説明

銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法

本発明は、銀ナノ粒子が分散された合成樹脂の製造方法に関し、より詳細には、合成樹脂の単量体に銀ナノ粒子を形成できる特殊の構造を有する有機銀錯体化合物を溶解し、重合が進行される過程で有機銀錯体化合物が分解して、銀ナノ粒子が分散された合成樹脂を製造することを特徴とする。本発明は、製造工程が簡単且つ経済的であり、銀ナノ粒子が均一に分散された合成樹脂の製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノ粒子が分散含有された合成樹脂及びその製造方法に関し、より詳細には、合成樹脂の単量体に銀ナノ粒子を形成できる特殊の構造を有する銀錯体化合物を溶解し、重合が進行されると同時に有機銀錯体化合物が分解して、銀ナノ粒子が分散含有された合成樹脂を製造することを特徴とする製造方法及びこれにより製造された銀ナノ粒子分散樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂は、生活用品、合成繊維、フィルター、電子材料など、日常生活に多くの素材として使用されており、機能補強が必要な場合が多い。よく知られたように、銀(silver)は、貴金属であって、人体に無害で、毒素を除去するだけではなく、バクテリア、ウイルス及びカビなど、約650余種の病原性微生物の新陳代謝作用酵素を無力化させて、一般抗生剤が制御できない細菌を始めとした菌類及びウイルスなどにも卓越な効果を発揮する、非常によい天然抗生剤として知られている。したがって、銀ナノ粒子の含まれた樹脂は、抗菌性樹脂、帯電防止樹脂、電磁波遮蔽などに有用に使用できる。
【0003】
抗菌性樹脂は、食飲料容器、上水配管、冷蔵庫用容器、加湿器水槽、医療用容器などに多様に活用することができる。また、樹脂に銀ナノ粒子が分散された樹脂は、電子製品の電磁波遮蔽材料として効果的に使用でき、家電製品の静電気が防止される樹脂として幅広く活用できる。
【0004】
最近は、銀ナノ粒子と合成樹脂との親和性を高め、銀ナノ粒子が分散された樹脂を製造するにおいて、費用節減と製造工程の簡便化を達成するための試みがたくさん進行されている。
【0005】
銀ナノ粒子が分散された樹脂は、その製造方法が多様であるが、次のように要約できる。スーパーミキサーにポリプロピレン(PPJ700、Hyosung Corp., 大韓民国)を入れて、40分間回転させ、温度を55〜65℃に維持した後、銀ナノ粒子コロイド溶液を配合器に投入後、さらに20〜30分間高速回転させる。その後、分散剤としてワックス(商品名:X861、Bayer)を投入し、5〜10分間さらに回転させて製造するような、物理的な力を利用して銀ナノ粒子を分散させる方法(大韓民国公開特許公報第2005−0047029号)が知られている。また他の方法として通常的に使用されるミキサーの内部温度を上昇させて一定に維持した後、PVC、PEのような汎用プラスチック及びPETやPCのようなエンジニアリングプラスチック樹脂と高濃度透明コロイドシルバー水溶液を混合した原料を前記ミキサーに入れて攪拌混練した後、150〜300℃の適正温度を維持し、押出機で押出して所定の大きさと形に切断して銀ナノ分散樹脂を製造する方法(大韓民国公開特許公報第2005−0079261号)がある。また、合成樹脂と銀粉末とアルミニウム粉末とを混合した後、180〜230℃まで温度を上げて、攪拌装置により攪拌し、銀粉末を溶融混合して銀ナノ分散合成樹脂を製造する方法(大韓民国公開特許公報第2003−0003203号)が使用されている。
【0006】
上述の従来技術は、既に高分子合成樹脂を単量体から重合して得た後、予め製造された銀ナノコロイド溶液や固体粉末状態に分散させる方法である。したがって、分散を容易にするために分散剤が必要であって、物理的な力、即ち押出機、溶融機、攪拌機またはスーパーミキサーなどが必要であるため、製造工程が複雑で、経済的ではない短所がある。
【0007】
また、大韓民国公開特許公報第2003−0049007号には、ナノ大きさの銀コロイド溶液、樹脂組成物の単量体、乳化剤、開始剤などを混合して乳化重合、分散重合、マイクロ乳化重合などの方法を通じて、銀粒子を含む樹脂組成物を製造する方法について公知されている。しかし、前記方法も同様に、銀ナノコロイド溶液を使用するため、銀粒子の分散を容易にするために乳化剤または分散剤が必要であり、樹脂に分散される銀ナノ粒子の均一度に限界がある。
【0008】
一方、大韓民国公開特許公報第2003−0031090号では、硝酸銀または酢酸銀から選択される銀塩を、アセトニトリルまたはエチレングリコールから選択される極性溶媒に溶解した後、スチレンモノマーが含まれた不飽和ポリエステル樹脂と混合して、ラジカル開始剤及び促進剤により硬化して製造することを特徴とする銀ナノ粒子を含む不飽和ポリエステル複合体の製造方法が公知されている。前記方法は、ラジカル重合過程で銀イオンが還元されて、銀ナノ粒子に成長する方法に特徴があるが、硝酸銀または酢酸銀のような銀塩を使用しており、これを溶解するための極性溶媒が必須的に要求されるばかりか、高分子樹脂に含有されるナノ粒子の均一度及び分散性に限界があって、高濃度で銀ナノ粒子が分散された樹脂を製造することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のように、従来技術で既に合成された高分子に銀ナノ粒子を分散させる他の方法とは違って、合成樹脂の単量体段階で銀ナノ粒子を形成できる前駆体、即ち有機銀錯体化合物を溶解し、重合が進行される過程で有機銀錯体化合物が分解して銀ナノ粒子が形成されることにより、銀ナノ粒子が均一に分散されて含有された合成樹脂の製造方法を提供することに目的がある。
【0010】
また、本発明の目的は、銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法において、別途の物理的な分散道具や分散剤を使用しないため、製造工程が簡単で経済的な製造方法を提供することにある。
【0011】
