説明

銀ナノ粒子を用いたコーティング方法

【課題】銀ナノ粒子組成物、およびこの組成物を用い、ワイヤ、ファイバー、フィラメントのような断面積が小さく、長い可とう性物体をコーティングする方法を提供する。
【解決手段】銀ナノ粒子を表面張力が低い溶媒に分散させ、コーティング溶液を作成する。ワイヤをコーティング溶液から引き出し、ワイヤの上に銀ナノ粒子のコーティング層を生成する。次いで、コーティング層をアニーリングし、表面に銀クラッディングを有するワイヤを作成する。このプロセスは、銀クラッディングの上にオーバーコート層を塗布することをさらに含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、銀ナノ粒子組成物、およびこの組成物を用い、ワイヤ、ファイバー、フィラメントのような断面積が小さく、長い可とう性物体をコーティングする方法に関する。電流を流すために使用される物体、装飾のために使用される物体、音響用途に使用される物体が含まれる。また、本明細書には、このような方法および組成物によって作られた、コーティングされた/クラッド線、ファイバーおよび/またはフィラメントも開示される。
【背景技術】
【0002】
電子スイッチおよびコネクタのようないくつかの用途では、固体の銀線(すなわち、完全に銀からなるワイヤ)を使用する。これは、銀は導電性が高く、接触抵抗が低いからである。しかし、銀は、比較的高価な金属である。これらの理由およびその他の理由のため、性質は等価または向上し、および/または費用が安い銀コーティングされたワイヤ、ファイバー、および/またはフィラメントを提供することが望ましいだろう。
【0003】
いくつかの用途では、透明または無色のプラスチックワイヤを使用する。これらのワイヤを銀でクラッディングすることによって、見た目を向上させるか、または、特定の用途に向け、ワイヤの密度が大きくなるだろう。
【発明の概要】
【0004】
種々の実施形態では、ワイヤ、ファイバー、フィラメントのような断面積が小さく、長い可とう性物体をクラッディングする方法が開示されている。表面張力が低く、銀ナノ粒子を含む溶液を使用する。表面張力が低いという特徴は、表面張力が低い溶媒または極性が低い表面をもつ銀ナノ粒子のいずれかを用いることによって得ることができる。物体がこの溶液から引き出され、コーティングされた物体が作られる。次いで、コーティングされた物体をアニーリングし、この物体の上にクラッディングを形成する。
【0005】
いくつかの実施形態では、物体の上にクラッディングを形成するプロセスが開示される。銀ナノ粒子および表面張力の低い溶媒を含む銀ナノ粒子組成物が使用される。物体が銀ナノ粒子組成物から引き出され、コーティングされた物体が作られる。次いで、コーティングされた物体をアニーリングし、この物体の上にクラッディングを形成する。
【0006】
物体は、可とう性であってもよく、断面が小さくてもよい。特に、この物体の長さに対する断面の比率は2以下である。
【0007】
銀ナノ粒子は、20ナノメートル以下のトップカットを有し、粒度分布は5ナノメートル以下であってもよい。
【0008】
180℃以下の温度で約0.01分〜約60分間アニーリングしてもよい。特定の実施形態では、約100℃〜約140℃の温度でアニーリングしてもよい。約5分〜約35分間アニーリングしてもよい。
【0009】
このプロセスは、銀ナノ粒子をコーティングする前に、受け入れ層を塗布することをさらに含んでいてもよく、ここで、受け入れ層はシランを含む。
【0010】
物体の上のクラッディングは、厚みが約10ナノメートル〜約50マイクロメートルであってもよい。
【0011】
表面張力が低い溶媒は、デカリン、シクロヘキサン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ヘキサデカン、ビシクロヘキサン、およびイソパラフィン系炭化水素からなる群から選択されてもよい。
【0012】
銀ナノ粒子組成物は、約5重量%〜約40重量%の銀ナノ粒子を含んでいてもよい。
【0013】
このプロセスは、銀クラッディングの上にオーバーコート層を塗布することをさらに含んでいてもよい。ある種の実施形態では、オーバーコート層は、架橋したポリシロキサン、架橋したポリ(シルセスキオキサン)、またはポリ(ビニルフェノール)およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含む架橋した層である。
【0014】
特定の実施形態では、ワイヤの上にクラッディングを形成するプロセスが開示される。ワイヤは、裸であってもよく、電気回路に電流を保有するように設計された、固体の構造、より合わされた構造またはねじられた構造をもつ絶縁された導体であってもよい。また、ワイヤは、プラスチックワイヤであってもよい。表面張力が低い溶媒を含む銀ナノ粒子組成物を使用する。次いで、ワイヤが銀ナノ粒子組成物から引き出され、ワイヤの上にコーティングが作られる。次いで、コーティングされた物体をアニーリングし、ワイヤの上にクラッディングを形成する。
【0015】
