銀合金、そのスパッタリングターゲット材及びその薄膜
本発明は、カラー液晶ディスプレイの製造工程である加熱工程を経ても、熱劣化による反射率の低下が極めて少なく且つ硫化による黄色化を生じにくいという2つの特性を併せ持った反射電極膜を形成しうるAg−Pd−Cu−Ge系銀合金を提供することを目的とする。 本発明に係る銀合金は、Agを主成分とし、Pd含量を0.10〜2.89wt%、Cu含量を0.10〜2.89wt%、Ge含量を0.01〜1.50wt%とし、且つPd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%として、少なくとも4元素からなる組成を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性・耐硫化性に優れた銀合金、その銀合金の組成を有するスパッタリングターゲット材、その銀合金薄膜及び銀合金ペーストに関する。さらに、その銀合金薄膜は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ或いはLED(発光ダイオード)等の電子部品の反射膜、反射電極膜、電極膜又は配線等の用途に適するものである。さらに、その銀合金薄膜は、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、或いは、ヘッドライト、プロジェクタの投影ランプ等のライト部品の反射膜の用途に適し、また電磁波遮蔽シールド膜になりうるものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイの製造において、カラーフィルター等の組みつけ等で行われる加熱工程では250℃程度まで加熱されるため、反射電極膜は、その加熱に耐えうる耐熱性が求められる。従来、反射電極膜としてAl(アルミニウム)やAlを主成分とする合金が用いられてきたが、高反射率と低抵抗率を期待して反射電極膜材料として銀合金の検討がなされている。
【0003】
例えば、反射電極膜や反射配線電極膜に適した銀合金についてAg(銀)−Pd(パラジウム)−Cu(銅)系銀合金の開示が本出願人によってなされている。(例えば特許文献1〜3を参照。)。
【特許文献1】特開2000−109943号公報、請求項4
【特許文献2】特開2001−192752号公報、請求項1
【特許文献3】特開2001−226765号公報、請求項2
【0004】
特許文献1〜3に記載されたAg−Pd−Cu系銀合金は、純銀と比較して耐候性が向上する。しかし、Ag−Pd−Cu系銀合金からなる反射電極膜は、上記加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、表面ラフネスの成長やヒロックの発生が多少なりとも生じてしまい、反射率の低下が起きてしまった。さらに、加熱により硫化が促進され、耐硫化性については充分な改善がなされていなかった。Ag−Pd−Cu系銀合金の硫化に伴って反射電極膜の黄色化が生じ、カラー液晶ディスプレイの輝度の低下をもたらした。そこで、より高性能、すなわちより高い耐熱性と、従来の銀合金では得られていない耐硫化性を有する銀合金が求められていた。
【0005】
ところで、カラー液晶ディスプレイの製造時の加熱工程を経ないCD−ROM等の光学記録媒体の反射膜として、Ag−Pd系銀合金にGe(ゲルマニウム)を含有させる発明の開示がある(例えば特許文献4を参照。)。ここで、Geは銀合金の耐候性、具体的には反射膜の長時間使用による反射率低下を防止する効果があるとしている。
【特許文献4】特開2003−193155号公報、請求項1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カラー液晶ディスプレイの製造工程である上記加熱工程を例とする250℃程度の加熱工程を経ても、熱劣化による反射率の低下が極めて少なく且つ硫化による黄色化を生じにくいという2つの特性を併せ持った反射電極膜を形成しうるAg−Pd−Cu−Ge系銀合金を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金の形態として銀合金スパッタリングターゲット材、銀合金薄膜及び銀合金ペーストを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金を薄膜化することで、反射膜、配線、電極又は反射電極として利用することを目的とし、さらにAg−Pd−Cu−Ge系銀合金からなる反射膜、有孔型半透過膜、配線、電極又は反射電極を備えた自発光型ディスプレイ、フラットパネルディスプレイを提供することを目的とする。ディスプレイ用途では、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜の反射率の低下、硫化が少ないため、輝度を高くすることが出来る。さらに耐候性が向上することに伴い、本発明に係る銀合金薄膜を、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、ヘッドランプ又はプロジェクタ用ランプ等のライト部品の反射膜として利用することを目的とし、或いはLED等の電子部品の反射膜、配線、電極又は反射電極として利用することを目的とする。また、本発明に係る銀合金薄膜を、電磁波遮蔽シールド膜として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、耐熱性と耐硫化性に優れた銀合金を開発するため銀合金の組成を鋭意検討した結果、Ag−Pd合金にCuとGeを同時に存在させることで、CuとGeの相乗作用によって優れた耐熱性が得られ、且つGeの作用によって耐硫化性が得られることを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る銀合金は、Agを主成分とし、Pd含量を0.10〜2.89wt%、Cu含量を0.10〜2.89wt%、Ge含量を0.01〜1.50wt%とし、且つPd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%として、少なくとも4元素からなる組成を有することを特徴とする。ここで、本発明に係る銀合金では、Ag含量を97.00〜99.79wt%として、4元素のみからなる組成を有することが好ましい。さらに、CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)とすることが好ましい。
【0010】
本発明に係る銀合金スパッタリングターゲット材は、前記組成の銀合金で形成されたことを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る銀合金薄膜は、前記銀合金で形成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上である場合が含まれる。
【0013】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上である場合が含まれる。
【0014】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上である場合が含まれる。
【0015】
さらに本発明に係る銀合金薄膜は、反射膜又は薄型半透過膜若しくは有孔型有孔型半透過膜或いはパターン形成された電極又は配線であることが含まれる。これらの反射膜又は薄型半透過膜若しくは有孔型半透過膜或いはパターン形成された電極又は配線は、自発光型ディスプレイ又はフラットパネルディスプレイの構成部材である場合或いは水晶振動子用電極である場合が含まれる。また、上記の反射膜、配線、電極又は反射電極は、LED等の電子部品の構成部材である場合が含まれる。さらに本発明に係る銀合金薄膜は、電磁波を良好に反射する電磁波遮蔽シールド膜であることが含まれる。
【0016】
さらに本発明は、本発明に係る反射膜又は有孔型半透過膜を備える、自発光型ディスプレイやフラットパネルディスプレイにも及ぶ。また本発明は、本発明に係る反射膜を備える、ヘッドライトやプロジェクタ用のランプ等のライト部品のミラーにも及ぶ。さらに本発明は、本発明に係る反射膜又は薄型半透過膜の少なくともいずれか一方を備える光学ディスク媒体にも及ぶ。ここで自発光型ディスプレイには、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、SED(サーフェイス・コンダクション・エレクトロン・エミッター・ディスプレイ若しくは表面伝導型電子放出ディスプレイ)及びFED(フィールドエミッションディスプレイ)が含まれる。フラットパネルディスプレイには液晶ディスプレイ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、TFT(Thin Film Transistor)及びC−STN(Color Super Twisted Nematic)が含まれる。光学ディスク媒体としては例えばDVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、HD−DVD、BD−R、BD−RE又はBD−ROMがある。ヘッドライト部品の形態例としては発光部の後方に配置される反射膜がある。プロジェクタの形態例としては投影用の反射ミラーがある。ランプ部品のミラーは反射体(光ピックアップ用ミラー、光通信用ミラー)が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の銀合金は、CuとGeの相乗作用によって優れた耐熱性を発揮し、且つGeの存在により優れた耐硫化性を発揮する。結果として、優れた耐熱性と耐硫化性を同時に有するものである。したがって、反射電極膜とした場合、例えば、カラー液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイの製造工程、或いは有機EL、無機EL、LED等の自発光型ディスプレイの製造工程において、加熱工程を経たとしても、熱劣化による反射率の低下が極めて少なく且つ硫化による黄色化を生じにくい。また、耐候性が向上することから本発明に係る銀合金薄膜を、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、LED等の電子部品の構成部材、或いは、ヘッドランプ又はプロジェクタのランプ等のライト部品の反射膜として利用することができる。また、本発明に係る銀合金薄膜を電磁波遮蔽シールド膜として利用することもできる。本発明に係る銀合金を銀合金ペーストとして利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】銀合金を傾注させる鋳型の一形態を示す概略図であって、鋳型の上部を加熱する場合を示す。
【図2】銀合金を傾注させる鋳型の第2形態を示す概略図であって、鋳型の下部を冷却する場合を示す。
【図3】冷却したインゴットについて押湯部のカットライン(a−a´ライン)の一形態を示す概略図である。
【図4】銀合金薄膜の成膜後のAFM画像であって、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)比較例3は、(d)は比較例5を示す。
【図5】実施例1、比較例1,3,5の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図6】銀合金薄膜の250℃1時間の加熱処理後のAFM画像であって、(a)は実施例2、(b)は比較例2、(c)は比較例4、(d)は比較例6を示す。
【図7】実施例2、比較例2,4,6の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図8】Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜のGe含量変化による、250℃1時間の加熱処理後のAFM画像であって、(a)は実施例3、(b)は実施例4、(c)は実施例5、(d)は比較例4を示す。