本出願人は、酸化銀などの銀化合物とアンモニウムカーボネートまたはアンモニウムカルバメート系化合物とを反応させ、銀がアンモニウムカーボネートまたはアンモニウムカルバメートとの複合体形態の安定した銀錯体化合物として形成されて、固体として分離されて、前記生成された銀錯体を利用して容易に銀薄膜やナノ粒子を製造することができることを確認しており、これは、本願出願人により出願された大韓民国特許出願第2006−0011083号及び大韓民国特許出願第2006−0074246号に詳細に記述されている。
【0012】
本発明者らは、前記出願に開示されている銀錯体化合物を使用する場合、従来の硝酸銀または酢酸銀などの銀塩を使用する場合のように極性溶媒を必要とせず、多様なビニール単量体に直接銀錯体化合物を溶解できるだけではなく、ラジカル重合過程または以後の熱処理過程で銀錯体化合物が徐々に分解されつつ、銀粒子に還元されることにより、数乃至数十nm大きさの銀粒子が均一に形成されて、合成樹脂内に高度に分散されることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって、本発明は、安定性及び様々なビニール単量体に対する溶解性に優れており、低い温度で分解されて、銀ナノ粒子形成が非常に容易な特殊な構造の銀錯体化合物を使用することにより、樹脂内に分散されるナノ粒子の大きさが均一で、分散性がよく、さらに高濃度で銀ナノ粒子を分散含有できる銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、特殊の構造を有する銀錯体化合物(silver complex)を少なくとも1個以上のビニール単量体(vinyl monomer)に溶解させる段階と、前記ビニール単量体を重合する段階とを含む銀ナノ粒子分散(containing)樹脂の製造方法を提供する。
【0015】
本発明に使用される前記銀錯体化合物は、化学式1で表される一つ以上の銀化合物と、化学式2、3または4で表される一つ以上のアンモニウムカルバメート、アンモニウムカーボネートおよびアンモニウムバイカーボネート系化合物からなる群より選択される1種または2種以上の混合物とを反応させて製造する。
【0016】
前記銀錯体化合物は、酸化銀などの銀化合物にアンモニウムカーボネートまたはアンモニウムカルバメートを加えると、銀がアンモニウムカーボネートまたはアンモニウムカルバメートとの複合体形態の安定した銀錯体に形成されたものであり、加熱により分解されて固体に分離され、銀ナノ粒子を生成させる物質である。
【0017】
[化学式1]
Ag
[化学式2]

[化学式3]

[化学式4]

(式中、Xは、酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフロロボレート、アセチルアセトネート、カルボキシレート、及びこれらの誘導体から選ばれる置換基であり、
nは、1〜4の整数であり、
〜Rは、互いに独立して、水素、ヒドロキシ基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C20のアリールオキシ基、C〜C30の脂肪族やC〜C20の脂環族アルキル基またはC〜C20のアリールやこれらの混合であるC〜C30のアラルキル(aralkyl)基、官能基が置換されたC〜C30のアルキル基、官能基が置換されたC〜C20のアリール基、官能基が置換されたC〜C30のアラルキル基、N、S、Oから選択されるヘテロ元素を含むC〜C20のヘテロ環化合物、高分子化合物またはその誘導体から選択されて、
乃至Rが、官能基が置換あるいは非置換のアルキル基またはアラルキル基である場合、炭素鎖内にN、S、Oから選択されるヘテロ元素を含むことができ、不飽和結合を含むことができて、
とRまたはRとRは、互いに独立して、ヘテロ原子が含まれるか含まれないアルキレンで連結されて環を形成することができる。)
【0018】
前記官能基としては、C〜C30のアルコキシ基、カルボキシ基、トリ(C〜C)アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、シアノ基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
前記化学式1の化合物は、具体的に、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸化銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀、及びその誘導体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
また、前記化学式2乃至化学式4の化合物の置換体R〜Rは、具体的に、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、アミル、ヘキシル、エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、ヒドロキシ、メトキシ、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、メトキシプロピル、シアノエチル、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、カルボキシメチル、トリメトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルプロピル、フェニル、メトキシフェニル、シアノフェニル、フェノキシ、トリル、ベンジル及びその誘導体、そしてポリアリルアミンやポリエチレンアミンのような高分子化合物、及びこれらの誘導体から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0021】
