説明

銀ナノ粒子およびナノワイヤのグリセリンに基づく合成

本発明は、ポリオール若しくはポリマーに複合された貴金属ナノ粒子およびナノワイヤの組成物および製造方法を包含する。本発明は、細菌、ウイルスおよび真菌に対する銀ナノ粒子の殺生物特性を利用するための身体保護製品のような広範な製品への貴金属ナノ粒子の組み込みを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般として抗ウイルス薬の分野に、ならびにより具体的にはウイルス感染および/若しくは伝播を低下若しくは排除するための銀ナノ粒子を含む組成物、それらを用いる方法およびウイルス粒子の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を制限することなく、その背景をナノ粒子に関して記述する。一次元のナノ構造をした物質としてのナノワイヤは、ナノスケールの寸法をもつ電子、光電子およびセンサー装置の製造における構成要素としての使用に対するそれらの大きな潜在能力のおかげで集中的研究の焦点となった。ナノワイヤの最も一般的な応用は、電磁式記憶およびエネルギー蓄積装置であることが期待されている。
【0003】
銀(Ag)は、その高い電導性および熱伝導率、ならびに大きさおよび形状に依存するその独特の光学特性により、多くの重要な応用を有する。従って、銀ナノワイヤの研究は大きな関心につながった。
【0004】
グリセリンもまた多くの身体保護製品で使用されている。特許文献1は、身体保護製品が、浄化、保護、治療、化粧若しくは緩和の利益を提供するためにヒトおよび/若しくは動物の皮膚若しくは粘膜との接触にもたらされる製品であると教示する。これらの製品は、おむつ、失禁用物品、月経用の考案品、トレーニングパンツ、パンティーライナーなど;若しくは乳液、ローション、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、パウダー、懸濁液、ゲル、石鹸などのような皮膚保護組成物のような皮膚と接触する表面でもまた見出し得る。
【特許文献1】米国特許第6,720,006号
【発明の開示】
【0005】
[発明の要約]
AIDS伝播の増大する脅威に応答して、性交中のコンドームの使用がAIDSウイルスの伝播を予防する手段として提案されている。コンドームの不適正使用、若しくは性交中のそれらの穿孔はそれらを部分的にのみ有効にする。従って、性交中および感染患者での外科的処置中のヒトでのAIDSウイルスの伝播のより良好な阻害方法に対する火急の必要性が存在する。本発明は、ウイルス感染の処置および予防における使用のための抗ウイルス組成物を作成および使用するための組成物および方法を提供する。
【0006】
本発明は、銀ナノ粒子の組成物、作成方法および使用方法を包含する。より具体的には、それは、ナノ構造の還元剤および溶媒の双方としてグリセリンを使用する銀ナノ粒子(大きさ1と100nmの間の粒子)ならびにナノワイヤ(数百ナノメートルまでの長さを伴う1と100nmの間の直径をもつ一次元構造)の合成を包含する。しかしながら、この技術は、限定されるものでないが金、白金、パラジウム、銅、鉄およびこれらの金属より構成される合金のナノ粒子およびナノワイヤまで拡大されうる。それはまた、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムなどのような金属酸化物のナノ粒子およびナノワイヤにも拡大し得る。該方法はまたメゾスコピック範囲、具体的には100から500nmまでの粒子の製造にも拡大し得ることに言及することが重要である。数種のキャッピング剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)を使用し得る。
【0007】
現在の一問題は、現在の抗生物質に対し細菌により発生される耐性である。加えて、HIV、C型肝炎(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)などのようなウイルスに
よる疾患を予防若しくはそれらと闘うための100%効率的な処置およびワクチンは存在しない。広範な微生物に対するその強い毒性により、銀は細菌および真菌に対し使用されている。抗生物質のような現在の製品の代用で殺生物剤として使用するため銀ナノ粒子を改良および開発するためにナノテクノロジーを使用することの可能性が存在する。事実、多様な形態の銀ナノ粒子の特性は、MT2細胞に対する毒性濃度より下の濃度でHIVを不活性化することが可能であることが本明細書に開示される。
【0008】
バルク物質が表す化学および物理特性は、該物質がナノメートル範囲にある場合に劇的に変化する。この理由から、物理的、生物学的、生物医学的および製薬学的応用で使用し得るナノ物質の開発に増大する懇願が存在する。
【0009】
グリセリンはナノ粒子および/若しくはナノワイヤの溶媒であるという事実は、果実の保存、油圧ジャッキ中の凍結の予防、金型の潤滑、数種の印刷インク、ケーキおよびキャンディーの製造、ならびに抗菌剤としてのような、グリセリンのほぼいかなる現在の商業的応用でもこれらの構造が使用されることを可能にする。現在の技術は、銀ナノ粒子の殺生物特性をグリセリンの融通の利く特性と身体保護製品中で組み合わせることの可能性を提供する。しかしながら本発明は身体保護製品に制限されない。グリセリンは水と混合可能であり、従って塗料、プラスチックおよび他の混成材料のような他の応用を実施し得る。
【0010】
本発明は、ポリオール法により合成される銀ナノワイヤの合成および特徴付けを包含する。一代替方法において、エチレングリコール(EG)を還元剤および溶媒の双方として使用しうる。ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)は構造指向剤すなわちキャッピング剤の役割を演じる。ナノワイヤはまた、EGの代わりにグリセリン(G)、およびPVPを置き換えるポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDAM)を使用する改変ポリオール法によっても合成した。
【0011】
[発明の詳細な記述]
本発明の多様な態様の作成および使用を下に詳細に論考する一方、本発明は広範な特定の情況で例示し得る多くの応用可能な発明の概念を提供することが認識されるべきである。本明細書で論考される特定の態様は、単に、本発明の特定の作成および使用方法の具体的説明であり、そして本発明の範囲を定めない。
【0012】
本発明の理解を容易にするため、多数の用語を下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明の関する分野の当業者により一般に理解されるところの意味を有する。「a」、「an」(ある)および「the」(該)のような用語は、単数の実体のみを指すことを意図しておらず、しかしその特定の一例を具体的説明に使用しうる一般的分類を包含する。本明細書の専門用語は本発明の特定の態様を記述するため使用されるが、しかし、それらの使用は、請求の範囲で概説されるとおりを除き、本発明の範囲を定めない。
【0013】
本明細書で使用されるところの「抗ウイルス薬」および「抗ウイルス組成物」は、ある量の、ウイルスの複製および蔓延を抑制し、ウイルス付着を予防し、宿主細胞内でのウイルス複製を予防し、かつ/またはウイルス感染により引き起こされる症状を改善若しくは緩和する、ポリオール若しくはポリマーで処理した抗ウイルスタンパク質会合貴金属ナノ粒子を指す。本発明の一例は、グリセロール処理した銀ナノ粒子、ナノロッド若しくはナノチューブである。有効な治療の基準は、より低いウイルス負荷量、より低い死亡率、および/若しくはより低い罹患率などを包含する。
【0014】
本明細書で使用されるところの「誘導体」は、ポリオール処理した貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤのいかなる誘導体およびそれらの組合せも指す。タンパク質会合貴金属ナ
ノ粒子の制限しない例は、共有若しくは非共有結合を介して1種若しくはそれ以上のタンパク質と会合するナノ粒子を包含し、そして、タンパク質の組合せ、およびなお二若しくは三次元の二、三、四、多量体、オリゴマー、ポリマーなどへのタンパク質−ナノ粒子−タンパク質のコンカテマーを包含しうる。
【0015】
本明細書で使用されるところの「送達すること」は、ナノ粒子により生成されるいかなる熱も該位置に転移されるような位置に付着した、その隣の、若しくはそれに十分近接のナノ粒子の配置を遂げることと定義される位置若しくは標的に、ポリオール処理した貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤを接触させることを指す。「送達すること」は、「標的を定められる」という用語が本明細書で使用されるとおり、標的を定められても若しくは定められなくてもよい。
【0016】
本明細書で使用されるところの「ナノメートル」は10−9メートルであり、そしてその略語「nm」と互換性に使用する。
【0017】
本明細書で使用されるところの「ナノ粒子」は、いかなる大きさ、形状若しくは形態も有する1から5000ナノメートルまでの寸法を有する貴金属粒子と定義されるを指す。本発明での使用のため、ナノ粒子は金コロイド若しくは銀のような貴金属であり、そして例えばナノスフェア、ナノチューブ、ナノロッド、ナノコーンなどでありうる。
【0018】
本明細書で使用されるところの「ナノ粒子」は1種若しくはそれ以上のナノ粒子を指す。本明細書で使用されるところの「ナノシェル」は1種若しくはそれ以上のナノシェルを意味している。本明細書で使用されるところの「シェル」は1種若しくはそれ以上のシェルを意味している。
【0019】
本明細書で使用されるところの「組織以外の」は、ヒト若しくは動物組織でないいずれかの物質と定義する。本明細書で使用されるところの「標的を定められる」という用語は、化学種の結合を特定の部位に向けるためのタンパク質−タンパク質結合、タンパク質−リガンド結合、タンパク質−受容体結合、ならびに他の化学的および/若しくは生化学的結合相互作用の使用を指す。
【0020】
本明細書で使用されるところの「ポリオール」という用語は、2個若しくはそれ以上のヒドロキシル基を含有する化合物、ポリマー若しくはオリゴマーを指す。さらに、ポリオールはカルボン酸から供給される1個若しくはそれ以上のヒドロキシル基を有しうる。本発明のポリオールは、脂肪族、芳香族、ヘテロ脂肪族、飽和脂肪環、飽和ヘテロ脂肪環、芳香族、ヘテロ芳香族若しくはポリマーでありうる。ポリオールのヒドロキシル基は、末端基に配置されても若しくはバックボーン鎖から張り出している基であってもよい。ポリオールの分子は、一般に、応用、および例えばポリオール部分が単量体、二量体、三量体、オリゴマー、ポリマーであるか、直鎖状、分枝状および/若しくは芳香族であるかどうかに依存して変動し得る。ポリオールの一般的な例は、グリセリン、グリコール、ポリグリコールおよびポリグリセロール、ポリエーテルならびにポリエステルを包含する。ポリオールは、本明細書に記述される貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤへのこうした部分の結合を指す。
【0021】
非ポリマー性ポリオールの代表的例は、アルキレングリコール(例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール
、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−、1,5−および1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、ビシクロオクタンジオール、1,10−デカンジオール、トリシクロデカンジオール、ノルボルナンジオール、ならびに1,18−ジヒドロキシオクタデカン);ポリヒドロキシアルカン(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリトリオール、キニトール、マンニトールおよびソルビトール);ならびに他のポリヒドロキシ化合物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,11−(3,6−ジオキサウンデカン)ジオール、1,14−(3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン)ジオール、1,8−(3,6−ジオキサ−2,5,8−トリメチルオクタン)ジオール、1,14−(5,10−ジオキサテトラデカン)ジオール、ヒマシ油、2−ブチン−1,4−ジオール、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ベンズアミド、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルスルホン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチオキシ)ベンゼン、1,2−、1,3−および1,4−レゾルシノール、1,6−、2,6−、2,5−および2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−および4,4’−ビフェノール、1,8−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、3,6−ジヒドロキシピリダジン、ビスフェノールA、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールC)、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ならびに他の脂肪族、ヘテロ脂肪族、飽和脂肪環、芳香族、飽和ヘテロ脂肪環、およびヘテロ芳香族ポリオール、それらの組合せ若しくは混合物を包含する。