クラッディングで覆われるワイヤは、プラスチックまたは金属であってもよい。金属ワイヤは、例えば、銅ワイヤ、アルミニウムワイヤ、タングステンワイヤ、ケイ素ワイヤなどであってもよい。プラスチックワイヤは、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンからなる群から選択される材料から作られてもよい。円形の断面をもつ、細く可とう性で連続した長さをもつ金属材料またはポリマー材料であってもよい。同様に、酸化亜鉛ワイヤのような他のワイヤを使用してもよい。
【0016】
このプロセスは、ワイヤを銀ナノ粒子組成物から引き出す前に、ワイヤを洗浄することをさらに含んでいてもよい。
【0017】
特定の実施形態では、銀ナノ粒子組成物は、表面張力が30mN/m以下であり、極性の低い複数の銀ナノ粒子と、デカリン、ヘキサン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、イソパラフィン系炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラリン、ヘキサリン、環状テルペン、環状テルピネン、シクロデセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−tert−ブチル−1−シクロヘキセン、メチルナフタレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒とを含む。
【0018】
特定の実施形態では、ワイヤは、銅、アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、ケイ素、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンからなる群から選択される材料から作られ、銀ナノ粒子組成物は、約5重量%〜約40重量%の銀ナノ粒子を含む。
【0019】
また、いくつかの実施形態では、プラスチックコアと、プラスチックコアの周囲に融合した銀ナノ粒子を含む銀クラッディングと、銀クラッディングの周囲にある任意要素の透明オーバーコート層とを含むワイヤも開示されている。ワイヤの長さに対する断面の比率は、2以下である。
【0020】
ある種の実施形態では、銀クラッディングは、厚みが約10nm〜約30マイクロメートルであり、透明オーバーコート層は、厚みが約10nm〜約5マイクロメートルである。他の実施形態では、銀クラッディングの厚みと、プラスチックコアの厚みとの比は、約1:20,000〜約1:100である。
【0021】
他の実施形態では、プラスチックコアは、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンからなる群から選択される材料から作られてもよく、オーバーコート層が存在し、オーバーコート層は、ポリ(ビニルフェノール)とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含む架橋した層である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本開示のワイヤをコーティングするプロセスを示す概略図である。
【図2】銀クラッディングと、銀クラッディングの上にオーバーコート層とを備えるワイヤの断面図である。
【図3】銀−クラッドプラスチックワイヤの図である。
【図4】銀−クラッド銅ワイヤの図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の記載では、明確にするために特定の用語を使用するが、これらの用語は、図面を説明するために選択される実施形態の特定の構造のみを示すことを意図しており、本開示範囲を規定したり、限定したりすることを意図したものではない。図面および以下の説明において、同様の機能をもつ要素は、同様の数字で示されていることを理解すべきである。
【0024】
「銀ナノ粒子」で使用される場合、用語「ナノ」は、粒径が約1000nm未満であることを示す。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、粒径が、約0.5nm〜約1000nm、約1nm〜約500nm、約1nm〜約100nm、特に、約1nm〜約20nmである。粒径は、本明細書では、TEM(透過型電子顕微鏡)で決定されるような銀ナノ粒子の平均直径であると定義される。
【0025】
量と組み合わせて用いられる修飾語句「約」は、述べられている値を含み、その内容によって示されている意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。ある範囲に関して用いられる場合、修飾語句「約」は、2つの終点値の絶対値によって定義される範囲も開示しているものと考えるべきである。例えば、「約2〜約4」の範囲は、「2〜4」の範囲も開示している。
【0026】
本開示は、物体を銀クラッディングでコーティングする方法に関する。一般的に、物体は、表面張力が低い銀ナノ粒子の溶液から引き出される。次いで、物体の上に形成された銀ナノ粒子のコーティングをアニーリングし、物体の上にクラッディングが作られる。この物体は、一般的に、長さに対する断面が小さく、長さに対する断面の比率が2以下であり、1以下、0.1以下、または0.001以下のものを含む。物体は、可とう性であり、いいかえると、破壊されずに曲げることができる。物体は、任意の形状であってもよい。例示的な物体は、本明細書では、ワイヤ、ファイバー、フィラメント、薄いシート、ウェブ、他の同様の物品を含む。
