説明

銀イオンおよびメントールを含む消毒剤組成物並びにその使用

メントールと、銀イオンの供給源とを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容される担体を含む消毒剤組成物であって、組成物における銀イオンの濃度が6mM未満である。消毒剤組成物において、メントールと銀イオンは相乗作用で作用する。消毒剤組成物は、感染を伴う医学的状態(例えば、急性創傷および慢性創傷、熱傷、ならびに、手術創など)の処置において効率的に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、消毒剤組成物およびその使用に関連し、より詳細には、しかし、限定的ではないが、表面(例えば、身体表面など)を殺菌することにおいて効率的に使用することができ、したがって、例えば、感染を伴う医学的状態(例えば、急性創傷および慢性創傷、熱傷、ならびに、手術創など)の処置において効率的に使用することができる消毒剤組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
様々な慢性創傷が、治癒プロセスの障害、長期に及ぶ炎症性段階、再上皮化不全および不完全な細胞外マトリックス再構築によって特徴づけられる。これらの創傷の内部に蓄積する細胞は老化しており、また、外因性増殖因子に対するそれらの応答が低下している。慢性創傷の損なわれた治癒プロセスの最終結果が、組織破壊、局所的壊死および感染である。
【0003】
創傷床(wound bed)の管理は、最終的な創傷閉鎖を達成するために必要な多段階プロセスである。創傷清掃、感染抑制および創傷閉鎖が、慢性創傷の治癒における基本的段階である。
【0004】
2005年には、院内感染症がアメリカ合衆国における第4位の死因として位置づけられた。およそ1千万人の外傷性創傷の患者が毎年、合衆国の救急部門で処置されることが報告されている。慢性創傷により、全人口の1%〜3%が影響を受け、慢性創傷には主に、静脈性下肢潰瘍、糖尿病性足潰瘍および圧迫潰瘍が含まれる。慢性静脈不全によって引き起こされる静脈性潰瘍が非治癒性慢性創傷の中で最も頻繁している(約70%)。
【0005】
慢性創傷の感染症が生命を脅かす合併症を引き起こす救急事例の数が、抗生物質に対して耐性である微生物が感染する慢性創傷の数における増加とともに増大し続けている。細菌のコロニー形成の存在が、創傷組織における多い細菌数をもたらし、また、炎症性の宿主応答をもたらすほとんどの慢性創傷の病因における最も重要な要因の1つである。
【0006】
感染した慢性創傷において、大量の細菌量が感染したときには創傷治癒が遅れるか、または、抑止さえされる。細菌負荷量を減らすことが非常に重要であり、治癒プロセスに先立って行われなければらない。創傷治癒プロセスを最適化するためには、細菌負荷量を低下させることとともに、根底にある要因(例えば、栄養不良および虚血など)の処置が多くの場合、必要である。
【0007】
慢性創傷の感染は治癒を遅らせ、また、通常、慢性創傷床の状態における悪化を引き起こし、その結果、そのような悪化はまた、創傷の完全な損傷を生じさせ得る。創傷に対する有害な影響のほかに、感染は、場合によって致命的であり得る全身的影響の原因となり得る。
【0008】
細菌汚染は、いくつかの異なる機構を介して、例えば、宿主傷害の一因となり、また、治癒プロセスを遅らせる長期間に及ぶ炎症性応答を生じさせる炎症性媒介因子の持続した産生を介して創傷治癒を遅らせる。加えて、細菌は、創傷治癒プロセスのためには不可欠である栄養分および酸素について宿主細胞と競合する。創傷感染はまた、組織低酸素症を引き起こし、肉芽組織の発達を妨げ、線維芽細胞の数およびコラーゲン産生を低下させ、再上皮化を損ない得る。したがって、感染創クレンジングの問題に対処することが創傷ケアの主要な目的であり、また、非常に重要な役割を創傷管理において果たす。
【0009】
足潰瘍の大部分が、真性糖尿病を併発することから生じる。これらの病変部はしばしば感染症にかかり、多くの場合には骨髄炎が随伴する。これらの病変部におけるほとんどの感染症は重篤度において軽度〜中等度であり、適切な創傷ケアおよび経口抗生物質治療により管理することができる。しかしながら、一部の感染症は、筋膜、筋肉、関節および骨にまで浸透する。これらの場合には、患者は、入院、非経口抗生物質治療および外科的処置が必要となる。場合により、糖尿病患者における足感染症は、処置することが困難となる可能性があり、治療の失敗は下肢切断となることが多い。加えて、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)によって引き起こされる糖尿病性足感染症には、遅れた治癒が伴い、また、多くの場合には切断が伴う。
【0010】
消毒剤が、創傷感染症を防止および処置するために一般に使用される。特定の微生物に対して選択的に作用する抗生物質とは異なり、消毒剤は多数の標的およびより広い活性スペクトルを有する。実施されている消毒剤のほとんどは、治癒を明らかに妨げることが示されていない。
【0011】
市販されている消毒剤の中で、臨床診療において最も一般に使用されているものが、ヨウ素、クロルヘキシジン、アルコール、アセテート、過酸化水素、ホウ酸、硝酸銀、スルファジアジン銀および次亜塩素酸ナトリウムである。しかしながら、それらの効力は、汚染された消毒剤に関連する近年報告される大発生を考慮すると、限られているようである[Weber他、2007、Antimicrob Agent Chemother、51:4217〜4224]。
【0012】
銀化合物が、慢性創傷および熱傷を含む急性創傷における細菌感染症に対抗するために創傷消毒剤として広範囲に使用されている[Burrell、2003、Ostomy Wound Manag、49:19〜24;Ovington、2004、Ostomy Wound Manag、50:1S〜15]。銀は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の成長を阻止することが知られている。イオン性の銀は微生物を殺滅するが、増殖中の肉芽組織に対しては細胞非毒性である。銀配合物は、微生物を殺滅する速度および程度を増大させ、滲出物形成を低下させるようであり、また、近年には、細菌バイオフィルムに影響を及ぼすことが報告される。
【0013】
最も一般に使用されている銀化合物がスルファジアジン銀(SSD)および硝酸銀(AgNO)である。他の一般に用いられている局所用の銀含有剤がナノ結晶性の銀粒子である。スルファジアジン銀(SSD)は通常、熱傷創の患者における感染を防止するための処置として使用される[Klasen、2000、Burns、26:131〜138]。ナノ結晶性銀を放出するシステム、例えば、Acticoat(登録商標)[Tredget他、1998、J.Burn Care Rehabil.、19:531〜537]が、その効力を延ばすために開発された。感染した慢性圧迫潰瘍を有する患者がSSDに供され、細菌負荷量の効果的な減少がすべての潰瘍において認められた。SSDの1%クリームは静脈性潰瘍を著しく軽減し、創傷クレンジングおよび肉芽組織形成に良い影響を及ぼした。
【0014】
硝酸銀は、慢性創傷および潰瘍の処置のために最初に使用された[Klasen、2000、Burns、26:131〜138]。広範囲の様々な細菌フローラに対して、とりわけ、グラム陰性細菌に対して効果的であることが見出された。ナノ結晶性銀が後で、熱傷を含む急性創傷および慢性創傷を処置するために持続放出配合物として創傷被覆材に組み込まれた[Voight他、2001、Wounds、13:B11〜B21;SondiおよびSalopek−Sondi、2004、J Colloid Interf Sci、275:177〜182;Parsons他、2005、Wounds、17:222〜232]。
【0015】
局所的な創傷処置のための銀含有配合物は大部分が、銀を含有する創傷被覆材に基づいている。銀イオンの、そのような被覆材による感染創傷床の中への送達および浸透は多くの場合、様々な化学反応によって、例えば、不活性な塩化銀の沈殿を生じさせ、それにより、効果的な量の抗微生物性銀イオンが標的の感染領域に到達することを低下させる塩化物イオンとの化学反応によって制限される。他の欠点には、銀の影響による着色および局所的過敏が含まれる。
【0016】
創傷管理のための、銀に基づく局所的処置の一般的で、また、過度な使用と並行して、細菌の銀耐性に関する報告の数における増大が認められた[Silver、2003、FEMS Microbiology Reviews、27:341〜353;Chopra、2007、J Antimicrobial Chemotherapy、59:587〜590]。
【0017】
メントールは植物由来の天然モノテルペンであり、かゆみ止め配合物、消毒配合物、鎮痛配合物および/または清涼配合物の一部として皮膚科学において頻繁に使用される。これらの活性に対するメントール寄与の根底にある分子的機序、特に、その抗細菌活性に対するメントール寄与の根底にある分子的機序が近年、記載された[Patel、2007、J Am Acad Dermatol、57:873〜878;Evrand、2001、Pharma Resear、18:943〜949;Trombetta他、2005、Antimicrob Agent Chemother、49:2474〜2478;Schelz他、2006、Fiterapia、77:279〜285;Cristani他、2007、J Agri Food Chem、55:6300〜6308]。
【0018】
高張性溶液が、微生物負荷量の減少、浸出液除去の促進、および、流体循環に対する影響によって、様々な利益を創傷床管理に加えることが期待される。高張性の生理的食塩水溶液が、神経外科診療において非常に有用なツールであることが証明されている。
【0019】
関連性のある技術には、米国特許第5643589号および同第5562643号が含まれる。
【0020】
メントールがこれまで、皮膚科学用途でもまた使用され得るかゆみ止め剤、消毒剤、鎮痛剤および清涼剤としてこの技術分野では記載されている。銀イオンおよびメントールを含む組成物もまた記載されている。
【0021】
例えば、The Merck Manualは、メントールおよび銀を皮膚科学組成物において組み合わせることを「局所的皮膚科学治療の原理」の章で示唆する(www.merck.com/mmpe/print/sec10/ch110/ch110a.html)。The Merck Manualでは、銀が消毒剤として定義され、メントールがかゆみ止め剤(止痒剤)として定義される。
【0022】
さらなる関連技術には、国際特許出願番号PCT/IL2007/000015、米国特許第6551608号、米国特許出願第11/783668号(米国特許出願公開第20070255193号)および米国特許出願第10/535961号(米国特許出願公開第20060105000号)が含まれる。
【0023】
銀イオンを含む消毒剤組成物もまた、米国特許第5607683号および米国特許第6093414号に開示されている。
【0024】
治療液連続ストリーミング(CST)は、本発明者らによって、同様にまた、他の発明者らによって開発された慢性創傷管理の新しい治療法であり、治療液の新鮮な用量を制御された創傷環境に連続して流すことを伴う。慢性創傷を覆って流すことは、創傷の無菌性閉じ込め、陰圧治療(ポンプ未使用)、湿条件、連続クレンジングおよび創傷床の全体的管理について可能にする。そのような連続ストリーミング療法が、例えば、本発明者らの幾人かによる米国特許第7364565号に開示されている。
【発明の概要】
【0025】
改善された成績を有する消毒剤組成物のための探索において、本発明者らは、驚くべきことに、銀イオンおよびメントールの組合せが相乗効果を示すことを発見している。
【0026】
この活性が高浸透圧剤の存在下で保持されることがさらに発見されている。
【0027】
したがって、銀イオンに基づく消毒剤組成物が、低濃度のメントールと組み合わされたとき、等張性または高張性の媒体において相乗効果を示し、ただし、銀イオンが、消毒剤目的のために典型的に使用されているよりも低い濃度で存在することが本明細書中に開示される。そのような組成物は、現在利用可能な銀イオン含有溶液についてはしばしば認められる有害な副作用(着色および過敏など)を伴うことなく、痛み緩和、清涼性および創傷治癒を可能にしながら、抗微生物活性を病原性微生物の幅広いスペクトルに対して発揮することができる。
【0028】
0.005%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲の濃度での銀イオンまたはその錯体を、0.05%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲の濃度でのメントールおよび高浸透圧剤(例えば、グリセロールなど)との組合せで含む消毒剤組成物は、沈殿物がない透明な溶液であることがさらに明らかにされている。
【0029】
したがって、急性および慢性創傷(例えば、糖尿病性潰瘍など)を本明細書中に記載される消毒剤組成物により効率的に処置することができる。そのうえ、さらに高い創傷治癒率を、本明細書中に記載される消毒剤組成物が連続した流れで創傷を覆って創傷の隅々に適用され、その結果、創傷と接触している抗微生物剤および高浸透圧剤の濃度が一定で保たれるようにされるときに達成することができる。
【0030】
そのような消毒剤組成物は、非無菌状態における微生物の成長を防止するか、または低下させることによって、保存剤として作用し得ることがさらに明らかにされている。
【0031】
そのような消毒剤組成物は、市販されている抗真菌生成物よりも成績が優れている効果的な殺真菌活性を示すことがさらに明らかにされている。本明細書中に記載されるような消毒剤組成物と、ポリへキサジン(polyhexadine)に基づく市販の消毒剤製造物との組み合わされた逐次処置が、特に銀系消毒剤組成物が最初に使用されるとき、様々な真菌株の成長を阻害することにおいて非常に効果的であることがさらに明らかにされている。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、メントールと、銀イオンの供給源とを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容される担体を含む消毒剤組成物であって、組成物における銀イオンの濃度が6mM未満である組成物が提供される。
【0033】
いくつかの実施形態において、メントールおよび銀イオンは相乗作用で作用する。
【0034】
いくつかの実施形態において、メントールの濃度が0.3mMから32mMの範囲である。
【0035】
いくつかの実施形態において、メントールの濃度が0.6mMから6.4mMの範囲である。
【0036】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.05mMから6mMの範囲である。
【0037】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.25mMから0.6mMの範囲である。
【0038】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.25mMから0.6mMの範囲であり、かつ、メントールの濃度が0.6mMから6.4mMの範囲である。
【0039】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が6.4mMである。
【0040】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0041】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が0.64mMである。
【0042】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.44mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0043】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0044】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、メントールの濃度が0.64mMである。
【0045】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源が、硝酸銀、スルファジアジン銀、アミノアルコール−銀イオン錯体、アミノ酸−銀イオン錯体およびポリマー−銀イオン錯体からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリマー−銀イオン錯体はポリビニルピロリドン(PVP)−銀イオン錯体である。
【0047】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はさらに、高浸透圧剤を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤が、グリセロール、ポリエチレングリコール、多糖、マンニトールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤はグリセロールである。
【0050】
いくつかの実施形態において、グリセロールの濃度が、消毒剤組成物の総体積に基づいて3%(v/v)から15%(v/v)の範囲である。
【0051】