【図9】実施例3及び比較例4の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図10】Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜のGe含量変化による、高温高湿処理(85℃90%RH、30分後)のAFM画像であって、(a)は実施例6、(b)は実施例7、(c)は実施例8、(d)は比較例7を示す。
【図11】実施例14、比較例11,参考例1の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図12】実施例15、比較例12,比較例13、参考例2の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0020】
本実施形態に係る銀合金は、Agを主成分とし、Ag,Pd,Cu,及びGeの少なくとも4元素からなる組成を有する。本実施形態に係る銀合金はAgを主成分とするが、反射電極膜材料とする場合、Al若しくはAl合金と比較して、反射電極膜の高反射率と低抵抗率を期待するものである。本実施形態に係る銀合金は、Ag−Pd−Cu−Ge系の4元素からなる組成を基本とし、銀合金中のAg含量を97.00〜99.79wt%とすることが好ましい。もっとも、少なくとも4元素からなる組成の銀合金としたのは、基本となる組成はAg−Pd−Cu−Ge系であるものの、本発明の効果を奏する範囲内において、第5の元素を適宜、添加しても良いとする趣旨である。
【0021】
本実施形態に係る銀合金では、Pd含量を0.10〜2.89wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%とする。Pdを添加するとAgの粒界に均一にPdを分散侵入させることができ、Agの保有する高温及び高湿(多湿)環境下での耐候性の無さが改善されるが、Pd含量が0.10wt%未満であると、耐候性の改善効果が発現しにくくなる。一方、Pd含量が2.89wt%を超えると、Cu,Geの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下が見られる。
【0022】
本実施形態に係る銀合金では、Cu含量を0.10〜2.89wt%、好ましくは0.20〜2.0wt%とする。単にAgにPdを添加するだけでは、例えば250℃1時間程度の加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、凝集による表面ラフネスの成長やヒロックの発生が顕著に見受けられた。そこで、Pd含量を上記範囲内に抑え、更に第三元素としてCuを銀合金に0.10〜2.89wt%含有させる。Cu含量が0.10wt%未満であると、ヒロック抑制の改善効果が発現しにくくなる。一方、Cu含量が2.89wt%を超えると、Pd,Geの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下が見られる。
【0023】
本実施形態に係る銀合金では、Ge含量を0.01〜1.50wt%、好ましくは0.05〜1.0wt%とする。単にAg−Pd−Cu系銀合金では、例えば250℃1時間程度の加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、凝集による表面ラフネスの成長やヒロックの発生が多少なりとも生じてしまい、反射率の低下が起きてしまった。さらに、加熱により硫化が促進され、硫化については充分な改善がなされていなかったため、Ag−Pd−Cu系銀合金の硫化に伴って反射電極膜の黄色化が生じ、カラー液晶ディスプレイの輝度の低下をもたらした。そこで、耐硫化性の向上のため、またCuとGeの相乗作用による耐熱性の向上のため、第4元素としてGeを銀合金に0.01〜1.50wt%含有させる。Ge含量が0.01wt%未満であると、耐熱性及び耐硫化性の向上が発現しにくくなる。一方、Ge含量が1.50wt%を超えると、Pd,Cuの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下、耐候性の低下、さらに電気抵抗率の増加がみられる。
【0024】
本実施形態に係る銀合金では、Pd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%とすることが好ましい。Pd、Cu及びGeの合計含量が0.21wt%未満であると、Pd、Cu及びGeの含量が少ないために、耐候性、耐熱性、耐硫化性が得られない。一方、Pd、Cu及びGeの合計含量が3.00wt%を超えると、銀本来の反射率が得られなくなると共に電気抵抗率の増加がみられる。
【0025】
さらに本実施形態に係る銀合金では、CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量は(1/20)〜(20/1)とすることが好ましい。実施例で説明するように、Ag−PdにCuとGeを添加することで、Cuの添加若しくはGeの添加では得られない、加熱処理後の柱状粒子の成長抑制及び硫化の抑制がなされる。これはCuとGeが共存することにより実現される。したがって、CuとGeがAg−Pd−Cu−Ge系銀合金において共存による効果を発揮し、加熱処理後の柱状粒子の成長抑制を充分とするために、Cu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)の範囲とすることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る銀合金は、銀合金薄膜作製のための銀合金スパッタリングターゲット材や銀合金ペーストの形態とすることができる。また、宝飾材料等の用途がある。
【0027】
本実施形態に係る銀合金又は銀合金薄膜は、上記組成とすることで、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、好ましくは90%以上となる。また、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、好ましくは75%以上となる。また、85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、好ましくは88%以上となる。
【0028】
次に本実施形態に係る銀合金で銀合金スパッタリングターゲット材を製造する方法について説明する。
【0029】
Ag、Pd、Cu、Geの各地金の秤量を行い、坩堝に投入する。このとき、坩堝はカーボン質坩堝等の酸素含有率の少ないものが選択される。或いはアルミナ坩堝、マグネシア坩堝を使用しても良い。カーボン質坩堝を選択した場合、高周波加熱が可能であるため、各地金を投入したカーボン質坩堝を高周波溶解炉に入れ、真空引きを行なう。このときの圧力は1.33Pa以下とする。そして、溶解室内をAr雰囲気(1.33×104〜8.0×104Pa)として、溶解を開始する。溶解温度は1050〜1400℃とする。このとき、Agを97.00〜99.79wt%、Pdを0.10〜2.89wt%、Cuを0.10〜2.89wt%、Ge含量を0.01〜1.50wt%とし、Pd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%とし、且つCuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)という組成にて溶融する。
【0030】
溶融状態が安定化した後、鋳型に溶融物を傾注し、インゴットを作製する。鋳型の種類は、酸素含有率が少ないカーボン質の鋳型のほか、鉄鋳型、アルミナ鋳型を使用することもできる。内部のガスを外に放出させやすくするために、図1に示すように鋳型を上部加熱するか若しくは図2に示すように下部冷却を行なう。図1において鋳型の上部を加熱する場合は、電気抵抗式加熱若しくは高周波コイルによる加熱を行なう。常温まで冷却後、図3に示すようにインゴットの上部(押湯部)をa−a´ラインでカットする。
【0031】
インゴットを600〜900℃で熱処理し、熱間鍛造、圧延を行なう。圧延を行なう間に焼鈍しを行なう。焼鈍しは製品肉厚の2倍以上のときと、最終段階のときに行なう。焼鈍し温度は微細で均一な結晶粒をそろえるため、300〜700℃とする。焼鈍しは、真空中若しくは不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。その後プレス機、レベラーを用いてそり修正を行う。
【0032】
旋盤やフライス盤等で表面または外周を切削して、製品形状とする。製品の全面を研磨しても良い。表面粗度を調整し、最終的に本発明のAg合金のスパッタリングターゲット材を作製することができる。
【0033】
上述のように、本実施形態の銀合金のスパッタリングターゲット材を作製する場合において、Agに対してPd、Cu,Geを添加して溶融する場合においても、従来行われている容易な方法を適用することができ、価格的にも製法的にもメリットが大きい。
【0034】
本実施形態に係る銀合金薄膜の製造方法について説明する。本実施形態に係る銀合金薄膜は、上記銀合金スパッタリングターゲット材を用いてスパッタリング法により成膜することで得られる。また、4元素を複数のターゲットに分けて、同時にスパッタリングして、各元素の放電量を制御して、本実施形態に係る銀合金の組成となるように成膜を行っても良い。
【0035】
なお、本実施形態に係る銀合金薄膜を成膜する際には、基板との薄膜の間に適宜密着層を設けても良い。この場合に、各種のガラス基板の密着助長下地膜としては、Si、Ta、Ti、Mo、Cr、Al、ITO、ZnO、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2が望ましい。
【0036】
本実施形態に係る4元素系銀合金は、電気抵抗率は3元素(Ag−Pd−Cu)系と同等であった。
【0037】
本実施形態に係る銀合金薄膜は、耐候性、耐熱性、耐硫化性に優れているため、(1)自発光型ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等の反射電極膜、反射膜又は有孔型半透過膜(2)配線、(3)光ディスク媒体の反射膜及び薄型半透過膜、(4)電磁波遮蔽膜、(5)LEDなど電子部品の反射膜、配線又は電極膜、(6)ヘッドランプやプロジェクタのランプ等のライト部品のミラー、(7)建材ガラスなどの用途がある。本発明に係る銀合金薄膜は薄型半透過膜である場合も含む。半透過膜は、膜厚が1〜50nmと薄い場合に得られるほか、膜厚が50nmを超えても入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜とすることで得られる。薄型半透過膜は主として光ディスク媒体に用いられ、光透過孔を形成した有孔型半透過膜は主として自発光型ディスプレイやフラットパネルディスプレイ或いは、反射電極に用いられる。なお、光学ディスク媒体は、反射膜又は薄型半透過膜の少なくともいずれか1つを備える場合がある。さらに本実施形態に係る銀合金薄膜は、電子部品としても幅広く利用することが可能である。例えば、回路部品としては、抵抗器又はコンデンサ等の電極として、或いは、スイッチ等の接点として、或いは、通信・ネットワークユニット、フィルタ、ヒューズ、サーミスタ、発振子・共振子、バリスタ、プリント配線板等の配線として、或いは電源ユニット等の電極として、或いは、電源回路部品等の配線として、或いは集積回路、IC等の電極として使用できる。さらに光部品、センサ、表示部品、I/O(Input/Output)としても幅広く利用することが可能である。例えば、光部品等の反射膜、入・出力ユニット等の接点として使用できる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