【0027】
銀ナノ粒子の粒径は、粒子の平均径によって決定される。銀ナノ粒子は、平均径が約100ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下であってもよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、平均径が約1ナノメートル〜約15ナノメートルであり、約2ナノメートル〜約10ナノメートルのものを含む。それに加えて、銀ナノ粒子は、粒度分布が狭い非常に均一な粒径をもつ。粒度分布は、平均粒径の標準偏差を用いて定量することができる。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、平均粒径の標準偏差が10nm以下の(5nm以下、または3nm以下を含む)狭い粒度分布をもつ。ある種の実施形態では、銀ナノ粒子は、平均粒径が約2ナノメートル〜約20ナノメートルであり、標準偏差が約1ナノメートル〜約5ナノメートルである。理論によって束縛されないが、狭い粒度分布をもち、粒径が小さいことによって、ナノ粒子を溶媒中に入れると、簡単に分散させることができ、均一な銀ナノ粒子が自己整列するため、物体の上にもっと均一なコーティングを得ることができると考えられる。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、トップカットが20ナノメートル以下である。本明細書で使用する場合、トップカットとは、銀ナノ粒子の最大粒径を指す。
【0028】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、銀元素または銀コンポジットで構成される。銀以外に、銀コンポジットは、(i)1つ以上の他の金属、(ii)1つ以上の非金属のいずれかまたは両方を含んでいてもよい。適切な他の金属としては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Niが挙げられ、特に、遷移金属(例えば、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Ni)およびこれらの混合物が挙げられる。例示的な金属コンポジットは、Au−Ag、Ag−Cu、Au−Ag−Cu、Au−Ag−Pdである。金属コンポジット中の適切な非金属としては、例えば、Si、C、Geが挙げられる。銀コンポジットの種々の要素は、例えば、約0.01重量%〜約99.9重量%、特に、約10重量%〜約90重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、銀コンポジットは、銀と、1種類、2種類またはそれ以上の他の金属との金属アロイであり、銀を、例えばナノ粒子の少なくとも約20重量%含み、特に、ナノ粒子の約50重量%よりも多い量含む。
【0029】
銀ナノ粒子は、カルボン酸または有機アミンによって表面が安定化されていてもよい。カルボン酸は、一般的に、炭素原子を4〜約20個含む。例示的なカルボン酸としては、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、エイコセン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトオレイン酸、シトロネル酸、ゲラン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、これらの異性体、およびこれらの混合物が挙げられる。有機アミンは、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンであってもよい。有機アミンは、一般的に、炭素原子を3〜約20個含む。例示的な有機アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、1,2−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミンなど、またはこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、銀ナノ粒子は、オレイン酸またはヘキサデシルアミンで安定化されている。
【0030】
他の有機安定化剤の例としては、例えば、式X−Yをもつものが挙げられ、ここで、Xは、炭素原子を約4〜約24個含む炭化水素基であり、Yは、金属ナノ粒子表面に接続する官能基であり、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、チオールおよびその誘導体、キサントゲン酸、ピリジン、ピロリドン、カルバメートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。より特定的な実施形態では、Xは、炭素原子を約6〜約18個、約8〜約14個、または約10〜約14個含む炭化水素基であってもよい。
【0031】