【0022】
ポリマー性ポリオールの代表的例は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびエチレンオキシド終端ポリプロピレングリコールおよびトリオール;ポリテトラメチレングリコール;ポリジアルキルシロキサンジオール;ヒドロキシ終端ポリエステルおよびヒドロキシ終端ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンポリオール);ヒドロキシ終端ポリアルカジエン(例えばヒドロキシル終端ポリブタジエン);などを包含する。加えて、ポリマー性ポリオールの混合物を所望の場合は使用し得る。
【0023】
特定のポリオールは、1,2−エタンジオール;1,2−および1,3−プロパンジオール;1,3−および1,4−ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,2−、1,5−および1,6−ヘキサンジオール;ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,8−オクタンジオール;1,10−デカンジオール;ジ(エチレングリコール);トリ(エチレングリコール);テトラ(エチレングリコール);ジ(プロピレングリコール);ジ(イソプロピレングリコール);トリ(プロピレングリコール);ポリオキシエチレンジオール;ポリオキシプロピレンジオール;ポリカプロラクトンジオール;レゾルシノール;ヒドロキノン;1,6−、2,5−、2,6−および2,7−ジヒドロキシナフタレン;4,4’−ビフェノール;ビスフェノールA;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;および類似のもの;ならびにそれらの混合物を包含する。1,2−エタンジオール;1,2−および1,3−プロパンジオール;ネオペンチルグリコール;1,2−および1,6−ヘキサンジオール;ジ(エチレングリコール);ポリ[ジ(エチレングリコール)フタレート]ジオール;ポリ(エチレングリコール)ジオール;ポリジメチルシロキサンジオール;ポリプロピレングリコール;ダイマージオール;ポリカプロラクトンジオール;ビスフェノールA;レゾルシノール;ヒドロキノン;ならびにそれらの混合物がより好ましい。
【0024】
本明細書で使用されるところの「ウイルス感染」は標的細胞のウイルス侵襲を指す。ウイルスが健康な細胞に進入する場合、それはそれ自身を複製するために宿主の複製機構を利用し、最終的に該細胞を死滅させる。ウイルスが複製する際に、新たに産生されたウイルス子孫が他細胞、しばしば隣接細胞を感染させる。数種のウイルス遺伝子はまた宿主の染色体DNA中にも組込み、プロウイルスを介する潜伏感染を引き起こし得る。プロウイルスは宿主染色体の複製とともにそれ自身を複製し、そして、身体の内側および外側の多様な因子により活性化される場合にすぐに、感染した人々を病的状態にもたらし得る。
【0025】
本明細書で使用されるところの「相乗効果」は、ウイルス感染を治癒若しくは予防するための2種若しくはそれ以上の治療薬のいずれかを単に使用することの相加作用より有効である、共同のタンパク質会合ポリオール処理貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ薬物の投与を指す。相乗効果は、いかなる単一の医薬品に対するウイルス耐性も回避若しくは緩和するように、抗ウイルス薬およびタンパク質会合貴金属ナノ粒子の有効性を増大させ得る。
【0026】
本明細書で使用されるところの「治療薬」は、単独であろうと若しくは送達系の化合物であろうと、液体、固体、ゲル様、乾燥、凍結、再懸濁などであろうと、タンパク質会合貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤを指す。該タンパク質会合貴金属ナノ粒子薬物すなわち有効成分は、本明細書に教示されるとおり、ウイルス感染若しくはウイルスが引き起こす疾患の処置に対し伝導性である。
【0027】
本発明のタンパク質会合貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ抗ウイルス薬は、単独で、または、限定されるものでないがサイトカインrIFNα、rIFNβおよびrIFNγ;AZT、3TC、ddI、ddC、ネビラピン、アテビルジン、デラビルジン、PMEA、PMPA、ロビリドおよび他のジデオキシリボヌクレオシド若しくはフルオロジデオキシリボヌクレオシドのような逆転写酵素阻害剤;サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビルおよびVX−478のようなウイルスプロテアーゼ阻害剤;ヒドロキシ尿素;ウイルスリボビリンのようなウイルスmRNAキャッピング阻害剤;アムホテリシンB;抗HIV活性をもつエステル結合の結合分子カスタノスペルミン;糖タンパク質プロセシング阻害剤;グリコシダーゼ阻害剤SC−48334およびMDL−28574;ウイルス吸収体;CD4受容体阻害剤;ケモカイン補助受容体阻害剤;中和抗体;組込み酵素阻害剤、ならびに他の融合阻害剤のような抗ウイルス薬を挙げることができる剤と組合せで使用してもよい。
【0028】
本明細書に記述される抗ウイルスタンパク質−ナノ粒子は、広範なウイルス(HIVを包含する)感染の処置のための改良された抗ウイルス治療の方法およびキットの一部として使用しうる。加えて、本発明は、一般に単独で若しくは薬理学的に許容できる担体内の組合せで提供される併用療法、その誘導体、第二の有効成分または栄養補助食品(nutraceutical)すなわち栄養補助食品(dietary supplement)の使用を包含する、治療効果を高めることを目的とした共同薬物投与方法を提供する。併用療法の一利点は、それが各治療単独に対するその忍容性を増大させるウイルス適応若しくは突然変異を排除しうることである。併用療法の別の利点は、薬物の毒性を低下させかつ治療指数を高めるように薬物をより低用量で提供しうることである。
【0029】
大きさの制限が物質の物理特性に劇的な変化を生じることが既知である。最も公知の影響の1つは、一般に表面プラスモン共鳴効果として知られる、貴金属ナノ粒子の大きさに伴う光学特性の変化である。貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤは、表面プラスモンにより色の変化すなわち光散乱を生じる。遷移金属の場合、超高密度磁気記録装置の検索がナノ粒子の研究を促進した。有限の大きさはナノ粒子の構造および磁気秩序に影響を有し得
る。
【0030】
大きさの制限が物質の物理特性に劇的な変化を生じることが既知である。これは数年間のナノテクノロジーの研究の主題であった。おそらく、最も公知の影響の1つは、貴金属ナノ粒子およびナノワイヤの大きさに伴う光学特性の変化である。貴金属ナノ粒子およびナノワイヤは、表面プラスモンにより色の劇的な変化すなわち光散乱を生じる。遷移金属の場合、超高密度磁気記録装置の検索がナノ粒子およびナノワイヤの研究を促進した。有限の大きさはナノ粒子およびナノワイヤの構造および磁気秩序に影響を有し得る。本発明は、単独で、または銀ナノ粒子が均一に分散される媒体若しくは担体中で使用し得、かつ、人体に非常にやさしくかつ広範な毒性微生物(細菌、ウイルスおよび真菌)に対する銀ナノ粒子の殺生物特性を利用するために多様な身体保護製品に迅速に組み込み得ることが見出された。
【0031】
本発明の重要な一特徴は、銀ナノ粒子の製造における溶媒および還元剤双方としてのグリセリンの使用である。グリセリンおよび同等な化合物を溶媒および還元剤として使用することは、貴金属ナノ粒子およびナノワイヤ、例えば銀ナノ粒子が、多くの応用で広範囲に使用される溶媒中に良好に分散されることを可能にし、従って銀ナノ粒子の殺生物特性をそれらの製品の多くで利用し得る。金属および金属酸化物のナノ粒子およびナノワイヤの合成についての文献で見出される十分に確立された方法はポリオール法として既知である。この技術ではエチレングリコールを還元剤および溶媒の双方として使用する。提案される技術の主な差違は、よりやさしくかつより少なく毒性の化合物であるグリセリン(プロピレングリコール)によるエチレングリコールの置き換えである。双方の化合物の物理特性は異なり、従って最終製品の一般的挙動は異なることができる。
【0032】
別の新たな寄与は、ポリオール法ではポリビニルピロリドン(PVP)のみをキャッピング剤として使用しているという事実である。塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDDAM)のような他の化合物を、系の特徴を大きく改変することなくキャッピング剤として使用し得ることが本明細書で示される。他のキャッピング剤を使用しうるという観察結果は、キャッピング剤として使用される化合物の型を拡大する可能性を開き、従ってより特殊な特性が生じうる。
【0033】
ナノワイヤの合成。本研究に使用される設定は、油浴中で加熱される凝縮器装置を伴う三頚フラスコを包含した。0.375M PVP若しくはPDDAMのEG若しくはG溶液5mlを含む10mlのエチレングリコ(EG)若しくはグリセリン(G)を160℃で2時間還流し、その後0.25M硝酸銀のEG若しくはG溶液5mlを、少なくとも5分で一滴ずつ添加した。溶液の色が試験中に大きく変化する。硝酸銀の最初の一滴を添加する場合に、混合物は即座に黄色になる。添加を継続すると溶液は徐々に不透明になる。全部の硝酸銀溶液を添加した後、溶液は約15分で灰色を伴い濁り、Agナノワイヤの出現を示し;反応を160℃で30分間継続した。反応が終了する場合に、ナノワイヤからナノ粒子および他の不純物を除去するために遠心分離が必要とされる。灰色沈殿物が留まり、そしてさらなる精製を必要としなかった。
【0034】
ナノワイヤの初期特徴付け。サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)およびX線回折(XRD)により特徴付けした。該反応からの生成物は常にナノ粒子およびナノワイヤの組合せである。PVPとPDDAMの間の興味深い差違は、後者の使用により生成したナノ粒子が電子ビームにより生じられる照射に対し非常に感受性であることである。PVPを使用する場合、ナノ粒子は多面体および立方体の形状を有する一方、PDDAMの場合には立方体のみが形成される。ナノワイヤの場合、それらは5回対称性を有する。それらは約70nmの平均径および数ミクロンまでの長さを有する。ナノワイヤのアスペクト比および産出速度を、反応条件を改変して若干の程度まで制御し得ることに言及することが重要である。2種の典型的なサンプルのX線回折は、PVPをEG若しくはGいずれかとともに使用する場合に純粋な銀化合物のみが合成される(ナノ粒子およびナノワイヤ)ことを示した。PDDAMの場合(図2b)は、2種の異なる相、すなわち銀および塩化銀が存在する。これは、キャッピング剤としてPDDAMを使用して形成されるナノ粒子が電子ビームに対し非常に感受性である一方、ナノワイヤは無傷のまま留まるという事実と矛盾しない。さらなるTEM分析をPDDAM系について実施することができ、ナノ粒子は主としてAgClでありかつナノワイヤはAgのみである。
【0035】
TEM分析は、全部の場合(EG若しくはGおよびPVP若しくはPDDAM)について、得られたナノワイヤが同一の構造を有し、単結晶であり、かつ、双晶境界、転位および積層欠陥のような数種の欠陥を有することを示した。多様なサンプルでのEDS分析は、それらがAgのみから構成されかつキャッピング剤(PVP若しくはPDDAM)の非常に薄い無定形層を有することを示した。成長の機構およびそれに対し該欠陥が演じる役割を完全に理解するためのさらなる分析が進行中である。しかしながら、これらの型のナノワイヤはバルク物質から強く逸脱する機械的特性を有するであろうことが期待される。
【0036】
これらの結果は、ポリオール法が銀ナノワイヤを合成するための非常に信頼できる経路であることを確認する。報告された方法に対しいくつかの改変を行うことができ、そして銀ナノワイヤをなお合成し得ることもまた本明細書で示される。事実、本発明は、これまでナノ粒子とともに使用されていない新たな溶媒およびキャッピング剤の使用を示す。
【0037】
主な結論のいくつかは、後に続くとおり要約しうる:
a)PVPおよびエチレングリコール双方はPDDAMおよびグリセリンにより置き換えることができ、そして銀ナノワイヤがなお合成され得る。
b)PVPをキャッピング剤として使用する場合、硝酸銀の添加速度が非常に重要である。0.5mLのAgNO3/分未満の添加速度のみが高アスペクト比のナノワイヤを生じ得る。
c)PDDAM+グリセリンの系では、キャッピング剤のモル比を3:2(PVP:Ag)から1:4(PDDAM:Ag)まで低下させ得る。しかしながら、PDDAM中に存在する塩素により、AgClナノ粒子もまた生じる。
d)同一反応条件および6:1のPVP:Agのモル比で、グリセリンはエチレングリコールより多くのナノワイヤを生じる。
e)グリセリンをエチレングリコールの代わりに使用する場合、PDDAMはPVPより多くのナノワイヤを生じる。
f)PVPの場合、ナノワイヤは、サンプルを希釈するためのアセトンを使用して遠心分離によりナノ粒子から分離し得る一方、PDDAMについてはこの手順によりナノ粒子からナノワイヤを分離することが可能でない。
【0038】