実施形態に示した方法で、98.7Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.2Ge(Ag含量;98.7wt%、Pd含量;0.8wt%、Cu含量;0.3wt%、Ge含量;0.2wt%を意味する。以下この表記法により銀合金の組成を示す。)の銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して実施例1とした。膜厚は200nmであった。成膜した薄膜のAFM(原子間力顕微鏡、Atomic Force Microscope、SII社製、型番SPA300HV)画像を図4(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.410、RMS(nm)は1.785、P−V(nm)は14.07であった。さらに分光光度計(島津製作所社製、型番UV−3100PC)により、実施例1の銀合金薄膜の反射率を測定した。用いた波長域は400〜800nmとした。結果を図5に示した。
【0039】
(実施例2)
実施例1の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例2とした。実施例2の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.693、RMS(nm)は2.203、P−V(nm)は24.55であった。さらに、実施例2の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0040】
(比較例1)
実施形態に示した方法で、99.2Ag−0.8Pdの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例1とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は6.265、RMS(nm)は8.447、P−V(nm)は64.31であった。さらに比較例1の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0041】
(比較例2)
比較例1の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例2とした。比較例2の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は6.265、RMS(nm)は8.447、P−V(nm)は64.31であった。さらに、比較例2の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0042】
(比較例3)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.8Pd−0.3Cuの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例3とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.533、RMS(nm)は1.977、P−V(nm)は16.98であった。さらに比較例3の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0043】
(比較例4)
比較例3の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例4とした。比較例4の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は2.034、RMS(nm)は2.850、P−V(nm)は35.85であった。さらに、比較例4の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0044】
(比較例5)
実施形態に示した方法で、99.0Ag−0.8Pd−0.2Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例5とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.794、RMS(nm)は2.280、P−V(nm)は21.16であった。さらに比較例5の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0045】
(比較例6)
比較例5の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例6とした。比較例6の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は8.794、RMS(nm)は11.80、P−V(nm)は83.98であった。さらに、比較例6の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0046】
実施例1及び2並びに比較例1〜6を比較することで、銀合金の耐熱性を評価することができる。まず、図4を参照して成膜した反射膜のAFM画像による微細構造の比較を実施例1、比較例1,3,5より評価する。銀合金薄膜の結晶粒の大きさは、2元素系である比較例1が明らかに大きい。残りの3つはいずれも細かいが、表面粗さ解析によると、比較例5、比較例3、実施例1の順に微細になる。一方、図5により実施例1、比較例1,3,5の反射率を比較すると、最も反射率の高いもの(比較例1)と最も反射率の低いもの(実施例1)との差は、せいぜい1〜2%程度である。反射率は、銀合金中の銀含量が多いほど高い傾向にある。
【0047】
次に図6を参照して加熱処理後の反射膜のAFM画像による微細構造の比較を実施例2、比較例2,4,6より評価する。銀合金薄膜の結晶粒の大きさは、比較例6と比較例2とが明らかに大きく、加熱処理により粒成長が見られた。比較例4は粒成長がわずかにみられ、とくに一部の粒子のみが柱状に高く成長していた。図6(b)のAFM画像の高輝度部分は、高く柱状成長した粒子である。一方、実施例2は粒成長ほとんどみられなかった。表面粗さ解析の結果とAFM画像の目視による粒成長の程度とは相関関係が見られた。一方、実施例2、比較例2,4,6の反射率を比較する。比較例2、4、6が熱処理前である比較例1,3,5とそれぞれ比較すると反射率が例えば400nmにおいて、21〜25%ほど大きく低下した。一方、実施例2と実施例1を比較すると、加熱処理による反射率の低下は7%程度である。したがって、実施例2は、比較例2,4,6と比較すると、400nmにおいて13〜17%も反射率が高かった。
【0048】
実施例1,2並びに比較例1〜6の比較により、次のことがわかる。Ag−Pd系にCu若しくはGe若しくはCu−Geを添加するといずれにおいても薄膜の微細粒子化を実現できる。そして、Cuの添加は加熱による粒成長を抑制するが、局所的に成長する大きな柱状結晶の成長を抑制するまでには至らない。一方、Geの添加は加熱による粒成長を引き起こす。ところが、Cu−Geの添加は加熱による粒成長及び柱状結晶の成長ともに抑制する。Geが添加されると粒成長が引き起こされるのに対し、CuとGeが同時に添加されると粒成長及び柱状結晶の成長が共に抑制される。この理由は定かでないが、CuとGeがいずれか一方添加される場合と比較して、同時に銀合金に含有されることにより上記の粒成長の抑止効果が得られたと考える。さらに、図5と図7を比較した場合、実施例2が加熱処理を経ても依然として高反射率を維持しているのは、反射膜の表面ラフネスの成長やヒロックの発生を抑止しているからと考えられる。また、実施例2、比較例2,4,6を目視観察すると、比較例2,4,6がやや硫化されて黄色化していたのに対して、実施例2では着色していなかった。したがって、実施例2では表面ラフネスの成長やヒロックの発生を抑止していることに加えて、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金が加熱処理を経た後も硫化されなかったため、高反射率を維持したと考えられる。これは主としてGeの添加効果と考えられる。
【0049】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐熱性、反射率の評価を行なった。
【0050】
(実施例3)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例3とした。実施例3の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.727、RMS(nm)は2.314、P−V(nm)は28.06であった。さらに、実施例3の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図9に示した。
【0051】
(実施例4)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例4とした。実施例4の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.252、RMS(nm)は1.656、P−V(nm)は22.75であった。
【0052】
(実施例5)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例5とした。実施例5の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は2.128、RMS(nm)は2.289、P−V(nm)は22.89であった。
【0053】
(比較例4)
比較例4のAFM画像を比較のため図8(d)に示した。図9に反射率を示した。
【0054】
図8を参照すると、実施例3〜5は比較例4と比較すると、加熱処理による柱状粒子の成長が抑制されている。これはCuとGeの相乗作用により耐熱性が向上したからと考えられる。また図9で実施例3は比較例4よりも反射率が高い。これは耐熱性向上により表面が平坦に保たれたためと考えられる。また、反射膜の硫化が抑制されたためと考えられる。このとき目視によると比較例4がやや黄色化していたのに対して実施例3〜5は着色していなかった。図7と図9の結果から、本実施例に係る銀合金薄膜は、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることがわかる。
【0055】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐高温高湿性の評価を行なった。
【0056】
(実施例6)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例6とした。実施例6の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.471、RMS(nm)は1.884、P−V(nm)は20.76であった。
【0057】
(実施例7)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例7とした。実施例7の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は0.9948、RMS(nm)は1.486、P−V(nm)は30.55であった。
【0058】
(実施例8)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例8とした。実施例8の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は0.8017、RMS(nm)は1.016、P−V(nm)は9.146であった。
【0059】
(比較例7)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.8Pd−0.3Cuの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを比較例7とした。比較例7の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.302、RMS(nm)は1.646、P−V(nm)は14.40であった。
【0060】