化合物としては、具体的に、前記化学式2のアンモニウムカルバメート系化合物は、アンモニウムカルバメート、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2―メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリニウムモルホリンカルバメート、ピリジニウムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種または2種以上の混合物が挙げられて、前記化学式3のアンモニウムカーボネート系化合物は、アンモニウムカーボネート、エチルアンモニウムエチルカーボネート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカーボネート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカーボネート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカーボネート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウムジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカーボネート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカーボネート、モルホリンアンモニウムモルホリンカーボネート、ベンジルアンモニウムベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカーボネート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルカーボネート、及びこれらの誘導体から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられて、前記化学式4のアンモニウムバイカーボネート系化合物は、例えば、アンモニウムバイカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、t−ブチルアンモニウムバイカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウムバイカーボネート、2−シアノエチルアンモニウムバイカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムバイカーボネート、ピリジニウムバイカーボネート、トリエチレンジアミニウムバイカーボネート、及びこれらの誘導体から選択される1種または2種以上の混合物が含まれる。
【0022】
一方、上記のアンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物またはアンモニウムバイカーボネート系化合物の製造方法は、特に制限する必要はない。例えば、米国特許第4,542,214号(1985.9.17)では、第1アミン、第2アミン、第3アミンまたは少なくとも一つ以上のこれらの混合物と二酸化炭素からアンモニウムカルバメート系化合物を製造することができると記述しており、前記アミン1モル当たり水0.5モルをさらに添加すると、アンモニウムカーボネート系化合物が得られ、水1モル以上を添加する場合は、アンモニウムバイカーボネート系化合物が得られる。この際、常圧または加圧状態で、特別な溶媒無しに製造することができるが、溶媒を使用する場合、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、エチレングリコール、グリセリンのようなグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテートのようなアセテート類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオクサンのようなエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンのようなケトン類、ヘキサン、ヘプタンのような炭化水素系、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素系、そしてクロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライドのようなハロゲン置換溶媒、またはこれらの混合溶媒などが挙げられ、二酸化炭素は、気相状態でバブリング(bubbling)するか、固相ドライアイスを使用することができ、超臨界(supercritical)状態でも反応できる。本発明で使用されるアンモニウムカルバメート系またはアンモニウムカーボネート系またはアンモニウムバイカーボネート系誘導体の製造には、前記の方法の他にも、最終物質の構造が同じであれば、公知のいかなる方法を使用してもよい。即ち、製造のための溶媒、反応温度、濃度または触媒などを特に限定する必要はなく、製造収率にも影響しない。
【0023】
前記銀錯体化合物の使用量は、ビニール単量体と銀錯体化合物の混合物重量に対して0.01乃至5重量%使用されることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1重量%使用することが好ましい。銀錯体化合物の含量が0.01重量%未満と少ない場合は、銀ナノ粒子含有による効果、即ち、抗菌効果、電磁波遮蔽効果または静電気防止効果などが微弱であり、前記含量が5重量%を超過して多い場合は、その追加的な効果の増加が微弱であって、経済的に不利であり、また高分子樹脂の物性に影響を与える可能性があるため、前記範囲内で使用することが好ましい。また、アンモニウム基のアルキル鎖(R乃至R)の長さによって、単量体に対する溶解度が決定される。鎖の長さが長くなるほど疎水性性質が増加し、スチレンのような非極性単量体に対する溶解度が増加して、アルキル鎖が短くて分岐が多いほど、ビニールピロリドンのような極性単量体によく溶解される。特に、重合温度で銀ナノ粒子を生成させて、重合温度でアンモニウムカルバメート系、アンモニウムカーボネート系及びアンモニウムバイカーボネート系化合物の分解時、除去の容易性は、揮発性がよいものが好ましい。
【0024】