いくつかの実施形態において、グリセロールの濃度が、消毒剤組成物の総体積に基づいて10%(v/v)である。
【0052】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0053】
いくつかの実施形態において、PEGの濃度が、消毒剤組成物の総体積に基づいて8%(v/v)から16%(v/v)の範囲である。
【0054】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はさらに、可溶化剤を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、可溶化剤はTWEEN20である。
【0056】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される担体は水溶液である。
【0057】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物は局所用投薬形態物として配合される。
【0058】
いくつかの実施形態において、局所用投薬形態物が、クリーム、スプレー剤、ガーゼ、ワイプ、スポンジ、不織布、綿織物、フォーム、溶液、ローション、軟膏、ペーストおよびゲルからなる群から選択される。
【0059】
本発明の実施形態の1つの態様によれば、包装材と、包装材に包装されている本明細書中に記載されるような消毒剤組成物とを含む消毒キットが提供される。
【0060】
いくつかの実施形態において、消毒キットは、表面を殺菌することにおける使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0061】
いくつかの実施形態において、表面は身体表面である。
【0062】
いくつかの実施形態において、消毒キットは、創傷の処置における使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0063】
いくつかの実施形態において、創傷が、急性創傷、慢性創傷、熱傷および手術創からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、慢性創傷が、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍および圧迫潰瘍からなる群から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源、メントールおよび医薬的に許容される担体のうちの少なくとも1つが、包装材に個別に包装される。
【0066】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源、メントールおよび医薬的に許容される担体のそれぞれが、包装材に個別に包装される。
【0067】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源、メントールおよび医薬的に許容される担体が、包装材に一緒に包装される。
【0068】
本発明の実施形態の1つの態様によれば、表面を殺菌する方法であって、効果的な量の本明細書中に記載されるような消毒剤組成物を表面に適用し、それにより、表面を殺菌することを含む方法が提供される。
【0069】
いくつかの実施形態において、表面は身体表面であり、上記方法は、その必要性のある被験者の身体表面を殺菌するためのものである。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記方法は、消毒剤組成物を身体表面に局所適用することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、身体表面は皮膚組織である。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記方法は、前記身体表面における感染症を処置するためのものである。
【0073】
いくつかの実施形態において、感染症が、細菌、酵母および真菌からなる群から選択される病原性微生物によって引き起こされる。
【0074】
本発明の実施形態の1つの態様によれば、本明細書中に記載されるような創傷をその必要性のある被験者において処置する方法であって、効果的な量の本明細書中に記載されるような消毒剤組成物を創傷領域に適用し、それにより、創傷を処置することを含む方法が提供される。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記方法は、消毒剤組成物を創傷領域に局所適用することを含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物を局所適用することが、消毒剤組成物の流れを、創傷領域を覆って創傷領域の隅々に流すことによって行われる。
【0077】
いくつかの実施形態において、流れが、消毒剤組成物を含む少なくとも1つのリザーバーから重力によって誘導される。
【0078】
いくつかの実施形態において、流れが、消毒剤組成物を含む少なくとも1つのリザーバーと流体連通しているポンプによって誘導される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、表面を殺菌するための製造物の製造における、本明細書中に記載される消毒剤組成物の使用が提供される。
【0080】
いくつかの実施形態において、製造物は、身体表面を殺菌するための医薬品である。
【0081】
いくつかの実施形態において、医薬品は、前記身体表面における感染症を処置するためのものである。
【0082】
いくつかの実施形態において、感染症が、細菌、酵母および真菌からなる群から選択される病原性微生物によって引き起こされる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、本明細書中に記載されるような創傷を処置するための医薬品の製造における、本明細書中に記載される消毒剤組成物の使用が提供される。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、本明細書中に記載されるような消毒剤組成物を調製するプロセスであって、銀イオンの供給源、メントールおよび医薬的に許容される担体を混合し、それにより、消毒剤組成物を得ることを含むプロセスが提供される。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記方法はさらに、高浸透圧剤を組成物と混合することを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記方法はさらに、可溶化剤を組成物と混合することを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、可溶化剤が、メントールを銀イオンの供給源および担体と混合する前にメントールと混合される。
【0088】
いくつかの実施形態において、可溶化剤はTWEEN20である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、銀イオンを含む消毒剤組成物における銀イオンの濃度を低下させる方法であって、相乗作用有効量のメントールを銀イオンの供給源と混合し、それにより、消毒剤組成物における銀イオンの濃度を低下させることを含む方法が提供される。
【0090】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が少なくとも1/2に低下させられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が少なくとも1/10に低下させられる。
【0092】
本発明のいくつか実施形態の1つの態様によれば、銀イオンの供給源を6mM未満の濃度で含む消毒剤組成物の消毒作用活性を増大させる方法であって、相乗作用有効量のメントールを組成物と混合することを含む方法が提供される。
【0093】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、画像について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0095】
【図1】図1は、被試験溶液に30分間曝露し、続いて洗浄した後での24日間の温置の後における真菌培養物の出現を大まかに例示する画像を示す。未成長(殺真菌効果、「F」として示される)、最小限の不良な成長(阻害効果、「IN」として示される)、または、完全な成長(効果なし、「NE」として示される)が示される。
【0096】
【図2】図2は、被試験溶液のそれぞれに30分間曝露し、続いて洗浄した後での、3日間、8日間、11日間および16日間の温置の後における曝露された真菌培養物の出現を例示する画像を示す。被試験溶液には、下記が含まれた:本明細書中上記の実施例5に記載されるような、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(「S」として示される)、PRONTOSAN(登録商標)(「P」として示される)、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(S)と、PRONTOSAN(登録商標)(P)とに対する交互の連続する曝露(「S+P」および「P+S」として示される)、MICROCYN(登録商標)(「M」として示される)、ならびに、ANACEPT(登録商標)(「A」として示される)、そして、それらの希釈物(1:2、1:4、1:8)。試験された真菌株が、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)の臨床株(図2)であった。
【0097】
【図3】図3は、被試験溶液のそれぞれに30分間曝露し、続いて洗浄した後での、3日間、8日間、11日間および16日間の温置の後における曝露された真菌培養物の出現を例示する画像を示す。被試験溶液には、下記が含まれた:本明細書中上記の実施例5に記載されるような、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(「S」として示される)、PRONTOSAN(登録商標)(「P」として示される)、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(S)と、PRONTOSAN(登録商標)(P)とに対する交互の連続する曝露(「S+P」および「P+S」として示される)、MICROCYN(登録商標)(「M」として示される)、ならびに、ANACEPT(登録商標)(「A」として示される)、そして、それらの希釈物(1:2、1:4、1:8)。試験された真菌株が、トリコフィトン・ルブルムNCPF118市販株(図3)であった。
【0098】
【図4】図4は、被試験溶液のそれぞれに30分間曝露し、続いて洗浄した後での、3日間、8日間、11日間および16日間の温置の後における曝露された真菌培養物の出現を例示する画像を示す。被試験溶液には、下記が含まれた:本明細書中上記の実施例5に記載されるような、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(「S」として示される)、PRONTOSAN(登録商標)(「P」として示される)、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(S)と、PRONTOSAN(登録商標)(P)とに対する交互の連続する曝露(「S+P」および「P+S」として示される)、MICROCYN(登録商標)(「M」として示される)、ならびに、ANACEPT(登録商標)(「A」として示される)、そして、それらの希釈物(1:2、1:4、1:8)。試験された真菌株が、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)の臨床株(図4)であった。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、消毒剤組成物およびその使用に関連し、より詳細には、しかし、限定的ではないが、表面(例えば、身体表面など)を殺菌することにおいて効率的に使用することができ、したがって、例えば、感染を伴う医学的状態(例えば、急性創傷および慢性創傷、熱傷、ならびに、手術創など)の処置において、および/または、保存剤として効率的に使用することができる消毒剤組成物に関連する。
【0100】
本明細書中に記載される消毒剤組成物は銀イオンの供給源およびメントールを含み、それにより、銀イオンおよびメントールが相乗作用で作用し、したがって、そのような相乗作用はそれぞれの比較的低い濃度の使用を可能にする。したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、有効成分の沈殿を全く伴うことなく、(一例として)溶液として容易に調製され、かつ、銀イオンに基づく現在利用可能な消毒剤に伴う有害な副作用を有しておらず、その一方で、大きく、かつ、広範囲の治療効力を示す。
【0101】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0102】
本発明者らは、銀に対する微生物耐性の発達に対する可能性のある解決策の1つが、銀イオンの供給源と、銀イオンと一緒になって抗細菌(または抗微生物)相乗効果を示す別の抗細菌剤との組合せの使用であると認識するに至った。そのような組合せは、銀投入量における実質的な減少を可能にし、したがって、同様にまた、銀イオンによって引き起こされる副作用(例えば、傷の着色および過敏など)をなくす。しかしながら、そのような組合せは、銀の起こり得る沈殿を避けるように、銀イオンとともに使用されるすべての成分の適合性に基づかなければならない。提案される組合せが適合性であるならば、様々な試験を、相乗的な抗微生物効果の実現可能性実証のために容易に利用することができる(例えば、Mackay他、2000、Int J Antimicrob Agents、15:125〜129;および、Peter他、2006、J Antimic Chemother、57:573〜576を参照のこと)。
【0103】
多くの抗細菌剤、抗微生物剤および/または消毒剤が知られている一方で、これらの薬剤のどれが、一緒に組み合わされたとき、相乗作用で作用するであろうかを予測することは困難である。
【0104】
用語「消毒作用のある(antiseptic)」は、本明細書中で使用される場合、薬剤または組成物が、薬剤または組成物の局所適用によって、微生物負荷における減少を達成できること、および/または、微生物負荷の発達の防止を達成できることを表す。したがって、消毒作用のある組成物(消毒剤組成物)または薬剤(消毒剤)は、微生物(例えば、細菌、酵母および真菌など)の成長または作用を、それらの活動および/もしくは成長を阻害することによるか、または、微生物を破壊すること(殺滅すること)によるかのどちらかで防止することができるか、または停止させることができる。
【0105】
用語「消毒剤(antiseptic)」は、本明細書中下記で詳述されるように、感染した生体組織に、または、いずれかの他の感染した表面に、あるいは、感染の危険性がある表面に局所適用するための調製物を表すためにこの技術分野では一般に使用される。
【0106】
消毒作用のある組成物(消毒剤組成物)または薬剤(消毒剤)はまた、本明細書中では抗微生物性の組成物または薬剤として示される。用語「抗微生物性の」は、本明細書中で使用される場合、微生物の成長および/または作用を、微生物の活動を阻害することによるか、または、微生物の成長を阻害することによるか、または、微生物を殺滅することによるかのいずれかで防止することができるか、または停止させることができる組成物または薬剤を表す。
【0107】
用語「相乗作用(synergy)」、用語「協力作用(synergism)」およびそれらの何らかの文法的転用は、本明細書中で使用される場合、2つ以上の生物学的に活性な化合物の組合せにおいて生じる協同作用であって、一緒に使用されるときの2つの化合物によって示される組み合わされた効果が、単独で使用されるときのこれらの化合物のそれぞれの効果の和を越える協同作用を表す。したがって、「相乗作用」は多くの場合、2つの活性な薬剤の組合せの効果を表す値が、単独で作用するときのこれらの薬剤のそれぞれについて得られる同じ値の和よりも大きいときに求められる。
【0108】
2つの消毒剤の間における相乗作用は、この技術分野では広く知られている様々な方法によって求めることができる。
【0109】
下記の実施例の節において示されるように、驚くべきことに、銀イオンおよびメントールが相乗作用で作用することが発見された。相乗作用が、様々な細菌に対するメントール単独および銀イオン単独の消毒作用活性を、一緒に投与されたときのそれらの活性と比較して測定することによって求められた。2つの薬剤は、一緒に投与されたときのこれらの薬剤の観測された消毒作用活性が、単独で投与されたときのこれらの薬剤の観測された活性を組み合わせることによって予想される累積的な消毒作用活性を越えているならば、相乗作用で作用すると見なされる。
【0110】
加えて、薬剤が一緒に投与されるときに示される消毒作用活性の薬物動態学パラメーターが、それぞれの薬剤が単独で投与されるときの薬剤の消毒作用活性の同じ薬物動態学パラメーターよりも優れているとき、相乗作用が明らかにされ、したがって、相乗作用が求められた。1つの例示的な薬物動態学パラメーターが、消毒作用効果の特定のレベルを達成するために要求される時間長さである。したがって、2つの薬剤は、消毒作用効果のこのレベルを達成するために要求される時間長さが、これらの薬剤がそれぞれ単独で投与されるときのこの時間長さと比較して、これらの薬剤が一緒に投与されるときに短くなるならば、相乗作用で作用すると見なされる。