図10を参照すると、上記の高温高湿条件では実施例6〜8、比較例7は、粒成長及び柱状粒子成長はみられない。
【0061】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐硫化性の評価を行なった。
【0062】
(実施例9)
実施例1と同じ銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例10)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して実施例10とした。実施例10の銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例8)
純銀薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例9)
比較例3と同じ銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
表1を参照すれば明らかな通り、Geを含む実施例9、10は耐硫化性が際立って優れていて、特に、実施例10は、反射率の低下が少ないことがわかる。表1の結果から実施例10に係る銀合金薄膜は、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が75%を超えていた。
【表1】
【0067】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐高温高湿性の評価(長時間評価)を行なった。
【0068】
(実施例11)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例11とした。実施例11の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0069】
(実施例12)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例12とした。実施例12の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0070】
(実施例13)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例13とした。実施例13の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0071】
(比較例10)
実施形態に示した方法で、純銀のスパッタリングターゲット材を作製した。この銀のスパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、銀反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行った。これを比較例10とした。実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【表2】
【0072】
表2を参照すれば明らかな通り、Geを含む実施例11、12及び13は耐候性に優れていて、反射率の低下が少ないことがわかる。すなわち、本実施例に係る銀合金薄膜は85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、90%以上であることがわかる。したがって、本実施形態に係る銀合金薄膜は、光学ディスク媒体、ヘッドランプ又はプロジェクタ用ランプの反射膜として好適である。また、LED等の電子部品の反射膜、配線、電極又は反射電極としても好適である。また、電磁波遮蔽シールド膜としても好適である。
【0073】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含有量の上限値について検討を行なった。
【0074】
(実施例14)
実施例13と同じ銀合金薄膜を準備して、空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例14とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0075】
(比較例11)
実施形態に示した方法で、97.3Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.6Geの銀合金スパッタリングターゲット材とした以外は実施例11と同様とした。これを比較例11とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0076】
(参考例1)
スパッタリングターゲット材をアルミニウム(100Al)とした以外は実施例14と同様としてアルミニウム薄膜を得た。このアルミニウム薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを参考例1とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0077】
Geを1.6wt%含有する比較例11は、長時間の高温高湿試験によって反射率が大きく低下し、例えば光記録媒体の読み取りで使用する650nmの光の反射率が参考例1のアルミニウム薄膜よりも低い。一方、Geを1.5wt%含有する実施例14は、同じ高温高湿試験によっても反射率の低下が少なく、550nmより波長が大きい光の反射率は参考例1のアルミニウム薄膜よりも高い。したがってAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含有量は1.5wt%以下とすることが好ましいことがわかった。
【0078】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、銀含有量による反射率の検討を行なった。
【0079】
(実施例15)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.6Pd−0.3Cu−0.2Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を実施例15とした。
【0080】
(比較例12)
銀合金スパッタリングターゲット材の組成を95.7Ag−1.0Pd−3.0Cu−0.3Geとした以外は実施例15と同様として銀合金薄膜を得た。この銀合金薄膜を比較例12とした。
【0081】
(比較例13)
銀合金スパッタリングターゲット材の組成を95.8Ag−3.0Pd−1.0Cu−0.2Geとした以外は実施例15と同様として銀合金薄膜を得た。この銀合金薄膜を比較例13とした。
【0082】
(参考例2)
スパッタリングターゲット材をアルミニウム(100Al)とした以外は実施例15と同様としてアルミニウム薄膜を得た。このアルミニウム薄膜を参考例2とした。
【0083】
実施例1と同様に銀合金薄膜とアルミニウム薄膜の反射率を測定した。結果を図12に示した。実施例15は、銀の含有率が98.9%と高いため高い反射率を示したが、比較例12と比較例13は共に銀の含有率が97%未満であるので反射率が低かった。参考例2のアルミニウム薄膜と比較しても、例えば650nmにおいて反射率が低い。実施例15、比較例12及び比較例13との比較により、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金について、銀含有量は97wt%以上が好ましいことがわかった。
【0084】
なお、実施例、比較例及び参考例の組成を表3にまとめた。
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性・耐硫化性に優れた銀合金、その銀合金の組成を有するスパッタリングターゲット材、その銀合金薄膜及び銀合金ペーストに関する。さらに、その銀合金薄膜は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ或いはLED(発光ダイオード)等の電子部品の反射膜、反射電極膜、電極膜又は配線等の用途に適するものである。さらに、その銀合金薄膜は、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、或いは、ヘッドライト、プロジェクタの投影ランプ等のライト部品の反射膜の用途に適し、また電磁波遮蔽シールド膜になりうるものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイの製造において、カラーフィルター等の組みつけ等で行われる加熱工程では250℃程度まで加熱されるため、反射電極膜は、その加熱に耐えうる耐熱性が求められる。従来、反射電極膜としてAl(アルミニウム)やAlを主成分とする合金が用いられてきたが、高反射率と低抵抗率を期待して反射電極膜材料として銀合金の検討がなされている。
【0003】
例えば、反射電極膜や反射配線電極膜に適した銀合金についてAg(銀)−Pd(パラジウム)−Cu(銅)系銀合金の開示が本出願人によってなされている。(例えば特許文献1〜3を参照。)。
【特許文献1】特開2000−109943号公報、請求項4
【特許文献2】特開2001−192752号公報、請求項1
【特許文献3】特開2001−226765号公報、請求項2
【0004】
特許文献1〜3に記載されたAg−Pd−Cu系銀合金は、純銀と比較して耐候性が向上する。しかし、Ag−Pd−Cu系銀合金からなる反射電極膜は、上記加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、表面ラフネスの成長やヒロックの発生が多少なりとも生じてしまい、反射率の低下が起きてしまった。さらに、加熱により硫化が促進され、耐硫化性については充分な改善がなされていなかった。Ag−Pd−Cu系銀合金の硫化に伴って反射電極膜の黄色化が生じ、カラー液晶ディスプレイの輝度の低下をもたらした。そこで、より高性能、すなわちより高い耐熱性と、従来の銀合金では得られていない耐硫化性を有する銀合金が求められていた。
【0005】
ところで、カラー液晶ディスプレイの製造時の加熱工程を経ないCD−ROM等の光学記録媒体の反射膜として、Ag−Pd系銀合金にGe(ゲルマニウム)を含有させる発明の開示がある(例えば特許文献4を参照。)。ここで、Geは銀合金の耐候性、具体的には反射膜の長時間使用による反射率低下を防止する効果があるとしている。
【特許文献4】特開2003−193155号公報、請求項1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カラー液晶ディスプレイの製造工程である上記加熱工程を例とする250℃程度の加熱工程を経ても、熱劣化による反射率の低下が極めて少なく且つ硫化による黄色化を生じにくいという2つの特性を併せ持った反射電極膜を形成しうるAg−Pd−Cu−Ge系銀合金を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金の形態として銀合金スパッタリングターゲット材、銀合金薄膜及び銀合金ペーストを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金を薄膜化することで、反射膜、配線、電極又は反射電極として利用することを目的とし、さらにAg−Pd−Cu−Ge系銀合金からなる反射膜、有孔型半透過膜、配線、電極又は反射電極を備えた自発光型ディスプレイ、フラットパネルディスプレイを提供することを目的とする。ディスプレイ用途では、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜の反射率の低下、硫化が少ないため、輝度を高くすることが出来る。さらに耐候性が向上することに伴い、本発明に係る銀合金薄膜を、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、ヘッドランプ又はプロジェクタ用ランプ等のライト部品の反射膜として利用することを目的とし、或いはLED等の電子部品の反射膜、配線、電極又は反射電極として利用することを目的とする。また、本発明に係る銀合金薄膜を、電磁波遮蔽シールド膜として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、耐熱性と耐硫化性に優れた銀合金を開発するため銀合金の組成を鋭意検討した結果、Ag−Pd合金にCuとGeを同時に存在させることで、CuとGeの相乗作用によって優れた耐熱性が得られ、且つGeの作用によって耐硫化性が得られることを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る銀合金は、Agを主成分とし、Pd含量を0.10〜2.89wt%、Cu含量を0.10〜2.89wt%、Ge含量を0.01〜1.50wt%とし、且つPd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%として、少なくとも4元素からなる組成を有することを特徴とする。ここで、本発明に係る銀合金では、Ag含量を97.00〜99.79wt%として、4元素のみからなる組成を有することが好ましい。さらに、CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)とすることが好ましい。
