説明

銀含有組成物及び基材

【課題】高銀含有率のアセトンジカルボン酸銀を含み、銀塩の分解温度未満の低温で、且つ短時間の加熱でも導電性、平坦性、密着性に優れた金属銀膜が得られる、保存安定性の高い銀含有組成物、およびそれを用いて形成した金属銀膜備える基材を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される銀化合物(A)と、式(2)で表されるアミン化合物(B)とを特定割合で含有することを特徴とする組成物。


(R1:H、−(CY2)a−CH3、−((CH2)b−O−CHZ)c−CH3、R2:−(CY2)d−CH3、−((CH2)e−O−CHZ)f−CH3。Y:H、−(CH2)g−CH3、Z:H、−(CH2)h−CH3。a:0〜8、b:1〜4、c:1〜3、d:1〜8、e:1〜4、f:1〜3、g:1〜3、h:1〜2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属銀膜を作製でき、化合物中の銀含有量が高い銀塩および安定化剤を含む銀塩含有組成物およびその組成物を基材表面で加熱して得られた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属薄膜を作製する方法として、金属をリキッドインク状またはペーストインク状とし、これらを基材に塗布または印刷後、加温する方法が知られている。使用される金属としては、金、銀、銅、アルミニウムであり、配線材料の材料としては銀が汎用されている。銀を用いたインクの場合、一般に金属銀が分散溶媒中に分散したインクを用い、配線基板上にパターン形成し、前記インク中の金属銀を焼結させ、配線を形成する。金属銀を導電性材料として使用する場合、分散した金属銀の微細化による融点降下を利用して、低温で焼結する必要があることが一般的に知られている。しかし、融点降下を示すほどの微小な金属銀の粒子は、互いに接触して凝集しやすいことから、凝集を防止するために前記インクには分散剤を添加する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記分散剤を含むペーストを用いて金属銀の粒子を焼結させると、分散剤由来の不純物が残存してしまうため、150℃以上もの高温での処理などによって不純物を除去することが望ましいとされている。
【0003】
微小な金属銀の一般的な製造方法としては、例えば、硝酸銀などの無機酸と銀から成る銀塩を還元剤および分散剤の存在下で加熱する方法が挙げられる。しかしながら、銀塩由来の酸成分の残存や分散剤除去のために高温で処理する必要がある。
また、前述のような無機酸にかえて有機酸を用いた銀塩を利用する金属銀の形成方法も報告されている。有機酸銀としては、例えば、長鎖カルボン酸の銀塩を窒素雰囲気下で焼結する方法が報告されており(特許文献2)、また、α−ケトカルボン酸銀を用いた銀の形成材料が報告されている(特許文献3)。
しかし、これらの銀塩を速やかに分解するには150℃以上の高温処理を行わなければならず、銀塩中に含まれる銀の含有量が低い為、優れた平坦性や密着性を有する銀膜が得られにくい。
【0004】
近年では、透明樹脂基板に対し金属銀の作製が盛んに試みられている。しかし、一般的に透明樹脂基板は、ガラス等と比較し低い軟化点を有する為に150℃未満の加熱によって金属銀を作製できる低温焼結性が望まれている。低温焼結性を実現する為には、銀塩の熱分解温度を低くすることが必要である。これに対し、β−ケトカルボン酸は150℃未満の分解温度を有し、低温焼結性を示す銀化合物として報告されている(特許文献4)。しかし、この銀塩も銀塩中の銀含有量が低い為、優れた平坦性や密着性を有する銀膜が得られにくい。
【0005】
前記有機銀塩は、単官能カルボン酸と銀から成る銀塩であるために化合物中の銀含有率が低く焼結時に残存する有機成分が多くなるため、有機成分を分解・蒸発させるために焼結時間が長くなること、膜の平坦性が悪くなることおよび基板に対する密着性が低下することが問題となる。特に焼結時間の長期化は生産性の観点より好ましくない。
一方、マロン酸やシュウ酸といったジカルボン酸との銀塩は銀含有率が高いが、短時間で分解させるためには約210℃以上の加熱が必要であるため低温焼結性を実現しにくい。
また、ジカルボン酸であるアセトンジカルボン酸銀がアセトンジカルボン酸エステルを合成する際の中間体として用いられることが報告されている(非特許文献1)。但し、ここではアセトンジカルボン酸銀の熱分解特性については報告されていない。
そこで、銀含有率の高いアセトンジカルボン酸銀の熱分解性を評価したところ、熱分解温度が150℃以上であるために低温焼結性インクに用いることが困難と思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−60824号公報
【特許文献2】特開2005−298921号公報
【特許文献3】特開2004−315374号公報
【特許文献4】特開2008−159535号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jornal fur praktische Chemie. Band 312(1970)pp.240−244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高銀含有率のアセトンジカルボン酸銀を含み、銀塩の分解温度未満の低温で、且つ短時間の加熱でも導電性、平坦性、密着性に優れた金属銀膜が得られる、保存安定性の高い銀含有組成物、およびその組成物を用いて形成した、導電性、平坦性、密着性に優れた金属銀膜を形成した基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アセトンジカルボン酸銀と特定の構造を有するアミンとからなる組成物が優れた導電性、平坦性、密着性を有する金属銀膜を形成しうることを見出し、発明を完成するに至った。