前記ビニール単量体は、ラジカル重合が可能な単量体であって、用途や目的によって選択して使用できるため、その種類に制限はないが、銀錯体化合物に対する溶解度が高いものが好ましい。前記ビニール単量体は、銀錯体化合物の化学構造とビニール単量体の極性による溶解度と関係があるが、95乃至99.99重量%の量を導入することがよく、好ましくは、99乃至99.95重量%の量である。前記ビニール単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキル基含有アクリレートビニール単量体;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有アクリレートビニール単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN−置換アミド系ビニール単量体;メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどのアルコキシアルキルアクリレートビニール単量体;ビニールクロライド、ビニリデンクロライド、ビニールフルオライド、ビニリデンフルオライド、ビニールアセテート、ビニールプロピオネート、N−ビニールピロリドン、メチルビニールピロリドン、ビニールピリジン、ビニールピペリドン、ビニールピリミジン、ビニールピペラジン、ビニールピラジン、ビニールピロール、ビニールイミダゾール、ビニールオキサゾール、ビニールモルフォリン、N−ビニールカルボキサミド、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニールカプロラクタムなどのビニール単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートビニール単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル単量体;ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレートなどのグリコール系アクリルエステル単量体;テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル単量体;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニールエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネートなどの単量体;またはこれらの2以上の混合物からなる群から選択されることができる。
【0025】
上記の銀錯体化合物を、上記の少なくと一つ以上のビニール単量体に溶解した後、ラジカル重合する。前記ラジカル重合方法は、公知の方法にしたがって、塊状重合、懸濁(suspension)重合、溶液重合、乳化(emulsion)重合などが挙げられて、その重合方法に制限はない。また、ラジカル重合開始剤も通常的に使用されるアゾ化合物または過酸化物などから選択して使用することができ、代表的には、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジベンゾイルペロキシド、ターシャリーブチルペロキシベンゾエート、ジターシャリーブチルペロキシド、ターシャリーブチルペロキシ2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルペロキシアセテート、クミルヒドロペロキシド、ジクミルペロキシド、ターシャリーブチルヒドロペロキシドなどが挙げられる。
【0026】
前記ラジカル重合段階で、銀錯体化合物が分解され、銀イオンが還元されて銀ナノ粒子が形成されるが、必要に応じて、重合段階の後に熱処理段階をさらに含むこともできる。熱処理方法は、公知のいかなる熱処理方法でも可能であり、熱処理温度は、40乃至200℃が好ましく、さらに好ましくは、80〜150℃である。これは、熱処理温度が40℃以下または200℃以上でも銀錯体化合物の分解及び還元反応が可能であるが、40℃以下では、還元処理速度が遅くて、200℃以上では、不要に温度が高いからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例4に係る、銀ナノ粒子が分散されたポリメチルメタクリレート(PMMA)の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【図2】本発明の実施例6に係る、銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドン(PVP)の透過電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(製造例)銀錯体化合物の製造
下記製造例のように、銀化合物、アンモニウム系化合物を使用して銀錯体化合物を製造した。
【0030】
(製造例1)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、粘性のある液体の2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート3.25g(10.75ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加し、常温で反応した。前記反応溶液は、最初は黒色懸濁液(slurry)で反応が進行され、錯化合物が生成されるにつれて色が薄くなり、透明に変わることを観察することができ、2時間反応させた結果、無色透明な溶液が得られ、錯化合物が成功的に得られたことを確認することができた。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、未反応酸化銀を除去した後、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これをエチルアセテートで再結晶し、乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物4.22g(収率:99.4%)が得られた。
【0031】