【0010】
本発明に係る銀合金スパッタリングターゲット材は、前記組成の銀合金で形成されたことを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る銀合金薄膜は、前記銀合金で形成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上である場合が含まれる。
【0013】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上である場合が含まれる。
【0014】
本発明に係る銀合金又は銀合金薄膜は、85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上である場合が含まれる。
【0015】
さらに本発明に係る銀合金薄膜は、反射膜又は薄型半透過膜若しくは有孔型有孔型半透過膜或いはパターン形成された電極又は配線であることが含まれる。これらの反射膜又は薄型半透過膜若しくは有孔型半透過膜或いはパターン形成された電極又は配線は、自発光型ディスプレイ又はフラットパネルディスプレイの構成部材である場合或いは水晶振動子用電極である場合が含まれる。また、上記の反射膜、配線、電極又は反射電極は、LED等の電子部品の構成部材である場合が含まれる。さらに本発明に係る銀合金薄膜は、電磁波を良好に反射する電磁波遮蔽シールド膜であることが含まれる。
【0016】
さらに本発明は、本発明に係る反射膜又は有孔型半透過膜を備える、自発光型ディスプレイやフラットパネルディスプレイにも及ぶ。また本発明は、本発明に係る反射膜を備える、ヘッドライトやプロジェクタ用のランプ等のライト部品のミラーにも及ぶ。さらに本発明は、本発明に係る反射膜又は薄型半透過膜の少なくともいずれか一方を備える光学ディスク媒体にも及ぶ。ここで自発光型ディスプレイには、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、SED(サーフェイス・コンダクション・エレクトロン・エミッター・ディスプレイ若しくは表面伝導型電子放出ディスプレイ)及びFED(フィールドエミッションディスプレイ)が含まれる。フラットパネルディスプレイには液晶ディスプレイ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、TFT(Thin Film Transistor)及びC−STN(Color Super Twisted Nematic)が含まれる。光学ディスク媒体としては例えばDVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、HD−DVD、BD−R、BD−RE又はBD−ROMがある。ヘッドライト部品の形態例としては発光部の後方に配置される反射膜がある。プロジェクタの形態例としては投影用の反射ミラーがある。ランプ部品のミラーは反射体(光ピックアップ用ミラー、光通信用ミラー)が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の銀合金は、CuとGeの相乗作用によって優れた耐熱性を発揮し、且つGeの存在により優れた耐硫化性を発揮する。結果として、優れた耐熱性と耐硫化性を同時に有するものである。したがって、反射電極膜とした場合、例えば、カラー液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイの製造工程、或いは有機EL、無機EL、LED等の自発光型ディスプレイの製造工程において、加熱工程を経たとしても、熱劣化による反射率の低下が極めて少なく且つ硫化による黄色化を生じにくい。また、耐候性が向上することから本発明に係る銀合金薄膜を、光学ディスク媒体の反射膜や薄型半透過膜、LED等の電子部品の構成部材、或いは、ヘッドランプ又はプロジェクタのランプ等のライト部品の反射膜として利用することができる。また、本発明に係る銀合金薄膜を電磁波遮蔽シールド膜として利用することもできる。本発明に係る銀合金を銀合金ペーストとして利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】銀合金を傾注させる鋳型の一形態を示す概略図であって、鋳型の上部を加熱する場合を示す。
【図2】銀合金を傾注させる鋳型の第2形態を示す概略図であって、鋳型の下部を冷却する場合を示す。
【図3】冷却したインゴットについて押湯部のカットライン(a−a´ライン)の一形態を示す概略図である。
【図4】銀合金薄膜の成膜後のAFM画像であって、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)比較例3は、(d)は比較例5を示す。
【図5】実施例1、比較例1,3,5の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図6】銀合金薄膜の250℃1時間の加熱処理後のAFM画像であって、(a)は実施例2、(b)は比較例2、(c)は比較例4、(d)は比較例6を示す。
【図7】実施例2、比較例2,4,6の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図8】Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜のGe含量変化による、250℃1時間の加熱処理後のAFM画像であって、(a)は実施例3、(b)は実施例4、(c)は実施例5、(d)は比較例4を示す。
【図9】実施例3及び比較例4の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図10】Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金薄膜のGe含量変化による、高温高湿処理(85℃90%RH、30分後)のAFM画像であって、(a)は実施例6、(b)は実施例7、(c)は実施例8、(d)は比較例7を示す。
【図11】実施例14、比較例11,参考例1の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【図12】実施例15、比較例12,比較例13、参考例2の反射スペクトルの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0020】
本実施形態に係る銀合金は、Agを主成分とし、Ag,Pd,Cu,及びGeの少なくとも4元素からなる組成を有する。本実施形態に係る銀合金はAgを主成分とするが、反射電極膜材料とする場合、Al若しくはAl合金と比較して、反射電極膜の高反射率と低抵抗率を期待するものである。本実施形態に係る銀合金は、Ag−Pd−Cu−Ge系の4元素からなる組成を基本とし、銀合金中のAg含量を97.00〜99.79wt%とすることが好ましい。もっとも、少なくとも4元素からなる組成の銀合金としたのは、基本となる組成はAg−Pd−Cu−Ge系であるものの、本発明の効果を奏する範囲内において、第5の元素を適宜、添加しても良いとする趣旨である。
【0021】
本実施形態に係る銀合金では、Pd含量を0.10〜2.89wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%とする。Pdを添加するとAgの粒界に均一にPdを分散侵入させることができ、Agの保有する高温及び高湿(多湿)環境下での耐候性の無さが改善されるが、Pd含量が0.10wt%未満であると、耐候性の改善効果が発現しにくくなる。一方、Pd含量が2.89wt%を超えると、Cu,Geの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下が見られる。
【0022】
本実施形態に係る銀合金では、Cu含量を0.10〜2.89wt%、好ましくは0.20〜2.0wt%とする。単にAgにPdを添加するだけでは、例えば250℃1時間程度の加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、凝集による表面ラフネスの成長やヒロックの発生が顕著に見受けられた。そこで、Pd含量を上記範囲内に抑え、更に第三元素としてCuを銀合金に0.10〜2.89wt%含有させる。Cu含量が0.10wt%未満であると、ヒロック抑制の改善効果が発現しにくくなる。一方、Cu含量が2.89wt%を超えると、Pd,Geの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下が見られる。
【0023】
本実施形態に係る銀合金では、Ge含量を0.01〜1.50wt%、好ましくは0.05〜1.0wt%とする。単にAg−Pd−Cu系銀合金では、例えば250℃1時間程度の加熱工程を経ると、後述の比較例で述べるように、凝集による表面ラフネスの成長やヒロックの発生が多少なりとも生じてしまい、反射率の低下が起きてしまった。さらに、加熱により硫化が促進され、硫化については充分な改善がなされていなかったため、Ag−Pd−Cu系銀合金の硫化に伴って反射電極膜の黄色化が生じ、カラー液晶ディスプレイの輝度の低下をもたらした。そこで、耐硫化性の向上のため、またCuとGeの相乗作用による耐熱性の向上のため、第4元素としてGeを銀合金に0.01〜1.50wt%含有させる。Ge含量が0.01wt%未満であると、耐熱性及び耐硫化性の向上が発現しにくくなる。一方、Ge含量が1.50wt%を超えると、Pd,Cuの2元素の添加の必要性から、結局Ag含量が少なくなるため、本来の反射率の低下、耐候性の低下、さらに電気抵抗率の増加がみられる。
【0024】
本実施形態に係る銀合金では、Pd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%とすることが好ましい。Pd、Cu及びGeの合計含量が0.21wt%未満であると、Pd、Cu及びGeの含量が少ないために、耐候性、耐熱性、耐硫化性が得られない。一方、Pd、Cu及びGeの合計含量が3.00wt%を超えると、銀本来の反射率が得られなくなると共に電気抵抗率の増加がみられる。
【0025】
さらに本実施形態に係る銀合金では、CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量は(1/20)〜(20/1)とすることが好ましい。実施例で説明するように、Ag−PdにCuとGeを添加することで、Cuの添加若しくはGeの添加では得られない、加熱処理後の柱状粒子の成長抑制及び硫化の抑制がなされる。これはCuとGeが共存することにより実現される。したがって、CuとGeがAg−Pd−Cu−Ge系銀合金において共存による効果を発揮し、加熱処理後の柱状粒子の成長抑制を充分とするために、Cu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)の範囲とすることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る銀合金は、銀合金薄膜作製のための銀合金スパッタリングターゲット材や銀合金ペーストの形態とすることができる。また、宝飾材料等の用途がある。