本発明によれば、式(1)で表される銀化合物(A)と、式(2)で表されるアミン化合物(B)とを含む組成物であって、銀化合物(A)およびアミン化合物(B)の合計100質量%に対して銀化合物(A)を10〜50質量%およびアミン化合物(B)を50〜90質量%を含む銀含有組成物が提供される。
【化1】

(R1は、水素、−(CY2)a−CH3、または−((CH2)b−O−CHZ)c−CH3を表し、R2は、−(CY2)d−CH3または−((CH2)e−O−CHZ)f−CH3を表す。ここで、Yは水素原子または−(CH2)g−CH3を表し、Zは水素原子または−(CH2)h−CH3を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは1〜3の整数、dは1〜8の整数、eは1〜4の整数、fは1〜3の整数、gは1〜3の整数、hは1〜2の整数である。)
また本発明によれば、上記銀含有組成物を基材上に塗布し、該基材を加熱して銀膜を形成された基材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の銀含有組成物は、上記銀化合物(A)とアミン化合物(B)とを特定割合で用いるので、例えば、組成物中の銀濃度を高めることができ、触媒非存在下、150℃未満の低温で速やかに金属銀を得ることができる。低温での金属銀形成が可能となったことから、例えば、耐熱性の低い樹脂製基材上への金属銀形成が短時間で可能となる。更に、150℃以上の高温ではさらに短時間で金属銀の形成が可能となることから生産性の向上が期待できる。この様にして得られる金属銀膜は基板に対する平坦性・密着性が高いことから、この組成物を塗布・印刷後加熱すること得られる金属銀膜は、配線材料や反射材等の様々な分野への使用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、合成例1で調製したアセトンジカルボン酸銀の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、合成例1で調製したアセトンジカルボン酸銀の熱重量分析結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例2−1で調製したインク溶液を用いて作製した銀膜のSEM観察結果を示す写真の写しである。
【図4】図4は、比較例2−2で調製したインク溶液を用いて作製した銀膜のSEM観察結果を示す写真の写しである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の銀含有組成物は、上記式(1)で表される銀化合物(A)と、上記式(2)で表されるアミン化合物(B)とを特定割合で含有する。
銀化合物(A)は、アセトンジカルボン酸銀であり、その形態は通常粉体である。該銀化合物(A)は、溶剤に希釈した際に粘度が高くなり、印刷等のパターニングが難しい物質であることが知られている。
しかしながら、上記アミン化合物(B)と組み合わせることで、銀含有量の高い組成物においても粘度を低く設定することができる。また、銀化合物(A)は、単体での分解温度が高く150℃以下の焼成にて金属銀を生成するには長時間を有する。しかし、上記アミン化合物(B)と組み合わせることで、150℃以下の低温・短時間焼成にて金属銀を生成することが可能となる。さらには、銀化合物(A)とアミン化合物(B)との相乗効果により、他のカルボン酸銀を用いたときに比べ保存安定性(銀粒子の沈殿の生成により判断)が格段に向上することが判明している。
【0013】
本発明の銀含有組成物中において、銀化合物(A)およびアミン化合物(B)の合計100質量%に対しする、銀化合物(A)の含有割合は10〜50質量%およびアミン化合物(B)の含有割合は50〜90質量%である。さらには、銀濃度を高くしたい場合には銀化合物(A)を50〜70質量%含むことが好ましい。アミン化合物(B)の含有割合が50質量%未満では銀化合物(A)の溶解性が著しく低下する。
【0014】
本発明に用いるアセトンジカルボン酸銀である銀化合物(A)の製造方法は、何ら制限されない。具体例として、例えば、前述の非特許文献1に記載の方法が挙げられる。特に、塩基性物質を用いてアセトンジカルボン酸銀を製造する場合、金属イオンの混入を避けるために有機塩基を用いることが望ましい。
【0015】
本発明に用いるアミン化合物(B)は、上記式(2)で表される化合物であり、式中、R1は、水素原子、−(CY2)a−CH3、または−((CH2)b−O−CHZ)c−CH3を表し、R2は、フェニル基、−(CY2)d−CH3または−((CH2)e−O−CHZ)f−CH3を表す。ここで、Yは水素原子または−(CH2)g−CH3を表し、Zは水素原子または−(CH2)h−CH3を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは1〜3の整数、dは1〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは1〜4の整数、hは1〜2の整数である。
アミン化合物(B)としては、例えば、エチルアミン、1−プロピルアミン、1−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソペンチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、tert−アミルアミン、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−エトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンの1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