(製造例2)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、粘性のある液体の2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート3.72g(11.61ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加した。前記反応溶液は、黒色懸濁液(slurry)で反応が進行されるにつれて段々透明な色に変わることが観察されて、2時間が経った後、完全に無色透明な溶液に変わり、錯化合物が生成されたことが分かった。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、未反応酸化銀粒子を除去した後、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物4.02g(収率:85.2%)が得られた。
【0032】
(製造例3)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、粘性のある液体の2−エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート4.86g(25.37ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加した。前記反応溶液は、黒色懸濁液(slurry)で反応が進行されるにつれて段々透明な色に変わることが観察されて、2時間が経った後、完全に無色透明な溶液に変わり、錯化合物が生成されたことが分かった。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物4.33g(収率:73.9%)が得られた。
【0033】
(製造例4)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、白色固体のイソ−ブチルアンモニウムイソ−ブチルカルバメート(融点:80〜82℃)2.04g(10.75ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加し、常温で反応した。前記反応溶液は、最初は黒色懸濁液(slurry)で反応が進行され、錯化合物が生成されるにつれて色が薄くなり、透明に変わることを観察することができ、2時間攪拌しながら反応させた結果、無色透明な溶液が得られた。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物2.87g(収率:94.4%)が得られた。
【0034】
(製造例5)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、白色固体のイソ−プロピルアンモニウムイソ−プロピルカルバメート(融点:78〜80℃(dec))1.60g(10.75ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加し、常温で反応した。前記反応溶液は、最初は黒色懸濁液(slurry)で反応が進行され、錯化合物が生成されるにつれて色が薄くなり、透明に変わることを観察することができ、2時間攪拌しながら反応させた結果、無色透明な溶液が得られた。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物2.48g(収率:95.5%)が得られた。
【0035】
(製造例6)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、粘性のある液体の2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート3.27g(10.80ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、炭酸銀1.0g(3.60ミリモル)を添加した。添加した溶液は、黄色懸濁液(slurry)で反応が進行されるにつれて段々透明に変わり、5時間後は、完全に黄色の透明な溶液が形成されて、錯化合物が成功的に生成されたことを確認した。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物4.18g(収率:97.89%)が得られた。
【0036】
(製造例7)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート(融点:53〜54℃)2.97g(24.51ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加した。前記反応溶液は、黒色懸濁液(slurry)で反応が進行されるにつれて段々透明な色に変わることが観察されて、2時間が経った後、完全に無色の透明な溶液に変わり、錯化合物が生成されたことが分かった。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物2.41g(収率:60.7%)が得られた。
【0037】
(製造例8)
攪拌機付き50mlシュレンク(Schlenk)フラスコに、白色の固体であるイソブチルアンモニウムバイカーボネート3.20g(23.65ミリモル)を10mlのメタノールに溶解させた後、酸化銀1.0g(4.31ミリモル)を添加した。前記反応溶液は、黒色懸濁液(slurry)で反応が進行されるにつれて段々透明な色に変わることが観察されて、2時間が経った後、完全に無色の透明な溶液に変わり、錯化合物が生成されたことが分かった。この溶液を0.45ミクロンのメンブレインフィルター(membrane filter)を使用してフィルタリングし、真空下で溶媒を全て除去すると、白色の固体が得られるが、これを乾燥した後、重量を測定した結果、銀錯体化物3.21g(収率:76.42%)が得られた。
【0038】
(実施例)銀ナノ粒子が分散された樹脂の製造
下記表1のように、単量体、重合方法及び銀錯体化合物を変更しながら、銀ナノ粒子が分散された樹脂を製造した。
【0039】
【表1】

【0040】
(実施例1)銀ナノ粒子が分散されたポリスチレンの製造
疎水性単量体であるスチレン(18.04g、0.172mol)に製造例1の銀錯体化合物(0.05g)を溶解した。これにラジカル開始剤であるα、α’−アゾビスイソブチロニトリル(単量体の1mol%)を溶解した後、この溶液を重合アンプル(50mL)に入れて、凍結−解凍法(freeze-thaw method)によりガスを除去した後、密封し、70℃で24時間ラジカル重合を進行した。重合が終わった後、アンプル開封して、得られた樹脂を最終140℃で加熱し、揮発性分解生成物を除去して、最終銀ナノ分散ポリスチレンを製造した。