他の有機安定化剤の例としては、例えば、チオールおよびその誘導体、−CO(=S)SH(キサントゲン酸)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、および他の有機界面活性剤が挙げられる。有機安定化剤は、チオール、例えば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール;ジチオール、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール;またはチオールおよびジチオールの混合物からなる群から選択されてもよい。有機安定化剤は、キサントゲン酸、例えば、キサントゲン酸O−メチル、キサントゲン酸O−エチル、O−プロピルキサントゲン酸、O−ブチルキサントゲン酸、O−ペンチルキサントゲン酸、O−ヘキシルキサントゲン酸、O−ヘプチルキサントゲン酸、O−オクチルキサントゲン酸、O−ノニルキサントゲン酸、O−デシルキサントゲン酸、O−ウンデシルキサントゲン酸、O−ドデシルキサントゲン酸からなる群から選択されてもよい。ピリジン誘導体(例えば、ドデシルピリジン)および/または有機ホスフィンを含み、金属ナノ粒子を安定化させることが可能な有機安定化剤を本明細書で安定化剤として使用してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、安定化された銀ナノ粒子は、銀元素から構成される。安定化されたナノ粒子は、銀含有量が約50%以上であってもよく、約50%〜約90%のもの、好ましくは、約60重量%〜約90重量%のもの、または約70重量%〜約90重量%のものを含む。銀含有量は、任意の適切な方法によって分析することができ、例えば、銀含有量は、TGA分析または灰化法によって得ることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、安定化された銀ナノ粒子、特に、有機安定化剤(例えば、長鎖カルボン酸安定化剤または長鎖有機アミン安定化剤)で安定化された銀ナノ粒子は、表面の極性が低い。極性とは、ある分子のわずかに負に帯電した末端に対する、同じ分子のわずかに正に帯電した別の末端の間に発生する双極子−双極子分子間力を指す。例えば、HOは極性分子であるが、一方、CHは非極性分子である。いくつかの実施形態では、安定化された銀ナノ粒子の表面は、極性の低い炭化水素基で構成されている。極性は表面張力に影響を与え、極性は、任意の適切なアプローチによって決定することができる。例えば、安定化された銀ナノ粒子が膜としてコーティングされた場合、膜の表面は、水に対して非常に大きな前進接触角を示し、このことは、表面エネルギーが低く、疎水性の性質をもつことを示す。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子の表面の極性が低いことにより、銀ナノ粒子組成物の表面張力を低くすることができ、これにより物体の均一コーティングが可能になる。
【0034】
銀ナノ粒子は、当該技術分野で既知の種々の方法によって化学合成することができる。これらの化学合成された銀ナノ粒子は、一般的に、粒径が非常に小さく、均一である。例えば、銀ナノ粒子は、安定剤とともに銀化合物を溶媒に入れ、この混合物を加熱し、還元剤を加えることによって作成され、銀ナノ粒子が得られる。例示的な合成方法は、例えば、米国特許出願第12/187,499号、第12/193,225号、第12/193,203号、第12/250,727号、第12/331,573号、第12/369、861号、米国特許第7,737,497号および第7,919,015号中にみられ、これらの開示内容は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0035】
銀ナノ粒子を溶媒に溶解して銀ナノ粒子組成物を作成し、この組成物をコーティング溶液として使用することができる。銀ナノ粒子は、溶媒にきわめて溶けやすい。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子組成物は、銀ナノ粒子を約5重量%〜約60重量%(重量%)含んでおり、銀ナノ粒子を約5重量%〜約40重量%含むもの、または約8重量%〜約30重量%含むもの、または約10重量%〜約20重量%含むものも含む。
【0036】
銀ナノ粒子を溶解または分散させるために任意の適切な溶媒を使用してもよく、適切な溶媒としては、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、ヘテロ原子を含む芳香族化合物などが挙げられる。例示的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどが挙げられる。例示的なケトンとしては、アセトン、アセトフェノン、ブタノン、エチルイソプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、3−ペンタノン、メシチルオキシドが挙げられる。例示的なエステルとしては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、炭酸ジエチル、テレフタル酸ジオクチルが挙げられる。例示的なエーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、ジオキサン、ジメトキシエタン、メトキシエタンが挙げられる。例示的なヘテロ原子を含む芳香族化合物としては、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ニトロトルエンが挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、炭素原子を約6〜約28個含む炭化水素溶媒である。