溶媒および還元剤としてエチレングリコールを使用する最も広範囲に使用される合成法(ポリオール法として知られる)と対照的に、本明細書に開示されるグリセリン法は、銀ナノ粒子の身体との接触を容易にすることができる剤を見出すという問題を排除する。該理由は、グリセリンはエチレングリコールよりも人体に大きくよりやさしいからである。それが、グリセリンがエチレングリコールと対照的に広範な身体保護製品で重要な役割を演じている理由である。生物適合性かつ非アレルゲン性である公知のかつ特徴づけられた化合物の使用は、例えばHIVに対し感染を予防するための製品を生成する可能性のため、とりわけ重要である。
【0039】
実務において、本発明は後に続くとおりさらに特徴付けうる。近年、無機ナノ構造が、とりわけ触媒、生物学的センサーおよびナノエレクトロニクスにおけるそれらの潜
在的応用により増大する関心を呼んでいる。これらの物質は1nmと100nmの間のそれらの寸法の最低1個を有するため、興味深い特性が、量子閉じ込めのような現象および高表面対体積比により生じる
【0040】
貴金属ナノ物質の場合、物理化学特性は形状および大きさにより高度に影響される1,5。例えば、金属ナノ粒子の光学吸収スペクトルは、金および銀の場合に独特である、表面プラスモン共鳴(SPR)により支配されることが公知である。双方は、それらのナノ粒子が電磁スペクトルの可視領域にSPRピークを有するために適正な自由電子密度を有し、それはそれらの大きな有効散乱断面積に加え、それらを分子標識の理想的な候補にする。最近、個々の銀ナノ粒子の吸収スペクトルが、透過型電子顕微鏡法(TEM)により測定されたそれらの大きさおよび形状と相関された。該結果は、球形およびほぼ球形のナノ粒子がスペクトルの青色領域を吸収する一方、十面体ナノ粒子および三角形の断面を有する粒子はスペクトルのそれぞれ緑色および赤色部分で吸収することを示す。各異なる形態について、SPRピーク波長は大きさとともに増大する。従って、大きさ、組成および形態の繊細な制御が高度に望ましい。加えて、われわれは最近、銀ナノ粒子がHIV−1での大きさ依存性の相互作用を受け、独占的に1〜10nmの範囲のナノ粒子が該ウイルスに付着することを示すことにより、銀ナノ粒子の大きさが他の応用で重要であることを見出した10。この相互作用により、銀ナノ粒子はウイルスが宿主細胞に結合することを阻害する。
【0041】
貴金属ナノ結晶は多様な方法を使用して合成されており、溶液相技術がおそらく最も使用されているものである。金および銀ナノ粒子の溶液相合成では、元の種の構造が最終生成物の形態で決定的な役割を演じているため、形状の制御が困難な責務である11。小型(<5nm)金属粒子での複数のTEM研究12−16は、小さな励起は室温であっても構造変化を誘導するのに十分でありうること、また、こうした変化の速度はナノ結晶の減少する大きさとともに増大することを示した13。これらの形態変化はまた赤外分光法のような他の技術によっても検証された17。これらの観察結果および理論的計算の結果に基づけば、可能なナノ粒子の形態の総潜在的表面エネルギーは数個の最小値よりなること、およびそれらの間の障壁は十分に低く(〜kT)、その結果熱変動が異なる形態間の変化を生じるための十分なエネルギーを提供することが既知である。これらの小さな大きさでは、二十面体および十面体のような5回対称の双晶構造はわずかにより安定である傾向がある一方、立方八面体ナノ粒子はより大きな大きさでより安定になる12。ナノ結晶の大きさが増大する場合に構造変化がやみ、従ってナノ粒子の形態を単結晶若しくは多双晶いずれかとして固定する11こともまた既知である。このモデルに基づけば、溶液相技術の大部分により製造されるナノ粒子の典型的なサンプルで形態の統計学的分布を観察することができる理由を容易に理解し得る。しかしながら、金属ナノ構造の形状および大きさの制御において大きな進歩が達成され、そして多くの応用がそれらの形態に基づき提案された18−21
【0042】
溶液相技術のなかで、ポリオール法は金属ナノ構造の合成のための最も使用されている経路の1つである。この方法では、金属前駆体を、ポリビニルピロリドン(PVP)のようなキャッピング剤分子の存在下に液体ポリオール、例えばエチレングリコールに溶解する。金属前駆体とキャッピング剤の間のモル比、添加の順序、温度および反応時間のようなパラメータを制御することにより、大きさおよび形態の合理的な制御を達成し得る22。銀の場合、Xiaらは、これらの変数のいくつか、およびとりわけ硝酸銀とPVPの間のモル比を慎重に調節することにより、ナノキューブおよびナノワイヤのようなある範囲の制御された形態を製造し得ることを示した11。彼らは、単結晶の種が主に生じられた場合に、最終生成物は単分散した立方体、四面体および八面体から構成される一方、十面体の形状をもつ多双晶粒子(MTP)が主に形成された場合;最終生成物は五角形の断面をもつ顕著な多双晶構造をもつナノロッドおよびナノワイヤから主として構成されることを見出した。銀の一次元構造が高収量で確実に生じられ得るという事実は、非等方性のfcc物質の合成は非立方体結晶構造についてほど単純でないため、極めて重大である。
【0043】
加えて、Gaoらは、PVPとAgNOの間のモル比が6ないし1である場合に、PVPの単層のみがワイヤの表面に吸着されることを見出した23。従って、ナノワイヤを空気に曝露する場合に、該ポリマー膜が大気および水蒸気に十分浸透性であることができることが期待されうる。従って、空気に曝露されたナノワイヤの大気中腐食に対する安定性を探求する必要がある。さらに、金属ナノ物質のバルク状態に比較したそれらのより高い反応性もまた一般に既知であり、従って腐食のような現象が高められうる。
【0044】
金属における大気中腐食は頻繁な現象である。他の金属と異なり、変色としてもまた知られる銀の大気中腐食は硫化に向かって起こり、そして酸化銀の形成に向かってでない24。銀の大気中硫化は広範囲に研究されている24−28。銀は数種の気体のイオウ含有化合物への曝露に際して硫化することが示されており、硫化水素(HS)および硫化カルボニル(OCS)が最も重要な銀腐食剤である25。驚くべきことに、これまで記述された銀ナノ構造の型での大気中腐食の研究は、十分に探求されていなかった領域である。われわれの知る限り、これらのナノ構造が合成溶液から抽出されかつ空気に曝露された後のそれらの安定性についての情報は存在しない。
【0045】
本発明は、ポリオール法により合成されたPVP被覆銀ナノワイヤが溶液から抽出されかつ周囲条件で空気に曝露された場合のそれらの安定性を試験した。こうした銀ナノ構造の安定性は、硫化銀ナノ結晶の薄層がナノワイヤの表面上で形成される場合に示される。PVP被覆銀ナノ構造の安定性に関するこれらの知見と一緒に、コアシェルが銀−硫化銀のナノ粒子およびナノワイヤの新たな製造方法を提示する。
【0046】
ナノ粒子およびナノワイヤのような金属ナノ構造は、ナノファブリケーションおよびナノエレクトロニクスにおけるいくつかの応用の構成要素として提案されている。しかしながら、大気中腐食が金属において普遍的である場合さえ、こうした現象に対するそれらのナノ構造の安定性についての情報の欠如が存在する。従って、透過型電子顕微鏡法(TEM)およびx線光電子分光法(XPS)を包含する多様な技術による、キャッピング剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を使用するポリオール法により合成した銀ナノワイヤおよびナノ粒子の大気中腐食を測定した。合成および精製の後に、銀ナノ構造を多様な支持体に堆積させ、そして周囲条件で実験室空気に曝露した。サンプル中の構造変化をTEMにより時間の関数として24週間モニターした。これらの結果は、これらの銀ナノ構造が大気中腐に感受性であること、および、大部分の場合に硫化銀ナノ結晶の薄層がそれらの表面上で形成されることを示す。欠陥および転位を伴う領域の高められた反応性は、ナノワイヤの腐食速度がナノ粒子の腐食速度より高いという観察結果を説明し得る。ポリオール法により合成したナノワイヤの構造は双晶である一方、合成後に残存したナノ粒子の大部分は単結晶であることが公知であるためである。加えて、銀ナノ構造の元のサンプルの一部を、腐食剤ガスとして硫化水素(HS)を使用して硫化した。このサンプルのXPS試験を実施した後に、硫化した銀ナノ構造の表面上のPVPの存在が確認された。この結果は、大気中腐食されたサンプル中では、いくつかの場合で元の銀ナノ構造が完全に腐食された場合でさえ、硫化銀ナノ結晶は銀ナノ構造の形状を採用して一緒に留まったという観察結果と一致する。最後に、これらの結果は、ナノスケールでの腐食がバルク銀のものに類似であるようであることを示す。
【0047】
材料。硝酸銀およびポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(PVP−K30、MW=40,000)はSigma Aldrichから購入し、そしてエチレングリコールはFischer Chemicalsから購入した。脱イオン水はMilli−Q水精製装置で製造した。全部の材料はいかなるさらなる処理も伴わずに使用した。
【0048】
銀ナノ粒子およびナノワイヤの合成。銀ナノ粒子およびナノワイヤは、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下にエチレングリコール中で硝酸銀(AgNO)を還元することにより合成した。典型的な合成では、5mLの純粋なエチレングリコール、およびエチレングリコール中のPVPの0.36M溶液5mLを、三頚フラスコ中160℃で活発に攪拌しながら約60分間還流した。その後、エチレングリコール中のAgNOの0.12M溶液2.5mLを反応フラスコに一滴ずつ注入した。60分後に反応を停止し、生成物を室温に冷まさせた。銀ナノ粒子およびナノワイヤの混合物を得た。反応生成物を脱イオン水(容量で5倍)で希釈した。銀ナノワイヤを遠心分離により精製した。
【0049】
銀ナノ粒子およびナノワイヤの安定性。合成したナノワイヤの大気中腐食に対する安定性を電子顕微鏡法により評価した。走査型および透過型電子顕微鏡法のサンプルは生成物を合成した直後に調製した。全部のサンプルを周囲条件(23±2℃および70±4%の相対湿度)で実験室空気に曝露した。電子顕微鏡分析は、6か月の時間間隔の間に定期的に実施した。
【0050】
銀ナノ粒子およびナノワイヤの硫化。硫化実験は制御温度管状電気炉中で実施した。精製した反応混合物のサンプルを、多様な支持体すなわちTEM Cu格子、ガラス製スライドガラスおよび(100)Si−ウェハー上で水晶管の内側に置いた。使用前に、ケイ素およびガラス支持体はエタノールを使用して超音波洗浄し、そして次いで二重脱イオン水処理した。次に、水晶管内側のサンプルを10sccmの連続窒素(N)流中で100℃までゆっくりと加熱した。標的温度に一旦達すれば、硫化水素(HS)の10sccmの連続流に管を通過させた。5時間後にHS流を停止しかつNで15分間パージした。最後に管を大気条件で室温に冷却した。
【0051】
サンプルの特徴付け。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、15kVで作動するHitachi 4500F顕微鏡を使用して実施した。TEM分析は、Schottky型電界放射型電子銃、超高解像磁極片(Cs=0.5mm)、エネルギー分散型x線分光計(EDS)装置、および高角度散乱暗視野(HAADF)検出器を伴う走査透過(STEM)装置を装備した、200kVで作動するJEOL 2010F顕微鏡で実施した。TEMのサンプルは、元の懸濁液一滴をレース状カーボン被覆Cu格子上に置くことにより調製し、かつ蒸発させた。X線回折(XRD)による結晶構造の同定はPhillips自動垂直走査粉末回折計で実施した。スペクトルは10から70 2θ°まで得た。X線光電子分光法(XPS)は、深さ方向プロファイルおよび角度分解能力をもつデュアルMg X線源およびモノクロAl X線源を装備したPHI 5700装置で実施した。スペクトルはガウス曲線を使用して当てはめた。SEM、XRDおよびXPSのサンプルは、支持体(SEMおよびXPSについてSi、ならびにXRDについて無定形ガラス)を元の懸濁液で被覆することおよび水を蒸発させることにより調製した。硫化した生成物の場合は、サンプルを、反応で使用した支持体(TEM Cu格子、ガラス製スライドガラスおよびSi−ウェハー)から直接分析した。
【0052】
合成されたままの(as−synthesized)銀ナノワイヤの特徴付け。図1aの挿入図に示されるとおり、精製後の生成物は主としてナノワイヤにより構成された。数本のナノワイヤのEDSスペクトルを取得することによりTEM下で実施した組成分析は、本体が銀からのみ構成される一方、ナノワイヤの表面のPVPの存在が特徴的な炭素、窒素および酸素ピークの出現の原因であることを示した(図1d)。合成したナノワイヤのX線回折(図1c)は、fcc銀として索引を付け(JCPDSファイル08−0720)得た、ただ単一の結晶層を示した。ナノワイヤの一次元構造の直接の結果として、{111}および{100}面の相対強度の間の比は、バルク銀について期待されたより高く(約4.6対約2.2)、{111}面の相対的豊富さを示す。
【0053】
前に挙げられたとおり、これらのナノワイヤの構造は極めて注目に値する。それらの先端は十面体のナノ粒子に似ており、そしてそれらの長軸全体で五角形の断面を表す(図1b)。それに基づき、これらのナノワイヤは、新たに形成された{100}切子面を{111}より効果的に安定化することにより構造を導くキャッピング剤で[110]方向に成長する多双晶十面体ナノ粒子から発することが提案された29。異なる報告で、Sunらは、ジチオール結合で官能性化した小型金ナノ粒子がナノワイヤの端(すなわち{111}切子面)に優先的に付着することを見出し、PVPがワイヤの本体の{100}切子面とより強く相互作用することを再度示す30
