココルチコイドレセプターモジュレータ、エストロゲンレセプターモジュレータ、及びアンドロゲンレセプターモジュレータ及び高血圧、器官障害及び炎症に関連する疾患を治療するための降圧薬(限定されるわけではないが、コレステロール減少スタチン、コレステロール吸収インヒビターを含む)とともに、又は上述の疾患の予防若しくは治療のために有益な他の薬物とともに一般に投与される他の活性な化合物を包含する、化合物と組み合わせて利用される。
【0045】
式Iの化合物に関する「投与」という用語、及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)とは、治療又は予防を必要とする個体に化合物、又は化合物のプロドラッグを与えることを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1種類以上の他の活性薬剤(例えば、アンジオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、レニンインヒビター、ACEインヒビター、血圧を降下させることが公知である他の活性薬剤などの薬剤)と組み合わせて提供するときには、「投与」及びその変形は、化合物又はプロドラッグと他の薬剤とを同時に、又は異なる時間に、与えることを含むと各々理解される。組合せ(併用)の薬剤を同時投与するときには、単一の組成物として一緒に投与してもよいし、又は別々に投与してもよい。
【0046】
本明細書で用いる場合、「組成物」という用語は、特定の成分を指定された量で含む生成物、及び各特定の成分を各指定された量で組み合わせることから直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含するものとする。
【0047】
「薬学的に許容される」とは、医薬組成物の各成分が、互いに親和性でなければならず、そのレシピエントに無害でなければならないことを意味する。
【0048】
本明細書で用いる場合は「患者、被験体、対象(subject)」という用語は、治療、観察又は実験の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0049】
本明細書で用いる場合、「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって探究される、組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的応答を誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。一実施態様においては、有効量とは、治療されている疾患又は症状の症候を軽減する「治療有効量」である。別の実施態様においては、有効量は、予防されている疾患又は症状の症候を予防する「予防有効量」である。この用語はまた、本明細書では、レニンを阻害し、それによって、探究されている応答を誘発するのに十分な活性化合物量(すなわち、「阻害有効量」)も含む。活性化合物(すなわち、活性成分)を塩として投与するときには、活性成分量という表記は、化合物の遊離型(すなわち、非塩型)に対するものである。
【0050】
好ましい実施態様においては、この量は1日あたり1mgから1000mgである。特に好ましい実施態様においては、この量は1日あたり1mgから500mgである。更に好ましい実施態様においては、この量は1日あたり1mgから200mgである。
【0051】
本発明の方法においては、式Iの化合物(塩の形であってもよい。)を、活性薬剤を薬剤作用部位と接触させる任意の手段によって投与することができる。式Iの化合物は、個々の治療薬として、又は治療薬の組合せとしてのいずれかで、薬剤に関連して使用可能な任意の従来手段によって投与することができる。式Iの化合物は、単独投与可能であるが、典型的には、選択した投与経路及び標準の製薬実務に基づいて選択される薬剤担体と一緒に投与される。本発明の化合物は、例えば、化合物の有効量と薬学的に許容される従来の無毒の担体、アジュバント及びビヒクルとを含む薬剤組成物の単位投与量の形で、例えば、経口的に、非経口的に(皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術を含めて)、吸入噴霧によって、又は直腸に投与してもよい。経口投与に適切な液体製剤(例えば、懸濁液剤、シロップ剤、エリキシル剤など)は、当該技術分野で公知の方法によって調製し得、水、グリコール、油、アルコールなどの通常の媒体のうちのいずれを使用してもよい。経口投与に適切な固体製剤(例えば、散剤、丸剤、カプセル剤及び錠剤)は、当該技術分野で公知の方法によって調製し得、デンプン、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの固体賦形剤を使用してもよい。非経口組成物は、当該技術分野で公知の方法によって調製し得、典型的には、担体として滅菌水を使用し、溶解助剤(solubility aid)などの他の成分を使用してもよい。注射液は、当該技術分野で公知の方法によって調製し得、担体は、食塩水、グルコース溶液、又は食塩水とグルコースの混合物を含有する溶液を含む。本発明に使用する薬剤組成物の調製に使用するのに適切な方法、及び前記組成物に使用するのに適切な成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,編集A.R.Gennaro,Mack Publishing Co.,1990に更に記載されている。
【0052】
本発明の化合物は、下記の説明のための合成反応スキームに示した種々の方法によって合成することができる。これらの化合物の調製に用いられる出発原料及び試薬は、一般に、Aldrich Chemical Co.などの供給業者から入手可能であり、又は当業者に公知の方法によって、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis;Wiley & Sons:New York,第1〜21巻;R.C.LaRock,Comprehensive Organic Transformations,2.sup.nd edition Wiley−VCH,New York 1999;Comprehensive Organic Synthesis,B.Trost及びI.Fleming(編)1〜9巻 Pergamon,Oxford,1991;Comprehensive Heterocyclic Chemistry,A.R.Katritzky及びC.W.Rees(編)Pergamon,Oxford 1984,第1〜9巻;Comprehensive Heterocyclic Chemistry II,A.R.Katritzky及びC.W.Rees(編)Pergamon,Oxford 1996,第1〜11巻;並びにOrganic Reactions,Wiley&Sons:New York,1991,第1〜40巻などの参考文献に記載の手順に従って調製される。以下の合成反応スキーム及び実施例は、本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法の単なる例示であって、本願に含まれる開示を参照して、これらの合成反応スキームの種々の改変が実施可能であり、かつ当業者に示唆される。
【実施例】
【0053】
合成反応スキームの出発原料及び中間体は、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むがこれらだけに限定されない従来の技術によって必要に応じて、単離し、精製してもよい。かかる材料は、物理定数及びスペクトルデータを含む、従来の手段によって特徴づけることができる。
【0054】
別段の断りがない限り、実験手順を以下の条件で実施した。溶媒をロータリーエバポレーターによって、減圧(600〜4000パスカル:4.5〜30mmHg)下、最高60℃の浴温度で蒸発させた。特に示さない限り、反応を典型的には窒素雰囲気下において室温で実施する。THF、DMF及びEtO、DME、トルエンなどの無水溶媒は、市販の等級である。試薬は、市販の等級であり、更に精製せずに使用した。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル(230−400メッシュ)を用いて実施する。反応過程は薄層クロマトグラフィー(TLC)又は核磁気共鳴(NMR)分光分析のいずれかによって追跡し、示した反応時間は単なる説明のためのものにすぎない。全最終生成物の構造及び純度を、TLC、質量分析法、H NMR及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認した。化学記号は、通常の意味を有する。以下の略語も使用した:v(体積)、w(重量)、b.p.(沸点)、m.p.(融点)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq.(当量)。別段の記載がない限り、下記全変数は上記の意味を有する。
【0055】
本発明の化合物は、以下のスキーム1に例示した一般的方法に従って調製することができる。
【0056】
【化8】