【0111】
これに関して、薬物動態学パラメーターにおいては、通常、値の和については意味が何らなく、したがって、それぞれの化合物を単独で投与することに対する、2つの薬剤を同時に投与するときの薬物動態学パラメーターにおける何らかの改善が、相乗作用を反映すると見なされることには留意される。
【0112】
したがって、例えば、相乗的な消毒作用活性が、大腸菌 ATCC47076株に対して試験されたとき、銀イオン供給源(AgNO)およびメントールを、0.005%(w/v%)+0.1%(w/v)、0.005%(w/v)+0.05%(w/v)、0.005%(w/v)+0.01%(w/v)、0.0075%(w/v)+0.05%(w/v)、0.01%(w/v)+0.05%(w/v)、および、0.01%(w/v)+0.01%(w/v)の濃度でそれぞれ含有する高張性溶液について認められたことが示されている(本明細書中下記の表1を参照のこと)。これらの値は、0.29mM+6.4mM、0.29mM+3.2mM、0.29mM+0.64mM、0.44mM+3.2mM、0.6mM+3.2mM、および、0.6mM+0.64mMの銀イオンおよびメントールについてのモル濃度にそれぞれ対応する。具体的には、これらの濃度において、それぞれが単独で投与されたときのメントールおよび銀イオンの累積的な消毒作用活性が、これらの薬剤が一緒に投与されたときに観測される消毒作用活性よりも低かった。
【0113】
銀イオンおよびメントールが、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のメチシリン耐性臨床株(MRSA)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)の臨床株、広域スペクトルのβ−ラクタマーゼを産生する大腸菌(Escherichia coli)の臨床株、多剤耐性アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)の臨床株および多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の臨床株を含めて、様々なタイプの細菌に対して相乗作用で作用することもまた示されている(本明細書中下記の表2を参照のこと)。これらの試験では、銀イオンおよびメントールの相乗効果が、ある特定レベルの消毒作用活性が観測されるまでの測定された時間長さが、その同じレベルの消毒作用活性が、それぞれの薬剤が単独で投与されたときに観測されるまでの時間長さと比較してより短いことによって明らかにされた。
【0114】
銀イオン供給源およびメントールを含有する溶液が透明な溶液であり、沈殿物を有していないことがさらに示されている。
【0115】
そのような組成物の最小阻害濃度が、組成物を1:4希釈したときに得られること、および、そのような組成物の最小殺細菌濃度が、組成物を1:2希釈したときに得られることがさらに明らかにされている(下記の実施例の節における表3を参照のこと)。
【0116】
したがって、本明細書中に記載されるような消毒剤組成物は、少なくとも1:2によって希釈されながら、必要な場合には、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1.4によって希釈されながら、また、より大きく希釈されたときでさえ(例えば、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、および、1:10)、本明細書中に記載される方法のいずれにおいても有益に使用することができる。
【0117】
1:10で希釈されたとき、銀イオンおよびメントールを含む例示的な組成物が、様々な細菌株および真菌株の成長を非無菌試料において妨げたことがさらに示されている(下記の実施例の節における実施例5を参照のこと)。
【0118】
本明細書中に記載される消毒剤組成物の有益な治療効果がさらに、市販されている製造物であるPRONTOSAN(登録商標)、MICROCYN(登録商標)およびANASEPT(登録商標)との比較で明らかにされた(下記の実施例の節における実施例6、および、図2〜図4を参照のこと)。本明細書中に記載される消毒剤組成物は、臨床真菌株(例えば、トリコフィトン・ルブルムおよびミクロスポルム・カニスなど)に対する殺真菌活性を示すことが示された。この場合、そのような殺真菌活性は、市販されている製造物のいくつかより成績が良く、PRONTOSAN(登録商標)と効果的に組み合わせられることが見出された。
【0119】
したがって、銀イオンおよびメントールの組合せについて認められる相乗効果は、メントールの他の有益な性質(例えば、そのかゆみ止め効果、その冷却効果など)を利用することとともに、銀イオンの低下した濃度を有する消毒剤組成物を提供することを可能にする。
【0120】
これらの発見により、銀イオンおよびメントールを含む組成物が、本明細書中下記で詳述されるように、表面(例えば、身体表面など)を殺菌するために、したがって、感染を伴う状態(例えば、創傷など)の処置または防止のために、強力な消毒剤組成物として役立ち得ることが明らかにされる。
【0121】
これらの発見によりさらに、銀イオンおよびメントールを含む組成物が、例えば、医療デバイスおよび貯蔵容器の表面の殺菌するために、また、そのような表面における微生物負荷の発達を防止するために、強力な消毒剤組成物として役立ち得ることが明らかにされる。
【0122】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、メントールと、銀イオンの供給源とを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容される担体を含む消毒剤組成物であって、組成物における銀イオンの濃度が6mM未満である消毒剤組成物が提供される。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、メントールおよび銀イオンは、本明細書中上記で定義されるように相乗作用で作用する。
【0124】
メントール(5−メチル−2−プロパン−2−イル−シクロヘキサン−1−オール;CAS No.89−78−1、MW=156グラム/mol)は、植物由来の天然モノテルペンであり、かゆみ止め配合物、消毒配合物、鎮痛配合物および清涼配合物の一部として皮膚科学において頻繁に使用される。メントールは、室温で固体であるが、室温をわずかに超えると融解する、色が透明または白色であるワックス状の結晶性物質である。メントールは3つの不斉中心を有しており、8個の立体異性体として、すなわち、(+)−メントール、(+)−イソメントール、(+)−ネオメントール、(+)−ネオイソメントール、(+)−メントール、(+)−イソメントール、(+)−ネオメントール、(+)−ネオイソメントールとして存在する(すべてが、本明細書中で使用される用語「メントール」によって包含される)。
【0125】
自然界に存在するメントールの最も一般的な形態は、(1R、2S、5R)の立体配置が割り当てられ、下記の構造を有する(−)−メントール立体異性体である:

【0126】
表現「銀イオンの供給源」は、本明細書中で使用される場合、適切な媒体に存在するとき、銀イオンを生じさせる化学的成分を表す。そのような化合物が、(例えば、水性担体における水溶性銀塩の場合でのように)本明細書中に記載されるような組成物の担体と混合されると、銀イオンが生じ得る。代替では、銀イオンが、銀イオンを含有する化学的錯体が分解したときに生じ得る(これは、錯体が組成物の担体に入れられると生じる分解である)。そのような化学的錯体において、銀イオンは典型的には、配位相互作用で引きつけられ、一方、銀塩では、銀イオンがイオン相互作用で引きつけられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される担体は水溶液である。これらの実施形態において、銀イオンの供給源は好ましくは水溶性の銀塩であり、例えば、硝酸銀、酢酸銀、および、ある程度に水溶性のスルファジアジン銀などである。
【0128】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である銀イオンの供給源の限定されない例には、硝酸銀、スルファジアジン銀、ならびに、銀イオン錯体、例えば、アミノアルコール−銀イオン錯体、アミノ酸−銀イオン錯体およびポリマー−銀イオン錯体などが含まれる。
【0129】
表現「アミノアルコール−銀イオン錯体」は、アミノアルコール(すなわち、アミン官能基およびアルコール官能基の両方を含有する分子)と、銀イオンとの錯体を表す。そのような錯体の限定されない例には、アミノエタノール、アミノプロピルアルコール、2−アミノ−2−(ヒドロキシエチル)−1,3−プロパンジオールおよびアミノブチルアルコールが含まれる。
【0130】
いくつかの実施形態において、アミノアルコール成分の濃度が約50mMである。
【0131】
表現「アミノ酸−銀イオン錯体」は、アミノ酸(すなわち、アミン官能基およびカルボン酸官能基の両方を含有する分子)と、銀イオンとの錯体を表す。いくつかの実施形態において、アミノ酸が、天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸アナログからなる群から選択される。そのような錯体の限定されない例には、ヒスチジン−銀(I)錯体、セリン−銀錯体およびリシン−銀錯体が含まれる。
【0132】
表現「ポリマー−銀イオン錯体」は、ポリマーと、銀イオンとの錯体を表す。そのような錯体におけるポリマーは、銀イオンと配位相互作用する1つまたは複数の官能基(例えば、ヒドロキシ、アミン、オキソ(=O)、カルボキシラートおよびアミドなど)を有しなければならない。ポリマーは、合成ポリマー、天然に存在するポリマー、または、半合成ポリマーであってもよく、好ましくは生体適合性である。そのようなポリマー−銀イオン錯体の限定されない例には、ポリビニルピロリドン(PVP)−銀イオン錯体、ポリアクリアミド−銀イオン錯体およびポリリシン−銀イオン錯体が含まれる。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、ポリマー−銀イオン錯体はポリビニルピロリドン(PVP)−銀イオン錯体である。
【0134】
ポリビニルピロリドンは、優れた安全性プロフィルおよび広範囲の様々な用途を、医療、薬理学、化粧品および工業生産において有する水溶性ポリマーである。ポリビニルピロリドンはフィルムを容易に形成し、多くの医薬錠剤において結合剤として使用される。
【0135】
いくつかの実施形態において、銀イオン供給源がポリビニルピロリドン−銀イオン錯体である場合、消毒剤組成物におけるポリマーの濃度が、消毒剤組成物の総体積に基づいて0.2%(w/v)から10%(w/v)の範囲である。
【0136】
本明細書中で使用される場合、「%(w/v)」は、組成物の総体積における成分または薬剤の重量百分率を表す。したがって、例えば、1%(w/v)は、100mlの組成物における1mgの成分または薬剤を表す。
【0137】
「%(w/v)」の単位は、特定の体積に存在する質量を表す一方で、モル濃度、すなわち、1リットルあたりのモル数(M)としてもまた表すことができる。
【0138】
%(v/v)の単位は、組成物の総体積における成分または薬剤の体積百分率を表す。
【0139】
本明細書中上記で議論されるように、メントールおよび銀イオンが相乗作用で作用するという驚くべき発見は、所望される消毒作用活性を依然として得ながら、消毒作用活性を発揮するために典型的に利用されるそれぞれの薬剤の濃度と比較して、低下した濃度のそれぞれの薬剤を含有する消毒剤組成物を利用することを可能にする。
【0140】
例えば、0.5%(w/v)の濃度での、硝酸銀に基づく消毒剤溶液は典型的には、重度の熱傷を処置するために使用される[Sweetman SC(編)、Martindale:The complete drug reference 35、London:Pharmaceutical press、2007]。
【0141】
本明細書中上記でさらに議論されるように、そのような濃度は比較的高く、また、そのような濃度には、有害な影響、例えば、傷の着色および過敏などが伴う。
【0142】
0.5%(w/v)の硝酸銀の濃度は約30mMに対応する。
【0143】
局所投与のための現在知られている組成物におけるメントールの濃度は、高熱およびカタル(粘液のどろどろした滲出物)のために鼻腔粘膜に適用される0.25(w/v)%から、神経痛、座骨神経痛および腰痛の処置のための20%(w/v)の範囲である。
【0144】
メントールの上記濃度範囲は約15mMから約1.3Mにまでに対応する。
【0145】
メントールの消毒作用性質が知られている一方で、消毒剤組成物におけるメントールの推奨濃度の目安がこの技術分野で見出され得ないことが本明細書中では特筆される。
【0146】
下記の実施例の節において例示されるように、消毒剤組成物において現在許容され得るよりも低い濃度(すなわち、約0.29mM〜約0.6mMの範囲に対応する0.005%(w/v)〜0.01%(w/v))の硝酸銀溶液は、メントールと組み合わされる場合を除き、限定された消毒作用活性を有する(表1を参照のこと)。メントールを、約0.6mM〜約6mMの濃度に対応する0.01(w/v)%〜0.1(w/v)%の濃度で加えることにより、消毒作用活性の実質的な強化がもたらされる。
【0147】
下記の実施例の節においてさらに例示されるように、上記で示されたより低い濃度での硝酸銀溶液の限定された消毒作用活性がさらに、殺細菌活性を示すために要求される時間長さによって明らかにされる(表2を参照のこと)。低濃度のメントールの添加により、この時間長さの実質的な低下がもたらされる。
【0148】
何らかの特定の理論にとらわれることはないが、銀イオンがメントールと一緒に投与されるときに認められる相乗的な消毒作用活性は、メントールによって発揮される消毒作用活性に加えて、感染領域および/または微生物細胞に浸透する銀イオンの浸透速度および量を高める浸透強化剤として機能するメントールの能力から生じることが仮定される。
【0149】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に記載される消毒剤組成物におけるメントールの濃度が約0.3mMから約35mMの範囲である。この濃度範囲は、消毒剤組成物の総体積に基づいて0.005%(w/v)〜0.5%(w/v)の範囲における%(w/v)メントール濃度に対応する。
【0150】
いくつかの実施形態において、メントールの濃度が約0.6mMから約6.4mMの範囲である。このモル濃度範囲は、消毒剤組成物の総体積に基づいて0.01%(w/v)〜0.1%(w/v)の範囲における%(w/v)メントール濃度に対応する。
【0151】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源の濃度が、約0.05mMから約6mMの範囲の組成物における銀イオンの濃度を提供するように選択される。
【0152】
したがって、いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源の濃度は、組成物における銀イオンの濃度が、例えば、0.05mM、0.06mM、0.07mM、0.08mM、0.09mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、5.5mMまたは6mMであるようにされる。0.05mM〜6mMの間における銀イオン濃度のどのような他の値もまた意図される。
【0153】
いくつかの実施形態において、銀イオン供給源がAgNOであり、AgNOの濃度が、消毒剤組成物の総体積に基づいて0.001%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲である。いくつかの実施形態において、AgNOの濃度範囲が、消毒剤組成物の総体積に基づいて0.005%(w/v)〜0.01%(w/v)である。いくつかの実施形態において、AgNOの濃度が0.001%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲であり、かつ、メントールの濃度が0.005%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。いくつかの実施形態において、AgNOの濃度が0.001%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲であり、かつ、メントールの濃度が0.005%(w/v)から0.5%(w/v)の範囲である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0154】
そのような濃度の銀イオンをもたらす、銀イオンの供給物の濃度を、選択された担体における銀イオンの供給源の溶解度および/または分解度、その分子量、ならびに、銀イオン供給源のそれぞれの分子から生じる銀イオンの数に基づいて容易に求めることができる。
【0155】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMから0.6mMの範囲である。
【0156】
したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物に存在する銀イオンの濃度は、例えば、0.06mM(0.001%(w/v)のAgNO)、0.29mM(0.005%(w/v)のAgNO)、0.6mM(0.01%(w/v)のAgNO)、2.9mM(0.05%(w/v)のAgNO)または5.9mM(0.1%(w/v)のAgNO)が可能である(これらのすべてが、現在利用可能な消毒剤組成物における銀イオンの一般に使用されている濃度よりも実質的に低い)。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.05mMから6mMの範囲であり、かつ、メントールの濃度が0.29mMから32mMの範囲である。
【0158】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMから0.6mMの範囲であり、かつ、メントールの濃度が0.6mMから6.4mMの範囲である。
【0159】
1つの実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が6.4mMである。
【0160】
別の実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0161】
別の実施形態において、銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、メントールの濃度が0.64mMである。
【0162】
別の実施形態において、銀イオンの濃度が0.4mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0163】
別の実施形態において、銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、メントールの濃度が3.2mMである。
【0164】
別の実施形態において、銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、メントールの濃度が0.64mMである。
【0165】
別の実施形態において、銀イオンの供給源がAgNOであるとき、AgNOの濃度が0.01%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.05%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0166】
別の実施形態において、AgNOの濃度が0.01%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.01%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0167】
別の実施形態において、AgNOの濃度が0.0075%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.05%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0168】
別の実施形態において、AgNOの濃度が0.005%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.1%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0169】
別の実施形態において、AgNOの濃度が0.005%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.05%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0170】
別の実施形態において、AgNOの濃度が0.005%(w/v)であり、かつ、メントールの濃度が0.01%(w/v)である(これらは消毒剤組成物の総体積に基づく)。
【0171】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書中に記載される消毒剤組成物はさらに、高浸透圧剤を含む。
【0172】
表現「高浸透圧剤」は、本明細書中で使用される場合、浸透圧を、高浸透圧剤が適用される部位において上昇させる薬剤を表す。高浸透圧剤は、浸透圧を微生物(例えば、細菌など)の周りで増大させて、その結果、微生物を殺滅するか、または、微生物の成長を阻害するようにすることが意図される。高浸透圧剤を含む組成物は、等張性の流体よりも大きい浸透圧を有する。典型的には、そのような組成物は、生理学的な圧力よりも大きい浸透圧を有する。
【0173】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的な高浸透圧剤には、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖、マンニトールおよびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤は、高浸透圧剤が消毒剤組成物に存在するときには沈殿形成が生じないように、銀イオンの供給源およびメントールとの適合性を有する。
【0175】
したがって、高浸透圧剤の濃度が、消毒剤組成物において利用される医薬的に許容される担体におけるそれらの溶解度との適合性を有し、その結果、等張性溶液の浸透圧よりも大きい浸透圧を組成物に提供するように選択される。
【0176】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤は生体適合性である。
【0177】
本明細書中で使用される用語「生体適合性」は、生体の器官、細胞または組織に適用されたとき、非毒性かつ非免疫原性である薬剤または組成物を表す。
【0178】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤がグリセロールである。
【0179】
グリセロールは、一般にはグリセリンとも呼ばれる化学化合物である。グリセロールは、医薬配合物において広く使用される、低い毒性を有する無色無臭の粘性液体である。
【0180】
グリセロールは好ましくは、消毒剤組成物に、組成物の総体積に基づいて3%(v/v)〜15%(v/v)の濃度で存在する。
【0181】
本明細書中およびこの技術分野で使用されるように、「%(v/v)」の濃度単位は組成物の総体積のうちの薬剤または組成物の体積パーセントを表す。したがって、例えば、1%(v/v)は100mlの組成物における1mlの薬剤または組成物を表す。
【0182】
いくつかの実施形態において、グリセロールの濃度が10%(v/v)である。
【0183】
いくつかの実施形態において、高浸透圧剤がポリエチレングリコール(PEG)である。
【0184】
PEGは、柔軟な、非毒性(生体適合性)の水溶性ポリマーである。PEGが、300DAから10000KDaの広範囲の分子量にわたって市販されている。その特性のために、PEGを、浸透圧を生じさせるために使用することができる。
【0185】
本発明の実施形態のこの関連での使用のために好適である例示的なPEGには、市販されている低分子量PEG、例えば、PEG200(Da)、PEG300(Da)およびPEG400(Da)などが含まれるが、これらに限定されない。PEGは好ましくは、消毒剤組成物に、組成物の総体積に基づいて8%(v/v)〜16%(v/v)の濃度で存在する。
【0186】
本明細書中上記で議論されるように、本明細書中に記載されるような消毒剤組成物は、沈殿物を有しない透明な溶液を形成することが明らかにされている。そのような組成物は、局所適用のための利用可能な技術のいずれかを利用しながら、表面に容易に適用することができるので好都合である。
【0187】
いくつかの場合には、可溶化剤または何らかの他の薬剤が、その成分の完全な溶解を容易にするために組成物に加えられる。
【0188】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、組成物はさらに、可溶化剤を含む。
【0189】
用語「可溶化剤」は、本明細書中およびこの技術分野で使用される場合、不溶性成分または難溶性成分の溶解を、可溶化剤を含有する溶液において容易にすることができる化学的薬剤を表す。
【0190】
可溶化剤は、本発明のいくつかの実施形態によれば、可溶性でない銀塩の沈殿を避けるように、使用されている銀イオンの供給源との適合性を有しなければならない。
【0191】
銀塩のほとんどが水溶液において不溶性であるか、または、限定された溶解度を有しており、したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物に加えられる成分はどれも、組成物における可溶性銀イオンの効果的な濃度を維持するために、組成物における銀溶解性に対するその影響によって考慮されなければらないことが本明細書中では留意される。
【0192】
本発明の関連において使用可能である可溶化剤の代表的な例には、限定されないが、錯体形成可溶化剤、例えば、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドンなど、ならびに、ミセル形成可溶化剤、例えば、各種のTWEENおよびスパンなど、例えば、TWEEN80およびTWEEN20が含まれる。本発明の実施形態の関連において使用可能である他の可溶化剤には、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンn−アルキルエーテル、n−アルキルアミンn−オキシド、ポロキサマー、有機溶媒、リン脂質およびシクロデキストリンが含まれる。
【0193】
可溶化剤の選択は、選択された担体において銀を沈殿させない、銀イオンとのその適合性に基づく。
【0194】
下記の実施例の節において記載されるように、メントールが、適切な可溶化剤(例えば、TWEEN20など)との組合せで、本明細書中に記載される組成物において使用される。可溶化剤は、銀イオン供給源およびメントールを含有する安定かつ透明な溶液の形成を容易にする。
【0195】
したがって、いくつかの実施形態において、可溶化剤がTWEEN20である。いくつかの実施形態によれば、メントールと、TWEEN20との比率が1:10であり、例えば、0.05%(w/v)のメントールおよび0.5%(w/v)のTWEEN20である。
【0196】
何らかの特定の理論にとらわれないが、本明細書中に記載される消毒剤組成物へのTWEEN20の添加はさらに、TWEEN20の浸透強化特性に起因する組成物の高まった活性を提供し得ることが示唆される。したがって、銀イオン、メントールおよびTWEEN20はすべてが相乗作用で作用し、したがって、所望される活性を示しながら、低濃度の銀イオンを消毒剤組成物において有益に利用することをさらに可能することが示唆され得る。
【0197】
本明細書中に記載される消毒剤組成物はさらに、その調製、適用および/または成績を改善または容易にすることを目指すさらなる成分を含むことができる。そのようなさらなる成分には、例えば、抗刺激剤、消泡剤、湿潤剤、脱臭剤、制汗剤、pH調節剤、保存剤、乳化剤、閉鎖剤、皮膚軟化剤、増粘剤、浸透強化剤、着色剤、(組成物の最終形態に依存する)噴射剤および表面活性剤が含まれる。
【0198】
本発明の関連において使用可能である保湿剤の代表的な例には、限定されないが、グアニジン、グリコール酸およびグリコール酸塩(例えば、アンモニウム塩および第四級アルキルアンモニウム塩)、その様々な形態のいずれかでのアロエベラ(例えば、アロエベラゲル)、アラントイン、ウラゾール、ポリヒドロキシアルコール(例えば、ソルビトール、グリセロール、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールなど)、ポリエチレングリコール、糖およびデンプン、糖誘導体およびデンプン誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース)、ヒアルロン酸、ラクタミドモノエタノールアミン、アセトアミドモノエタノールアミン、ならびに、それらの任意の組合せが含まれる。
【0199】
好適なpH調節剤には、例えば、tris−イミダゾールトリエチルアミン緩衝剤、および、成分のいずれをも沈殿させることなく、他の成分との適合性を有する他の緩衝剤溶液のどれもが含まれる。
【0200】
本発明の実施形態の関連において使用可能である消臭剤の代表的な例には、限定されないが、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、ジアミノアルキルアミン、例えば、L−リシンヘキサデシルアミドである。
【0201】
本発明の関連において使用することができる好適な保存剤には、限定されないが、1つまたは複数のアルカノール、パラベン類(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベンなど)、プロピレングリコール、ソルバート、ウレア誘導体(例えば、ジアゾリンジニルウレアなど)、あるいは、それらの任意の組合せが含まれる。
【0202】
本発明の実施形態の関連において使用することができる好適な乳化剤には、例えば、1つまたは複数のソルビタン、アルコキシル化脂肪アルコール、アルキルポリグリコシド、石けん、アルキルスルファート、あるいは、それらの任意の組合せが含まれる。
【0203】
本発明の実施形態の関連において使用することができる好適な閉塞剤には、例えば、ワセリン、鉱油、蜜ろう、シリコーン油、ラノリンおよび油溶性ラノリン誘導体、飽和および不飽和の脂肪アルコール(例えば、ベヘニルアルコールなど)、炭化水素(例えば、スクアレンなど)、ならびに、様々な動物油および植物油(例えば、アーモンド油、ピーナッツ油、コムギ胚種油、アマニ油、ホホバ油、杏仁油、クルミ油、パームナッツ油、ピスタチオナッツ油、ゴマ種子油、ナタネ油、カデ油、トウモロコシ油、桃仁油、ケシ油、パイン油、ひまし油、ダイズ油、アボカド油、ベニバナ油、ヤシ油、ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、ブドウ種子油およびヒマワリ種子油など)が含まれる。
【0204】
本発明の実施形態の関連において使用することができる好適な皮膚軟化剤には、例えば、ドデカン、スクアレン、コレステロール、イソヘキサデカン、イソノナン酸イソノニル、PPGエーテル、ワセリン、ラノリン、ベニバナ油、ひまし油、ヤシ油、綿実油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、ダイズ油、ポリオールのカルボン酸エステル、その誘導体、および、それらの任意の混合物が含まれる。
【0205】
本発明の実施形態の関連において使用することができる好適な増粘剤には、例えば、非イオン性の水溶性ポリマー、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)250または同350の商標で市販されている)など、カチオン性の水溶性ポリマー、例えば、Polyquat37(Synthalan(登録商標)CMの商標で市販されている)など、脂肪アルコール、および、それらの混合物が含まれる。
【0206】
本発明の実施形態の関連において使用可能である好適な浸透増強剤には、限定されないが、ポリエチレングリコールモノラウラート(PEGML)、プロピレングリコール(PG)、プロピレングリコールモノラウラート(PGML)、グリセロールモノラウラート(GML)、レシチン、1−置換のアザシクロヘプタン−2−オン(具体的には、1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標)の商標でWhitby Research Incorporated(Richmond、Va)から市販されている)、アルコール、メントール、TWEENS、例えばTWEEN20などが含まれる。浸透増強剤はまた、植物油である場合がある。そのような油には、例えば、ベニバナ油、綿実油およびトウモロコシ油が含まれる。
【0207】
本発明の実施形態の関連において使用することができる好適な抗刺激剤には、例えば、ステロイド系および非ステロイド系の抗炎症剤、あるいは、他の物質、例えば、メントール、アロエベラ、カモミル、α−ビサボロール、コラノキ(cola nitida)抽出物、緑茶抽出物、ティーツリー油、甘草抽出物、アラントイン、カフェインまたは他のキサチン類、グリシルリジン酸およびその誘導体が含まれる。
【0208】
本明細書中に記載されるさらなる成分または薬剤のどれもが好ましくは、沈殿形成が起こらず、また、組成物における銀イオンの利用性を何ら妨害しないように、少なくとも、さらなる成分または薬剤が組成物において使用される濃度範囲内において銀イオンとの適合性を有するとして選択される。
【0209】
本明細書中に記載されるさらなる成分のどれもが、さらに好ましくは、生体適合性であるとして選択される。
【0210】
組成物に含まれるいくつかの薬剤または成分は二重の効果を提供するかもしれないことには留意される。例えば、メントールが、消毒作用活性を強化するための銀イオンとの相乗作用で作用するために使用され、しかし、メントールはまた、浸透強化剤として、また、抗刺激剤として有用である。TWEEN20を可溶化剤として使用することができ、しかし、TWEEN20はまた、浸透強化剤として作用することが知られている。