本発明の組成物を、例えば、光反射機能を必要とする反射電極等に適用する場合には、得られる金属銀膜に対しより高い平坦性(平滑性)が求められるが、このような用途に用いられる場合には、前記アミン化合物(B)のR1は、水素元素、−(CY2)a−CH3、−((CH2)b−O−CHZ)c−CH3が好ましく、YおよびZは水素原子またはメチル基、aは2〜6の整数、bは1〜3の整数およびcは1または2であることが特に好ましい。同様に、R2は、−(CY2)d−CH3または−((CH2)e−O−CHZ)f−CH3であり、YおよびZは水素原子、dは1〜6の整数、eは1〜3の整数およびfは1〜2の整数であることが望ましい。さらに、150℃未満の低温焼結性を発揮させる場合、沸点が130℃未満のアミン化合物(B)を用いることがより好ましい。これらを満足するアミン化合物(B)としては、例えば、1−プロピルアミン、1−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソペンチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−エトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンの1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0017】
本発明の銀含有組成物には、基材への塗工性の改善や粘度の調節を目的に、銀化合物(A)及びアミン化合物(B)に加えて溶媒を適宜添加することができる。溶媒の使用量は、銀化合物(A)及びアミン化合物(B)の合計20〜80質量%に対して、20〜80質量%が好ましい。さらには、銀化合物(A)及びアミン化合物(B)の合計40〜60質量%に対して40〜60質量%がより好ましい。溶剤量が80質量%を超えると銀含有量の低下により均一な銀膜が得られないおそれがある。
【0018】
前記溶媒の種類は特に制限されないが、銀膜作製時に除去しやすいものが好ましく、これらの溶媒は、用途に応じて単独もしくは混合して用いることができる。溶媒の種類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、エチレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトキシメトキシプロパン、フェニルグリシジルエーテルおよびエチレングリコールグリシジル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルおよびイソブチロニトリル等のニトリル類、DMSOなどのスルホキシド類、水ならびに1−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
形成される銀膜の平坦性および低温焼結性の点においては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、tert−アミルアルコール、エチレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルの1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0019】
上記溶媒を用いる場合、銀化合物(A)およびアミン化合物(B)の混合物に添加するだけでなく、アミン化合物(B)と溶媒との混合物に、銀化合物(A)を添加したり、銀化合物(A)と溶媒との混合物に、アミン化合物(B)を添加するなど、添加する順序には特に制限はない。
【0020】
本発明の銀含有組成物には、必要により、炭化水素、アセチレンアルコール、シリコーンオイル等により基材に対するレベリング性を調整したり、樹脂や可塑剤等により粘度特性を調整したり、他の導電体粉末や、ガラス粉末、界面活性剤、金属塩およびその他この種の組成液に一般に使用される添加剤を配合しても良い。
【0021】
本発明の銀含有組成物には、焼結時間をさらに短縮するために、組成物をあらかじめ加温したり、一般に知られる還元剤を作用させて銀クラスターおよびナノ粒子を形成させた銀コロイド分散液とすることもできる。この場合、還元剤としては、ホウ素化水素化合物、三級アミン、チオール化合物、リン化合物、アスコルビン酸、キノン類、フェノール類等を導電性や平坦性を失われない程度に添加することができる。
【0022】
本発明の基材(基板)は、本発明の銀含有組成物を基材上に塗布し、該基材を加熱して金属銀膜や銀配線等の銀膜を形成したものである。
本発明の組成物を塗布する基材は特に制限されず、例えば、ガラス、シリコン、ポリイミド、ポリエステルおよびポリカーボネートが挙げられる。生産性の点からは、各種印刷法に適するとされるフレキシブルな基材であるポリエステルなどの樹脂基材が好ましい。
【0023】
本発明の銀含有組成物の基材への塗布は、印刷等により行うことができる。基材を加熱処理する際の加熱温度は、室温以上であれば特に規定されないが、生産性を考慮した場合、短時間で焼成するためには80℃以上の加熱が好ましい。特に、PETやポリカーボネート等の耐熱性の低い樹脂基材上に金属銀膜や銀配線を形成する場合、80℃以上150℃未満の温度で焼成することが好ましい。また、耐熱性の優れる基材を用いた場合、生産性の点から120℃以上170℃未満が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1 アセトンジカルボン酸銀(銀塩A)の合成