【0057】
(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メタノール(1−2)
ヘキサン中のn−ブチルチリウムの溶液(1.6M、45.0mL、72.0mmol、1.14当量)を、1−ベンジルイミダゾール(1−1,10.0g、63.2mmol、1当量)のTHF(200mL)中の溶液に−78℃で添加し、得られた混合物を20分間攪拌した。THF(30mL)中のベンゾフェノンの溶液(15.5mL、95.0mmol、1.50当量)を添加し、その反応混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いで23℃まで温めた。その混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液(200mL)と酢酸エチル(400mL)との間で分配し、その有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥して、濃縮して黄色の油状物を得た。その油状物を飽和炭酸ナトリウム水溶液中に懸濁し、得られた沈殿物をろ過し、水(200mL)で、次にエチルエーテル(2×100mL)で洗浄し、風乾して(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メタノール(1−2)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO)δ7.25(m,12H)、7.04(m,2H)、6.93(s,2H)、6.78(s,1H)、5.02(s,2H)。LRMSm/z(M−OH)実測値323.1、要求値323.2。
【0058】
(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メチルアセテート(1−3)
(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メタノール(1−2,16.0g、47.0mmol、1当量)の無水酢酸(120mL)及びピリジン(130mL)中のスラリーを60℃で18時間加熱した。得られたオレンジ色のスラリーを乾燥するまで濃縮した。その残留物を飽和炭酸ナトリウム水溶液(300mL)中に懸濁して、得られた沈殿物をろ過し、水(2×100mL)で、次にエチルエーテル(50mL)で洗浄した。得られた固体をエタノールに懸濁し、濾過によって収集し、風乾して(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メチルアセテート(1−3)を白色結晶として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.43(m,3H),7.30(m,10H),7.12(d,1H,J=1.2Hz),6.86(m,2H),6.77(d,1H,J=1.2Hz),4.83(s,2H),1.84(s,3H).LRMSm/z(M−OAc)実測値323.1,要求値323.2。
【0059】
2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール(1−4)
(1−ベンジル−1H−イミダゾール−2−イル)(ジフェニル)メチルアセテート(1−3,13.1g、34.0mmol、1当量)及び10%のパラジウム炭素(6.03g、56.4mmol、1.66当量)のエタノール(250mL)中のスラリーを水素(バルーン)下で24時間攪拌した。その反応混合物を、セライトのパッドを通してろ過し、酢酸エチルで徹底的に洗浄した。合わせた濾液を乾燥するまで濃縮し、その残留物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中で懸濁した。その生成物をろ過し、水(2×100mL)で、次にエチルエーテル及びヘキサン(2×50mL)の1:1混合物で洗浄して、風乾し2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール(1−4)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO)δ11.8(br s,1H),7.29(d,6H,J=4.3Hz),7.21(m,4H),7.03(br s,1H),6.85(br s,1H),5.51(s,2H),1.84(s,3H)。LRMSm/z(M+H)実測値235.0,要求値335.1。
【0060】
2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−イミダゾール(1−5)
2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール(1−4,500mg、2.13mmol、1当量)、1−ブロモエチル)ベンゼン(0.874mL、6.40mmol、3.00当量)及び炭酸カリウム(1.48g、10.7mmol、5.01当量)のDMF(10mL)中の混合物を60℃で24時間加熱した。得られた混合物を濾過して、逆相HPLC(水/アセトニトリル勾配w/0.01%のTFA)によって精製して、2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−イミダゾール(1−5)をラセミ混合物(白色固体)として得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.36−6.93(m,15H),5.30(s,1H),5.22(q,1H,J=7.2Hz),1.67(d,3H,J=7.0Hz)。LRMSm/z(M+H)実測値339.3,要求値339.2。1−5について鉱質コルチコイドレセプター結合親和性Ki値は2857nMである。
【0061】
以下の化合物を、上記の手順の簡易な改変によって調製した。鉱質コルチコイドレセプター結合親和性Ki値(nM)は、化合物の名称の後ろにカッコ内に示す。
【0062】
【化9−1】