より特定的な実施形態では、炭化水素溶媒は、炭素原子を約7〜約18個含む芳香族炭化水素、炭素原子を約8〜約28個含む直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素、または炭素原子を約6〜約28個含む環状脂肪族炭化水素である。他の実施形態では、溶媒は、単環または多環の炭化水素であってもよい。単環溶媒としては、環状テルペン、環状テルピネン、置換シクロヘキサンが挙げられる。多環溶媒としては、別個の環をもつ化合物、組み合わさった環をもつ化合物、縮合環系をもつ化合物、架橋環系をもつ化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、多環溶媒としては、ビシクロプロピル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、シクロペンチルシクロヘキサン、スピロ[2,2]ヘプタン、スピロ[2,3]ヘキサン、スピロ[2,4]ヘプタン、スピロ[3,3]ヘプタン、スピロ[3,4]オクタン、ビシクロ[4,2,0]オクタンヒドロインダン、デカヒドロナフタレン(ビシクロ[4.4.0]デカンまたはデカリン)、ペルヒドロフェナントロリン、ペルヒドロアントラセン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,1]オクタンなどが挙げられる。他の例示的な溶媒としては、限定されないが、ヘキサン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、イソパラフィン系炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラリン、ヘキサリン、デカリン、環状テルペン、シクロデセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−tert−ブチル−1−シクロヘキセン、メチルナフタレン、およびこれらの混合物が挙げられる。用語「環状テルペン」としては、単環モノテルペン、例えば、リモネン、セリネン、テルピノレン、テルピネオール、二環モノテルペン、例えば、α−ピネン、環状テルピネン、例えば、γ−テルピネンおよびα−テルピネンが挙げられる。用語「イソパラフィン系炭化水素」は、分枝鎖アルカンを指す。
【0037】
いくつかの実施形態では、溶媒は、表面張力が低い溶媒である。この観点で、表面張力は、単位長さあたりの力(ニュートン/メートル)、単位面積あたりのエネルギー(ジュール/平方メートル)または溶媒とガラス表面との間の接触角を単位として測定することができる。表面張力が低い溶媒は、表面張力が35mN/m未満である(33mN/m未満、30mN/m未満、または28mN/m未満を含む)。特定の実施形態では、銀ナノ粒子組成物で使用される溶媒は、デカリン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ビシクロヘキサン、イソパラフィン系炭化水素などである。
【0038】
ある種の表面張力が低い添加剤をコーティング溶液に加え、均一にコーティングするために液体組成物の表面張力を下げることができる。ある種の実施形態では、表面張力が低い添加剤は、改質ポリシロキサンである。改質ポリシロキサンは、ポリエーテルで改質されたアクリル官能性ポリシロキサン、ポリエーテル−ポリエステルで改質されたヒドロキシル官能性ポリシロキサン、またはポリアクリレートで改質されたヒドロキシル官能性ポリシロキサンであってもよい。例示的な表面張力が低い添加剤としては、BYKから入手可能なSILCLEAN添加剤が挙げられる。BYK−SILCLEAN 3700は、メトキシプロピルアセテート溶媒中にヒドロキシル官能基をもつシリコーンで改質されたポリアクリレートを含むものである。BYK−SILCLEAN 3710は、ポリエーテルで改質されたアクリル官能性ポリジメチルシロキサンである。BYK−SILCLEAN 3720は、メトキシプロパノール溶媒中にポリエーテルで改質されたヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンを含むものである。他の実施形態では、表面張力が低い添加剤は、フルオロカーボンで改質されたポリマー、低分子フルオロカーボン化合物、フルオロカーボンポリマー化合物などである。例示的なフルオロカーボンで改質された分子またはポリマー添加剤としては、フルオロアルキルカルボン酸、Efka(登録商標)−3277、Efka(登録商標)−3600、Efka(登録商標)−3777、AFCONA−3037、AFCONA−3772、AFCONA−3777、AFCONA−3700などが挙げられる。他の実施形態では、表面張力が低い添加剤は、アクリレートコポリマーである。例示的なアクリレートポリマー添加剤またはコポリマー添加剤としては、King Industries製のDisparlon(登録商標)添加剤、例えば、Disparlon(登録商標)L−1984、Disparlon(登録商標)LAP−10、Disparlon(登録商標)LAP−20などが挙げられる。