アセトンジカルボン酸43.8gを1000mlビーカーに秤量後、600gのイオン交換水に添加し溶解させ氷冷し、さらに102gの硝酸銀を溶解させた。そこへ、48gのヘキシルアミンを投入後、30分間撹拌した。得られた白色の固体をろ取しアセトンで洗浄後、減圧乾燥することで88.2gのアセトンジカルボン酸銀を白色固体として得た(収率:82%)。得られたアセトンジカルボン酸銀の赤外吸収スペクトルを図1に示す。IR:1372.10cm-1、1581.34cm-1
得られたアセトンジカルボン酸銀のTGA分析を、熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて行った。分析条件は、昇温速度10℃/分、測定雰囲気を空気中とした。その結果、熱分解温度は175℃であった。また、熱重量分析後の残分は59.7%であり、理論残存率(59.4%)と一致していた。得られた分析結果を図2に示す。
【0025】
実施例1−1
遮光瓶中で、合成例1で調製したアセトンジカルボン酸銀200mgを、ヘキシルアミン(HA)800mgに溶解させ、銀含有組成物を得た。
【0026】
実施例1−2
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgをヘキシルアミン(HA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0027】
実施例1−3
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgをブチルアミン(BA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0028】
実施例1−4
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgをプロピルアミン(PA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0029】
実施例1−5
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgを ジブチルアミン(DBA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0030】
実施例1−6
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgを2−エトキシエチルアミン(2−EOEA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0031】
実施例1−7
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgを2−エチルヘキシルアミン(2−EHA)600mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0032】
実施例1−8
遮光瓶中で、アセトンジカルボン酸銀400mgを2−エチルヘキシルアミン(2−EHA)200mgおよび2−エトキシエチルアミン(2−EOEA)400mgに溶解させ、アセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液を得た。
【0033】
比較例1−1
遮光瓶中で、マロン酸銀200mgをヘキシルアミン(HA)800mgに溶解させ、銀含有アミン溶液を得た。
【0034】
比較例1−2
遮光瓶中で、α−メチルアセト酢酸銀200mgをヘキシルアミン(HA)800mgに溶解させ、銀含有アミン溶液を得た。
【0035】
比較例1−3
遮光瓶中で、ステアリン酸銀200mgをヘキシルアミン(HA)800mgに溶解させ、銀含有アミン溶液を得た。
【0036】
比較例1−4
遮光瓶中で、グリオキシル酸銀200mgを ヘキシルアミン(HA)800mgに溶解させ、銀含有アミン溶液を得た。
以上の実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−4で調製した各銀含有アミン溶液の組成を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例2−1
遮光瓶中で、実施例1−1で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液800mgをイソプロピルアルコール(IPA)200mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0039】
実施例2−2
遮光瓶中で、実施例1−2で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをイソプロピルアルコール(IPA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0040】
実施例2−3
遮光瓶中で、実施例1−3で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをイソプロピルアルコール(IPA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0041】
実施例2−4
遮光瓶中で、実施例1−4で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをイソプロピルアルコール(IPA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0042】
実施例2−5
遮光瓶中で、実施例1−5で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをイソプロピルアルコール(IPA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0043】