【0063】
【化9−2】

【0064】
【化9−3】

【0065】
【化10】

【0066】
2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール(2−2)
ジフェニルアセトアルデヒド(2−1,1.64mL、9.25mmol、1当量)、1,2−ジアミノベンゼン(0.787mL、9.25mmol、1.00当量)及びメタ重亜硫酸ナトリウム(2.11g、11.1mmol、1.20当量)のDMF(10mL)中の混合物を100℃で18時間加熱した。その反応混合物を23℃に冷却してろ過した。その濾液を飽和塩化ナトリウム水溶液及び飽和炭酸ナトリウム水溶液の1:1混合物中で超音波処理によって懸濁し、次いで酢酸エチルで抽出した(6×150mL)。その合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮した。その残留物をエチルエーテル(50mL)中に懸濁し、濾過し、エチルエーテル(2×50mL)で洗浄し、風乾して2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール(2−2)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO)δ12.3(br s,1H),7.50(m,2H),7.34(m,8H),7.24(m,2H),7.08(m,2H),5.74(s,1H)。LRMSm/z(M+H)実測値235.0,要求値335.1。
【0067】
2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール(2−2)を、スキーム1で記載された手順に従って対応する臭化ベンジルでアルキル化して、化合物2−3及び2−4を得た。
【0068】
【化11】