表面張力が低い添加剤の量は、約0.0001重量%〜約3重量%であってもよく、約0.001重量%〜約1重量%のもの、または約0.001重量%〜約0.5重量%のものを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子を含む銀ナノ粒子液体組成物は、表面張力が低く、例えば、32mN/m未満である(30mN/m未満、または28mN/m未満、または25mN/m未満のものを含む)。特定の実施形態では、液体組成物は、表面張力が約22mN/m〜約28mN/mである(約22mN/m〜約25mN/mのものを含む)。低い表面張力は、表面の極性が低い銀ナノ粒子を用いることによって、表面張力が低い溶媒に銀ナノ粒子を溶解/分散させることによって、または表面張力が低い添加剤(例えば、レベリング剤)を加えることによって、またはこれらの組み合わせによって得ることができる。
【0040】
銀ナノ粒子組成物またはコーティング溶液を加え、任意の物体の上に銀ナノ粒子を塗布することができる。単純に、物体を銀ナノ粒子組成物から引き出す。銀ナノ粒子組成物は、均一なコーティングとして物体表面にとどまる。いくつかの実施形態では、コーティングは、厚みが約10ナノメートル〜約50マイクロメートルであり、約10nm〜約30マイクロメートル、または約50nm〜約5マイクロメートル、約80nm〜約1マイクロメートルのものを含む。銀クラッディングの厚みと、ワイヤの厚みとの比は、約1:20,000〜約1:100である(約1:10,000〜約1:200、または約1:5,000〜約1:500を含む)。
【0041】
次に、コーティングを加熱して銀ナノ粒子をアニーリングする。このアニーリングによって、銀ナノ粒子が融着し、純水な銀の固体クラッディングが生成する。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子のコーティングを250℃以下の低温(200℃以下、または180℃以下、例えば、約100℃〜約140℃を含む)でアニーリングする。他の実施形態では、約80℃〜125℃未満の温度でアニーリングが行われる。使用する基材にかかわらず、加熱温度は、望ましくは、任意のすでに堆積した層または基材(単層の基材または多層基材のいずれか)の性質に悪い変化を及ぼさない温度である。例えば、約0.001分〜約10時間、特に、約0.01分〜約60分間、または約5分〜約35分間、アニーリングを実施してもよい。空気中、不活性雰囲気中(例えば、窒素下またはアルゴン下)または還元雰囲気中(例えば、1〜約20容積%の水素を含む窒素下)でアニーリングが行われてもよい。また、通常の大気圧、または例えば、約1000mbar〜約0.01mbar低減圧状態で加熱を行ってもよい。用語「加熱」は、(1)金属ナノ粒子をアニーリングするために、および/または(2)金属ナノ粒子から安定剤を除去するために十分なエネルギーを付与することができる任意の技術を包含する。加熱技術の例としては、熱による加熱(例えば、ホットプレート、オーブン、バーナー)、赤外線(「IR」)照射、レーザー光線、フラッシュ光、マイクロ光照射、またはUV照射、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
用語「アニーリング」は、一般的に、物品を加熱し、次いで冷却することを指すことに留意されたい。用語「焼結」は、通常は、粉末粒子が互いに接着するまで、融点よりも低い温度に粉末を加熱することを指す。しかし、これら2つの用語の唯一かつ実際の差は、加熱される材料の大きさである。本開示では、アニーリングされる物品は銀ナノ粒子であり、粉末であると考えることができる。用語「アニーリング」は、本明細書で使用する場合、用語「焼結」と同義語であることが意図されている。
【0043】
加熱の前に、銀ナノ粒子のコーティングは、電気的に絶縁性であってもよく、導電性が非常に低くてもよい。加熱によって、アニーリングされた銀ナノ粒子で構成される導電性クラッディング層が得られ、導電性が増す。いくつかの実施形態では、アニーリングされた銀ナノ粒子は、融着した銀ナノ粒子または部分的に融着した銀ナノ粒子であってもよい。アニーリングされた銀ナノ粒子において、ナノ粒子は、十分な粒子間接触を達成し、融着させることなく導電性の層を形成することも可能であろう。加熱することによって製造されるクラッディング層の導電性は、例えば、約100ジーメンス/センチメートル(「S/cm」)よりも大きく、約1000S/cmよりも大きく、約2,000S/cmよりも大きく、約5,000S/cmよりも大きく、または約10,000S/cmよりも大きいか、50,000S/cmよりも大きい。
【0044】
他の実施形態では、クラッディング層は、導電性ではない。加熱することによって銀ナノ粒子が融着するが、他の添加剤または残留する量の安定化剤が存在し、これらが融着した粒子の間に堆積形態で存在するために、クラッディングは、必ずしも導電性ではない場合もある。しかし、クラッディングは、銀色をしている。
【0045】