【0211】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はさらに、さらなる治療活性な薬剤を含み、例えば、本明細書中で詳述されるような、示された状態を処置することができる薬剤、または、本明細書中下記でさらに詳述されるような、表面(例えば、身体表面)を消毒することができる薬剤を含む。いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はさらに、感染している微生物(例えば、細菌または真菌)の成長を阻止することができるか、または低下させることができるか、または阻害することができる薬剤、あるいは、感染している微生物の負荷量を減少させることができる薬剤を含む。
【0212】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はさらに、本明細書中に記載されるような、創傷を処置することができるさらなる薬剤を含む。例示的なさらなる治療活性な薬剤には、ベタインおよびポリへキサジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
本明細書中に記載される消毒剤組成物は、医薬的に許容される好適な担体と一緒に配合される。
【0214】
本明細書中に使用される用語「医薬的に許容される担体」は、組成物の投与を容易にするために使用され、生物体に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された活性成分の生物学的活性および生物学的性質を阻害しない担体または希釈剤を示す。担体の非限定的な例には、水、緩衝水溶液、プロピレングリコール、エマルジョン、および有機溶媒と水の混合物、ならびに固体の担体(例えば、粉末状の担体)およびガス状の担体がある。
【0215】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0216】
したがって、本発明の実施形態に従って使用される消毒剤組成物は、医薬品として使用することができる調製物への化合物の加工を容易にする1つまたは複数の医薬的に許容される担体、賦形剤および/または補助剤を使用して従来の様式で配合することができる。投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。
【0217】
正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0218】
医薬的に許容される担体は有機担体または水性担体のどちらも可能である。いくつかの実施形態において、担体は、銀イオンの供給源が可溶性である水性担体である。いくつかの実施形態において、水性担体は緩衝剤溶液である。
【0219】
水性担体は好ましくは、注射液規格の水、すなわち、USP規格の「注射用水」を含む。しかしながら、他の形態の精製水が、場合により好適である(例えば、蒸留水および脱イオン水など)。
【0220】
水性配合物が好ましい。これは、これらの配合物は、皮膚および粘膜組織の両方に対して優しく、かつ、開放創での使用のために好適であるからである。しかしながら、非水性の配合物もまた意図される。例えば、消毒剤組成物がペーストまたはエマルションの形態である場合には、非水性担体、または、水性担体および有機担体の混合された担体を、銀イオンがそのような担体において生じる限り、使用することができる。
【0221】
消毒剤組成物は、処置されるべき領域に依存して、様々な経路の1つまたは複数のどちらかでの投与のために配合することができる。
【0222】
いくつかの実施形態によれば、消毒剤組成物は、局所用投薬形態物として、局所投与のために配合される。
【0223】
本明細書中で使用される表現「局所用投薬形態物」は、被処置領域への局所投与のために好適な投薬形態物を表す。
【0224】
組成物に含むことができる適切な担体および必要な場合には他の成分を選択することによって、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、局所適用のために通常的に用いられるどのような形態にも配合することができる。したがって、本明細書中に記載される組成物は、例えば、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、乳剤、溶液、エアロゾル、スプレー剤、フォーム、ガーゼ、ワイプ、スポンジ、不織布、綿織物、綿撒糸、パッチおよびパッドの形態が可能である。
【0225】
例示的な局所用投薬形態物には、クリーム、スプレー剤、ガーゼ、ワイプ、スポンジ、不織布、綿織物、フォーム、溶液、ローション、軟膏、ペーストおよびゲルが含まれるが、これらに限定されない。
【0226】
そのような局所用投薬形態物は、必要な場合にはさらに、長期間にわたる被処置領域への組成物の局所適用を容易にするために接着剤を含むことができる。
【0227】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物は、点滴剤、スプレー剤、エアロゾル、液体およびフォームなどとして適用されるために液体リザーバーとして配合される。好適な担体および他の成分がこれらの場合において使用される。例えば、エアロゾルまたはフォームとして適用されるために、噴射剤が使用される。
【0228】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物はクリームとして配合される。1つの例示的なクリーム配合物を、本明細書中に記載される消毒剤組成物を、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)および/またはポリエチレングリコールを含む担体と混合することによって得ることができる。
【0229】
投与されるべき組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている被験者、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0230】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、ガラスまたはプラスチックホイルを含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本発明の組成物もまた、本明細書で詳述されたように、消毒目的のためまたは創傷治療のために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0231】
本明細書に記載される組成物は任意の好都合な方法で包装または提供することができる。例えば、組成物は、当業者に広く知られている技術を使用して、また、Remington’s Pharmaceutical Science(第15版)などの参考書籍に示されるように、チューブ、ビン、ディスペンサー、圧迫可能な容器、または加圧容器に詰めることができる。包装は、容器が開封される前およびその後での組成物の汚染を最小限に抑えるために、使用されていない組成物が環境と接触することを最小限に抑えるような方法で行われることが好ましい。
【0232】
本明細書中に記載される組成物は好ましくは、使用のために意図される濃度で供給される。しかし、本明細書中に記載される組成物はまた、使用前に希釈される高濃度物として調製することができる。例えば、2:1〜10:1部の担体(例えば、水)対高濃度物の希釈比を必要とする高濃度物が意図される。高濃度物の上限は、より高い濃度における様々な成分の溶解度および適合性によって制限される。
【0233】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される消毒剤組成物は包装材に包装され、そして、本明細書中に記載されるように、表面を殺菌することにおける使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0234】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される消毒剤組成物は包装材に包装され、そして、本明細書中下記でさらに詳述されるように、身体表面を殺菌することにおける使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0235】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物は包装材に包装され、創傷の処置における使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0236】
いくつかの実施形態において、消毒剤組成物は包装材に包装され、そして、本明細書中下記でさらに詳述されるように、感染症の処置における使用のために包装材の中または表面において印刷により特定される。
【0237】
殺菌剤としての、また、創傷を処置することにおける本明細書中に記載される組成物の効力が、下記の実施例の節において十分に明らかにされる。
【0238】
したがって、本発明の実施形態のさらなる態様によれば、本明細書中に記載される消毒剤組成物を含むキットであって、包装材に包装されているキットが提供される。
【0239】
キットは、例えば、本明細書中に詳述されるように、殺菌目的のための使用、および/または、創傷を処置するための使用のために包装材の中または表面において印刷により特定されることによってラベル表示することができる。
【0240】
消毒剤組成物の全成分が、ただ1つの組成物として、一緒にしてキット内に包装され得るか、または、成分の少なくとも1つを個別に包装することができる。1つまたは複数の成分が個別に包装されるとき、キットはさらに、直ちに使用できる消毒剤組成物を調製する経路を示す説明書とともに提供され得る。そのような説明書は、例えば、本明細書中上記で詳しく記載されるような消毒剤組成物を調製するプロセスに従うことができる。
【0241】
本発明のいくつかの実施形態のさらなる態様によれば、基体を殺菌する方法であって、効果的な量の本明細書中に記載される消毒剤組成物を基体に適用し、それにより、基体を殺菌することを含む方法が提供される。
【0242】
本明細書中を通して使用される用語「殺菌する」は、基体の内部または表面における微生物成長の速度を低下させるために、および/あるいは、基体の内部または表面における微生物の成長を阻害または防止するために、および/あるいは、基体の内部または表面における微生物を根絶するために、基体の内部または表面における微生物の負荷量を減らすことを示す。
【0243】
用語「基体」は、本明細書中で使用される場合、その表面における微生物の成長を、望ましいことではないが、支持し得るか、または有し得るか、または促進させ得るいずれかの基体、製造物または材料を示す。限定されない例には、微生物の攻撃からのその表面の保護を必要とする医療デバイス、医療機器、医療用製造物および医薬用製造物の容器、包装材、製薬業界、医療業界、農業業界、機能性食品業界および食品業界で使用される産業機器および産業装置、壁、建築物、倉庫、区画、コンテナー車輌または輸送車両、色素または塗料、ならびに、任意の他の材料および産業用コンパウンド(例えば、建築材料など)が含まれる。
【0244】
いくつかの実施形態によれば、消毒剤組成物を基体に適用することが、例えば、基体を組成物により洗浄すること、組成物を基体の表面の広げること、組成物を基体表面に噴霧すること、または、基体を組成物に浸けることによって達成される。適用経路は、少なくとも部分的には、組成物の形態に依存する。
【0245】
いくつかの実施形態によれば、基体は、その必要性のある被験者の身体表面である。
【0246】
本明細書中で使用される用語「被験者」は、特定の処置のレシピエントになり得る任意の動物(例えば、哺乳動物)を示し、これには、ヒト、ヒト以外の霊長類、哺乳動物、齧歯類および任意の他の動物が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、用語「被験者」および用語「患者」は、ヒト被験者に関しては本明細書中では相互に交換可能に使用される。
【0247】
いくつかの実施形態によれば、上記方法は、消毒剤組成物を身体表面に局所適用することによって達成される。いくつかの実施形態によれば、身体表面は、局所適用から利益を受けることができる皮膚、皮膚組織、粘膜組織、あるいは、任意の他の感染した身体領域または感染した可能性がある身体領域である。
【0248】
したがって、本明細書中に記載されるような消毒剤組成物は、感染した領域(例えば、本明細書中上記で詳述されるような急性創傷または慢性創傷)を殺菌するために、または、感染する危険性がある領域において感染症を防止するために利用することができる。後者には、例えば、様々な微生物による感染症を非常に受けやすい手術創、急性創傷および潰瘍などが含まれる。
【0249】
本明細書中上記で議論されるように、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、様々な細菌株に対する効率的な殺細菌活性、同様にまた、様々な真菌株に対する殺真菌活性が明らかにされている。したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、傷における微生物負荷量の減少が治療的に有益である創傷の処置において利用することができる。
【0250】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、創傷をその必要性のある被験者において処置する方法であって、効果的な量の本明細書中に記載される消毒剤組成物を創傷領域に適用し、それにより、創傷を処置することを含む方法が提供される。
【0251】
いくつかの実施形態によれば、上記方法は、消毒剤組成物を創傷領域に局所適用することによって達成される。
【0252】
用語「創傷」は、活力を失った組織または焼痂組織を含有するか否かにかかわらず、損傷または障害を受けた皮膚または粘膜組織を表すようにその最も広い意味に従って解釈されるために本明細書中では使用され、急性創傷、慢性創傷、外科創傷および熱傷など(これらに限定されない)を含めて、どのようなタイプの創傷も包含する。用語「皮膚病変」は、本明細書中で使用される場合、損傷した皮膚を表し、本出願を通して用語「創傷」と相互に交換可能に使用される。
【0253】
用語「創傷領域」は、創傷に隣接する領域を表す。この領域は典型的には、創傷のすぐ近隣から約30cmに至るまで広がる。創傷の周辺領域の内側境界が創傷の形状に一致し得るか、または、創傷の形状と平行し得ることが理解されつつある。
【0254】
用語「急性創傷」は、外傷性表皮剥離、裂傷によって、または、表面近くの損傷により引き起こされ、最終的には、創傷治癒の正常な段階(例えば、止血、炎症、増殖および再構築など)を介して、合併症を伴うことなく自然治癒する創傷を表す。しかしながら、急性創傷は多くの場合、局所的感染を引き起こすかもしれない病原性微生物と接触するならば、悪化する可能性がある。
【0255】
表現「外科創傷」および表現「手術創」は本明細書中では相互に交換可能に使用され、外科手技の結果として形成される創傷を表す。手術創感染症がよく起こり、すべての院内感染症の12%である。感染率が、着手された手術のタイプに依存して変化する。とりわけ高い率が、汚染された手術、例えば、結腸直腸手術、または、外傷性創傷に対する遅れた手術などに伴う。手術創感染症は通常、患者の正常なフローラによって、あるいは、環境または病院スタッフの皮膚からの微生物によって引き起こされる。手術創感染症を引き起こす最もありふれた微生物が黄色ブドウ球菌である。他のありふれた原因微生物には、他のグラム陰性の好気性菌、ストレプトコッカス(Streptococcus spp.)および嫌気性菌が含まれる。
【0256】
用語「熱傷」は、熱、冷気、電気、化学薬品、光、放射線または摩擦によって引き起こされる創傷である。熱傷は、冒された組織、重篤度および生じた合併症の点で非常に様々であり得る。筋肉、骨、血管および表皮組織がすべて、神経終末に対する大きい傷害に起因するその後の痛みを伴う損傷を受け得る。冒された場所または重篤度の程度に依存して、熱傷の犠牲者は、ショック、感染、電解質平衡異常および呼吸困難を含む広範囲の多数の潜在的に致命的な合併症を体験することがある。感染が熱傷の最もありふれた合併症であり、熱傷犠牲者における主要な死因である。10000人を越えるアメリカ人が毎年、熱傷の感染性合併症のために死亡する。熱傷創に一般に感染する病原性微生物には、例えば、グラム陽性細菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など、ならびに、グラム陰性細菌、例えば、アシネトバクター・バウマンニイ−カルコアセチクス(Acinetobacter baumannii−calcoaceticus)複合体、緑膿菌およびクレブジエラ(Klebsiella)属の種などが含まれる。
【0257】
表現「慢性創傷」は、何らかの様式で免疫力が損なわれ、治癒にしにくい患者において通常生じる、凝塊形成がない創傷を表す。慢性創傷の例が慢性皮膚潰瘍であり、例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍(圧迫潰瘍)および静脈性潰瘍などである。
【0258】
用語「糖尿病性潰瘍」は、糖尿病に関連する様々な要因(例えば、循環の低下、感覚の喪失、構造的な足変形および皮膚統合性の喪失など)の組合せによって引き起こされる創傷を表す。糖尿病性潰瘍は、直ちにうまく治癒しない、皮膚における単純な破壊であり得るか、または、深部の構造物および骨にまで広がる創傷である。糖尿病性潰瘍は多くの場合、細菌生物および真菌生物が身体に浸入するための進入点であり、また、糖尿病性感染症としてこの技術分野では呼ばれることが多い、四肢および生命を脅かす感染症の原因である。糖尿病性感染症は通常、多数の好気性微生物および嫌気性微生物によって引き起こされる多菌関与感染症である。黄色ブドウ球菌、β溶血性連鎖球菌、腸内細菌科(Enterobacteriacae)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、ペプトコッカス(Peptococcus)属およびペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属が、糖尿病性潰瘍から培養された例示的な菌株である。