【0069】
鉱質コルチコイドレセプター結合親和性の測定
鉱質コルチコイドレセプターに対する化合物の結合親和性を、伝統的なフィルター結合アッセイプロトコールで組み換えのアカゲザル鉱質コルチコイドレセプターに対する放射性標識アルドステロンの結合をその化合物が妨げる能力を測定することによって決定した。
【0070】
アカゲザル鉱質コルチコイドレセプターcDNAをcDNAライブラリーからクローニングして、標準的な分子生物学及び細胞生物学の方法によって、アカゲザル鉱質コルチコイドレセプターコード配列をコードする組み換えバキュロウイルスを調製した。培養物中で増殖した昆虫細胞を、組み換えバキュロウイルスに感染させ、これによってこれらの細胞中で組み換えアカゲザル鉱質コルチコイドレセプターレセプターの発現を得た。細胞を収集して溶解した。溶解物を遠心分離によって清澄化して、放射性リガンド結合アッセイでの使用まで−80℃で保管した。
【0071】
アッセイは、20mMのHepes、10mMのNaMoO、10mMの2−メルカプトエタノール、157mMのスクロース、及び3.7mMのCHAPSで行った。[H]−アルドステロン(1mCi/ml、70〜100Ci/mmol)を、Perkin Elmer(NET419)から購入した。試験化合物をDMSOに溶解して、3倍階段希釈用量応答曲線のために50倍の最終濃度までDMSO中で希釈した。[H]−アルドステロンのワーキング・ストック溶液を、市販のストックの希釈によってアッセイ緩衝液中で0.083μMまで調製した。アカゲザル鉱質コルチコイドレセプターを含む昆虫細胞溶解物を解凍して、0.7mgタンパク質/mLまで希釈した。アッセイは、20μLの試験化合物溶液、920μLの希釈された昆虫細胞溶解物、及び60μLの[H]−アルドステロンワーキング溶液を、2mLの96−ウェルポリプロピレン四角ウェルプレート(USA Scientific)を20℃で合わせることによって開始した。その混合物を、プラットフォームシェーカーの連続攪拌によって3時間インキュベートした。次いでその混合物を、ポリエチレンイミン(Sigma,P−3143)の溶液で事前に処理した96ウェルのGF/Bフィルタープレート(Packard)を通してろ過した。そのフィルタープレートを、0.5mLの50mMのTris−HCl,pH7.4を用いて3回洗浄し、次いで真空オーブン中において37℃で一晩乾燥した。プレートの底をシールして、40μLのMicroscint−20(Packard,6013621)を各々のウェルに添加し、その後にTopcountプレートリーダーで放射能をカウントした。非特定な放射性リガンド結合は、試験化合物のかわりに最終濃度10μMまでアッセイ混合物中に非放射性アルドステロン(DMSO中に0.5mM)を添加することによって確認した。IC50及びKi値は、カスタマイズされたアッセイ・データ・アナライザー・ソフトウェア・パッケージを用い4つのパラメーターロジスティックフィットを用いて決定した。
【0072】
実施例をリガンド結合アッセイ中で試験し、10,000nM未満のIC50が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化1】

[式中、Zは、
1)アリール環、
2)ヘテロアリール環、(該ヘテロアリール環に対する結合点が炭素原子であり、かつ該ヘテロアリール環は:
a)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する5員の不飽和単環式環、
b)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する6員の不飽和単環式環、及び
c)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する8員、9員若しくは10員の不飽和二環式環、からなる群より選択される。)並びに
3)N、O及びSからなる群より選択される1、2若しくは3個のヘテロ原子の環原子を有する4−6員の飽和複素環式環(該複素環式環への結合点は炭素原子である。)
からなる群より選択され、
該アリール、ヘテロアリール、飽和複素環式環が置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、又はRから独立して選択される基で四置換されており、ここで、任意の安定なS若しくはNヘテロアリール若しくは複素環式環の原子は置換されていないか、又はオキソで置換され、該ヘテロアリール環R置換基は1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在し、
及びRは、水素及びC−Cアルキルからなる群より選択されるか、又はR及びRはそれらが結合される炭素原子と一緒になって、1位及び2位で置換されているベンゾイミダゾール環を形成し;
及びRは、水素、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH及びCNからなる群より選択され;
は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、NO、NH、CF、SCF、NHC(O)R、OH、CN、NR、CONR、CO、C(O)0−2Ra、SONRからなる群より選択され、ここでR及びRは独立して水素及びC−Cアルキルからなる群より選択されるか、又はR及びRはそれらが結合されるN原子と一緒になって、N原子及びN、O及びSからなる群より選択される1−3個のヘテロ原子を含む3−8員の環を形成し;
及びRは独立して水素及びC−Cアルキルからなる群より選択され;