実施例2−6
遮光瓶中で、実施例1−6で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをイソプロピルアルコール(IPA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0044】
実施例2−7
遮光瓶中で、実施例1−2で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0045】
実施例2−8
遮光瓶中で、実施例1−2で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをn−ヘキシルアルコール(n−HA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0046】
実施例2−9
遮光瓶中で、実施例1−2で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをtert−アミルアルコール(TAA)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0047】
実施例2−10
遮光瓶中で、実施例1−8で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをメタノール(MeOH)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0048】
実施例2−11
遮光瓶中で、実施例1−9で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液400mgをメタノール(MeOH)600mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0049】
比較例2−1〜2−4
比較例1−1〜1−4で調製した銀塩含有アミン溶液800mgをイソプロピルアルコール(IPA)200mgに添加して、銀含有インク溶液を調製した。
【0050】
試験例
以上の実施例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−4で調製した各溶液の組成を表2に、また、各溶液を、室温で2週間静置した時の安定性を、沈澱の有無にて確認した。結果を表3に示す。
評価は、沈澱の状態によって、○:沈澱なし、△:微量の沈澱あり、×:多量の沈澱ありとした。△あるいは○評価を本発明の効果を満たすものとする。
【0051】
また、実施例1−1〜1−8、実施例2−1〜2−11、比較例1−1〜1−4、比較例2−1〜2−4で調製した溶液をSelect−Roller(オーエスジーシステムプロダクツ(株))にてポリエチレンテレフタラートフィルム上に塗布し、100℃で30分間加熱処理した。また、実施例1−2および実施例2−2については80℃で90分間加熱処理した試験も行った。得られた膜の外観について目視にて評価した。結果を表4に示す。
更に、得られた膜の導電性評価は、四端針方式の低抵抗率計(ロレスターGP:三菱化学社製)を用いて行った。結果を表4に示す。なお、体積抵抗値が5.0×10-5Ω・cm以下であれば本発明の効果を満たすものとし、O.Lはオーバーロードを意味する。
更にまた、得られた膜のSEM写真をとり、膜の平坦性を評価した。結果を表4に示す。
平坦性の評価は、50nm未満の空隙が無いものを◎、50nm以上100nm未満の空隙をあるものを○、100nm以上200nm未満の空隙があるものを△、200nm以上の空隙があり銀膜に光沢の無いものを×とした。◎あるいは○評価を本発明の効果を満たすものとする。
また、得られた膜にセロハンテープを密着、剥離することで、膜の基板に対する密着性を評価した。結果を表4に示す。
密着性の評価は、剥離しなかったものを○、一部銀膜の剥離が確認されたものを△、全て剥離したものを×とした。○あるいは△評価を本発明の効果を満たすものとする。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される銀化合物(A)と、式(2)で表されるアミン化合物(B)とを含む組成物であって、銀化合物(A)およびアミン化合物(B)の合計100質量%に対して銀化合物(A)を10〜50質量%およびアミン化合物(B)を50〜90質量%を含む銀含有組成物。
【化1】

(R1は、水素、−(CY2)a−CH3、または−((CH2)b−O−CHZ)c−CH3を表し、R2は、−(CY2)d−CH3または−((CH2)e−O−CHZ)f−CH3を表す。ここで、Yは水素原子または−(CH2)g−CH3を表し、Zは水素原子または−(CH2)h−CH3を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは1〜3の整数、dは1〜8の整数、eは1〜4の整数、fは1〜3の整数、gは1〜3の整数、hは1〜2の整数である。)
【請求項2】
前記銀化合物(A)および前記アミン化合物(B)20〜80質量%と、溶媒20〜80質量%とを含む請求項1記載の銀含有組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の銀含有組成物を基材上に塗布し、該基材を加熱して銀膜を形成された基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153634(P2012−153634A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13317(P2011−13317)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】