【0027】
本実施形態に係る銀合金又は銀合金薄膜は、上記組成とすることで、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、好ましくは90%以上となる。また、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、好ましくは75%以上となる。また、85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、好ましくは88%以上となる。
【0028】
次に本実施形態に係る銀合金で銀合金スパッタリングターゲット材を製造する方法について説明する。
【0029】
Ag、Pd、Cu、Geの各地金の秤量を行い、坩堝に投入する。このとき、坩堝はカーボン質坩堝等の酸素含有率の少ないものが選択される。或いはアルミナ坩堝、マグネシア坩堝を使用しても良い。カーボン質坩堝を選択した場合、高周波加熱が可能であるため、各地金を投入したカーボン質坩堝を高周波溶解炉に入れ、真空引きを行なう。このときの圧力は1.33Pa以下とする。そして、溶解室内をAr雰囲気(1.33×104〜8.0×104Pa)として、溶解を開始する。溶解温度は1050〜1400℃とする。このとき、Agを97.00〜99.79wt%、Pdを0.10〜2.89wt%、Cuを0.10〜2.89wt%、Ge含量を0.01〜1.50wt%とし、Pd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%とし、且つCuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)という組成にて溶融する。
【0030】
溶融状態が安定化した後、鋳型に溶融物を傾注し、インゴットを作製する。鋳型の種類は、酸素含有率が少ないカーボン質の鋳型のほか、鉄鋳型、アルミナ鋳型を使用することもできる。内部のガスを外に放出させやすくするために、図1に示すように鋳型を上部加熱するか若しくは図2に示すように下部冷却を行なう。図1において鋳型の上部を加熱する場合は、電気抵抗式加熱若しくは高周波コイルによる加熱を行なう。常温まで冷却後、図3に示すようにインゴットの上部(押湯部)をa−a´ラインでカットする。
【0031】
インゴットを600〜900℃で熱処理し、熱間鍛造、圧延を行なう。圧延を行なう間に焼鈍しを行なう。焼鈍しは製品肉厚の2倍以上のときと、最終段階のときに行なう。焼鈍し温度は微細で均一な結晶粒をそろえるため、300〜700℃とする。焼鈍しは、真空中若しくは不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。その後プレス機、レベラーを用いてそり修正を行う。
【0032】
旋盤やフライス盤等で表面または外周を切削して、製品形状とする。製品の全面を研磨しても良い。表面粗度を調整し、最終的に本発明のAg合金のスパッタリングターゲット材を作製することができる。
【0033】
上述のように、本実施形態の銀合金のスパッタリングターゲット材を作製する場合において、Agに対してPd、Cu,Geを添加して溶融する場合においても、従来行われている容易な方法を適用することができ、価格的にも製法的にもメリットが大きい。
【0034】
本実施形態に係る銀合金薄膜の製造方法について説明する。本実施形態に係る銀合金薄膜は、上記銀合金スパッタリングターゲット材を用いてスパッタリング法により成膜することで得られる。また、4元素を複数のターゲットに分けて、同時にスパッタリングして、各元素の放電量を制御して、本実施形態に係る銀合金の組成となるように成膜を行っても良い。
【0035】
なお、本実施形態に係る銀合金薄膜を成膜する際には、基板との薄膜の間に適宜密着層を設けても良い。この場合に、各種のガラス基板の密着助長下地膜としては、Si、Ta、Ti、Mo、Cr、Al、ITO、ZnO、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2が望ましい。
【0036】
本実施形態に係る4元素系銀合金は、電気抵抗率は3元素(Ag−Pd−Cu)系と同等であった。
【0037】
本実施形態に係る銀合金薄膜は、耐候性、耐熱性、耐硫化性に優れているため、(1)自発光型ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等の反射電極膜、反射膜又は有孔型半透過膜(2)配線、(3)光ディスク媒体の反射膜及び薄型半透過膜、(4)電磁波遮蔽膜、(5)LEDなど電子部品の反射膜、配線又は電極膜、(6)ヘッドランプやプロジェクタのランプ等のライト部品のミラー、(7)建材ガラスなどの用途がある。本発明に係る銀合金薄膜は薄型半透過膜である場合も含む。半透過膜は、膜厚が1〜50nmと薄い場合に得られるほか、膜厚が50nmを超えても入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜とすることで得られる。薄型半透過膜は主として光ディスク媒体に用いられ、光透過孔を形成した有孔型半透過膜は主として自発光型ディスプレイやフラットパネルディスプレイ或いは、反射電極に用いられる。なお、光学ディスク媒体は、反射膜又は薄型半透過膜の少なくともいずれか1つを備える場合がある。さらに本実施形態に係る銀合金薄膜は、電子部品としても幅広く利用することが可能である。例えば、回路部品としては、抵抗器又はコンデンサ等の電極として、或いは、スイッチ等の接点として、或いは、通信・ネットワークユニット、フィルタ、ヒューズ、サーミスタ、発振子・共振子、バリスタ、プリント配線板等の配線として、或いは電源ユニット等の電極として、或いは、電源回路部品等の配線として、或いは集積回路、IC等の電極として使用できる。さらに光部品、センサ、表示部品、I/O(Input/Output)としても幅広く利用することが可能である。例えば、光部品等の反射膜、入・出力ユニット等の接点として使用できる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
実施形態に示した方法で、98.7Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.2Ge(Ag含量;98.7wt%、Pd含量;0.8wt%、Cu含量;0.3wt%、Ge含量;0.2wt%を意味する。以下この表記法により銀合金の組成を示す。)の銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して実施例1とした。膜厚は200nmであった。成膜した薄膜のAFM(原子間力顕微鏡、Atomic Force Microscope、SII社製、型番SPA300HV)画像を図4(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.410、RMS(nm)は1.785、P−V(nm)は14.07であった。さらに分光光度計(島津製作所社製、型番UV−3100PC)により、実施例1の銀合金薄膜の反射率を測定した。用いた波長域は400〜800nmとした。結果を図5に示した。
【0039】
(実施例2)
実施例1の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例2とした。実施例2の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.693、RMS(nm)は2.203、P−V(nm)は24.55であった。さらに、実施例2の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0040】
(比較例1)
実施形態に示した方法で、99.2Ag−0.8Pdの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例1とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は6.265、RMS(nm)は8.447、P−V(nm)は64.31であった。さらに比較例1の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0041】
(比較例2)
比較例1の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例2とした。比較例2の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は6.265、RMS(nm)は8.447、P−V(nm)は64.31であった。さらに、比較例2の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0042】
(比較例3)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.8Pd−0.3Cuの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例3とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.533、RMS(nm)は1.977、P−V(nm)は16.98であった。さらに比較例3の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0043】
(比較例4)
比較例3の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例4とした。比較例4の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は2.034、RMS(nm)は2.850、P−V(nm)は35.85であった。さらに、比較例4の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0044】
(比較例5)
実施形態に示した方法で、99.0Ag−0.8Pd−0.2Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して比較例5とした。膜厚は200nmであった。実施例1と同様に成膜した薄膜のAFM画像を図4(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.794、RMS(nm)は2.280、P−V(nm)は21.16であった。さらに比較例5の銀合金薄膜の反射率を測定した。結果を図5に示した。
【0045】
(比較例6)
比較例5の銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを比較例6とした。比較例6の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図6(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は8.794、RMS(nm)は11.80、P−V(nm)は83.98であった。さらに、比較例6の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図7に示した。
【0046】
実施例1及び2並びに比較例1〜6を比較することで、銀合金の耐熱性を評価することができる。まず、図4を参照して成膜した反射膜のAFM画像による微細構造の比較を実施例1、比較例1,3,5より評価する。銀合金薄膜の結晶粒の大きさは、2元素系である比較例1が明らかに大きい。残りの3つはいずれも細かいが、表面粗さ解析によると、比較例5、比較例3、実施例1の順に微細になる。一方、図5により実施例1、比較例1,3,5の反射率を比較すると、最も反射率の高いもの(比較例1)と最も反射率の低いもの(実施例1)との差は、せいぜい1〜2%程度である。反射率は、銀合金中の銀含量が多いほど高い傾向にある。