1)アリール環、
2)ヘテロアリール環、(該ヘテロアリール環に対する結合点が炭素原子であり、かつ該ヘテロアリール環は:
a)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する5員の不飽和単環式環、
b)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する6員の不飽和単環式環、及び
c)N、O若しくはSからなる群より選択される1、2、3若しくは4個のヘテロ原子の環原子を有する8員、9員若しくは10員の不飽和二環式環、からなる群より選択される。)並びに
3)C−Cアルキル
からなる群より選択され、
該アリール環、ヘテロアリール環及びC−Cアルキルは置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、又はRから独立して選択される基で四置換されており、ここで任意の安定なS又はNヘテロアリール環原子が置換されていないか、又はオキソで置換されており、該ヘテロアリール環R置換基が、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在し、
はC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、OH、CN及びハロゲンからなる群より独立して選択される。]
及び薬学的に許容される該化合物の塩、又は該化合物の光学異性体。
【請求項2】
Zが、アリール環、及び1又は2個のヘテロ原子の環原子を有する9員の不飽和ヘテロアリール二環式環からなる群より選択され、該ヘテロ原子がOであり、該アリール又はヘテロアリール二環式環が置換されていないか、Rで一置換されているか、Rから独立して選択される基で二置換されているか、Rから独立して選択される基で三置換されているか、又はRから独立して選択される基で四置換されており、該ヘテロアリール環R置換基が、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子上に存在する、請求項1の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項3】
がCH、OCH、ハロゲン、NO、NH、CF、SCF、Cl、Br、I及びNHC(O)Rからなる群より選択される、請求項2の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項4】
がアリールであり、置換されていないか、CH若しくはClで一置換されているか、又はCH及びClからなる群より選択される置換基で独立して二置換されている、請求項3の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項5】
Zが
【化2】

からなる群より選択される、請求項4の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項6】
及びRが、水素及びCHからなる群より選択されるか、又はR及びRがそれらが結合される炭素原子と一緒になって、1位及び2位で置換されているベンゾイミダゾール環を形成する、請求項1の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項7】
及びRが水素である、請求項1の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項8】
が水素及びCHからなる群より選択される、請求項1の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項9】
2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−[1−(3−ヨードフェニル)エチル]−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(4−メトキシベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−[3−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−{3−[(トリフルオロメチル)チオ]ベンジル}−1H−イミダゾール、
1−{1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−ヨードベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−メチルベンジル)−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1−(3−ニトロベンジル)−1H−イミダゾール、
3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}アニリン、
1−[1−(3,5−ジクロロフェニル)エチル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−(5−ブロモ−2−メトキシベンジル)−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
1−[(6−クロロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)メチル]−2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール、
N−(3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}フェニル)−3,5−ジメトキシベンズアミド、
3,5−ジクロロ−N−(3−{[2−(ジフェニルメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}フェニル)ベンズアミド、
1−ベンジル−2−(ジフェニルメチル)−4,5−ジメチル−1H−イミダゾール、
2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール、
1−ベンジル−2−(ジフェニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール及び
2−(ジフェニルメチル)−1−(1−フェニルエチル)−1H−ベンゾイミダゾール、
からなる群より選択される、請求項1の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容される該化合物の塩の有効量、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、又は請求項8に記載の組成物の使用であって、高血圧、うっ血性心不全、肺性高血圧、収縮期高血圧、腎機能不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心線維症、心筋虚血、血管炎症、血管性認知症、心筋症、糸球体腎炎、腎疝痛、糖尿病から生じる合併症、例えば、腎症、血管障害及び神経障害、筋変性障害、メタボリック・シンドローム、緑内障、眼内圧上昇、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後再狭窄、血管手術又は心臓手術後の合併症、勃起障害、高アルドステロン症、肺線維症、強皮症、不安、認知障害、免疫抑制剤での治療の合併症、及びレニンアンジオテンシン系に関することが公知の他の疾患に関連する疾患の、方法がヒト及び動物に対して上記に定義される化合物を投与することを包含する、治療又は予防のための医薬の製造のための使用。
【請求項12】
高血圧、うっ血性心不全、肺性高血圧、収縮期高血圧、腎機能不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心線維症、心筋虚血、血管炎症、血管性認知症、心筋症、糸球体腎炎、腎疝痛、糖尿病から生じる合併症、例えば、腎症、血管障害及び神経障害、筋変性障害、メタボリック・シンドローム、緑内障、眼内圧上昇、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後再狭窄、血管手術又は心臓手術後の合併症、勃起障害、高アルドステロン症、肺線維症、強皮症、不安、認知障害、免疫抑制剤での治療の合併症及びレニンアンジオテンシン系に関することが公知の他の疾患に関連する疾患の治療又は予防のための方法であって、請求項1に記載の化合物の薬学的に活性な量の患者に対する投与を包含する、ヒト又は動物に対して上記のような化合物を投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2010−522168(P2010−522168A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554561(P2009−554561)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/003600
【国際公開番号】WO2008/118319
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】