【0054】
しかしながら、キャッピング剤の役割は成長の機構に制限されない。生成物が一旦形成されれば、それはナノ結晶の表面を保護することにより安定性を提供する。加えて、キャッピング剤は金属ナノ構造の外部の系との相互作用を改変し得る。事実、ナノ構造の物理化学特性は、キャッピング剤分子とのそれらの相互作用に強く依存する。従って、キャッピング剤とナノワイヤの表面との間の相互作用を理解することが重要である。
【0055】
ナノワイヤの表面上のPVPの吸着についてのより良好な理解を有するため、x線光電子分光学的(XPS)研究を実施した。純粋なPVPおよびPVP被覆銀ナノワイヤの結果を表1に提示する。
【0056】
【表1】

【0057】
全部の結合エネルギーはC 1s(284.5eV)に参照される。PVPは、ピロリドン環を形成する極性基をもつポリビニル骨格を有する直鎖状ポリマーである。それに基づき、異なる化学的環境をもつ3種の炭素種を同定し得る。われわれの分析の目的上、われわれはそれらを1、2および3と標識した(図2a)。純粋なPVPの場合、C 1sについて得られるスペクトルは、284.8、285.7および287.8eVの結合エネルギーを伴う3ピークにデコンボリュートし得る一方、N 1sおよびO 1sスペクトルはそれぞれ399.9および531.8eVに単一ピークを表した(図2)。当てはめたC 1sピークは、PVP反復単位を構成する多様な炭素原子の置換基の電気陰性度に関して説明され得る。一般に、置換基の電気陰性度が高くなるほど、それは炭素原子からより多くの電子密度を吸引して、C 1s電子の結合エネルギーの増大を引き起こす。3と番号付けられた炭素原子は、ピロリドン環中で最高の電気陰性度をもつ元素である酸素に結合されている。従って、287.8eVのピークはC=O結合に起因し得る一方、285.7および284.8eVのピークはそれぞれC−NおよびC−C結合の結果である。
【0058】
PVP被覆銀ナノワイヤのXPSスペクトルを分析することにより、純粋なPVPに関しての有意差をC 1sおよびN 1sピークで観察し得ない(図3)。しかしながら、O 1sのピークは、531.9および532.9eVの結合エネルギーをもつ2ピークにデコンボリュートし得る。加えて、Ag 3d5/2およびAg 3d3/2電子から生じる銀の観察されたピークは、それぞれ367.8および373.8eVの結合エネル
ギーを有する。531.9eVのO 1sピークは純粋なPVPについて観察されるものに類似である一方、532.6eVの結合エネルギーをもつピークは、PVP鎖のカルボキシル基中の酸素と銀ナノワイヤの表面の間の相互作用に起因し得る。ナノワイヤの表面との相互作用はカルボキシル基中の酸素原子の電子密度を低下させて532.6eVのピークの出現を生じることがありそうである。PVP被覆銀ナノ粒子のXPSスペクトルを分析することにより、Huangらは、銀ナノ粒子表面上のカルボキシル基中の酸素原子の吸着が該粒子表面の画像双極子を誘導することができ、従ってO 1sおよびAg 3d5/2電子について観察された結合エネルギーは、それらの環境との最終の銀イオンの間の静電相互作用により支配され;O 1s結合エネルギーの場合に上方シフトを生じ、かつ、Ag 3d5/2電子の結合エネルギーをバルク銀のものに関して低下させることを提案した31。さらに、Ag 3d5/2およびAg 3d3/2電子の結合エネルギーは金属銀の結合エネルギー(Ag 3d5/2について368.2eV、およびAg 3d3/2について374.2eV)より小さいが、しかし酸化銀(I)の結合エネルギー(Ag 3d3/2について367.5eV、およびAg 3d3/2について373.5eV)より大きい32。これもまた、PVP鎖中のカルボキシル(C=O)基の酸素原子とナノワイヤの銀表面の間の強い相互作用の明瞭な指示である。
【0059】
銀ナノワイヤの安定性。周囲条件での空気への曝露後の大気中腐食に対する合成したナノワイヤの安定性を電子顕微鏡法により評価した。電子顕微鏡法およびそれらの関連技術は、主として多くの異なる物質の構造特性および組成の特徴を詳細に研究する能力をそれらが提供するために、この型の分析に適する。実験の節で挙げられるとおり、TEM分析のためのサンプルは生成物を合成した直後に調製し、そして6か月の間隔の間定期的に分析した。
【0060】
図4は、異なる時点で分析した銀ナノワイヤの同一のTEMサンプルの電子顕微鏡像を包含する。図4aは合成直後の銀ナノワイヤの状態を示す。該画像で観察され得るとおり、ナノワイヤの表面は滑らかであり、かつ、ナノワイヤの中央の双晶境界の存在が明瞭である。この双晶境界はこれらの型のナノワイヤの5回対称から生じる。図4bは周囲空気への3週の曝露後の同一のサンプルの画像を提示する。ナノワイヤの表面は図aで観察されたより粗く、そしてナノ粒子が表面上およびワイヤの周囲に出現し始める。ナノワイヤの表面上のナノ粒子のより高い拡大率を図4cに示す。こうしたナノ粒子の結晶性の性質が該画像から明らかである。図d、eおよびfで、それぞれ4、5および24週間の空気への曝露後の同一サンプルを観察し得る。図eおよびf双方は類似の構造変化を提示し、ここでは微結晶のシェルが元の銀ナノワイヤの周囲に形成されている。該コアシェル構造の直径は元のナノワイヤの直径に一致する。すなわち、銀ナノワイヤコアの直径が減少している。
【0061】
同一の分析を走査型電子顕微鏡法(SEM)により実施し、そして結果を図5に提示する。図5aおよび5bに4週後のサンプルの画像を示す。図4dで提示されたものに類似の小型の隆起が出現し始めていることが観察され得る。いくつかの場合、24週後(図5cおよび5d)にナノワイヤの構造は明瞭に識別され得ない。数本のナノワイヤが合体しているようであり、また、表面はより不規則かつ粗い。また、若干のナノワイヤはそれらの長さに沿って割れ目を提示する。加えて、数本のナノワイヤの端により大きな隆起の存在が観察される。明らかに、合成されたままのナノワイヤは安定でなく、そして顕著な劣化が観察される。
【0062】
高度に強力な電子ビームがサンプルを通過する場合に、電子が主として試料との電子および核の相互作用によりエネルギーを喪失することが公知である。これらの相互作用はサンプルの構造を損傷しうる。電子の相互作用により引き起こされる損傷は放射線分解性として知られる一方、核の相互作用により生じられる損傷はノックオン損傷として知られる
33。従って、観察された構造変化を適正に研究するために、それらがTEMでの定期的観察により生じられる照射損傷の直接の結果でなかったことを確認することが重要であった。銀ナノワイヤの場合については、200kVのTEM電子ビームにより金属コアで生じられる照射損傷は無視できるはずである。しかしながら、本明細書で分析した銀ナノ構造は、定期的電子照射への曝露により損傷され得る有機ポリマーによりキャッピングされていた。
【0063】
図6は定期的電子照射に曝露されなかったサンプルのTEM像を示す。TEMサンプルは、前図で提示された銀ナノワイヤの同一の溶液バッチからの生成物を使用して調製した。図6aおよび6bは、それぞれ6および24週後に観察した2種の異なるサンプルの画像を提示する。双方の画像は、分解の結果が前の考察で提示されたものと一致すること、および微結晶の薄層がナノワイヤの表面上に形成されることを示す。従って、観察された構造変化は電子ビームの定期的照射により生成されない。有意の照射損傷が観察されなかったという事実は、物質がノックオン転位を経験するために特定のエネルギー閾値が超えられる必要があるという事実により説明され得る。このエネルギーより下で、電子ビームはただサンプル中の原子振動を高め、そして提供されたエネルギーは音子として消散される。大部分の金属について、閾値エネルギーは20〜30eVであり、そして長い曝露および若しくは高電流密度が達成されない限り、ノックオン損傷は300kV未満の加速電圧について起こらない33。放射線分解性損傷の場合、電離効果は電子ビームの加速電圧が100kVまで増大する際に有意に低下し、そしてより高電圧で低いまま留まる33
【0064】
図7は、図6bで出現したナノワイヤの高角度散乱暗視野(HAADF)像を提示する。ナノ結晶のシェルがナノワイヤの全表面を覆い、該ワイヤの長さ全体で約15nmの一定の厚さを有することが明らかである。前の画像のいくつかと同様に、ナノワイヤの先端に低密度領域がシェルとコアの間に出現する。シェルの外側の鮮明なコントラストはシェルの筒状の形状のため増大した厚さによるとみられる一方、低密度領域では、電子ビームはシェルの2個の約15nm厚さの筒状の壁をまさに横切っていることができ、中空の中央を見出す。興味深いことに、微結晶のこのシェルの形成は、元のナノワイヤに付着したままであった2個のナノ粒子でもまた顕著である(図aおよびc)。ナノ粒子の場合、シェルの厚さはまた約15nmのものである。より明るいコアを伴わない3領域もまた識別可能である。観察されたコントラストは、これらがナノ結晶のシェルによってのみ構成される中空構造であることを示唆する。全部のこれらの観察結果はPVPコーティングがなおそこにあることを示唆しており、シェルを構成した全部のナノ結晶が一緒に留まり、元の銀ナノ構造の形状を採用することを促進することに注目することが重要である。
【0065】
このナノワイヤの先端の一方の3個の異なる領域の組成分析はかなりの量のイオウの存在を示した(図8)。エネルギー分散型x線分光ライン走査を2個の異なる領域について取得した。この場合、プロファイルの強度は分析されている元素の濃度に比例する。第一のライン走査を図8aおよび8bに提示し、そしてナノ結晶のセルに独占的に対応する。図8bで観察されるとおり、イオウの強度プロファイルは銀について得られたプロファイルの半分であるようであり、シェルが硫化銀(AgS)微結晶により構成されていることを示唆する。第二のライン走査(図8aおよび8c)の場合、イオウに比較した銀の比率はより高い。これは、ナノワイヤの明るいコアがなお純粋な銀である一方、まさに硫化銀ナノ結晶の薄層がその表面上で形成されたことを示唆する。興味深いことに、走査の両端での銀およびイオウの強度プロファイルの間の比は再度2:1に近い。これは、両端で該ライン走査がまさにシェルに対応するという事実と一致する。ワイヤの多様な領域の銀とイオウの間の原子比をより正確に決定するため、電子顕微鏡をEDSモードで作動させて点組成分析を取得した。結果を図8aおよび8dに提示する。シェルの場合、銀とイオウの間の原子比は硫化銀の化学量論に近い。シェルの外側部分の測定された比は2.25のものであった一方、シェルの低密度領域では2.09のものであった。ナノワイヤの明
るいコアの場合について、銀とイオウの間の原子比は29.90のものであり、コアが硫化銀ナノ粒子のシェルにより囲まれた純粋な銀により形成されることを確認する。
【0066】
銀ナノワイヤを囲む微結晶の高解像TEM像から得た高速フーリエ変換分析もまた硫化銀の存在を確認した。図9bのFFTに提示される点の分析は単一の結晶相の存在を示した。表2に提示されるとおり、FFTから測定した面間距離および面間の角度は、室温での硫化銀の最も安定な多形体である単斜晶系の硫銀鉱の硫化銀と良好に一致する。これは、以前の研究で、銀の腐食に由来する硫化銀は無定形よりむしろ主として結晶性である28という事実と一致する。
【0067】
【表2】

【0068】
銀の大気中腐食からの主生成物は硫化銀であること、および腐食層は炭酸イオン、硫酸イオン若しくは硝酸イオンを包含しないことが既知である28。銀の腐食過程は、大気中に存在するHS、OCS、SOおよびCSのような還元されたイオウの気体の型および量、ならびに銀表面上の水の量により主に影響される24−28。還元されたイオウを含有するガスのなかで、HSおよびOCSが銀の主腐食剤であることが報告されている。それらのガスの硫化速度はSOおよびCSの速度より約1桁高いからである25。大気中のこれらの還元されたイオウの気体の典型的な濃度が低い場合でさえ、それらは腐食過程を開始するのに十分である28
【0069】
銀と硫化水素の間の反応の場合、硫化の機構が完全に理解される必要がある26。それらの間の一般的な反応は反応(1)に従って起こり、また、銀表面上に存在する水が、該ガスが銀とのその後の反応のため溶解されるべき適正な媒体を提供すると考えられる。事実、広範囲の研究は、銀腐食が相対湿度を増大させることで増大することを示した24−26,28
2Ag+HS→AgS+H (1)
【0070】
また、OおよびNOのような他のガスの存在は、以下の反応式27
2Ag+HS+1/2O→AgS+HO (2)
2Ag+HS+2NO→AgS+2HNO (3)
に従って硫化過程を高め得る。
【0071】
Sの供給源が利用可能でない場合は、OCSが大気条件での銀の主腐食剤である25。反応(4)に示されるとおり、水の存在下で、このガスは迅速に分解して硫化水素を形成する。OCSにより生じられる腐食は、それが大気中で最も豊富なイオウ種であるために重要である。
OCS+HO→HS+CO (4)
【0072】
これらの結果により示されるところの別の興味深い点は、銀が腐食される場合にそれが均一な薄膜を形成する傾向がないことである。硫化銀はむしろ粗い不連続的な一連の塊と
して成長する28。Bennetらは、蒸発された銀薄膜の表面上で形成される硫化銀の塊が連続的薄膜にゆっくりと合体することを見出した24。彼らは、約0.2ppbのHSの濃度を含む大気中で、1.5〜3nm厚の不均一な変色薄膜が1週後に、そして6nm厚若しくはそれ以上が1か月後に形成されることを報告した。しかしながら、腐食速度は相対湿度および温度のような他の変数に高度に感受性であり、従ってBennetにより提示された速度と異なる速度が、異なる条件で達成され得る。