【0041】
(実施例2)銀ナノ粒子が分散されたポリスチレンの製造
製造例1の銀錯体化合物の代わりに、製造例2の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例1と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリスチレンを製造した。
【0042】
(実施例3)銀ナノ粒子が分散されたポリスチレンの製造
製造例1の銀錯体化合物の代わりに、製造例3の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例1と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリスチレンを製造した。
【0043】
(実施例4)銀ナノ粒子が分散されたポリメチルメタクリレートの製造
単量体としてスチレンの代わりにメチルメタクリレートを使用して、製造例1の銀錯体化合物の代わりに製造例4の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例1と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリメチルメタクリレートを製造した。
【0044】
(実施例5)銀ナノ粒子が分散されたポリヒドロキシエチルメタクリレートの製造
単量体としてスチレンの代わりにヒドロキシエチルメタクリレートを使用して、製造例1の銀錯体化合物の代わりに製造例5の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例1と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリヒドロキシエチルメタクリレートを製造した。
【0045】
(実施例6)銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドン
N−ビニールピロリドン(19.12g、0.172mol)に製造例5の銀錯体化合物(0.05g)を溶解した。これにラジカル開始剤であるt−ブチルペロキシド(単量体の1mol%)を溶解した後、この溶液を重合アンプル(50mL)に入れて、凍結−解凍法(freeze-thaw method)によりガスを除去した後、密封し、125℃で24時間ラジカル重合を進行した。重合が終わった後、アンプル開封して、得られた樹脂を最終140℃で加熱し、揮発性分解生成物を除去して、最終銀ナノ分散ポリビニルピロリドンを製造した。
【0046】
(実施例7)銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドンの製造
製造例5の銀錯体化合物の代わりに、製造例6の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例6と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドンを製造した。
【0047】
(実施例8)銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドンの製造
製造例5の銀錯体化合物の代わりに、製造例7の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例6と同一な方法により、銀ナノ粒子が分散されたポリビニールピロリドンを製造した。
【0048】
(実施例9)懸濁重合による銀ナノ分散ポリスチレンの製造
スチレン(90.2g、0.86mol)に製造例1の銀錯体化合物(0.5g)とラジカル開始剤のα、α’−アゾビスイソブチロニトリル(単量体の1mol%)を完全に溶解した後、脱ガス化して、前記溶液を、窒素気流下でバリウムサルフェート5重量%と安定剤としてポリビニールアルコール(平均分子量(Mw)50000)5重量%が溶解された溶液(500g)に速度44rpmで攪拌しながら滴下して分散した。攪拌状態を維持しながら70℃で24時間ラジカル重合を進行した。重合が終わった後、1時間静置して、沈殿物をろ過した後、ナノ粒子状のポリスチレン樹脂を得た。得られた樹脂を130℃で30分間処理し、最終銀ナノ分散された樹脂を収得した。
【0049】
(実施例10)懸濁重合による銀ナノ分散ポリスチレンの製造
製造例1の銀錯体化合物の代わりに、製造例2の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例9と同一な方法により製造した。
【0050】
(実施例11)バルク重合による銀ナノ分散ポリメチルメタクリレートの製造
コンデンサー、窒素注入装置及び攪拌装置を設けた3口丸底フラスコ(500mL)に、ラジカル開始剤であるジ−t−ブチルペロキシド(DTBP、単量体の0.2mole%)及び製造例4の銀錯体化合物0.5gをメチルメタクリレート(90.0g、0.900mol)に完全に溶解させた溶液を入れて、窒素で置換した後、80℃で30分間、85℃で50分間、60℃で4時間、95℃で6時間、130℃で1時間重合反応を進行し、ポリメチルメタクリレートのバルク重合体を製造した。
【0051】
(実施例12)バルク重合による銀ナノ分散ポリメチルメタクリレートの製造
製造例4の銀錯体化合物の代わりに、製造例8の銀錯体化合物を使用することを除いては、実施例11と同一な方法により銀ナノ粒子が分散されたポリメチルメタクリレートを製造した。
【0052】
(実施例13)アクリルの溶液重合による銀ナノ粒子分散アクリル樹脂