銀クラッディングを含む得られた物体を、多くの異なる用途に使用することができる。銀は、導電性が高い、周囲空気中で安定、高密度、抗菌活性などのいくつかの魅力的な性質をもつ。銀クラッディングを備えるワイヤを、これらの性質を利用するいくつかの用途(例えば、医療用デバイス、電子配線、他の消費財)で使用することができる。例えば、銀−クラッド銅ワイヤを使用し、高い導電性および低い接触抵抗を必要とする電子スイッチおよびコネクタの固体銀ワイヤと置き換えることができる。また、銀クラッディングを使用し、銀−クラッド物体が密度の差によって顕著に異なる音響効果をもつように、物体の重量を高めることができる。また、銀クラッディングは、審美的に良好な見た目または光学硬化も与える。この単純な溶液コーティングプロセスは、安価でもあり、製造という観点から操作が簡単であり、従来のめっきプロセスと比較して利点がある。
【0046】
本明細書に記載のコーティング方法を繰り返し、物体に厚いクラッディングを蓄積させてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、最終的なクラッディングの厚みは、約10ナノメートル〜約50マイクロメートル、または約50ナノメートル〜約30マイクロメートル、または約50nm〜約5マイクロメートル、または約80nm〜約1マイクロメートルであってもよい。
【0047】
所望な場合、銀クラッディングの上にさらなる層を塗布してもよい(さらなる層は、オーバーコート層と呼ばれることがある)。当該技術分野で既知の任意の層、特に良好な耐引っかき性をもつ材料を塗布してもよい。いくつかの実施形態では、使用してオーバーコート層を作成することが可能な材料としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン、ポリ(シルセスキオキサン)などが挙げられる。ポリシロキサンおよびポリ(シルセスキオキサン)の前駆体(例えば、ゾル−ゲルアプローチ)を使用し、高度に架橋したポリシロキサンまたはポリ(シルセスキオキサン)オーバーコート層を作成してもよい。ある特定の実施形態では、オーバーコート層は、架橋したポリシロキサン、架橋したポリ(シルセスキオキサン)、またはポリ(ビニルフェノール)とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂とを含む架橋した層である。オーバーコート層の厚みは、例えば、約10nm〜約10マイクロメートルであってもよく、約10nm〜約5マイクロメートル、または約50nm〜約1マイクロメートルのものを含む。いくつかの実施形態では、オーバーコート層は、可視光に対して透明である。言い換えると、オーバーコート層は無色である。これにより、銀クラッディング層の可視性が確保されるだろう。
【0048】
特定的には、本明細書で使用されるプロセスは、クラッディングワイヤに適していることが想定される。任意のワイヤは、ワイヤの直径、形状または長さにかかわらず、銀ナノ粒子組成物でコーティングされていてもよいことを注記しておくべきである。有機材料(例えば、プラスチック)および無機材料(例えば、銅)の両方をワイヤの基材として使用することができる。ワイヤは、裸であってもよく(すなわち、他の層で覆われていない)、コアの周りに他の層を付け加えることによって絶縁されていてもよい。ワイヤは、1種類がより合わされたものであってもよく(すなわち、固体)、複数種類がより合わされたもの、および/またはねじれたものであってもよい。例示的な無機材料としては、金属、例えば、銅、アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、ケイ素などが挙げられる。例示的なプラスチックワイヤとしては、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド(Nylor)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアクリレートなどの材料が挙げられる。
【0049】
場合により、物体(すなわち、ワイヤ)が銀ナノ粒子組成物から引き出される前に、受け入れ層が塗布されてもよい。受け入れ層は、物体に対する銀ナノ粒子の接着性を高めてもよい。任意の適切な受け入れ層を使用することができる。例示的な受け入れ層は、例えば、シラン、特に、アミノ基を含むシランから作られてもよい。
【0050】
本明細書には、長さに対する断面の比率が最大で2、最大で0.1、または最大で0.001のワイヤが開示されており、ワイヤは、融合した銀ナノ粒子を含む銀クラッディングと、任意要素のオーバーコート層とを備えている。銀ナノ粒子から作られる銀クラッディングは、めっき法またはスパッタリング法のような他の方法によいって作られる銀クラッディングとは異なっていることを注記しておくべきである。銀ナノ粒子から作られたクラッディングは、めっき法またはスパッタリング法から作られた銀粒子と比較して、比較的なめらかな平面をもつ融合した銀ナノ粒子を含む。もっと重要なことに、クラッディング層に存在する残留量の安定化剤またはその堆積した形態が存在することがある。これらの固有の特徴は、SEM、TEM、XPSまたはToF−SIMS法のような種々の方法によって検出することができる。いくつかの実施形態では、残留量の安定化剤またはその堆積した形態は、銀クラッディング全体の約0.001重量%〜約2重量%、または約0.001重量%〜約0.5重量%である。いくつかの実施形態では、ワイヤはプラスチックワイヤであり、オーバーコート層は透明である。
【0051】