【0073】
図10に、図6bに示されるサンプルの異なる領域の画像を提示する。該画像から;ナノワイヤのみならずしかしまたナノ粒子も腐食されていることが明らかである。興味深いことに、全部のナノワイヤが同一様式で腐食されているわけではない。図eおよびfに提示されるとおり、若干のナノワイヤの腐食は均一でない。これらの場合、ナノワイヤのある領域は他者より高速で腐食される。いかなる制限も創製することなく、2つの理由がこの現象に寄与し得る。第一のものは、腐食過程を助長するより少なく局在化されたPVP表面被覆に関し得、そして第二の理由はナノワイヤに沿った欠陥のより高比率を伴う領域の存在であり得る。欠陥を伴う領域はより反応性であるため、腐食過程はこうした欠陥の存在により高められうる。
【0074】
事実、欠陥を伴う領域の高められた反応性は、ナノワイヤの腐食速度がナノ粒子より大きいようである理由もまた説明し得る。本稿で前に挙げられたとおり、単結晶の種は主として立方体、四面体および八面体のナノ粒子を生じた一方、十面体の形状をもつ多双晶の種粒子(MTP)は五角形の断面をもつ多双晶構造をもつナノロッドおよびナノワイヤの形成を誘導することが見出された。十面体の種粒子の基本構造は、双晶の隣接切子面をもつ5個の四面体の単結晶の結合として記述し得る34−38。2(111)面の間の理論的角度は約70.5°であり、従って、5個の四面体を結合することにより約7.5°のギャップが生成する。従って、該空間は充填されず、そして、何らかの形態の内的歪みが必要であり、転位および他の構造上の欠陥に代わられる38,39。これらの欠陥は前述のナノワイヤの透過型電子顕微鏡(TEM)の断面像でもまた観察される29,40。ナノワイヤの長さ全体でのこれらの欠陥の存在は、図10dに提示されるナノキューブの場合のような単結晶ナノ粒子について観察されるものに比較してそれらの腐食を高める。事実、双晶粒子は、単結晶粒子より食刻に対しより強い反応性および感受性を表すと期待される41ことが示された。銀変色の場合は、銀結晶中の切子面若しくは段の存在が硫化速度を高めることが既知である42,43。硫化銀の核形成および成長は、滑らかな欠陥のない表面よりも欠陥および転位に沿ってより迅速に起こる44
【0075】
別の重要な観察結果は、他の場合には図bの場合でのようにナノワイヤが完全に腐食されている場合でさえ、硫化銀ナノ結晶がワイヤ様の形態に整列されたまま留まるという事実から生じる。再度、これは形成されたナノ結晶の表面にPVP層がなお吸収されることを意味している。しかしながら、大気中腐食された生成物とPVPの間の特異的相互作用は未だ決定されていない。
【0076】
他方、何週間も元の溶液中に留まったナノワイヤもまた電子顕微鏡法で評価した(画像はここで示されない)。24週後に腐食は観察されなかった。組成分析は、それらがPVPによりキャッピングした銀によってのみ構成され、そしてイオウは検出されなかったことを示した。これは、それらがHSおよびOCSのような腐食するイオウ源に曝露される場合にのみ腐食が起こることを確認する。
【0077】
銀ナノ粒子の硫化。実験の節に記述したとおり、元の合成した銀ナノ構造の一部を、窒素雰囲気中HSの10sccm流を使用して硫化した。結果を図11に提示する。より大きな結晶の塊がナノワイヤの表面上で生じられた。いくつかの場合には、図11dで見られるとおり、ナノワイヤのコアは、おそらくPVPコーティングの作用により結合され
た数個の結晶に分解された。組成のEDSマッピングをこれらのナノワイヤの1本で実施した(図12)。イオウマップが銀について得られたマップと一致することが明らかであり、そこでは強度の差違が相対濃度の差違に対応する。興味深いことに、炭素マップもまたイオウおよび銀のマップと相関する。これは、PVPコーティングがなお存在し得たことの指示である。大気中腐食されたナノワイヤに関して、点EDS分析を1本のナノワイヤの先端で実施した(図13)。コントラストの顕著な差違を伴う2領域を分析し、そして銀とイオウの間の原子比を測定した。より輝く(brighter)領域での銀とイオウの間の比は5.47であった一方、より明るい(lighter)領域でのそれらの間の比は1.85であった。化学量論より高い比を伴う領域が検出されるという事実は、それらの領域が硫化銀に完全に変換されなかったこと、および金属銀のコアが存在することを示す。
【0078】
PVPコーティングが、それらが合成で腐食された後にナノ構造の表面上に吸着されたまま留まるかどうかを確認するため、XPS試験を実施した(図14)。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
硫化されたナノ構造の表面上のC、NおよびOの存在が確認された。該3元素の結合エネルギーの値は、元の銀ナノワイヤについて得られた値に同様であり、硫化されたナノワイヤの表面上のPVPの存在を確認した。再度、C 1sについて得られたスペクトルは、284.9、285.9および288.3eVの結合エネルギーをもつ3ピークにデコンボリュートし得る一方、N 1sは400.0eVに単一ピークを表し、そしてO 1sピークは531.9eVおよび532.9eVの結合エネルギーをもつ2ピークにデコンボリュートし得る。このデータは、PVPが、硫化されたナノワイヤの表面上にピロリドン環のカルボキシル基を介して吸着されたまま留まることを示唆する。Ag 3d5/2およびAg 3d3/2電子からの観察されたピークは、それぞれ368.0および374.0eVの結合エネルギーを有する一方、S 2p3/2およびS 2p1/2に対応するピークは161.2および162.3eVの結合エネルギーを有する。これらの値は硫化銀についての報告されたデータ32と矛盾しない。加えて、XPSデータは、亜硫酸イオン若しくは硫酸イオンが存在しなかったことを確認した。O 1sピークの結合エネルギーは酸化銀(I)が形成されなかったこともまた確認した。酸化銀(I)のO 1sピークの期待される結合エネルギーは528.6eVのものであるはずであり32、それは硫化されたナノワイヤについて得られた値より有意により低いからである。
【0081】
PVPと硝酸銀の間の6対1のモル比を使用して本発明のポリオール法により製造した銀ナノ構造は大気中腐食に感受性である。大部分の場合、硫化銀ナノ結晶の薄いシェルがそれらの表面上に形成される。多双晶ナノワイヤは、それらのより高い欠陥比率により、単結晶ナノ粒子に比較して腐食に対しより影響を受けやすい。重要なことに、提示される銀ナノ構造は周囲条件で腐食されているという事実は、ナノエレクトロニクスおよびナノファブリケーションでのそれらの使用を制限しうる。
【0082】
加えて、貴金属ナノ構造は、それにより吸着された分子の散乱断面積が劇的に高められる表面増強ラマン散乱(SERS)として知られる現象を表すことが公知であり;従って
吸着質の振動スペクトルを得ることができる45,46。銀、金および銅は誘電率の真のおよび想像の部分の適切な値を有する47ため、SERSは通常、これらの金属の粗くされた支持体上で伝導される。あるいは、多様な表面上での貴金属ナノ粒子アレイの製造のための強力な技術は、いわゆるナノスフェアリソグラフィー(NSL)であり、生じる支持体はナノスフェア上金属薄膜(metal film−over−nanosphere)(MFON)表面と称される48。ここで提示されるもののような銀ナノ構造が大気中腐食に感受性であるという事実に基づき、硫化銀形成がSERSで有し得る影響の慎重な評価を実施すべきである。他方、水素プラズマ還元のような浄化技術は、形成された硫化物を金属銀に還元するのを助け得る。例えば、水素プラズマを使用して、硫化水素を形成することによりダゲレオタイプ表面上の硫化銀を還元し、それをその後真空系からポンプで排除した49。しかしながら、硫化銀の成長速度の場合に関しては、とりわけ銀ナノ結晶の大きさおよび形状、硫化物層の厚さ、ならびに水素プラズマへの曝露の時間のような多くの変数が硫化物の還元における効率に影響を及ぼしうる。従って、系統的研究を場合ごとに実施すべきである。
【0083】
Ag−AgSのコアシェルナノ構造を本明細書に記述されるとおり製造し得ることがさらに見出された。この型の伝導体−半導体ナノ構造は検知する目的上興味深いことができる。過剰の銀を含む硫化銀薄膜が赤外領域で光検出器として使用し得ることが示された50ためである。銀ナノ構造は鋳型として作用するため、硫化されたナノ構造の形状および大きさを制御し得る。
【0084】
PVPのより高い比率を合成で使用し得、従ってナノ構造の表面上に吸着されるポリマー層の厚さを増大させる。より厚いPVP層がナノ構造の銀表面を被覆しているという事実は、ナノ粒子若しくはナノワイヤを形成する金属コアの腐食を低下若しくは予防しうる。最後に、ナノ粒子およびナノワイヤのような銀ナノ物質は、多様なキャッピング剤を使用する多くの他のコロイド技術により合成し得る。合成方法に依存せず、銀ナノ構造がイオウ含有ガス供給源に曝露された後に、それらが腐食されるであろうことが期待される。前に示されたとおり、水が銀表面の大気中腐食で基礎的な役割を演じていると考えられ、従って、疎水性キャッピング剤は腐食に対するこれらの物質の性能を改良し得る。従って、他の合成技術により生成された生成物の大気中腐食に対する安定性を適正に評価するために、ここに提示されたものと同様の研究を実施することが必要である。事実、これはまた、とりわけ鉄および銅のような大気中腐食を受ける他の金属のナノ構造にも当てはまる。
【0085】
米国食品医薬品局(FDA)は、プロピレングリコール(グリセリン)を食物中での使用について「一般に安全と認識される」添加物と分類している。それはある種の医薬品、化粧品若しくは食品中の余分の水を吸収しかつ水分を維持するために使用される。それは食品の色および香りの溶媒である。人体に100%やさしいグリセリンのこの利点は他の技術に対する利点を提示する。PVPの場合について、動物での毒物学データの広範囲の研究は、PVPの生物学的不活性性を裏付ける。急性毒性は極めて低く、また、長期投与は副作用を示していない。大型分子として、それは皮膚若しくは消化管壁のような大部分の身体膜を迅速に通過しない。研究は、PVPが経口投与、吸入および静脈内若しくは他の非経口経路により本質的に非毒性であることを示した。PVPは一次刺激物質、皮膚を疲労させる物質若しくは感作物質ではない。
【0086】
この技術により製造されるナノ粒子は、不安定性、またはスパッタリング若しくはレーザーアブレーションのようなナノ粒子の物理的製造方法で見出される危険かつ高価な操作条件のような問題を提示しない。これらの方法により製造されるナノ粒子は、それらを使用し得る前に適正なマトリックスに組み込む必要がある一方、本発明において、マトリックス中への取り込みは必要とされない。
【0087】
とりわけ身体保護製品中でのエチレングリコールの使用は、グリセリンの使用よりはるかにより制限される。グリセリンは水若しくはアルコールに溶解し得るが、しかし油には溶解し得ない。他方、多くの物が、それらが水若しくはアルコールに溶解するより容易にグリセリンに溶解することができる。従って、ナノ粒子および関連製品は多様な応用に容易に組み込まれる。
【0088】
ナノワイヤもまた製造し得るという事実は、ナノメートル範囲の一次元構造が有する固有の特性により全く別の一組の機会を開く。従って他の応用がこれらの系から生じうる。
【0089】
膣殺生物剤:膣中の微生物を破壊する剤(例えば化学物質若しくは抗生物質)。HIVを包含する性行為感染症の伝播を阻害するための直腸および膣殺生物剤の使用を評価するための研究が実施されている。今日の殺精子剤と同様、殺生物剤は、ゲル剤、クリーム剤、坐剤、薄膜剤を包含する多くの形態で、または、性行為感染症(STD)およびAIDSから女性自身を保護する力を彼女らに与えうる、有効成分を長期にわたりゆっくりと放出するスポンジ若しくは膣リングの形態で製造し得る。世界中で、STD保護においてあまりにも少ない選択肢が存在するため、女性の健康および生命は毎日危険にさらされている。
【0090】
消毒剤:非生存表面上のウイルスおよび他の微生物を死滅させる化学物質。
【0091】
殺生物剤:農業、森林管理および蚊の防除のような分野で使用される、多様な形態のウイルスのような生物体を死滅させることが可能な、除草剤、殺虫剤であり得る病虫害防除剤のような化学物質。殺生物剤は、生物学的侵入および増殖から他の物質(典型的には液体)を保護するため、それらにもまた添加し得る。
【0092】
フィルター:水、若しくはHIV−1感染女性からの母乳のようないずれかの液体中のロタウイルスのようなウイルス病原体を不活性化するため。
【0093】
熱帯抗ウイルス薬:点眼薬または皮膚クリーム若しくはゲル剤。
【0094】
全身性抗ウイルス薬:ナノ粒子を静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮などで送達することによりナノ粒子を全身に提供する。
【0095】
本発明の最も重要な特徴は抗ウイルス薬としての銀ナノ粒子の使用である。バルク物質が表す化学および物理特性は、該物質がナノメートル範囲にある場合に劇的に変化する。この理由から、物理的、生物学的、生物医学的および製薬学的応用で使用し得るナノ物質の開発において増大する懇願が存在する。
【0096】
ウイルス阻害における利点に関しては、銀ナノ粒子が約3μg/mLの濃度でHIV−1ウイルスを阻害することが可能であることが見出された。この濃度で、MT−2細胞(臍帯血リンパ球から単離されかつ成人T細胞白血病を伴う患者からの細胞と共培養したヒトT細胞白血病細胞)およびc−magi細胞に対する毒性が存在しない。