【0047】
次に図6を参照して加熱処理後の反射膜のAFM画像による微細構造の比較を実施例2、比較例2,4,6より評価する。銀合金薄膜の結晶粒の大きさは、比較例6と比較例2とが明らかに大きく、加熱処理により粒成長が見られた。比較例4は粒成長がわずかにみられ、とくに一部の粒子のみが柱状に高く成長していた。図6(b)のAFM画像の高輝度部分は、高く柱状成長した粒子である。一方、実施例2は粒成長ほとんどみられなかった。表面粗さ解析の結果とAFM画像の目視による粒成長の程度とは相関関係が見られた。一方、実施例2、比較例2,4,6の反射率を比較する。比較例2、4、6が熱処理前である比較例1,3,5とそれぞれ比較すると反射率が例えば400nmにおいて、21〜25%ほど大きく低下した。一方、実施例2と実施例1を比較すると、加熱処理による反射率の低下は7%程度である。したがって、実施例2は、比較例2,4,6と比較すると、400nmにおいて13〜17%も反射率が高かった。
【0048】
実施例1,2並びに比較例1〜6の比較により、次のことがわかる。Ag−Pd系にCu若しくはGe若しくはCu−Geを添加するといずれにおいても薄膜の微細粒子化を実現できる。そして、Cuの添加は加熱による粒成長を抑制するが、局所的に成長する大きな柱状結晶の成長を抑制するまでには至らない。一方、Geの添加は加熱による粒成長を引き起こす。ところが、Cu−Geの添加は加熱による粒成長及び柱状結晶の成長ともに抑制する。Geが添加されると粒成長が引き起こされるのに対し、CuとGeが同時に添加されると粒成長及び柱状結晶の成長が共に抑制される。この理由は定かでないが、CuとGeがいずれか一方添加される場合と比較して、同時に銀合金に含有されることにより上記の粒成長の抑止効果が得られたと考える。さらに、図5と図7を比較した場合、実施例2が加熱処理を経ても依然として高反射率を維持しているのは、反射膜の表面ラフネスの成長やヒロックの発生を抑止しているからと考えられる。また、実施例2、比較例2,4,6を目視観察すると、比較例2,4,6がやや硫化されて黄色化していたのに対して、実施例2では着色していなかった。したがって、実施例2では表面ラフネスの成長やヒロックの発生を抑止していることに加えて、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金が加熱処理を経た後も硫化されなかったため、高反射率を維持したと考えられる。これは主としてGeの添加効果と考えられる。
【0049】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐熱性、反射率の評価を行なった。
【0050】
(実施例3)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例3とした。実施例3の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.727、RMS(nm)は2.314、P−V(nm)は28.06であった。さらに、実施例3の銀合金薄膜の反射率を実施例1と同様に測定した。結果を図9に示した。
【0051】
(実施例4)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例4とした。実施例4の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.252、RMS(nm)は1.656、P−V(nm)は22.75であった。
【0052】
(実施例5)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、250℃で1時間加熱処理を行なった。これを実施例5とした。実施例5の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図8(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は2.128、RMS(nm)は2.289、P−V(nm)は22.89であった。
【0053】
(比較例4)
比較例4のAFM画像を比較のため図8(d)に示した。図9に反射率を示した。
【0054】
図8を参照すると、実施例3〜5は比較例4と比較すると、加熱処理による柱状粒子の成長が抑制されている。これはCuとGeの相乗作用により耐熱性が向上したからと考えられる。また図9で実施例3は比較例4よりも反射率が高い。これは耐熱性向上により表面が平坦に保たれたためと考えられる。また、反射膜の硫化が抑制されたためと考えられる。このとき目視によると比較例4がやや黄色化していたのに対して実施例3〜5は着色していなかった。図7と図9の結果から、本実施例に係る銀合金薄膜は、空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることがわかる。
【0055】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐高温高湿性の評価を行なった。
【0056】
(実施例6)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例6とした。実施例6の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(a)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.471、RMS(nm)は1.884、P−V(nm)は20.76であった。
【0057】
(実施例7)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例7とした。実施例7の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(b)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は0.9948、RMS(nm)は1.486、P−V(nm)は30.55であった。
【0058】
(実施例8)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例8とした。実施例8の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(c)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は0.8017、RMS(nm)は1.016、P−V(nm)は9.146であった。
【0059】
(比較例7)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.8Pd−0.3Cuの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで0.5時間、高温高湿処理を行なった。これを比較例7とした。比較例7の銀合金薄膜についても実施例1と同様にAFM観察を行い、AFM画像を図10(d)に示した。このとき、面粗さ解析によると、Ra(nm)は1.302、RMS(nm)は1.646、P−V(nm)は14.40であった。
【0060】
図10を参照すると、上記の高温高湿条件では実施例6〜8、比較例7は、粒成長及び柱状粒子成長はみられない。
【0061】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐硫化性の評価を行なった。
【0062】
(実施例9)
実施例1と同じ銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例10)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜して実施例10とした。実施例10の銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例8)
純銀薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例9)
比較例3と同じ銀合金薄膜(膜厚200nm)を100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
表1を参照すれば明らかな通り、Geを含む実施例9、10は耐硫化性が際立って優れていて、特に、実施例10は、反射率の低下が少ないことがわかる。表1の結果から実施例10に係る銀合金薄膜は、室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が75%を超えていた。
【表1】
【0067】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含量変化による耐高温高湿性の評価(長時間評価)を行なった。
【0068】
(実施例11)
実施形態に示した方法で、98.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−0.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例11とした。実施例11の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0069】
(実施例12)
実施形態に示した方法で、97.9Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.0Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例12とした。実施例12の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0070】
(実施例13)
実施形態に示した方法で、97.4Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.5Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例13とした。実施例13の銀合金薄膜についても実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【0071】
(比較例10)
実施形態に示した方法で、純銀のスパッタリングターゲット材を作製した。この銀のスパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、銀反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行った。これを比較例10とした。実施例1と同様に反射率を測定した。結果を表2に示した。
【表2】
【0072】
表2を参照すれば明らかな通り、Geを含む実施例11、12及び13は耐候性に優れていて、反射率の低下が少ないことがわかる。すなわち、本実施例に係る銀合金薄膜は85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、90%以上であることがわかる。したがって、本実施形態に係る銀合金薄膜は、光学ディスク媒体、ヘッドランプ又はプロジェクタ用ランプの反射膜として好適である。また、LED等の電子部品の反射膜、配線、電極又は反射電極としても好適である。また、電磁波遮蔽シールド膜としても好適である。
【0073】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含有量の上限値について検討を行なった。
【0074】
(実施例14)