【0259】
表現「褥瘡性潰瘍」は、「圧迫潰瘍」としてまた知られており、身体のどのような部分に対してであれ、とりわけ、骨性領域または軟骨性領域(例えば、仙骨、肘関節、膝関節、足関節など)を覆う部分に対して、様々な要因によって、例えば、緩和されない圧力;摩擦;湿度;剪断力;温度;年齢;自制および薬物療法などによって引き起こされる皮膚病変を表す。容易に防止され、また、早期に発見されるならば、完全に処置可能であるが、褥瘡性潰瘍は致命的であることが多く、先進国で報告される主な医原性死因の1つである。褥瘡性潰瘍は、不適切な血液供給、および、血液が組織に再進入するときの生じた再灌流傷害によって引き起こされる場合がある。圧迫潰瘍から単離される最もありふれた生物が、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、D群連鎖球菌、大腸菌、ブドウ球菌(Staphylococcus)属の種、シュードモナス(Pseudomonas)属の種、および、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属の生物である。
【0260】
表現「静脈性潰瘍」は、通常の場合には足の静脈における弁が不適切に機能し、これにより、静脈における圧力が増大することを生じさせるために生じると考えられる創傷を表す。静脈性潰瘍は慢性創傷の主要な原因であり、慢性創傷事例のおよそ30%〜40%において生じている。ほとんどの静脈性潰瘍は、細菌(例えば、ブドウ球菌属、大腸菌、プロテウス属およびシュードモナス属など)によりひどく汚染される。
【0261】
本明細書中上記で議論されるように、急性創傷および慢性創傷(例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍(圧迫潰瘍)、静脈性潰瘍ならびに熱傷など)における細菌細胞負荷量を本明細書中に記載される消毒剤組成物によって低下させることは、治療的に有益である。
【0262】
本明細書中上記でさらに議論されるように、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、様々な細菌株の成長を効果的に阻害することが見出されている。例えば、0.01%銀イオンおよび0.05%メントールの溶液、すなわち、本発明のいくつかの実施形態による組成物は、接触したときに下記の細菌株を効率的に殺滅し、また、それらの成長を妨げることが示されている:大腸菌ATCC47076、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性臨床株(MRSA)、表皮ブドウ球菌の臨床株、広域スペクトルのβ−ラクタマーゼを産生する大腸菌の臨床株、多剤耐性アシネトバクター・バウマンニイの臨床株および多剤耐性緑膿菌の臨床株(表3および表4を参照のこと)。0.01%銀イオンおよび0.05%メントールの溶液、すなわち、本発明のいくつかの実施形態による組成物はさらに、殺真菌活性をトリコフィトン・ルブルム臨床株およびミクロスポルム・カニス臨床株に対して示すことが示されている(本明細書中下記の実施例6および図2〜図4を参照のこと)。したがって、創傷領域から単離されることが知られている菌株を含めて、様々な細菌株および真菌株に対するそれらの幅広い消毒作用活性のために、本明細書中に記載される組成物は創傷の処置において効率的に利用することができる。
【0263】
本明細書中でさらに議論されるように、また、下記の実施例の節において明らかにされるように、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、微生物の成長を効果的に阻害すること、および、様々な微生物の成長を非無菌試料において効果的に妨げることが示された。
【0264】
したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、感染症を処置または防止する方法において使用することができる。感染症は、細菌感染症、真菌感染症、酵母によって引き起こされる感染症、または、それらの任意の組合せであり得る。
【0265】
本明細書中に記載されるような銀イオンおよびメントールを含有する組成物の抗真菌活性は、慢性糖尿病性足部潰瘍の関連において、同様にまた、爪甲真菌症(皮膚糸状菌のトリコフィトン・ルブルムによって主に引き起こされる真菌の爪感染症)、皮膚糸状菌症(例えば、足白癬(水虫、これもまた、トリコフィトン・ルブルムによって冒される)、ならびに、ミクロスポルム・カニスによって主に冒される体部白癬(皮膚糸状菌の皮膚浸入)および頭部白癬(頭皮の輪癬および皮膚糸状菌の頭髪浸入)の抗真菌処置の関連において非常に広い治療的可能性を有する。
【0266】
有意な関連性が、糖尿病と、真菌足感染症の発生との間に存在する:非糖尿病の高齢者集団では、発生率が60%である一方で、糖尿病被験者では、発生率が80%超にまで上昇する。真性糖尿病は著しい悪影響を足白癬および爪甲真菌症の両方の発生に対して有しており、その影響は1.48倍の増大比となる。爪甲真菌症は、足白癬に伴うことが多く、他の感染症の危険性を実質的に増大させ、この場合、病巣形成は最終的には慢性潰瘍および切断をもたらす。糖尿病患者における足白癬の発生率が、対照群集団での7%に対して32%である[Gupta AK、Humke S(2000)、Eur J Dermatol、10:379〜384;Saunte他(2006)、Acta Derm Venereol、86:425〜428]。
【0267】
したがって、用語「殺菌する」は、本明細書中を通して使用される場合、本明細書中に記載されるような感染症を処置することを包含する。
【0268】
加えて、本明細書中に記載される消毒剤組成物はまた、非無菌条件のもと、および/または、有害なほどに非無菌であると疑われる条件のもとでの微生物負荷の形成を防止するか、または低下させるために、保存剤として使用することができる。
【0269】
したがって、本明細書中に記載される消毒剤組成物は、例えば、貯蔵容器に対して、特に、医療用製造物(例えば、医療デバイス、医薬活性な薬剤および薬物など)を貯蔵および/または輸送するための貯蔵容器に対して加えることができる。
【0270】
本発明の実施形態のさらなる態様によれば、本明細書中に記載されるような、基体を殺菌するための製造物の製造における、本明細書中に記載される消毒剤組成物の使用が提供される。
【0271】
本発明の実施形態のさらなる態様によれば、本明細書中に記載されるような、身体領域の表面を殺菌するための、および/または、創傷を処置するための医薬品の製造における、本明細書中に記載される消毒剤組成物の使用が提供される。
【0272】
本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、消毒剤組成物は、いずれかの好適な手段を使用して被処置領域に適用することができる。
【0273】
通常、何らかのタイプの吸収材、例えば、ガーゼ、フォームスポンジ、不織布、綿織物、および、綿棒または綿球などが組成物で浸され、創傷を覆って適用される。
【0274】
代替では、組成物は、例えば、フィルム形成剤をさらに含むことができるスプレー剤またはエアロゾルの形態が可能である。したがって、組成物が噴霧によって被処置領域に適用される。
【0275】
さらなる代替では、組成物は、クリーム、ペーストまたはゲルの形態が可能であり、広げることによって、または、組成物を含む接着性パッチを適用することによって創傷に適用される。
【0276】
さらなる代替では、また、好ましくは、さらに高い創傷治癒率を、消毒剤組成物を連続した流れで創傷を覆って創傷の隅々に適用し、その結果、創傷と接触している消毒剤および高浸透圧剤の濃度が一定で保たれるようにすることによって達成することができる。
【0277】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書中に記載される消毒剤組成物の局所適用が、消毒剤組成物の流れを、創傷領域を覆って創傷領域の隅々に流すことによって行われる。
【0278】
本明細書中に記載される組成物の流れは、所定の期間、創傷を覆って創傷の隅々に運ばれる。いくつかの実施形態によれば、流れを連続的に運ぶことが少なくとも5分間行われ、いくつかの実施形態では少なくとも15分間行われ、いくつかの実施形態では少なくとも30分間行われ、いくつかの実施形態では少なくとも1時間行われる。創傷は、微生物負荷量を低下させることの進行および創傷治癒を評価するためにモニターされる。処置における短期間の中断を、流れを停止すること、および、患者の自由な動きを妨げるいずれかの導管を除くことによって行うことができる。導管が再び取り付けられる閉鎖包帯を、創傷を覆って残すことができる。
【0279】
処置を、公開番号第2004/0186421号を有する米国特許出願または国際公開WO2005/070480号に記載されるような装置を使用して適用することができる(これらは、全体が本明細書中に示されるかのように参照によって組み込まれる)。
【0280】
1つの例示的な実施形態によれば、そのような装置は、少なくとも1つの開口部が形成されているハウジングと、装置を皮膚病変部の周囲の周りの皮膚に取り付けるための手段とを含み、ただし、ハウジングは、(i)第1の長さ軸を有し、かつ、開口部を通ってその長さ軸に沿って調節可能であるように構成される少なくとも1つの入口チューブと、(ii)第2の長さ軸を有する少なくとも1つの出口チューブとを含む。
【0281】
この装置はさらに、消毒剤組成物を保持するために適合化されたリザーバーを含み、ただし、リザーバーは1つまたは複数の入口と流体連通している。出口は、リザーバーと、処置区域との間における流れを制御するためのバルブを含むことができる。好ましくは、出口はさらに、ハイウジングをリザーバーから分離すること、および、ハウジングを再びつなぐことを可能にし、それにより、処置を中断することを可能にする手段を含むことができる。
【0282】
患者を流れ手段から分離すること、および、患者を再びつなぐことの単純さは、消毒剤組成物を長期間にわたって適用することを可能にする。消毒剤組成物の流れを、個々の必要性に依存して、少なくとも1時間続けることができ、または、数時間続けることができる。
【0283】
いくつかの実施形態によれば、流れが、消毒剤組成物を含む少なくとも1つのリザーバーから重力によって誘導される。
【0284】
いくつかの実施形態によれば、流れが、消毒剤組成物を含む少なくとも1つのリザーバーと流体連通しているポンプによって誘導される。
【0285】
いくつかの実施形態において、流れが、流れる溶液と直接には接触していない蠕動ポンプによって誘導される。
【0286】
本発明の実施形態のさらなる態様によれば、本明細書中に記載される消毒剤組成物を調製するためのプロセスであって、銀イオンの供給源、メントールおよび医薬的に許容される担体を混合して、その結果、消毒剤組成物を得るようにすることを含むプロセスが提供される。
【0287】
いくつかの実施形態によれば、上記プロセスはさらに、高浸透圧剤を組成物と混合することを含む。
【0288】
組成物成分(すなわち、銀イオンの供給源、メントール、医薬的に許容される担体、および、必要な場合には高浸透圧剤)を加える順序は、例えば、可溶化の検討に依存して変化し得る。
【0289】
したがって、例えば、上記プロセスは、銀イオンの供給源および担体の溶液を調製し、それにメントールを加えることによって達成することができる。代替では、上記プロセスは、メントールおよび担体の溶液を調製し、それに銀イオンの供給源を加えることによって達成することができる。
【0290】
高浸透圧剤が存在するならば、高浸透圧剤を銀イオンまたはメントールのいずれかの添加前または添加後に加えることができる。同様に、本明細書中上記で記載されるような、組成物に加えられる他の成分はどれも、任意の段階で加えることができる。
【0291】
いくつかの実施形態によれば、上記プロセスはさらに、前記メントールを本明細書中に記載されるような可溶化剤(例えば、TWEEN20など)と混合し、それにより、メントールおよび可溶化剤の溶液を得ること、および、メントールの前記溶液を組成物と混合することを含む。
【0292】
いくつかの実施形態において、可溶化剤がTWEEN20である。いくつかの実施形態において、メントールおよびTWEEN20の間における重量比が1:10である。いくつかの実施形態において、TWEEN20が、メントールおよびTWEEN20の溶液の総体積に基づいて0.5%(w/v)の濃度で利用される。
【0293】
いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源およびメントールの量は、混合したとき、銀イオンの最終濃度が0.05mM〜30mMであり、かつ、メントールの最終濃度が0.3mM〜32mMであるようにされる。いくつかの実施形態において、銀イオンの供給源の最終濃度が0.3mM〜0.6mMであり、かつ、メントールの最終濃度が0.6mM〜6.4mMである。
【0294】
メントールおよび銀イオンの供給源を組み合わせることによって示される相乗効果を考慮すると、そのような相乗効果は、現在利用可能な消毒剤製造物と比較して、実質的に低下した濃度の銀イオンを使用することを可能にするので、本発明の実施形態のさらなる態様によれば、銀イオンを(有効成分として)含む消毒剤組成物における銀イオンの濃度を低下させる方法が提供される。この方法は、これらの実施形態によれば、相乗作用有効量のメントールを銀イオンの供給源と混合することによって達成される。
【0295】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が、相乗作用有効量のメントールを有しない消毒剤組成物と比較したとき、少なくとも1/2に、少なくとも1/3に、少なくとも1/5に、少なくとも1/6に、少なくとも1/7に、少なくとも1/8に、少なくとも1/9に、また、1/10にまでも、また、1/20にまでも、または、1/30に、1/40に、1/50に、1/60に、1/70に、1/80に、1/90に、また、1/100に低下させられる。
【0296】
いくつかの実施形態において、銀イオンの濃度が、相乗作用有効量のメントールを有しない消毒剤組成物と比較したとき、1/50に低下させられる。
【0297】
表現「消毒作用有効量」は、本明細書中で定義されるような消毒作用活性を示す薬剤(本明細書中では銀イオンの供給源)の量を表す。
【0298】
表現「相乗作用有効量」は、本明細書中で定義されるような、銀イオンおよびメントールの組合せの相乗効果をもたらす、消毒剤組成物において銀イオンの供給源と混合されたときのメントールの濃度を表す。
【0299】
さらに、本発明の実施形態によれば、銀イオンの供給源を6mM未満である濃度で含む消毒剤組成物の消毒作用活性を増大させる方法であって、相乗作用有効量のメントールを組成物と混合することによって達成される方法が提供される。
【0300】
メントールを消毒剤組成物と混合することを、本明細書中に記載されるような消毒剤組成物を調製するプロセスに従って達成することができる。したがって、さらなる成分、例えば、高浸透圧剤および可溶化剤などもまた、銀イオンと混合することができる。
【0301】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0302】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0303】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0304】
材料および実験方法
材料:
LB培地を、10グラムのトリプトン(カタログ番号161200、Pronadisa、Conda)、5グラムの酵母抽出物(カタログ番号212750、DIFCO)、10グラムのNaCl(カタログ番号1.06404.1000、Merck)および2グラムのグルコース(カタログ番号1.08337.1000、Merck)を磁気撹拌および穏やかな加熱とともに高度精製水の1リットルの最終体積に溶解することによって調製した。LB寒天を、15グラムのBacto寒天(カタログ番号214010、BD)をLB培地に加えることによって調製した。
【0305】
BHI成長培地を、Laboratory of Molecular Epidemiology and Antimicrobial Resistance(Tel Aviv Sourasky Medical Center)から得た。
【0306】
NaNOをRiedel−deHaenから得た(カタログ番号31440)。
【0307】
TWEEN20(カタログ番号8.17072.1000)、AgNO(カタログ番号1.01510.0050)、メントール(カタログ番号1.05995.1000)、グリセロール(カタログ番号1.04093.1000)、Tris(カタログ番号1.08386.1000)および氷酢酸(カタログ番号1.00056.2500)をMerckから得た。
【0308】
組成物:
硝酸銀溶液およびメントール溶液を、10%グリセロール(高浸透圧剤)、メントール(0.5%TWEEN−20)および硝酸銀の最終濃度を50mMのTris緩衝剤溶液に加えることによって調製した。最終組成物は、氷酢酸を使用してpH7.45に滴定し、その後、0.22μmのPESメンブランフィルターでろ過した。このようにして得られた無菌溶液は透明で、沈殿物を有していなかった。
【0309】
一般的プロトコル:
大腸菌成長プロトコル:
大腸菌 ATCC47076の凍結ストックを、培地のOD600nmが1.6〜1.8に達するまで一晩、振とう機インキュベーター(37℃で200rpm)で成長させた(1mlを9mlのLB培地において)。その後、培養培地の1mlのアリコートを50mlの新鮮な無菌LB培地に移し、培地のOD600nmが0.6〜0.8(2×10のコロニー形成単位/ml(CFU/ml))に達するまで2時間、振とう機インキュベーター(37℃で200rpm)に置いた。細菌懸濁物を無菌培地による希釈によって10CFU/mlに調節した。その後、細菌細胞を0.9%のNaNOにより3回洗浄した。NaNO洗浄サイクルを、5mlの細菌懸濁物を15mlの試験管に移し、懸濁物を4℃での5分間の4000rpmにおける遠心分離に供し、その後、上清を除き、細菌細胞ペレットを5mlの0.9%NaNOに再懸濁することによって行った。
【0310】
その後、銀イオン(AgNO由来)およびメントール(0.5%のTWEEN20の添加によって可溶化された)の様々な濃度組合せの殺細菌活性を、5mlの被試験組合せ物を本明細書中下記で記載されるように調製される細菌細胞ペレットに加え、細菌細胞をボルテックスによって再懸濁することによって評価した。0.9%NaNOだけを含有する試験管が対照群として役立った。
【0311】
このようにして得られた細菌懸濁物を、壁への起こり得る細胞吸着を減らすために無菌のガラス管に移し、試験期間を通して37℃で覆われたままにした。5分間の静的温置の後、被試験細菌懸濁物の100μlの試料を取り出し、懸濁物のNaNO(0.9%)における10倍希釈物の10μlをLB寒天平板に滴下した。細菌増殖のレベルを、37℃での18時間の温置の後で平板において成長したコロニーの数を計数し、CFU/mlおよびlog10CFU/mlを計算することによって評価した。特定の組合せと温置された細菌懸濁物について計算されたより大きいlog10CFU/mlは、その組合せの殺細菌活性のレベルがより低いことを示す。
【0312】
他の細菌細胞株の成長プロトコル:
様々な細菌細胞株を、Laboratory of Molecular Epidemiology and Antimicrobial Resistance(Tel Aviv Sourasky Medical Center)の臨床株コレクションから得た。したがって、試験された消毒剤組合せの殺細菌活性を、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性臨床株(MRSA)、表皮ブドウ球菌の臨床株、広域スペクトルのβ−ラクタマーゼを産生する大腸菌の臨床株、多剤耐性アシネトバクター・バウマンニイの臨床株および多剤耐性緑膿菌の臨床株に対して試験した。
【0313】
細菌成長プロトコルは本質的には上記で記載された通りであり、ただし、細菌細胞株をBHI成長培地で成長させ(また、この培地における細胞の成長の後、細菌懸濁物を無菌培地による希釈によって10CFU/mlに調節した)。加えて、これらの実験では、銀イオン+メントールの組合せとのそれぞれの細菌懸濁物の静的温置が、0分間、30分間および60分間であった。
【0314】
相乗作用:
メントールおよび銀イオンが相乗的に作用するかどうかを評価するために、メントールおよび銀イオンが一緒に投与されたときに観測される殺細菌活性を、これらの化合物のそれぞれが単独で投与されるときに観測される殺細菌活性と比較した(これらを、Lehmann、2000、「Synergism in Disinfectant Formulation in、Disinfection,Sterilization,and Preservation」(第5版)(S.S.Block(編者)、Lippincott Williams and Wilkins、459頁〜472頁)にならって求めた)。
【0315】
組合せは、下記のときに相乗作用があると見なされた:
メントールおよび銀イオンの殺細菌活性が、それぞれの化合物が単独で特定の濃度で試験されたときに観測される殺細菌活性の相加値よりも大きかったとき;または
メントールおよび銀イオンの殺細菌活性の特定のレベルが検出されるまでの時間が、それぞれの薬剤が単独で特定の濃度で試験されたときに測定される時間よりも短かったとき。
【0316】
実施例1
大腸菌 ATCC47076に対する、10%(v/v)グリセロールの高浸透圧溶液におけるメントールおよび銀イオンの殺細菌活性の相乗作用
メントールおよび銀イオンの間での殺細菌活性における相乗作用を評価するために、銀イオンおよびメントールの様々な濃度組合せを表1に詳述されるように使用した。
【0317】
結果が表1にまとめられる。結果は、相乗作用が、0.005%(w/v)+0.1%(w/v)、0.005%+0.05%、0.0075%+0.05%、0.01%+0.05%、および、0.01%+0.01%(w/v濃度)の銀イオン(AgNO由来)およびメントールの組合せについてそれぞれ観測されたことを示す(これらは表1における影付き領域に対応する)。これらの濃度は下記の組合せでの銀イオンおよびメントールの組合せに対応する:0.29mM+6.4mM、0.29mM+3.2mM、0.44mM+3.2mM、0.6mM+3.2mM、および、0.6mM+0.64mM。
【0318】
表1の左側部分は、それぞれの組合せによって殺滅された細菌細胞の観測された割合を示し、これに対して、表1の右側部分は、メントールおよび銀イオンの殺細菌活性が、性質において、相乗的ではなく、むしろ相加的であった場合に殺滅される細菌細胞の予想割合を示す。

【0319】
0.01%の銀イオンおよび0.05%のメントールの相乗的組合せをさらなる試験のために選択した。
【0320】
実施例2
様々なタイプの細菌に対する、10%(v/v)グリセロールを含有する高浸透圧溶液における0.01%(w/v)銀イオンおよび0.05%(w/v)メントールの組合せの殺細菌活性
様々なタイプの細菌の成長および生存性に対する、0.01%の銀イオンおよび0.05%のメントール(0.5%(v/v)のTWEEN20によって可溶化される)の組合せの影響を評価した。
【0321】
消毒剤を何ら加えることなく、NaNOの0.9%(w/v)溶液だけと温置された細胞が対照群として役立った。
【0322】
殺細菌活性を、対照群と比較したときのコロニー計数における5log10またはより小さい減少として定義した(これは、Cremieux、Methods of testing Disinfectants, in Disinfection,Sterilization,and Preservation(第5版)(S.S.Block(編者)、Lippincott Williams and Wilkins、1305頁〜1328頁)にならった)。
【0323】
表2は、消毒剤非存在(対照群)、あるいは、0.01%の銀イオン(0.01%のAgNO)単独、0.05%のメントール単独、または、0.01%銀イオンおよび0.05%メントールの組合せのいずれかと、0分間、30分間および60分間温置された異なるタイプの細菌細胞懸濁物について計算されたlog10CFU/mlを示す。基準値レベルを、消毒剤が細菌懸濁物に何ら加えられなかったときの時間0における観測された細菌成長として定義した。
【0324】
結果は、細菌懸濁物が0.01%銀イオンおよび0.05%メントールの組合せと温置されたとき、細菌生存性の完全な根絶を明瞭に明らかにする。効果が(時点0において)直ちに明白であったが、唯一の例外が黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性臨床株の場合であり、そのような場合において、生存性における即座の50%の低下が観測され、その後、すべての細菌が30分後には死滅した。

【0325】
これらの結果は、銀イオンおよびメントールを組み合わせることによって示される相乗的な殺細菌活性を示す。
【0326】
実施例3
0.01%(w/v)銀イオンおよび0.05%(w/v)メントールの組合せの最小阻害濃度(MIC)および最小殺細菌濃度(MBC)の決定
総論:
試験を、チューブ希釈法を使用して、試験細菌に対する試験された銀イオン−メントール組合せの効果的な使用希釈度を求めるために行った。連続希釈物を細菌成長培地で被試験試料から作製した。試験細菌を生成物の希釈物に加え、成長させるために温置した。試験細菌の視認される成長を全く明らかにしなかった被試験試料の希釈物を、生成物の致死性を確認するために平板に置床した。この手順は、抗微生物剤のための標準的な感受性アッセイであり、アメリカ微生物学会(ASM)の方法論の趣旨を取り込んでいる。中和が70%以上で確認された。
【0327】
被試験試料:
使用された被試験試料を、1mlの緩衝化溶液あたり0.1mgの硝酸銀を含有する250mlのストック溶液から採取した。それぞれの被試験試料が下記の成分を含有した:
グリセロール:10%(v/v)
メントール:0.05%(w/v)
TWEEN20:0.5%(v/v)
AgNO:0.01%(w/v)
Tris:50mM
【0328】
試験細菌:
下記の微生物株を本試験では使用した:
大腸菌 ATCC番号8739;表皮ブドウ球菌ATCC番号12228;肺炎桿菌ATCC番号4352;および黄色ブドウ球菌ATCC番号6538
【0329】
試験プロトコル:
採用基準:すべての陽性対照群は標的生物の成長を明らかにしなければならない。すべての培地および陰性対照群は標的生物の成長を明らかにしてはならない。
【0330】
培養調製:ダイズカゼイン消化ブロス(SCDB)のチューブに細菌のストック培養物を接種し、チューブを37±2℃で18時間〜48時間温置した。必要な場合には、培養物濃度を、0.9%硝酸ナトリウム(NaNO)での希釈によって、目に見える濁度を使用しておよそ10コロニー形成単位(CFU)/mlに調節した。試験当日、標準的な平板計数を、0.9%のNaNOでの希釈により、また、開始力価を求めるために中和剤寒天(NUAG)に三連で置床して懸濁物に対して行った。
【0331】
MIC試験手順:本明細書中上記に記載される被試験試料を無菌精製水(PURW)で2倍連続希釈した。次に、5mlの各希釈物を5mlの2X培地に加えた。最終的な試験希釈は1:2から1:4096にまで及んでいた。
【0332】
細菌あたり2つの陽性対照群チューブを、5mlのPURWを5mlの2X培地と混合することによって調製した。試料あたり2つの陰性対照群チューブを、5mlの最低試料希釈物を5mlの2X培地と混合することによって調製した。2つの培地対照群チューブを、5mlのPURWを5mlの2X培地と混合することによって調製した。試験培養物を陰性対照群チューブまたは培地対照群チューブのどちらにも加えなかった。
【0333】
すべての試験試料希釈物チューブおよび陽性対照群チューブに0.05mlの試験細菌を接種した。すべてのチューブを37±2℃で16時間〜20時間温置した。成長に基づいて、それぞれのチューブ希釈物を陽性(+)または陰性(0)のどちらかとしてスコア化した。
【0334】
MBC試験手順:成長を全く明らかにしない希釈物をMBCについて試験した。0.1mlのアリコートを、成長を全く明らかにしないそれぞれのチューブから取り出した。それぞれの希釈物をNUAGに三連で置床した。陰性対照群については、無菌の2X培地をNUAGに置床した。陽性対照群を、100CFU以下の試験細菌をNUAGに置床することによって作製した。試験平板を37±2℃で2日間〜4日間温置した。
【0335】
中和の確認:
試験細菌の成長を阻害した、試験された被試験試料の最低希釈物(MIC)を、2x培地における試験細菌の中和回復について試験した。試験された試料希釈物の0.1mlのアリコートをNUAGに三連で置床した。3つのさらなる平板を力価対照群としてそれぞれの細菌のために調製した。平板には100CFU以下の試験細菌が添加された。平板を37±2℃で2日間〜4日間温置した。力価対照群から得られるカウント数を試験試料のカウント数と比較した。
【0336】
結果:
MICおよびMBCについての結果が表3に示される。
表4は中和結果を示す。
試験は、上記で言及された採用基準を満たしていた。


【0337】
これらの結果は、本明細書中に記載される組成物の万能的な効果的抗微生物活性のためのさらなる裏付けを提供する。
【0338】
実施例4
USP微生物限界の決定
試験を、非無菌試料において好ましくないかもしれないか、または、病原性であると見なされるかもしれない黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、サルモネラsp.および他の関連細菌の存在を求めるために行った。これらの細菌の存在は、類似する病原性細菌の成長を許す環境を示している。
【0339】
試験プロトコル:
採用基準:未処理の平板計数結果は平板あたり30コロニー形成単位〜300コロニー形成単位(CFU)の範囲内でなければらないか、または、推定値として報告されなければならない。アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)および他の類似する細菌は、平板あたりわずかに8CFU〜80CFUにより正確に読み取られ得るだけである。コロニーが見つからないならば、結果が、試料希釈未満として報告される。平板計数は、陰性モニターが、現在の手順で確立されるパラメーターの範囲内であるときに有効である。認定のための陽性対照群は特徴的な成長を明らかにしなければならない。選択的スリーニングのための陰性試験モニターは指標細菌の成長を明らかにしてはならない。
【0340】
試料調製:被試験試料を、本明細書中上記の実施例3に記載されるような試料ストック溶液の10mlを90mlの50mM Tris緩衝液(pH7.45)と一緒にすることによって調製した。その後、この溶液の10mlのアリコートを90mlの流動性カゼイン消化−ダイズレシチン−ポリソルベート20培地(FCDM)およびアクメディア(acumedia)ラクトースブロス(ALBR)に入れた。
【0341】
平板計数:混釈平板技術を使用して、1mlの試料を細菌計数のために三連でダイズカゼイン消化寒天(SCDA)に置床した。同じ手順を、ジャガイモデキストロース寒天(PDXA)を真菌計数のために三連で使用して行った。SCDA平板を30℃〜35℃で48時間〜72時間温置し、一方、PDXA平板を20℃〜25℃で5日間〜7日間温置した。
【0342】
試料増菌:試料を黄色ブドウ球菌および緑膿菌のスクリーニングのためにFCDMで希釈し、サルモネラおよび大腸菌のスクリーニングのためにALBRで希釈した。
【0343】
増菌ブロスは、30℃〜35℃で24時間〜48時間温置することが可能であった。
【0344】
微生物スクリーニング:増菌温置の後、ブロスを下記のように温置のための適切な培地に移したか、または画線培養に供した:
サルモネラ:亜セレン酸塩−シスチンブロスおよびテトラチオン酸塩ブロス−30℃〜35℃で12時間〜24時間;ブリリアントグリーン寒天、亜硫酸ビスマス寒天およびXLD寒天−30℃〜35℃で24時間〜48時間;
P.aeruginosa:セトリミド寒天−30℃〜35℃で24時間〜48時間;
S.aureus:マンニトール塩寒天−30℃〜35℃で24時間〜48時間;
大腸菌:MacConkey寒天−30℃〜35℃で24時間〜48時間;
疑わしいコロニーはどれも、生化学試験を使用して確認した。
【0345】
認定:
認定試験を下記のようにこの試料タイプの最初の試験で行った:
4つの試験細菌の24時間ブロス培養物を30℃〜35℃で成長させ、1:1000で希釈した。接種のために使用された細菌アリコートは試料調製物の1%以下であった。接種物をブロスにおける試料の希釈の1時間以内に加えた。スクリーニング手順を続けた。4つすべての試験細菌が回復しなければならない。これにより、試料の中和が明らかにされる。
【0346】
結果:
被試験溶液は1:10の希釈で認定に合格した。好気性微生物総数と、カビおよび酵母の合計数との両方について観測された値が、「非検出」を示す10未満であった。
したがって、常法的分析を1:10の試料希釈で行った。
病原性スクリーニングにおいて、結果は、すべての被試験細菌が好気性総数および真菌総数に存在しなかったことを示した。平板計数結果は細菌回復または真菌回復のためには認定されない。
試験は採用基準を満たしていた。
【0347】
実施例5
抗微生物剤感受性試験
試験を、銀イオンおよびメントールを含有する試験試料を抗微生物活性についてスクリーニングするために行った。チャレンジ細菌が黄色ブドウ球菌ATCC番号6538および大腸菌ATCC番号8739であった。試験手順は、抗生物質感受性試験のためのディスク拡散(Kirby−Bauer)法の改変法であった。
【0348】
試験プロトコル:
培養調製:Mueller−Hintonブロスにストック培養物からのS.aureusおよび大腸菌を接種し、30℃〜35℃で18時間〜24時間温置した。試験細菌を、0.5のMcFatland標準に等しい細胞密度を達成するために生理学的食塩水を使用して標準化した。接種物を標準化後15分以内に使用した。
【0349】
被試験試料:
使用された被試験試料を、1mlの緩衝化溶液あたり0.1mgの硝酸銀を含有する250mlのストック溶液から採取した。それぞれの被試験試料が下記の成分を含有した:
グリセロール:10%(v/v)
メントール:0.05%(w/v)
TWEEN20:0.5%(v/v)
AgNO:0.01%(w/v)
Tris:50mM
【0350】
試験性能:無菌の綿棒を標準化された接種物に浸け、数回回し、液面上方のチューブの内壁に強く押し付けて、過剰な接種物を綿棒から除いた。綿棒をMueller−Hinton寒天平板の表面全体に3回画線し(平板を毎回およそ60°回転させ)、その後、最後の掃引を寒天の縁付近で行った。ふたを長くても15分間寒天から離して、何らかの過剰な表面水分を吸収させた。無菌のディスクを、1対の無菌鉗子を使用して寒天平板に置いた。1つのディスクをそれぞれの平板の中心に置き、強く押し付け、その結果、試料が所定位置に留まり、寒天表面と一様に接触するようにした。それぞれのディスクに、およそ0.1mlの被試験試料を接種した。陰性対照群については、ディスクに、それぞれの無菌の精製水を接種した。
【0351】
平板を30℃〜35℃でおよそ24時間温置した。その後、試料を新しく調製された平板に移し、およそ24時間温置した。この手順を、平板が阻害領域を示さなくなるまで繰り返した。(阻害領域が存在した場合)阻害領域の直径を、0.01mmに対して感度を有する校正されたカリパスを使用して測定した。試料の直径を含めて、阻害領域全域を測定した。
【0352】
結果:
結果が表5に示され、被試験試料に対する細菌の感受性を明らかにする。

【0353】
実施例6
銀イオンおよびメントールを含有する溶液の殺真菌/静真菌活性と、市販のB.Braun社のPRONTOSANの殺真菌/静真菌活性との比較試験
本明細書中に記載される組成物(本明細書中上記の実施例5に記載される被試験試料)の抗真菌活性を試験し、市販されている製造物のPRONTOSAN(登録商標)(B.Braunによる製造物)、MICROCYN(登録商標)(Occulusによる製造物)およびANASEPT(登録商標)(Anacapaによる製造物)の抗真菌活性と比較した。
【0354】
殺真菌活性のインビトロスクリーニングおよび比較試験:
ELISAプレートウエルにおけるSDB寒天(100μl)に被試験株を接種し、30℃での24時間の温置による最初の成長に供した。
【0355】
被試験物質の水溶液の100μl(本明細書中に記載されるような、銀イオンおよびメントールを含有する溶液、あるいは、PRONTOSAN(登録商標)、MICROCYN(登録商標)またはANASEPT(登録商標)の溶液、あるいは、(対照群としての)0.9%生理的食塩水の溶液のどれか)を一度に加え、平板を30℃で30分間温置温置し、溶液を捨て、その後、100μlのSDB成長培地を加え、平板を30℃で30分間温置し、その後、培地を捨てた。その後、平板を30℃で24日間温置し、毎日、試験および写真撮影を行った。
【0356】
図1は、被試験溶液に30分間曝露し、続いて洗浄した後での24日間の温置の後における真菌培養物の出現を大まかに例示する画像である:未成長(殺真菌効果、「F」として示される)、最小限の不良な成長(阻害効果、「IN」として示される)、または、完全な成長(効果なし、「NE」として示される)のどれかが存在する。
【0357】
図2〜図4は、被試験溶液のそれぞれに30分間曝露し、続いて洗浄した後での、3日間、8日間、11日間および16日間の温置の後におけるさらされた真菌培養物の出現を例示する画像を示す。被試験溶液には、下記が含まれた:本明細書中上記の実施例5に記載されるような、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(「S」として示される)、PRONTOSAN(登録商標)(「P」として示される)、銀イオンおよびメントールを含有する組成物(S)と、PRONTOSAN(登録商標)(P)とに対する交互の連続する曝露(「S+P」および「P+S」として示される)、MICROCYN(登録商標)(「M」として示される)、ならびに、ANACEPT(登録商標)(「A」として示される)、そして、それらの希釈物(1:2、1:4、1:8)。試験された真菌株が、トリコフィトン・ルブルムの臨床株(図2)、トリコフィトン・ルブルムNCPF118市販株(図3)、および、ミクロスポルム・カニスの臨床株(図4)であった。
【0358】
図2〜図4に示されるデータは、本発明の実施形態による、銀イオンおよびメントールを含有する組成物によるただ1回だけの処理の殺真菌効果を明瞭に明らかにする。銀イオン−メントールの組成物は、PRONTOSAN(登録商標)の活性と類似する活性を示し、1:2〜1:4の希釈でもまた活性であり、次亜塩素酸塩含有剤のMICROCYN(登録商標)およびANACEPT(登録商標)よりも優れていた。さらに、銀イオン−メントールの組成物およびPRONTOSAN(登録商標)の連続する処理は、実質的に改善された抗真菌活性をもたらしたことが明瞭に明らかにされた。この場合、最初に銀イオン−メントールの組成物、次いでPRONTOSAN(登録商標)の順が明らかに優れており、そのような組合せでは、著しく大きい抗真菌効力が、トリコフィトン・ルブルムの臨床株に対して1:8の希釈でさえ明らかにされた(図2を参照のこと)。
【0359】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0360】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントールと、銀イオンの供給源とを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容される担体を含む消毒剤組成物であって、組成物における前記銀イオンの濃度が6mM未満である消毒剤組成物。
【請求項2】
前記メントールおよび前記銀イオンは相乗作用で作用する、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項3】
前記メントールの濃度が0.3mMから32mMの範囲である、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項4】
前記メントールの濃度が0.6mMから6.4mMの範囲である、請求項3に記載の消毒剤組成物。
【請求項5】
前記銀イオンの濃度が0.05mMから6mMの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項6】
前記銀イオンの濃度が0.25mMから0.6mMの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項7】
前記銀イオンの濃度が0.25mMから0.6mMの範囲であり、かつ、前記メントールの濃度が0.6mMから6.4mMの範囲である、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項8】
前記銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、前記メントールの濃度が6.4mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項9】
前記銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、前記メントールの濃度が3.2mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項10】
前記銀イオンの濃度が0.29mMであり、かつ、前記メントールの濃度が0.64mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項11】
前記銀イオンの濃度が0.44mMであり、かつ、前記メントールの濃度が3.2mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項12】
前記銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、前記メントールの濃度が3.2mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項13】
前記銀イオンの濃度が0.6mMであり、かつ、前記メントールの濃度が0.64mMである、請求項1に記載の消毒剤組成物。
【請求項14】
前記銀イオンの供給源が、硝酸銀、スルファジアジン銀、アミノアルコール−銀イオン錯体、アミノ酸−銀イオン錯体およびポリマー−銀イオン錯体からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項15】
前記ポリマー−銀イオン錯体はポリビニルピロリドン(PVP)−銀イオン錯体である、請求項14に記載の消毒剤組成物。
【請求項16】
高浸透圧剤をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項17】
前記高浸透圧剤が、グリセロール、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、多糖、マンニトール、塩化アンモニウム、硫酸マグネシウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の消毒剤組成物。
【請求項18】
前記高浸透圧剤はグリセロールである、請求項16に記載の消毒剤組成物。
【請求項19】
前記グリセロールの濃度が、前記消毒剤組成物の総体積に基づいて3%(v/v)から15%(v/v)の範囲である、請求項18に記載の消毒剤組成物。
【請求項20】
前記グリセロールの濃度が、前記消毒剤組成物の総体積に基づいて10%(v/v)である、請求項18に記載の消毒剤組成物。
【請求項21】
前記高浸透圧剤はポリエチレングリコール(PEG)である、請求項16に記載の消毒剤組成物。
【請求項22】
前記PEGの濃度が、前記消毒剤組成物の総体積に基づいて8%(v/v)から16%(v/v)の範囲である、請求項21に記載の消毒剤組成物。
【請求項23】
可溶化剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項24】
前記可溶化剤はTWEEN20である、請求項23に記載の消毒剤組成物。
【請求項25】
前記医薬的に許容される担体は水溶液である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項26】
局所用投薬形態物として配合される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の消毒剤組成物。
【請求項27】
前記局所用投薬形態物が、クリーム、スプレー剤、ガーゼ、ワイプ、スポンジ、不織布、綿織物、フォーム、溶液、ローション、軟膏、ペーストおよびゲルからなる群から選択される、請求項26に記載の消毒剤組成物。
【請求項28】
包装材と、前記包装材に包装されている請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物とを含む消毒キット。
【請求項29】
表面を殺菌することにおける使用のために前記包装材の中または表面において印刷により特定される、請求項28に記載の消毒キット。
【請求項30】
前記表面は身体表面である、請求項29に記載の消毒キット。
【請求項31】
創傷の処置における使用のために前記包装材の中または表面において印刷により特定される、請求項28に記載の消毒キット。
【請求項32】
前記創傷が、急性創傷、慢性創傷、熱傷および手術創からなる群から選択される、請求項31に記載の消毒キット。
【請求項33】
前記慢性創傷が、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍および圧迫潰瘍からなる群から選択される、請求項32に記載の消毒キット。
【請求項34】
表面を殺菌する方法であって、効果的な量の請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物を表面に適用し、それにより、表面を殺菌することを含む方法。
【請求項35】
前記表面は身体表面であり、方法は、その必要性のある被験者の前記身体表面を殺菌するためのものである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記消毒剤組成物を前記身体表面に局所適用することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記身体表面は皮膚組織である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記身体表面における感染症を処置するためのものである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記感染症が、細菌、酵母および真菌からなる群から選択される病原性微生物によって引き起こされる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
創傷をその必要性のある被験者において処置する方法であって、効果的な量の請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物を創傷領域に適用し、それにより、創傷を処置することを含む方法。
【請求項41】
前記創傷が、急性創傷、慢性創傷、熱傷および手術創からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記慢性創傷が、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍および圧迫潰瘍からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記消毒剤組成物を前記創傷領域に局所適用することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記消毒剤組成物を局所適用することが、消毒剤組成物の流れを、前記創傷領域を覆って前記創傷領域の隅々に流すことによって行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
表面を殺菌するための製造物の製造における、請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物の使用。
【請求項46】
前記製造物は、身体表面を殺菌するための医薬品である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記医薬品は、前記身体表面における感染症を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記感染症が、細菌、酵母および真菌からなる群から選択される病原性微生物によって引き起こされる、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
創傷を処置するための医薬品の製造における、請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物の使用。
【請求項50】
前記創傷が、急性創傷、慢性創傷、熱傷および手術創からなる群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の消毒剤組成物を調製するプロセスであって、前記銀イオンの供給源、前記メントールおよび前記医薬的に許容される担体を混合し、それにより、消毒剤組成物を得ることを含むプロセス。
【請求項52】
高浸透圧剤を組成物と混合することをさらに含む、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
可溶化剤を組成物と混合することをさらに含む、請求項51に記載のプロセス。
【請求項54】
前記可溶化剤が、メントールを前記銀イオンの供給源および前記担体と混合する前にメントールと混合される、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
前記可溶化剤はTWEEN20である、請求項53に記載のプロセス。
【請求項56】
銀イオンを含む消毒剤組成物における銀イオンの濃度を低下させる方法であって、相乗作用有効量のメントールを銀イオンの供給源と混合し、それにより、消毒剤組成物における銀イオンの濃度を低下させることを含む方法。
【請求項57】
銀イオンの濃度が少なくとも1/2に低下させられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
銀イオンの濃度が少なくとも1/10に低下させられる、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
銀イオンの供給源を6mM未満の濃度で含む消毒剤組成物の消毒作用活性を増大させる方法であって、相乗作用有効量のメントールを消毒剤組成物と混合することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517420(P2012−517420A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548847(P2011−548847)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000128
【国際公開番号】WO2010/092578
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【Fターム(参考)】