【0097】
最後に、銀ナノ粒子を含有する殺生物剤は、3種の方法、すなわちSTDおよびAIDSウイルスならびに細菌を殺傷すること、感染を阻害するための障壁を創製すること、若しくは感染が発生した後にウイルスが複製することを予防することの1つで作用するとみられる。理想的には、銀ナノ粒子を含有する殺生物剤は、殺精子剤とともに、若しくは女性たち自身をSTDからなお保護する一方で彼らに妊娠するという選択肢を与えるために殺精子剤を伴わずにのいずれでも利用可能であるとみられる。
【0098】
本発明は、銀ナノ粒子を使用する後天的免疫不全症候群(AIDS)の伝播の阻害方法に関する。
【0099】
本発明は、性交の結果としてのヒトにおけるAIDSウイルスの伝播の安価な、容易に利用可能かつ便宜的な阻害方法を提供する。該方法は、数分以内に迅速な死滅作用をもたらす銀ナノ粒子の作用に頼る。これらの化合物はAIDSウイルスの感染性を低下させかつまた短い曝露後に多くの他のSTDの原因生物体を死滅させるのに有効である。本発明の方法は、従ってAIDS伝播の即座の危険を低下させるのに有用である。それはまた、AIDSの危険を増大させるSTDを引き起こす生物体を排除することによりAIDS伝播の将来の危険も低下させる。
【0100】
本発明の装置および方法は、銀ナノ粒子がAIDSウイルスを包含するレトロウイルスに対する有効な抗ウイルス剤であるという知見に基づく。銀物質は以前に、ヒトおよび動物での火傷の処置において有用な殺菌剤として認識された。C.L.Fox,Jr.、米国特許第3,761,590号(本明細書に組み込まれる関連する部分が参照である)。AgSDの形態の銀は、単純疱疹および帯状疱疹のようなある種のウイルス、ならびにカンジダ アルビカンス(Candida albicans)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)および淋菌を包含する多くのSTDの原因生物体に対し有効であることもまた示されている。Wysorの米国特許第4,415,565号(本明細書に組み込まれる関連する部分が参照である)は、ある種のRNAウイルスに対するAgSDのさらなる抗ウイルス活性を示すが、しかしこれらのいずれもレトロウイルスでない。従って、AgSDは十分に研究された物質である一方、それが、阻害若しくは破壊することが非常に困難と判明しているAIDSレトロウイルスに対する活性を有するとみられることを期待する根拠は存在しなかった。
【0101】
B.Hanke、米国特許第6,720,006号(本明細書に組み込まれる関連する部分が参照である)によれば、銀ナノ粒子は抗微生物生物保護製品を製造するのに有用であることが示されている。これはこの領域でのさらなる研究の可能性を開いたが;しかしながら抗ウイルス試験は実施されなかった。
【0102】
これらの知見を鑑み、本発明は、性交前若しくは性交中にヒトの性管に局所適用される有効な抗ウイルス量の銀ナノ粒子の使用による、性交に際してのヒトでのAIDSの伝播の阻害方法を企図している。本応用は、性管にクリーム剤若しくは泡沫剤を導入することにより、またはコンドーム若しくは性管に挿入される他の装置上に阻害性組成物を被覆することにより実施し得る。
【0103】
人体の内側での銀ナノ粒子の健康上の影響を分析する研究の欠如が存在する。しかしながら、適正濃度の銀ナノ粒子が外的使用に危険でないという証拠が存在する。米国特許第6,720,006号(本明細書に組み込まれる関連する部分が参照である)および健康の目的上のコロイド状銀の使用についての多くの参考文献。
【0104】
イオン性銀の殺菌特性についていくつかの論文が存在する。しかしながら、これらの論文は、細菌に対する銀ナノ粒子の既知の特性に焦点を当てている(I.Sondi、B.Salopek−Sondi、J.Colloid Interface Sci.275、177−182(2004)(本明細書に組み込まれる関連する部分、製造方法および製剤が参考である))。
【0105】
投薬形態物。銀ナノ粒子は、例えば非経口で、腹腔内に、脊髄内に、静脈内に、筋肉内に、膣内に、皮下に若しくは脳内にもまた投与しうる。分散剤をグリセロール、液体ポリ
エチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油中で製造しうる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を予防するための保存剤を含有しうる。
【0106】
注入可能な使用に適する製薬学的組成物は、無菌の水性溶液(水溶性の場合)若しくは分散剤、および無菌の注入可能な溶液若しくは分散剤の即座の調製のための無菌粉末を包含する。全部の場合で、組成物は無菌でなければならず、また、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度まで流動性でなければならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対し保存されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適する混合物、ならびに植物油を含有する溶媒若しくは分散媒でありうる。
【0107】
適正な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持しうる。微生物の作用の予防は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成しうる。多くの場合に、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム、若しくはマンニトールおよびソルビトールのようなポリオールを組成物中に包含することが好ましいことができる。注入可能な組成物の長時間吸収は、吸収を遅らせる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム若しくはゼラチンを組成物中に包含することによりもたらしうる。
【0108】
無菌の注入可能な溶液は、必要とされるところの上に挙げられた成分の1種若しくは組合せを含む適切な溶媒中に必要とされる量の治療的化合物を組み込むこと、次いで濾過滅菌により製造しうる。一般に、分散剤は、基礎的分散媒および上に挙げられたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌担体に治療的化合物を組み込むことにより製造する。無菌の注入可能な溶液の製造のための無菌粉末の場合には、製造方法は、その以前に滅菌濾過した溶液から有効成分(すなわち治療的化合物)およびいずれかの付加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥、噴霧乾燥、噴霧凍結および凍結乾燥を包含しうる。
【0109】
銀ナノ粒子は、例えば不活性希釈剤若しくは吸収可能な可食性担体とともに経口投与しうる。治療的化合物および他の成分はまた、硬若しくは軟殻ゼラチンカプセルに封入しうるか、錠剤に圧縮しうるか、または被験体の食餌に直接組み込みうる。経口の治療的投与のためには、治療的化合物を賦形剤とともに組み込むことができ、そして摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用しうる。組成物および製剤中の治療的化合物の比率はもちろん、当業者に既知であろうとおり変動しうる。こうした治療上有用な組成物中の治療的化合物の量は、適する投薬量が得られることができるようである。
【0110】
非経口組成物を、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため投薬単位形態物に処方することがとりわけ有利である。本明細書で使用されるところの投薬単位形態物は、処置されるべき被験体の単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は必要とされる製薬学的担体とともに所望の治療効果を生じさせるよう計算された、予め決められた量の治療的化合物を含有する。本発明の投薬単位形態物の仕様は、(a)治療的化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)被験体の選択された状態の処置のためのこうした治療的化合物の調合の技術分野に固有の制限により支配されかつそれらに直接依存する。
【0111】
本発明の水性組成物は、製薬学的に許容できる担体および/若しくは水性媒体に溶解かつ/若しくは分散された、有効量の本発明のナノ粒子若しくはナノフィブリル(nanofibril)若しくはナノシェルまたは化学的組成物を含んでなる。生物学的材料は、
望ましくない低分子量分子を除去するため徹底的に透析かつ/若しくは適切な場合は所望のベヒクル中のより準備のできた製剤のため凍結乾燥すべきである。有効成分は一般に非経口投与のため処方することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病変内、および/若しくはなお腹腔内経路を介する注入のため処方しうる。有効成分(component)および/若しくは成分(ingredient)としてのナノシェル組成物の有効量を含有する水性組成物の製剤は、本開示に照らして当業者に既知であろう。典型的には、こうした組成物は、液体の溶液および/若しくは懸濁液いずれかとしての注入可能物として製造することができ;注入前の液体の添加に際して溶液および/若しくは懸濁液を調製するために使用するのに適する固体の形態もまた製造することができ;ならびに/または製剤は乳化してもまたよい。
【0112】
注入可能な使用に適する製薬学的形態は、無菌の水性溶液および/若しくは分散剤;ゴマ油、ラッカセイ油および/若しくは水性プロピレングリコールを包含する製剤;ならびに/または無菌の注入可能な溶液および/若しくは分散剤の即座の調製のための無菌粉末を包含する。全部の場合で、該形態物は無菌でなければならず、かつ/若しくは容易な注入可能性が存在する程度まで流動性でなければならない。それは製造および/若しくは貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ/または細菌および/若しくは真菌のような微生物の汚染作用に対し保存されなければならない。
【0113】
遊離塩基および/若しくは薬理学的に許容できる塩としての有効成分の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適して混合した水中で製造しうる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよび/若しくはそれらの混合物、ならびに/または油中でもまた製造しうる。通常の貯蔵および/若しくは使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を予防するための保存剤を含有する。
【0114】
適する注入可能な溶液は、必要とされるとおり、上に挙げられた多様な他の成分を含む適切な溶媒中に必要とされる量の有効成分を組み込むこと、次いで濾過滅菌により製造する。一般に、分散剤は、基礎的分散媒および/若しくは上に挙げられたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ベヒクルに多様な滅菌した有効成分を組み込むことにより製造する。無菌の注入可能な溶液の製造のための無菌粉末の場合は、好ましい製造方法は、その前に滅菌濾過した溶液から有効成分およびいずれかの付加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および/若しくは凍結乾燥技術である。直接注入のためのよりおよび/若しくは高度濃縮溶液の製造もまた企図しており、ここでは極めて迅速な浸透をもたらして高濃度の有効成分を小さい腫瘍領域に送達する、溶媒としてのDMSOの使用が予見される。
【0115】
処方に際して、溶液は、投薬製剤と適合性の様式でかつ/若しくは治療上有効であるような量で投与することができる。製剤は、上述された注入可能な溶液の型のような多様な投薬形態物で容易に投与されるが、しかし、薬物放出カプセルおよび/若しくは類似のものもまた使用しうる。
【0116】
例えば、水性溶液での非経口投与のためには、該溶液は必要な場合は適して緩衝されるべきであり、かつ/または液体希釈剤を最初に十分な生理的食塩水および/若しくはブドウ糖で等張にすべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および/若しくは腹腔内投与にとりわけ適する。これに関して、使用しうる無菌の水性媒体は、本開示に照らして当業者に既知であろう。例えば、1投薬量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し得、かつ/または1000mlの皮下投与法液体に添加しかつ/若しくは提案される注入部位に注入し得るかのいずれかである(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”第15版、1035−1038および/若しくは1570−1580ページを参照されたい)。投薬量の若干の変動が、処置され
ている被験体の状態に依存して必然的に起こることができる。投与の責任を負う人は、いずれにしても、個々の被験体の適切な用量を決定することができる。
【0117】
静脈内および/若しくは筋肉内注入のような非経口投与のため処方された化合物に加え、他の製薬学的に許容できる形態物は、例えば、経口投与のための錠剤および/若しくは他の固形物;リポソーム製剤;持続放出カプセル剤;ならびに/またはクリーム剤を包含する現在使用されているいずれかの他の形態物を包含する。