実施例13と同じ銀合金薄膜を準備して、空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを実施例14とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0075】
(比較例11)
実施形態に示した方法で、97.3Ag−0.8Pd−0.3Cu−1.6Geの銀合金スパッタリングターゲット材とした以外は実施例11と同様とした。これを比較例11とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0076】
(参考例1)
スパッタリングターゲット材をアルミニウム(100Al)とした以外は実施例14と同様としてアルミニウム薄膜を得た。このアルミニウム薄膜を空気中、85℃90%RHで200時間、高温高湿処理を行なった。これを参考例1とした。実施例1と同様に反射率を測定し、結果を図11に示した。
【0077】
Geを1.6wt%含有する比較例11は、長時間の高温高湿試験によって反射率が大きく低下し、例えば光記録媒体の読み取りで使用する650nmの光の反射率が参考例1のアルミニウム薄膜よりも低い。一方、Geを1.5wt%含有する実施例14は、同じ高温高湿試験によっても反射率の低下が少なく、550nmより波長が大きい光の反射率は参考例1のアルミニウム薄膜よりも高い。したがってAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、Ge含有量は1.5wt%以下とすることが好ましいことがわかった。
【0078】
次にAg−Pd−Cu−Ge系銀合金について、銀含有量による反射率の検討を行なった。
【0079】
(実施例15)
実施形態に示した方法で、98.9Ag−0.6Pd−0.3Cu−0.2Geの銀合金スパッタリングターゲット材を作製した。この銀合金スパッタリングターゲット材を用いて、平滑な表面を有する石英ガラス基板上に、上記組成の銀合金反射膜をスパッタリング法により成膜した。膜厚は200nmであった。この銀合金薄膜を実施例15とした。
【0080】
(比較例12)
銀合金スパッタリングターゲット材の組成を95.7Ag−1.0Pd−3.0Cu−0.3Geとした以外は実施例15と同様として銀合金薄膜を得た。この銀合金薄膜を比較例12とした。
【0081】
(比較例13)
銀合金スパッタリングターゲット材の組成を95.8Ag−3.0Pd−1.0Cu−0.2Geとした以外は実施例15と同様として銀合金薄膜を得た。この銀合金薄膜を比較例13とした。
【0082】
(参考例2)
スパッタリングターゲット材をアルミニウム(100Al)とした以外は実施例15と同様としてアルミニウム薄膜を得た。このアルミニウム薄膜を参考例2とした。
【0083】
実施例1と同様に銀合金薄膜とアルミニウム薄膜の反射率を測定した。結果を図12に示した。実施例15は、銀の含有率が98.9%と高いため高い反射率を示したが、比較例12と比較例13は共に銀の含有率が97%未満であるので反射率が低かった。参考例2のアルミニウム薄膜と比較しても、例えば650nmにおいて反射率が低い。実施例15、比較例12及び比較例13との比較により、Ag−Pd−Cu−Ge系銀合金について、銀含有量は97wt%以上が好ましいことがわかった。
【0084】
なお、実施例、比較例及び参考例の組成を表3にまとめた。
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag(銀)を主成分とし、
Pd(パラジウム)含量を0.10〜2.89wt%、Cu(銅)含量を0.10〜2.89wt%、Ge(ゲルマニウム)含量を0.01〜1.50wt%とし、
且つPd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%として、少なくとも4元素からなる組成を有することを特徴とする銀合金。
【請求項2】
Ag含量を97.00〜99.79wt%として、4元素のみからなる組成を有することを特徴とする請求項1記載の銀合金。
【請求項3】
CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)としたことを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項4】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項5】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項6】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項7】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項8】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項9】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金スパッタリングターゲット材。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金薄膜。
【請求項12】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項13】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項14】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項15】
前記銀合金薄膜は反射膜であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項16】
前記銀合金薄膜は薄型半透過膜であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項17】
前記銀合金薄膜はパターン形成された電極又は配線であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項18】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とする自発光型ディスプレイ。
【請求項19】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項20】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とする反射電極。
【請求項21】
請求項11、12、13、14、15、16又は17記載の銀合金薄膜を用いることを特徴とする電子部品。
【請求項22】
請求項15記載の反射膜又は請求項16記載の薄型半透過膜の少なくともいずれか一方を備えることを特徴とする光学ディスク媒体。
【請求項23】
請求項15記載の反射膜を備えることを特徴とするライト部品。
【請求項24】
前記銀合金薄膜は電磁波遮蔽シールド膜であることを特徴とする請求項15記載の銀合金薄膜。
【請求項25】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金ペースト材。
【請求項1】
Ag(銀)を主成分とし、
Pd(パラジウム)含量を0.10〜2.89wt%、Cu(銅)含量を0.10〜2.89wt%、Ge(ゲルマニウム)含量を0.01〜1.50wt%とし、
且つPd、Cu及びGeの合計含量を0.21〜3.00wt%として、少なくとも4元素からなる組成を有することを特徴とする銀合金。
【請求項2】
Ag含量を97.00〜99.79wt%として、4元素のみからなる組成を有することを特徴とする請求項1記載の銀合金。
【請求項3】
CuとGeの含量比であるCu含量/Ge含量を(1/20)〜(20/1)としたことを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項4】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項5】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項6】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項7】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項8】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀合金。
【請求項9】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項3記載の銀合金。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金スパッタリングターゲット材。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金薄膜。
【請求項12】
空気中250℃1時間の加熱処理を行なった後の550nmの光の反射率が、90%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項13】
室温で100ppmの硫化水素雰囲気に48時間さらした後の550nmの光の反射率が、75%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項14】
85℃90RH%の高温高湿雰囲気に200時間さらした後の550nmの光の反射率が、88%以上であることを特徴とする請求項11記載の銀合金薄膜。
【請求項15】
前記銀合金薄膜は反射膜であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項16】
前記銀合金薄膜は薄型半透過膜であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項17】
前記銀合金薄膜はパターン形成された電極又は配線であることを特徴とする請求項11、12、13又は14記載の銀合金薄膜。
【請求項18】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とする自発光型ディスプレイ。
【請求項19】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項20】
請求項15記載の反射膜又は請求項15記載の反射膜に入射光の一部を透過させる光透過孔を形成した有孔型半透過膜を備えることを特徴とする反射電極。
【請求項21】
請求項11、12、13、14、15、16又は17記載の銀合金薄膜を用いることを特徴とする電子部品。
【請求項22】
請求項15記載の反射膜又は請求項16記載の薄型半透過膜の少なくともいずれか一方を備えることを特徴とする光学ディスク媒体。
【請求項23】
請求項15記載の反射膜を備えることを特徴とするライト部品。
【請求項24】
前記銀合金薄膜は電磁波遮蔽シールド膜であることを特徴とする請求項15記載の銀合金薄膜。
【請求項25】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の銀合金で形成されたことを特徴とする銀合金ペースト材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【国際公開番号】WO2005/031016
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514158(P2005−514158)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010508
【国際出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/010508
【国際出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]