2−エチルヘキシルアクリレート30g、ブチルアクリレート30g、2−ヒドロキシエチルアクリレート6gと、イソプロピルアンモニウムカルバメート2.78gをエチルアセテート81gとメチルアルコール28gに溶解した後、ラジカル開始剤のα、α’−アゾビスイソブチロニトリル0.01gを入れて、開始反応を20分間攪拌しながら進行させる。その後、重合進行段階として、2−エチルヒドロキシアクリレート89g、ブチルアクリレート89g、2−ヒドロキシエチルアクリレート20g、エチルアセテート101g、メチルアルコール52g、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル0.5gを混合した溶液を90分間滴下した後、90分間攪拌する。終結段階では、エチルアセテート50g、メチルアルコール50g、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル1gを混合した溶液を60分間滴下した後、180分間攪拌する。最後に、エチルアセテート200g及びメチルアルコール120gを入れて20分間攪拌し、固形分含量35重量%の銀分散アクリル系合成樹脂を製造した。
【0053】
銀ナノ粒子分散樹脂の分散性は、ウルトラソーイングマシーンを利用して固体形態の薄膜の試片を製造して、その結果を確認するために、実施例4により製造されるポリメチルメタクリレートと実施例6により製造されるポリビニールピロリドンをそれぞれトルエンに溶かした後、グリッド上に乗せて透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM, モデル:JEOL JEM-2000 FXII)で観察して、これを図1と図2にそれぞれ示した。図1及び図2に示されたように、本発明により製造される樹脂は、銀粒子の大きさが均一で、樹脂に均一に分散されていることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上述のように、本発明は、特殊の構造を有する銀錯体化合物を少なくとも1個以上のビニール単量体に溶解して重合することにより、銀ナノ粒子が均一に分散された樹脂を製造する方法を提供する。
【0055】
本発明による銀ナノ錯体化合物は、重合段階に加えられる熱により、銀とアミン及び二酸化炭素に分解されつつ、重合と同時にナノメートル大きさの銀粒子が生成される。このような銀錯体化合物は、アミンのアルキル基の長さと化学構造によって多様な極性を有するビニール単量体に溶解性を有するため、多様な銀ナノ粒子が分散されたホモ重合体及び共重合体を製造することができて、銀ナノ粒子の分散性に非常に優れており、高濃度の銀ナノ粒子が均一に分散された合成樹脂を製造することができる。
【0056】
また、本発明の銀ナノ分散樹脂を製造する方法は、多様な重合方法、即ち、バルク重合、懸濁重合及び溶液重合などに多様に適用して、様々な用途の銀ナノ分散樹脂を製造することができる。
【0057】
また、本発明の銀ナノ分散樹脂は、抗菌性を示す樹脂であって、給水管、冷蔵庫用抗菌容器、電磁波遮蔽、帯電防止コーディングに使用できる優れた組成物を提供することができて、銀ナノ粒子錯体化合物の濃度を高める場合、銀ナノ粒子の濃度を上げて、汎用合成樹脂の材料に混合するマスターバッチ化することにより、工程段階を減らして経済的であり、コストが節減されて、工程時間を減らすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される銀化合物と、化学式2〜4で表されるアンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物及びアンモニウムバイカーボネート系化合物からなる群より選択される1種または2種以上の混合物とを反応させて製造される銀錯体化合物を、ビニール単量体に溶解させる段階と、
前記ビニール単量体をラジカル重合する段階と、
を含む銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
[化学式1]
Ag
[化学式2]

[化学式3]

[化学式4]

(式中、Xは、酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフロロボレート、アセチルアセトネート、カルボキシレート、及びこれらの誘導体から選ばれる置換基であり、
nは、1〜4の整数であり、
〜Rは、互いに独立して、水素、ヒドロキシ基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C20のアリールオキシ基、C〜C30の脂肪族やC〜C20の脂環族アルキル基またはC〜C20のアリールやこれらの混合であるC〜C30のアラルキル(aralkyl)基、官能基が置換されたC〜C30のアルキル基、官能基が置換されたC〜C20のアリール基、官能基が置換されたC〜C30のアラルキル基、N、S、Oから選択されるヘテロ元素を含むC〜C20のヘテロ環化合物、高分子化合物またはその誘導体から選択されて、
乃至Rが、官能基が置換あるいは非置換のアルキル基またはアラルキル基である場合、炭素鎖内にN、S、Oから選択されるヘテロ元素を含むことができ、不飽和結合を含むことができて、
とRまたはRとRは、互いに独立して、ヘテロ原子が含まれるか含まれないアルキレンで連結されて環を形成することができる。)
【請求項2】
前記化学式1の銀化合物は、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸化銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀、及びこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項3】