【0118】
本発明の鼻溶液および/若しくはスプレー剤、エアゾル剤ならびに/または吸入剤もまた使用しうる。鼻溶液は通常、液滴および/若しくはスプレーで鼻通路に投与されるよう設計された水性溶液である。鼻溶液は、それらが鼻分泌物に多くの面で類似であるように製造され、その結果正常な繊毛作用が維持される。従って、水性の鼻溶液は通常等張でありかつ/若しくは5.5ないし6.5のpHを維持するようわずかに緩衝される。加えて、眼製剤で使用されるものに類似の抗菌性保存剤、および/若しくは適切な薬物安定剤を、必要とされる場合は製剤中に包含しうる。
【0119】
他の投与様式に適する付加的な製剤は、膣坐剤および/若しくは坐剤を包含する。直腸坐剤もまた使用しうる。坐剤は、直腸、膣および/若しくは尿道への挿入のための、通常は薬用の多様な重量および/若しくは形状の固体の投薬形態物である。挿入後に坐剤は腔液で軟化、融解かつ/若しくは溶解する。一般に、坐剤について、伝統的な結合剤および/若しくは担体は、例えばポリアルキレングリコールおよび/若しくはトリグリセリドを包含することができ;こうした坐剤は0.5%ないし10%、好ましくは1〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成しうる。
【0120】
経口製剤は、例えば製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムおよび/若しくは類似のもののような通常使用される賦形剤を包含する。これらの組成物は、溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、除放製剤および/若しくは散剤の形態をとる。ある定義される態様において、経口の製薬学的組成物は不活性の希釈剤および/若しくは吸収可能な可食性担体を含むことができ、かつ/またはそれらは硬および/若しくは軟殻ゼラチンカプセルに封入することができ、かつ/またはそれらは錠剤に圧縮することができ、かつ/またはそれらは食餌の食物と直接組み込みうる。経口の治療的投与のためには、有効成分は賦形剤と組み込まれることができ、かつ/または摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤および/若しくは類似のものの形態で使用しうる。こうした組成物および/若しくは製剤は最低0.1%の有効成分を含有すべきである。組成物および/若しくは製剤の比率はもちろん、単位の重量の約2ないし約75%の間、および/若しくは好ましくは25〜60%の間で変動することができ、かつ/または便宜的にそうでありうる。こうした治療上有用な組成物中の有効成分の量は、適する投薬量を得ることができるようである。
【0121】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤および/若しくは類似のものは以下、すなわちトラガカントガム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンおよび/若しくはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸および/若しくは類似のもののような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤もまた含有することができ;かつ/あるいは、ショ糖、乳糖および/若しくはサッカリンのような甘味料、ならびに/またはペパーミント、冬緑油および/若しくはサクランボ香料のような着香料を添加しうる。投薬単位形態物がカプセル剤である場合、それは、上の型の物質に加え液体担体を含有しうる。コーティングとして、および/若しくは投薬単位の物理的形態を別の方法で改変するために、多様な他の物質が存在しうる。例えば、錠剤、丸剤および/若しくはカプセル剤をセラック、糖および/若しくは双
方で被覆しうる。エリキシルのシロップ剤は、有効成分甘味料としてショ糖保存剤としてメチルおよび/若しくはプロピルパラベン、色素ならびに/またはサクランボおよび/若しくはオレンジ香料のような香料を含有しうる。
【0122】
支持体。本発明の組成物の支持体は、粉末、または顆粒、ペレット、ビーズ、小球、小ビーズ(beadlet)、マイクロカプセル、ミリスフェア(millisphere)、ナノカプセル、ナノスフェア、ミクロスフェア、小板、ミニ錠剤、錠剤若しくはカプセルのような多微粒子でありうる。粉末は、微粉化(粉砕、微粉状化、ナノサイズ化(nanosized)、沈殿)した形態の有効成分、若しくは付加的分子の凝集体、または複数の成分の配合物凝集体、または有効成分および/若しくは添加物の凝集体の物理的混合物を構成する。こうした支持体は、例えば:乳糖、ショ糖若しくはD−ブドウ糖のような糖;マルトデキストリン若しくはデキストランのような多糖;デンプン;結晶セルロース若しくは結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース化合物;リン酸二カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、タルク若しくはチタニアのような無機物質;およびマンニトール、キシリトール、ソルビトール若しくはシクロデキストリンのようなポリオールのような当該技術分野で既知の多様な物質から形成されうる。
【0123】
支持体は固体物質である必要はないことが強調されるべきであるとは言え、しばしばそれは固体であることができる。例えば、支持体上の被包化被膜は、液体、半液体、粉末若しくは他の支持体物質を取り囲みかつ被包化する固体の「殻」として作用しうる。こうした支持体もまた本発明の範囲内にある。それは、終的にその支持体が固体でなければならない部分である担体であるためである。
【0124】
賦形剤。本発明の銀ナノ粒子製薬学的組成物は、場合によっては、ときに添加物と称される1種若しくはそれ以上の添加物を包含しうる。賦形剤は、被包化被膜を包含する組成物中の被包化被膜に含有されうるか、若しくは被包化被膜に被覆されるような固体担体の一部であり得るか、若しくは固体担体を形成する成分内に含有され得る。あるいは、賦形剤は製薬学的組成物に含有されうるがしかし固体担体それ自身の一部でないことができる。適する賦形剤は、固体担体、被包化コーティング若しくは製薬学的投薬形態物の製造に関わる工程を容易にするのに一般に使用されるものである。これらの工程は、凝集、空気懸濁冷却、空気懸濁乾燥、ボール粉砕、コアセルベーション、微粉砕、圧縮、ペレット化、低温ペレット化、押出、造粒、均質化、抱接複合体形成、凍結乾燥、ナノ被包化、融解、混合、成形、パンコーティング、溶媒脱水、超音波処理、球形化、噴霧冷却、噴霧凝結、噴霧乾燥、若しくは当該技術分野で既知の他の工程を包含する。賦形剤はまた、当該技術分野で公知であるとおり前被覆若しくは被包化もしうる。
【0125】
本発明の銀ナノ粒子は、HIVおよび他のレトロウイルスに対する局所クリーム剤として使用しうる。記述されるクリーム剤はコンドーム中でもまた使用しうる。
【0126】
生理的食塩水のような無菌の静脈内(iv)溶液は、ウイルス負荷量の低下および免疫不全の発症の遅延において有効でありうる。手術野の特定領域の浄化においてまた生理的食塩水洗浄を使用する外科医はそれが有用であることを知っているとみられる。銀ナノ粒子は単独で若しくはリポソームと組合せで使用しうる。これらの形態は、単独で若しくは抗真菌試薬とともに銀ナノ粒子を含む口腔洗浄薬の形態に再構成し得る。単独で若しくはペンタミジンとともにの吸入剤の形態。経口で摂取されるべき錠剤での形態の銀ナノ粒子の使用。リポソームの形態の経口使用はリパーゼ分解を回避するために持続放出カプセルで与えられる必要があるとみられる。
【0127】
緩衝眼溶液−HIV関連網膜炎に罹っている特許のため。緩衝は、銀粒子が引き起こし
うるpH変化のため必要である。筋肉内注入のための高度濃縮溶液−医療従事者の針刺し傷害の処置を容易にするとみられる。この点に関して、溶媒としてのDMSOの使用は、高濃度の銀ナノ粒子を小領域に送達する極めて迅速な浸透を与えるとみられる。
【0128】
坐剤の形態−同性愛者における化学的保護のため。主感染部位が大腸および直腸であるためである。
【0129】
化学保護膣洗浄液およびクリーム剤−洗浄液は標準的酢酸溶液への性的曝露前に有用でありうる。クリーム剤は避妊と併せて使用するため9−ノノキシノール殺精子剤と混合しうる。
【0130】
膣スポンジ−これは銀ナノ粒子がノノキシノールとともに数時間にわたり持続放出されうるように売春婦により使用され得る。
【0131】
銀ナノ粒子で内張した手袋は、血液および体液を多量に扱う外科医および他の医療従事者に役立ちうる。
【0132】
抗菌剤と組合せの液体石鹸中の銀ナノ粒子の使用は病院および研究施設で有用でありうる。これはおそらく効果的でないのは通常の抗菌石鹸と同じとは言え、従業員および病院の保険会社はそれを高く評価するとみられる。
【0133】
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体を、ポリビニルピロリドンの水性溶液にゆっくりと添加しかつ十分に混合しうる。次に、No.25〜30メッシュの糖球体を、流動床造粒装置中で貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体−薬物の溶液で被覆する。薬物を含有するペレットを乾燥し、そしてOpadry Clearの封鎖塗および内的混合放出コーティングを、98/2 アセトン/水中のエチルセルロースおよびフタル酸ジエチルの溶液を噴霧することにより活性粒子に塗布した。フタル酸ジエチルで可塑化したエチルセルロースおよびHPMCPの混和物の外的コーティングを内的コーティングを有する活性粒子に噴霧して、改変放出プロファイルビーズを製造した。これらのビーズを、カプセル充填装置を使用して硬ゼラチンカプセルに充填して、貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体のミニ錠剤、2.5、5.0、7.5、8.0、12.0、16.0および20.0mgを製造する。
【0134】
単一のカプセル中の包被製剤中の第一の有効成分の即時放出および第二の有効成分の持続放出のためのカプセル。貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体を、凍結噴霧、凍結乾燥、真空乾燥、高温乾燥、高温真空乾燥などして、単離および精製後に粉末を生じうる。以下は、カプセルの一部としての貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体の一例である。当業者は、混合された即時、中間および長期すなわち持続放出でこれらの製剤を製造しうることを認識するであろう。
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリンMD−40
シロイド(Syloid)
ステアリン酸
カプセル 1
ゲルカプセルでの放出のための製剤:
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリンMD−40
シロイド(Syloid)
ステアリン酸
ゲルカプセル 1
坐剤での有効成分の放出のための製剤:
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリンMD−40
シロイド(Syloid)
ステアリン酸
ミツロウ/グリセロール
発泡錠での、包被製剤中の第一の有効成分の即時放出および第二の有効成分の持続放出のための発泡錠:
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリンMD−40
ステアリン酸
重炭酸ナトリウム
カプレットでの即時放出のため:
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリンMD−40
ステアリン酸
カプレットに圧縮する
液体組成物では、本発明は後に続くとおり提供されうる:
貴金属ナノ粒子若しくはナノワイヤ−ポリオール若しくはポリマー複合体
賦形剤
香料(flavorant)
生物適合性の等張の液体(例えば生理的食塩水)
緩衝剤
【0135】
本明細書に記述される特定の態様は具体的説明の目的で、そして本発明の制限としてでなく示されことが理解されるであろう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から離れることなく多様な態様で使用し得る。当業者は、わずかに慣例の実験を使用して、本明細書に記述される特定の手順に対する多数の同等物を認識するであろうか、若しくは確認することが可能であろう。こうした同等物は本発明の範囲内にあるとみなされ、そして請求の範囲により包括される。
【0136】
本明細で挙げられる全部の刊行物および特許出願は、本発明の属する技術分野の当業者の熟練の水準を暗示する。全部の刊行物および特許出願は、各個々の刊行物若しくは特許出願が引用することにより組み込まれることをとりわけかつ個々に示された場合と同一の程度まで、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0137】
請求の範囲において、「含んでなること」、「包含すること」、「運搬すること」、「有すること」、「含有すること」、「伴うこと」などのような全部の移行句は、非限定的
、すなわち限定されるものでないが挙げることができることを意味していると理解されるべきである。それぞれ「よりなる」および「より本質的になる」という移行句のみが、閉鎖な若しくは半閉鎖的移行句である。