図1は、本明細書に記載のプロセスを示す概略図である。工程100では、銀ナノ粒子コーティング溶液12が容器14内に存在している。ワイヤ20は、コーティング溶液から引き出され、ワイヤの上にコーティング22が作られる。これにより、ワイヤを連続的に製造することができる。次の工程200では、コーティング22が熱にさらされることによってアニーリングされる。その結果は、銀クラッディング32を備えるワイヤ30である。元々のワイヤ20は、クラッディングが配置される基材として役立つ。
【0052】
図2は、最終的なワイヤ30の断面図である。中心部には、元々のワイヤ20がある。上述のように、この元々のワイヤ20は、銀クラッディングを受け入れる前に、コア21と他の層とを備えていてもよい。例えば、元々のワイヤは、受け入れ層23を備えていてもよい。銀クラッディング32は、ワイヤ20を覆っている。オーバーコート層34は、銀クラッディング32の周りにあってもよい。
【0053】
ワイヤを銀ナノ粒子組成物から引き出す前に、ワイヤを洗浄することが望ましい場合がある。洗浄は、例えば、ワイヤをイソプロパノールで拭き取るか、ワイヤ表面にプラズマ処理を用いることによって行うことができる。この作業は、均一なコーティングを維持し、100%の銀クラッディングを確保するのに役立つだろう。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
この概念を示すために、粒径が約5ナノメートルのドデシルアミン−安定化された銀ナノ粒子を使用した。既知の方法を用いて銀ナノ粒子を合成した。これらの銀ナノ粒子を120℃でアニーリングし、ほぼ100%の純粋な銀を得ることができる。
【0055】
デカリンにナノ粒子を溶解/分散させ、次いで、1.0マイクロメートルのフィルタで濾過することによって、デカリン中に10重量%銀ナノ粒子を含むコーティング溶液を調製した。
【0056】
プラスチックワイヤを洗浄し、次いで、コーティング溶液が入った容器から引っ張り出した。一定の引っ張り速度を使用し、得られる濡れたコーティングの均一な厚みを確保した。室温で溶媒を乾燥させた後、コーティングされたワイヤを120℃のオーブンで10分間アニーリングした。プラスチックワイヤの上に、厚みが約200nmの輝く銀クラッディングを得た。
【0057】
図3は、得られた銀−クラッドプラスチックワイヤの図である。
【0058】
(実施例2)
実施例1の銀−クラッドプラスチックワイヤの機械的頑丈性を高めるために、ポリ(ビニルフェノール)(PVP、Mw=25,000)と、架橋剤としてメラミン−ホルムアルデヒド樹脂とを含むオーバーコートを銀クラッディングの上にコーティングした。n−ブタノール溶液中2重量%PVPを使用した。PVPに対する架橋剤の比率は、0.8重量%〜1.0重量%であった。PVPを溶解した後、使用前にオーバーコート溶液を0.2マイクロメートルのフィルタで濾過した。オーバーコート層を140℃で30分間熱によって架橋さえた。
【0059】
銀は、ワイヤの重量を変えるため、実施例1および2の銀−クラッド線は、コーティングされていないプラスチックワイヤと比較して、顕著に異なる音響効果を示した。これは、音響センサのようないくつかの用途で有用であろう。
【0060】
(実施例3)
銅ワイヤを使用し、銀−クラッド線を作成した。銅ワイヤを洗浄した後、銀ナノ粒子コーティングを実施例1に記載したように塗布した。120℃でアニーリングした後、抵抗が非常に低い輝く銀−クラッド銅ワイヤを得た。図4は、銀−クラッド銅ワイヤの図である。
【0061】
銅は、銀よりもかなり安定性が低いが、銀よりもかなり安い。電子スイッチまたはコネクタでは、酸化安定性があり、高い導電性のため、銀ワイヤが使用される。銀−クラッド銅ワイヤは、銅ワイヤをコーティングするプロセスの場合、銀ワイヤの一部分の費用であるため、単純かつ低コストでありつつ、銀ワイヤと同じ機能性を与えるだろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の上にクラッディングを作成するプロセスであって、
銀ナノ粒子および表面張力が低い溶媒を含む銀ナノ粒子組成物を使用することと、
物体を前記銀ナノ粒子組成物から引き出し、コーティングされた物体を作成することと、
前記コーティングされた物体をアニーリングし、その上に前記クラッディングを生成することとを含む、プロセス。
【請求項2】
ワイヤの上にクラッディングを作成するプロセスであって、
表面張力の低い銀ナノ粒子組成物を使用することと、
ワイヤを前記銀ナノ粒子組成物から引き出し、前記ワイヤの上にコーティングを作成することと、
前記コーティングをアニーリングし、前記ワイヤの上に前記クラッディングを生成することとを含む、プロセス。
【請求項3】
プラスチックコアと、前記プラスチックコアの周囲に融合した銀ナノ粒子を含む銀クラッディングと、前記銀クラッディングの周囲にある任意要素の透明オーバーコート層とを含み、前記ワイヤの長さに対する断面の比率が2以下である、ワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241283(P2012−241283A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94721(P2012−94721)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】