〜Rは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、アミル、ヘキシル、エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、ヒドロキシ、メトキシ、メトキシエチル、メトキシプロピル、シアノエチル、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、カルボキシメチル、トリメトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルプロピル、フェニル、メトキシフェニル、シアノフェニル、フェノキシ、トリル、ベンジル、ポリアリルアミン、ポリエチレンアミン、及びこれらの誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記化学式2のアンモニウムカルバメート系化合物は、アンモニウムカルバメート、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2―メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリニウムモルホリンカルバメート、ピリジニウムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種または2種以上の混合物であり、前記化学式3のアンモニウムカーボネート系化合物は、アンモニウムカーボネート、エチルアンモニウムエチルカーボネート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカーボネート、n−ブチルアンモニウムn−ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート、t−ブチルアンモニウムt−ブチルカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウム2−エチルヘキシルカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウム2−メトキシエチルカーボネート、2−シアノエチルアンモニウム2−シアノエチルカーボネート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウムジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカーボネート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカーボネート、モルホリンアンモニウムモルホリンカーボネート、ベンジルアンモニウムベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカーボネート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルカーボネート、及びこれらの誘導体から選択される1種または2種以上の混合物であり、前記化学式4のアンモニウムバイカーボネート系化合物は、アンモニウムバイカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、t−ブチルアンモニウムバイカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウムバイカーボネート、2−シアノエチルアンモニウムバイカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムバイカーボネート、ピリジニウムバイカーボネート、トリエチレンジアミニウムバイカーボネート、及びこれらの誘導体から選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記銀錯体化合物は、前記化学式2乃至化学式4のいずれかの化合物に対応するアミン化合物に二酸化炭素を加えて、対応するアンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物またはアンモニウムバイカーボネート系化合物を製造した後、これを前記化学式1の銀化合物と反応させることにより製造されることを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ビニール単量体は、アルキル基含有ビニール単量体、ヒドロキシル基含有ビニール単量体、N−置換アミド系ビニール単量体、アルコキシアルキルアクリレートビニール単量体、シアノアクリレートビニール単量体、エポキシ基含有アクリル単量体、アクリル酸エステル単量体から選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ビニール単量体は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ビニールクロライド、ビニリデンクロライド、ビニールフルオライド、ビニリデンフルオライド、ビニールアセテート、ビニールプロピオネート、N−ビニールピロリドン、メチルビニールピロリドン、ビニールピリジン、ビニールピペリドン、ビニールピリミジン、ビニールピペラジン、ビニールピラジン、ビニールピロール、ビニールイミダゾール、ビニールオキサゾール、ビニールモルフォリン、N−ビニールカルボキサミド、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニールカプロラクタム、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニールエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネートから選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ラジカル重合段階後に、40〜200℃で熱処理する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の銀ナノ粒子分散樹脂の製造方法により製造される銀ナノ粒子分散樹脂。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−506747(P2011−506747A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539291(P2010−539291)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007323
【国際公開番号】WO2009/078618
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505335441)インクテック カンパニー リミテッド (19)
【Fターム(参考)】