【0138】
本明細書に開示かつ特許請求される組成物および/若しくは方法の全部は、本開示に照らして過度の実験を伴わずに作成および実施し得る。本発明の組成物および方法は好ましい態様に関して記述された一方、本明細書に記述される組成物ならびに/または方法および該方法の段階若しくは段階の順序に、本発明の概念、技術思想および範囲から離れることなく変動が適用されうることが当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の双方で関係するある剤を本明細書に記述される剤の代わりに用いうる一方で同一若しくは類似の結果が達成されるとみられることが明らかであろう。当業者に明らかな全部のこうした置換物および改変は、付随する請求の範囲により定義されるところの本発明の技術思想、範囲および概念内にあると思われる。
【0139】
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
本発明の特徴および利点のより完全な理解のため、今や、付随する図面に沿って本発明の詳細な記述への言及がなされ、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1a】合成した銀ナノワイヤのSEM像である。ナノワイヤの切子面が明瞭に観察される。挿入図は同一サンプルのより低倍率のSEM像を示す。
【図1b】ナノワイヤの図解モデルである。
【図1c】同一サンプルのXEDパターンである。
【図1d】1本のナノワイヤのEDSスペクトルである。Cシグナルは該ナノワイヤのTEM格子およびPVPコーティング双方から生じ;OおよびNはまたPVPコーティングからである一方、CuはTEM格子から生じる。
【図2a】純粋なPVPのX線光電子スペクトルである。図2aはPVP反復単位であり、3種の異なる炭素種が1、2および3と標識されている。
【図2b】C 1sスペクトルである。
【図2c】N 1sスペクトルである。
【図2d】O 1sスペクトルである。
【図3a−3d】PVP被覆した銀ナノワイヤのX線光電子スペクトルである。図3aはC 1sスペクトルである。図3bはN 1sスペクトルである。図3cはO 1sスペクトルである。図3dはAg 3d5/2およびAg 3d3/2スペクトルである。
【図4a−4f】周囲条件での空気への曝露後の異なる時点での同一サンプルのTEM像である。図4aは合成直後のサンプルである。図4bおよび図4cは3週後の該サンプルの画像である。図4d〜図4fはそれぞれ4、5および24週後の画像である。
【図5a−5d】周囲条件での空気への曝露後の異なる時点での銀ナノワイヤのSEM像である。図5aおよび図5bは4週後のサンプルの画像である。図5cおよび図5dは図4fに提示されるサンプルのSEM像である。
【図6a−6b】定期的電子線放射に曝露しなかった2種の異なるサンプルのTEM像である。(図6a)6週および(図6b)24週後のサンプル。
【図7】図6bに示されるナノワイヤの多様な倍率でのHAADF像である。
【図8a−8b】前の図に提示されるナノワイヤの先端の一方の組成分析である。図8bは微結晶の殻を横断するEDSライン走査である。図8cはナノワイヤのコア領域を横断するEDSライン走査である。(図8d)該ワイヤの先端の3個の異なる領域の点EDS分析。
【図9a−9b】周囲条件での空気への曝露24週後の1本のナノワイヤの本体の高倍率TEM像である。図9bはシェルを構成する微結晶の1つの高解像TEM像である。挿入図は該画像のFFTに対応する。
【図10】空気への曝露24週後のサンプルの多様な領域の電子顕微鏡像である。
【図11a−11s】硫化後の銀ナノワイヤのサンプルのSEM像である。図11bないし図11dは硫化した銀ナノワイヤのHAADF像である。
【図12a−12d】図12aに提示される硫化したナノワイヤのEDSマッピングである。図12bは銀マップである。図12cはイオウマップである。図12dは炭素マップである。最後の図中で、レース状の炭素格子が明瞭に観察される。
【図13a−13b】(図13a)に提示される硫化したナノワイヤの先端の一方の(図13b)2個の異なる領域のEDS点分析である。
【図14a−14e】硫化した銀ナノワイヤのX線光電子スペクトルである。図14aはC 1sスペクトルである。図14bはN 1sスペクトルである。図14cはO 1sスペクトルである。図14dはAg 3d5/2およびAg 3d3/2スペクトルである。図14eはS 2p3/2およびS 2p1/2スペクトルである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種若しくはそれ以上のポリオール−ナノ粒子を含んでなる抗ウイルス組成物。
【請求項2】
銀ナノ粒子がナノワイヤを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
銀ナノ粒子が、約1と100nmの間の直径を含んでなるナノワイヤを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
銀ナノ粒子が約10と1,000nmの間の長さを含んでなるナノワイヤを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
銀ナノ粒子が最低約3μg/mL若しくはそれ以上の濃度で提供されるナノワイヤを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
キャッピング剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ナノ粒子がポリオールキャッピングされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ナノ粒子が、ポリ(ビニルピロリドン)若しくはポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)でキャッピングされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
金、白金、パラジウム、銅、鉄およびそれらの合金よりなる群から選択される1種若しくはそれ以上のナノ粒子を含んでなる殺生物組成物。
【請求項10】
ナノ粒子がナノワイヤを含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ナノ粒子が約1と100nmの間の直径を含んでなるナノワイヤを含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
ポリオールが、以下、すなわちアルキレングリコール(例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−、1,5−および1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、ビシクロオクタンジオール、1,10−デカンジオール、トリシクロデカンジオール、ノルボルナンジオール、ならびに1,18−ジヒドロキシオクタデカン);ポリヒドロキシアルカン(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリトリオール、キニトール、マンニトールおよびソルビトール);ならびに他のポリヒドロキシ化合物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,11−(3,6−ジオキサウンデカン)ジオール、1,14−(3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン)ジオール、1,8−(3,6−ジオキサ−2,5,8−トリメチルオクタン)ジオール、1,14−(5,10−ジオキサテトラデカン)ジオール、ヒマシ油、2−ブチン−1,4−ジオール、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ベンズアミド、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルスルホン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチオキシ)ベンゼン、1,2−、1,3−および1,4−レゾルシノール、1,6−、2,6−、2,5−および2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−および4,4’−ビフェノール、1,8−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、3,6−ジヒドロキシピリダジン、ビスフェノールA、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールC)、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ならびに他の脂肪族、ヘテロ脂肪族、飽和脂肪環、芳香族、飽和ヘテロ脂肪環およびヘテロ芳香族ポリオール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびエチレンオキシド終端ポリプロピレングリコールおよびトリオールのようなポリマーポリオール;ポリテトラメチレングリコール;ポリジアルキルシロキサンジオール;ヒドロキシ終端ポリエステルおよびヒドロキシ終端ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンポリオール);ヒドロキシ終端ポリアルカジエン(例えばヒドロキシル終端ポリブタジエン)それらの組合せ若しくは混合物の1種若しくはそれ以上を含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ナノ粒子が最低約3μg/mL若しくはそれ以上の濃度で提供されるナノワイヤを含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
銀ナノ粒子が、溶液、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、浣腸剤、エリキシル剤、シロップ剤、乳剤、ガム剤、ゲル剤、挿入物、坐剤、ゼリー剤、泡沫剤、ペースト、香剤、スプレー剤、泥膏若しくはパップ剤で利用可能にされる、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
銀ナノ粒子が即時放出のため包装される、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
銀ナノ粒子が持続放出のため包装される、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
銀ナノ粒子が単一用量に包被される、請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
銀ナノ粒子がコンドームの中若しくは周囲に配される、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
銀ナノ粒子が、カプセル、カプレット、ソフトカプセル、ゲルカプセル、坐剤、薄膜、顆粒、ガム、挿入物、香剤、ペレット、トローチ剤、舐剤、円板、パップ若しくはカシェ剤中に充填される、請求項9に記載の組成物。
【請求項20】
銀ナノ粒子の80%以上が約60分以内に放出される、請求項9に記載の組成物。
【請求項21】
銀ナノ粒子が、約90分以内の該銀ナノ粒子の90%以上の放出を含んでなる即時放出を提供される、請求項9に記載の組成物。
【請求項22】
銀ナノ粒子が、約60分ないし約8時間以内の該銀ナノ粒子の80%以上の放出を含んでなる持続放出のため包装される、請求項9に記載の組成物。
【請求項23】
ポリオールで溶解かつ還元した1種若しくはそれ以上のナノ粒子を製薬学的に許容できる担体に再懸濁して抗ウイルス組成物を形成する段階;および
該ナノ粒子を単離する段階
を含んでなる、抗ウイルス感染の予防方法。
【請求項24】
ナノ粒子を哺乳動物に提供する段階をさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗ウイルス療法が必要であることが疑われる患者に、製薬学的に許容できる担体中のポリオールで溶解かつ還元したナノ粒子を含んでなる組成物を提供する段階
を含んでなる、ウイルス感染を有することが疑われる患者の処置方法。
【請求項26】
1種若しくはそれ以上のナノ粒子が、銀、金、白金、パラジウム、銅、鉄およびそれらの合金よりなる群から選択される、請求項25に記載の方法。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−520570(P2008−520570A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541354(P2007−541354)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/040944
【国際公開番号】WO2007/001453
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(398056757)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (4)
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS, THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】